JP3124557B2 - 耐摩耗性に優れ、炭化物の偏析の少ない熱間圧延用ロール - Google Patents

耐摩耗性に優れ、炭化物の偏析の少ない熱間圧延用ロール

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JP3124557B2
JP3124557B2 JP10502664A JP50266498A JP3124557B2 JP 3124557 B2 JP3124557 B2 JP 3124557B2 JP 10502664 A JP10502664 A JP 10502664A JP 50266498 A JP50266498 A JP 50266498A JP 3124557 B2 JP3124557 B2 JP 3124557B2
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健司 市野
智也 小関
高明 豊岡
浩二 湯田
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川崎製鉄株式会社
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    • B21MECHANICAL METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21BROLLING OF METAL
    • B21B27/00Rolls, roll alloys or roll fabrication; Lubricating, cooling or heating rolls while in use
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B15/00Layered products comprising a layer of metal
    • B32B15/01Layered products comprising a layer of metal all layers being exclusively metallic
    • B32B15/011Layered products comprising a layer of metal all layers being exclusively metallic all layers being formed of iron alloys or steels

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、著しく優れた耐摩耗性を有し、且つ、遠心
鋳造法で製造しても炭化物の偏析の少ない熱間圧延用ロ
ールに関するものである。
背景技術 近年、熱間圧延技術はめざましく進歩し、熱間圧延用
ロールにおいて、VとWを多量に添加して硬質なV炭化
物やW炭化物を晶出させることによって耐摩耗性を格段
に向上させた高速度工具鋼組成の外層材を持つ高性能ロ
ール(以降ハイスロールと呼ぶ)が開発されている(例
えば、特開平1−96355、特開平6−145888、特開平4
−80344、特開平5−1350、特開平5−5155、特開平8
−35033等)。一部では実用化もされている。
然しながら、圧延製品の品質向上と効率的生産の観点
からロールの使用環境はますます過酷化し、同時に、圧
延鋼板の表面品質への要求も厳格化されるようになって
おり、より一層の耐摩耗性向上とロール表面の品質向上
が要求されるようになった。ハイスロールでは、V、
W、Mo、Cr等の多種類の合金成分が添加されるため、各
元素の添加量に応じて種類の異なった複数の炭化物(M
C、M6C、M7C3、M2C、M3C等)が晶出する。また、上述の
合金元素を多量に添加するほど炭化物量が増大し、好適
な組成範囲では更に耐摩耗性が向上する可能性も秘めて
いる。ところが、鋳造ロールの耐摩耗性を向上させるた
めに多種類の炭化物を多量に生成させると、各々の炭化
物の晶出するタイミングや比重の違いに基づいて炭化物
の凝固偏析が顕著となり、熱間圧延中にロール表面に偏
析模様が発生する。特に仕上ミルの後段用ロールとして
使用すると、圧延される鋼板の表面品質を劣化させると
いう問題が発生した。
ここで、製造コスト的に有利な遠心鋳造法でハイスロ
ールを製造する場合には、遠心力が付与され、かつ凝固
時間が長いため、その他のロール製造方法に比べて炭化
物の偏析傾向が一層大きくなる。一方、溶接肉盛り法や
連続鋳掛け肉盛り法等(製造コストが大)でハイスロー
ルを製造すれば、遠心力が付与されずに、然も、外層材
が急速に凝固することから、炭化物の偏析は抑制される
が、ロール製造コストが著しく高くなるという問題があ
った。本発明者らは、先に上記問題を解決すべく、遠心
鋳造法によるハイスロールを種々研究開発しているが
(例えば、特開平5−1350、特開平8−73977、特開平
9−41072等)、特に、耐磨耗性の著しい向上がみられ
る高Cr組成範囲では炭化物の偏析が発生してしまうこと
を経験していた。このような問題から、従来は製造コス
トが安く、耐摩耗性を更に著しく向上したハイスロール
を製造することは困難であった。
本発明の課題は、耐摩耗性に著しく優れ、然も、経済
的に優れた遠心鋳造法で製造しても炭化物が偏析しない
高性能ハイスロールを提供することにある。
発明の開示 (1)この本発明に係る熱間圧延用ロールは、重量比
で、C;2.4〜2.9%、Si;1%以下、Mn;1%以下、Cr;12〜1
8%、Mo;3〜9%、V;3〜8%、Nb;0.5〜4%を含有し、
且つ、下記(1)、(2)式を同時に満足し、 0.27≦Mo(%)/Cr(%)≦0.7 …(1) C(%)+0.2・Cr(%)≦6.2 …(2) 残部Fe及び不可避的不純物よりなる外層を有するように
したものである。
(2)本発明に係る熱間圧延用ロールは、上記(1)の
主要成分に加えて、さらにNi;1.5%以下、Co:6%以下、
B:0.1%以下の1種あるいは2種以上を含有するように
したものである。
(3)この本発明に係る熱間圧延用ロールは、上記
(1)又は(2)の主要成分に加えて、さらに上記のMC
型炭化物とM7C3型炭化物を面積率の合計で13〜30%含有
する外層を持つようにしたものである。
(4)この本発明に係る熱間圧延用ロールは、上記
(3)においてさらに外層に含有するM7C3型炭化物の面
積率が6%以上であるようにしたものである。
(5)この本発明に係る熱間圧延用ロールは、上記
(1)又は(2)に記載の外層と溶着一体化した球状黒
鉛鋳鉄又は黒鉛鋼の内層とからなる熱間圧延用ロールで
あり、内層が、重量比で、C;2.5〜4.0%、Si;1.5〜3.5
%、Mn;1.5%以下、Cr;3%以下、Mo;3%以下,V;3%以
下、Nb;2%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よ
りなるようにしたものである。
(6)本発明は、上記(1)又は(2)に記載に外層と
内層の間に中間層を有し、該中間層を介して外層と内層
が溶着一体化してなる熱間圧延用ロールであり、中間層
が、重量比で、C;0.8〜3.0%、Si;0.3〜3.0%、Mn;1.5
%以下、Cr;10%以下、Mo;4%以下、V;5%以下、Nb;3%
以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなるよう
にしたものである。
(7)本発明に係る熱間圧延用ロールは、上記(6)に
記載の本発明において更に、内層材への中間層混入比を
5〜20%の範囲に規制するようにしたものである。
(8)本発明に係る熱間圧延用ロールは、上記(6)に
記載の本発明において更に、中間層材への外層混入比を
5〜50%の範囲に規制するようにしたものである。
(9)本発明は、上記(5)又は(6)のいずれかにお
いて、熱間圧延用ロールの内層または中間層あるいはそ
の両方にNi:5%以下、Co;6%以下の1種以上を含有させ
るものである。
(10)本発明は、上記(1)又は(2)に記載の外層を
遠心鋳造してなる熱間圧延用ロールである。
ここで、(8)の「中間層材への外層混入比」とは、
中間層鋳造時に外層が再溶解することにより、中間層の
鋳込み組成に外層の成分がどれだけ混入するかを管理す
る値である。即ち、成分偏析を起こしにくいCrに着目し
てロール外層のCr量を(a重量%)、中間層の鋳込みCr
量を(b重量%)、鋳造後のロール中間層のCr量を(c
重量%)とした場合、「中間層材への外層混入比」は以
下のように定義される。
また、(7)の「内層材への中間層混入比」とは、内
層鋳造時に既中間層が再溶解することにより、内層の鋳
込み組成に既中間層の成分がどれだけ混入するかを管理
する値である。即ち、成分偏析を起こしにくいCrに着目
してロール中間層のCr量を(c重量%)、内層の鋳込み
Cr量を(d重量%)、鋳造後のロール内層のCr層を(e
重量%)とした場合、「内層材への中間層混入比」は以
下のように定義される。
また、「外層材」、「内層材」の用語は、「鋳込み前
の湯」を意味し、「外層」、「内層」の用語は「凝固
後」のものを意味する。
図面の簡単な説明 第1図(a)は、本発明材の表面から20mm,(b)
は、表面から30mm、(c)は、表面から40mmの位置の金
属組織(炭化物組織)を表わす顕微鏡写真である。
第2図(a)は、比較材の表面から20mm,(b)は、
表面から30mm、(c)は、表面から40mmの位置の金属組
織(炭化物組織)を表わす顕微鏡写真である。
第3図はC量、Cr量と炭化物の偏析有無と摩耗量との
関係を示す図である。
第4図は実機ミルでの本発明ロールと比較ロールの圧
延成績を示す図である。
第5図(A),(B)は本発明ロールを示す模式図で
ある。
発明を実施するための最良の形態 (A)外層における合金元素の限定理由 (本発明の技術思想・特徴) 本発明では、〔a〕炭化物の偏析防止、〔b〕耐摩耗
性の著しい向上、〔c〕ロールの割損防止、を同時に達
成する組成範囲を以下の視点から鋭意検討し、VとNbを
含有した高Cr−Mo系組成の外層を有した熱間圧延用ハイ
スロールにおいて、従来ロールでの問題を一挙に解決す
る好適組成を見い出した。
〔a〕炭化物の偏析防止 (i)炭化物の偏析を防止するには、凝固過程でオース
テナイトと炭化物の晶出タイミング(晶出温度)の差が
小さく、且つ、溶鋼との比重差の小さな炭化物を晶出さ
せること、或いは、多種類の炭化物を晶出させないこと
が有効であることが見出された。
(ii)耐摩耗を著しく向上したハイスロールを得るため
の条件は、極めて硬質なMC型炭化物と準硬質相となるM6
C、M7C3、M23C6、M2C、M3C等の共晶炭化物が多量に存在
した金属組織を持つことである。ここで、準硬質相であ
る共晶炭化物が多いほど耐摩耗性が向上するが、共晶炭
化物の種類が増えると、前述したように炭化物の偏析が
助長されるため、多種類の共晶炭化物が共晶しない合金
組成を設計することが重要になる。
(iii)共晶炭化物の偏析防止 高C高Cr組成とすると、M7C3を主とするCr系炭化物
が、コロニー状の共晶炭化物として金属組織中に均一に
分散することが、高Cr鋳鉄において知られている。これ
をヒントにし、ハイスロールの準硬質相としてM7C3型炭
化物を利用すれば炭化物の偏析を抑制する方法を見い出
した。
本発明では、準硬質相として主にM7C3型炭化物が多量
に晶出するその好適な組成範囲としてC:2.4〜2.9%、C
r;12〜18%を選定した。しかし、この組成範囲において
も、C及びCrが、式;C(%)+0.2・Cr(%)で計算さ
れる数値の6.2を超えて添加されると、上述のコロニー
状のM7C3型炭化物に加えて針状のCr系炭化物が晶出して
しまうことが判明した。針状のCr炭化物が晶出する組成
でロールを遠心鋳造すると、コロニー状の炭化物と針状
の炭化物が偏析することから、限定式;C(%)+0.2・C
r(%)≦6.2を設定した。尚、一般にハイスロールはW
を含有するが、Wを添加すると、M7C3型と異なった炭化
物(M5CやM2C等)が出現し、それらが偏析する場合があ
る。また、Wの比重が著しく大きいことから、溶湯と炭
化物の比重差を拡大し、炭化物の偏析を一層助長(各元
素の比重→W;19.3、Fe;7.9、Cr;7.2、Mo;10.2)すると
ともに耐摩耗性を劣化させることが判明した。従って、
本発明ではW系炭化物が出現するような量のWを添加し
てはならない。
(iv)MC型炭化物の偏析防止 Vを主体とするMC型炭化物は溶湯よりも比重が小さい
ため、遠心鋳造した場合には、比重差に基づいてMC炭化
物が遠心分離する問題がある。MC型炭化物の遠心分離を
抑制するには、MC型炭化物の比重を大きくすることで溶
湯との比重差を減少することが有効である。本発明で
は、V主体のMC型炭化物に高比重元素であるNbとMo(比
重→VC;5.7、V;6.1、Nb;8.6、Mo;10.2)を複合させるこ
とでMC型炭化物を比重の大きな複合炭化物に改質した。
また、溶湯の比重を増加させる作用をもつWを添加しな
いという方法でMC型炭化物の遠心分離を防止した。これ
を達成するための好適組成はV;3〜8%、Nb:0.5〜4
%、Mo;3〜9%、W;0.1%未満である。
〔b〕耐摩耗性の著しい向上 ハイスロールとしての耐摩耗性を発揮するためにはMC
型炭化物が必須である。更に耐摩耗性を著しく構造させ
るためにはより強い共晶炭化物を多量に存在させること
が必要である。本発明では、前述のような偏析に関わる
制限条件の中でハイスロールの耐摩耗性を更に著しく向
上させるために鋭意検討し、MC炭化物とM7C3型炭化物の
適量導入、及びMC炭化物とM7C3型炭化物の強化を図っ
た。即ち、耐摩耗性を向上するにはMC炭化物とM7C3型炭
化物の合計が13%以上必要であり、これらの炭化物を出
現させるため好適組成は、炭素供給源としてCを2.4%
〜2.9%含有し、V;3〜8%とNb;0.5〜4%を含有させる
ことにより、VとNbの複合型MC炭化物を出現せしめ、更
に適量のM7C3型炭化物を出現させるためにCrを12〜18%
含有させるものである。但し、上記の組成限定だけでは
安定的に耐摩耗性を著しく向上させることは不可能であ
った。そこで、偏析を助長しない範囲で耐摩耗性を向上
すべく検討を重ね、Moの適正配合によって上述のMC炭化
物とCr炭化物が改質されて耐摩耗性が著しく向上するこ
とを見い出した。即ち、Moを3〜9%含有させることに
より、MC炭化物とCr炭化物中にMoが濃化し、各々の炭化
物が強靭な複合炭化物に改質される。ここで、Cr量を多
くするほどMoの添加量を増量する必要があり、Mo(%)
/Cr(%)で計算される値が0.27以上なければ耐摩耗性
が向上しないことが判明したため、限定式;0.27≦Mo
(%)/Cr(%)を設定した。尚、Mo(%)/Cr(%)で
計算される値が0.7を超えると、Moが過剰になってMo主
体の共晶炭化物が多量に出現して炭化物の偏析を助長す
るとともに耐摩耗性の劣化を起こすことが判明したの
で、限定式;Mo(%)/Cr(%)≦0.7を設定した。尚、M
o/Crが0.7以下であっても、Mo系炭化物は晶出するが、M
o/Crが0.7以下であれば、ロール特性に悪影響を及ぼす
ことはない。
〔c〕ロールの割損防止 耐摩耗性を向上するために炭化物量を著しく増加させ
た複合ハイスロールを製造すると、鋳込み後にロールが
割損する場合がある。割損原因は、外層の炭化物量が過
渡に多くなると膨張係数が著しく低下(炭化物の線膨張
係数が低いため、炭化物を多量に含有した外層は線膨張
係数が小さくなる)することにより内層との熱膨張・収
縮量の差が拡大して、ロールの熱応力が課題になったた
めである。この知見から、本複合ロールでの割損をを抑
制する限界の炭化物量を検討した結果、MC型炭化物とM7
C3型炭化物を面積率の合計で30%以下にする必要がある
ことを見い出した。
(1)本発明におけるロール外層の炭化物含有量は以下
のように定められる。
・外層のMC型炭化物とM7C3型炭化物の合計が面積率で13
〜30% 優れた耐摩耗性を得るためには、MC型炭化物とM7C3
炭化物の合計が面積率で13%以上必要である。但し、上
述したように該面積率の合計が30%を超えるとロールが
割損しやすくなる。
・外層のM7C3型炭化物の面積率が6%以上 MC型炭化物とM7C3型炭化物の合計が面積率で13〜30%
であり、且つ、M7O3型炭化物が面積率で6%以上含有す
ると耐摩耗性が著しく向上するとともに、ロール或いは
圧延鋼板の表面性状も向上する。また、ロールの熱膨張
を抑制して通板性を向上させる効果もある。M7C3型炭化
物の面積率が6%未満ではその効果が得られない。
(2)本発明におけるロール外層の組成は以下のように
定められる。
・C;2.4〜2.9% Cはロールの耐摩耗性を向上するための炭化物形成に
必須な元素である。2.4%未満では炭化物量が不足して
優れた耐摩耗性を得ることができない。一方、2.9%を
超えると炭化物量が過多となるとともに、炭化物の偏析
が発生する。
・Cr;12〜18%、C(%)+0.2・Cr(%)≦6.2 Crは、コロニー状のM7C3炭化物を適量出現させ、耐摩
耗性と耐肌荒れ性を向上させるために12%以上添加する
必要がある。12%未満ではCr炭化物が不足し、耐摩耗性
の劣化とロール肌荒れが発生する。また、18%を超える
か、C(%)+0.2・Cr(%)で計算される値が6.2を超
えると、針状のCr炭化物が晶出するとともに炭化物の偏
析が発生するため、圧延鋼板表面品質を劣化させる原因
となる。なお好適にはCr;12〜16%である。
・Mo;3〜9%、0.27≦Mo(%)/Cr(%)≦0.7 MoはMC炭化物及びM7C3炭化物中に濃化してそれらの炭
化物を強化し、ロールの耐摩耗性を著しく向上する効果
を持つ。同時に、MC炭化物の偏析を抑制する効果を持
つ。これらの効果を得るためにMoは3%以上必要であ
り、且つ0.27≦Mo(%)/Cr(%)を満足しなければな
らない。一方、Moが9%を超えるか、Mo(%)/Cr
(%)で計算される値が0.7を超えると、Mo系の炭化物
が多量に出現し、炭化物の偏析を助長するとともに耐摩
耗性の著しい劣化をもたらす。なお好適には0.3≦Mo
(%)/Cr(%)≦0.58である。
・V;3〜8%、Nb;0.5〜4% Vは硬質なMC炭化物を形成させ、ハイスロールとして
の一定レベルの耐摩耗性を得るために必須な元素であ
る。その効果を得るためには3%以上必要であるが、8
%を超えると溶湯の融点を上昇させるとともに溶湯に流
動性を低下させ、ロール製造上の問題を発生させる。
NbもMC炭化物形成元素であり、MoをMC炭化物中に濃化
させる作用がある。Nbを添加することによって、MC炭化
物をより強靭な(V、Nb、Mo)C系の複合MC炭化物に改
質し耐摩耗性を著しく向上する。また、複合MC炭化物と
なることによってその比重が溶湯の比重に近づくため、
MC炭化物の偏析が抑制される。その効果を得るためにNb
は0.5%以上必要であるが、4%を超えて添加するとNb
系の炭化物が独自に晶出し、炭化物の偏析を助長する。
尚、好適範囲はV;4〜6%、Nb;1〜2%である。
・Si;1%以下 Siは脱酸材として、及び鋳造性確保のために添加す
る。Siの好適下限値は0.1%以上である。1%を超えて
添加しても効果が飽和する。尚、好適範囲は0.2〜0.6%
である。
・Mn;1%以下 Mnは溶鋼中のSをMnSとして固定し、Sの悪影響を除
去するため添加する。Mnの好適下限値は0.1%以上であ
る。1%を超えて添加してもその効果が飽和する。尚、
好適範囲は0.2〜0.8%である。
・W;1%未満 本発明では、Wの添加は耐摩耗性を向上する効果がな
いばかりか、炭化物の偏析を助長する弊害を及ぼすた
め、Wを添加することは好ましくない。溶解原料等から
不可避的に含有されるような場合でも、なるべく弊害を
少なくするため、1%未満、好適には0.5%未満になる
ように溶解原料を変更することが必要である。
・Ni;1.5%以下 Niは本発明の必須元素ではないが、焼入れ性を向上さ
せ、ロール焼入れ時の操作範囲を広げる作用をもつこと
から、必要に応じて添加してもよい。但し、1.5%を超
えて添加しても効果が飽和するとともに、不安定な残留
γの形成を促進するため、1.5%以下とする。
・Co;6%以下 Coは、本発明の必須元素ではないが、高温における組
織を安定化させる働きがあり、また、熱膨張率を減少す
る効果もあるため、添加してもよい。但し、本発明のロ
ールの耐摩耗性、耐肌荒れ性を向上する作用は小さく、
ロールの特性向上に対するメリットは低いため、経済性
の観点から上限を6%とする。
・B:0.1%以下 Bは焼き入れ性を向上させるため、ロール熱処理時の
温度管理を容易にする効果を持つことから添加してもよ
い。但し0.1%を超えて添加すると材質を脆化させるた
め、上限を0.1%とする。
(3)本発明におけるロールの製造は以下のように定め
られる。
・内層;球状黒鉛鋳鉄或いは黒鉛鋼 内層には、鋳造性と加工性に優れた高強度材を適用す
ることが好ましい。実用性を考慮して、中実一体ロール
を製造する場合は球状黒鉛鋳鉄を選定し、円筒状のスリ
ーブロールを製造する場合には黒鉛鋼を選定するのが良
い。
・中間層の設置 ロールの外層と内層を直接、溶着一体化させると、内
層に外層の合金成分が多量に混入し、内層が硬化脆化す
る場合がある。特に、内層を球状黒鉛鋳鉄にした場合に
内層の硬化脆化が顕著となる。このような場合、外層の
合金成分の内層への混入を抑制するため、外層と内層の
間に中間層を設けることが好ましい。尚、中間層の成分
は厳密に規定する必要はないが、外層の合金成分の内層
への混入による内層の硬化脆化を防止するために中間層
のCr、Mo、V、Nb等の合金元素含有量は、外層より低く
する必要がある。また、鋳造性を確保するために、中間
層用の溶湯は、Cを0.5%以上、Siを0.5%以上含有させ
ることが好ましい。
(4)尚、本発明の複合ロール(製品)の中間層及び内
層は、外層の合金成分が混入するため、合金元素含有が
高くなる。各層の顕著な高合金化は脆化によるロール割
損の原因となる。従って複合ロール製品での各層の合金
組成は、以下の範囲にすることが好ましい。
・中間層 C;0.8〜3.0%、Si;0.3〜3.0%、Mn;≦1.5% Ni;≦5%、Cr;≦10%、Mo;≦4% V;≦5%、Nb;≦3% ・内層 C;2.5〜4.0%、Si;1.5〜3.5%、Mn;≦1.5%、Ni;≦5% Cr;≦3%、Mo;≦3%、V;≦3%、Nb;2% (B)内層、中間層における合金元素の限定理由 本発明の複合ロール(3層ロール)においては、外層
と中間層及び内層を冶金学的に結合させるために、外層
の内面側と中間層材を混合させること、中間層の内面側
と内層材を混合させることが不可欠である。然しなが
ら、内層と中間層の優れた強靭性を損なうまで過度に外
層を混入させてはならない。本発明は、外層の内層への
混入を抑制するために中間層を設けているが、それでも
外層は中間層を介して内層へ混入する。
そこで、本発明においては、中間層材への外層混入比
を5〜50%とするのが最適であると見い出した。外層混
入比が5%未満では、外層と中間層の境界に未溶着或い
は介在物等の鋳造欠陥が発生し易くなり、境界部の健全
性を確保できない。また外層混入比が50%を超えると、
外層に含有する炭化物形成元素(特にCr)が多量に混入
し、中間層の靭性が損なわれる。
また、本発明においては、内層材への中間層混入比を
5〜20%とするのが最適であると見い出した。中間層混
入比が5%未満では、中間層と内層の境界に未溶着或い
は介在物等の鋳造欠陥が発生し易くなり、境界部の健全
性を確保できない。一方中間層混入比が20%を超える
と、内層と中間層の結合状態を改善する効果が飽和す
る。また、中間層に含有される炭化物形成元素(特にC
r)が内層に多量に混入し、内層が著しく脆化して、ロ
ールが割損する原因となる。
即ち、中間層材への外層混入比及び内層材への中間層
混入比を前記の範囲で規制するとともに、外層あるいは
中間層からの混入による成分上昇を考慮して中間層材組
成及び内層材組成を選択すれば良い。
ロール製品の内層と中間層の好適組成は以下の通りで
ある。
[内層] 中間層を設けることにより、外層のCrの内層への混入
を中間層のない場合に比して非常に低下せしめ得るが、
このCrの混入を完全には防止できない。従って、このCr
%の上昇分を考慮して、内層材の化学成分及びその成分
割合を選択する必要がある。
・C:2.5〜4.0% Cは2.5%未満では黒鉛の量が少なくなり、引け巣が
発生し易くなる。一方、4.0%を超えて含有させると脆
弱となるため、2.5〜4.0%の範囲に規定する。
・Si;1.5〜3.5% Siは1.5%未満では黒鉛の量が少なくなり、セメンタ
イトが多く晶出するために、硬くて脆くなる。一方、3.
5%を超えると、黒鉛量が多くなり過ぎて強度の劣化を
きたすので、1.5〜3.5%の範囲に規定する。
・Mn;1.5%以下 MnはSの害を抑えるのに有効であるが、1.5%を超え
ると、材質を脆化させるので、1.5%以下の範囲に規定
する。尚、0.3%未満ではその効果が十分ではない。
・Ni;5.0%以下 Niは強度を増加させるが、5.0%を超えて含有されて
も顕著な効果がない。よって、5.0%以下の範囲に規定
する。
・Cr;3%以下 Crは中間層が設けられていても、Crのある程度の内層
の混入は避けられず、低い程望ましいが、3%までは許
容できる。3%を超えて含有させるとセメンタイト量が
多くなり、材質強度と靭性が著しく劣化する。
・Mo;3%以下 Moは基地硬さを高める効果を有するが、3%を超える
と脆くなり、また不経済でもあるので、3%以下とす
る。
・V;3%以下、Nb;2%以下 NbとVは、微細な炭化物を均一に分散させ、内層の強
度を向上させると共に、ロール内層で構成されるロール
の軸部の耐摩耗性も改善する。但し、Vは3%、Nbは2
%を超えて含有されると、内層の鋳造性が著しく劣化
し、また硬化脆化が顕著になるので限定した。
・Co;6%以下 Coは熱膨張率を減少させる効果があるため、熱応力に
よるロールの割損を防止する作用があるが、6%を超え
て添加してもその効果は殆ど増加しないので、上限を6
%とする。
・P:0.1%以下 Pは不純物であり、0.1%を超えて含有すると材質を
脆弱にする。
・S;0.04%以下 Sは黒鉛の球状化を阻害するため低く抑える必要があ
り、0.04%以下とするのが好適である。
[中間層] 中間層は、外層に含有される炭化物形成元素(特にC
r)が内層に混入して、内層の強靭性が劣化するのを抑
制する機能を持つ。
・C;0.8〜3.0% Cは基地中に溶け込んで強度を確保する。C含有量が
0.8%未満ではその効果が不十分であり、一方、3.0%を
超えると、炭化物が多くなり強靭性が劣化する。よっ
て、Cは0.8〜3.0%と規定する。
・Si;0.3〜3.0% Siは、硬脆化の抑制と鋳造性確保のために0.3%以上
必要である。3.0%を超えて添加してもその効果が飽和
する。よって、0.3〜3.0%と規定する。
・Mn;1.5%以下 Mnは材質強度を向上させる効果があるが、1.5%を超
えても効果が飽和するため、1.5%以下の範囲とする。
・Ni;5%以下 Niは強度及び靭性の確保に有効であるが、5%を超え
ても効果が飽和するため、5%以下に限定した。
・Cr;10%以下 Crは炭化物を形成して材質を脆化させるため低い方が
望ましい。外層のCr量が著しく高い場合でも10%以下に
する必要がある。
・Mo;4%以下 MoはNiと同様に強靭性確保の点で重要な元素である
が、4%を超えても材質を脆化させるため、4%以下に
限定した。
・V;5%以下、Nb;3%以下 VとNbは、中間層の強度を向上する作用がある。但し
Vは5%、Nbは3%を超えて含有すると中間層にミクロ
的な引け巣が形成され易くなり、中間層の強度を著しく
劣化させる。
・Co;6%以下 Coは熱膨張率を減少させる効果があるため、熱応力に
よるロールの割損を防止する作用があるが、6%を超え
て添加してもその効果は殆ど増加しないので、上限を6
%とする。
・P:0.05%以下 Pは溶湯の流動性を増加させるが、材質を脆弱にする
ため低いほど良く、好ましくは0.05%以下とするのが好
適である。
・S;0.03%以下 SはPと同様に材質に脆弱にするため、その含有量は
低いほど良く、0.03%以下とするのが好適である。
また、脱酸剤として、Al、Ti、Zr等を0.1%以下使用
することもできる。凝固後の中間層組成及び内層組成が
前記範囲を満足することにより、中間層及び内層の優れ
た材料特性が得られる。
また、本発明の場合、外層から内層に混入するV及び
Nbの含有により内層としての球状黒鉛鋳鉄又は黒鉛鋼
は、一般の球状黒鉛鋳鉄又は黒鉛鋼に比べ、機械的性質
が向上するという効果がある。本発明ロールの場合、こ
の効果により、従来より更に高負荷圧延にも使用可能と
なる。
(炭化物面積率の測定方法) 本発明のロール材には、主としてMC、M7C3及びM2C或
いはM6C型の炭化物が存在する。尚、Cr含有量が大きい
ためM3C型炭化物はほとんど存在しない。
本発明での炭化物の同定法炭化物量(面積率)の測定
法を以下に示す。
1.全炭化物量(面積率)の測定 試料表面を鏡面仕上げ研磨し、5%硝酸アルコール溶
液、或いは塩酸−ピクリン酸アルコール溶液、或いは王
水に浸漬すると基地が腐食される。腐食面を光学顕微鏡
で観察すると基地部は黒色、炭化物は白色に見えるた
め、画像解析装置を用いて白部の面積を測定する方法
で、全炭化物量(面積率)を測定した。尚、腐食しても
基地部が十分に黒くならない場合、腐食面を黒色の鉛筆
で均一にベタ塗りし、表面をガーゼ等で軽くふくと黒
(基地)、白(炭化物)がはっきりする。
2.MC型炭化物の量(面積率)の測定 MC型炭化物は鏡面仕上げ(ノーエッチ)のままの場
合、光学顕微鏡で灰色に見える。この状態で灰色部の面
積を画像解析装置にて測定することにより、MC型炭化物
量(面積率)を測定した。
3.M2C及びM6C型の炭化物量(面積率)の測定 試料表面を鏡面仕上げ研磨し、村上試薬(水;100mlに
対し、水酸化カリウム;10g及びフェリシアン化カリウ
ム;10gを添加した水溶液)によって3〜5秒腐食すると
M2C及びM6C型炭化物が黒く着色する。この状態で画像解
析装置にて黒色部の面積を測定することにより、M2C及
びM6C型の炭化物量(面積率)を測定した。
4.M7C3型炭化物量(面積率)の測定 (M7C3型炭化物量)= (全炭化物量)−(MC型炭化物量+M2C及びM6C型の炭化物量) 5.MC型炭化物とM7C3型炭化物の合計量(面積率) (MC型炭化物とM7C3型炭化物の合計量)= (全炭化物量)−(M2C及びM6C型の炭化物量) 6.本発明のロール外層の成分において、高Cr−高Mo組成
になるほどM2C及びM6C型の炭化物量が増加するが、全炭
化物面積率が40%を超えなければ、偏析等の問題は生じ
ない。
実施例 本発明に関わる遠心鋳造製ロールは、前記詳述した構
成を有しているものであり、このロールの製造方法につ
いて図5に示す例によって説明する。
先ず、遠心力鋳造機の上で回転し、内面に耐火材を被
覆した金属製鋳型の中に、外層1を形成すべき溶湯を鋳
込んだ後、その外層1の内面に中間層2を鋳込む。この
両者、即ち、外層1、及び中間層2が完全に凝固後、こ
の鋳型を垂直に立てて、上部から内層3を鋳込み、この
外層1、中間層2、及び内層3を完全に冶金学的に結合
させて一体のロールとする。尚、外層1と中間層2の両
者が完全に凝固し終らなくても、内面の一部が未凝固の
状態でそれらを水平又は傾斜させた姿勢で、適当な方法
により内層3を鋳込んでも良い。
(実施例1) ロール外層に相当する表1に示す化学組成の溶湯に
て、肉厚100mmの試料を遠心鋳造した。試料断面の組織
を観察することにより、炭化物の偏析有無を判定した。
次に、1050℃から焼入れ、550℃で焼戻し処理を行なっ
た後、炭化物面積率の測定試験片と摩耗試験片を作成し
た。炭化物面積率は、画像解析装置を用いて最大径1μ
m以上の炭化物を定量した。摩耗試験は相手材(S45C)
と試験片の2円盤のすべり摩耗方式で、相手材900℃に
加熱し、試験片を水冷しながら800rpmで回転させ、試験
片と相手材のすべり率を14.2%として、荷重100kgで15
分間圧接した。この試験を、相手材を替えて12回行なっ
た後の試験片の摩耗量を測定した。
炭化物の偏析有無の一例として、本発明材(A−9)
の炭化物組織を図1(a),(b),(c)に示し、比
較材(C−8)の炭化物組織を図2(a),(b),
(c)に示す。本発明材では白くみえる炭化物が試料の
肉厚方向に均一に分散して圧延ロールとして好ましい組
織を示している。一方、C或いはCrを過多に含有した比
較例では針状の炭化物とコロニー状の炭化物が肉厚方向
に分離して偏析しており、圧延ロールとして使用した場
合には圧延鋼板の表面品質を劣化させる。
表2及び図3に、各試料の炭化物の偏析有無と摩耗量
を示す。図3中の 炭化物の偏析の無いもの、 W添加材で炭化物の偏析の有るもの△印は、Mo/Cr>0.7
で炭化物の偏析の有るものを示す。また、印内の数字は
磨耗量(mg)を示す。
・本発明材A−1〜A−15は炭化物の偏析が無く、更
に、極めて優れた耐摩耗性を示している。
・比較材B−1及びB−2は、Mo量が本発明の成分限定
範囲を超え,またMo/Crも本発明の限定範囲から逸脱し
ている。炭化物が偏析するとともに耐摩耗性が劣化して
いる。
・比較材C−1〜C−3は、C或いはCrが不足するとし
て本発明の成分限定範囲から逸脱するとともに、炭化物
量が不足して本発明の限定範囲から逸脱した例であり、
炭化物の偏析は認められないが耐摩耗性が著しく劣化し
ている。また比較材C−1は、Mo/Crも小さく、本発明
の限定範囲から逸脱している。
・比較材C−4は、Mo/Crが小さく、本発明の限定範囲
から逸脱した例である。炭化物の偏析は認められないが
耐摩耗性が著しく劣化している。
・比較材C−5〜C−8は、C或いはCrが過多となって
本発明の成分限定範囲から逸脱した例であり、炭化物が
偏析している。特にC−6は、Moが不足して本発明の成
分限定範囲及びMo/Crの限定範囲も逸脱しており、耐摩
耗性の劣化も著しい。
・比較材C−9は、C+0.2Crの値が6.2を超えたために
炭化物が偏析し、またMo及びMo/Crの不足により、耐摩
耗性も著しく劣化している。
・比較材D−1〜D−2は、Wが添加されたため、本発
明の成分限定範囲から逸脱した例であり、炭化物が偏析
すると共に耐磨耗性も劣化している。
(実施例2) 2.8C−15Cr系の組成でMo量を変えることによりMo/Cr
を変化させた表3に示す化学組成の溶湯にて、肉厚30mm
のY型キールブロックを溶製し、1050℃から焼入れ、55
0℃で焼戻し処理を行なった。試料の組織を観察するこ
とにより、炭化物の偏析原因となる針状炭化物の有無を
判定した。摩耗試験は相手材(S45C)と試験片の2円盤
のすべり摩耗方式で、相手材を900℃に加熱し、試験片
を水冷しながら800rpmで回転させ、試験片と相手材のす
べり率を14.2%として荷重100kgで15分間圧延した。こ
の試験を、相手材を替えて12回行なった後の試験片の摩
耗量を測定した。各試料の摩耗量と針状炭化物の有無を
表4に示す。本発明材(No.3〜5)は極めて優れた耐摩
耗性を有し、また、針状炭化物も認められない。一方、
Mo/Crが0.27未満の比較材(No.1,2)では耐摩耗性が著
しく劣化し、Mo量が過多である比較材(No.6)では、針
状炭化物が出現するとともに耐摩耗性が劣化することが
判明した。
(実施例3) 表5の本発明ロールと比較ロール1に示す組成の外層
は、中間層材及び内層材を溶解し、胴径670mm、胴長145
0mm、の複合ロールを以下の手順で製造した。遠心力140
Gで回転する鋳型内に外層材を厚さ75mmになるように鋳
造した。外層が凝固した直後に、該外層の内面に肉厚40
mmに相当する量の中間層材を鋳造することにより、外層
の内面を再溶解させ、中間層と一体溶着させた。中間層
が凝固した後に鋳型の回転を停止し、内層材を鋳造する
ことによって外層−中間層−内層を一体溶着させた。外
層の表面温度が60℃以下になるまで冷却した後、鋳型を
解体した。
・比較ロール 比較ロール1は、CとCrが過多となって本発明の成分
限定範囲から逸脱し、外層の炭化物面積率(MCとM7C3
合計)が32.4%と本発明の限定範囲を逸脱したロールで
ある。比較ロール1は鋳型を解体した後、放置中に内層
から割損した。尚、比較ロール2と3は、それぞれNiグ
レン鋳鉄ロールと従来の組成のハイスロールであり、い
ずれも遠心鋳造法で製造された市販ロールである。
・本発明ロール 本発明ロールは、鋳型を解体した後、1050℃から焼入
れし、引き続いて500℃にて焼戻しする熱処理を行なっ
た。熱処理後超音波探傷等の検査も行なったが、中間層
及びその近傍へのザク巣等の欠陥もなく、内部性状も健
全であった。
上記本発明ロールと比較ロールを実際の熱間圧延仕上
げミルで使用した結果を図4に示す。図4の横軸は、耐
磨耗度でロール径1mmの消耗量(摩耗量+研削量)当た
りの鋼板の圧延量を示す。本発明のロールは、比較ロー
ル2と3の使用成績を大幅に上回る優れた耐摩耗性を示
した。また、ロール表面の肌荒れも発生せず、極めて良
好な結果が得られた。
(実施例4) 本発明例として、表6に示す化学組成の中間層材及び
内層材を溶解し(外層材の分析値は製品の化学分析結果
を記載)、胴径φ670mm、胴長1450mm、の複合ロールを
以下の手順で製造した。
(1)遠心力140Gで回転する鋳型内に外層として肉厚75
mmに相当する溶湯を鋳込んだ。
(2)外層材の鋳込み完了から11〜15分後に、該外層の
内面に肉厚40mmに相当する量の中間層材を鋳造して外層
の内面を再溶解させ、中間層と一体溶着させた。
(3)外層の鋳込み完了から40〜46分後に鋳型の回転を
停止し、内層材を鋳造することによって外層−中間層−
内層を一体溶着させた。
(4)外層の表面温度が60℃以下になるまで冷却した
後、鋳型を解体した。
(5)熱処理として100℃から焼入れ、500℃で焼き戻し
を行った。
各ロールとも、割損を起こすことなく熱処理を完了し
た。また、胴部を超音波探傷法で検査したが、中間層及
びその近傍へのザク巣などの欠陥も無く、内部性状も健
全であった。次に各ロールの胴端部を切り出し、外層、
中間層の肉厚中央部、及び内層(中間層〜内層境界から
30mm内側の位置)の化学組成を調べ、引張強さを測定し
た。表7に、それらの化学組成と引張強さを示す。本発
明のロールの中間層と内層の化学成分は、前述した好適
成分範囲に入っており、各層の引張強さも複合ロールと
して十分な500Mpa以上を満足している。
表6、7の組成からなる本発明ロールA,B,Cにあって
は、外層を形成する合金成分を適正化し、炭化物組成を
限定することにより、耐摩耗性に著しく優れ、然も、経
済的に優れた、遠心鋳造法で製造しても炭化物の偏析が
ない外層にするとともに、内層に鋳鉄系材料で最も強靭
なダクタイル鋳鉄を使用し、外層と内層との間に中間層
を設けて、それらを完全に冶金学的に結合させて一体と
した遠心鋳造製高性能ロールを得ることができる。
産業上の利用可能性 本発明により、近年の著しく過酷な圧延条件下でも、
極めて優れた耐摩耗性を発揮するとともに、圧延鋼板の
表面品質を更に向上する高性能ロールが、経済性に優れ
た遠心鋳造法で製造できるようになり、圧延鋼板の生産
性向上と製造コストの低減が可能となる。尚、本発明
は、円筒形状のスリーブロールへの適用も可能である。
また、本発明によれば、外層を形成する合金成分を適
正化し、炭化物組成を限定することにより、耐摩耗性に
著しく優れ、然も、経済的に優れた遠心鋳造法で製造し
ても炭化物の偏析がない外層にするとともに、内層に鋳
鉄系材料で最も強靭なダクタイル鋳鉄を使用し、外層と
内層との間に中間層を設けて、それらを完全に冶金学的
に結合させて、一体とした高性能遠心鋳造製ロールとす
ることができる。
フロントページの続き (72)発明者 湯田 浩二 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎 製鉄株式会社 知多製造所内 (56)参考文献 特開 平5−271867(JP,A) 特開 平6−346188(JP,A) 特開 平8−20837(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 27/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で、C;2.4〜2.9%、Si;1%以下、M
    n;1%以下、Cr;12〜18%、Mo;3〜9%、V;3〜8%、Nb;
    0.5〜4%を含有し、 且つ、下記(1)、(2)式を同時に満足し、 0.27≦Mo(%)/Cr(%)≦0.7 …(1) C(%)+0.2・Cr(%)≦6.2 …(2) 残部Fe及び不可避的不純物よりなる外層を有することを
    特徴とする熱間圧延用ロール。
  2. 【請求項2】重量比で、C;2.4〜2.9%、Si;1%以下、M
    n;1%以下、Cr;12〜18%、Mo;3〜9%、V;3〜8%、Nb;
    0.5〜4%を含有し、 且つ、下記(1)、(2)式を同時に満足し、 0.27≦Mo(%)/Cr(%)≦0.7 …(1) C(%)+0.2・Cr(%)≦6.2 …(2) さらに、Ni;1.5%以下、Co;6%以下、B;0.1%以下の1
    種あるいは2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純
    物よりなる外層を有することを特徴とする熱間圧延用ロ
    ール。
  3. 【請求項3】請求項1又は2において、MC型炭化物とM7
    C3型炭化物を面積率の合計で13〜30%含有する外層を持
    つことを特徴とする熱間圧延用ロール。
  4. 【請求項4】請求項3において、該外層に含有するM7C3
    型炭化物の面積率が6%以上であることを特徴とする熱
    間圧延用ロール。
  5. 【請求項5】請求項1又は2において、該外層と溶着一
    体化した該内層が球状黒鉛鋳鉄又は黒鉛鋼からなり、該
    内層が、重量比で、C;2.5〜4.0%、Si;1.5〜3.5%、Mn;
    1.5%以下、Cr;3%以下、Mo;3%以下、V;3%以下、Nb;2
    %以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなるこ
    とを特徴とする熱間圧延用ロール。
  6. 【請求項6】請求項1又は2において、該外層と該内層
    の間に中間層を有し、該中間層を介して外層と内層が溶
    着一体化し、該中間層が、重量比で、C;0.8〜3.0%、S
    i;0.3〜3.0%、Mn;1.5%以下、Cr;10%以下、Mo;4%以
    下、V;5%以下、Nb;3%以下を含有し、残部Fe及び不可
    避的不純物よりなることを特徴とする熱間圧延用ロー
    ル。
  7. 【請求項7】請求項6において、内層材への中間層混入
    比を5〜20%の範囲に規制することを特徴とする熱間圧
    延用ロール。
  8. 【請求項8】請求項6において、中間層材への外層混入
    比を5〜50%の範囲に規制することを特徴とする熱間圧
    延用ロール。
  9. 【請求項9】請求項5又は6において該内層又は該中間
    層あるいはその両方にNi;5%以下、Co;6%以下の1種以
    上を含有させることを特徴とする熱間圧延用ロール。
  10. 【請求項10】請求項1又は2において、該外層を遠心
    鋳造にて製造することを特徴とする熱間圧延ロール。
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