JP3138144B2 - 脱水機及び洗濯機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、脱水機、並びに、脱水
機能を有する全自動洗濯機等の洗濯機に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般的な全自動洗濯機においては、洗い
後とすすぎ後に排水して脱水を実行する。また、脱水専
用の脱水機においては、別の装置で、洗いを行った後及
び／またはすすぎを行った後、この脱水機の脱水槽に衣
類を移し替える。そして、この脱水機にて脱水を実行す
る。

【０００３】この場合、脱水槽を回転駆動する駆動モー
タへの通電を、脱水時に連続的に行う構成であると、一
度に多量の洗濯／すすぎ水が衣類から出てきて外槽と脱
水槽との間に至る。すると、この洗濯／すすぎ水は多量
である（外槽外へ排出されるまでに時間がかかる）が故
に、排出されるまでに脱水槽の高速回転によりかき混ぜ
られ、洗濯／すすぎ水に溶け込んでいる洗剤の影響によ
り発泡が生じ、この泡が脱水槽の高速回転に対する大き
な負荷となり、脱水槽が当初の高い回転数で回転できな
くなり、満足な脱水が行えなくなる。

【０００４】特に、洗い後であってすすぎ前の脱水にお
いては、水に含まれる洗剤の割合が大きく、発泡が著し
く生じるため、すすぎ後の脱水以上に満足な脱水が行え
ない。

【０００５】而して、このような発泡を防ぐには、特開
昭６２−１６４４９３号公報のように、脱水槽を駆動す
る駆動モータへの通電を間欠的に行うとよい。即ち、こ
の間欠的通電により、脱水槽は高い回転数で高速回転し
ようとすると通電停止により惰性回転しながら回転数が
落ちていく状態が繰り返され、結果的に脱水槽は連続通
電に比べると低い回転数で回転し、衣類に含まれている
洗濯／すすぎ水は一度に多量に出てくるのではなく徐々
に出てくる。これにより、洗濯／すすぎ水は外槽と脱水
槽との間に至っても、脱水槽の高速回転によりかき混ぜ
られることなく、直ちに排出されるため、発泡が抑制さ
れる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、駆動モータ
に対する間欠的通電に際し、上記特開昭６２−１６４４
９３号公報に具体的に記載されているように、１回目の
通電時間を長くすると、異常振動が起こり、外槽が機枠
に当ったりする恐れがある。

【０００７】即ち、全自動洗濯機においては、脱水に先
立って排水を行い、これにより、外槽の重量（外槽内の
脱水槽等の重量も含む）が軽くなり、外槽を吊り下げ支
持するために設けている４つの防振機構が内部のバネ力
により復帰するのであるが、この場合、内部摩擦抵抗の
加減により４つの防振機構が均一に復帰せず、外槽が傾
いたりする。

【０００８】この傾きは、１回目の駆動モータへの通電
時、脱水槽の回転に基づいて外槽が振動し、摩擦抵抗の
加減が調整されて４つの防振機構がいずれも正しく復帰
することにより、解消される。そして、この復帰が直ち
に行われると何ら問題は生じない。

【０００９】しかし、復帰に時間がかかり１回目の長い
通電時間の内のかなりの時間が経過した後で復帰するよ
うな場合には、この間に外槽が傾いた状態にて大きく異
常振動してしまい、外槽が機枠に当ったりするのであ
る。

【００１０】本発明は、発泡が生じないように駆動モー
タへの通電を間欠的に行って脱水を行う構成において、
異常振動により外槽が機枠に不所望に当ってしまうのを
抑制しようとするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、機枠と、この
機枠内に配置された外槽と、上端が上記機枠に支持され
た吊り棒、及びこの吊り棒の下端に位置し上記外槽を常
時上方へ付勢する防振バネを有し、上記外槽を上記機枠
内にて吊り下げ支持する４つの防振機構と、上記外槽内
に回転自在に配置されるとともに脱水運転時に高速回転
する、衣類を収容する脱水槽と、この脱水槽を高速回転
駆動する駆動モータと、上記外槽に設けられ、脱水時に
衣類から出てきた水を排出する排水部と、脱水運転時に
上記駆動モータへの通電を間欠的に行う制御部とを備え
た脱水機において、上記制御部は、上記駆動モータへの
第１回目の通電を短時間だけ行い、この第１回目の短時
間通電時の脱水槽回転とこれに続く通電停止時の脱水槽
惰性回転とを含む長い脱水槽回転時間により、脱水前排
水時における上記４つの防振機構の内部摩擦抵抗による
不均一復帰を解消させ、且つ、上記短時間通電時の脱水
槽回転では上記外槽は異常振動しても上記機枠に当たら
ないことを特徴とする。

【００１２】更に、機枠と、この機枠内に配置された外
槽と、上端が上記機枠に支持された吊り棒、及びこの吊
り棒の下端に位置し上記外槽を常時上方へ付勢する防振
バネを有し、上記外槽を上記機枠内にて吊り下げ支持す
る４つの防振機構と、上記外槽内に回転自在に配置され
るとともに脱水運転時に高速回転する、衣類を収容する
洗濯兼脱水槽と、この洗濯兼脱水槽を脱水時に高速回転
駆動する駆動モータと、上記外槽に設けられ、脱水時に
衣類から出てきた水を排出する排水部と、洗い、脱水、
すすぎを実行制御するとともに、脱水運転時に上記駆動
モータへの通電を間欠的に行う制御部とを備えた洗濯機
において、上記制御部は、上記駆動モータへの第１回目
の通電を短時間だけ行い、この第１回目の短時間通電時
の洗濯兼脱水槽の回転とこれに続く通電停止時の洗濯兼
脱水槽の惰性回転とを含む長い洗濯兼脱水槽の回転時間
により、脱水前排水時における上記４つの防振機構の内
部摩擦抵抗による不均一復帰を解消させ、且つ、上記短
時間通電時の洗濯兼脱水槽回転では上記外槽は異常振動
しても上記機枠に当たらないことを特徴とする。

【００１３】そして、いずれにおいても、第１回目の通
電時間は０．５秒〜３．０秒とするのが好ましい。更に
は、１．０秒とするのがより好ましい。

【００１４】

【作用】発泡が生じないように、駆動モータに対して間
欠的通電を行って脱水するにあたり、第１回目の通電は
短時間だけ行う。すると、脱水槽は回転を始めるが、直
ちに惰性回転状態に入る。しかし、脱水槽が回転状態に
ある時間として、惰性回転時間を含めて比較的長い時間
が確保される。

【００１５】これにより、例えば全自動洗濯機におい
て、脱水前の排水時、外槽を吊り下げ支持する４つの防
振機構が内部摩擦抵抗の加減により均一復帰せず、外槽
が傾いた状態にあっても、上記長い時間にわたっての脱
水槽の回転による外槽の振動により、４つの防振機構は
確実に均一復帰し、外槽の傾きが解消する。

【００１６】そして、脱水槽は通電時間が短いから直ち
に惰性回転状態となり、従って、外槽が傾いたまま通電
が続くことがなく、外槽が大きく異常振動し機枠に当っ
てしまうということがない。

【００１７】

【実施例】図１は本発明実施例の全自動洗濯機の構造を
示す。１は機枠、２はコントロールパネル、３は上記機
枠１内に配置された外槽、４は周囲に多数の脱水孔５を
有し、上記外槽３内に回転自在に支承された、衣類を収
容する洗濯兼脱水槽、６は上記洗濯兼脱水槽４内の底部
に回転自在に配設された回転翼、７は上記洗濯兼脱水槽
４及び回転翼６に動力伝達機構８を介して連結された駆
動モータで、この駆動モータ７は洗い及びすすぎ時には
回転翼６のみを回転させ、脱水時には洗濯兼脱水槽４及
び回転翼６を共に高速で一方向へ回転させる。

【００１８】９は上記外槽３の低壁に形成された排水
口、１０はこの排水口９に連結された排水ホース、１１
は上記排水口９を開閉する排水弁で、これら排水口９、
排水ホース１０及び排水弁１１により本発明の排水部が
構成されている。そして、脱水運転時には、排水弁１１
が開放され、衣類から出てきた水の排出が行われる。勿
論、洗い後及びすすぎ後の排水時にも、排水弁１１は開
放される。

【００１９】１２は上記外槽３の底部に設けられたエア
トラップ、１３は上記コントロールパネル２内に設けら
れた水位センサ、１４はこの水位センサ１３を上記エア
トラップ１２に連結するためのエアホースで、これらエ
アトラップ１２、水位センサ１３及びエアホース１４に
より、上記洗濯兼脱水槽４内の水位を測定する水位測定
装置が構成されている。

【００２０】１５は給水弁、１６は給水ホースで、給水
弁１５の開放により、水道蛇口から給水ホース１６を介
して洗濯兼脱水槽４内に給水される。

【００２１】１７は上記外槽３の周囲４箇所に設けられ
（図では１箇所のみ示されている）、上記外槽３を上記
機枠１内にて吊り下げ支持する防振機構である。

【００２２】図２はこのように４箇所に設けられた４つ
の防振機構１７の詳細を示す如し、１８は上端が上記機
枠１に支持された吊り棒、１９は上記外槽３の下端外周
部に一体形成された受け部２０に下側から当接する防振
バネ座で、この防振バネ座１９内には上記吊り棒１８の
下端が挿通している。２１はこのように防振バネ座１９
内に挿通した吊り棒１８の下端に固定された防振ゴム
で、この防振ゴム２１は上記防振バネ座１９の内壁に摺
接する。２２は上記防振バネ座１９内にて防振バネ座上
壁と防振ゴム２１との間に位置し、防振バネ座１９更に
は外槽３を常時上方へ付勢している防振バネである。

【００２３】このような防振機構１７の構成において、
洗い及びすすぎ時に洗濯兼脱水槽４に給水すると、外槽
３の重量は洗濯兼脱水槽４の他に水の重さが加わるため
かなり重くなり、外槽３は上記防振バネ２２の付勢力に
抗して下降する。一方、洗い後及びすすぎ後、上記排水
弁１１を開放して排水すると、外槽３の重量は軽くな
り、外槽３は上記防振バネ２２の付勢力により上昇し、
上記防振機構１７が復帰することになる。

【００２４】図３は上記全自動洗濯機の回路を示す。２
３は全自動洗濯機の制御を行う、マイクロコンピュータ
等を含む制御部、２４は上記コントロールパネル２の全
面に配置されたキー入力装置で、このキー入力装置２４
により、洗いの時間や回数、脱水の時間や回数、すすぎ
の時間や回数の設定が行われ、或いは予め決められてい
る複数の運転コースの中からの所望運転コースの選択が
行われる。

【００２５】上記制御部２３は、上記キー入力装置２４
及び水位センサ１３からの入力情報に基づいて駆動モー
タ７を駆動制御する。この駆動モータ７の駆動制御によ
り、洗い及びすすぎ時は回転翼６のみが回転し、脱水時
には洗濯兼脱水槽４及び回転翼６が共に高速で一方向へ
回転する。更に、制御部２３は上記給水弁１５及び排水
弁１１を駆動制御する。そして、制御部２３は具体的運
転の一例として、給水、洗い、排水、脱水、給水、すす
ぎ、排水、脱水を順に行う。

【００２６】さて、図４は、上記制御部２３による、脱
水運転時における駆動モータ７に対する通電制御状態を
示す。制御部２３は、脱水運転の当初は時間Ｔが経過す
るまで、洗濯兼脱水槽４を高速回転する駆動モータ７に
対して間欠的に通電を行う。即ち、０．５秒〜３．０秒
好ましくは１秒の通電と３秒の通電停止を１回行った
後、６秒通電−４秒通電停止を４回繰り返す。これによ
り、洗濯兼脱水槽４は高い回転数で高速回転しようとす
ると通電停止により惰性回転しながら回転数が落ちてい
く状態が繰り返され、結果的に洗濯兼脱水槽４は連続通
電に比べると低い回転数で回転し、衣類に含まれている
洗濯／すすぎ水は一度に多量に出てくるのではなく徐々
に出てくる。このため、洗濯／すすぎ水は外槽３と洗濯
兼脱水槽４との間に至っても、洗濯兼脱水槽４の高速回
転によりかき混ぜられることなく、直ちに排出され、よ
って発泡が抑制される。

【００２７】時間Ｔの経過後は、制御部２３は連続通電
を行い、洗濯兼脱水槽４は定常的に高い回転数で回転
し、脱水の仕上げが行われる。そして、この時点に至っ
ては、衣類はかなり絞られた状態にあり、洗濯／すすぎ
水が多量に出てくるようなことはもはやなく、出てきて
も少量ずつであり、洗濯／すすぎ水は直ちに排出され、
従って、洗濯兼脱水槽４により洗濯／すすぎ水がかき混
ぜられたりすることはなく、発砲は生じない。

【００２８】而して、上記間欠的通電における、第１回
目の通電は上述の如く短時間しか行われず、洗濯兼脱水
槽４は回転し始めるが、直ちに惰性回転状態に入る。し
かし、洗濯兼脱水槽４が回転状態にある時間としては、
惰性回転時間を含めて比較的長い時間が確保される。

【００２９】これにより、洗い後及びすすぎ後であって
脱水前における排水時、外槽３を吊り下げ支持する４つ
の防振機構１７が内部摩擦抵抗（防振ゴム２１の防振バ
ネ座１９に対する摺接による摩擦抵抗）の加減により均
一復帰せず、外槽３が傾いた状態にあっても、上記長い
時間にわたっての洗濯兼脱水槽４の回転による外槽３の
振動により、４つの防振機構１７は不所望に働いていた
摩擦抵抗が取り除かれて確実に均一復帰する。よって、
外槽３の傾きが解消する。

【００３０】そして、洗濯兼脱水槽４は通電時間が短く
直ちに惰性回転状態となるものであって、外槽３が傾い
たまま、通電が続いて洗濯兼脱水槽４の回転速度が増す
ようなことがない。よって、外槽３が大きく異常振動し
機枠１に当ってしまうということがない。

【００３１】図５は、上記制御部２３による、脱水運転
時における駆動モータ７に対する他の通電制御状態を示
す。この場合、脱水運転当初の時間Ｔａが経過するまで
において、通電比率をより低減した状態でより長く、駆
動モータ７に対して間欠的に通電を行う。これにより、
洗濯兼脱水槽４はより低い回転数で回転し、衣類に含ま
れている洗濯／すすぎ水は更にゆっくりと出てくる。こ
のため、洗濯／すすぎ水は洗濯兼脱水槽４の回転により
かき混ぜられることが一層なくなり、発泡の抑制が顕著
となる。勿論、第１回目の通電は短時間しか行われない
ことは言うまでもない。

【００３２】

【発明の効果】本発明によれば、脱水機及び洗濯機のい
ずれにおいても、発泡が生じないように駆動モータへの
通電を間欠的に行って脱水を行う構成において、第１回
目の通電を短時間だけ行うようにしたものであり、従っ
て、異常振動により外槽が機枠に不所望に当ってしまう
のを顕著に抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例の全自動洗濯機の断面図である。

【図２】同洗濯機の防振機構の断面図である。

【図３】同洗濯機の回路図である。

【図４】同洗濯機の脱水運転時における、駆動モータに
対する通電制御状態を示すタイミング図である。

【図５】同洗濯機の脱水運転時における、駆動モータに
対する他の通電制御状態を示すタイミング図である。

【符号の説明】

３ 外槽 ４ 洗濯兼脱水槽 ７ 駆動モータ ９ 排水口（排水部） １０ 排水ホース（排水部） １１ 排水弁（排水部） １７ 防振機構 １８ 吊り棒 １９ 防振バネ座 ２１ 防振ゴム ２２ 防振バネ ２３ 制御部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−164493（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−322698（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−71797（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−136697（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−126078（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−122696（ＪＰ，Ａ) 特公 昭49−25020（ＪＰ，Ｂ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) D06F 33/02 D06F 49/04

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 機枠と、この機枠内に配置された外槽
   と、上端が上記機枠に支持された吊り棒、及びこの吊り
   棒の下端に位置し上記外槽を常時上方へ付勢する防振バ
   ネを有し、上記外槽を上記機枠内にて吊り下げ支持する
   ４つの防振機構と、上記外槽内に回転自在に配置される
   とともに脱水運転時に高速回転する、衣類を収容する脱
   水槽と、この脱水槽を高速回転駆動する駆動モータと、
   上記外槽に設けられ、脱水時に衣類から出てきた水を排
   出する排水部と、脱水運転時に上記駆動モータへの通電
   を間欠的に行う制御部とを備えた脱水機において、上記
   制御部は、上記駆動モータへの第１回目の通電を短時間
   だけ行い、この第１回目の短時間通電時の脱水槽回転と
   これに続く通電停止時の脱水槽惰性回転とを含む長い脱
   水槽回転時間により、脱水前排水時における上記４つの
   防振機構の内部摩擦抵抗による不均一復帰を解消させ、
   且つ、上記短時間通電時の脱水槽回転では上記外槽は異
   常振動しても上記機枠に当たらないことを特徴とする脱
   水機。
2. 【請求項２】 機枠と、この機枠内に配置された外槽
   と、上端が上記機枠に支持された吊り棒、及びこの吊り
   棒の下端に位置し上記外槽を常時上方へ付勢する防振バ
   ネを有し、上記外槽を上記機枠内にて吊り下げ支持する
   ４つの防振機構と、上記外槽内に回転自在に配置される
   とともに脱水運転時に高速回転する、衣類を収容する洗
   濯兼脱水槽と、この洗濯兼脱水槽を脱水時に高速回転駆
   動する駆動モータと、上記外槽に設けられ、脱水時に衣
   類から出てきた水を排出する排水部と、洗い、脱水、す
   すぎを実行制御するとともに、脱水運転時に上記駆動モ
   ータへの通電を間欠的に行う制御部とを備えた洗濯機に
   おいて、上記制御部は、上記駆動モータへの第１回目の
   通電を短時間だけ行い、この第１回目の短時間通電時の
   洗濯兼脱水槽の回転とこれに続く通電停止時の洗濯兼脱
   水槽の惰性回転とを含む長い洗濯兼脱水槽の回転時間に
   より、脱水前排水時における上記４つの防振機構の内部
   摩擦抵抗による不均一復帰を解消させ、且つ、上記短時
   間通電時の洗濯兼脱水槽回転では上記外槽は異常振動し
   ても上記機枠に当たらないことを特徴とする洗濯機。