JP3114302B2 - 窒化珪素焼結体及びその製造方法 - Google Patents

窒化珪素焼結体及びその製造方法

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JP3114302B2 JP03335523A JP33552391A JP3114302B2 JP 3114302 B2 JP3114302 B2 JP 3114302B2 JP 03335523 A JP03335523 A JP 03335523A JP 33552391 A JP33552391 A JP 33552391A JP 3114302 B2 JP3114302 B2 JP 3114302B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は窒化珪素焼結体及びその
製造方法に係る。
【0002】
【従来の技術】窒化珪素は耐熱性構造材料として最も広
く実用され、また研究開発が進められている材料であ
る。窒化珪素は難焼結性であるので、Y2O3, Al2O3, MgO
などの焼結助剤を添加し、1700〜1800℃で焼結される。
【0003】また、高強度化、緻密化のために、ホット
プレスを使用した焼結法、HIP(熱間等方加圧)を使
用した焼結法(特公昭62-13310号公報、N2 圧〜2500気
圧)あるいはガス圧焼結法(特公昭62-41191号公報、N
2 圧〜 300気圧)なども採用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】自動車エンジンでは室
温から1000℃までの温度範囲で高強度であることが要求
されるが、従来の窒化珪素焼結体では室温から1000℃ま
での範囲で構造材料として必要な 1000MPa以上の高強度
を実現することができなかった。その理由は、緻密な焼
結体を得るためには焼結助剤の量を多くするか、高温で
焼成する必要があるが、焼結助剤を多くすると粒界相が
厚くなり、また高温で焼結しても粒径が大きくなるため
に、強度が低下し、またその結果粒界も厚くなり、結
局、高温強度が低下するためと考えられる。
【0005】そこで、本発明は、室温から1000℃までの
範囲で 1000MPa以上の高強度を有する窒化珪素焼結体及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、窒化珪素に対して総量で3〜8重量%の
Y2O3などの希土類金属酸化物とMgAl2O4 を含み、MgAl 2 O
4 が1〜5重量%含まれ、粒状晶に観察される組織とそ
の中に分散して存在する柱状晶に観察される組織からな
り、柱状晶の平均径及び柱状晶の平均短径が0.2〜0.6
μmであり、かつ密度が理論密度の99%以上であること
を特徴とする窒化珪素焼結体、及び窒化珪素粉末に対し
てY2O3粉末とMgAl2O4 粉末を焼結助剤として総量で3〜
8重量%添加しかつMgAl 2 O 4 が1〜5重量%である均一
混合粉末を成形し、該成形体を1530〜1650℃の範囲内の
温度まで加熱して予備焼結し、次いで該温度範囲内の温
度で圧力を1500気圧以上まで昇圧して本焼結することを
特徴とする窒化珪素焼結体の製造方法を提供する。さら
に、本発明は、Si3N4 粒状晶とSi3N4 柱状晶とを含み、
かつSi3N4 柱状晶同士において結晶粒のめり込みが見ら
れる組織を有することを特徴とする窒化珪素焼結体を提
供する。
【0007】出発原料としての窒化珪素及び焼結助剤
は、粒径0.6μm以下、より好ましくは0.1〜0.4μm
のものを使用する。出発原料の粒径が大きくなると、焼
結粒子の粒径が大きくなり、強度低下の原因になるから
である。また、純度はSi3N4 で金属不純物総量100ppm以
下、焼結助剤で99.9%以上のものを使用する。不純物が
これより多くなると粒界ガラス相の軟化温度が低下し、
1000℃における強度が低下する。
【0008】焼結助剤として用いる希土類金属酸化物
は、希土類金属すなわち、Sc, Y, La,Ce, Pr, Nd, Pm,
Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu の酸化物で
あり、これらは同様に作用することが確認される。
【0009】Si3N4 粉末に対する焼結助剤の添加量は希
土類金属酸化物MgAl2O4 の総量で3〜8wt%とする。焼
結助剤の添加量が少ないと緻密化せず、従って強度も向
上しない。一方、焼結助剤の量が多くなると、緻密焼結
はするが粒界ガラス相が増加し、高温強度が低下するか
らである。また、焼結助剤の希土類金属酸化物とMgAl2O
4 との割合は、限定するわけではないが重量比で1:1
〜4:1が好ましい。この範囲内で、容易に緻密化、高
強度化が達成されるからである。
【0010】出発粉末の成形は常法により行なうことが
できる。すなわち、典型的には、均一混合粉末を加圧成
形する。
【0011】次いで、焼成するが、本発明では焼成温度
を1530〜1650℃の範囲内として、従来の常圧焼結温度17
00〜1800℃、あるいは特公昭62-13310号公報のHIP焼
結温度1700〜1900℃より低い焼結温度を採用することを
特徴としている。すなわち、従来は、常圧焼結温度とし
て1700〜1800℃が採用されるが、この温度では焼結体が
充分に緻密化せず、理論密度の99%に達する高密度の焼
結体を得ることはできなかった。そこで、高温で充分に
焼結させるために、Si3N4 の熱分解を抑制すべく高圧を
かけて焼成する方法(HIP) が利用されている。このよう
なHIP法によれば焼結が進み、理論密度の99%以上の
高密度の焼結体を得ることも可能である。しかしなが
ら、高温で焼結されるため、粒径も成長し、強度が所望
の様に向上しないという問題があった。
【0012】これに対して、本発明は、驚くことに、15
00気圧以上の高圧を利用する場合には、従来Si3N4 が焼
結しないと考えられていた1530〜1650℃の低い温度でも
焼結が進行し、理論密度の99%以上、さらには99.5%以
上の高密度のSi3N4 焼結体を得ることができること、ま
たこのように低温高圧下で焼結した場合には粒成長が抑
えられるため1000℃で 1000MPa以上という高強度の発現
も可能になるということを発見して為されたものであ
る。従来より、窒化珪素の一般的焼結温度として1600℃
以上であることが言及されることはあったが、実際に16
00℃でSi3N4 焼結体を作製した例はなく、仮に1600℃で
焼結されたとしても、得られる焼結体の密度は極めて低
いものとならざるを得ないことが、当業者の常識であ
る。また、前述の如く、HIP法を採用する理由は、よ
り高温であるいはより長時間焼結してより緻密な焼結体
を得るためにSi3N4 及び酸化物助剤の熱分解を防止する
ことにあるから、HIP処理を採用しながら、なおかつ
焼成温度を1700℃より低くしようということは、当業者
の常識では考えられないことであった。本発明者は、あ
えてこれを行ない、上記の如く驚くべき知見を得て、本
発明に到達したものである。
【0013】そこで、本発明では、1530〜1650℃、特に
1600℃未満の温度で焼成する事を特徴としているが、直
ちに高圧にすると焼結体内の気孔の圧力も高くなって、
緻密化しないので、最初に低圧下で予備焼結させる。予
備焼結の圧力はSi3N4 が熱分解しない限り、低い圧力が
望ましいが、減圧下ではSi3N4 が熱分解し易いので、一
般的には1気圧N2 雰囲気で行なう。ただし、この予備
焼結もHIP装置内で行なうことが都合がよい関係上、
実際の圧力は1〜30気圧位になるであろう。要は、本焼
結の1500気圧以上に対して低い圧力、常圧付近であれば
よい。
【0014】典型的には、予備焼結は、1気圧付近のN
2 雰囲気下、0.5〜10℃/分程度の昇温速度で1530〜16
50℃の範囲内の温度まで昇温して行なう。昇温プロフィ
ルは所望に変更できる。予備焼結の終点の1つのメドは
理論密度の90%程度である。1530〜1650℃の範囲内の温
度に到達したら、次に圧力を5〜20気圧/分程度の昇圧
速度で1500気圧以上まで昇圧し、その圧力に保持して本
焼結を行なう。本焼結の圧力は1500気圧以上、典型的に
は1500〜2500気圧である。1500気圧未満では焼結体の10
00℃強度が低下するからである。高圧側は装置の問題が
なければ、特に上限はない。
【0015】こうして、本発明の方法により低温高圧焼
結された窒化珪素焼結体は、Si3N4 結晶粒の粒成長を抑
制したままで緻密に焼結し、理論密度の99%以上、さら
には99.5%以上の高密度で、かつ1000℃での4点曲げ強
度が 1000MPa以上の高強度を発現する。本発明者は、従
来、99%以上の相対密度で 1000MPa以上の1000℃に於け
る強度を実現した窒化珪素焼結体を知らない。
【0016】なお、本発明の方法により得られる窒化珪
素焼結体中の窒化珪素粒子は、図1のSEM写真に見ら
れるように一般的な粒状晶に観察される組織と、その中
に分散して存在する柱状晶に観察される組織とからなる
が、粒状晶の平均径及び柱状晶の平均短径はいずれも0.
2〜0.6μm、さらには0.2〜0.4μm、柱状晶の平均
長径は1〜4μm、さらには1〜3μmであり、これは
従来法(HIP) による焼結体の場合(図2)のほぼ1/3
の大きさである。このように結晶粒径が小さいことによ
り、高温強度を低下させる粒界相が極めて薄くなり、特
に粒界3重点が小さくなっていることが観察されたの
で、このために高温強度が改善されるものと考えられ
る。
【0017】また、図3に示す写真は後記の実施例の試
料No.1の透過型電子顕微鏡(TEM)観察写真である
が、驚くべきことに、焼結体中のSi3N4 柱状晶同士が相
互にめり込んで結合していることが認められる。本発明
の焼結体においては、粒異相が極めて薄く、粒界三重点
が小さいが、さらに上記の如く結晶粒間のめり込みが強
度、特に1000℃強度を従来のSi3N4 焼結体より著しく高
める理由と考えられる。
【0018】ここに、柱状晶間のめり込みとは、通常の
Si3N4 焼結体中のSi3N4 粒子が滑らかな(直線的な)界面
で粒界相を介し他のSi3N4 粒子と接触しているのに対
し、Si 3N4 粒子が厚さ1nm程度の粒界相と共に他のSi3N
4 粒子の中に入り込んで同一の曲面を持ち接触している
形態を示し、そのめり込みの深さは約10nm以上で、T
EMで観察したとき全長が観察できる粒子において少な
くとも1箇所以上はその接触形態が観察できる状態をい
う。これは従来見られなかった組織である。
【0019】焼結体中のSi3N4 柱状晶同士をめり込んで
結合させるには、1500気圧以上の高圧をかけることが必
要である。さらに、粒子が細かければ細かいほど単位体
積当たりのめり込んだ結合が密になり効果が大きく、例
えば後出比較例試料No.14 のように、焼成温度が高くな
ると粒子が大きくなり、効果が充分には得られなくな
る。
【0020】高圧をかけるとSi3N4 結晶同士がめり込む
理由はSi3N4 の結晶方位に硬い面と柔らかい面があり、
予備焼結後に高圧をかけることによって硬い結晶方位の
粒子が柔らかい結晶方位の粒子を変形させながら入り込
むことによって生じると推定できる。
【0021】
【作用】1500気圧以上の高圧をかけることにより1650℃
以下の低い温度でSi3N4 を緻密に焼結することができ、
粒成長を抑制し、粒界相の厚さを薄くでき、その結果、
高密度、高強度、高硬度の焼結体が得られる。
【0022】
【実施例】Si3N4 粉末(平均粒径0.2μm、金属不純物
総量 30ppm、α化率ほぼ 100%)に焼結助剤としてY2O3
粉末(平均粒径0.3μm、純度99.9%)、MgAl2O4 粉末
(平均粒径0.3μm、純度99.9%)の添加量を表1に示
すような組成で混合(Si3N4 製ボールミル)した各種粉
末を200Kgf/cm2 の圧力で加圧成形し、その成形体を薄
ゴムにつめ真空封入後CIPにて 3000Kgf/cm2 の圧力
で加圧後、この成形体を表1に示す条件でN2 雰囲気中
の炉内で焼結させた。昇温速度は5℃/min、最高温度
に到達するまでは1atm のN2 雰囲気下で、最高温度到
達後に表1に示す条件まで毎分 15atmの昇圧速度で加圧
した。また、最高温度での保持時間は4時間とした。こ
の昇温、昇圧プロファイルを図4に示す。
【0023】これらの焼結体の室温4点曲げ強度(JIS R
1601)、高温4点曲げ強度(JIS R 1604 、大気中)を測
定して表1に示す結果を得た。焼結体の相対密度はn−
ブタノール置換法で求めた嵩密度を理論密度で除して得
た値である。残部は気孔率であるが、光学顕微鏡による
鏡面研磨面の観察結果からも裏付けられた。
【0024】図1に試料No.1のSEM写真を示す。この
場合、柱状晶の平均径は長径が2μm,短径が0.3μ
m,粒状晶の平均径は0.2μmであった。図3に試料
No.1のTEM写真を示す。前記の如く、柱状晶同士のめ
り込みが観察される。
【0025】
【表1】
【0026】比較のために、上記実施例と同様な方法で
成形したのち、この成形体を表2に示す条件でN2 雰囲
気の炉内焼結させ、表2の結果を得た。
【0027】
【表2】
【0028】図2に試料No.14 のSEM写真を示す。実
施例の試料No.1及び比較例試料No.11 の焼結体組織をT
EMにて詳細に観察した結果、β−Si3N4 の粒子径はほ
ぼ同じであるが試料No.1は本発明の製造法によりβ−Si
3N4 粒子がより一層緻密に充填され、高温強度を低下さ
せる粒界相が極めて薄くなり、特に粒界3重点が小さく
なっていることが観察できた。その結果、高温曲げ強度
が改善されたものと考えられる。
【0029】また、焼結体のビッカース硬度を測定した
ところ、下記の結果を得た。 実施例 試料No.1 Hv=1850kg/mm2 比較例 試料No.11 Hv=1450kg/mm2
【0030】上記のごとく、β−Si3N4 が従来より一層
緻密に充填された結果、硬度が高くなったものである。
なお、表1と表2を比較すると、実施例の焼結体は室温
強度も極めて高いことが注目される。
【0031】次に、上記実施例において、Y2O3粉末に代
えて、Yb2O3(平均粒径0.5μm、純度99.9%)、
La2O3(平均粒径0.6μm、純度99.9%)、CeO2
(平均粒径0.5μm、純度99.9%)、Sm2O3(平均
粒径0.8μm、純度99.9%)、Sc2O3(平均粒径
0.3μm、純度99.9%)及びY2O3の各粉末を単独
で又は組合せて用い、表3〜5に示す条件で上記実施例
の操作及び試験を繰り返した。
【0032】結果を表3〜5に示す。焼結助剤としてY2
O3に代えて希土類金属酸化物を用いてもY2O3と同様の効
果が奏せられている。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、自動車エンジン等に好
適な、理論密度の99%以上の高密度でかつ1000℃強度が
1000MPa以上という高強度の窒化珪素焼結体が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の窒化珪素焼結体の結晶組織を示す図面
に代る電子顕微鏡写真(SEM) である。
【図2】比較例の窒化珪素焼結体の結晶組織を示す図面
に代る電子顕微鏡写真(SEM) である。
【図3】実施例の窒化珪素焼結体の結晶組織を示す図面
に代る電子顕微鏡写真(TEM) である。
【図4】実施例の焼成プロファイルを示す図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/584

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化珪素に対して総量で3〜8重量%の
    希土類金属酸化物とMgAl2O4 を含み、MgAl 2 O 4 が1〜5
    重量%含まれ、粒状晶に観察される組織とその中に分散
    して存在する柱状晶に観察される組織からなり、粒状晶
    の平均径及び柱状晶の平均短径が0.2〜0.6μmであ
    り、かつ密度が理論密度の99%以上であることを特徴と
    する窒化珪素焼結体。
  2. 【請求項2】 Si3N4 柱状晶同士において結晶粒のめり
    込みが見られる組織を有することを特徴とする請求項1
    記載の窒化珪素焼結体。
  3. 【請求項3】 窒化珪素粉末に対して希土類金属酸化物
    粉末とMgAl2O4 粉末を焼結助剤として総量で3〜8重量
    %添加しかつMgAl 2 O 4 が1〜5重量%である均一混合粉
    末を成形し、 該成形体を1530〜1650℃の範囲内の温度まで加熱して予
    備焼結し、次いで該温度範囲内の温度で圧力を1500気圧
    以上まで昇圧して本焼結することを特徴とする窒化珪素
    焼結体の製造方法。
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