JP3138414B2 - 時計用歯車 - Google Patents

時計用歯車

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JP3138414B2 JP07272156A JP27215695A JP3138414B2 JP 3138414 B2 JP3138414 B2 JP 3138414B2 JP 07272156 A JP07272156 A JP 07272156A JP 27215695 A JP27215695 A JP 27215695A JP 3138414 B2 JP3138414 B2 JP 3138414B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、時計体における輪
列を形成する歯車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】今日、時計体のムーブメントは、小型軽
量とされ、適宜に金属製歯車と合成樹脂製歯車とが組み
合わされて製造されている。このムーブメントの中心と
なる輪列機構は、例えば図9に示すように、駆動用モー
タ10のロータ軸11に取り付けられるロータカナ13を中間
歯車である5番車21と噛合させ、5番車21と同軸一体と
された5番カナ23を秒針車である4番車25に噛合させ、
4番車25と同軸一体とされた4番カナ27を中間歯車であ
る3番車31に、3番車31と同軸一体とされた3番カナ33
を分針車である2番車35に、2番車35と同軸一体とされ
た2番カナ37を日の裏車41の大径部に、日の裏車41の小
径部を時針車である1番車45に噛合させ、日の裏車41を
別途、指針修正歯車63に噛合させるようにして、適宜、
前板51や中板55及び上板57により位置決めを行って固定
している。
【0003】そして、時計用の歯車としては、このよう
な大径の歯車及びカナと称されて前記大径の歯車と同軸
とされる小径の歯車、更に、大径の歯車や小径の歯車及
び各歯車の歯車軸とは、適宜合成樹脂により一体成形と
して構成されるものもあれば、金属製の歯車を合成樹脂
製や金属製の歯車軸に嵌合するものもある。又、指針修
正ツマミ61により分針や時針を強制的に早送り又は早戻
しして表示時刻の修正を行うときは、図9に示したよう
に、指針修正歯車63により日の裏車41を回転させて指針
修正を行うものが多く、このとき、日の裏車41の小径部
と噛合する1番車45(時針車)と時針軸49とは一体に回
転し、日の裏車41の大径部と噛合する2番カナ37と分針
軸39も一体に回転するも、3番カナ33と噛合する2番車
35(分針車)は分針軸39に対してスリップし、秒針や駆
動用モータ10は早送り回転や逆回転を行わない構造とし
ている。
【0004】このように、通常は分針軸39と一体に回転
し、大きな負荷トルクが加わった場合に分針軸39に対し
てスリップを生じさせる2番車35(分針車)は、その軸
体である分針軸39と異なる材質とし、分針軸39及び2番
カナ37は合成樹脂により一体として成形するも、2番車
35は金属製とされることが多く、この2番車35とされる
歯車は小型の平歯車であるため、量産性に優れた打ち抜
き加工によって製造されることが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、時計用
ムーブメントに組み込まれる各歯車は、合成樹脂製のも
のと金属製のものとが組み合わされて用いられ、金属製
の時計用平歯車は、打ち抜き加工により金属薄板から歯
部及び軸穴を有する歯車形状として打ち抜かれるものが
多い。
【0006】ところで、打ち抜き加工により製造された
平歯車は、図10に示すように、軸穴75の周囲や周囲の
歯部73に僅かなバリ79を抜き裏面に突出させていること
がある。そして、このような金属製歯車を時計用ムーブ
メントに組み込んで輪列を形成する際、図11に示すよ
うに、前板51及び中板55により1番車45である時針車や
2番車35である分針車を適宜固定し、この金属製の平歯
車70である2番車35のバリ79が突出している抜き裏面の
方向からこの平歯車70に噛合させる例えば3番カナ33を
所定位置に挿入固定しようとすると、合成樹脂により一
体成形された3番車31及び3番カナ33の内、2番車35と
噛合する3番カナ33を2番車35のバリ79によって傷付け
ることがあった。
【0007】更に、このように噛合する歯部に傷が生じ
ると、駆動用モータへの負荷が大きくなり、時計体とし
て使用するときに指針の動きが止まってしまうなどの弊
害が生じる場合があった。本発明は、このような弊害を
無くし、輪列の組み立てに際し、抜き裏面に生じている
バリにより噛合する歯車に傷を付けないようにして容易
に組み立てることができる時計用の歯車を提供するもの
である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、金属薄板から
歯部及び軸穴を形成するように打ち抜き加工により製造
され、周囲に歯部を有し且つ中央に軸穴を有する平歯車
において、本体部側面に穴部と合わせて透孔を形成する
ように打ち抜いた平歯車とし、且つ、この透孔は、透孔
と軸穴の中心を通る直線に対して非対称形状とするか又
は複数の透孔を軸穴の中心を通る直線に対して非対称に
配置した分針車とするものである。
【0009】このように、歯車本体の側面に透孔を有
し、軸穴中心を通る直線に対して非対称として透孔を有
している故、この透孔の配置や形状により歯車の裏表を
容易に識別することができる。そして、この軸穴中心を
通る直線に対して非対称の透孔を有する金属製の平歯車
を歯車軸の端部近くに有し、金属製平歯車の抜き裏面の
方向に2番カナを位置させて分針軸とする歯車軸を大き
く突出させた時計用歯車とするものである。
【0010】従って、この時計用歯車は、分針車である
金属製平歯車に非対称形状の透孔を有する故、この透孔
により平歯車の裏表を識別して抜き裏面を一定方向とし
て歯車軸と組み合わせることが容易であり、抜き裏面に
2番カナを位置させて抜き裏面の方向を歯車軸の突出方
向としておけば、この歯車軸により当該時計用歯車を所
定位置に固定し、この金属製平歯車と噛合する歯車を更
に後から固定する際、バリの突出していない方向から他
の歯車を組み合わせることができることとなり、輪列を
組み立てるに際して歯車を傷付けることを防止すること
ができる。
【0011】又、請求項2に記載するように、金属製平
歯車の本体部に形成する透孔の形状は、三角形又は台形
や曲線形状とすることがある。この場合は、これら透孔
の形状は、複数でも又は1つでも容易に軸穴中心と透孔
とを結ぶ直線に対して非対称形状とすることができ、透
孔の配置や大きさの設定及び設計が容易にして裏表の識
別が容易な歯車とすることができるものである。
【0012】そして、請求項3に記載するように、平歯
車本体部に大きさ又は外形の異なる2個の透孔を軸穴中
心から180度の位置を外して配置することもある。こ
の場合は、大きさ又は形状により2つの透孔を識別し、
一方の透孔を基準として他方の透孔の位置により容易に
平歯車の裏表を見分けることができる。更に、請求項4
に記載するように、複数の透孔を不等間隔として打ち抜
き形成し、軸穴中心を通る何れの直線に対しても非対称
形状として透孔を設けることもある。
【0013】この場合も、透孔の配置により容易に平歯
車の裏表を見分けることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係る時計用歯車の第1の
実施の形態は、図1に示すように、本体部71の周囲に歯
部73を有すると共に本体部71の中央に軸穴75を有する形
状に打ち抜かれた金属製の平歯車70である。そして、こ
の平歯車70の本体部71における側面には、図1に示した
ように、三角形の透孔77を有するものであり、この透孔
77と軸穴75の中心とを結ぶ直線Aに対してこの透孔77を
非対称の形状としているものである。
【0015】又、他の実施の形態としては、図2に示す
ように、台形の透孔77を本体部71の側面に有するもので
あり、この透孔77も、透孔77と軸穴75の中心とを結ぶ直
線Aに対してこの透孔77を非対称の形状としているもの
である。このような時計用の平歯車70は、軸穴75の形成
と同時に透孔77を打ち抜くことにより製造が極めて容易
であるのみでなく、その透孔77の形状により歯車本体部
71の裏表を容易に識別することができ、バリ79の突出方
向である抜き裏面を分針軸39の方向として、図3に示す
ように、2番カナ37の方向に抜き裏面を向けて組み立て
た分針車35とすることが極めて容易且つ確実にできるも
のである。
【0016】即ち、図1及び図2に示した形状の平歯車
70を金属板から打ち抜いて形成するに際し、本体部71の
周囲に形成する歯部73や中央に形成する軸穴75とこの透
孔77とを一度に形成し得る形状の金型パンチを用いれ
ば、一工程の打ち抜き作業により容易に製造することが
できる。そして、透孔77の形状を常に一定とするように
透孔77の先端部分や短辺などを歯車の一定円周方向に向
けて分針軸39の端部又は端部近くに嵌合させると、常に
バリ79の突出する方向を一定方向として平歯車70を分針
軸39や2番カナ35と一体とすることにより、時計用の2
番車35とすることができる。
【0017】又、この平歯車70を用いて2番車35を分針
軸39と一体とする場合において、この平歯車70を金型内
に固定してインサート成形を行うときは、この歯車本体
部71に形成した透孔77により金型内への固定位置合わせ
を行うようにすれば、常に一定の方向にバリ79を突出さ
せる方向としてのみこの平歯車70を金型内に固定するこ
とができ、バリ79の突出面を一定方向として分針軸39や
2番カナ35とスリップ可能な分針車として形成すること
ができる。
【0018】このように、バリ79の突出面である抜き裏
面を分針軸39の大きく突出する方向とした2番車35は、
ムーブメントに組み込むに際し、前板51の所要位置に時
針軸49を合わせて時針車とする1番車45を固定し、日の
裏車41の小径部を1番車45と噛合させるように配置し、
分針軸39を時針軸49に挿入して分針車とする2番車35を
固定して日の裏車41の小径部を1番車45に、日の裏車41
の大径部を2番カナ37に噛合させ、適宜、指針修正歯車
63も所定位置として中板55で1番車45及び2番車35など
の位置を確実に固定し、然る後、適宜秒針車となる4番
車25を固定して2番車35と噛合する3番カナ33及び3番
カナ33と一体の3番車31を所定位置に固定するように差
し込むと、3番カナ33を分針車35に対してバリ79の突出
していない方向から差し込むようにして3番カナ33と分
針車35とを噛合させることができる。
【0019】又、打ち抜き製造される平歯車70の本体部
71に設ける透孔77は、図4に示すように、透孔77の位置
と軸穴75とを結ぶ直線Aに対して非対称となる曲線形状
とすることもある。更に、透孔77と軸穴75とを結ぶ直線
Aに対して非対称とした形状の透孔77は、1個だけを設
ける場合に限ることなく、各透孔77がその透孔77と軸穴
75の中心とを結ぶ各直線Aに対して非対称とするように
しつつ、図5に示すように、複数の透孔77を設けること
もある。
【0020】そして、複数の透孔77を本体部71に設ける
平歯車70にあっては、図6に示すように、大きさの異な
る同一形状の透孔77を2個設けることとし、この2個の
透孔77と軸穴75の中心とを結ぶ2本の直線A,Bが軸穴
75中心で交わるように、即ち、2個の透孔77が軸穴75の
中心に対して180度の位置とならないようにして配置
することがある。
【0021】又、透孔77を2個設ける場合は、大きさの
異なる同一形状の透孔77とする場合のみでなく、図7に
示すように、形状の異なる2個の透孔77を軸穴75の中心
に対して180度の位置とならないようにして配置する
ことがある。このように、形状や大きさの異なる透孔77
を180度の位置を外して形成した平歯車70も、透孔77
の形状又は大きさにより基準となる直線を定めることが
でき、この直線を基準として他の透孔77の位置により平
歯車70の裏表を容易に識別して一定方向にバリ79を突出
させるように歯車軸とする分針軸39などに取り付けるこ
との容易な時計用歯車とすることができるものである。
【0022】更に、透孔77の配置により平歯車の裏表即
ち抜き裏面を識別するには、図8に示すように、軸穴75
を中心として一定方向に順次間隔を広げるように透孔77
を不等間隔として円周上に設ける場合もある。この場合
は、軸穴75を通る何れの直線に対しても透孔77は非対称
として配置されている故、透孔77の配置により歯車の裏
表を識別し、歯車軸と組み合わせた時計用の歯車とする
に際してバリ79の突出方向を一定方向とすることができ
る。
【0023】そして、このようにバリ79の突出方向を一
定方向とした時計用の歯車を用いて輪列を形成するに際
しては、各歯車の組み立て順が定まっている時計用の歯
車においては、各歯車を噛合させるに際してバリ79の突
出方向から噛合する歯車を挿入することを無くし、バリ
79により噛合相手となる他の歯車を傷付けることなく輪
列を組み上げることができる。
【0024】そして、このような形状や配置とする透孔
77は、歯部73や軸穴75の形成と同時に形成することがで
き、一回に打ち抜き作業により穴部などと同時に形成す
れば、裏表の識別が容易な平歯車70として極めて容易に
量産することができるものである。
【0025】
【発明の効果】本発明は、本体部の側面に軸穴中心を通
る直線に対して非対称とする透孔を有する打ち抜き製造
された時計用の金属製平歯車を用い、歯車の打ち抜き
面、即ち裏表を透孔の形状又は配置により容易に識別で
きる平歯車であり、バリが突出している抜き裏面の方向
を一定方向として歯車軸に取り付けることが容易であ
り、抜き裏面の方向に2番カナを位置させて分針軸とし
ての歯車軸を抜き裏面の方向に大きく突出させている
故、この歯車軸により当該歯車を固定し、更に他の歯車
を所定位置に固定するようにして輪列を形成するに際
し、噛合する相手歯車を傷付けることのない時計用の歯
車とすることができるものであって、時計用ムーブメン
トの組み立てを容易とすることができるものである。
【0026】更に、請求項2に記載した発明は、透孔の
形状により容易に歯車の裏表を識別可能としつつ製造容
易な時計用歯車であり、請求項3に記載した発明は、透
孔の大きさ又は形状と透孔の配置とにより歯車の裏表を
識別可能としつつ製造容易な時計用歯車とするものであ
って、請求項4に記載した発明は、透孔の配置により歯
車の裏表を識別可能としつつ製造容易な時計用歯車とす
るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る時計用平歯車の一例を示す平面
図。
【図2】本発明に係る時計用平歯車の第2例を示す平面
図。
【図3】本発明に係る時計用平歯車を歯車軸に取り付け
た状態を示す断面図。
【図4】本発明に係る時計用平歯車の第3例を示す平面
図。
【図5】本発明に係る時計用平歯車の第4例を示す平面
図。
【図6】本発明に係る時計用平歯車の第5例を示す平面
図。
【図7】本発明に係る時計用平歯車の第6例を示す平面
図。
【図8】本発明に係る時計用平歯車の第7例を示す平面
図。
【図9】時計用ムーブメントの輪列の一例を示す図。
【図10】従来の打ち抜き製造された金属製平歯車の断
面図。
【図11】従来の時計用歯車の組み立ての一例を示す
図。
【符号の説明】
10 駆動用モータ 11 ロータ軸 13 ロータカナ 21 5番車 23 5番カナ 25 4番車(秒針車) 27 4番カナ 29 秒針軸 31 3番車 33 3番カナ 35 2番車(分針
車) 37 2番カナ 39 分針軸 41 日の裏車 45 1番車(時針
車) 49 時針軸 51 前板 55 中板 57 上板 61 指針修正ツマミ 63 指針修正歯車 70 歯車 71 本体部 73 歯部 75 軸穴 77 透孔 79 バリ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G04B 13/02 G04B 19/02 G04B 23/02 G04B 35/00 G04D 7/04 F16H 55/17

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属薄板から歯部及び軸穴を形成するよ
    うに打ち抜き加工することにより製造された平歯車であ
    り、且つ、本体部の周囲に歯部を有し、本体部の中央に
    軸穴を有すると共に、本体部側面に透孔を有し、この透
    孔と軸穴の中心を通る直線に対してこの透孔を非対称形
    状とするか又は複数の透孔を軸穴の中心を通る直線に対
    して非対称な配置として有する分針車、及び、この分針
    車と分針軸、更に2番カナである歯車とで構成される時
    計用歯車であって、前記金属薄板から歯部及び軸穴を形
    成するように打ち抜き加工により製造される平歯車の分
    針車を分針軸とされる歯車軸の端部近くに有し、この平
    歯車のバリの突出面である抜き裏面の方向に2番カナを
    位置させて分針軸とする歯車軸を抜き裏面の方向に大き
    く突出させていることを特徴とする時計用歯車。
  2. 【請求項2】 分針車の透孔が三角形又は台形や曲線状
    とされ、該透孔と軸穴中心とを結ぶ直線に対して非対称
    形状として該透孔が打ち抜かれていることを特徴とする
    請求項1に記載された時計用歯車。
  3. 【請求項3】 分針車の本体部には、大きさ又は形状の
    異なる2個の透孔軸穴中心から180度の位置を外し
    て打ち抜かれて形成されていることを特徴とする請求項
    1に記載された時計用歯車。
  4. 【請求項4】 分針車の本体部には、複数の透孔不等
    間隔として打ち抜かれて形成され、軸穴中心を通る何れ
    の直線に対しても非対称形状として透孔が配置されてい
    ることを特徴とする請求項1に記載された時計用歯車。
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