JP3282214B2 - 油脂のグレイニング防止方法 - Google Patents
油脂のグレイニング防止方法Info
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Description
防止する方法に関するものである。
はサンドクリームなどは、一般に常温で固状を呈する程
度の融点を有し、油脂分としてカカオ脂、パーム油など
の天然植物脂またはそれらの分別油、あるいは各種液状
油の硬化、分別油が使用されている。これらの製品は、
通常、冷却工程を経て製造されるが、冷却条件、特に冷
却効率の悪い徐冷却になる場合、または常温下で固化さ
せるような条件になる場合には、該製品中に含まれる油
脂の結晶が粗大化を起こし、結果として全体あるいは部
分的に粒状、しわ状、白く粉をふいたような状態、また
はひび割れを起こし、いわゆるグレイニング状の組織と
なる。また、冷却効率のよい急冷却の条件下において
も、経時変化によりグレイニング状態となる場合があ
る。これらのグレインは、大きいものでは径5ミリメー
トル以上の粒まで成長することが認められ、結果的に製
品の滑らかさが失われ、ぼそぼそした状態になり、ま
た、食べた場合にはざらざらした食感になって商品価値
を著しく損なう。
は、カカオ脂やパーム油等のように1,3-飽和-2- オレイ
ン酸型トリグリセイド(以下、「SOS型TG」と略記
する)を多く含む油脂を使用した場合に顕著に現れる。
これは、SOS型TGの結晶が、冷却固化あるいは経時
変化によって粗大化したものであり、SOS型TGのも
つ複雑な結晶多形に起因する。一般に、SOS型TG
は、テンパリング操作により結晶型を整えることが必要
とされており、常温で硬く、かつシャープな口溶け性が
得られる反面、その結晶コントロールが難しい。したが
って、例えば非テンパリング型の可塑性範囲の広い油脂
を使用したチョコレートなどの場合、最近の高級化指向
に応えるため、カカオ脂やカカオマスを多量に使用して
チョコレート風味を増そうとすると、どうしてもグレイ
ンが発生する。さらに、よりソフトな、例えば常温でペ
ースト状のチョコレートなどでは結晶の自由度が増大す
るために、結晶の粗大化はより起こり易くなり、必然的
にカカオ分の使用量は限られてくる。
にパーム油またはその分別油を用いる場合、あるいはフ
ライ油として用いる場合にも、経時変化により粗大結
晶、いわゆるブツが発生するため、安価で安定供給され
るパーム油を有効利用できていないのが現状である。
グ防止剤としては、構成脂肪酸としてベヘン酸を含む油
脂組成物(特開昭58−198245号)や、ショ糖脂
肪酸エステルを主剤とする防止剤(特開平1−2522
51号)が知られている。しかしながら、これらの技術
をもってしても、グレイニングの防止は充分と言い難い
のが現状である。
センタークリーム、またはサンドクリーム、あるいはマ
ーガリン、ショートニング、またはフライ油などにおけ
る、SOS型TGの結晶の粗大化に起因するグレイニン
グを効果的に防止しうる方法を提供せんとするものであ
る。
レイニングの問題を解決すべく鋭意研究の結果、特定の
トリグリセリドが顕著なグレイニング防止効果を有する
ことを見出し、本発明を完成した。
て、構成脂肪酸の1つが炭素数12以下の飽和脂肪酸
(B)であり、残る2つの脂肪酸が炭素数16以上の飽
和脂肪酸(A)であるジ-A-モノBトリグリセリド(A2
B)を用い、これを、油脂組成物中で、結晶が粗大化し
てグレイニングの原因となるSOS型TGに対して、4
重量%以上含有させることを内容とする。
B)における飽和脂肪酸(B)としては、炭素数12以
下の飽和脂肪酸であることを要し、望ましくは炭素数4
以上の飽和脂肪酸がよい。この場合、飽和脂肪酸(B)
が炭素数14以上の長鎖になると、製品の口溶け性を悪
化させる原因となるので好ましくない。次に、飽和脂肪
酸(A)としては、炭素数16以上の飽和脂肪酸であれ
ば特に限定されないが、望ましくは炭素数16または1
8がよい。また、本発明のグレイニング防止剤としての
トリグリセリド(A 2 B)は、非対称型トリグリセリド
(AAB)でも、また、対称型トリグリセリド(AB
A)と(AAB)との混合物でもよい。
は、天然油脂を分別、濃縮して得ることもできるが、エ
ステル交換を基本とする次に述べるような方法により効
率的に製造することができる。即ち、A成分として水素
添加により可及的沃素価(I.V.)を低くした油脂、
いわゆる極度硬化油、あるいは油脂を分別して得られる
高融点画分(いずれもI.V.=10以下が望ましい)
を原料の一つとし、これに飽和脂肪酸(B)に富む油
脂、脂肪酸もしくは脂肪酸の低級アルコールエステルと
エステル交換してもよいし、その逆、即ち、飽和脂肪酸
(B)に富む油脂と飽和脂肪酸(A)に富む脂肪酸もし
くは脂肪酸の低級アルコールエステルとの反応により製
造することもできる。この反応物はそのまま用いてもよ
いが、望ましくは必要に応じて分別や分子蒸留によりト
リグリセリド(A2 B)成分を濃縮して用いるほうがよ
い。
に必要としないため、ナトリウムメチラートなどのアル
カリ金属系触媒を用いる反応であっても、リパーゼを用
いる酵素的な反応であってもよい。また、分別は、ヘキ
サンまたはアセトン等の有機溶剤を用いる方法、界面活
性剤水溶液を用いる方法、または乾式画方法が挙げられ
るが、分子量にかなりの差異がある場合には分子蒸留等
の方法が好適に使用できる。
パーム油、シア脂、サル脂、コクム脂、チャイニーズタ
ロー脂等の天然植物性油脂またはそれらの分別油、ある
いはリパーゼによって得られるエステル交換油であって
もよく、製法その他によって特に限定されるものではな
い。
グレイニング防止効果の理由は、粗大結晶の原因となる
SOS型TGの結晶転移を著しく抑制することにある。
即ち、粗大結晶となるβ2型(V型)への転移を大幅に
遅延させ、結果としてグレインの発生しない滑らかで口
溶け感の優れた製品を得ることができるのである。本発
明者らの行った実験によれば、通常のカカオバター
(a)と、これに本発明のトリグリセリドを添加してト
リグリセリド(A2B)を10.0重量%含有させた油
脂(b)について、これを融解→0℃への急冷→20℃
での保存による経時変化を観察したところ、表1の結果
を得た。更に、この時の結晶型をX線回折によって調べ
た結果をあわせて表1に表した。
係るトリグリセリド(A2B)を添加しないカカオバタ
ーがV型へ結晶転移しているのに対して、トリグリセリ
ド(A2B)を添加したものにおいてはV型への結晶転
移が認められず、またブツの発生もない。
発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものでは
ない。
V.=0.48)3部(重量部;以下同じ)と炭素数8
の中鎖トリグリセリド(MCT;日本油脂製 パナセー
ト800)1部を、常法に従ってナトリウムメチラート
を触媒とするエステル交換反応を行い、この反応油をヘ
キサンを用いて分別し、中融点画分を得た。この画分の
トリグリセリド組成は、A3 ・・・4.3%、A2 B・
・・81.5%、AB 2+B3 ・・・14.2%であっ
た。
様の操作でエステル交換し、中融点画分を得た。この画
分のトリグリセリド組成は、A3 ・・・4.6%、A2
B・・・80.4%、AB 2+B3 ・・・15.0%で
あった。
し、この油脂をハイオレイックサフラワー油の極度硬化
油に代えて使用する以外は、実施例1と同様にエステル
交換し、中融点画分を得た。この画分のトリグリセリド
組成は、A3 ・・・5.4%、A2 B・・・79.2
%、AB 2+B3 ・・・15.4%であった。
2 B)よりなるグレイニング防止剤を使って、表2に示
す配合によりソフトチョコレートを作成し、その性能に
ついてテストした。同時に防止剤を添加しない場合(対
照)として、市販のノーテンパリング型ハードバター
(鐘淵化学工業(株)製造「KCF 500」)を使っ
た場合について上記と同様にチョコレートを作成し、同
様の性能テストを実施した。尚、表中の液体油は、市販
の高安定性液状油(鐘淵化学工業(株)製造「BC
N」)を使用した。
施される製造方法によりミキシング、ロールがけ、コン
チングをし、5℃で30分冷却した後、各温度における
グレイニングの発生状況を観察し、結果を表3に示し
た。また、室温で徐冷却→20℃保存の条件についても
同様の評価を行ったので、その結果もあわせて表3に示
す。
トリグリセライド(SOS型TG)に対するグレイニン
グ防止剤(トリグリセリド(A2 B))の含量が高い程
グレイニング防止効果が高く、含量の低いNo.5では効果
が不十分であり、部分的ではあるがグレインが発生し
た。
V.=0.48)とカプリル酸の等重量混合物に、1,3-
位特異性を有するリパーゼを作用させてエステル交換油
を得、ヘキサンを用いて分別し中融点画分を得た。この
画分のトリグリセリド組成は、A3・・・5.0%、A2
B(AAB)・・・87.7%、AB2+B3・・・7.
3%であった。
(A2B)をカカオバターに20重量%添加して、これ
を融解→0℃への急冷→20℃での保存によるグレイニ
ングの状況と結晶型の経日変化を観察した。その結果、
30日経過時点でいずれの場合にも、グレインの発生お
よびV型への結晶転移は認められず、優れたグレイニン
グ防止効果を示した。したがって、この結果から明らか
なように、グレイニング防止剤(A2B)の構造として
は、非対称型トリグリセリド(AAB)、あるいは対称
型トリグリセリド(ABA)と非対称型トリグリセリド
(AAB)の混合物のいずれでもよく、構成する脂肪酸
の組み合わせが重要である。
℃)30部、コーン油20部、および実施例1のグレイ
ニング防止剤(A2B)5部を60℃に加熱し、ケミス
ターラーで攪拌しながら混合した後、これにポリグリセ
リン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR;坂本薬品
工業(株)製:SYグリスター・CR−500)を2.
0重量%添加溶解した。 <マーガリンの作成> 調製された油相部に水16.5重量%を添加し、ケミス
ターラーで攪拌する。これを、セラミック製ロールミル
を用いて冷却、捏和してマーガリンを作成した。このマ
ーガリンは、テンパリング中、および保存中(3ケ月)
でもブツの発生はなく、非常に滑らかな製品であった。
成した後、ホバートミキサーを用い、40℃でA配合と
1:1で混合することによってチーズクリームを作成し
た。このクリームは非常に口溶け感に優れ、かつ保存中
(3ケ月)の経日変化によるグレインの発生もなかっ
た。
ニング防止剤は、カカオ脂、パーム脂に代表されるSO
S型トリグリセライドを含む油脂に対して、著しいグレ
イニング防止効果を発揮し、これらを用いてなる油脂製
品全般の製造上、極めて有用である。
Claims (1)
- 【請求項1】 1,3-位に飽和脂肪酸(S)が結合し、2-
位にオレイン酸(O)が結合したトリグリセリド(SO
S)を含む油脂組成物中に、構成脂肪酸の1つが炭素数
12以下の飽和脂肪酸(B)であり、残る2つの脂肪酸
が炭素数16以上の飽和脂肪酸(A)であるトリグリセ
リド(A2B)であって、非対称型のトリグリセリド
(AAB)、又は、ランダムエステル交換することによ
り得られる、対称型トリグリセリド(ABA)と非対称
型トリグリセリド(AAB)との混合物を、前記トリグ
リセリド(SOS)に対して4重量%以上の割合で含有
させることにより、前記トリグリセリド(SOS)の結
晶構造のV型への転移を抑制することを特徴とする油脂
のグレイニング防止方法。
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