JP3159436B2 - 電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔の製造方法 - Google Patents

電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高静電容量の電解
コンデンサ陰極箔を得るのに用いられるアルミニウム箔
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電解コンデンサ陰極箔は、以
下の如き製造方法で製造されている。即ち、高純度のア
ルミニウム鋳塊を、均質化処理し、その後熱間圧延及び
冷間圧延を施すことによって、アルミニウム箔を製造
し、このアルミニウム箔にエッチング処理して表面に微
細孔を多数設け、電解コンデンサ陰極箔を製造してい
る。
【0003】電解コンデンサ陰極箔の静電容量を高める
ためには、アルミニウム中に固溶している不純物を、微
細な多数の粒子として析出させながら、アルミニウム箔
を製造することが重要である。微細な多数の析出物を析
出させたアルミニウム箔の製造方法として、従来より各
種の方法が提案されているが、いずれも十分なものでは
なかった。即ち、得られるアルミニウム箔の品質にばら
つきがあったのである。これは、電解コンデンサ陰極箔
を得るのに使用するアルミニウム箔が高純度のものであ
るため、少しの条件の変化で内部組織が変化し、析出物
の量が少なすぎたり、或いは多すぎたりするのである。
従って、これをエッチング処理すると、溶解量が少なか
ったり、或いは過溶解したりして、高静電容量の陰極箔
が安定して得られないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、アルミニウ
ム箔の内部組織とアルミニウム箔の導電率には、従来よ
り一定の関係があることが知られている。従って、本発
明者は、導電率を測定することによって、内部組織の変
化を知り、静電容量の高い電解コンデンサ陰極箔が得ら
れるアルミニウム箔を製造しようと試みた。
【0005】この結果、驚くべきことに、アルミニウム
箔の導電率と、このアルミニウム箔から得られる電解コ
ンデンサ陰極箔との静電容量との間には、一定の関係が
あることが判明した。即ち、図1に示す如く、アルミニ
ウム箔の導電率が62.5〜63.3%IACSのと
き、得られる電解コンデンサ陰極箔の静電容量が安定的
に最大値を取ることが判明したのである。本発明は、こ
の知見を基礎にして、導電率が62.5〜63.5%I
ACSのアルミニウム箔を得るには、どのような製造方
法が適しているかを研究することによってなされたもの
である。
【0006】なお、図1中の導電率は、四端子法で20
℃の油浴中で測定したものであり、単位は%IACSで
ある。また、静電容量の単位はμF/cm2であり、そ
の測定方法は、アルミニウム箔に以下に示すエッチング
処理を行った後、0vf.で30℃の8.0%HNO3
溶液中で120Hzの直列等価回路でLCRメータを用
いて測定した。エッチング処理は、34℃の2.8%H
Cl+7.5%AlCl3(6H2O)+0.1%C22
4(2H2O)容器中で、10Hzの矩形波交流を用い
て、0.2A/cm2で180秒間行った。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、基本的には以
下の二つの態様からなるものである。即ち、第一の態様
は、アルミニウム純度99.7%以上の鋳塊(但し、銅
が0.001%以上含有されているものを除く。)を、
500〜560℃の温度条件で3時間以上均質化処理
し、その後熱間圧延及び冷間圧延して、電解コンデンサ
陰極用アルミニウム箔を得るというものである。第二の
態様は、アルミニウム純度99.7%以上の鋳塊(但
し、銅が0.001%以上含有されているものを除
く。)を、560℃を超える温度条件で3時間以上均質
化処理し、その後熱間圧延して厚さ0.3〜8mmのア
ルミニウム板として、次いで該アルミニウム板を250
〜450℃の温度条件で且つ1分以上中間焼鈍し、その
後冷間圧延して、電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔
を得るというものである。
【0008】本発明においては、まずアルミニウム純度
99.7%以上の鋳塊(但し、銅が0.001%以上含
有されているものを除く。)を準備する。鋳塊のアルミ
ニウム純度が99.7%未満にると、最終的に導電率
が62.5〜63.5%IACSのアルミニウム箔が得
られにくくなるので、好ましくない。
【0009】次に、この鋳塊を均質化処理する。本発明
に係る第一の態様においては、500〜560℃の温度
条件で3時間以上均質化処理する。特に、温度条件とし
ては、500℃以上で540℃未満であるのが好まし
い。500℃未満の温度で均質化処理すると、析出物の
量が多くなりすぎ、得られるアルミニウム箔の導電率が
63.5%IACSを超えてしまい、好ましくない。ま
た、560℃を超える温度条件で均質化処理すると、析
出物の量が少なく、得られるアルミニウム箔の導電率が
62.5%IACS未満になり、好ましくない。従っ
て、560℃を超える温度で均質化処理した場合には、
本発明に係る第二の態様を採用しなければならない。な
お、均質化処理を3時間以上としたのは、この程度の時
間未満ではこの処理の目的である、鋳塊の均質化が図ら
れないため、好ましくない。
【0010】本発明に係る第一の態様においては、この
均質化処理をした後、従来公知の方法で熱間圧延及び冷
間圧延を施して、所望の厚さのアルミニウム箔を得れば
よい。このようにすれば、導電率が62.5〜63.5
%IACSのアルミニウム箔が得られるのである。な
お、第一の態様において、所望の温度条件等で中間焼鈍
又は最終焼鈍を施してもよい。
【0011】本発明に係る第二の態様においては、均質
化処理を560℃を超える温度条件、好ましくは600
℃以上の温度条件で行う。そして、その後熱間圧延を行
い、厚さ0.3〜8mmのアルミニウム板を作成する。
そして、このアルミニウム板を250〜450℃の温度
条件で且つ1分以上中間焼鈍する。この中間焼鈍は、均
質化処理において固溶した不純物を析出させるために行
うものである。中間焼鈍の温度が250℃未満である
と、不純物が析出しにくくなるため、好ましくない。ま
た、中間焼鈍の温度が450℃を超えると、不純物はア
ルミニウム中に固溶したままとなるので、好ましくな
い。中間焼鈍の時間を1分未満とすると、不純物の析出
が生じるのに十分な時間とは言えなくなり、好ましくな
い。なお、中間焼鈍時のアルミニウム板の厚さを0.3
〜8mmとしたのは、中間焼鈍を施すのに適当な一般的
な厚さとしたまでである。そして、この中間焼鈍を終え
た後、冷間圧延を施して、所望の厚さのアルミニウム箔
を得ればよい。このようにすれば、導電率が62.5〜
63.5%IACSのアルミニウム箔が得られるのであ
る。なお、中間焼鈍の前に、熱間圧延と併用し冷間圧延
を施してもよいし、中間焼鈍の後に、冷間圧延と併用し
て熱間圧延を施してもよい。また、所望の温度条件等で
最終焼鈍を併用してもよい。
【0012】以上のようにして得られた電解コンデンサ
陰極用アルミニウム箔は、その後エッチング処理されて
電解コンデンサ陰極箔となるのである。なお、最終焼鈍
を施した場合には、軟質の電解コンデンサ陰極用アルミ
ニウム箔となり、最終焼鈍を施さない場合には、硬質の
電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔となることは、言
うまでもない。
【0013】
【実施例】まず、表1に示す元素組成よりなる厚さ40
0mmのアルミニウム鋳塊No.1〜4を準備した。そ
して、表2に示す条件で均質化処理した後、熱間粗圧延
機で約20〜25mmに圧延し、次いで熱間仕上圧延機
で3mmの厚さに圧延してアルミニウム板を得た。この
アルミニウム板を、必要により表3に示す条件で中間焼
鈍した後、冷間圧延を行い、0.05mmの箔とした。
また、所望により、表3に示す条件で最終焼鈍を行っ
た。得られた電解コンデンサ用アルミニウム箔の導電率
及び静電容量は、表4及び表5に示すとおりであった。
なお、導電率及び静電容量の測定方法及び単位は、前述
したとおりである。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【表3】
【0016】
【表4】
【0017】
【表5】
【0018】以上の結果より明らかなとおり、実施例に
係る方法で得られた電解コンデンサ陰極用アルミニウム
箔は、比較例に係る方法で得られたものに比べて、陰極
箔としたとき、高い静電容量を示すものである。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る方法
で電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔を製造すれば、
この電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔は、一定の導
電率を示すものである。従って、アルミニウム箔中に、
不純物が適正な量の析出物となって存在し、これにエッ
チング処理をすれば、微細な孔が多数形成され、アルミ
ニウム箔の表面積を拡大する。依って、本発明に係る電
解コンデンサ陰極用アルミニウム箔を用いて陰極箔を製
造すれば、高静電容量の陰極箔が得られるという効果を
奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔の導電率
と、このアルミニウム箔をエッチング処理して得られた
陰極箔の静電容量との関係を表わすグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 661 C22F 1/00 661Z 682 682 684 684C 691 691B 691C (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/04 - 1/057 C22C 21/00 - 21/18 H01G 9/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム純度99.7%以上の鋳塊
    (但し、銅が0.001%以上含有されているものを除
    く。)を、500〜560℃の温度条件で3時間以上均
    質化処理し、その後熱間圧延及び冷間圧延して、導電率
    が62.5〜63.5%IACSの箔を得ることを特徴
    とする電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 アルミニウム純度99.7%以上の鋳塊
    (但し、銅が0.001%以上含有されているものを除
    く。)を、560℃を超える温度条件で3時間以上均質
    化処理し、その後熱間圧延して厚さ0.3〜8mmのア
    ルミニウム板とし、次いで該アルミニウム板を250〜
    450℃の温度条件で且つ1分以上中間焼鈍し、その後
    冷間圧延して、導電率が62.5〜63.5%IACS
    の箔を得ることを特徴とする電解コンデンサ陰極用アル
    ミニウム箔の製造方法。
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