JP3113770B2 - D−キロ−イノシトールの製造方法 - Google Patents

D−キロ−イノシトールの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はD−キロ−イノシトール
(D-chiro-inositol)の改良製造方法に関する。D−キロ
−イノシトールは、近年、インシュリン非依存性糖尿病
の治療薬または予防薬として注目されている。
【0002】
【従来の技術】従来のD−キロ−イノシトールの製造法
については、或る種の植物から抽出精製して得る方法、
カスガマイシンを加水分解して得る方法、および化学合
成して得る方法〔ジャーナル・オブ・オーガニック・ケ
ミストリー(J. Org. Chem.) 第58巻,2331頁〜2
333頁,1993年〕等が知られている。これらの方
法のうち工業的規模で生産を可能とするD−キロ−イノ
シトールの製造法は、カスガマイシンを強酸で加水分解
する方法と化学合成する方法である。
【0003】カスガマイシンを加水分解する方法として
は、不純物をほとんど含有しない程度にまで精製した高
純度カスガマイシンを原料として用い、2規定 トリフ
ルオロ酢酸または5規定 塩酸のような強酸性条件下で
加熱することによってカスガマイシンを加水分解し、カ
スガマイシンの解裂によりD−キロ−イノシトールを得
る方法(米国特許第5,091,596号明細書参照)
が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】D−キロ−イノシトー
ルの製造方法は前述したように種々の方法が提案されて
いるが、工業的規模で有利に製造を実施するには様々な
難点がある。即ち、カスガマイシンを加水分解しD−キ
ロ−イノシトールを得る方法は、原料の高純度カスガマ
イシンを得るために、カラムクロマトグラフィーや再結
晶などの精製工程を繰り返しあるいは組み合わせて行う
ことが必要であって、操作が煩雑であり、製造コストも
高い。また、強酸性条件下でカスガマイシンの加水分解
を行う前記の公知の方法は、副反応を伴うこと及び収率
が低いなど問題点が多い。また、化学合成によるD−キ
ロ−イノシトールの製造法は立体特異的な合成が必要と
されるため、反応収率が低く製造コストも高い。
【0005】したがって、これらの製造法に代わる工業
的に有利なD−キロ−イノシトールの製造方法、特に、
生成されたD−キロ−イノシトールの再結晶や濾過とい
った人手のかかる工程が少なくて操作が簡単な製造方法
の開発が望まれている。
【0006】本発明の目的は、簡便な操作でD−キロ−
イノシトールを高純度に且つ高収率で製造し得る方法を
提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる問
題点を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、工業的
に極めて有利なD−キロ−イノシトールの製造方法を発
明するに成功した。
【0008】カスガマイシンは、非常に特異な構造のア
ミノ糖と天然に非常に稀なD−キロ−イノシトールとの
二糖を母核とする化合物である。
【0009】先に、本発明者らは、カスガマイシンの酸
による加水分解により、構成糖であるD−キロ−イノシ
トールを簡便な手法で収率よく高純度で収得できる方法
を種々検討した。その結果、カスガマイシンのアミノ糖
部分のアミノ基を、アシル基型の公知のアミノ保護基を
結合して保護して置くと、カスガマイシンのアミノ糖と
中性糖(D−キロ−イノシトール)との間のグリコシド
結合が0.05N〜 0.5Nの濃度範囲の塩酸と同程度の弱い
酸性条件でも効率よく解裂してカスガマイシンを容易に
加水分解してD−キロ−イノシトールを生成できるとい
う事実を見いだした。
【0010】更に研究を続けた結果、カスガマイシン塩
酸塩または硫酸塩の水溶液を、該カスガマイシン塩の約
5倍量(重量)又はそれ以上の強酸性イオン交換樹脂
(H+型)、好ましくはスルホン酸基を官能基とする強
酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の粒状物とよく混合さ
せ、これによってカスガマイシンを該樹脂に吸着及び結
合させた時には、その混合物の溶液相中にカスガマイシ
ン塩酸塩または硫酸塩からHClまたはH2 SO4 が遊
離されて生じ、約0.05N〜 0.5Nの濃度のHClまたは
2 SO4 に相当する酸が全体として存在するようにな
り、この時に生じた温和な酸性条件下で、樹脂に結合し
たカスガマイシンを、新たに酸を加えることなく、その
まま加熱下に加水分解すると、効率よくカスガマイシン
分子からD−キロ−イノシトールを解裂により生成でき
ることもまた知見した。
【0011】このように強酸性イオン交換樹脂にカスガ
マイシンを結合した場合には、カスガマイシンを5N塩
酸に溶解して加水分解する前出の米国特許の従来法の場
合より、はるかに穏和な酸性条件(0.05N〜 0.5NのH
Clに相当する酸の存在下)で加水分解できるため、副
反応による不純物の生成が極めて少なくて加水分解反応
液からD−キロ−イノシトールを簡便な後処理操作でも
高純度で得られることが見出された。
【0012】前記のようにカスガマイシン塩酸塩または
硫酸塩の水溶液を強酸性イオン交換樹脂とよく混合し、
この時に生じた0.05N〜 0.5NのHClに相当する酸を
含む水溶液の存在下に、該強酸性イオン交換樹脂に結合
したカスガマイシンを加水分解する際には、カスガマイ
シンの一方の分解生成物として生じたアミノ糖およびそ
の他の塩基性物質は強酸性イオン交換樹脂に吸着された
ままで、目的生成物である中性のD−キロ−イノシトー
ルが強酸性イオン交換樹脂に結合せずに非吸着区分とし
て該樹脂から分離できるので、得られた反応液からD−
キロ−イノシトールを簡便な後処理操作でも高収率、高
純度で得られる。
【0013】なお、加水分解反応後に、強酸性イオン交
換樹脂から、ほゞ純粋のD−キロ−イノシトールをHC
lまたはH2 SO4 と共に含む酸性の反応溶液として分
離できるから、強酸性イオン交換樹脂に吸着したままの
アミノ糖および未反応カスガマイシンおよびその他の不
純物等からD−キロ−イノシトールを効率よく分別でき
ることが見出された。
【0014】上記に知見に基づいて、先に出願した特願
平5−217926号(1993年8月11日出願)に
おいては、カスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶液
を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の粒状物と混合して
カスガマイシン分子を該強酸性イオン交換樹脂の強酸性
官能基に結合させ、これにより、発生された酸を含む反
応混合物を形成させ、この混合物を常圧下または加圧下
で加熱してカスガマイシンの加水分解反応を行う工程を
有するD−キロ−イノシトールの製造法が本発明者らに
より提案された。
【0015】本発明者らは更に研究した結果、上記の方
法と違って、強酸性イオン交換樹脂の粒状物をカラムに
充填して用いた場合に、この樹脂カラムにカスガマイシ
ン塩酸塩または硫酸塩の水溶液を加温条件下で連続に導
入、通過させると、加温条件下でカスガマイシン塩を強
酸性イオン交換樹脂に結合させてカラム通過液中に酸を
発生させて温和な酸性条件下でカスガマイシンの加水分
解反応を進行させることができ、このことによりカラム
通過液中にD−キロ−イノシトールを効率よく生成でき
ることを見出した。
【0016】そして、前記の特願平5−217926号
においては、カスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶
液を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の粒状物の充填カ
ラムに導入して加温条件下に通過させ、これによって、
カスガマイシン分子を充填カラム中の強酸性イオン交換
樹脂の強酸性官能基に結合させる反応と、樹脂カラム通
過液中に酸を発生させる反応と、該通過液中でカスガマ
イシンを加水分解してD−キロ−イノシトールを生成す
る反応とを該カラムの通過液中で生起させ、該カラムか
ら流出したD−キロ−イノシトールを含む酸性の反応溶
液を収得する工程を有するD−キロ−イノシトールの製
造法も本発明者らにより提案された。
【0017】然るに、先願の特願平5−217926号
に提案されたD−キロ−イノシトールの製造法で原料と
して用いられて、強酸性イオン交換樹脂の粒状物または
その充填カラムで処理されるカスガマイシン塩酸塩また
は硫酸塩の水溶液は、不純物をほとんど含有しない程度
にまで精製した高純度のカスガマイシン塩酸塩または硫
酸塩を脱イオン水に溶解して得られる水溶液でない時に
は、その製造法の最終段階で得られたD−キロ−イノシ
トールを含む中性の溶出液の濃縮液からD−キロ−イノ
シトールの高純度結晶を得る過程で再結晶の操作または
その反復などの多少の追加処理を要する場合もある恐れ
が生ずることが認められた。
【0018】しかし、上記の方法に原料として十分に適
した高純度のカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩は、そ
の調製にカラムクロマトグラフィや再結晶の反復からな
る手間のかゝる精製操作と大きな費用を要するので、比
較的に高い価格であるから、最終製品のD−キロ−イノ
シトールの価格にも大きく影響することは避けられな
い。
【0019】本発明者らは、そのような高純度で高価な
カスガマイシン塩酸塩または硫酸塩を用いなくても、農
薬用のカスガマイシン原体粉末として常用される程度の
中純度である、例えば純度60%前後の中純度であり、
比較的安い価格の粗製のカスガマイシン塩酸塩または硫
酸塩を用いた時にも、特願平5−217926号の方法
と同様に強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)を利用して温
和な酸性条件下でのカスガマイシンの加水分解によりD
−キロ−イノシトールを簡便に、しかも高純度で且つ高
収率に製造できる方法を提供する目的で研究を続けた。
【0020】その結果、上記の程度の中純度のカスガマ
イシン塩酸塩または硫酸塩を用いてこれを脱イオン水に
溶かし、得られた水溶液を活性炭または合成吸着剤のカ
ラムに通液し、これによって前記水溶液中に含まれる不
純物の大部分を吸着により除去する場合に、該活性炭カ
ラムまたは合成吸着剤カラムから出る流出液として得ら
れる部分精製されて未だ不純物の少量を含むカスガマイ
シン塩酸塩または硫酸塩水溶液が得られるが、この水溶
液は、これを強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カ
ラムに加温条件下で導入、通過させることにより温和な
酸性条件下でカスガマイシンを加水分解してD−キロ−
イノシトールを生成するのに特別の障害を伴わずに利用
できるが、但し強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填
カラムから出るD−キロ−イノシトール含有の酸性の加
水分解反応溶液は、それの後処理として、それから共存
の塩基性物質の除去のために一旦、再び別の強酸性イオ
ン交換樹脂(H+ 型)のカラムに通液し、後者のカラム
から出た酸性の流出液を、次いで、該流出液中に残存の
酸性物質の除去のために強塩基性イオン交換樹脂(OH
- 型)のカラムに通液することを要し、このようにしな
い限りは、D−キロ−イノシトールの高純度結晶の収得
を達成するのに再結晶操作の追加、などを要することを
認めた。
【0021】更に本発明者らの別途の研究によって、カ
スガマイシン生産菌の培養により得られたカスガマイシ
ン(遊離塩基の形)を含有する培養液を濾過し、こうし
て得られたカスガマイシン含有の培養濾液も、後述する
一連の操作からなるカスガマイシンの回収と予備精製段
階で予備精製すれば、そのように予備的に部分精製され
たが未だ若干量の不純物を含むカスガマイシン塩酸塩ま
たは硫酸塩水溶液が得られることが見出された。
【0022】この予備精製された水溶液を次いで活性炭
もしくは合成吸着剤のカラムに通液して該水溶液中の不
純物を大部分除去した後に、そのように活性炭または合
成吸着剤での吸着により精製されたカスガマイシン塩水
溶液を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラムに
導入、通過させると、このことにより穏和な酸性条件下
でカスガマイシンを加水分解してD−キロ−イノシトー
ルを生成できて、この際に特別な障害を伴わないことも
見出した。但し、この場合にも、強酸性イオン交換樹脂
(H+ 型)のカラムから流出して加水分解反応で生成さ
れたD−キロ−イノシトールを含む酸性の反応溶液は、
前記の場合と同様に、強酸性イオン交換樹脂カラムでの
再処理と強塩基イオン交換樹脂(OH- 型)カラムでの
処理とからなる後処理にかけないと、D−キロ−イノシ
トールの高純度結晶の収得を達成するのには、再結晶操
作の追加、などを要することが認められた。
【0023】更にまた、本発明者らが最近行った実験に
よれば、何らの酸成分を含有しない高純度のまたは粗製
のカスガマイシン遊離塩基の水溶液を、強酸性イオン交
換樹脂としてスルホン酸基を官能基とする強酸性イオン
交換樹脂(H+ 型)の粒状物の充填カラムに導入して、
カラム通過液を50〜100℃の温度に維持しながら該
カラムを通過させた場合に、該カラムを通過中の通過液
はカラム内部で酸性のpHを示すようになり且つカラム
の出口から流出する水溶液は酸性のpHをもち、しかも
カスガマイシンの加水分解生成物としてのD−キロ−イ
ノシトールを含有することが見出された。
【0024】上記の実験結果をみると、前述したよう
に、カスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶液を強酸
性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラムに導入して加
熱条件下に通過させ、これによって、通過液中でカスガ
マイシンの加水分解によるD−キロ−イノシトールの生
成反応を行おうとする場合には、カスガマイシン分子が
樹脂の強酸性官能基に結合する反応が起るが、これに伴
って、遊離されたHCl(塩化水素)またはH2 SO4
(硫酸)を樹脂カラム通過液中に生成させる過程が起り
且つ樹脂とカスガマイシンと水とが加熱条件下で相互に
接触して相互作用することにより何らかの酸成分を発生
させる過程も起り、これらのことに主に因って、カラム
通過液中に酸性状態が作り出されると説明するのがより
正確である。そして、カラム通過液中で、このように作
り出された温和な酸性条件と強酸性イオン交換樹脂との
作用の下にカスガマイシンが加水分解してD−キロ−イ
ノシトールを生成する反応が進行すると説明できる。
【0025】従って、第1の本発明によると、部分精製
されたが未だ不純物を含むカスガマイシン塩酸塩または
硫酸塩の水溶液を活性炭もしくは合成吸着剤のカラムに
導入して通過させる第1工程と、第1工程から得られた
不純物を含むカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩水溶液
を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の粒状物の充填カラ
ムに導入して加熱条件下に通過させ、これによって、カ
スガマイシン分子を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の
充填カラム中の強酸性イオン交換樹脂の強酸性官能基に
付加塩の形で結合させる反応と、この結合反応に伴って
カスガマイシンから遊離されたHClまたはH2 SO4
を強酸性イオン交換樹脂カラム通過液中に生成させるこ
と及び加熱条件下での該強酸性イオン交換樹脂とカスガ
マイシンと水との相互の接触により酸成分を発生させる
ことに主に由って該通過液中に0.05N〜0.5 Nの濃度の
塩酸に相当する酸性状態を作り出す反応と、該通過液が
カスガマイシンを結合した強酸性イオン交換樹脂と接触
しながら該カラム内を流通する間に、該通過液に生じた
酸性と該イオン樹脂との作用下にカスガマイシンを加水
分解してD−キロ−イノシトールを該通過液中に生成す
る反応とを並行的に該強酸性イオン交換樹脂と該樹脂の
カラムの通過液との中で生起させ、該カラムから流出し
てくるD−キロ−イノシトールとHClまたはH2 SO
4 とその他の酸成分と不純物とを含み且つ場合により未
反応のカスガマイシンも含む酸性の反応溶液を収得する
第2工程と、第2工程から得られた酸性の反応溶液を強
酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラムに通して、
これにより該反応溶液中に存在する塩基性の不純物を除
去し且つ場合により混在する未反応のカスガマイシンを
も除去して、該強酸性イオン交換樹脂の充填カラムから
出る流出液として、部分的に精製されてHClまたはH
2 SO4 とその他の酸成分とD−キロ−イノシトールを
含む酸性の水溶液を収得する第3工程と、第3工程から
得られた酸性の水溶液を塩基性イオン交換樹脂(OH-
型)の充填カラムに通してこれにより該水溶液に含有さ
れた酸性物質を該樹脂に結合させて、該カラムから出る
D−キロ−イノシトールを含む中和された溶出液を収得
する第4工程と、さらに溶出液を濃縮し且つその濃縮液
から高純度のD−キロ−イノシトールの結晶を析出させ
る第5工程とを行うことを特徴とする、D−キロ−イノ
シトールの製造方法が提供される。
【0026】次に、第1の本発明の方法について具体的
に説明する。
【0027】第1の本発明の方法で出発原料として使用
するカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶液は、生
産力価を高めるように改良されたカスガマイシン生産菌
を通常の方法で培養し得られた培養液を濾過し、その培
養濾液から通常の採取法で分離されたカスガマイシンか
ら作られたカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩を水にと
かした水溶液であることができる。このカスガマイシン
塩酸塩または硫酸塩はいくつかの精製工程ですでに処理
したものを用いるが、例えば植物病害防除用農薬の製造
用のカスガマイシン原体として日本国内外で生産されて
いるカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の原体粉末をイ
オン交換水等に溶解して用いるとよい。
【0028】第1の本発明の方法は、大きくみると、5
つの工程から構成される。第1工程は原料として利用で
きる中純度のカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩を脱イ
オン水に溶解したが若干の不純物を含むカスガマイシン
塩水溶液を活性炭または合成吸着剤の充填カラムを用い
て不純物の吸着、除去によりある程度まで部分精製する
工程である。第2工程は強酸性イオン交換樹脂(H
+ 型)カラムに第1工程で部分精製されたカスガマイシ
ン塩水溶液を加温条件下で通液し、そのカラム中で起る
カスガマイシンの加水分解反応によるD−キロ−イノシ
トールの生成を行う工程である。第3工程は第2工程で
生成されたD−キロ−イノシトールを含むが原料に含ま
れる塩基性の不純物及び加水分解の副反応生成物を若干
含んだ酸性の反応溶液を強酸性イオン交換樹脂のカラム
に通液することによる、D−キロ−イノシトールを含む
酸性の反応溶液の部分的精製工程である。
【0029】第4工程は、第3工程で得られて、部分的
精製を受けたD−キロ−イノシトール含有の酸性溶液を
酸性物質の除去のために強塩基性イオン交換樹脂(OH
- 型)のカラムに通液することによる追加の精製と中和
との工程である。第5工程は、第4工程で得られて、追
加の精製と中和を受けたD−キロ−イノシトールの中和
された溶出液からD−キロ−イノシトールを高純度の結
晶形で回収する工程である。
【0030】第1の本発明では、これら5つの工程にお
いて物質の取り扱いを全て水溶液の状態で行うことによ
り、個々の工程を継続または連続的に連結することが可
能となり、物質を一度も使用装置の系外に取り出すこと
なく高純度のD−キロ−イノシトールを製造することも
できる。
【0031】更に、第1の本発明の方法における各工程
を詳細に説明する。
【0032】第1工程において、出発原料として、カス
ガマイシン塩酸塩の原体、等をイオン交換水等の水で溶
解した水溶液の如き粗製のカスガマイシン塩酸塩または
硫酸塩の水溶液を使用し、この水溶液を、クロマトグラ
フ用活性炭素(和光純薬工業株式会社製)などの活性
炭、あるいはセバビーズ SP206(三菱化成株式会
社製),アンバーライトXAD−2(ロームアンドハー
ス社製)などの合成吸着剤の充填カラムに導入し、通過
させる。
【0033】このことによって、原料水溶液中の不純物
の相当程度の除去が効率的に行われる。好ましくは、活
性炭を用い活性炭の容量1に対して、200〜400m
g/mlのカスガマイシン濃度に調製したカスガマイシ
ン塩の水溶液の3〜10倍容量を約4〜1/8vol/
hr.の速度でカラムに通過させることにより、次の第
2工程での加水分解反応に適した十分な程度に不純物を
除去されたカスガマイシン塩水溶液を得ることができ
る。
【0034】このとき必要ならば、カスガマイシン塩水
溶液を70〜80℃に加温溶解し、高温下でカスガマイ
シン塩水溶液を吸着剤カラムに通過しても全く問題はな
い。この吸着剤カラムによる処理操作で、カスガマイシ
ンの濃度を減少することなく不純物を大幅に除去するこ
とができ、それにより、その後の第2工程及びそれ以降
の工程でのD−キロ−イノシトールの加水分解反応及び
精製的な後処理の過程において不純物による影響での障
害が全く伴わずに利用できる程度に精製されたカスガマ
イシン塩水溶液を調製できる。
【0035】前記の米国特許第5,091,596号の
方法で原料として必要とされる、不純物をほとんど含ま
ない高純度のカスガマイシンまたはその酸付加塩は、粗
製カスガマイシンの精製のためにエタノールによるカス
ガマイシンの結晶化と濾過、等の諸操作を要して労力と
費用が掛るので高価格であるけれども、第1の本発明の
方法では、上記の第1工程を行うことに由って、中純度
のカスガマイシン塩を利用できるから、労力と費用の大
幅な節減を可能とする。
【0036】なお、第1の本発明の方法の第1工程で原
料として用いられる「部分精製されたが未だ不純物を含
むカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶液」として
は、カスガマイシン生産菌の培養により得たカスガマイ
シン含有の培養液を濾過し、得られた培養濾液を下記の
如きカスガマイシンの採取工程と予備精製工程にかけ、
農薬用の中純度のカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の
原体を水にとかした水溶液に相当する程度の量で不純物
を含むカスガマイシン塩水溶液を得て、これを利用する
ことができる。
【0037】すなわち、例えば、カスガマイシン生産菌
の培養で得られた培養液を濾過し、得られた培養濾液を
先づ強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)例えばダイアイオ
ンSK116(三菱化成製)、デュオライトC−20
(住友化学工業製)、アンバーライトIR124(オル
ガノ製)などのスルホン酸基を官能基とする強酸性イオ
ン交換樹脂(H+ 型)のカラムに通してカスガマイシン
を該カラムの樹脂に吸着させ、次いで該カラムの樹脂を
脱イオン水で洗浄し、その後にアルカリ金属水酸化物水
溶液、例えばNaOH水溶液を通してカスガマイシンを
該樹脂から脱離、溶出させ、これで流出した溶出液を分
画で取りアルカリ性のカスガマイシン画分を集め、集め
たアルカリ性のカスガマイシン画分を再び強酸性イオン
交換樹脂(H+ 型)のカラムに通すが、但しこの際に、
カスガマイシン成分の樹脂による吸着が実質的に起らな
いけれども樹脂によるアルカリ金属水酸化物の結合と中
和を起させる程度の高い通液速度で通してアルカリ性の
カスガマイシン画分中の過剰アルカリ分を中和させ、該
カラムから出る中和されたカスガマイシン水溶液を濃縮
し、例えば逆浸透膜またはエバポレーターで濃縮し、得
られたカスガマイシン(遊離塩基の形)の濃縮水溶液に
塩酸または硫酸を加えてカスガマイシンに反応させ、こ
れにより若干の残留する不純物を含むカスガマイシン塩
酸塩または硫酸塩の水溶液を収得することからなるカス
ガマイシンの回収と予備精製段階により調製された粗製
カスガマイシン塩の水溶液を第1の本発明の方法の第1
工程に原料水溶液として利用できる。
【0038】第1の本発明方法の第2工程では、強酸性
イオン交換樹脂(H+ 型)のカラム中でカスガマイシン
の加水分解によるD−キロ−イノシトールの生成反応が
行われる。
【0039】この第2工程で使用される強酸性イオン交
換樹脂は市販品をカラムに充填してから、無機酸で処理
してH+ 型に調製してから使用に供するが、ここで処理
に使用する無機酸には1N〜5Nの濃度の塩酸、硫酸、
リン酸などの無機酸がある。使用される強酸性イオン交
換樹脂はスルホン酸基を官能基として有するイオン交換
樹脂であるのが好ましく、市販される強酸性イオン交換
樹脂、例えばダイヤイオンSK116、ダイアイオンP
K228(三菱化成製)、アンバーライトIR120
B、アンバーライト200C、アンバーライト201B
(オルガノ社製)、デュオライトC−20、デュオライ
トC−264、デュオライトXE−636(住友化学工
業製)、ダウエックス50W(室町化学工業製)などで
あることができる。
【0040】このようにH+ 型に調製した強酸性イオン
交換樹脂のカラムに、カスガマイシン塩酸塩または硫酸
塩をカスガマイシン遊離塩基に換算してカスガマイシン
を200〜400mg/mlの濃度で含む水溶液を加温
条件下で導入し、カラムを通して液を流通させる。
【0041】この第2工程は加熱条件下で行うが、生成
物であるD−キロ−イノシトールは熱安定性が高いた
め、反応温度が高く反応時間が長いほどカスガマイシン
の加水分解率が増大する。また、使用樹脂の種類によっ
て、反応効率に多少の違いがあるが、強酸性イオン交換
樹脂(H+ 型)として例えばダイアイオンSK116
(三菱化成株式会社製)を強酸性イオン交換樹脂(H+
型)として用いた場合、この樹脂カラム内の温度を90
〜98℃に保ち、該カラム内の通過液の滞留時間が6時
間以上になるように通過液の流速を調節すると、カスガ
マイシンは100%近い反応率で加水分解反応を受け
る。
【0042】一般的には、本第2工程でのカスガマイシ
ン加水分解反応を行う強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)
のカラム内の温度は常圧下で50℃以上で但し100℃
以下の温度に、好ましくは60〜98℃の温度に、特に
好ましくは90〜98℃の温度に維持するか、あるいは
加圧条件下に100〜150℃の温度に維持するのがよ
く、これらの上昇された温度でカスガマイシンの加水分
解を行いうる。しかも、これらの場合に、第2工程での
加水分解反応は樹脂カラム内の通過液の滞留時間が6〜
40時間、好ましくは10〜15時間であるようにして
行うことができる。
【0043】また、カスガマイシンの加水分解反応は、
樹脂カラム内の水の沸とうを抑止するのに足る加圧下
に、例えばゲージ圧で 0.1〜3kg/cm2 の圧力、好
ましくは1〜 1.2kg/cm2 の圧力下に100〜15
0℃の温度で樹脂カラム内の通過液の滞留時間が 1.0〜
10時間、好ましくは3〜5時間であるようにして行う
ことができる。
【0044】カスガマイシンの加水分解反応を加圧下に
行う場合には、強酸性イオン交換樹脂カラムを収容する
容器を耐圧容器にし、送入される水溶液を加圧下に圧入
するのがよい。
【0045】更に、第2工程は繰り返し行うこと即ち強
酸性イオン交換樹脂のカラムの出口から流出した酸性の
反応溶液を、再び同一のカラムの入口に再循環、導入し
てカラムに通過させることで加水分解の反応収率を高め
ることもできる。また、カラムの出口を閉鎖してカラム
内にカスガマイシン水溶液を一時的に停滞させ一定時間
反応させた後、カラム内の溶液中のD−キロ−イノシト
ールの生成濃度を確認した後、脱イオン水などをカラム
入口から送入して反応液をカラムから流し出させてもよ
い。いずれの場合も、この反応の間、反応液を系外に取
り出すことなく操作を進行し、カラムから流出した酸性
の反応溶液を反応が完結した反応溶液として直接に第3
工程に送ることができる。
【0046】第1の本発明方法の第3工程では、第2工
程から得られたD−キロ−イノシトールを含む酸性の反
応溶液を強酸性イオン交換樹脂カラムで塩基性物質の除
去のための精製を行う。この第3工程は、第1工程で除
去できなかった塩基性の不純物及び第2工程を経た酸性
の反応溶液中に混在する未反応のカスガマイシン、また
は第2工程の加水分解反応時の副反応等で生じた塩基性
の不純物を可能な限り除去するために行われる。
【0047】第1の本発明方法の第4工程は、第2工程
で反応溶液中に生じた酸を中和する目的で行われる。通
常は、第3工程を経たカラムからの酸性の流出液を、強
塩基性イオン交換樹脂の充填カラムに通過させることに
よって行われる。第3および第4工程で使用される樹脂
のカラム充填量は、第2工程を経た加水分解反応溶液に
含まれる不純物の量により変動するが、通常の場合、第
2工程で使用した樹脂量とほぼ同等の量の強酸性イオン
交換樹脂と強塩基性イオン交換樹脂を各々使用すれば充
分である。必要ならば、第4工程で得られた中和された
溶出液を、さらに活性炭等の吸着剤の充填カラムに通液
してもよい。
【0048】第1の本発明方法の第3および第4工程に
よって、原料として用いた粗製カスガマイシンに含まれ
ていた不純物と、その不純物が第2工程での酸加水分解
反応を経ることによって生成された副反応物と、カスガ
マイシンの副反応分解で生じた副生成物との大部分を除
去することが可能となり、粗製のカスガマイシンより高
純度のD−キロ−イノシトールを得ることができる。
【0049】第4工程で使用される塩基性イオン交換樹
脂は、所定量の樹脂をカラムに充填し、予じめ、この樹
脂の数倍量の1〜3Nの水酸化ナトリウムなどのアルカ
リ水溶液で処理してOH- 型に調製されたものである。
使用される塩基性イオン交換樹脂(OH- 型)として
は、第4級アンモニウム基を官能基として含むイオン交
換樹脂、例えばデュオライトA−113PLUS(住友
化学工業製)およびアンバーライトIRA 410(オ
ルガノ社製)などが挙げられる。
【0050】これらの第1工程から第4工程はそれぞれ
単独に独立して別々の時間に行うことができるが、これ
ら工程で用いる各々のカラムの一部または全てを導管で
連結し、連結された各カラムを通る溶液の流速を導管に
挿設されたポンプの制御により調節することによって、
第1工程から第4工程の一部または全部を連続式に行う
こともできる。
【0051】この場合、各カラムで処理すべき溶液の通
液量は、加水分解反応を行う第2工程でのカラム通液速
度に規定されるもので、第2工程で加水分解速度を高め
るためには第2工程でのカラム内に加圧条件を作り、反
応中の溶液を100℃以上に加温することも有効な手段
となる。また、第2〜第4工程で用いた樹脂は酸または
アルカリ処理で再生可能であるため、一度カラムに充填
したままで再生処理すると、それぞれ再利用し半永久的
に反復使用することができる。
【0052】第1の本発明方法の第5工程では、第4工
程で用いた強塩基性イオン交換樹脂カラムから出て収得
されたD−キロ−イノシトールを含むが不純物を実質的
に含まない中和された溶出液よりD−キロ−イノシトー
ルを回収する。この回収のために、前記の溶出液を濃縮
し、その濃縮液から高純度のD−キロ−イノシトール結
晶を析出させるが、この結晶析出にはエタノールを濃縮
液に添加しても都合よい。この場合、一般に、糖を含む
濃厚水溶液から糖の結晶を析出させる普通の慣用手段を
応用できる。
【0053】本明細書で前述したように、高純度でも、
粗製でもカスガマイシン遊離塩基の水溶液を、スルホン
酸基を官能基とする強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の
充填カラムを通して50〜100℃の温度で通過させる
場合に、カラム内部の通過液は酸性pHを示すようにな
り、この通過液中で酸性条件と強酸性イオン交換樹脂と
の作用下にカスガマイシンが加水分解されてD−キロ−
イノシトールを生成する反応が起り、該カラムの出口か
らの流出液としてD−キロ−イノシトールを含む酸性の
反応溶液を収得できることが実験から見出された。
【0054】従って、第1の本発明は、粗製の、若しく
は高純度のカスガマイシン遊離塩基の水溶液を原料とし
て使用してD−キロ−イノシトールを製造するように改
変できる。
【0055】それ故、第2の本発明によると、部分精製
されたが未だ不純物を含むカスガマイシン遊離塩基の水
溶液を活性炭もしくは合成吸着剤のカラムに導入して通
過させる第1工程と、第1工程から得られた不純物を含
むカスガマイシン遊離塩基の水溶液を、若しくは該第1
工程を経ずに別途に高純度に予め精製されたカスガマイ
シン遊離塩基の水溶液を強酸性イオン交換樹脂(H
+ 型)の粒状物の充填カラムに導入して加熱条件下に通
過させ、これによって、カスガマイシン分子を強酸性イ
オン交換樹脂(H+ 型)の充填カラム中の強酸性イオン
交換樹脂の強酸性官能基に結合させる反応と、加熱条件
下での該強酸性イオン交換樹脂とカスガマイシンと水と
の相互の接触とにより酸成分を発生させて該イオン交換
樹脂の作用下にカスガマイシンを加水分解してD−キロ
−イノシトールを該強酸性イオン交換樹脂のカラムの通
過液の中で生成させ、該カラムから流出してくるD−キ
ロ−イノシトールと酸成分とを含み且つ場合により混在
する不純物と未反応のカスガマイシンも含む酸性の反応
溶液を収得する第2工程と、第2工程から得られた酸性
の反応溶液を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カ
ラムに通して、これにより該反応溶液中に存在する塩基
性の不純物を除去し且つ場合により存在する未反応のカ
スガマイシンをも除去して、該強酸性イオン交換樹脂の
充填カラムから出る流出液として、部分的に精製されて
酸成分とD−キロ−イノシトールを含む酸性の水溶液を
収得する第3工程と、第3工程から得られた酸性の水溶
液を塩基性イオン交換樹脂(OH- 型)の充填カラムに
通してこれにより該水溶液に含有された酸性物質を該樹
脂に結合させて、該カラムから出るD−キロ−イノシト
ールを含む中和された溶出液を収得する第4工程と、さ
らに溶出液を濃縮し且つその濃縮液から高純度のD−キ
ロ−イノシトールの結晶を析出させる第5工程とを行う
が、但し、第2工程において、第1工程を経ずに別途に
高純度に精製されたカスガマイシン遊離塩基の水溶液を
使用する場合には、第1工程を省略することを特徴とす
る、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。
【0056】第2の本発明方法の第1工程において活性
炭もしくは合成吸着剤のカラムに導入、通過させられる
のに使用される、部分精製されたがまだ不純物を含むカ
スガマイシン遊離塩基の水溶液は、カスガマイシン生産
菌の培養で得られた培養液を濾過し、得られた培養濾液
を先づ強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)のカラムに通し
てカスガマイシンを該カラムの樹脂に吸着させ、次いで
該カラムの樹脂を脱イオン水で洗浄し、その後にアルカ
リ金属水酸化物水溶液を通してカスガマイシンを該樹脂
から脱離、溶出させ、これで得られたアルカリ性溶出液
の分画によりアルカリ性のカスガマイシン画分を集め、
集めたカスガマイシン画分を強酸性イオン交換樹脂(H
+ 型)のカラムに通すが、但しこの際に、カスガマイシ
ン成分の樹脂による吸着が実質的に起らないけれども樹
脂によるアルカリ金属水酸化物の結合と中和を起させる
程度の高い通液速度で通してカスガマイシン画分を中和
させ、該カラムから出る中和されたカスガマイシン水溶
液を濃縮し、これにより若干の残留する不純物を含むカ
スガマイシン遊離塩基の水溶液を採取することからなる
カスガマイシンの回収と予備精製の段階で得られたもの
であることができる。
【0057】更に、第2の本発明方法の第2工程におい
てカスガマイシンの加水分解反応を行うに用いられる強
酸性イオン交換樹脂のカラム内の温度は常圧下で50℃
以上で但し100℃以下の温度、好ましくは60〜98
℃の温度に維持するか、あるいは加圧条件下で100〜
150℃の温度に維持することができる。
【0058】第2の本発明の方法は、第1の本発明で用
いたカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩に代えてカスガ
マイシン遊離塩基を用いる点で相違するけれども、第2
の本発明方法の第1工程で用いる活性炭もしくは合成吸
着剤、第2〜第4工程で用いる各種のイオン交換樹脂は
夫々に、第1の本発明方法の第1工程で用いる各種の吸
着剤と第2〜第4工程で用いる各種のイオン交換樹脂と
同じであることができる。
【0059】また、第2の本発明方法の第1〜第5工程
は、第1の本発明方法の第1〜第5工程と同様な要領で
操作して実施できる。
【0060】更に本発明者らは第2の本発明方法の第2
工程を実施する一連の実験を行ったが、スルホン酸基を
官能基とする強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カ
ラムを通して、高純度のまたは粗製のカスガマイシン遊
離塩基の水溶液をカラム内の温度が50〜150℃の範
囲で常圧下または加圧下に流通させる場合に、カラムに
装入される水溶液中のカスガマイシンの濃度、通過液の
流速、カラム内の樹脂量、その他の操作ファクター等を
夫々に調整することによって、カスガマイシンの加水分
解によるD−キロ−イノシトールの生成反応が進行でき
ることも認められた。
【0061】従って、第3の本発明によると、部分精製
されたが未だ極く少量の不純物を含むカスガマイシン遊
離塩基、もしくは高純度に予め精製されたカスガマイシ
ン遊離塩基の水溶液を、スルホン酸基を官能基とする強
酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の粒状物の充填カラムに
導入してカラム内の温度50〜150℃の範囲で通過さ
せ、これによって、カスガマイシン分子を強酸性イオン
交換樹脂(H+ 型)の充填カラム中の強酸性イオン交換
樹脂のスルホン酸官能基に結合させる反応と、加熱条件
下での該強酸性イオン交換樹脂とカスガマイシンと水と
の相互の接触とにより酸成分を発生させて該イオン交換
樹脂の作用下にカスガマイシンを加水分解してD−キロ
−イノシトールを該強酸性イオン交換樹脂のカラム内で
生成させ、さらに該カラムから流出してくるD−キロ−
イノシトールと未反応のカスガマイシンを含む酸性の反
応溶液を収得することを特徴とするD−キロ−イノシト
ールの製造方法が提供される。
【0062】この第3の本発明方法は、第1および第2
の本発明の方法の第2工程と同様な要領で操作できる。
【0063】次に、第1および第2の本発明の方法の第
1工程から第4工程を連続に実施するのに適する装置を
添付図面の図1に簡略に図解的に示す。
【0064】この装置は、活性炭の充填カラム1、加水
分解反応塔として働く強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)
の充填カラム2、精製用の強酸性イオン交換樹脂(H+
型)の充填カラム3および精製用の強塩基性イオン交換
樹脂(OH- 型)の充填カラム4を設けて成る。
【0065】活性炭カラム1の頂部の入口には、原料と
して用いる粗製カスガマイシン(塩)の水溶液の供給管
7を設ける。カラム1の底部の出口は、加水分解反応用
の強酸性イオン交換樹脂カラム2の入口と導管8により
連結され、この導管8には、カラム1の出口側とカラム
2の入口側とに開閉弁12と開閉弁13とを挿設し、ま
た弁12と弁13との中間の位置に液送ポンプ5を挿設
してある。ポンプ5は、導管8を通る液体の流速を加減
できる液流速度の制御可能な型式のポンプであるのが好
ましい。
【0066】強酸性イオン交換樹脂カラム2(加水分解
反応塔)の出口と精製用の強酸性イオン交換樹脂カラム
3の入口とは、導管9で連結され、導管9には、カラム
2から流出する反応溶液中にガスが混入する場合にガス
を外部へ取去るガス抜き器(弁)6が挿設され、また開
閉弁14も挿設される。
【0067】精製用の強酸性イオン交換樹脂カラム3の
出口と精製用の強酸基性イオン交換樹脂カラム4の入口
とは、開閉弁15をもつ導管10で連結される。カラム
4の出口には、該カラム4から出る溶液の送出管11が
設けられる。送出管11は更にカラム4から出る中和お
よび精製されたD−キロ−イノシトール水溶液を分取す
る受器(図示せず)へ該水溶液を送るように配置され
る。該受器に集められたD−キロ−イノシトール水溶液
を濃縮するための濃縮器(図示せず)は、カラム4の後
方に設ける。
【0068】なお、加水分解反応塔としての強酸性イオ
ン交換樹脂カラム2は、該カラム内の樹脂及び該カラム
を流通する反応中の溶液を50℃またはそれ以上の高い
反応温度に加熱するため、カラムを包囲する加熱用ジャ
ケットまたはオーブンの如き適当な加熱装置を設置され
る。
【0069】次に、第1の本発明の製造方法を下記の実
施例について具体的に説明するが、下記の実施例に限定
されるものではない。
【0070】実施例1 本例は、原料として粗製のカスガマイシン塩酸塩の水溶
液を使用したD−キロ−イノシトールの製造を例示す
る。添付図面の図1に図解的に示されるように活性炭の
充填カラムと、加水分解反応器としての強酸性イオン交
換樹脂(H+ 型)の充填カラムと、精製用の強酸性イオ
ン交換樹脂(H+ 型)の充填カラムと、精製用の強塩基
性イオン交換樹脂(OH- 型)の充填カラムとを導管で
連結してなり、第1の本発明方法の第1〜第4工程を連
続的に実施できるようにした装置を準備した。
【0071】(第1工程)カスガマイシン塩酸塩の粗製
の原体粉末(日本化薬株式会社製、カスガマイシン遊離
塩基としての換算含量は62.3%)24gを120mlの
脱イオン水に加温溶解した。不純物を含む得られたカス
ガマイシン塩酸塩水溶液全量を容量25mlの活性炭カ
ラムの充填カラム(内径 1.5cm,長さ14cm)の頂
部にのせ、ポンプ駆動により活性炭カラムを通して通液
した。
【0072】この場合、カスガマイシン塩酸塩水溶液が
活性炭カラムの頂部表面からなくなる直前に、脱イオン
水120mlを該頂部に追加した。前記水溶液は活性炭
カラムを流速約6ml/時間で通過させた。
【0073】(第2工程)活性炭カラムの底部出口を流
出した流出液としてのカスガマイシン塩酸塩水溶液(p
H 4)を、強酸性イオン交換樹脂ダイヤイオンSK1
16(H+ 型)(三菱化成株式会社製)の120ml容
量を充填したカラム(内径 2.5cm,長さ24.5cm)
(該カラムは90℃のオーブン内に設置してある)に上
昇通過させ、通過液のカラム滞留時間を約7時間に設定
した。
【0074】この強酸性イオン交換樹脂カラムを通過す
る溶液中でカスガマイシンの加水分解が起り、D−キロ
−イノシトールが生成した。該カラムの出口から、D−
キロ−イノシトールを含む酸性の反応溶液 (pH 1.0)
が流出した。
【0075】(第3工程)第2工程で得られた酸性の反
応溶液を、強酸性イオン交換樹脂、デュオライトC−2
0(H+ 型)(住友化学工業株式会社製)の100ml
容量を充填したカラム(内径 2.4cm,長さ22cm)
に導入し、通過させた。
【0076】(第4工程)第3工程でデュオライトC−
20カラムから出た酸性の水溶液を、強塩基性イオン交
換樹脂、デュオライトA−113PLUS(OH- 型)
(住友化学工業株式会社製)の120ml容量を充填し
たカラム(内径 2.4cm,長さ26.5cm)に導入し、通
過させた。
【0077】上記のデュオライトA−113PLUSカ
ラムの出口から、D−キロ−イノシトールを含む中和さ
れた溶出液が収得された。
【0078】上記のように実施された第1〜第4工程の
所要時間はカラムの水洗を含めて計40時間であった。
【0079】(第5工程)第4工程でデュオライトA−
113PLUSカラムから、D−キロ−イノシトール水
溶液を収得した後、該カラムを水洗した。その水洗液を
D−キロ−イノシトールの水溶液と合併した混合液中
の、D−キロ−イノシトール含量を高速液体クロマトグ
ラフィーで測定すると、 6.8g(理論値 7.1g)(重量
収率96%,純度約99%)であった。更に、前記の混
合液を濃縮した後にエタノールを加えてD−キロ−イノ
シトールを結晶化し、 6.5g(重量収率92%,純度約
100%)を得た。
【0080】このようにして得られたD−キロ−イノシ
トールは比旋光度が〔α〕D 22+65°(c 1.0,
水)、融点238℃であり、これらの物理化学的性質よ
り、本物質が純粋であることが示された。
【0081】次に、第2の本発明の方法を下記の実施例
2〜3について具体的に説明するが、この実施例に限定
されるものでない。
【0082】実施例2 本例は、不純物を含む粗製カスガマイシン(遊離塩基の
形)の水溶液を原料として用いてD−キロ−イノシトー
ルの製造を行う場合を例示するものであり、しかもその
用いた粗製カスガマイシン(遊離塩基)はカスガマイシ
ン生産菌の培養で得たカスガマイシン含有培養液を下記
のカスガマイシンの回収と予備精製の段階で処理して得
られた粗製物質である。
【0083】(A)カスガマイシン生産菌の培養液から
の粗製カスガマイシンの製造 カスガマイシン生産菌であるストレプトミセス・カスガ
エンシスを常法で培養し、カスガマイシン含有の培養液
を収得し、これを濾過してカスガマイシン含有の培養濾
液2l(カスガマイシン力価 9.8mg/ml)を採取し
た。この培養炉液を強酸性イオン交換樹脂、デュオライ
トC−20(H+ 型)の 1.5l容量を充填したカラム
(内径5cm,長さ76.5cm)に通し、樹脂にカスガマ
イシンを吸着させた。
【0084】次いで、この樹脂カラムを 4.5lの脱イオ
ン水で水洗した後、2N−NaOH水溶液の 4.5lで溶
出した。カラムから得られたアルカリ性の溶出液を分画
して、カスガマイシンを含むアルカリ性の活性画分を集
め、その活性画分を強酸性イオン交換樹脂、ダイヤイオ
ンSK116(H+ 型)の 1.5l容量を充填したカラム
(内径5cm,長さ76.5cm)に導入し、最大限に早め
た流速で通過させた。この際、活性画分中のカスガマイ
シンの大部分はダイヤイオンSK116樹脂に吸着され
ずに素通りしたが、アルカリ性物質は樹脂に結合したの
で、カスガマイシン活性画分は中和された。こうしてダ
イヤイオンSK116カラムから、中和されたカスガマ
イシン水溶液が流出液として収得された。
【0085】この中和されたカスガマイシン水溶液23
00mlを集め、ロータリーエバポレーターで濃縮し、
カスガマイシン(遊離塩基)を200mg/mlの濃度
で含む濃縮水溶液75mlを得た。
【0086】ちなみに、この濃縮水溶液を減圧下に蒸発
乾固すると、その固体残渣は約60%の含量でカスガマ
イシン(遊離塩基)を含むことが認められた。
【0087】(B)粗製カスガマイシン(遊離塩基)か
らのD−キロ−イノシトールの製造と精製 上記の(A)段階で得られたカスガマイシン(遊離塩
基)の濃縮水溶液(pH約7)75mlを、実施例1の
第1工程で用いた活性炭の充填カラムに実施例1と同様
に導入して、約6ml/時間の流速で通過させた。
【0088】活性炭カラム中で部分精製されたが未だ不
純物を含むカスガマイシン(遊離塩基)の水溶液を、実
施例1の第2工程で用いた加水分解反応塔としての強酸
性イオン交換樹脂ダイヤイオンSK116(H+ 型)の
充填カラムに、実施例1の第2工程と同様に、液温90
℃で約7時間かけて通過させた。このダイヤイオンSK
116カラムから流出した酸性の反応溶液 (pH 1.4)
は、カスガマイシンの加水分解で生成されたD−キロ−
イノシトールを含有した。
【0089】上記の酸性の反応溶液を、実施例1の第3
工程と同様にデュオライトC−20(H+ 型)カラムに
導入して処理し、またデュオライトC−20カラムから
の流出液を実施例1の第4工程と同様にデュオライトA
−113PLUS(OH- 型)カラムに導入して処理し
た。
【0090】デュオライトA−113PLUSカラムか
らの流出液として得られた中和されたD−キロ−イノシ
トール水溶液を、実施例1の第5工程と同様に処理する
と、D−キロ−イノシトール 5.2g(純度約99%)を
得た。
【0091】実施例3 本例は、高純度に予め精製されたカスガマイシン(遊離
塩基)を用いると、実施例1の第1工程での活性炭カラ
ムによる処理を省略しても、高純度のカスガマイシン
(遊離塩基)を実施例1の第2工程による加水分解反応
に直接かけ、その得られた酸性の反応溶液を次いで実施
例1の第3工程〜第4工程での後処理にかける場合に、
高純度のD−キロ−イノシトールを高収率で製造できる
ことを例示する。
【0092】(A)高純度のカスガマイシン(遊離塩
基)の製造 カスガマイシン塩酸塩の結晶18gを700mlのイオ
ン交換水に溶解し、強酸性イオン交換樹脂デュオライト
C−20(H+ 型)の600mlのカラム(内径5c
m,長さ30cm)に通し、カスガマイシンを樹脂に吸
着させた。次いで、このカラムを 1.8lのイオン交換水
で洗浄後、2%アンモニア水 2.4lで溶出して遊離塩基
の形のカスガマイシンを含む溶出液を得た。このとき溶
出液を100mlずつ分画すると、カスガマイシンは画
分No.10から少量づつ溶出しはじめた。これらのカ
スガマイシン画分を集め、凍結乾燥を行い、遊離塩基の
カスガマイシン15g(純度98%)を得た。
【0093】(B)高純度のカスガマイシン(遊離塩
基)からのD−キロ−イノシトールの製造と精製 上記の(A)段階で得られた高純度のカスガマイシン
(遊離塩基)を脱イオン水に溶解して、カスガマイシン
を約200mg/mlの濃度で含み且つ不純物を殆んど
全く含まないカスガマイシン水溶液約70mlを調製し
た。
【0094】この水溶液を実施例1の第2工程で用いた
強酸性イオン交換樹脂、ダイヤイオンSK116(H+
型)の充填カラムに直接に液温90℃で導入し、以下、
実施例1の第2工程と同様にして、反応温度90℃で約
6ml/時間の流速でカラム滞留時間約7時間として通
過させ、カスガマイシンを加水分解反応にかけた。
【0095】上記ダイヤイオンSK116カラムから流
出する酸性の反応溶液 (pH 1.4)は、生成されたD−
キロ−イノシトールを含有した。
【0096】この酸性の反応溶液を、以下、実施例1の
第3、第4および第5工程の操作と同様に処理すると、
高純度のD−キロ−イノシトール(純度100%)が
6.7g(収率96%)得られた。
【0097】
【発明の効果】本発明によれば、カスガマイシンの酸付
加塩または遊離塩基から非常に穏和な条件で高収率、高
純度でD−キロ−イノシトールを簡便に且つ連続的な操
作で生産することが可能である。大規模に生産する場合
において、強酸を使わないため、中和に要するイオン交
換樹脂が少量で済むこと、またそれに伴い癈水の処理お
よび水を留去するのに使う電力消費が大幅に削減される
こと、単位収量あたりの生産設備が小型ですむことなど
の点で多大なメリットがある。また、不純なカスガマイ
シンでも原料として利用できる点で経済性にすぐれてい
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するに適する装置の図解図
である。
【符号の説明】
1 活性炭の充填カラム 2 強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラムから
なる加水分解反応塔 3 強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラム 4 強塩基性イオン交換樹脂(OH- 型)の充填カラム 5 液送ポンプ 6 ガス抜き器 8 導管 12 開閉弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平沢 清 神奈川県厚木市森の里3−8 (72)発明者 竹内 富雄 東京都品川区東五反田5丁目1番11号 ニューフジマンション701 (56)参考文献 特開 平7−53425(JP,A) 特開 昭62−96439(JP,A) 特公 昭34−4815(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 29/09 C07C 29/76 C07C 35/16 C07C 35/14

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部分精製されたが未だ不純物を含むカス
    ガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶液を活性炭もしく
    は合成吸着剤のカラムに導入して通過させる第1工程
    と、第1工程から得られた不純物を含むカスガマイシン
    塩酸塩または硫酸塩水溶液を強酸性イオン交換樹脂(H
    + 型)の粒状物の充填カラムに導入して加熱条件下に通
    過させ、これによって、カスガマイシン分子を強酸性イ
    オン交換樹脂(H+ 型)の充填カラム中の強酸性イオン
    交換樹脂の強酸性官能基に付加塩の形で結合させる反応
    と、この結合反応に伴ってカスガマイシンから遊離され
    たHClまたはH2 SO4 を強酸性イオン交換樹脂カラ
    ム通過液中に生成させること及び加熱条件下での該強酸
    性イオン交換樹脂とカスガマイシンと水との相互の接触
    により酸成分を発生させることに主に由って該通過液中
    に0.05N〜 0.5Nの濃度の塩酸に相当する酸性状態を作
    り出す反応と、該通過液がカスガマイシンを結合した強
    酸性イオン交換樹脂と接触しながら該カラム内を流通す
    る間に、該通過液に生じた酸性と該イオン交換樹脂との
    作用下にカスガマイシンを加水分解してD−キロ−イノ
    シトールを該通過液中に生成する反応とを並行的に該強
    酸性イオン交換樹脂と該樹脂のカラムの通過液との中で
    生起させ、該カラムから流出してくるD−キロ−イノシ
    トールとHClまたはH2 SO4 とその他の酸成分と不
    純物とを含み且つ場合により未反応のカスガマイシンも
    含む酸性の反応溶液を収得する第2工程と、第2工程か
    ら得られた酸性の反応溶液を強酸性イオン交換樹脂(H
    + 型)の充填カラムに通して、これにより該反応溶液中
    に存在する塩基性の不純物を除去し且つ場合により混在
    する未反応のカスガマイシンをも除去して、該強酸性イ
    オン交換樹脂の充填カラムから出る流出液として、部分
    的に精製されてHClまたはH2 SO4 とその他の酸成
    分とD−キロ−イノシトールを含む酸性の水溶液を収得
    する第3工程と、第3工程から得られた酸性の水溶液を
    塩基性イオン交換樹脂(OH- 型)の充填カラムに通し
    てこれにより該水溶液に含有された酸性物質を該樹脂に
    結合させて、該カラムから出るD−キロ−イノシトール
    を含む中和された溶出液を収得する第4工程と、さらに
    溶出液を濃縮し且つその濃縮液から高純度のD−キロ−
    イノシトールの結晶を析出させる第5工程とを行うこと
    を特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  2. 【請求項2】 第1工程において活性炭もしくは合成吸
    着剤のカラムに導入、通過させられるのに使用される、
    部分精製されたがまだ不純物を含むカスガマイシン塩酸
    塩または硫酸塩の水溶液は、カスガマイシン生産菌の培
    養で得られた培養液を濾過し、得られた培養濾液を先づ
    強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)のカラムに通してカス
    ガマイシンを該カラムの樹脂に吸着させ、次いで該カラ
    ムの樹脂を脱イオン水で洗浄し、その後にアルカリ金属
    水酸化物水溶液を通してカスガマイシンを該樹脂から脱
    離、溶出させ、これで得られたアルカリ性溶出液の分画
    によりアルカリ性のカスガマイシン画分を集め、集めた
    カスガマイシン画分を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)
    のカラムに通すが、但しこの際に、カスガマイシン成分
    の樹脂による吸着が実質的に起らないけれども樹脂によ
    るアルカリ金属水酸化物の結合と中和を起させる程度の
    高い通液速度で通してカスガマイシン画分を中和させ、
    該カラムから出る中和されたカスガマイシン水溶液を濃
    縮し、得られたカスガマイシンの濃縮水溶液に塩酸また
    は硫酸を加えて反応させ、これにより若干の残留する不
    純物を含むカスガマイシン塩酸塩または硫酸塩の水溶液
    を採取することからなるカスガマイシンの回収と予備精
    製の段階で得られたものである請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 第2工程においてカスガマイシンの加水
    分解反応を行うに用いられる強酸性イオン交換樹脂のカ
    ラム内の温度は常圧下で50℃以上で但し100℃以下
    の温度、好ましくは60〜98℃の温度に維持するか、
    あるいは加圧条件下で100〜150℃の温度に維持す
    る請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 第1工程で用いる活性炭もしくは合成吸
    着剤のカラムと、第2工程で用いる加水分解反応塔とし
    ての強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラムと、
    第3工程で用いる反応液の部分精製用塔としての強酸性
    イオン交換樹脂(H+ 型)のカラムと、第4工程で用い
    る反応液の中和塔としての強塩基性イオン交換樹脂(O
    - 型)の充填カラムとは相互に導管により直列に連結
    されてあるものであり、しかも所望ならば、活性炭もし
    くは合成吸着剤のカラムの出口と、加水分解反応用のカ
    ラムの入口とを連結する導管内には、液送ポンプを挿設
    してある請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 部分精製されたが未だ不純物を含むカス
    ガマイシン遊離塩基の水溶液を活性炭もしくは合成吸着
    剤のカラムに導入して通過させる第1工程と、第1工程
    から得られた不純物を含むカスガマイシン遊離塩基の水
    溶液を、若しくは該第1工程を経ずに別途に高純度に予
    じめ精製されたカスガマイシン遊離塩基の水溶液を強酸
    性イオン交換樹脂(H+ 型)の粒状物の充填カラムに導
    入して加熱条件下に通過させ、これによって、カスガマ
    イシン分子を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カ
    ラム中の強酸性イオン交換樹脂の強酸性官能基に結合さ
    せる反応と、加熱条件下での該強酸性イオン交換樹脂と
    カスガマイシンと水との相互の接触とにより酸成分を発
    生させて該イオン交換樹脂の作用下にカスガマイシンを
    加水分解してD−キロ−イノシトールを該樹脂のカラム
    の通過液の中で生成させ、該カラムから流出してくるD
    −キロ−イノシトールと酸成分とを含み且つ場合により
    混在する不純物と未反応のカスガマイシンも含む酸性の
    反応溶液を収得する第2工程と、第2工程から得られた
    酸性の反応溶液を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充
    填カラムに通して、これにより該反応溶液中に存在する
    塩基性の不純物を除去し且つ場合により混在する未反応
    のカスガマイシンをも除去して、該強酸性イオン交換樹
    脂の充填カラムから出る流出液として、部分的に精製さ
    れて酸成分とD−キロ−イノシトールを含む酸性の水溶
    液を収得する第3工程と、第3工程から得られた酸性の
    水溶液を塩基性イオン交換樹脂(OH- 型)の充填カラ
    ムに通してこれにより該水溶液に含有された酸性物質を
    該樹脂に結合させて、該カラムから出るD−キロ−イノ
    シトールを含む中和された溶出液を収得する第4工程
    と、さらに溶出液を濃縮し且つその濃縮液から高純度の
    D−キロ−イノシトールの結晶を析出させる第5工程と
    を行うが、但し第2工程において、第1工程を経ずに別
    途に高純度に精製されたカスガマイシン遊離塩基の水溶
    液を使用する場合には、第1工程を省略することを特徴
    とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  6. 【請求項6】 第1工程において活性炭もしくは合成吸
    着剤のカラムに導入、通過させられるのに使用される、
    部分精製されたがまだ不純物を含むカスガマイシン遊離
    塩基の水溶液は、カスガマイシン生産菌の培養で得られ
    た培養液を濾過し、得られた培養濾液を先づ強酸性イオ
    ン交換樹脂(H+ 型)のカラムに通してカスガマイシン
    を該カラムの樹脂に吸着させ、次いで該カラムの樹脂を
    脱イオン水で洗浄し、その後にアルカリ金属水酸化物水
    溶液を通してカスガマイシンを該樹脂から脱離、溶出さ
    せ、これで得られたアルカリ性溶出液の分画によりアル
    カリ性のカスガマイシン画分を集め、集めたカスガマイ
    シン画分を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)のカラムに
    通すが、但しこの際に、カスガマイシン成分の樹脂によ
    る吸着が実質的に起らないけれども樹脂によるアルカリ
    金属水酸化物の結合と中和を起させる程度の高い通液速
    度で通してカスガマイシン画分を中和させ、該カラムか
    ら出る中和されたカスガマイシン水溶液を濃縮し、これ
    により若干の残留する不純物を含むカスガマイシン遊離
    塩基の水溶液を採取することからなるカスガマイシンの
    回収と予備精製の段階で得られたものである請求項5に
    記載の方法。
  7. 【請求項7】 第2工程においてカスガマイシンの加水
    分解反応を行うに用いられる強酸性イオン交換樹脂のカ
    ラム内の温度は常圧下で50℃以上で但し100℃以下
    の温度、好ましくは60〜98℃の温度に維持するか、
    あるいは加圧条件下で100〜150℃の温度に維持す
    る請求項5に記載の方法。
  8. 【請求項8】 部分精製されたが未だ極く少量の不純物
    を含むカスガマイシン遊離塩基、もしくは高純度に予め
    精製されたカスガマイシン遊離塩基の水溶液を、スルホ
    ン酸基を官能基とする強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)
    の粒状物の充填カラムに導入してカラム内の温度50〜
    150℃の範囲で通過させ、これによって、カスガマイ
    シン分子を強酸性イオン交換樹脂(H+ 型)の充填カラ
    ム中の強酸性イオン交換樹脂のスルホン酸官能基に結合
    させる反応と、加熱条件下での該強酸性イオン交換樹脂
    とカスガマイシンと水との相互の接触とにより酸成分を
    発生させて該イオン交換樹脂の作用下にカスガマイシン
    を加水分解してD−キロ−イノシトールを該強酸性イオ
    ン交換樹脂のカラム内で生成させ、さらに該カラムから
    流出してくるD−キロ−イノシトールと未反応のカスガ
    マイシンを含む酸性の反応溶液を収得することを特徴と
    するD−キロ−イノシトールの製造方法。
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