JP3149689B2 - ポリオレフィン系樹脂成形物の表面改質方法及びその表面塗装方法 - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂成形物の表面改質方法及びその表面塗装方法

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JP3149689B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばポリプロピレン
等の表面極性の比較的小さいポリオレフィン系樹脂成形
物の表面改質方法及びその表面塗装方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリプロピレンに代表される表面
極性の比較的小さいポリオレフィン樹脂成形物を例えば
塗装等の2次加工に供する場合、まずトリクロロエタン
等の溶剤により樹脂成形物表面の洗浄及び表面改質(凹
凸化)が行われる。次に、その表面にプライマー塗装が
施されたり、あるいは、プラズマ処理が施される。この
ような処理が施されることにより、表面が極性化されて
樹脂成形物と上塗り塗料との間が強固に接合される。し
かし、近年では、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化
水素系の有機溶剤を用いて洗浄するのを規制する要求が
高まってきており、上記の溶剤に代わるポリオレフィン
樹脂成形物の表面を改質するための新たなる方法が各方
面において研究されている。
【0003】そこで、上記の要求に答える技術の1つと
して、例えば特開平3−103448号公報に開示され
たものが挙げられる。この技術では、ポリプロピレン樹
脂成形物がオゾン気流下で処理されることにより、その
表面が酸化され、親水性が改質される。しかし、上記技
術では、ポリプロピレン樹脂成形物をオゾン気流下で処
理するようにしていたため、樹脂成形物の全ての表面を
均一に改質することは困難であった。すなわち、表面を
均一に改質するためには、オゾン気流を全ての表面に対
してほぼ均一に、かつ、各表面に対してほぼ同一時間だ
け当てなければならない。従って、樹脂成形物が複雑な
形状をなすような場合には、樹脂成形物又は気流を適当
に動かしたりしなければ、樹脂成形物の全ての表面を均
一に改質することができず、結果として均一な塗装を施
すことが非常に困難となっていた。
【0004】上記不具合に対処すべく、本願出願人は、
特願平5−163619号において、ポリオレフィン樹
脂成形物をオゾン水溶液に接触させて、前記ポリオレフ
ィン樹脂成形物の表面を酸化させる旨を開示している。
かかる方法によれば、改質工程前での有機溶剤の使用を
省略して、樹脂成形物の表面を容易に、かつ、均一に改
質することができる。また、その後の塗装により、樹脂
成形物の表面に塗膜層を強固に形成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記技
術では、例えばポリオレフィン樹脂成形物を所定温度の
オゾン水溶液中に浸漬する方法が採用されていたため、
一定の優れた改質結果は得られるものの、以下に示すよ
うな不具合の発生するおそれがあった。すなわち、図6
に示すように、樹脂成形物51をオゾン水溶液中に浸漬
する前段階においては、水流ノズル52を用いたパワー
ウォッシュ洗浄(流水洗浄)が行われるのが一般的であ
るが、かかる洗浄は樹脂成形物51がコンベア53上に
載置された状態で行われる。このため、オゾン水溶液へ
の浸漬工程に際しては、樹脂成形物51をコンベア53
から外して別の浸漬用の容器54中へと移動させ、か
つ、その浸漬状態を保持する必要があった。また、パワ
ーウォッシュ洗浄時においては、樹脂成形物51のうち
のコンベア53側の面(樹脂成形物51の裏面)は、さ
ほど洗浄されない。このため、樹脂成形物51の浸漬時
において、その裏面に付着した汚染物質が容器54内の
オゾン水溶液中に溶解してしまうおそれがあった。その
結果、オゾン水溶液が汚染されてしまい、場合によって
は良好な改質結果が得られないおそれがあった。
【0006】また、容器54中のオゾン水溶液の恒温状
態を維持するために、容器54中の全てのオゾン水溶液
をヒータ55で加温調整する必要があった。そのため、
エネルギーコストの増大を招来するおそれがあった。
【0007】さらに、オゾン水溶液は容器54中で長時
間維持されているため、当該オゾン水溶液中のオゾンが
容器54中で自己分解してしまい、オゾン濃度を高くで
きないおそれがあった。
【0008】本発明は、上記の問題点を解決するために
なされたものであって、表面極性の比較的小さいポリオ
レフィン系樹脂成形物の表面改質に際し、短時間の処理
で極めて良好な改質結果及び塗膜接着強度が得られると
ともに、一連の工程において改質を行うことができ、エ
ネルギーコストの低減をも図ることのできるポリオレフ
ィン系樹脂成形物の表面改質方法及びその表面塗装方法
を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1に記載の発明においては、ポリオレフィン
系樹脂成形物に対し、スプレー状のオゾン水溶液を接触
させて、前記ポリオレフィン系樹脂成形物の表面を酸化
させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂成形物の
表面改質方法をその要旨としている。
【0010】また、請求項2に記載の発明においては、
請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂成形物の表面改
質方法であって、前記オゾン水溶液を接触させる際のス
プレー圧力をA(kPa)とし、前記オゾン水溶液を噴
射するためのノズル先端と前記ポリオレフィン系樹脂成
形物との距離をB(cm)としたとき、A・B-2≧0.
07を満足するようにしたことをその要旨としている。
【0011】さらに、請求項3に記載の発明において
は、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂成形
物の表面改質方法であって、前記オゾン水溶液の温度を
65℃以上85℃以下としたことをその要旨としてい
る。
【0012】併せて、請求項4に記載の発明において
は、請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質方法によ
り表面の改質されたポリオレフィン系樹脂成形物の表面
に直接塗膜層を形成することを特徴とするポリオレフィ
ン系樹脂成形物の表面塗装方法をその要旨としている。
【0013】加えて、請求項5に記載の発明において
は、請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質方法によ
り表面の改質されたポリオレフィン系樹脂成形物の表面
に、プライマー層を形成し、同プライマー層上に塗膜層
を形成することを特徴とするポリオレフィン系樹脂成形
物の表面塗装方法をその要旨としている。
【0014】
【作用】上記の請求項1に記載の発明によれば、ポリオ
レフィン系樹脂成形物にスプレー状のオゾン水溶液が接
触される。このとき、水中に残存するオゾンの酸化力に
より、ポリオレフィン系樹脂成形物の表面が酸化され、
極性化される。ここで、ポリオレフィン系樹脂成形物が
いかなる形状をなしていたとしても、オゾン水溶液は、
樹脂成形物の全表面に確実に接触することが可能とな
る。そのため、樹脂成形物の各表面において、均一に酸
化反応が行われ、各箇所における反応斑が起きにくい。
【0015】また、樹脂成形物表面にはオゾン水溶液が
スプレー状に当たるため、樹脂成形物表面に当たる単位
時間当たりのオゾンの量は比較的多いものとなる。ま
た、樹脂成形物表面に形成されるオゾン水溶液の境膜拡
散層が比較的薄く形成される。ここで、その拡散層上か
らは、さらにオゾン水溶液が当該境膜拡散層を叩くよう
にして当たるため、当該拡散層が圧縮される。また、そ
の圧縮により、拡散層が不連続に乱されることとなる。
その結果、オゾン分子が拡散相を通過して樹脂成形物表
面に到達する時間が短くなり、オゾン濃度低下が抑えら
れ、より一層酸化反応が促進されることとなる。
【0016】さらに、樹脂成形物をオゾン水溶液中に浸
漬させる場合と異なり、スプレー状のオゾン水溶液を樹
脂成形物に当てればよいため、一連の工程においてオゾ
ン水溶液を接触させることが可能となる。
【0017】併せて、スプレー状のオゾン水溶液を樹脂
成形物に当てる直前にできるだけ高い温度にまで水溶液
が加温されればよく、維持されている期間中でのオゾン
の分解が回避される。そのため、浸漬される場合に比
べ、高温度においてもオゾン濃度を高く維持することが
可能となる。
【0018】加えて、樹脂成形物に当てる分の水溶液だ
けを加温すればよいため、加温のためのエネルギーが比
較的少なくて済む。また、請求項2に記載の発明によれ
ば、オゾン水溶液を接触させる際のスプレー圧力をA
(kPa)とし、前記オゾン水溶液を噴射するためのノ
ズル先端と前記ポリオレフィン系樹脂成形物との距離を
B(cm)としたとき、A・B-2≧0.07を満足する
ように接触処理が行われる。このため、請求項1に記載
の発明の作用に加えて、樹脂成形物表面に形成されるオ
ゾン水溶液の境膜拡散層が薄く形成される確実性が増
す。また、上記拡散層の圧縮作用及び拡散層の不連続な
圧縮作用がより確実なものとなり、スプレーノズルから
樹脂成形物表面に到達する間のオゾン濃度低下と温度低
下とをより抑えることが可能となる。従って、酸化反応
がさらに促進されやすいものとなる。また、空気とオゾ
ン水溶液との接触時間が短くなり、気液平衡によるオゾ
ン濃度低下を抑えることができる。また、温度低下も抑
えることができる。
【0019】さらに、請求項3に記載の発明によれば、
請求項1又は2に記載の発明の作用に加えて、オゾン水
溶液の温度を65℃以上85℃以下としたので、オゾン
水溶液中のオゾンの反応性を最大限に高められる。従っ
て、酸化反応がさらに促進されやすいものとなる。
【0020】併せて、請求項4に記載の発明によれば、
請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質方法により表
面の改質されたポリオレフィン系樹脂成形物の表面に直
接塗膜層が形成される。このため、塗膜層は、均一に酸
化、極性化された表面と強固に接合することが可能とな
る。
【0021】加えて、請求項5に記載の発明によれば、
請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質方法により表
面の改質されたポリオレフィン系樹脂成形物の表面に、
プライマー層が形成される。また、同プライマー層上に
塗膜層が形成される。このため、プライマー層は、均一
に酸化、極性化された表面と強固に接合することが可能
となり、特に厳選されたプライマー素材を用いたり、焼
付処理に特別な工夫を施す必要がない。また、塗膜層は
そのプライマー層に対し強固に接合される。
【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明のポリオレフィン
系樹脂成形物の表面改質方法及びその表面塗装方法によ
れば、表面極性の比較的小さいポリオレフィン樹脂成形
物の表面改質に際し、短時間の処理で極めて良好な改質
結果及び塗膜接着強度が得られるとともに、一連の工程
において改質を行うことができ、しかもエネルギーコス
トの低減をも図ることができるという優れた効果を奏す
る。
【0023】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例を図面に基
づいて説明する。図2に示すように、例えば自動車用バ
ンパー等の樹脂製品1は、樹脂成形物2及びその表面に
形成された塗膜層3により構成されている。樹脂成形物
2はポリプロピレンにより金型にて成形されたものであ
り、その表面は改質(酸化)されている。そして、本実
施例では、当該樹脂成形物2の表面に直接塗装が施され
ている。
【0024】次に、上記樹脂製品1を製造するに際し、
樹脂成形物2の成形後から塗装の前段階に至るまでの表
面改質工程について、図1の改質装置等を示す工程図に
従って説明する。
【0025】同図に示すように、樹脂成形物2の表面改
質に際しては、パワーウォッシュ洗浄装置4及び表面改
質装置5が使用される。また、これら一連の工程を経る
に際してはコンベア6が使用され、樹脂成形物2は該コ
ンベア6の移動により例えば図の右方へ搬送されるよう
になっている。前記パワーウォッシュ洗浄装置4は、樹
脂成形物2の表面の汚れを簡易的に洗浄除去するための
装置であって、図示しないポンプ及びノズル7等を備え
ている。そして、該ノズル7の先端からジェット状の水
が樹脂成形物2に対して吹き付けられるようになってい
る。
【0026】また、表面改質装置5は、オゾン発生器
8、ヒータ9、スプレーノズル10、ドレン11及び各
部材を連結するためのホース等を有している。オゾン発
生器8は、酸素をオゾンに変化させるとともに、水中に
オゾンを溶解することができるようになっている。ま
た、オゾン発生器8は、内部にポンプ(図示せず)を備
え、オゾン水溶液をヒータ9の方へ圧送することができ
るようになっている。さらに、ホース途中に設けられた
ヒータ9は、流動中のオゾン水溶液を所定の温度にまで
加温することができるようになっている。
【0027】併せて、ホース先端に設けられたスプレー
ノズル10は、ヒータ9側から送られてくる加温された
オゾン水溶液がスプレー状に樹脂成形物2に当たるよう
に配設されている。ここで、オゾン水溶液を接触させる
際のスプレー圧力をA(kPa)とし、前記オゾン水溶
液を噴射するためのスプレーノズル10の先端と樹脂成
形物2との距離をB(cm)としたとき、A・B-2
0.07を満足しているのが望ましい。
【0028】さらに、ドレン11は、前記コンベア6の
下方に設けられており、樹脂成形物2に接触した後のオ
ゾン水溶液を貯留するようになっている。このドレン1
1に溜まったオゾン水溶液は、パイプ12を介して一定
の速度で再度オゾン発生器8へと導入されるようになっ
ている。
【0029】なお、水の温度に対するオゾンの溶解度係
数の関係は、図3に示すような関係となっている。すな
わち、水の温度の上昇に伴ってオゾンは溶解されにくく
なり、温度の上昇とともに、オゾンは分解されやすくな
る。また、これに相反して、水の温度が高い方が反応速
度(表面改質速度)が増大することも一般的に知られて
いる。従って、オゾンの濃度ができるだけ高く、かつ、
オゾン水溶液の温度ができるだけ高くなるようヒータ9
による加温調節が、適宜になされるのが望ましい。具体
的には、上記温度は、65℃以上85℃以下であるのが
望ましい。
【0030】また、表面改質装置5にて表面改質された
樹脂成形物2は、乾燥装置13にて乾燥され、その後塗
装工程へ供されるようになっている。次に、上記の表面
改質装置5等を用いて、樹脂成形物2の表面を改質する
方法及び改質時の作用効果について説明する。
【0031】まず、金型により所定の形状に成形された
樹脂成形物2を作動中のコンベア6上にその意匠面を上
にした状態で載置し、図1の右方へと移動させてゆく。
そして、前記パワーウォッシュ洗浄装置4を用いて、前
記ノズル7の先端からジェット状の水を樹脂成形物2の
表面に対し吹き付ける。すると、樹脂成形物2の表面に
付着していたホコリ、ゴミ等の汚れが洗浄除去される。
但し、このとき、塗装の必要のない樹脂成形物2の非意
匠面は、コンベア6側に向いている。このため、非意匠
面は、さほど洗浄されない。
【0032】次に、樹脂成形物2を前記コンベア6によ
りさらに図の右方へと移動させ、表面改質装置5へと供
する。このとき、樹脂成形物2には、スプレー状のオゾ
ン水溶液が接触される。この接触に伴う水中に残存する
オゾンの酸化力により、樹脂成形物2の表面が酸化さ
れ、極性化される。このとき、樹脂成形物2がいかなる
形状(本実施例ではバンパーの形状)をなしていたとし
ても、オゾン水溶液は、樹脂成形物2の少なくとも意匠
面の全表面に対して確実に接触することが可能となる。
そのため、樹脂成形物2の各表面において、均一に酸化
反応が行われ、各箇所における反応斑が起きにくい。
【0033】そして、上記のように表面改質された樹脂
成形物2は、乾燥装置13により乾燥され、塗装工程へ
と供される。このように、本実施例では、樹脂成形物2
の表面にはオゾン水溶液がスプレー状に当たるため、樹
脂成形物2表面に当たる単位時間当たりのオゾンの量は
比較的多いものとなる。このため、全体としてオゾン水
溶液を接触させる時間が、オゾン水溶液中に樹脂成形物
を浸漬させていた場合に比べて極めて短時間で済む。従
って、短時間の改質処理でもって良好な塗膜接着性が得
られる(塗膜層3が強固に接合する)こととなる。その
結果、生産性の著しい向上を図ることができる。
【0034】また、樹脂成形物2表面にはオゾン水溶液
がスプレー状に当たるため、樹脂成形物2表面に形成さ
れるオゾン水溶液の境膜拡散層が比較的薄く形成され
る。この状態で、さらにオゾン水溶液がその境膜拡散層
を叩くようにして当たるため、当該拡散層が圧縮され
る。また、その圧縮により、拡散層が不連続に乱される
こととなる。その結果、オゾン分子が拡散相を通過して
樹脂成形物表面に到達する時間が短くなり、オゾン濃度
低下が抑えられ、より一層酸化反応が促進されることと
なる。従って、オゾン水溶液の接触時間のより一層の短
縮を図ることができる。
【0035】さらに、樹脂成形物をオゾン水溶液中に浸
漬させる場合と異なり、スプレー状のオゾン水溶液を樹
脂成形物2に当てればよいため、一連の工程においてオ
ゾン水溶液を接触させることが可能となる。すなわち、
パワーウォッシュ洗浄後、樹脂成形物を一旦コンベアか
ら取り外し、容器中に浸漬させる必要があった従来技術
とは異なり、コンベア6上において改質処理を施すこと
ができる。その結果、改質設備及び設置スペースの簡素
化並びにコストの低減を図ることができる。
【0036】併せて、本実施例では、容器中のオゾン水
溶液を加温する必要のあった従来技術とは異なり、オゾ
ン水溶液を樹脂成形物2に当てる直前にヒータ9で加温
するようにした。このため、高温状態が維持されている
期間中でのオゾンの分解を最小限に抑制することができ
る。従って、スプレー状のオソン水溶液中のオゾン濃度
を高めることができ、改質の効率を向上させることがで
きる。
【0037】加えて、本実施例では、樹脂成形物2に当
てる分の水溶液だけを加温すればよいため、加温のため
のエネルギーが比較的少なくて済む。その結果、エネル
ギーコストの低減を図ることができる。
【0038】〔実験〕次に、上記の作用効果を確認する
ために、表面改質の手法を種々変更させた場合における
改質結果を測定する実験を行ったので、以下に説明す
る。
【0039】(ポリオレフィン樹脂成形物の作製及び簡
易洗浄)まず、本実施例では、ポリオレフィン樹脂とし
てポリプロピレンのホモポリマーを用いた。そして、上
記ポリマーを「100×150×3mm」のサイズに成
形し、テストピースPとした。
【0040】また、上記テストピースPをパワーウォッ
シュ洗浄に供した。すなわち、水温「60℃」で、水圧
「100kPa」の水をテストピースP表面に当てて、
表面に付着したホコリ等の除去を行った。
【0041】(装置)次に、表面改質に際して用いる実
験装置について説明する。但し、ここで用いる装置とし
ては、あくまでも実験的なものである。さて、テストピ
ースPにオゾン水溶液を当てる手段(流水手段)とし
て、上記実施例で説明した表面改質装置5と同様のもの
を使用した。すなわち、図4に示すように、スプレーノ
ズル10からスプレー状にオゾン水溶液をテストピース
Pに当てるタイプのものを使用した。また、上記流水手
段以外の各手段については、次のものを使用した。すな
わち、同図に示すように、酸素ガスボンベ31にはオゾ
ン発生器32が連結され、ここで発生したオゾンがバル
ブ33及び逆流防止トラップ34を経て混合器35に供
給されるようになっている。また、この混合器35に
は、ポンプ36から圧送されたオゾン水溶液(水)が供
給され、当該混合器35中において、オゾンガスがオゾ
ン水溶液(水)に溶解されるようになっている。さら
に、オゾン水溶液及び一部のオゾンガスは、次なる混和
器37に導入されるとともに、ここでも上記溶解が継続
される。また、当該混和器37の周りに設けられたヒー
タ38により、オゾン水溶液が所定の温度にまで加温さ
れるようになっている。
【0042】上記混和器35を経たオゾン水溶液は過剰
ガス分離トラップ39内に導入される。そして、過剰の
オゾンガスはこの分離トラップ39からバルブ40及び
凝集トラップ41を経て活性炭フィルター42に導かれ
る。この活性炭フィルター42内において、オゾンガス
は酸素ガスに分解され、その酸素ガスはアスピレータ4
3から外部へ排出される。一方、前記過剰ガス分離トラ
ップ39を経たオゾン水溶液は、上記の流水手段を経
て、載置台44上のテストピースPに当たるようになっ
ている。そして、その後のオゾン水溶液は、載置台44
を収容するガラス槽45中に貯留され、その後再度前記
ポンプ36に導入される。そして、本実験では、上記の
一連の流れが繰り返し行われるようになっている。
【0043】なお、上記装置において、各流水手段の直
前におけるオゾン水溶液のオゾン濃度は「5〜6pp
m」であり、水素イオン濃度(pH)は「約5.5」で
あり、温度は「70℃」であり、流水量は「4.5リッ
トル/分(サンプル1〜4)、6.0リットル/分(サ
ンプル5〜8)」であった。また、処理時間は100秒
とした。一方、オゾン発生器32としては、無声放電方
式のもの(荏原実業製商品名:OZSD−5A)を使用
し、このときのオゾンガスの発生量は「3g/hr」で
あった。さらに、オゾン水溶液の濃度については、市販
のオゾン水濃度測定器(荏原実業製 商品名:検太郎)
を使用して測定した。また、比較のために、上記と同一
のオゾン水溶液中に浸漬する処理をも行った(サンプル
1)。
【0044】(実験内容)上記の装置を用いて適宜スプ
レーノズル10を変更してスプレー圧力Aを変更させる
とともに、スプレーノズル10の先端と樹脂成形物2と
の距離をBを変更させて改質処理を行うとともに、その
後、乾燥及び塗装を行った。なお、この塗装時の塗料と
してはウレタン塗料(関西ペイント製 商品名:SFX
200)を用いた。そして、塗料を「80℃」で乾燥さ
せて塗膜層を形成した後、当該塗膜層の剥離強度試験を
行った。この剥離強度の測定には引張試験器(テンシロ
ン)を用いて塗膜層のピーリング強度を測定した(但
し、引張角度は「180°」であり、引張速度は「50
mm/秒」である)。
【0045】(実験結果)以下の表1に、上記の各処理
条件を変更した場合のA・B-2の値と、テストピースP
の中心部分の塗膜層のピーリング強度を測定した結果を
示す。
【0046】
【表1】
【0047】上記結果からも明らかなように、本実施例
のようにオゾン水溶液をスプレー状に当てることによ
り、浸漬処理の場合に比べて極めて良好な塗膜接着性を
得ることができる。また、A・B-2の値を高くすること
により、換言すれば、スプレー圧力をできるだけ高く、
距離Bをできだけ短く設定することにより(特に、A・
-2の値を0.07以上とする)、上記塗膜接着性を著
しく高めることができる。
【0048】〔追加実験〕次に、オゾン水溶液の温度以
外は上記サンプル3と同一の条件下で処理し、その温度
を種々変更させた場合のピーリング強度(塗膜接着強
度)を測定した。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】上記表2からも明らかなように、オゾン水
溶液をスプレー状に当てる場合でも、その水溶液の温度
によって塗膜接着強度が異なることがわかる。すなわ
ち、オゾン水溶液の温度が85℃よりも高い場合には、
ほとんどオゾンが水に溶解せず、また、オゾン発生器か
ら基板に到達するまでの間の分解量も大きくなるため、
望ましい改質性がさほど得られない。また、オゾン水溶
液の温度が65℃よりも低い場合には、オゾン濃度を高
めることはできるものの、水溶液自体の反応性が乏しい
ものとなり、望ましい改質性がさほど得られない結果と
なった。
【0051】尚、本発明は上記実施例に限定されず、例
えば次の如く構成してもよい。 (1)前記実施例では、樹脂製品1は、樹脂成形物2及
びその表面に形成された塗膜層3により構成されていた
が、図5に示すように、樹脂成形物2と塗膜層3との間
にプライマー層47を介在させる構成であってもよい。
この場合には、均一に酸化、極性化された樹脂成形物2
の表面に対し、プライマー層47を強固に接合すること
が可能となる。その結果、特に厳選されたプライマー素
材を用いたり、焼付処理に特別な工夫を施す必要をなく
すことができる。また、塗膜層3を、そのプライマー層
47に対し、強固に接合することができる。
【0052】(2)前記実施例では、改質の前段階にお
いてパワーウォッシュ洗浄装置4を用いて簡易洗浄を行
う場合に具体化したが、かかる洗浄を省略してもよい。 (3)前記実施例では、ポリオレフィン樹脂成形物の素
材としてポリプロピレンを採用したが、素材がポリオレ
フィンを主成分としているものであれば、ポリエチレン
製の樹脂成形物や、その他の2次成分が配合されたもの
等いかなるものの表面改質に適用することもできること
はいうまでもない。また、その形状はバンパーの形状に
限られるものではなく、例えばグリル、ガーニッシュ、
モール、スポイラー、ランプ、マーク、エンブレム、ホ
イールカバー等の各種車両用外装品などをはじめ、いか
なる形状をなしていてもよい。
【0053】(4)前記実施例では、オゾン水溶液を樹
脂成形物2(テストピースP)に当てる直前段階におい
てヒータ9,38を設ける構成としたが、もっと以前の
段階に設ける構成としてもよい。従って、場合によって
は、前記実験例で示したガラス槽45中に設けてもよ
い。
【0054】(5)前記実施例では、樹脂成形物2(テ
ストピースP)の意匠面(上面)からオゾン水溶液をス
プレー状に当てる構成としたが、樹脂成形物2(テスト
ピースP)の表面全てが意匠面であるような場合には、
各面からオゾン水溶液を吹き付けるような構成としても
よい。
【0055】特許請求の範囲の各請求項に記載されない
ものであって、上記実施例から把握できる技術的思想に
ついて以下にその効果とともに記載する。 (a)請求項1〜3のポリオレフィン系樹脂成形物の表
面改質方法又は請求項4,5の表面塗装方法において、
スプレー状のオゾン水溶液を接触させる直前段階に、前
記オゾン水溶液を加温することを特徴とする。
【0056】このような構成とすることにより、オゾン
水溶液のオゾン濃度を高めることができ、もって表面改
質の効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を具体化した実施例における表面改質
装置等を示すシステム図である。
【図2】 一実施例における樹脂製品を示す断面図であ
る。
【図3】 一実施例における水の温度に対するオゾンの
溶解度係数の関係を示すグラフである。
【図4】 一実施例において、表面改質試験を行ったと
きの実験装置を示す模式図である。
【図5】 本発明を具体化した別の実施例における樹脂
製品を示す断面図である。
【図6】 従来技術における表面改質装置等を示すシス
テム図である。
【符号の説明】
2…樹脂成形物。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 7/12 B05D 1/02 C08J 7/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィン系樹脂成形物に対し、ス
    プレー状のオゾン水溶液を接触させて、前記ポリオレフ
    ィン系樹脂成形物の表面を酸化させることを特徴とする
    ポリオレフィン系樹脂成形物の表面改質方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂
    成形物の表面改質方法であって、前記オゾン水溶液を接
    触させる際のスプレー圧力をA(kPa)とし、前記オ
    ゾン水溶液を噴射するためのノズル先端と前記ポリオレ
    フィン系樹脂成形物との距離をB(cm)としたとき、
    A・B-2≧0.07を満足するようにしたことを特徴と
    するポリオレフィン系樹脂成形物の表面改質方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のポリオレフィン
    系樹脂成形物の表面改質方法であって、前記オゾン水溶
    液の温度は65℃以上85℃以下であることを特徴とす
    るポリオレフィン系樹脂成形物の表面改質方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の表面改
    質方法により表面の改質されたポリオレフィン系樹脂成
    形物の表面に直接塗膜層を形成することを特徴とするポ
    リオレフィン系樹脂成形物の表面塗装方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の表面改
    質方法により表面の改質されたポリオレフィン系樹脂成
    形物の表面に、プライマー層を形成し、同プライマー層
    上に塗膜層を形成することを特徴とするポリオレフィン
    系樹脂成形物の表面塗装方法。
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