JP2003002760A - セラミックス多孔体の製造方法 - Google Patents

セラミックス多孔体の製造方法

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JP2003002760A
JP2003002760A JP2001179219A JP2001179219A JP2003002760A JP 2003002760 A JP2003002760 A JP 2003002760A JP 2001179219 A JP2001179219 A JP 2001179219A JP 2001179219 A JP2001179219 A JP 2001179219A JP 2003002760 A JP2003002760 A JP 2003002760A
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Keiichi Kimura
圭一 木村
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Fine Ceramics Research Association
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、ガラス相等の粒間結合相を少なく
し、もしくは消滅させ、所望の気孔形態を形成したセラ
ミックス多孔体の製造方法を提供することを目的とす
る。 【解決手段】 セラミックス原料と造孔剤を混合し、成
形した成形体を焼結してセラミックス多孔体を製造する
方法であって、前記成形体中のセラミックス原料が焼結
した後に、造孔剤を気化させることを特徴とするセラミ
ックス多孔体の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス相が少な
く、純度が高く、機械的性質・耐食性に優れたセラミッ
クス多孔体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】セラミックス多孔体は、耐熱性、耐腐食
性、耐摩耗性が必要とされる環境で用いられる材料とし
て使用されており、その必要性が高まっている。また、
近年では構造部材として、靭性を向上する目的に利用す
る研究も進められている。このように、セラミックス多
孔体の用途は広範囲であり、必要とされる気孔率、気孔
径、気孔形態はその用途によって異なる。したがって、
用途によって適した気孔形態とすることが望ましい。
【0003】セラミックス多孔体の製造方法は様々であ
るが、その有力な方法の一つに、セラミックスの焼結温
度より低い温度で気化する造孔剤と呼ばれる物質を使用
する方法がある。この方法は、セラミックス原料粉末と
造孔剤を混合し、造孔剤を気化させることにより、セラ
ミックス原料粉末間に、焼結後においても気孔が残留す
る大きさの空間をつくり、焼結させることによって、焼
結体内に気孔を付与する方法である。この方法に用いら
れる造孔剤は、ポリビニルアルコール、アクリル、でん
ぷんなどの有機化合物や、黒鉛や炭素繊維のような炭素
材料が用いられる。造孔剤は、最終的に必要とされる気
孔形態に応じて、その大きさと形態が決められる。
【0004】この方法は、セラミックス多孔体の製造方
法としては一般的な方法であるが、後述するように、焼
結時の焼結収縮のためにクラックが生じたり、気孔を形
成するための空間がつぶれたりする問題があった。そし
て、クラックの生成は、気孔周りの局所的な収縮が全体
の収縮より時間的に早かったり、大きいことにより生じ
る。したがって、クラックの生成は、特に気孔率を高め
るために造孔剤を増やした場合に生じやすく、機械的な
強度を著しく低下させる。また、造孔剤の大きさが小さ
すぎると、焼結収縮により、造孔剤の気化によって生じ
させた空間がつぶれてしまうために、一定の大きさ以下
の空孔を有する多孔体の作製は困難であった。
【0005】クラックの生成を防止する措置としては、
粒界にガラス相を生じさせる方策をとる場合が多い。こ
れは、低融点の不純物相を粒間に生じさせることによ
り、セラミックス粒子間の癒着を低い温度で行なわせ、
粒間の結合を促進させたり、焼結収縮を抑制する効果を
狙って施される措置である。実際、市販されている高気
孔率のセラミックス多孔体は、セラミックス粒子間がガ
ラス相等の異相で結合された状態で多孔体を形成してい
るものが多い。この場合、結果的にセラミックスの純度
を低下させることになるため、クラックが生成するほど
ではないにしても、セラミックス本来の持つヤング率・
強度等の機械的特性を損ねる結果となる。市販されてい
る30〜40体積%のアルミナ多孔体の場合、その強度は20
〜60MPaであり、純度の高い緻密なアルミナの1/10程度
と低いのは、粒間の結合が弱いためと考えられる。
【0006】また、ガラス相等の異相の存在は、用途に
よっては必要な耐食性、熱的特性、電気的特性を犠牲に
する。セラミックス多孔体の用途が広がるにつれ、セラ
ミックス本来の持つ機械的特性や耐食性の優れたセラミ
ックス多孔体に対する必要性は増加している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上
記従来技術の問題点を解決し、ガラス相等の粒間結合相
を少なくし、もしくは消滅させ、所望の気孔形態を形成
したセラミックス多孔体の製造方法を提供することを目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記従来技術
の問題を解決するために、鋭意検討した結果、完成させ
たものであり、本発明の要旨は以下のとおりである。 (1) セラミックス原料と造孔剤を混合し、成形した
成形体を焼結してセラミックス多孔体を製造する方法で
あって、前記成形体中のセラミックス原料が焼結した後
に、造孔剤を気化させることを特徴とするセラミックス
多孔体の製造方法。 (2) 前記焼結において、非酸化性雰囲気中で前記セ
ラミックス原料を焼結し、酸化性雰囲気中で前記造孔剤
を気化させる(1)記載のセラミックス多孔体の製造方
法。 (3) 前記セラミックス原料の焼結が、加圧焼結であ
る(1)または(2)に記載のセラミックス多孔体の製
造方法。 (4) 前記セラミックス原料の主成分がアルミナであ
る(1)〜(3)のいずれか1つに記載のセラミックス
多孔体の製造方法。 (5) 前記造孔剤が炭素材料である(1)〜(3)の
いずれか1つに記載のセラミックス多孔体の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、セラミックス原料が焼
結した後に、造孔剤を気化させるセラミックス多孔体の
製造方法である。一般に使用されている造孔剤の分解温
度は、ポリビニルアルコール、アクリル、でんぷんなど
の有機化合物で100℃〜500℃、炭素原料でも大気中で40
0℃から一酸化炭素や二酸化炭素などへ酸化を開始し、
通常、800℃では殆ど気化してしまう。一方、セラミッ
クスの焼結温度はこれよりも高く、例えば、代表的なセ
ラミックスであるアルミナでは、易焼結性の粉末を使用
しても、1000℃以上である。
【0010】したがって、従来の多孔体焼結技術におけ
るセラミックス粉末粒子同士が癒着し焼結する段階で
は、造孔剤の存在していた部分は空間になっている。こ
れらの空間が互いに独立しているならば、全体的に焼結
収縮した結果、この空間より小さな気孔を有する多孔体
が得られる。しかし、気孔率を上げるため、造孔剤を増
やした場合、造孔剤の位置していた空間部分が三次元的
なネットワークを形成する。焼結前のこの状態は、機械
的に極めて弱い状態であるのに加えて、焼結時には、空
間のネットワークで囲まれている部分が局所的に収縮を
起こし、クラックが発生する。
【0011】各種条件で焼結した多孔体の観察結果か
ら、クラックの発生は上記のようなメカニズムで発生す
るものと結論した。したがって、焼結時に造孔剤が固体
として存在し得て、その後に造孔剤を焼結体から除去で
きれば、クラックの発生を防止できると考えた。先に示
したとおり、一般的に使われている造孔剤は、分解、気
化する温度がセラミックスの焼結温度に比較して低いも
のが選ばれる。通常、セラミックスの焼結温度以上で分
解、気化するものは、これを気化させる際、セラミック
ス自体が分解、あるいは造孔剤とセラミックスとが反応
を起こす場合が殆どである。
【0012】この中で、炭素材料は、酸化性雰囲気中で
は、上に示したように1000℃以下で分解、気化してしま
うが、非酸化性雰囲気では2000℃以上の高温においても
安定である。これを利用して、非酸化性雰囲気中にて焼
結を行なうことにより、焼結時に造孔剤が固体である状
態を実現できる。ついで、焼結後に酸化性雰囲気で熱処
理を行ない、炭素の酸化、気化温度をセラミックスの分
解、あるいは反応温度より低下させることにより、セラ
ミックスの状態を変化させることなしに、造孔剤を気化
させることが可能になる。この結果、後の実施例で示す
ように、機械的な特性の優れたセラミックス多孔体が作
製可能なことを確認した。
【0013】焼結時の非酸化性雰囲気とは、真空を含む
酸素を含有しない雰囲気で、真空等の減圧状態を含む不
活性雰囲気又は還元性雰囲気である。例えば、アルゴ
ン、窒素、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、等の雰囲気
が挙げられる。非酸化性ガスを使用する場合の圧力は、
焼結熱処理方法とコスト等により選択されるべきであ
り、加圧、常圧、減圧いずれでも構わない。通常は、常
圧による焼結が最もコストが低いが、使用するガスが高
価であれば減圧で焼結しても構わないし、後述する熱間
等方圧プレス(HIP)による焼結であれば加圧とな
る。
【0014】本発明に適用可能なセラミックスは、炭化
珪素、窒化珪素などが非酸化物セラミックス多孔体の製
造に最も有効であるが、焼結温度で炭素と反応をしない
安定なものであれば、酸化物セラミックスでも構わな
い。この場合、熱処理温度における炭素によるセラミッ
クスの還元性に関して考慮する必要がある。
【0015】代表的な酸化物であるアルミナにおける例
を示す。アルミナの一般的な焼結温度よりやや高温の18
00K(1527℃)における反応に関して考える。アルミナ
自体の解離酸素圧は、その還元反応の自由エネルギー変
化が750kJであることから、1.7×10-17Paである。従っ
て、アルミナの還元は殆ど進行しない。同様に、固体炭
素によるアルミナの還元反応により、一酸化炭素ガスが
生成する反応の自由エネルギー変化は300kJであり、こ
の値から計算される一酸化炭素の分圧は4.4Paである。
従って、この還元反応も進行しない。更に、一酸化炭素
ガスによりアルミナが還元され、アルミニウムと二酸化
炭素が生成する場合の自由エネルギーは、490kJであ
り、この自由エネルギーから計算される二酸化炭素に対
する一酸化炭素の分圧は、1.3×107倍である。従って、
一酸化炭素から二酸化炭素への反応は進まない。この
他、アルミナと炭素の混在する系では、一酸化二アルミ
ニウム(Al2O)が生成する可能性があるが、これも熱力
学的な計算から殆ど生成しない。従って、アルミナの場
合、アルゴンガス等の非酸化性雰囲気中では、焼結温度
においてもアルミナと炭素は安定であり、反応を起こさ
ないため、本発明の製造法が適用可能と判断される。
【0016】造孔剤として用いられる炭素材料は、どの
ような結合状態でも構わない。造孔剤の形態も粉状、粒
状、繊維状、チューブ状等、必要な形態に応じて選択す
ることが可能である。大きさも、用途により様々な大き
さをとることが可能である。特に、本発明の方法では、
焼結時に固体であるため、造孔剤の形態に近い気孔形態
を得ることが可能である。したがって、セラミックスと
の反応性にもよるが、カーボンナノチューブのようなnm
オーダーの大きさの気孔を得ることも原理的に可能であ
る。また、研磨に利用されているようなμmオーダーの
ダイヤモンド粒子、黒鉛、また炭素繊維も利用可能であ
る。
【0017】本発明の方法において、炭素材料の気化は
表面からの酸素との接触によって生じさせるために、開
気孔を有する多孔体の製造、すなわちおよそ5体積%以
上の多孔体の製造に適している。すなわち、炭素材料の
添加量が5体積%以上であれば、炭素材料の気化が短時
間で済むことから本発明の添加量としては好ましい。し
かし、セラミックス母相を通じた拡散による脱炭も可能
であるため、この添加量の下限は必須条件ではない。
【0018】添加量の上限は、セラミックスの粒子同士
が接触して焼結する範囲であればよく、セラミックスの
種類や炭素材料の大きさ、分散状態にもよるが、セラミ
ックス母相が三次元的なネットワークを構成できれば良
い。本発明の実施例では約50体積%まで可能であった。
球状の造孔剤を最密充填した場合は、気孔率で約75体積
%までの多孔体が原理的に得ることが可能である。
【0019】焼結温度は、セラミックス粒子が癒着し焼
結する温度を選ぶ必要がある。この温度はセラミックス
の種類によって異なる。常圧焼結では、代表的なセラミ
ックスであるアルミナで1100℃〜1700℃、炭化珪素で17
00℃〜2000℃、窒化珪素で1600℃〜2000℃である。焼結
は、通常の焼結でも構わないが、ホットプレスやHIP
を使用した加圧焼結を利用することにより、造孔剤以外
のセラミックス相が緻密で強度の高い多孔体を得ること
ができる。特に、従来の方法でホットプレス処理を行な
う場合は、造孔剤が気化した空間が圧力によりつぶれな
いよう工夫をする必要があったが、本発明の方法では、
ホットプレス処理時点で造孔剤が固体であるために、気
孔としたい部分がつぶれることがなく、小さな気孔から
大きな気孔まで広い範囲の気孔形態を有する多孔体を得
ることができる。通常、加圧焼結における圧力は、ホッ
トプレスを使用する場合、10〜70MPa、HIP処理の場
合、10〜350MPaであるが、これに限定されるものではな
い。焼結温度は、常圧焼結に比較して低くすることが可
能であり、上記の圧力範囲であれば、一般的に上述した
焼結温度より150〜200℃下げることが可能である。
【0020】造孔剤が炭素材料の場合、焼結後の造孔剤
の気化は、酸化性雰囲気、即ち、空気等の酸素を含有す
る雰囲気中で行なわれる。通常、酸素濃度が20%の空気
で十分であるが、0%でなければ酸素濃度は必要に応じ
て調整して構わない。また、全圧も限定されない。炭素
の急激な気化による材料内の圧力上昇を抑える必要があ
る場合は、酸素濃度を20%以下にしても良い。母相とな
るセラミックスの特性を酸素濃度の調整によって得る必
要がある場合は、適した圧力、酸素濃度を選択できる。
例えばY(イットリウム)系酸化物超電導体(YBa2Cu3O
x)の場合、良好な超電導特性を得るため酸素濃度調整
熱処理を兼ねて行なうことを目的とし、100%の酸素雰
囲気で熱処理をしても良い。
【0021】造孔剤を気化させるための熱処理温度は、
母相のセラミックスが反応、あるいは劣化しない温度範
囲である必要がある。母相が酸化物セラミックスの場
合、焼結温度以下の温度が好ましい。非酸化物系セラミ
ックスの場合、その酸化開始温度以下である必要があ
る。本発明における製造方法は、セラミックス粒間の結
合を促進させるガラス相のない単相のセラミックス多孔
体の製造を可能にする。造孔剤の大きさ、形状により製
造上の困難さが異なるため単純な比較はできないが、後
述する実施例で使用した大きさが数十μmの大きさの造
孔剤を用いて比較した場合、母相のアルミナ相の純度が
99%以上で、気孔率が5体積%以上を有し、かつ粒間が
強固に結合したセラミックス多孔体は、本発明における
製造方法で実現可能であった。また、本発明の方法で製
造された気孔率30〜40体積%のアルミナ多孔体を例に取
れば、その強度は120〜170MPaと市販のアルミナ多孔体
に対して高いものが得られる。
【0022】また、本発明の方法は、焼結時に造孔剤が
固体として存在しているために、従来の方法に比較して
焼結収縮が小さく、焼結時の収縮量は緻密なセラミック
スを焼結する場合の焼結収縮量に近い。したがって、粉
末成形時に造孔剤を含まない層、あるいは造孔剤の添加
量の異なる層と一体成形した後に焼結することにより、
従来技術では、焼結収縮差により界面部でクラック等が
生じてしまうような組み合わせの接合構造体の製造も容
易になる。
【0023】更に、本発明の形態による副次的効果とし
て、従来の方法に比較し加工時の扱いが容易であること
が挙げられる。従来の方法では、最終加工は多孔体の状
態で行なう場合が殆どである。したがって、加工やその
ための固定により材料が損傷を受けやすく、気孔内に汚
れが入り込む欠点があった。本発明の方法では、造孔剤
を気化させる前に焼結を行なうため、焼結後セラミック
スと造孔剤の複合体を形成させた段階で寸法が決まるた
め、この段階で最終加工を行うことができる。複合体は
多孔体より強度が高く、造孔剤により孔がふさがってい
るため上記の欠点が生じ難い。
【0024】
【実施例】アルミナ原料と黒鉛を使用して、セラミック
ス多孔体の作製を試みた。99.9%のアルミナ原料粉末と
黒鉛を任意の組成で秤量し、エタノール中で混練した。
アルミナの粒径は0.1〜0.15μm、黒鉛は針状であり、短
径、長径の平均がそれぞれ13μm、110μmである。その
後、エタノールを蒸発、乾燥後、ふるい目開き250μmの
ふるいにかけた混合粉末を原料とした。この原料粉末を
金型を用いて一軸成形し、大きさ42mm×47mm×10mm、質
量40gの成形体とした後、所定のカーボンモールドに組
み、ホットプレス装置に設置した。炉内を0.4Paに減
圧した後、アルゴンガスをパージし、アルゴンガスを流
しながら加圧熱処理を施した。昇温は、1200℃まで60
分、1300℃まで20分の速さで行ない、1300℃で2時間保
持後、降温した。また昇温中に炉内温度が500℃に達し
たところで、プレス機で成形体を40MPaに加圧し、焼結
後降温を開始して、800℃に低下したところで除荷し
た。
【0025】上記の熱処理によって、アルミナと黒鉛か
らなる黒色の複合体が得られた。複合体中の黒鉛の形状
は、原料黒鉛粉末の形状とほぼ同じであった。また、熱
処理前の一軸成形体の質量と、熱処理後のアルミナと黒
鉛の複合体の質量は、ほぼ同じであった。以上のことか
ら、アルミナの焼結時においても、黒鉛は酸化、気化さ
れず、固体の状態で保存されることがわかる。
【0026】さらに、この複合体中の黒鉛を酸化、気化
させるために、大気中で、1000℃まで20℃/時間で昇温
し、1000℃で10時間保持した後、50℃/時間以下の速度
で冷却を行った。この熱処理前後で、試料の質量は減少
した。質量減少量は、原料中の炭素原料の質量とほぼ同
等であった。また、この熱処理の前後での寸法変化は0.
1%以下であった。
【0027】図1は、上記の方法で作製した多孔体の光
学顕微鏡写真である。写真で黒く見える部分が気孔であ
り、その形状は原料黒鉛の形状と同等で、第一段階の熱
処理後のアルミナと黒鉛の複合焼結体中の黒鉛部分が酸
化され、一酸化炭素や二酸化炭素ガスとして気化して得
られたものであることがわかる。このようにして得られ
たアルミナ多孔体の純度を調べたとところ、99.5%以上
であることがわかった。この多孔体の破面を走査型電子
顕微鏡にて観察を行ったが、ガラス相等の第二相は観察
されなかった。また、このアルミナ多孔体の表面を鏡面
研磨し、150℃、85%の燐酸中に30分保持した後、走査
型電子顕微鏡で観察を行ったが、粒内、粒界腐食は認め
られなかった。通常、焼結助剤としてSiO2やMgOを1質
量%以上添加して焼結したアルミナの場合、粒界部にガ
ラス相が形成されるため、上記の条件では粒界腐食を起
こす。すなわち、本方法で作製したアルミナ多孔体は、
粒界ガラス相が存在しないため、酸に対して高い耐食性
を有することを示すことがわかった。
【0028】図1の試料は、原料黒鉛の9質量%とした
場合に得られたものであり、気孔率は20.5体積%であっ
た。アルミナ骨格中にクラックは観察されなかった。こ
の多孔体のヤング率を測定したところ250GPaと高い弾性
率を有することがわかった。また、四点曲げ試験により
曲げ強度を測定したところ、220MPaと高いことがわかっ
た。
【0029】同様にして、原料黒鉛の仕込み量を変化さ
せながら、気孔率50体積%程度までのアルミナ多孔体を
作製した。表1は、原料黒鉛の仕込み組成に対して得ら
れたアルミナ多孔体の気孔率、ヤング率、及び強度を示
したものである。
【0030】
【表1】
【0031】先に述べたように、気孔率が30〜40体積%
の市販されているアルミナ多孔体の強度は20〜60MPaで
ある。これに対して、本発明の方法で作製したアルミナ
多孔体の強度は、同じ気孔率の範囲で120〜170MPaと高
い値を示した。これは、市販のアルミナ多孔体の場合、
結晶粒同士がガラス相のような強度の弱い相で結合され
た材料であるのに対して、本発明の方法で作製した多孔
体では粒間の結合が強固であるためである。
【0032】次に、同じ原料を用いて、通常のセラミッ
クス多孔体の製造方法で同程度の純度のアルミナ多孔体
の作製を試みた。上記と同じ方法で作製したアルミナと
黒鉛の混合粉末を一軸成形した成形体に対し、黒鉛を酸
化、気化するために、大気中で1000℃まで20℃/時間で
昇温し、1000℃で10時間保持した後、1450℃まで50℃/
時間で昇温し、この温度で2時間保持して焼結を行な
い、50℃/時間以下の速度で冷却を行った試料を作製し
た。
【0033】表2は、この方法で作製したアルミナ多孔
体について、原料黒鉛の仕込み組成に対して得られたア
ルミナ多孔体の気孔率、ヤング率、及び強度を示したも
のである。黒鉛の仕込み組成に対して、得られる気孔率
が先の方法に比較して小さいのは、焼結時に黒鉛が既に
気化して空間となっていたために、焼結収縮によって空
間がつぶれたためである。この方法で作製したアルミナ
多孔体は、気孔率が3.6体積%以下、仕込みの黒鉛組成
で2質量%以下では健全なものが得られたが、気孔率が
6.8体積%以上のものでは、多くのクラックが発生し、
ヤング率と強度が著しく低下していることがわかった。
黒鉛の仕込み組成に対し、焼結後の気孔率が、気孔率3.
6体積%以下の試料に対して大きいのは、クラックの影
響で見かけの体積が大きくなっているためと考えられ
る。
【0034】
【表2】
【0035】図2は、気孔率が9.6体積%のアルミナ多
孔体の光学顕微鏡写真である。同じ造孔剤を使用してい
るにも関わらず、気孔が小さくなっているのは、先に述
べた焼結収縮によるものである。更に、図からわかるよ
うに、気孔をつなぐような形でクラックが発生している
ことがわかる。このようなクラック発生のメカニズムと
して、先に示したような焼結収縮時の局所的な収縮によ
る応力、あるいは造孔剤が気化する際、気化が急激に生
じることによる急激なガス圧力による可能性が考えられ
る。
【0036】後者の可能性を調べるために、大気中1000
℃までの加熱速度を2℃/時間まで低下させて、多孔体
を作製した。しかしながら、クラックは減少せず、むし
ろ増加した。したがって、造孔剤量が大きくなった時に
発生するネットワーク状のクラックは、造孔剤が気化し
た後の空間が大きくなった結果、空間のネットワーク構
造ができ、その単位毎に焼結収縮を起こし、全体の収縮
がそれに追いつかなかないため、応力が発生したためと
結論できる。
【0037】造孔剤を焼き飛ばした後に焼結させる従来
の方法では、粒間の結合を促進させる助剤を添加するこ
となしに、気孔率が高く、クラックのない、機械的性質
の優れたセラミックス多孔体を得ることが困難であっ
た。したがって、焼結時にも造孔剤を固体として残留さ
せておき、後に造孔剤を気化させて多孔体を得る、本発
明の方法は有効である。
【0038】
【発明の効果】焼結時にも造孔剤を固体として残留させ
ておき、後に造孔剤を気化させて多孔体を得る本発明の
方法により、焼結時の前駆体の強度を増し、焼結収縮に
よる局所的な収縮を抑制する効果により、セラミックス
多孔体のセラミックス相に発生するクラックの発生を防
止する。また焼結時の収縮による気孔のつぶれを抑制す
る。この結果、様々な気孔の大きさ、形態を有し、かつ
セラミックス相の純度が高いセラミックス本来もつ機械
的性質、耐食性等の性質の優れたセラミックス多孔体を
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によるアルミナ多孔体の光学顕微
鏡像。
【図2】従来の焼結方法によるアルミナ多孔体の光学顕
微鏡像。
【符号の説明】
1…アルミナ相 2…気孔 3…クラック

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックス原料と造孔剤を混合し、成
    形した成形体を焼結してセラミックス多孔体を製造する
    方法であって、前記成形体中のセラミックス原料が焼結
    した後に、造孔剤を気化させることを特徴とするセラミ
    ックス多孔体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記焼結において、非酸化性雰囲気中で
    前記セラミックス原料を焼結し、酸化性雰囲気中で前記
    造孔剤を気化させる請求項1記載のセラミックス多孔体
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記セラミックス原料の焼結が、加圧焼
    結である請求項1または2に記載のセラミックス多孔体
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記セラミックス原料の主成分がアルミ
    ナである請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミッ
    クス多孔体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記造孔剤が炭素材料である請求項1〜
    3のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007149439A (ja) * 2005-11-25 2007-06-14 Shinko Electric Ind Co Ltd 固体電解質燃料電池
JP2009000663A (ja) * 2007-06-25 2009-01-08 Honda Motor Co Ltd 排ガス浄化フィルタ及びその製造方法
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KR101632740B1 (ko) 2015-11-05 2016-06-22 민강식 일체형 호기 질소탈기조를 이용한 생물학적 고도처리장치 및 그 공법

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