JP4650737B2 - 圧延用複合ロール - Google Patents

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本発明は、耐摩耗性および耐熱亀裂性に優れる熱間または冷間圧延ロール用外層材を用いた圧延用複合ロールに関するものであり、特に熱間薄板圧延機の仕上列に用いられるワークロールとして好適なものである。
圧延の生産性を決定する重要な特性として、ロールの耐摩耗性および耐熱亀裂性がある。耐摩耗性が乏しいと、早期にロール表面が摩滅し、被圧延材の寸法精度を損なう。これを防止する為にはロールを頻繁に取り替えなければならず、圧延操業の中断の頻度が増えることによる圧延工場の生産性の低下、ロール表面研削加工に要するコストの増大、さらにロール表面研削量の増大によるロール原単位の低下といった問題が発生する。
一方、圧延ロールは、高温の被圧延材との接触などにより、ロール表面にヒートクラックが発生する。耐熱亀裂性が乏しいと、このクラックがロール深部まで進展しやすく、ロール表面の欠け落ちや剥離、さらにはロール自体が折損し圧延を停止せざるを得なくなるといった問題が発生する。これを防止するためには、圧延使用後のロール表面の研削時に摩滅による凹凸を除去することに加え、ヒートクラックを完全に除去する必要がある。このように、耐熱亀裂性に乏しいロールは、ロール表面研削量が多くなりやすく、研削加工に要するコストの増大やロール原単位の低下といった問題が発生する。
近年、圧延工場のさらなる生産性の向上やロール原単位の向上が求められており、特に熱間薄板圧延機に用いられるワークロールには高い耐摩耗性と同時に高い耐熱亀裂性が要求される。さらに最近では、例えば微細粒組織熱延鋼板の製造プロセスのように、1スタンドでの圧延材の圧下率が大きい、いわゆる大圧下操業では、圧延ロールの負荷が極めて高くなる傾向にあり、これらに使用されるロールには耐摩耗性および耐熱亀裂性を飛躍的に向上させることが望まれている。
従来、耐摩耗性向上の要求に応えることを目論んだ圧延用ロールとして、遠心力鋳造にて製造されてなるハイス系合金の外層をもつ遠心力鋳造製ハイスロールが使用されている。このハイス系外層材には、Cr、Mo、W、Vなどの合金元素を多量に含んでおり、その組織には、硬質な粒状炭化物と、非粒状炭化物を含んでいる。ハイス系外層材は、これらの炭化物により硬さを高めるとともに、基地中の合金元素により室温および高温での高硬度を得たものである。
この種の従来の技術として、例えば特許文献1には、C:3.5〜5.5%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜1.2%、Cr:4.0〜12.0%、Mo:2.0〜8.0%、V:12.0〜18.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする熱間圧延用工具鋼が記載されている。前記熱間圧延用工具鋼について、またNb:8.0%以下を含有すること、さらにNi:5.5%以下を含有することが記載されている。また、熱間圧延用工具鋼からなる遠心力鋳造ロール用外層材において、0.2≦Nb/Vを満足する遠心力鋳造ロール用外層材が記載されている。
特許文献1によれば、耐摩耗性、耐クラック性、耐焼付き性を兼備し、工具として使用したときに相手材表面に損傷を発生させない熱間圧延用工具鋼を得ることができる。また、遠心鋳造しても偏析等を生じさせない圧延ロール用外層材を得ることができるものである。
また、特許文献2には、面積比で、粒状炭化物5〜30%と非粒状炭化物6%以上を含有する組織からなり、かつ基地の硬さがビッカース硬さ(Hv)550以上の外層材と、鋼製の芯材とからなることを特徴とする熱間圧延用複合ロールが記載されている。前記熱間圧延用複合ロールにおいて、前記外層の化学成分がC:1.0〜4.0重量%、Si:3.0重量%以下、Mn:1.5質量%以下、Cr:2〜10重量%、Mo:9重量%以下、W:20重量%以下、V:2〜15重量%、P:0.08重量%以下、S:0.06重量%以下、B:500ppm以上、残部Fe及び不純物元素からなることが記載されている。さらにNi:5.0重量%以下、Co:5.0重量%以下、Nb:5.0重量%以下のいずれかを含有することが記載されている。
特許文献2によれば、外層材が非粒状炭化物を所定量以上含有しているため、熱的負荷により、クラックが発生しても、クラックがロールの深部にまで進展するのが抑制される。これにより、耐ヒートクラック性の向上した熱間圧延用複合ロールとなっている。
また、特許文献3には、C含有量が2.0〜3.2%(重量%、以下同じ)であるハイス系鋳鉄材の外層の内面に、C:0.8〜1.9%、Si:3.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:6.0%以下、Mo:5.0%以下、W:5.0%以下、V:5.0%以下、残部実質的にFeからなる中間層が溶着一体化され、該中間層の内面に、C:0.2〜0.8%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.2〜2.0%、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、W:1.0%以下、V:1.5%以下、但しCr+Mo≧0.3%であり、残部実質的にFeからなる鋳鋼材の内層が溶着一体化されてなり、前記外層を構成するハイス系鋳鉄材は、C:2.0〜3.2%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:3〜10%、2×Mo+W:5〜22%、V:3〜8%、残部実質的にFeからなる圧延用複合ロールが記載されている。
特許文献3によれば、外層、中間層及び内層との溶着状態が良好であり、かつ、外層は所定の耐摩耗性を具備し、内層は所定の強靱性を具備することができるから、高品質の鉄鋼圧延用ロールを製造することができるものである。
また、特許文献4には、面積比で、粒状炭化物5〜30%と非粒状炭化物5%以下とを含有する組織からなり、かつ基地の硬さがビッカース硬さ(Hv)550以上の外層材と、鋼製の芯材とからなることを特徴とする耐摩耗複合ロールが記載されている。前記耐摩耗複合ロールにおいて、前記外層の化学成分がC1.0〜3.5重量%、Si3.0重量%以下、Mn1.5質量%以下、Cr2〜10重量%、Mo9重量%以下、W20重量%以下、V2〜15重量%、P0.08重量%以下、S0.06重量%以下、残部Fe及び不純物元素からなることが記載されている。さらに、B300ppm以下、Ni5.0重量%以下、Co5.0重量%以下、Nb5.0重量%以下のいずれかを含有することが記載されている。
特許文献4によれば、外層材が粒状炭化物及び非粒状炭化物を所定量含有しており、VCの硬質炭化物を含有しているので、耐摩耗性も良好であり、クラックの発生が抑制され、クラックを起点として表面が結晶単位で脱落摩耗することがない。これにより、耐肌あれ性が良好な圧延用複合ロールとなっている。
特開平9−256108号公報 特開平4−141553号公報 特開平9−209071号公報 特開平3−254304号公報
圧延ロールの耐摩耗性を向上させる手段として、CおよびCと結合し金属炭化物を形成する合金元素を多く含ませ、ロール材の硬さを増すことが一般的に知られている。合金元素のうち特にVは、Cと結合し硬質な粒状炭化物を形成し耐摩耗性を向上させる。また、NbもVと同様に粒状炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。
しかしながら、VやNbが過剰に含まれた溶湯を遠心力鋳造すると、遠心分離による偏析が発生する。たとえば、遠心力鋳造法の場合ではVにより形成される炭化物が軽いため内面に浮上し、圧延に用いる外層材外表面では含有量相当の炭化物が含まれない。このような現象は、遠心力鋳造鋳型内に鋳込まれた溶湯が凝固する際、その溶湯が初晶にて粒状炭化物を晶出する場合に発生しやすい。この初晶粒状炭化物は比重が6g/cm程度と溶湯残液(比重7〜8g/cm程度)に対して比重が軽く、過剰に晶出すると遠心力により内面側に分離するためである。
CおよびVやNbがある一定範囲を超えると溶湯より初晶粒状炭化物を晶出し、その範囲は初晶投影状態図として種々のものが報告されている。たとえば、Feおよび合金よりなるC−V初晶投影状態図では、質量%でCが2.5%以上かつVが9.5%以上の領域では初晶にて粒状炭化物が晶出することが報告されている。また、Fe系合金よりなるC−Nb初晶投影状態図では、質量%でCが1.5%以上かつNbが4.0%以上の領域では初晶にて粒状炭化物が晶出することが報告されている。そこで、従来の遠心力鋳造されてなる圧延ロール用外層材は、初晶粒状炭化物を抑制し偏析を発生させないために、CおよびVやNbの含有量を制限している。
また、炭化物の比重を大きくすることで遠心分離による偏析を防止する手段も提案されている。たとえば、前述の特許文献1には、VC炭化物はその比重が母溶湯に対して小さく、遠心力鋳造を行なうと偏析する。NbはVと複合炭化物{V,Nb}Cを形成し、V単独の炭化物のときより比重を増大させる。それにより、遠心分離による偏析を防止することが記載されている。また、遠心力鋳造法で製造した場合に均一なロール用外層材を得るためには、0.2≦Nb/Vとしなければならないことが記載されている。また、Vが18.0%を超えると焼付き性向上の効果が飽和するとともに、溶解不良等の製造上の問題を生じる危険がある。NbはVと複合炭化物{V,Nb}Cを形成するが、8.0%を超えると溶解不良等の製造上の問題を生じることが記載されている。
一方、ハイス系外層材の製造法として前記の遠心力鋳造法の他に連続肉盛鋳造法がある。特許文献2には、外層材の化学組成の制約が少ないロールの製造方法として、鋼材からなる芯材の周囲に高周波コイルを用いて連続的に外層を形成するいわゆる連続肉盛鋳造法により、硬質の炭化物を形成するV、W、Mo等の元素を外層材に多量に添加できるようになり、従来の遠心力鋳造ロールと比較して耐摩耗性及び耐ヒートクラック性の向上したロールの製造が可能となったことが記載されている。しかしながら肉盛する溶湯中に初晶粒状炭化物が過剰に晶出すると、この粒状炭化物が肉盛溶湯の上部に浮上分離し、肉盛外層中に含まれない。これを防ぐため、高周波コイルの撹拌を強化すると、浮上分離した炭化物が肉盛外層中へ不均質に含まれることにより炭化物偏析が発生する。例えば特許文献2には、粒状炭化物が30%を超えると均一に分散することが困難となることが記載されている。これらを防ぐため、連続肉盛鋳造されてなる外層に含まれるVやNbの含有量を制限している。
またここで、圧延ロールのもう一つの重要な特性である耐熱亀裂性について述べる。特許文献2には、熱間圧延用複合ロールの外層の組織中に非粒状、特に網目状に生成する炭化物が多く存在すると、熱応力によりこの炭化物の部位に優先的に微細なクラックが発生するが、このクラックはロールの表面付近にとどまり、深部にまで進展しないことが記載されている。また外層の基地がその深部まで十分に硬化しているうえ、熱負荷により微細なクラックが生じても、非粒状炭化物に沿って、分散されるので、クラックがロール深部にまで進展することがないことが記載されている。
一方、このような多量の合金成分が添加された外層の内面に内層を形成する場合、、外層と内層との間に引け巣や炭化物偏析等の溶着不良が発生したり、外層から内層へ多量の合金成分が混入するため、内層の強靱性が劣化するという問題があった。特許文献3には、高C材料の外層と低C材料の内層を有する複合ロールを遠心力鋳造により作製するに際し、中間層を設けることで前記の問題を抑制できることが記載されている。
このように、従来の遠心力鋳造されてなるハイス系外層材および連続肉盛鋳造されてなるハイス系外層材の耐摩耗性を飛躍的に向上させるには、VおよびNbを多量に添加すればよいが、前述の通り実際には製造上極めて困難である。
一方、特許文献4には、組織中の非粒状、特に網目状に生成する炭化物が多く存在すると、この炭化物の部位に優先的にクラックが発生、進展し、このようなクラックを起点として肌荒れが発生することが記載されている。肌荒れが生じると耐用圧延量が制限されることや、クラック交点からロール表面が微細に欠け落ちることにより耐摩耗性が損なわれる問題が発生する。このように耐摩耗性と耐熱亀裂性とを兼備させることは従来のハイス系外層材では極めて困難である。
このように、従来の遠心力鋳造されてなるハイス系外層材および連続肉盛鋳造されてなるハイス系外層材の耐摩耗性を飛躍的に向上させるには、VおよびNbを多量に添加すればよいが、前述の通り実際には製造上極めて困難である。
そこで本発明は、従来の圧延ロール用外層材における問題点を解消し、優れた耐摩耗性および耐熱亀裂性を兼備するとともに、外層と内層が健全に溶着された圧延用複合ロールの提供を目的とする。
本発明の圧延用複合ロールは、特にC、V等の合金量が格段に多く添加されている外層の内面に内層を設け、外層と内層の接合強化を図ったことに最大の特徴がある。
すなわち、第1の本発明の圧延用複合ロールは、遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側に粒状炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側の粒状炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる外層であって、外層の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、その外層は円相当直径で10μmを超える粒状炭化物が面積率で20%を超え60%以下、非粒状炭化物が面積率で5%以下である組織と、基地の硬さがビッカース硬さでHv550を超えHv900以下である外層と、前記外層の内面に金属接合された化学成分が質量%で、C:0.5〜3.0%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%を含有したFe基合金からなる内層を有し、外層と内層との間の引張強度が400MPa以上であることを特徴とする。
第2の本発明の圧延用複合ロールは、遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側に粒状炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側の粒状炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる外層であって、外層の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、その外層は円相当直径で10μmを超える粒状炭化物が面積率で20%を超え60%以下、非粒状炭化物が面積率で5%以下である組織と、基地の硬さがビッカース硬さでHv550を超えHv900以下である外層と、前記外層の内面に金属接合された化学成分が質量%で、C:0.5〜3.0%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%を含有したFe基合金からなる内層を有する圧延用複合ロールにおいて、外層と内層との間の接合境界部を含む引張試験片を引張試験に供したとき、引張破断位置が接合境界部を除く外層に存することを特徴とする。
前記粒状炭化物中のV含有量が質量%で30%以上であることを特徴とする。
前記外層のVの一部を、質量%で下記(1)式かつ(2)式を満足する範囲のNbで置換することを特徴とする。
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
0.2>Nb%/V% ・・・(2)
さらに下記(3)式を満足することを特徴とする。
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(3)
さらに前記外層に質量%で、Ni:2.0%以下(0%を含む)およびCo:10.0%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする。
さらに前記外層に質量%で、Ti:0.5%以下(0%を含む)およびAl:0.5%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする。
次に、本発明の圧延用複合ロールの外層の組織要素について説明する。
粒状炭化物の円相当直径が10μm以下では、熱応力により生じたクラックの分散が不十分であり、ロール内部にまで深く進展し、十分な耐熱亀裂性が得られない。そこで発明者らは、粒状炭化物の円相当直径を10μmを超える寸法にすることが、クラックを分散させることに対して有効であることを見出した。本発明の外層は、前記円相当直径で10μmを超える粒状炭化物を面積率で20%を超えれば、十分な耐摩耗性を有するとともに、さらに熱応力により生じたクラックを分散させ、耐熱亀裂性を向上させることができる。なお、円相当直径が80μmを超える粒状炭化物は、均質に分散することが困難となり肌荒れが発生しやすくなるため、少ないほうが好ましい。円相当直径で10μmを超える粒状炭化物が面積率で20%以下では、十分な耐熱亀裂性が得られない。一方、60%を超えると隣り合う粒状炭化物同士の間隔が狭く、クラックが伝播しやすくなるため耐熱亀裂性が劣化する。よって、円相当直径で10μmを超える粒状炭化物の望ましい面積率の範囲は20%を超え60%以下である。また、円相当直径で10μmを超える粒状炭化物の面積率のより好ましい範囲は、面積率で30%を超え50%以下である。
ここで、本発明における円相当直径について説明する。図1に円相当直径のの概念図を示す。円相当直径とは、対象物(ここでは炭化物を指す)と等しい面積の円の直径を表したものである。円相当直径は円換算直径ともいう。図1において測定対象物15の面積をAとすると、円相当直径は測定対象物の面積Aと等しい面積に相当する円Cの直径であり、式(4)で表される。
円相当直径=√(A×4/π) ・・・(4)
本発明の外層は、非粒状炭化物を面積率で5%以下とすることにより耐熱亀裂性をより一層向上できる。非粒状炭化物が面積率で5%を超えると、非粒状炭化物が網目状に晶出しやすく、この部位に優先的にクラックが発生、進展し十分な耐熱亀裂性が得られない。よって、望ましい非粒状炭化物の面積率は5%以下である。さらに好ましい非粒状炭化物の面積率は3%以下である。また、非粒状炭化物は、少ないほど好ましく、面積率で0%でもよい。
基地は、前記粒状炭化物および非粒状炭化物を除く部分であり、おもにFeおよび合金元素からなり、熱処理による変態や基地中の極微細な炭化物の析出などにより硬さが変化する。基地の硬さがビッカース硬さでHv550以下では耐摩耗性が低下する。耐摩耗性向上の観点から基地の硬さは高いほうが望ましいが、Hv900を超えると、基地の靭性が低下し、耐熱亀裂性が劣化する。よって、望ましい基地の硬さの範囲は、ビッカース硬さでHv550を超えHv900以下である。また、基地の硬さのより好ましい範囲は、Hv650を超えHv850以下である。
本発明の外層に含まれる粒状炭化物中のV含有量を質量%で30%以上とすることにより、格段に耐摩耗性が向上するので好ましい。
次に、本発明における外層材の化学成分(質量%)の限定理由について説明する。なお、本発明の外層材の化学成分は、溶湯の成分ではなく、最終製品における外層の化学成分を示す。
C:2.5%を超え9.0%以下
Cは、おもにVもしくはNbなどの合金元素と結合し粒状炭化物を形成することで耐摩耗性に寄与する必須の元素である。また、合金元素と結合しないCはおもに基地中に固溶もしくは合金元素とともに極微細に析出し基地を強化することでも耐摩耗性に寄与する。Cが2.5%以下では粒状炭化物の量が不足し十分な耐摩耗性が得られない。一方、Cが9.0%を超えると、炭化物が過多となり耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいC含有量は3.5%を超え9.0%以下であり、さらに好ましくは4.5%を超え9.0%以下である。
Si:0.1%を超え3.5%以下
Siは、溶湯中で脱酸剤として作用する。Siが0.1%以下では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、3.5%を超えると脆化する。より好ましいSi含有量は0.2〜2.5%であり、さらに好ましくは0.2〜1.5%である。
Mn:0.1%を超え3.5%以下
Mnは、溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定し、0.1%を超えると効果がある。Mnが3.5%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり安定して硬さを維持できず、耐摩耗性が劣化しやすくなる。より好ましいMn含有量は0.2〜2.5%であり、さらに好ましくは0.2〜1.5%である。
V:15.0%を超え40.0%以下
Vは、おもにCと結合し粒状炭化物を形成する本発明の重要な元素である。本発明の特徴の一つは、外層材に極めて多量の粒状炭化物を含むことにある。Vが15.0%以下では、粒状炭化物が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Vが40.0%を超えると粒状炭化物が過剰となり、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいV含有量は15.0%を超え40.0%以下であり、さらに好ましくは18.0%を超え40.0%以下である。
Cr:1.0%を超え15.0%以下
Crは、基地に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地部を強化する。Crが1.0%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。また、15.0%を超えると非粒状炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいCr含有量は3.0〜9.0%である。
Mo:0.5%を超え20.0%以下
Moは、基地に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地を強化する。さらに、Moの一部はVやNbなどとともに粒状炭化物を形成する。Moが0.5%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、20.0%を超えると非粒状炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいMo含有量は2.5〜20.0%であり、さらに好ましくは2.5〜10.0%以下である。
W:1.0%を超え40.0%以下
Wは、基地部に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地部を強化する。さらに、Wの一部はVやNbなどとともに粒状炭化物を形成する。Wが1.0%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、40.0%を超えると非粒状炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいW含有量は、5.0〜40.0%であり、さらに好ましくは5.0〜20.0%以下である。
本発明の外層材には耐摩耗性を十分に発揮すべく必要な基地を得るために、基地の強化元素であるCr、MoもしくはWの少なくともいずれか1種または2種以上を含有させることが望ましい。
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
0.2>Nb%/V% ・・・(2)
Nbは、粒状炭化物を形成する点でVと同様の作用がある。質量%でVが1.0%の場合、Nbは原子量の比より質量%で0.55×Nb%でVと等価となる。よって、(1)式の範囲でVの一部をNbで置換することができる。一方、Nb%/V%の値が0.2以上では、粒状炭化物が均質に分散することが困難となる。すなわち、粒状炭化物同士が凝集などすることにより、粒状炭化物間同士の間隔が広い部分と狭い部分が混在し、粒状炭化物同士の間隔の狭い部分に優先的にクラックが伝播しやすくなり耐熱亀裂性が劣化するため、Vを置換するNbは(2)式を満足する必要がある。
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(3)
C%−0.2×(V%+0.55Nb%)の値が0以下となると、粒状炭化物の量が十分に得られなくなるとともに、基地中にVやNbが過剰となり基地の硬さが得られず耐摩耗性が低下する。また、C%−0.2×(V%+0.55Nb%)の値が2.0%を超えると、非粒状炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。
また、圧延ロールの用途、使用方法に応じて、本発明の外層材には以下の成分を適宜添加することができる。
Ni:2.0%以下
Niは基地に固溶し、基地の焼入れ性を向上させるのに有効である。Niが2.0%を超えると基地のオーステナイトが安定するため、基地の硬さが十分に得られない。
Co:10.0%以下
Coは基地部に固溶し、基地強化の効果がある。また、高温においても基地の硬さを維持できる。Coが10.0%を超えると靭性が低下する。一方、Coは高価であるので、経済性と使用条件を考慮し含有量を決定するのが望ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、溶湯中で脱酸剤として作用するほか、Nと結合して窒化物を形成し、粒状炭化物の核となり、粒状炭化物を微細にする効果がある。また一部はCと結合して粒状炭化物の一部となる。Tiの効果は0.5%以下で十分である。
Al:0.5%以下
Alは、溶湯中で脱酸剤として作用するほか、粒状炭化物を微細にする効果がある。0.5%を超えると焼入れ性を悪化させ十分な基地硬さが得がたく好ましくない。
次に、本発明の内層について説明する。本発明の外層は耐摩耗性を確保するため高合金成分である。そのため、外層と内層を接合した場合、外層から内層に合金成分が混入し靭性が劣化する。さらに、外層が高合金成分であるため、特にVおよびNbの炭化物が多量に存在し、遠心力鋳造を行った場合、炭化物の比重により外層材の内面に偏析が生じ、内面との溶着部分に偏在する炭化物層が発生するため、外層材と内層材の溶着が困難となる。そこで、内層成分を特定させることで、炭化物層の発生を抑制することにより、外層と内層の溶着の健全性及び強化を図った。
本発明の圧延用複合ロールにおいては、外層と内層との間の引張強度が400MPa以上であることを特徴とする。これにより、圧延使用時に発生する応力振幅によって疲労し外層が剥離しロール破壊することを防止できる。より好ましい外層と内層との間の引張強度は500MPa以上である。
また、外層と内層との間の接合境界部を含む引張試験片を引張試験に供したとき、引張破断位置が接合境界部を除く部位すなわち外層に存するようにすれば、引張応力が極大となり疲労破壊の起点となりうる弱点部が接合境界部を除く部位に位置することになり、熱間薄板圧延機のワークロールのような高負荷条件においても十分耐えることが可能となる。
次に、内層の成分(質量%)の限定理由を説明する。なお、本発明の内層の成分とは、溶湯の成分ではなく、最終製品における内層の化学成分を示す。
C:0.5〜3.0%
Cは強度向上に寄与するが、0.5%未満では溶着が不十分になりやすく、外層と内層の境界部に鋳巣等の欠陥が生成しやすい。また、Cが3.0%を超えると炭化物が過多となり強度が低下しやすい。より好ましいCの範囲は0.8〜2.4%である。
Si:0.1〜3.0%
Siは、溶湯中で脱酸剤として作用する。Siが0.1%以下では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、3.0%を超えると焼入れ性が低下し脆化するため、内層としては不適となる。Siのより好ましい範囲は0.2〜1.5%であり、さらに好ましい範囲としては0.2%〜1.0%である。
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定し、0.1%を超えると効果がある。Mnが2.0%を超えると脆化しやすくなり内層としては不適となる。Mnのより好ましい範囲は0.2〜1.5%であり、さらに好ましい範囲は0.2〜1.0%である。
内層には上記以外にも、目的に応じて、Ni、Cr、Mo、W、V、Nb、Co、Ti、Al等の合金元素が混入してもよい。
次に、本発明における圧延用複合ロールの構造について説明する。図2は本発明の遠心力鋳造されてなる圧延用複合ロールの断面の模式図を示す。本発明の外層は、初晶粒状炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を遠心力鋳造用鋳型内に鋳込み、遠心力鋳造することにより、内面側に粒状炭化物を濃化した層を形成させることで得られる。図2において、イ部は粒状炭化物が密集濃化した層である。ロ部はそれ以外の部位であり粒状炭化物の存在が乏しい層である。ハ部は内層である。本発明における圧延用複合ロールは、外層部を鋳込んだ後、図2のハ部の内層を鋳込む。ロール素材が完成した後、図2のロ部を、切削加工などにより除去し、図2のイ部を外層とした本発明の圧延用複合ロールを得る。
本発明の圧延用複合ロールは、圧延用ワークロール全般で優れた耐摩耗性および耐熱亀裂性を発揮するが、特に熱間薄板圧延機の仕上列に用いられるワークロールで極めて優れた耐摩耗性および耐熱亀裂性を発揮し、圧延工場における生産性の向上やロール原単位の向上に寄与する。
本発明の外層材は、初晶粒状炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を遠心力鋳造用鋳型内に鋳込み、遠心力鋳造することにより、鋳型内の内面側に粒状炭化物を濃化した層を形成した。供試材No.1〜5は本発明の実施例であり、供試材No.8は比較例である。供試材No.1〜5およびNo.8はこのような遠心力鋳造で形成し、前述の図2のイ部に相当する部位より採取したものである。また、供試材No.6〜7は比較例、供試材No.9は従来例であり、いずれも遠心力鋳造で形成し供試材を採取した。採取した供試材は、鋳込後1000〜1200℃で焼入れを行い、500〜600℃で3回焼戻しを行う熱処理を施した後、後述の各種試験片形状に加工を行った。これらの供試材No.1〜9の化学成分(質量%)を表1に示す。ここで、表1中の式(1)はV%+0.55×Nb%の値、式(2)はNb%/V%の値、また式(3)はC%−0.2×(V%+0.55×Nb%)の値である。
さらに、供試材No.1〜9の粒状炭化物中のV含有量、基地のビッカース硬さ、円相当直径10μmを超える粒状炭化物の面積率、非粒状炭化物の面積率の測定をそれぞれ行った。さらに、耐摩耗性の評価として圧延摩耗試験機による摩耗試験、また靭性および耐熱亀裂性の評価として破壊靭性値KICの測定およびヒートクラック試験を行った。
粒状炭化物中のV含有量の分析は、供試材を鏡面研磨し、ピクリン酸エタノール溶液を用いて基地を軽く腐食した後、任意の粒状炭化物1個中の任意の面において、EDX分析装置 KEVEX社製デルタIIIを用いて、原子量がナトリウム以上の化学成分について分析を行い、分析元素のうちVに相当する割合を質量%で求めた。各供試材それぞれ任意の5個の粒状炭化物について分析を行い、その平均値を求めた。
基地のビッカース硬さの測定は、供試材を鏡面研磨し、ピクリン酸エタノール溶液を用いて基地を軽く腐食した後、基地をビッカース硬さ試験機を用い、荷重50g〜200gの範囲で測定した。供試材それぞれ任意の5箇所についてその平均値を求めた。
円相当直径10μmを超える粒状炭化物の面積率の測定は、供試材を鏡面研磨し、過硫酸アンモニウム水溶液を用いて基地を腐食した後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCAII)を使用し測定した。1視野が供試材の0.23mm×0.25mmに相当する視野で面積率の測定を行った。この測定を、各供試材それぞれ任意の20視野について行い、その平均値を求めた。また、非粒状炭化物についても同様の測定を行った。
図3は圧延摩耗試験機の概略図を示す。図3において、圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延材Sを余熱する加熱炉4と、圧延材Sを冷却する冷却水槽5と、圧延材Sの巻取り機6とテンションコントローラ7とから構成される。圧延機1には試験用ロール2、3が組み込まれる。試験用ロールは前述の各供試材から作製し、外径60mm、内径40mm、幅40mmの小型スリーブロールを用いた。圧延摩耗試験機に試験用ロールを組み込み、試験条件が、圧延材料:SUS304、圧下率:25%、圧延速度:150m/min、圧延温度:900℃、圧延距離:300m/回、ロール冷却:水冷、ロール数:4重式にて試験を行った。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さを触針式表面粗さ計により測定した。
破壊靭性値KICは、各供試材より破壊靭性値KIC測定用の試験片を採取し、ASTM E399に準拠した試験により測定した。測定は各供試材につき2個の試験片について行い、その平均値を求めた。
ヒートクラック試験は、まず供試材より直径30mm、長さ30mmの円柱状の試験片を採取し、端面を鏡面研磨してヒートクラック試験用試験片とした。その後、試験片の端面を700℃のソルトバスと、30℃の水とに交互に浸漬する操作を5回繰り返した後、試験片を表面と垂直方向に切断し、表面に生じたヒートクラックの深さを測定した。各供試材それぞれ5個の試験片について行い平均値を求めた。
供試材No.1〜9の粒状炭化物中のV含有量(質量%)、基地硬さ(Hv)、円相当直径で10μmを超える粒状炭化物面積率(%)、非粒状炭化物面積率(%)、摩耗量(μm)、KIC(kg/mm3/2)およびヒートクラック深さ(mm)を表2にまとめて示す。
図4に本発明の供試材No.1の金属組織を示す。また図5に従来材の供試材No.9の金属組織を示す。図4において、白色の部分が粒状炭化物であり、黒色の部分は基地である。図5において、白色の部分が炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.1は粒状炭化物が高濃度に分布しているのがわかる。一方供試材No.9は粒状炭化物が部分的に偏在して分布し、非粒状炭化物は網目状に分布しているのが判る。
本発明の供試材No.1〜5の摩耗量は、従来材の供試材No.9に比べ半分以下であり、耐摩耗性が極めて良好である。また、本発明材は破壊靭性値KICも従来材以上であり十分な靭性があり、さらにヒートクラック深さが従来材よりも浅く、耐熱亀裂性に優れている。
比較例の供試材No.6は、C%、Ni%、式(3)の値、基地硬さ、および円相当直径で10μmを超える粒状炭化物面積率が本発明の範囲外であり、本発明の供試材に比べても破壊靭性値KICは良好であるものの耐摩耗性が極めて劣る。
比較例の供試材No.7は、V%、Cr%、式(1)の値、式(3)の値、粒状炭化物中のV含有量、円相当直径で10μmを超える粒状炭化物の面積率、および非粒状炭化物の面積率が本発明の範囲外であり、本発明の供試材に比べて耐摩耗性および耐熱亀裂性が劣り、特に破壊靭性値KICが極めて劣る。
比較例の供試材No.8は、式(2)の値が本発明の範囲外であり、本発明の供試材に比べて耐熱亀裂性が劣る。
次に、本発明の圧延用複合ロールの内層について検討を行った。表3に内層の最終製品における化学成分(質量%)を示す。供試材No.11〜13は本発明の内層材質である。供試材No.14、No.15は比較例であり、供試材No.16は従来の内層材質である球状黒鉛鋳鉄である。これらの材質を使用して、以下の溶着試験を行った。
溶着試験に用いる外層は表1に示す本発明材No.1とした。内径500mm、長さ1200mmの金型および遠心力鋳造機を用いて表1のNo.1に示す外層になるように調製された溶湯を注入した。所定の時間が経過した後、さらに表3のNo.11〜16に示す成分になるように調製された内層溶湯を注入した。このようにして複合ロールの製造を行った。
上記の試験ロールは鋳型と共に自然冷却し、ロールが室温になった時点で解体を行い、試験ロール素材を取り出した。ロール素材の胴体部において炭化物の少ない部分(図1のロ部)を旋盤加工にて除去し、外径350mm、胴長600mmの試験ロールを製造した。試験ロールに適正な熱処理を行った後、ロール胴体中央部よりステッキ加工により円盤型素材(ロール外層、内層を含む素材)を切り出し、前記円盤型素材より各種試験片を採取した。そして、溶着部の健全性の確認を行った。また、外層と内層の間の境界引張り試験を行った。
表3に示すように、本発明の供試材No.11〜13の境界は正常に溶着しており、外層と内層との間の引張強度も480MPa以上であり内層に適していることが判った。一方、C%の低い供試材No.14では、接合境界部に鋳巣が多量に存在し、溶着不良が発生しているのが認められ、外層と内層との間の引張強度も非常に低い。また、C%の高い供試材No.15およびNo.16は接合境界部周辺に多量の炭化物偏析が認められ、引張強度も低いことが判った。
図6は本発明の供試材No.11の引張試験後の断面組織写真を示す。図6において、本発明の供試材は、外層と内層との間の接合境界部に鋳巣や凝集した炭化物層はなく、外層側で破断していることがわかる。
図7は従来例の供試材No.16の引張試験後の断面組織写真を示す。図7において、従来例の供試材は、外層と内層との間の接合境界部に凝集した炭化物層があり、脆弱な接合境界部で破断していることがわかる。
図8は本発明の圧延用複合ロールの種々の形態を示す概略断面図である。図8の(a)は、本発明の外層イと、内層ハよりなる中実ロールである。図8(b)は本発明の外層イと、内層ハよりなる中空スリーブロールである。ヘは中空部である。図8(c)は本発明の外層イと、内層ハよりなる中空スリーブロールを金属製の軸材ホに嵌合させたものである。なお、ここでいう外層イは、前述の図2におけるMC炭化物の乏しい層ロを加工除去したもので、MC炭化物が濃化した層イ部と同じものである。
また、本発明の圧延用複合ロールを製造し、実際に圧延を行ったところ、極めて優れた耐摩耗性および耐熱亀裂性を発揮することが確認できた。
本発明の圧延用複合ロールは、圧延用ワークロール全般で優れた耐摩耗性および耐熱亀裂性を発揮するが、特に熱間薄板圧延機の仕上列に用いられるワークロールで極めて優れた耐摩耗性および耐熱亀裂性を発揮し、圧延工場における生産性の向上やロール原単位の向上に寄与する。
円相当直径を説明するための図である。 本発明の圧延用複合ロールを説明するための断面概略図である。 圧延摩耗試験機の概略図である。 本発明の供試材No.1の光学顕微鏡による金属組織写真である。 従来材の供試材No.9の光学顕微鏡による金属組織写真である。 本発明の供試材No.11の引張試験後の断面組織写真を示す。 従来例の供試材No.16の引張試験後の断面組織写真を示す。 本発明に係る圧延用複合ロールの種々の形態の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 圧延摩耗試験機、 2 試験用ロール、 3 試験用ロール、 4 加熱炉、
5 冷却水槽、 6 巻取り機、 7 テンションコントローラ、 S 圧延材、
15 対象物 A 対象物の面積、 C 円、 L 対象物の周囲長、
イ MC型炭化物遠心分離濃化層、 ロ イを除く部位、 ハ 内層、
ホ 軸材、 へ 中空部

Claims (7)

  1. 遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側に粒状炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側の粒状炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる外層であって、外層の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、その外層は円相当直径で10μmを超える粒状炭化物が面積率で20%を超え60%以下、非粒状炭化物が面積率で5%以下である組織と、基地の硬さがビッカース硬さでHv550を超えHv900以下である外層と、前記外層の内面に金属接合された化学成分が質量%で、C:0.5〜3.0%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%を含有したFe基合金からなる内層を有し、外層と内層との間の引張強度が400MPa以上であることを特徴とする圧延用複合ロール。
  2. 遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側に粒状炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側の粒状炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる外層であって、外層の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、その外層は円相当直径で10μmを超える粒状炭化物が面積率で20%を超え60%以下、非粒状炭化物が面積率で5%以下である組織と、基地の硬さがビッカース硬さでHv550を超えHv900以下である外層と、前記外層の内面に金属接合された化学成分が質量%で、C:0.5〜3.0%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%を含有したFe基合金からなる内層を有する圧延用複合ロールにおいて、外層と内層との間の接合境界部を含む引張試験片を引張試験に供したとき、引張破断位置が接合境界部を除く外層に存することを特徴とする圧延用複合ロール。
  3. 前記粒状炭化物中のV含有量が質量%で30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧延用複合ロール。
  4. 前記外層のVの一部を、質量%で下記(1)式かつ(2)式を満足する範囲のNbで置換することを特徴とする請求項1または2に記載の圧延用複合ロール。
    11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
    0.2>Nb%/V% ・・・(2)
  5. さらに下記(3)式を満足することを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
    0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(3)
  6. さらに前記外層に質量%で、Ni:2.0%以下(0%を含む)およびCo:10.0%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
  7. さらに前記外層に質量%で、Ti:0.5%以下(0%を含む)およびAl:0.5%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、2、4、5、6のいずれかに記載の圧延用複合ロール。
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