JP3146589B2 - トリグリセライド組成物およびこれを含有してなるハードバター並びにそれらを用いたチョコレート類 - Google Patents

トリグリセライド組成物およびこれを含有してなるハードバター並びにそれらを用いたチョコレート類

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なトリグリセライ
ドに関し、更に詳しくはファットブルーム耐性向上剤と
して使用しうるトリグリセライド、およびこのトリグリ
セライドを含有してなるハードバター、並びに前記のト
リグリセライドやハードバターを用いて製造してなるフ
ァットブルーム耐性に優れたチョコレート類に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】今日、チョコレート類製品についての消
費者からの苦情の殆どは、いわゆるファットブルームに
関するものであり、この問題を解決するために従来か
ら、ファットブルームの発生を防止し、あるいは遅延さ
せるための数多くの研究がなされてきている。前記ファ
ットブルーム防止法としては、古くは乳脂、硬化ピーナ
ッツ油、テンパリング型ハードバター等の油脂自体が対
象とされてきたが、最近では蔗糖エステル、ポリグリセ
リン、ソルビタンエステル等の乳化剤の他、カカオ脂と
は異なった特定のトリグリセライド組成物の活用、更に
はチョコレートの乳化による製法等の製品が上市されて
いる。具体的には、例えばシア油、サル油およびパー
ム油の中融点画分の利用(特開平1−157341
号)、特定の非対称型トリグリセライドを利用する方
法(特開平2−138937号)、ベヘン酸を含むト
リグリセライドを利用する方法(特開昭63−5625
0号、特開昭63−240745号、特開平1−603
30号)、ポリグリセリン脂肪酸エステルを利用する
方法(特開昭60−130341号、特開昭61−18
1339号、特開昭62−104547号)、ベヘン
酸含有トリグリセライドと乳化剤との組み合わせを利用
する方法(特開昭62−118848号)、更にはエ
ルカ酸、トランス型脂肪酸を含むトリグリセライドと乳
化剤とを組み合わせる方法(特開平1−157342
号、特開平1−285153号)等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような
従来の各種防止方法では、ファットブルーム防止効果は
奏しても他の性質を損なう場合が多い。例えば、の耐
熱保型性を向上させる方法およびの非対称型トリグリ
セライドのみを用いる方法では口融け性の低下が避けら
れず、或いはテンパリング中の生地粘度を上昇させて作
業性を低下させるという問題があり、これを回避せんと
すればファットブルーム防止効果を不充分な範囲にとど
めざるを得ず、従って大幅なファットブルーム防止効果
は期待し難い。また、のベヘン酸含有の対称型トリグ
リセライドを用いる方法では、充分なファットブルーム
防止効果を得るためには、安定型結晶の微細粉末を使用
しなければならず、結晶型のコントールおよび粉砕技術
等を必要とする。更に、〜の如く乳化剤を添加する
方法や硬化油と組み合わせる方法では、非テンパリング
系チョコレートに限られたり、また、テンパリング系チ
ョコレートの場合、その効果はファットブルーム発生テ
ストの温度が30℃以下の低温である等、必ずしも充分と
はいえず、満足し得る状態とは言い難いのが実情であ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる実情
に鑑み、上記問題を解決するべく鋭意研究の結果、特定
のトリグリセライド組成物が顕著なファットブルーム耐
性向上効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0005】即ち、本発明の第1は、2-位にカプリル酸
(X)が結合し、1,3-位にパルミチン酸又はステアリン酸
(S)が結合する1,3-ジ(S)-2-モノ(X)型トリグリセライド
(SXS)と、1-位あるいは3-位にカプリル酸(X)が結合し、
2,3-位あるいは1,2-位にパルミチン酸又はステアリン酸
(S)が結合する1-モノ(X)ジ(S)型トリグリセライド(SSX)
との混合物を20重量%以上含有し、かつ(SXS)と(SSX)と
の比率が1:0.1以上2未満であるトリグリセライド組
成物を、本発明の第2は、前記1,3-ジ(S)-2-モノ(X)型
トリグリセライド(SXS)と前記1-モノ(X)ジ(S)型トリグ
リセライド(SSX)との混合物を20重量%以上60重量%未
満含有し、かつ(SXS)と(SSX)との比率が1:0.1以上0.5
未満であるトリグリセライド組成物を、そして本発明の
第3は、前記のようなトリグリセライド組成物が1,3-位
特異性のリパーゼを用い、エステル交換によって製造さ
れたトリグリセライド組成物であることを内容とするも
のである。また、本発明の第4は、上記のようなトリグ
リセライド組成物を加えることにより、ハードバター中
に1,3-ジ(S)-2-モノ(X)型トリグリセライド(SXS)を1.0
重量%以上20重量%未満含有してなるハードバターを内
容とするものであり、更に、本発明の第5は、前記のト
リグリセライド組成物、またはハードバターを加えるこ
とによりチョコレートの原料油分中に1,3-ジ(S)-2-モノ
(X)型トリグリセライド(SXS)を0.2重量%以上含有する
チョコレート類を内容とするものである。
【0006】上記本発明のトリグリセライド組成物をフ
ァットブルーム耐性向上剤として用いる場合、1,3-ジ
(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS)の飽和脂肪酸
(X)はカプリル酸である。この飽和脂肪酸(X)がC14よ
り長い長鎖になると、チョコレート類の製造時におい
て、しばしば問題となるテンパリング工程での粘度上昇
を来してデポジット性を悪化させる原因となるので好ま
しくない。また、飽和脂肪酸(S)はパルミチン酸又はス
テアリン酸である
【0007】この1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセラ
イド(SXS) と1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SS
X) との混合物を、更に他のトリグリセライドとの混合
物としてチョコレートに添加して用いる場合、全混合物
中の1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) と
1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) の含有総量
は20重量%以上、望ましくは40重量%以上あるように調
製される。この(SXS) 型トリグリセライドや(SSX) 型ト
リグリセライドの含有率が低いと、チョコレート中の1,
3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) や1-モノ
(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) の含有量を効率よ
く高めることができず、また、この1,3-ジ(S)-2-モノ
(X) 型トリグリセライド(SXS) や1-モノ(X) ジ(S) 型ト
リグリセライド(SSX) 以外の成分によってはチョコレー
ト類の品質が損なわれる場合がある。従って、チョコレ
ート製造時において、しばしば問題となるテンパリング
工程で粘度上昇を来してデポジット性を悪化させる原因
となる三飽和トリグリセライドと、チョコレート製品の
スナップ性を悪化させる原因となる低融点成分を溶剤分
別等により除去することが好ましい。具体的には、組成
物中の1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS)
や1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) 以外の三
飽和トリグリセライド(SSS) は20重量%以下、望ましく
は10重量%以下とし、分子中に不飽和またはC12以下の
短鎖飽和脂肪酸が2個以上結合したトリグリセライドの
合計は50重量%以下、好ましくは30重量%以下とするの
がよい。また、1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライ
ド(SXS) と1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX)
との比率は、1:0.1 以上2未満、好ましくは1:0.5
未満であることが必要であり、(SXS) と(SSX) との比率
がこれ以上になるとテンパリング工程で粘度上昇を来し
て著しく作業効率を低下させる。また、(SXS) と(SSX)
との比率が0.1 以下であると(SXS) を単独で用いる場合
と同様の効果しか得られない。
【0008】本発明にかかるトリグリセライド組成物中
のトリグリセライド(SXS) は、1,3-位と2-位の位置特異
性を必要とする関係から、これを得るには1,3-位特異性
を有するリパーゼによるエステル交換法を用いる事が好
ましい。即ち、例えば合成した中鎖脂肪酸トリグリセラ
イド等の短鎖脂肪酸のみからなるトリグリセライドや比
較的短鎖脂肪酸に富むヤシ油、パーム核油等の1モルに
対し、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、または
脂肪酸エステル2〜3モルを加えるか、同モル程度のト
リグリセライドを加え、1,3-位特異性を有するリパーゼ
でエステル交換を行い、必要に応じて該反応物から1,3-
ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) 以外の成分
を分別や分子蒸留で除去することにより製造することが
できる。
【0009】前記エステル交換反応は、1,3-位に選択的
に作用するリパーゼもしくはリパーゼ製剤を用いる方法
であっても、リパーゼを含有する乾燥菌体を用いる方法
(特開昭60−34189号)であってもよい。また、
1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) 以外の
成分の分別は、ヘキサンまたはアセトンのような有機溶
剤を用いて行う方法、または乾式分画法が挙げられ、ト
リグリセライド分子量にかなりの差異があるときは分子
蒸留等の方法が好適に使用できる。尚、本発明に使用す
る1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) は、
合成法によって得ることもできる。
【0010】上記のトリグリセライド(SXS) および(SS
X) をチョコレート類のファットブルーム耐性向上剤と
して使用する場合は、これを直接チョコレート原料組成
物中に含有させてもよいし、また、ハードバターに含有
させて使用してもよい。直接チョコレート原料組成物中
に含有させる場合、ファットブルーム耐性向上剤はチョ
コレート中の油脂全体に対してトリグリセライド(SXS)
が0.2 重量%以上含有するように使用される。この場
合、トリグリセライド(SXS) が0.2 重量%より少ないと
ファットブルーム防止効果は得られるものの、その効果
は少なく、また、含有率を高くする程ファットブルーム
防止効果は大きくなるものの、あまり含有量を高くし過
ぎるとテンパリング型チョコレート製造の場合は作業の
困難性が出てくる。
【0011】
【作用】前記トリグリセライド(SXS)を含有させること
によりチョコレート類の耐ファットブルーム効果が向上
する理由は、カカオ脂の主成分である1,3-飽和-2-オレ
イン酸型トリグリセライド(SOS)のオレイン酸残基(O)
が、短鎖のカプリル酸残基(X)に置換された1,3-ジ(S)-2
-モノ(X)型トリグリセライド(SXS)の特殊な分子構造に
よるものと推定される。即ち、複雑な結晶多形を呈する
(SOS)トリグリセライド分子間に、同じ対称型トリグリ
セライドである1,3-ジ(S)-2-モノ(X)型トリグリセライ
ド(SXS)が効果的に入り込み、β2型(V型)結晶生成
後の結晶転移速度を大幅に遅延せしめ、このことが油脂
結晶の粗大化を防ぎ、ファットブルーム防止に役立って
いると推定される。これに加えて、本発明では、前記対
称型の1,3-ジ(S)-2-モノ(X)型トリグリセライド(SXS)に
非対称型の1-モノ(X)ジ(S) 型トリグリセライド(SSX)を
含有させることにより、トリグリセライド(SXS)を単独
で用いる場合に較べて、ファットブルーム防止効果を更
に増長させてなるものである。
【0012】本発明者らの行った実験によれば、カカオ
バター(a) 、カカオバターに本発明の1,3-ジ(S)-2-モノ
(X) 型トリグリセライド(SXS) を5.0 %含有させた油脂
(b)、カカオバターに1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセラ
イド(SSX) を5.0 %含有させた油脂(c) 、前記1,3-ジ
(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) と1-モノ(X)
ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) とを1:0.5 の比率と
して総量で5.0 %含有させた油脂(d) 、前記1,3-ジ(S)-
2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) と1-モノ(X) ジ
(S) 型トリグリセライド(SSX) とを1:0.2 の比率とし
て総量で5.0 %含有させた油脂(e) 、および前記1,3-ジ
(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) と1-モノ(X)
ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) とを1:0.1 の比率と
して総量で5.0 %含有させた油脂(f) について、これら
を融解→サンプリング→0℃への急冷→20℃, 24時間保
存により油脂のβ結晶を生成せしめ、これを20℃,3.5
時間と、32℃,3.5 時間(昇降温に各30分)の交互繰り
返しを1サイクルとする条件下で、X線回折に現れるβ
1 型(VI型結晶)ピーク(3.65Å)のβ2 型(V型結
晶)ピーク(4.00Å)に対する強度比率およびその相対
比がどのように変化するかを調べたところ、表1の結果
を得た。
【0013】
【表1】
【0014】尚、本発明が対象とするチョコレート類
は、前記に特定する油分の他に、通常チョコレートを構
成する材料であるカカオマス、砂糖類、乳製品、乳化
剤、香料等を含有する。また、ハードバターは、所謂テ
ンパリング型のものであってもよいし、例えば高エライ
ジン型等の非テンパリング型のものであってもよい。
【0015】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例により何ら制限を受けるものではな
い。
【0016】実施例1 PC4P (1,3-ジパルミトイル -2-ブチレイト) の合成 (1) 1,3- ジパルミチンの合成 1,3-ジヒドロキシアセトン(50mmol)、パルミチン酸(105
mmol) および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP,100mmol)
を四塩化炭素(CCl4,1000ml) に溶解し、これにジシクロ
ヘキシルカルボジイミド(DCC,105mmol) を加えて室温で
2時間攪拌した。析出したジシクロヘキシルウレア(DCU
rea)を濾去し、濾液を減圧下で濃縮した後、メタノール
を加えて冷却放置した。次いで、析出した結晶を濾取
し、これにテトラヒドロフラン(THF,1000ml)、水(100m
l) およびNaBH4(1.5g) を加えて室温に30分間放置し
た。酢酸(10ml)を添加して反応を停止させた後、クロロ
ホルム(CHCl3,500ml) を加え、5%炭酸水素ナトリウム
水溶液、10%クエン酸水溶液、水の順に洗浄し、有機層
を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過した後、溶媒
を減圧下で留去して目的物を得た。以下に収率および純
度(常法によりキャピラリーガスクロマトグラフィーで
測定)を記す。 収 率 80.3%(40.2mmol) 純 度 98.7% (モノパルミチン 1.3%)
【0017】(2) PC4P の合成 n-酪酸(22mmol)、DMAP(20mmol)、DCC(22mmol) および前
記(1) で得られた1,3-ジパルミチン(20mmol)をCCl4(500
ml) に溶解し、室温で2時間攪拌した。難溶性のDCUrea
を濾去した後、メタノールを加えて冷却放置し、析出し
た結晶を濾取し、乾燥させて目的物を得た。 収 率 95.1%(19.0mmol) 純 度 98.9% (PC4C4 0.8 %、ジパルミチン 0.3
%)
【0018】実施例2 PC8P (1,3-ジパルミトイル-2- カプリレイト) の合成 実施例1の(1) で得られた1,3-ジパルミチン(20mmol)、
カプリル酸(22mmol)、DMAP(20mmol)、およびDCC(22mmo
l) を用い、実施例1の(2) と同様の操作を行い目的物
を得た。 収 率 97.2%(19.4mmol) 純 度 98.7% (PC8C8 1.1 %、ジパルミチン 0.2
%)
【0019】実施例3 カカオバター(対照)に対して、実施例1で得られたト
リグリセライド(g) を2.5 %、5.0 %、10.0%含有させ
た油脂(g-1,g-2,g-3) 、および実施例2で得られたトリ
グリセライド(h) を使って同様に調製した油脂(h-1,h-
2,h-3) について、X線回折測定を行った。測定は、X
線回折測定用ガラスセル上にサンプリングした試料を0
℃で30分間急冷し、20℃に24時間保存した後、これを20
℃,3.5 時間と、32℃,3.5 時間(昇降温に各30分)の
交互繰り返しを1サイクルとする周期的な温度変化を自
動制御できるエアーバスを使って、20℃で保持している
ときに実施した。X線回折に現れるβ1 型(VI型結晶)
ピーク(3.65Å)とβ2 型(V型結晶)ピーク(4.00
Å)から結晶の転移度(=3.65Åの強度/4.00Åの強
度)、およびその相対比を求めた。表2にその結果を示
した。
【0020】
【表2】
【0021】表2の結果から明らかなように、実施例
1、2で得られたトリグリセライドは、カカオバターに
対する転移抑制効果を有する。
【0022】実施例4 トリカプリル(1mol)とパルミチン酸(6mol)に、1,3-位特
異性を有するリパーゼを作用させてエステル交換油を
得、ヘキサンを用いて分別し、中融点画分を得た。この
画分のトリグリセライド組成は、(PXX)(ただし、P はパ
ルミチン酸残基、X はカプリル酸残基)8.6%、(PXP) 8
6.2%、(XXX) 5.2 %であった。尚、トリグリセライド
組成の分析法は下記のとおりである。
【0023】トリグリセライド組成分析 <ガスクロマトグラフィー> ヒューレットパッカード社製 HP5890 SERISE II <キャピラリーカラム> J&W Inc. 25μm DB-1 <分析条件> Initial Temp. 100[℃] Rate 10[℃/min] Final Temp. 300[℃] Injection Temp. 320[℃] Derector Temp. 320[℃] Carrier gas (N2) 25[KPa ] H2 gas 30[ml/min] 10Air 400[ml/min] <試 料> 濃度 2.5[ mg/ml] 注入量 1.0[μl ]
【0024】実施例5 基質をトリカプリルからトリラウリンに変えた他は、実
施例4と同様にしてエステル交換し、中融点画分を得
た。この画分の組成は、(PXX)(ただし、X はラウリン酸
残基)9.6%、(PXP) 83.4%、(XXX) 7.0 %であった。
【0025】実施例6 脂肪酸をパルミチン酸からステアリン酸に変えた他は実
施例4と同様にしてエステル交換し、中融点画分を得
た。この画分の組成は、(StXX)( ただし、Stはステアリ
ン酸残基、X はカプリル酸残基)8.7%、(StXSt) 87.0
%、(XXX) 4.3 %であった。
【0026】実施例7 ヤシ油1部とステアリン酸8部を使用する他は実施例4
と同様にしてエステル交換をし、中融点画分を得た。こ
の画分の2-位脂肪酸組成およびトリグリセライド組成は
表3のとおりであった。2-位脂肪酸組成は、1,3-位特異
性を有するリパーゼで処理した後、反応物から高速液体
クロマトグラフィーより2-モノグリを分取し、キャピュ
ラリーガスクロマトグラフィーで分析した。
【0027】
【表3】
【0028】比較例1 トリパルミチン(2mol)とカプリル酸(1mol)に、1,3-位特
異性を有するリパーゼを作用させてエステル交換油を
得、ヘキサンを用いて分別し、中融点画分を得た。この
画分のトリグリセライド組成は(PPX)(ただし、P はパル
ミチン酸残基、Xはカプリル酸残基) 90.2%、(XPX) 2.4
%、(PPP) 7.4 %であった。
【0029】比較例2 基質をトリパルミチンからトリステアリンに変えた他
は、比較例1と同様にしてエステル交換し、分別して中
融点画分を得た。この画分の組成は、(StStX)(ただし、
Stはステアリン酸残基、X はカプリル酸残基)91.4 %、
(XStX) 3.8%、 (StStSt) 4.8 %であった。
【0030】実施例8 実施例6で得られたトリグリセライド混合物70部と比較
例2で得られたトリグリセライド混合物30部とを混合し
て、1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) と
1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) との総含有
量が88%で、(SXS) と(SSX) との比率(重量比)が1:
0.45の混合物を得た。
【0031】実施例9 実施例6で得られたトリグリセライド混合物90部と比較
例2で得られたトリグリセライド混合物10部とを混合し
て、1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) と
1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX) との総含有
量が87%で、(SXS) と(SSX) との比率(重量比)が1:
0.12の混合物を得た。
【0032】実施例10 実施例4〜9で得られたファットブルーム耐性向上剤を
使って、表4、表5に示すチョコレート配分と添加量に
よってチョコレート組成物を得、その性能についてテス
トした。同時に向上剤を添加しない場合(対照)および
比較例1,比較例2を使った場合について上記と同様に
チョコレート組成物を得、同様の性能テストを実施し
た。チョコレートの作成方法は通常実施される製造方法
により、ミキシング、ロールがけ、コンチング、テンパ
リングをして成型したモールドチョコレートを20℃で10
日間エージングした後、ファットブルーム発生テストを
実施した。作業の状況は、チョコレート生地をケトルテ
ンパリングし、デポジットする粘性と10℃、30分間のク
ーリングにおける離型性を観察した。ファットブルーム
発生テストは、エージングしたモールドチョコレートサ
ンプルを20℃, 3.5 時間と、32℃, 3.5 時間(昇降温に
各30分)の交互繰り返しを1サイクルとする条件下の20
℃で保持している時のファットブルーム発生状況を観察
した。結果を表6および表7に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】表6の結果から明らかなように、チョコレ
ート油分中の(SXS) 含有量が高い程、ファットブルーム
耐性向上効果が高かった。また、実施例4(No.3〜No.
5) と比較例1(No.15 〜No.17)の対比では、脂肪酸組
成上はほとんど同じであるにもかかわらず、非対称型ト
リグリセライドである比較例1の耐性向上効果は低く、
また、No.17 ではテンパリング時に粘度上昇を来した。
一方、実施例4(No.5)ではこのような作業上の問題点
は全くなかった。そして、表7の結果から明らかなよう
に、(SXS) を単独で使用するよりも、(SXS) と(SSX) と
をある一定の比率で使用するほうがファットブルーム防
止効果が大きく、作業性も改良される傾向にある。
【0038】実施例11 表4に示したチョコレート配合(対照)のカカオバター
のかわりに、カカオバター10重量%を市販のテンパー型
ハードバター(鐘淵化学工業株式会社製造「ベルコ♯2
0」)に実施例6のファットブルーム耐性向上剤を4重
量%含有させたハードバターで置き換え、実施例10と同
様にしてチョコレート組成物を得た。このもののファッ
トブルーム耐性は前記条件で、35サイクルと優れてい
た。
【0039】実施例12 カカオマス(18部)、粉糖(45部)、全脂粉乳(15
部)、および市販のノーテンパー型ハードバター(鐘淵
化学工業株式会社製造「KCF 500M」)に実施例6のファ
ットブルーム耐性向上剤を8重量%含有させたハードバ
ター(22部)を配合してチョコレート組成物を得た。チ
ョコレートは、ミキシング、ロールがけ、コンチングを
して成型した後、20℃で10日間エージングして製造し
た。このものはファットブルーム耐性に優れていた。
【0040】実施例13 表4に示したチョコレート配合(対照)のカカオバター
のかわりに、カカオバターの10%を市販の耐熱テンパー
型ハードバター(鐘淵化学工業株式会社製造「ベルコ♯
48」)に実施例6のファットブルーム耐性向上剤を2重
量%含有させたハードバターで置き換え、実施例10と同
様にして、チョコレート組成物を得た。このもののファ
ットブルーム耐性は前記条件で51サイクルと優れてい
た。
【0041】実施例14 表5に示したチョコレート配合(対照)のカカオバター
のかわりに、カカオバターの20%を市販のテンパー型ハ
ードバター(鐘淵化学工業株式会社製造「ベルコ♯2
0」)に実施例9のファットブルーム耐性向上剤を2重
量%含有させたハードバターで置き換え、実施例10と同
様にして、チョコレート組成物を得た。このもののファ
ットブルーム耐性は前記条件で62サイクルと優れてい
た。
【0042】実施例15 表5に示したチョコレート配合(対照)のカカオバター
のかわりに、カカオバターの10重量%を市販の耐熱テン
パー型ハードバター(鐘淵化学工業株式会社製造「ベル
コ♯48」)に実施例8のファットブルーム耐性向上剤を
2重量%含有させたハードバターで置き換え、実施例10
と同様にして、チョコレート組成物を得た。このものの
ファットブルーム耐性は前記条件で95サイクルと優れて
いた。
【0043】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のトリグリセ
ライド組成物、およびそれを配合してなるハードバター
は、口融け性や作業性を損なうことなく、ファットブル
ームに対して著しい防止効果を有し、チョコレート類の
製造上極めて有用である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2-位にカプリル酸(X)が結合し、1,3-位
    パルミチン酸又はステアリン酸(S)が結合する1,3-ジ
    (S)-2-モノ(X)型トリグリセライド(SXS)と、1-位あるい
    は3-位にカプリル酸(X)が結合し、2,3-位あるいは1,2-
    位にパルミチン酸又はステアリン酸(S)が結合する1-モ
    ノ(X)ジ(S)型トリグリセライド(SSX)との混合物を20重
    量%以上含有し、かつ前記(SXS)と(SSX)との重量比率が
    1:0.1以上2未満であることを特徴とするトリグリセ
    ライド組成物。
  2. 【請求項2】 1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライ
    ド(SXS) と1-モノ(X) ジ(S) 型トリグリセライド(SSX)
    との混合物を20重量%以上60重量%未満含有し、かつ前
    記(SXS) と(SSX) との重量比率が1:0.1 以上0.5 未満
    であることを特徴とする請求項1記載のトリグリセライ
    ド組成物。
  3. 【請求項3】 1,3-位特異性のリパーゼを用い、エステ
    ル交換によって製造された請求項1または請求項2記載
    のトリグリセライド組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2記載のトリグリ
    セライド組成物を加えることにより、ハードバター中に
    1,3-ジ(S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) を1.0
    重量%以上20重量%未満含有することを特徴とするハー
    ドバター。
  5. 【請求項5】 請求項1または請求項2記載のトリグリ
    セライド組成物、または請求項4記載のハードバターを
    加えることによりチョコレートの原料油分中に1,3-ジ
    (S)-2-モノ(X) 型トリグリセライド(SXS) を0.2 重量%
    以上含有することを特徴とするチョコレート類。
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