JP3124370B2 - パラチノース糖付加物およびその製造法 - Google Patents
パラチノース糖付加物およびその製造法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品用素材として有用
な新規パラチノース糖付加物およびその酵素化学的製造
法に関する。
な新規パラチノース糖付加物およびその酵素化学的製造
法に関する。
【0002】
【従来の技術】パラチノース(6-O-glucopyranosyl-α-
fructofranose)は、非う蝕性に優れ、ガムまたはキャ
ンディーなどに利用されているが、結晶性が非常に高く
ざらついた食感を与えるため、食品への利用の用途は限
られている。パラチノースが有するこの高い結晶性を低
減できれば、多くの食品の食感を損なうことなく食品に
添加できると考えられる。すでに、シクロマルトデキス
トリングルカノトランスフェラーゼ(以下、CGTaseとい
う)を用いたパラチノース糖付加物が開発されている。
CGTaseを用いて製造されるパラチノース糖付加物(以
下、CPオリゴ糖という)は実際にパラチノースに比べ
て結晶性は低く、かつ、パラチノースの結晶防止剤とし
て利用できることが示唆されている。このように、パラ
チノースに糖を付加することによりパラチノースの結晶
性を低減できることがすでに明らかとなっている。
fructofranose)は、非う蝕性に優れ、ガムまたはキャ
ンディーなどに利用されているが、結晶性が非常に高く
ざらついた食感を与えるため、食品への利用の用途は限
られている。パラチノースが有するこの高い結晶性を低
減できれば、多くの食品の食感を損なうことなく食品に
添加できると考えられる。すでに、シクロマルトデキス
トリングルカノトランスフェラーゼ(以下、CGTaseとい
う)を用いたパラチノース糖付加物が開発されている。
CGTaseを用いて製造されるパラチノース糖付加物(以
下、CPオリゴ糖という)は実際にパラチノースに比べ
て結晶性は低く、かつ、パラチノースの結晶防止剤とし
て利用できることが示唆されている。このように、パラ
チノースに糖を付加することによりパラチノースの結晶
性を低減できることがすでに明らかとなっている。
【0003】しかし、このCPオリゴ糖は、非還元末端
にG-α-1,4-G-構造(ここで、Gはグルコースを示す。以
下、グルコースを適宜"G"と略す。)を有し、これを食
した場合、口腔内において虫歯菌であるS.mutansなどの
細菌により容易にグルコースが遊離され、このグルコー
スを利用して酸醗酵が行われるために非う蝕効果が期待
できなくなる。
にG-α-1,4-G-構造(ここで、Gはグルコースを示す。以
下、グルコースを適宜"G"と略す。)を有し、これを食
した場合、口腔内において虫歯菌であるS.mutansなどの
細菌により容易にグルコースが遊離され、このグルコー
スを利用して酸醗酵が行われるために非う蝕効果が期待
できなくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の課
題を解決するものであり、その目的とするところは、パ
ラチノースの高い結晶性を糖の付加によって低減させ、
かつ、非う蝕性を有するパラチノース糖付加物を提供す
ることにある。
題を解決するものであり、その目的とするところは、パ
ラチノースの高い結晶性を糖の付加によって低減させ、
かつ、非う蝕性を有するパラチノース糖付加物を提供す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のパラチノース糖
付加物は、パラチノースの構造中に存在するグルコース
残基の6位炭素にグルコース残基、または複数のグルコ
ースがα-1,6結合で連結しているオリゴ糖残基が、α-
1,6結合している。
付加物は、パラチノースの構造中に存在するグルコース
残基の6位炭素にグルコース残基、または複数のグルコ
ースがα-1,6結合で連結しているオリゴ糖残基が、α-
1,6結合している。
【0006】本発明のパラチノース糖付加物の製造方法
は、グルコース供与体とパラチノースとの混合物にデキ
ストリンデキストラナーゼを作用させる工程を包含す
る。
は、グルコース供与体とパラチノースとの混合物にデキ
ストリンデキストラナーゼを作用させる工程を包含す
る。
【0007】好適な実施態様においては、上記反応系に
は、デキストリンデキストラナーゼに加えて、枝切り酵
素が含有される。
は、デキストリンデキストラナーゼに加えて、枝切り酵
素が含有される。
【0008】好適な実施態様においては、本発明のパラ
チノース糖付加物は、上記方法により製造される。
チノース糖付加物は、上記方法により製造される。
【0009】本発明に用いられるグルコース供与体と
は、非還元末端にα-1,4結合あるいはα-1,6結合したグ
ルコース残基を有するオリゴ糖または多糖類、それらを
構造中に有する化合物およびそれらの分解物のことをい
う。これらを含む混合物もグルコース供与体として利用
できる。さらに、澱粉などの基質からCGTaseあるいはDD
aseを用いて製造されたオリゴ糖または多糖類などもグ
ルコース供与体として利用できる。本発明に用いられる
グルコース供与体としては、好ましくは、澱粉、デキス
トランまたはそれらの分解物などが挙げられる。
は、非還元末端にα-1,4結合あるいはα-1,6結合したグ
ルコース残基を有するオリゴ糖または多糖類、それらを
構造中に有する化合物およびそれらの分解物のことをい
う。これらを含む混合物もグルコース供与体として利用
できる。さらに、澱粉などの基質からCGTaseあるいはDD
aseを用いて製造されたオリゴ糖または多糖類などもグ
ルコース供与体として利用できる。本発明に用いられる
グルコース供与体としては、好ましくは、澱粉、デキス
トランまたはそれらの分解物などが挙げられる。
【0010】本発明に用いられるデキストリンデキスト
ラナーゼ(以下、DDaseという)は、α-1,4結合のみを
有するオリゴ糖または多糖類からデキストランを生成す
る酵素として古くから知られており、それはグルコノバ
クターオキシダンスATCC11894株(Gluconobact
er oxydans; American Type Culture Collection strai
n No.11894)、グルコノバクターオキシダンスATCC
11895株(Gluconobacter oxydans; American Type
Culture Collection strain No.11895)などの菌に存在
する。DDaseを有するこれら酢酸菌においては、病原性
などは知られておらず、従って、これらの菌由来のDDas
eを食品原料加工に用いても安全である。本発明に用い
られる上記DDaseは、好ましくは、本発明者らによる精
製法(特願平3-69590号において詳細に記載されてい
る)により精製されたものが用いられる。
ラナーゼ(以下、DDaseという)は、α-1,4結合のみを
有するオリゴ糖または多糖類からデキストランを生成す
る酵素として古くから知られており、それはグルコノバ
クターオキシダンスATCC11894株(Gluconobact
er oxydans; American Type Culture Collection strai
n No.11894)、グルコノバクターオキシダンスATCC
11895株(Gluconobacter oxydans; American Type
Culture Collection strain No.11895)などの菌に存在
する。DDaseを有するこれら酢酸菌においては、病原性
などは知られておらず、従って、これらの菌由来のDDas
eを食品原料加工に用いても安全である。本発明に用い
られる上記DDaseは、好ましくは、本発明者らによる精
製法(特願平3-69590号において詳細に記載されてい
る)により精製されたものが用いられる。
【0011】本発明に用いられるDDaseの製造法は、例
えば、次のとおりである。
えば、次のとおりである。
【0012】まず、グルコノバクターオキシダンスAT
CC11894株(Gluconobacter oxydans; American T
ype Culture Collection strain No.11894)、グルコノ
バクターオキシダンスATCC11895株(Gluconoba
cter oxydans; American Type Culture Collection str
ain No.11895)、またはグルコノバクターに属するその
他のDDase生産菌を、常法により培養する。培養後、採
取した菌体をそのままあるいは細胞破壊した後、緩衝液
に懸濁する。緩衝液としては、酢酸緩衝液などDDaseが
安定に存在できるpHの水溶液を用いることが望まし
い。必要に応じて菌体を除去することにより、粗酵素液
が得られる。
CC11894株(Gluconobacter oxydans; American T
ype Culture Collection strain No.11894)、グルコノ
バクターオキシダンスATCC11895株(Gluconoba
cter oxydans; American Type Culture Collection str
ain No.11895)、またはグルコノバクターに属するその
他のDDase生産菌を、常法により培養する。培養後、採
取した菌体をそのままあるいは細胞破壊した後、緩衝液
に懸濁する。緩衝液としては、酢酸緩衝液などDDaseが
安定に存在できるpHの水溶液を用いることが望まし
い。必要に応じて菌体を除去することにより、粗酵素液
が得られる。
【0013】この粗酵素液は、上記本発明者らの精製法
により、次のようにして精製される。まず、上記粗酵素
液(菌体を含んでいてもよい)を、極性の低い有機溶媒
で抽出し、これを除去する。水層を集め、透析した後、
疎水クロマトグラフィーに供する。次に、吸着したタン
パク質を、水と容易に混合し得るアルコール類(例え
ば、エチレングリコール)などを含有する緩衝液で溶出
した後、これを濃縮し、同じく緩衝液で平衡化したゲル
濾過カラムに供し回収する。上記低い極性の有機溶媒と
は、ヘキサンの極性を0、水の極性を9としたときに5
より低いものをさしていう。例えば、n-ブタノール、ク
ロロホルムなどが好適に用いられる。上記疎水クロマト
グラフィーに吸着した酵素を溶出する際には、例えば、
極性が5以上の有機溶媒が好適に用いられる。このよう
な有機溶媒としては、アルコール類(例えば、n-ブタノ
ール、エチレングリコールなど)、アセトンなどが挙げ
られる。
により、次のようにして精製される。まず、上記粗酵素
液(菌体を含んでいてもよい)を、極性の低い有機溶媒
で抽出し、これを除去する。水層を集め、透析した後、
疎水クロマトグラフィーに供する。次に、吸着したタン
パク質を、水と容易に混合し得るアルコール類(例え
ば、エチレングリコール)などを含有する緩衝液で溶出
した後、これを濃縮し、同じく緩衝液で平衡化したゲル
濾過カラムに供し回収する。上記低い極性の有機溶媒と
は、ヘキサンの極性を0、水の極性を9としたときに5
より低いものをさしていう。例えば、n-ブタノール、ク
ロロホルムなどが好適に用いられる。上記疎水クロマト
グラフィーに吸着した酵素を溶出する際には、例えば、
極性が5以上の有機溶媒が好適に用いられる。このよう
な有機溶媒としては、アルコール類(例えば、n-ブタノ
ール、エチレングリコールなど)、アセトンなどが挙げ
られる。
【0014】本発明に用いられ得る精製DDaseは以下の
特徴を有する。
特徴を有する。
【0015】1)作用 本酵素はアミロースなどを含めて重合度3以上のマルト
オリゴ糖に作用し、それら基質の非還元末端側のグルコ
ース残基を転移することによってデキストランを生産す
る。この作用は、反応に用いた物質がマルトースなどの
重合度が2となるマルトオリゴ糖となるまで進行する。
このDDaseの作用はマルトオリゴ糖の還元末端に位置す
るグルコースが水素添加などの修飾を受けていても同様
である。
オリゴ糖に作用し、それら基質の非還元末端側のグルコ
ース残基を転移することによってデキストランを生産す
る。この作用は、反応に用いた物質がマルトースなどの
重合度が2となるマルトオリゴ糖となるまで進行する。
このDDaseの作用はマルトオリゴ糖の還元末端に位置す
るグルコースが水素添加などの修飾を受けていても同様
である。
【0016】2)最適pHおよび安定pH DDaseの最適作用pHは4.0〜4.5であり、各種pH条件
下で30分置いた時にpH2.5〜6.0で安定である。
下で30分置いた時にpH2.5〜6.0で安定である。
【0017】3)最適温度および安定温度 DDaseの最適作用温度は37〜45℃であり、各種温度条件
下で30分置いた時に45℃以下で安定である。本酵素は
55℃まで活性を有する。
下で30分置いた時に45℃以下で安定である。本酵素は
55℃まで活性を有する。
【0018】4)分子量 電気泳動によるDDaseの分子量は約30万である。
【0019】5)力価測定法 酵素反応基質には還元低加水分解澱粉を用い、反応によ
って生成したデキストランをデキストラナーゼを用いて
分解後、この時生じる還元力を測定することにより、デ
キストラン生成量を求める。力価は、1分間に1μmol
のグルコース単位がデキストランとなる時の酵素量を1
Uとする。
って生成したデキストランをデキストラナーゼを用いて
分解後、この時生じる還元力を測定することにより、デ
キストラン生成量を求める。力価は、1分間に1μmol
のグルコース単位がデキストランとなる時の酵素量を1
Uとする。
【0020】本発明において上記DDaseに加えて枝切り
酵素を用いるとパラチノース糖付加物の収率が高くな
る。枝切り酵素とは、澱粉の構造中に存在するα-1,6グ
ルコシル結合を切断する酵素であり、例えば、イソアミ
ラーゼまたはプルラナーゼが挙げられる。
酵素を用いるとパラチノース糖付加物の収率が高くな
る。枝切り酵素とは、澱粉の構造中に存在するα-1,6グ
ルコシル結合を切断する酵素であり、例えば、イソアミ
ラーゼまたはプルラナーゼが挙げられる。
【0021】上記グルコース供与体とパラチノースとの
混合物にDDase、および必要に応じて上記枝切り酵素を
作用させることにより、本発明のパラチノース糖付加物
が得られる。この反応には、通常の酵素反応の条件が採
用され得る。例えば、本発明で用いる酵素反応の条件
は、好ましくは、pH3.5〜5.5、温度20〜45
℃、そして反応時間3〜72時間である。このとき用い
るDDaseおよび枝切り酵素は、粗精製のものでも良い
が、好ましくは、精製したものが用いられる。
混合物にDDase、および必要に応じて上記枝切り酵素を
作用させることにより、本発明のパラチノース糖付加物
が得られる。この反応には、通常の酵素反応の条件が採
用され得る。例えば、本発明で用いる酵素反応の条件
は、好ましくは、pH3.5〜5.5、温度20〜45
℃、そして反応時間3〜72時間である。このとき用い
るDDaseおよび枝切り酵素は、粗精製のものでも良い
が、好ましくは、精製したものが用いられる。
【0022】
【作用】本発明の方法において、DDaseは、α-1,4結合
あるいはα-1,6結合を有するグルコース供与体であるオ
リゴ糖または多糖類などの非還元末端に位置するα-1,4
結合あるいはα-1,6結合したグルコース残基を受容体へ
転移させる。この転移反応において、受容体となるもの
は、非還元末端にグルコース残基を有するオリゴ糖また
は多糖類などであり、転移するグルコースは、受容体に
α-1,6結合の形態で結合する。
あるいはα-1,6結合を有するグルコース供与体であるオ
リゴ糖または多糖類などの非還元末端に位置するα-1,4
結合あるいはα-1,6結合したグルコース残基を受容体へ
転移させる。この転移反応において、受容体となるもの
は、非還元末端にグルコース残基を有するオリゴ糖また
は多糖類などであり、転移するグルコースは、受容体に
α-1,6結合の形態で結合する。
【0023】DDaseが、α-1,4結合を有するグルコース
供与体であるオリゴ糖または多糖類などの非還元末端に
位置するα-1,4結合グルコース残基を受容体へ転移させ
るほか、α-1,6結合を有するグルコース供与体であるオ
リゴ糖または多糖類などの非還元末端に位置するα-1,6
結合グルコース残基を受容体へ転移させることは、本発
明者らによりはじめて明らかとなったものである。すな
わち、デキストラン、イソマルトオリゴ糖などのように
α-1,6結合グルコース残基を非還元末端に有する化合物
もグルコース供与体となりうる。本発明においては、パ
ラチノースが受容体となり、パラチノースはグルコース
を供与されることにより、G-α-1,6-パラチノースとな
る。このG-α-1,6-パラチノースの非還元末端がグルコ
ース残基であるので、さらにその一部はグルコースを供
与され、G-α-1,6-G-α-1,6-パラチノースとなる。同様
に、G-α-1,6-G-α-1,6-パラチノースも受容体となり、
このように次々とグルコース残基にグルコースが転移さ
れていく。グルコース供与体として、澱粉またはその分
解物のようにα-1,4結合の主鎖および側鎖を有し、か
つ、α-1,6結合でこれらが分岐している構造を有する化
合物を用いた場合には、反応系に枝切り酵素が存在する
と、α-1,6結合がこの枝切り酵素により切断されるた
め、効果的にDDaseが作用し、パラチノース糖付加物が
高収率で得られる。
供与体であるオリゴ糖または多糖類などの非還元末端に
位置するα-1,4結合グルコース残基を受容体へ転移させ
るほか、α-1,6結合を有するグルコース供与体であるオ
リゴ糖または多糖類などの非還元末端に位置するα-1,6
結合グルコース残基を受容体へ転移させることは、本発
明者らによりはじめて明らかとなったものである。すな
わち、デキストラン、イソマルトオリゴ糖などのように
α-1,6結合グルコース残基を非還元末端に有する化合物
もグルコース供与体となりうる。本発明においては、パ
ラチノースが受容体となり、パラチノースはグルコース
を供与されることにより、G-α-1,6-パラチノースとな
る。このG-α-1,6-パラチノースの非還元末端がグルコ
ース残基であるので、さらにその一部はグルコースを供
与され、G-α-1,6-G-α-1,6-パラチノースとなる。同様
に、G-α-1,6-G-α-1,6-パラチノースも受容体となり、
このように次々とグルコース残基にグルコースが転移さ
れていく。グルコース供与体として、澱粉またはその分
解物のようにα-1,4結合の主鎖および側鎖を有し、か
つ、α-1,6結合でこれらが分岐している構造を有する化
合物を用いた場合には、反応系に枝切り酵素が存在する
と、α-1,6結合がこの枝切り酵素により切断されるた
め、効果的にDDaseが作用し、パラチノース糖付加物が
高収率で得られる。
【0024】このような酵素反応による反応液中には、
通常、パラチノースにグルコース残基、またはグルコー
スがα-1,6結合で2〜8個連結しているオリゴ糖残基が
α-1,6結合しているパラチノース糖付加物;原料である
パラチノース;およびグルコース供与体が共存する。酵
素を失活させた後、このままで、あるいは必要に応じ
て、パラチノース糖付加物を通常により単離して各種用
途に利用する。
通常、パラチノースにグルコース残基、またはグルコー
スがα-1,6結合で2〜8個連結しているオリゴ糖残基が
α-1,6結合しているパラチノース糖付加物;原料である
パラチノース;およびグルコース供与体が共存する。酵
素を失活させた後、このままで、あるいは必要に応じ
て、パラチノース糖付加物を通常により単離して各種用
途に利用する。
【0025】ところで、歯のう蝕の原因は虫歯菌S.muta
nsによるグルカン生成及び酸生成である。ある糖をS.mu
tansに資化させた場合、グルカン生成あるいは酸生成、
またはその両者がおこらないとき、この糖は非う蝕性で
あるといえる。後述の実施例の表2に示すように、IM
Pオリゴ糖の主要構成成分であるG-α-1,6-パラチノー
スをS.mutansに与えたとき、本オリゴ糖は非常にS.muta
nsに資化されにくく、かつ、酸生成によるpHの低下も
起こらないことから、G-α-1,6-パラチノースは非う蝕
性であることがわかる。また、唾液中に含まれるアミラ
ーゼによっても本オリゴ糖は分解されないことから、口
腔内で酸生成の原因となりうるグルコースを遊離するこ
ともない。同様にIMPオリゴ糖G-α-1,6-G-α-1,6-パ
ラチノースなどのIMPオリゴ糖構成成分であるオリゴ
糖も非う蝕性である。このように、上記のようにして得
られたIMPオリゴ糖は、非う蝕性を示す。さらにIM
Pオリゴ糖は小腸でもほとんど分解されず大腸に達して
初めてビフィズス菌のみにより利用されるためビフィズ
ス菌選択生育促進因子となり、腸内菌叢が改善される。
さらに、IMPオリゴ糖もCPオリゴ糖と同じくパラチ
ノース糖付加物であるので、IMPオリゴ糖にもパラチ
ノース結晶性低減効果が期待できる。
nsによるグルカン生成及び酸生成である。ある糖をS.mu
tansに資化させた場合、グルカン生成あるいは酸生成、
またはその両者がおこらないとき、この糖は非う蝕性で
あるといえる。後述の実施例の表2に示すように、IM
Pオリゴ糖の主要構成成分であるG-α-1,6-パラチノー
スをS.mutansに与えたとき、本オリゴ糖は非常にS.muta
nsに資化されにくく、かつ、酸生成によるpHの低下も
起こらないことから、G-α-1,6-パラチノースは非う蝕
性であることがわかる。また、唾液中に含まれるアミラ
ーゼによっても本オリゴ糖は分解されないことから、口
腔内で酸生成の原因となりうるグルコースを遊離するこ
ともない。同様にIMPオリゴ糖G-α-1,6-G-α-1,6-パ
ラチノースなどのIMPオリゴ糖構成成分であるオリゴ
糖も非う蝕性である。このように、上記のようにして得
られたIMPオリゴ糖は、非う蝕性を示す。さらにIM
Pオリゴ糖は小腸でもほとんど分解されず大腸に達して
初めてビフィズス菌のみにより利用されるためビフィズ
ス菌選択生育促進因子となり、腸内菌叢が改善される。
さらに、IMPオリゴ糖もCPオリゴ糖と同じくパラチ
ノース糖付加物であるので、IMPオリゴ糖にもパラチ
ノース結晶性低減効果が期待できる。
【0026】以下に実施例を挙げ、本発明を説明する。
【0027】
(実施例1)2%パラチノース50μlおよび2%可溶性
澱粉50μlの混合物に特願平3-69590号の方法で得られ
た10U/mlDDase100μlを加え、pH4.8で40℃にて
6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰水中で加
熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析した。その
結果を表1に示す。実施例2〜5の結果も合わせて表1
に示す。
澱粉50μlの混合物に特願平3-69590号の方法で得られ
た10U/mlDDase100μlを加え、pH4.8で40℃にて
6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰水中で加
熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析した。その
結果を表1に示す。実施例2〜5の結果も合わせて表1
に示す。
【0028】(実施例2)2%パラチノース50μlおよ
び2%イソマルトテトラオース50μlの混合物に実施例
1と同様の10U/mlDDase100μlを加え、pH4.8で4
0℃にて6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰
水中で加熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析し
た。
び2%イソマルトテトラオース50μlの混合物に実施例
1と同様の10U/mlDDase100μlを加え、pH4.8で4
0℃にて6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰
水中で加熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析し
た。
【0029】(実施例3)2%パラチノース50μlおよ
び2%マルトテトラオース50μlの混合物に実施例1と
同様の10U/mlDDase100μlを加え、pH4.8で40℃
にて6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰水中
で加熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析した。
び2%マルトテトラオース50μlの混合物に実施例1と
同様の10U/mlDDase100μlを加え、pH4.8で40℃
にて6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰水中
で加熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析した。
【0030】(実施例4)2%パラチノース50μlおよ
び2%デキストラン50μlの混合物に実施例1と同様の
10U/mlDDase 100μlを加え、pH4.8で40℃にて
6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰水中で加
熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析した。
び2%デキストラン50μlの混合物に実施例1と同様の
10U/mlDDase 100μlを加え、pH4.8で40℃にて
6時間反応させた。この反応液を15分間沸騰水中で加
熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分析した。
【0031】(実施例5)2%パラチノース200μlお
よび2%可溶性澱粉200μlの混合物に実施例1と同様
の10U/mlDDase400μlおよび125,000U/mlイソアミラー
ゼ(天野製薬製、商品名「イソアミラーゼ「アマ
ノ」」、1,250,000U/ml)20μlを加え、pH4.8で
40℃にて10時間反応させた。この反応液を15分間
沸騰水中で加熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分
析した。
よび2%可溶性澱粉200μlの混合物に実施例1と同様
の10U/mlDDase400μlおよび125,000U/mlイソアミラー
ゼ(天野製薬製、商品名「イソアミラーゼ「アマ
ノ」」、1,250,000U/ml)20μlを加え、pH4.8で
40℃にて10時間反応させた。この反応液を15分間
沸騰水中で加熱後、反応液中に存在する糖の成分比を分
析した。
【0032】
【表1】
【0033】(実施例6)蔗糖、G-α-1,6-蔗糖および
単離したG-α-1,6-パラチノースを用い、Imaiらの方法
(Journal of Dental Research 第63巻 1293-1297頁)に
準じてS.mutansによる醗酵性を調べたところ、表2のよ
うに、酸生成及びそれに伴うpHの低下はほとんど認め
られなかった。
単離したG-α-1,6-パラチノースを用い、Imaiらの方法
(Journal of Dental Research 第63巻 1293-1297頁)に
準じてS.mutansによる醗酵性を調べたところ、表2のよ
うに、酸生成及びそれに伴うpHの低下はほとんど認め
られなかった。
【0034】
【表2】
【0035】(実施例7)パラチノース及び、実施例1
において製造したIMPオリゴ糖をそれぞれ、パラチノ
ースの濃度が20%及び30%となるように調製した水溶液
とし、これを4℃で1週間放置してその結晶生成を観察
した。その結果、表3に示すように30%濃度において、
パラチノース単独では結晶が生じたのに対し、IMPオ
リゴ糖では結晶は生じなかった。
において製造したIMPオリゴ糖をそれぞれ、パラチノ
ースの濃度が20%及び30%となるように調製した水溶液
とし、これを4℃で1週間放置してその結晶生成を観察
した。その結果、表3に示すように30%濃度において、
パラチノース単独では結晶が生じたのに対し、IMPオ
リゴ糖では結晶は生じなかった。
【0036】
【表3】
【0037】
【発明の効果】本発明により、パラチノースにグルコー
ス、または複数のグルコースがα-1,6結合で連結してい
るオリゴ糖残基がα-1,6結合した、パラチノース糖付加
物を効果的に生産することが可能となる。本発明により
得られたパラチノース糖付加物は、非う蝕性を有し、結
晶性が低く、かつビフィズス菌選択生育促進因子として
の効果を有することが期待できることから、食品への広
範な利用途が開発できる。
ス、または複数のグルコースがα-1,6結合で連結してい
るオリゴ糖残基がα-1,6結合した、パラチノース糖付加
物を効果的に生産することが可能となる。本発明により
得られたパラチノース糖付加物は、非う蝕性を有し、結
晶性が低く、かつビフィズス菌選択生育促進因子として
の効果を有することが期待できることから、食品への広
範な利用途が開発できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/64 REGISTRY(STN) CA(STN) BIOSIS(DIALOG)
Claims (4)
- 【請求項1】 パラチノースの構造中に存在するグルコ
ース残基の6位炭素にグルコース残基、または2個のグ
ルコースがα−1,6結合で連結しているオリゴ糖残基
が、α−1,6結合している、パラチノース糖付加物。 - 【請求項2】 グルコース供与体とパラチノースとの混
合物にデキストリンデキストラナーゼを作用させる工程
を包含する、パラチノース糖付加物の製造方法。 - 【請求項3】 前記デキストリンデキストラナーゼに加
えて、枝切り酵素が反応系に含有される、請求項2に記
載のパラチノース糖付加物の製造方法。 - 【請求項4】 請求項2または3に記載の方法により製
造されるパラチノース糖付加物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04123945A JP3124370B2 (ja) | 1992-05-15 | 1992-05-15 | パラチノース糖付加物およびその製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04123945A JP3124370B2 (ja) | 1992-05-15 | 1992-05-15 | パラチノース糖付加物およびその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05310768A JPH05310768A (ja) | 1993-11-22 |
JP3124370B2 true JP3124370B2 (ja) | 2001-01-15 |
Family
ID=14873238
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP04123945A Expired - Fee Related JP3124370B2 (ja) | 1992-05-15 | 1992-05-15 | パラチノース糖付加物およびその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3124370B2 (ja) |
-
1992
- 1992-05-15 JP JP04123945A patent/JP3124370B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05310768A (ja) | 1993-11-22 |
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