JP3959106B2 - 電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔 - Google Patents

電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電容量の高い電解コンデンサ用電極箔を得ることのできる電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔に関するものである。特に、交流エッチング法で静電容量の高い電解コンデンサ低圧用陽極箔を得ることのできる電解コンデンサ陽極用硬質アルミニウム箔に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電解コンデンサ用電極箔を製造するためには、電解コンデンサ用アルミニウム箔にエッチング処理を施し、箔表面に微細な孔を多数形成して、箔表面の表面積を拡大することが行なわれている。特に、電解コンデンサ低圧用陽極箔を製造するには、電解コンデンサ用アルミニウム箔に交流エッチング処理を施し、箔表面に多数の微細な孔(いわゆる海綿状ピット)を形成して、箔表面の表面積を拡大することが行なわれている。この表面積の拡大は、電解コンデンサ低圧用陽極箔の静電容量を高めるためには、最も有効な方法である。
【0003】
従来より、アルミニウム箔表面に、交流エッチング処理を施して、海綿状ピットを効率的に形成させるためには、不純物の少ないアルミニウム箔を用いることが有効であると言われていた。そのため、特に、アルミニウム箔中の結晶組織の状態に関しては、考慮が払われていなかった。
【0004】
しかるに、海綿状ピットを効率的に形成させるには、結晶組織の状態も重要であるとして、特開平4−333541号公報に記載されたような技術が提案されている。この技術は、結晶方位を規制したものであって、圧延方位(110)面に対する立方体方位(100)面の比〔(100)/(110)〕を、一定値以下に規制したものである。これは、(100)面の結晶粒が、エッチング処理によって溶解しやすいため、過溶解して海綿状ピットが合体・脱落し、表面積の拡大が図れなくなるのを防止しようというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等も、特開平4−333541号公報記載の技術と同様に、アルミニウム箔中の結晶組織の状態が、海綿状ピットの形成に、どのような影響を及ぼすか検討していたところ、(100)面の割合を一定値以下に規制しても、必ずしも、効率的に海綿状ピットが形成されるとは限らないことが判明した。即ち、(100)面の割合を一定値以下に規制すると、エッチング処理により溶解しにくくなって、海綿状ピット自体が生成しにくくなることもあった。
【0006】
そこで、本発明者等が更に研究を進めた結果、海綿状ピット生成の核となるのは、結晶粒中のサブグレイン又はセルの粒界であることが分かり、サブグレイン又はセルの粒界が多くなればなるほど海綿状ピットが形成されやすいことが分かった。また、一旦形成された海綿状ピットの合体・脱落を防止するためには、立方体方位(100)面を有する結晶粒の大きさが関係していることが分かった。つまり、立方体方位を有する結晶粒の大きさが大きいほど、形成された海綿状ピットが合体・脱落しやすくなることが分かった。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、Fe,Si,Cu及びその他の不可避不純物を含み、アルミニウム純度が99.9%以上のアルミニウム箔であって、サブグレイン又はセルの平均粒径が1〜10μmであると共に、(100)方位を有する結晶粒の平均粒径が5〜20μmであり、且つその密度が400個/mm2以上であることを特徴とする電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔に関するものである。
【0008】
まず、本発明に係るアルミニウム箔は、アルミニウム純度が99.9%以上のものである。アルミニウム純度が99.9%未満であると、アルミニウム箔中に含まれている不純物であるFe,Si及びCuの含有量が相対的に多くなり、エッチング処理によって過溶解が生じ、海綿状ピットが合体・脱落するので、好ましくない。なお、不純物であるFe,Si及びCuは、その含有量が多すぎなければ、ある程度含有されている方が良い。これらの不純物によって、得られるアルミニウム箔の引張強度を高くすることができ、また、海綿状ピットも形成されやすくなる場合があるからである。また、本発明に係るアルミニウム箔においては、Fe,Si及びCuの他に、不可避不純物が含有されている場合があることは、言うまでもない。
【0009】
本発明に係るアルミニウム箔は、平均粒径が1〜10μmのサブグレイン又はセルを有している。サブグレイン又はセルの平均粒径が10μmを超えると、サブグレイン又はセルの粒界が少なくなるので、好ましくない。即ち、この粒界は、海綿状ピット生成の核となるものであるから、この粒界が少ないと微細な海綿状ピットが生成しにくくなり、表面積が拡大しにくくなるので、好ましくない。また、サブグレイン又はセルの平均粒径を1μm未満とすることは、工業的に困難である。
【0010】
ここで、サブグレイン又はセルの平均粒径の測定方法について説明する。まず、本発明に係るアルミニウム箔を、硝酸:メタノール=1:2の容積比を持つ溶液中(液温−20℃)で電解研磨して薄膜を作製する。この薄膜を、100kVの加速電圧で2000倍に拡大してTEM観察する。観察したサブグレイン又はセルの面積を測定し、この面積を持つ仮想円の直径を、サブグレイン又はセルの粒径とする。そして、20視野をTEM観察し、各々のサブグレイン又はセルの粒径の平均値を平均粒径とする。
【0011】
また、本発明に係るアルミニウム箔中において、(100)方位を有する結晶粒(以下、「(100)方位粒」と言う。)の平均粒径は5〜20μmである。(100)方位粒の平均粒径が20μmを超えると、エッチング処理によって、海綿状ピットが合体・脱落しやすくなり、表面積の拡大が図れないので、好ましくない。また、(100)方位粒の平均粒径を5μm未満とすると、全体として、(100)方位粒が少なくなる傾向が生じ、エッチング処理による溶解性が低くなり、表面積の拡大が図れなくなる傾向が生じる。
【0012】
(100)方位粒の密度は、400個/mm2以上であり、好ましくは400〜1000個/mm2 であるのが良い。(100)方位粒の密度が400個/mm2未満であると、エッチング処理による溶解性が低くなり、表面積の拡大が図れなくなる傾向が生じる。
【0013】
(100)方位粒の平均粒径及び密度は、以下の方法により測定する。まず、本発明に係るアルミニウム箔を、硝酸:メタノール=1:2の容積比を持つ溶液中(液温−20℃)で電解研磨して薄膜を作製する。この薄膜を、100kVの加速電圧で2000倍に拡大してTEM観察する。観察した(100)方位粒(制限視野電子線回折により方位確認)の面積を測定し、この面積を持つ仮想円の直径を、(100)方位粒の粒径とする。そして、20視野をTEM観察し、各々の(100)方位粒の粒径の平均値を平均粒径とする。また、(100)方位粒の密度は、同様にTEM観察して、(100)方位粒の個数を数え、〔(100)方位粒の数/全視野面積(mm2)〕なる式で算出した。
【0014】
本発明に係るアルミニウム箔は、当然に、その表面に自然酸化皮膜を有するものであるが、この自然酸化皮膜の成長速度を、1.3×10-7 nm/sec.以下とするのが好ましい。成長速度がこれより速いと、3ケ月経過すると酸化皮膜の厚さが1.01nm以上となり、エッチング処理時に、初期ピットが生成しにくくなる傾向が生じる。従って、本発明に係るアルミニウム箔であっても、エッチング処理によって、十分な表面積の拡大を図れなくなる場合がある。このような自然酸化皮膜の成長速度を抑制する方法としては、本発明に係るアルミニウム箔を製造する際に用いる圧延油の組成、圧延後の洗浄の種類,方法及び条件、洗浄後の後処理等を工夫することによって行なう。具体的には、アルカリ洗浄後、硝酸等の酸化性酸によって後処理したり、キレート剤でアルミニウム箔表面を防錆すれば良い。
【0015】
次に、自然酸化皮膜の成長速度の測定方法について説明する。まず、製造後2日のアルミニウム箔と、製造後90日のアルミニウム箔を準備する。各々のアルミニウム箔を、XPS(光電子分光分析装置。X線源はAl−kαである。)により、〔Al 2p〕のピークを波形分離し、次の式により酸化皮膜の厚さを求めた。即ち、d=2.8×ln(1.4×IO/Im+1)なる式で求めた。ここで、dは、酸化皮膜の厚さで単位はnmである。また、IOは、〔Al 2p〕のピークを波形分離したときの、酸化物結合ピークの面積であり、Imは、〔Al 2p〕のピークを波形分離したときの、金属結合ピークの面積を示す。そして、90日のアルミニウム箔の酸化皮膜厚さから、2日のアルミニウム箔の酸化皮膜厚さを引いた値を、経時秒数(88日に相当する秒数)で除した値を、酸化皮膜成長速度とした。
【0016】
本発明に係るアルミニウム箔は種々の方法で製造することができるが、具体的には、以下の如き二つの方法を採用するのが好ましい。第一の方法は、Fe,Si,Cu及びその他の不可避不純物を含み、アルミニウム純度が99.9%以上のアルミニウム鋳塊に、熱間圧延及び冷間圧延を施して(但し、中間焼鈍及び最終焼鈍は施さない。)、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム合金箔を製造する方法において、冷間圧延温度を70〜120℃とすることを特徴とする電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム合金箔の製造方法である。
【0017】
この方法及びその特徴を説明すると、次のとおりである。まず、Fe,Si,Cu及びその他の不可避不純物を含み、アルミニウム純度が99.9%以上のアルミニウム鋳塊を準備する。アルミニウム純度を99.9%以上とする理由、及びFe,Si,Cuの他元素が含有されている理由は、上記したとおりである。このアルミニウム鋳塊に、従来公知の均質化処理及び熱間圧延を施す。均質化処理及び熱間圧延の種々の条件も、従来採用されている条件で良い。熱間圧延を終えた後、冷間圧延を施す。この方法の特徴は、冷間圧延時の温度条件を70〜120℃とすることである。この温度範囲で冷間圧延を行なうことによって、サブグレイン又はセルの平均粒径を1〜10μmの範囲に調整しやすくなり、また、(100)方位粒の平均粒径を5〜20μmの範囲に及びその密度を400個/mm2以上に調整しやすくなるのである。また、この方法の特徴は、中間焼鈍及び最終焼鈍を施さないことである。中間焼鈍や最終焼鈍を施すと、一定の温度範囲の冷間圧延で調整された、サブグレイン又はセルの平均粒径が大きくなったり、(100)方位粒の平均粒径が大きくなる恐れがあり、好ましくない。
【0018】
また、第二の方法は、Fe,Si,Cu及びその他の不可避不純物を含み、アルミニウム純度が99.9%以上のアルミニウム鋳塊に、熱間圧延,冷間圧延,中間焼鈍及び仕上冷間圧延を施して(但し、最終焼鈍は施さない。)、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム合金箔を製造する方法において、中間焼鈍を温度180〜250℃で5〜40時間の条件で施し、仕上冷間圧延の圧下率を15〜50%とすることを特徴とする電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム合金箔の製造方法である。なお、仕上冷間圧延の圧下率は、仕上冷間圧延前のアルミニウム薄板の厚さをt0とし、仕上冷間圧延後のアルミニウム箔の厚さをt1としたとき、〔(t0−t1)/t0〕×100で算出されるものである。
【0019】
この方法及びその特徴を説明すると、次のとおりである。まず、第一の方法と同様のアルミニウム鋳塊を準備する。このアルミニウム鋳塊に、第一の方法と同様に従来公知の均質化処理及び熱間圧延を施す。熱間圧延を終えた後、冷間圧延を施す。冷間圧延も従来公知の方法で、且つ従来採用されている条件で行なえば良い。冷間圧延によって所望厚さのアルミニウム薄板を得た後、中間焼鈍を施す。この方法の特徴は、中間焼鈍の温度条件を180〜250℃とし、中間焼鈍の時間を5〜40時間とすることである。このように、従来の中間焼鈍とは異なり、比較的低温で、また比較的短い時間で中間焼鈍を施すことによって、(100)方位粒の平均粒径を5〜20μmの範囲に調整しやすくなり、且つその密度を400個/mm2以上に調整しやすくなる。また、この方法の特徴は、中間焼鈍を終えた後、圧下率15〜50%で仕上冷間圧延を施すことである。このように、比較的低い圧下率で仕上冷間圧延を施すことによって、(100)方位粒の密度を減少させずに、サブグレイン又はセルの平均粒径を1〜10μmの範囲に調整しやすくなる。更に、この方法の特徴は、最終焼鈍を施さない点にも存する。最終焼鈍を施すと、特定条件下における中間焼鈍及び仕上冷間圧延で調整された、サブグレイン又はセルの平均粒径が大きくなったり、(100)方位粒の平均粒径が大きくなる恐れがあり、好ましくない。
【0020】
以上のようにして得られた、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム合金箔には、従来公知のエッチング処理が施され、電解コンデンサ用電極箔として用いられる。特に、交流エッチング処理を施し、電解コンデンサ低圧用陽極箔として好適に用いられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、サブグレイン又はセルの平均粒径の調整と、(100)方位粒の平均粒径とその密度との調整によって、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔のエッチング特性が向上するとの知見に基づくものであるとして、解釈されるべきである。
【0022】
実施例1
Fe:20ppm,Si:20ppm,Cu:50ppm及びその他不可避不純物を含む99.98%純度のアルミニウム鋳塊(厚さ500mm)に、560℃で5時間の均質化処理を施す。この後、熱間圧延を施して、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に、冷間圧延を繰り返し施して、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。この冷間圧延は、全て80〜120℃の範囲内で行なった。最後に、このアルミニウム箔をアルカリ洗浄し、硝酸を用いて脱スマット処理を施し、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0023】
実施例2
実施例1と同様の方法により、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に冷間圧延を繰り返し施して、厚さ0.12mmのアルミニウム薄板を得た。このアルミニウム薄板に、温度180℃で5時間の中間焼鈍を施した。中間焼鈍後、17%の圧下率で、仕上冷間圧延を施し、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。最後に、実施例1と同様のアルカリ洗浄及び脱スマット処理を施して、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0024】
実施例3
中間焼鈍の時間を40時間とした他は、実施例2と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0025】
実施例4
中間焼鈍の温度を250℃とした他は、実施例2と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0026】
実施例5
中間焼鈍の時間を40時間とした他は、実施例4と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0027】
実施例6
アルカリ洗浄に代えて、溶剤洗浄を行なった他は、実施例2と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0028】
実施例7
防錆処理剤を含有するアルカリ溶液でアルカリ洗浄する他は、実施例2と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0029】
実施例8
実施例1と同様の方法により、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に冷間圧延を繰り返し施して、厚さ0.2mmのアルミニウム薄板を得た。このアルミニウム薄板に、温度180℃で5時間の中間焼鈍を施した。中間焼鈍後、50%の圧下率で、仕上冷間圧延を施し、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。最後に、実施例1と同様のアルカリ洗浄及び脱スマット処理を施して、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0030】
実施例9
中間焼鈍の温度を250℃とし、時間を40時間とした他は、実施例8と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0031】
実施例10
Fe:10ppm,Si:10ppm,Cu:30ppm及びその他不可避不純物を含む99.99%純度のアルミニウム鋳塊(厚さ500mm)に、600℃で5時間の均質化処理を施す。この後、熱間圧延を施して、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に、冷間圧延を繰り返し施して、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。この冷間圧延は、全て70〜90℃の範囲内で行なった。最後に、このアルミニウム箔をアルカリ洗浄し、硝酸を用いて脱スマット処理を施し、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0032】
実施例11
Fe:10ppm,Si:10ppm,Cu:50ppm及びその他不可避不純物を含む99.99%純度のアルミニウム鋳塊(厚さ500mm)に、560℃で5時間の均質化処理を施す。この後、熱間圧延を施して、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に、冷間圧延を繰り返し施して、0.2mmの厚さのアルミニウム薄板を得た。このアルミニウム薄板に、温度250℃で40時間の中間焼鈍を施した。中間焼鈍後、50%の圧下率で、仕上冷間圧延を施し、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。最後に、アルカリ洗浄を施して、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0033】
実施例12
アルカリ洗浄後の水洗を60℃で5分間行なった他は、実施例8と同様の方法で電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0034】
実施例13
実施例1と同様の方法により、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に冷間圧延を繰り返し施して、厚さ0.115mmのアルミニウム薄板を得た。このアルミニウム薄板に、温度250℃で40時間の中間焼鈍を施した。中間焼鈍後、13%の圧下率で、仕上冷間圧延を施し、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。最後に、実施例1と同様のアルカリ洗浄及び脱スマット処理を施して、電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を得た。
【0035】
比較例1
中間焼鈍の温度を270℃とした他は、実施例2と同様の方法で電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
【0036】
比較例2
実施例1と同様の方法により、厚さ6mmのアルミニウム板を得た。このアルミニウム板に冷間圧延を繰り返し施して、厚さ0.22mmのアルミニウム薄板を得た。このアルミニウム薄板に、温度250℃で40時間の中間焼鈍を施した。中間焼鈍後、55%の圧下率で、仕上冷間圧延を施し、0.1mmの厚さのアルミニウム箔を得た。最後に、実施例1と同様のアルカリ洗浄及び脱スマット処理を施して、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
【0037】
比較例3
中間焼鈍の温度を160℃とし時間を40時間とした他は、実施例2と同様の方法で電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
【0038】
以上のようにして得られた、実施例1〜13に係る電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔及び比較例1〜3に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム箔について、上記した方法で、サブグレイン又はセルの平均粒径、(100)方位粒の平均粒径とその密度、及び酸化皮膜の成長速度を測定し、表1に示した。
【0039】
【表1】
Figure 0003959106
【0040】
次に、実施例1〜13に係る電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔及び比較例1〜3に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム箔に、以下の条件でエッチング処理及び化成処理を施し、以下の方法で静電容量(μF/cm2)を測定し、その結果を表2に示した。なお、静電容量の値(%)は、実施例8の電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を用いて得られた静電容量の値を100%として、それに対する相対比較で求めたものである。また、エッチング処理及び化成処理を終えた箔に、以下に示した急速加熱を施し、最終的な箔の引張強度を測定し、その結果も表2に示した。
【0041】
〔エッチング処理〕:12.0重量%塩酸+1.0重量%硫酸水溶液(液温60℃)中にアルミニウム箔を浸漬し、60Hzで0.4A/cm2の正弦波交流を用いて、第一次エッチングを1分間施した。この後、8.0重量%塩酸+0.1重量%硫酸水溶液(液温30℃)中に、第一次エッチング処理したアルミニウム箔を浸漬し、60Hzで0.3A/cm2の正弦波交流を用いて、第二次エッチングを5分間施した。最後に、水洗及び乾燥してエッチング処理を終了した。
〔化成処理〕:上記のエッチング処理を終えた各箔を、EIAJ法に則って、対抗電極をSUS 304として、20Vf.で化成処理を行なった。
【0042】
〔静電容量〕:上記の化成処理を終えた各電極箔(大きさ:巾10mm×長さ50mm)1枚を、13重量%五硼酸アンモニウム水溶液(液温30℃)中に浸漬し、対向電極として静電容量が40000μF/cm2以上のエッチドアルミニウム箔を用い、120Hzの直列等価回路でLCRメーターを用いて、静電容量(μF/cm2)を測定した。
〔急速加熱後の引張強度〕:上記の化成処理を終えた各電極箔を、大気中で400℃×5分間の条件で加熱処理を行なった。この加熱処理後における各電極箔の引張強度(MPa)をインストロン型万能引張試験機により測定した。
【0043】
【表2】
Figure 0003959106
【0044】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜13に係る電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔にエッチング処理等を施して得られた電極箔は、比較例1〜3に係る電解コンデンサ電極用アルミニウム箔にエッチング処理等を施して得られた電極箔に比べて、高い静電容量を持つことが分かる。また、電極箔に急速加熱を施した場合、実施例1〜13の電極箔は、比較例1〜3の電極箔に比べて、概ね高引張強度を持つことが分かる。
【0045】
【作用及び発明の効果】
本発明に係る電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔にエッチング処理を施すと、高静電容量の箔が得られる理由については、定かではない。しかしながら、本発明者等は、以下のように考えている。即ち、サブグレイン又はセルの平均粒径が1〜10μmというように、比較的小さいので、粒界の生じる割合が多くなる。そして、エッチング処理による初期ピットは、この粒界を核として生じると考えられため、初期ピットが多数生成しやすくなる。そして、エッチング処理で溶解しやすい(100)方位粒の平均粒径が5〜20μmと比較的小さく、且つその密度(個数)が400個/mm2以上と多いため、微細なピット孔が多数生成しやすくなる。従って、微細な海綿状ピットが形成され、エッチング処理によって、表面積が大幅に拡大すると考えられるのである。依って、本発明に係る電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔を用いれば、高静電容量の電極箔が得られるという効果を奏する。特に、交流エッチング処理及び化成処理を施せば、高静電容量の電解コンデンサ低圧用陽極箔が得られるという効果を奏する。
【0046】
また、エッチング処理及び化成処理後に、急速加熱処理すれば、電極箔の引張強度が向上し、電極箔として耐久性に優れ取り扱いやすいものが得られるという予期せぬ効果を奏する。

Claims (1)

  1. Fe,Si,Cu及びその他の不可避不純物を含み、アルミニウム純度が99.9%以上のアルミニウム箔であって、サブグレイン又はセルの平均粒径が1〜10μmであると共に、(100)方位を有する結晶粒の平均粒径が5〜20μmであり、且つその密度が400個/mm2以上であることを特徴とする電解コンデンサ電極用硬質アルミニウム箔。
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