JP3111588B2 - 優れた深絞り性と耐二次加工脆性を兼ね備えた冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
優れた深絞り性と耐二次加工脆性を兼ね備えた冷延鋼板の製造方法Info
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Description
加工脆性を兼ね備え、 かつ製造安定性に優れた軟質冷延
鋼板の製造方法に関するものである。
窒化物として析出固定した鋼板、 いわゆるTi−IF鋼は、
優れた深絞り性と非時効性が要求される超深絞り用冷延
鋼板として実用化されている。 しかし、 鋼中Cを完全に
TiCとして析出固定した場合には、 深絞り性、 延性は向
上する反面、 粒界強度が低下し深絞り成形後、 縦割れと
称する粒界破壊(二次加工脆化)が発生しやすくなると
いう欠点があり、 耐二次加工脆性の向上が強く望まれて
いる。
微量のB添加が有効であることが知られており、 例えば
特開平3−28326号公報にTi−IF鋼にBを複合添
加する技術が開示されている。 しかし、 優れた耐二次加
工脆性を得るために、 Ti−IF鋼に10ppm 以上のBを
添加すると、 r値が低下し深絞り性が劣化するという問
題がある。 そのため、 特開平3−28326号公報にも
示されているように、r値の低下を極力小さくするため
にB添加量を12ppm 以下の極微量に制限しているのが実
状である。
をこのような数ppm という極微量範囲でコントロールす
ることは製鋼技術上多大な困難を伴うと同時に、 B添加
量の微妙な変動により深絞り性、 耐二次加工脆性等の材
質に大きなバラツキが生じるため、 製造安定性に欠ける
という根本的な問題点を有している。 しかも、 深絞り性
と耐二次加工脆性の両特性がともに満足のいくレベルに
到達しているとは言い難い。
技術については、 特公昭63−4899号公報、 特開昭
61−276962号公報、 特開平1−294823号
公報にもそれぞれ開示されている。 しかし、 特公昭63
−4899号公報、 特開昭61−276962号公報の
技術では、 0.0020%のB添加鋼としては比較的良好
な深絞り性を示してはいるものの、 本発明者らの検討に
よれば、 C,N,S量に対するTi添加量が十分ではな
く、 また熱延条件に対しても十分な配慮がなされていな
いために、 工業的に安定して優れた深絞り性と耐二次加
工脆性を得るまでには至っていない。また、 特開平1−
294823号公報の技術ではTi添加量が高すぎるため
に表面性状が劣り、 熱延仕上温度を完全な未再結晶温度
域まで低下させる必要があり、 熱延の負荷が大きく鋼板
形状および製造安定性に劣る。
技術では、 近年の厳しい要求を満足し得る優れた深絞り
性と耐二次加工脆性を兼ね備えた冷延鋼板を工業的に安
定して製造し得る決定的な方法は、 いまだ見出されてい
ない。深絞り性を向上させようとすると耐二次加工脆性
が劣化し、 耐二次加工脆性の向上をはかるためにBを添
加すると深絞り性の劣化を招くというように、 優れた深
絞り性と耐二次加工脆性の両立をはかることは極めて困
難であった。 本発明は、 このような従来技術の問題点に
鑑みなされたものであり、 深絞り性、 耐二次加工脆性と
もに優れた軟質冷延鋼板を安定して製造するための製造
方法を提供することを目的としている。
うなTi−IF鋼のもつ優れた深絞り性とBの二次加工脆
化抑制効果に着目し、優れた耐二次加工脆性を有すると
ともに、B無添加鋼と同等以上の優れた深絞り性を有す
るTi,B複合添加冷延鋼板の製造可能性について探索する
ため、Ti−IF鋼の深絞り性に及ぼすB添加量、 製造条
件の影響について、 今一度、 詳細な検討を行った。 その
結果、 鋼組成とくにTiとBの添加量および熱延条件、 焼
鈍条件を最適化することにより、 深絞り性、 耐二次加工
脆性ともに優れた軟質冷延鋼板を安定して製造すること
ができることを新規に見出し、 本発明を完成するに至っ
たもので、以下の如くである。
i:0.05%以下,Mn:0.30%以下,P:0.
010%以下,S:0.003〜0.010%,so
l.Al:0.015〜0.055%,N:0.002
5%以下を含有するとともに、 Ti*=Ti−(48/32)S−(48/14)N>
0,Ti**/C=12.0〜30.0,Ti≦0.0
8%,11≦{B×104−0.5(Ti*/C)}≦
26 を満たす範囲内のTi,Bを含有し、残部Fe及び不可
避的不純物からなる鋼を、スラブ加熱温度1050〜1
200℃,仕上圧延終了温度FT(℃)が下記式を満
たす温度範囲で,かつ巻取温度CT(℃)が下記式を
満たす温度範囲で熱間圧延し、75%以上の冷圧率で冷
間圧延した後、均熱温度Ta(℃)が下記式を満たす
温度範囲で連続焼鈍することを特徴とする深絞り性、耐
二次加工脆性の優れた軟質冷延鋼板の製造方法。 860−1.4×(B×104)≦FT≦895−
0.6×(B×104) −0.7×FT+1190≦CT≦−0.3×FT
+950 750+2.0×(B×104)≦Ta≦910−
0.6×(B×104)
験結果に基づいて説明する。 即ち本発明者等は次の表1
に示す3鋼種の鋼を溶製した。 これらのスラブを120
0℃に加熱後、 種々の仕上温度で熱延し、 650℃で巻
取った。
25℃で連続焼鈍し0.5%の調圧を施し、 r値測定およ
びカップ状の深絞り成形後の縦割れ発生遷移温度(二次
加工脆化遷移温度)の測定を行った。 r値の測定結果を
図1に示すが、この図1から分かるように、 従来一般的
に採用されていた仕上温度890℃以上の場合には、Ti
−IF鋼(鋼X)にBを添加したTi,B複合添加鋼(鋼
Y)は、 鋼Xに比べr値が著しく低いが、 仕上温度を8
30〜870℃とした場合には、 鋼Xのr値が大きく低
下しているのに対し、 鋼Yのr値は逆に向上し、 鋼Xの
900℃仕上げのときよりもさらに良好なr値を示すこ
と見出した。 B単独添加の鋼Zは、仕上温度によらずr
値はかなり低い。 なお、 縦割れ発生遷移温度(二次加工
脆化遷移温度)はTi−IF鋼(鋼X)は−15〜−20
℃,Ti, B複合添加鋼(鋼Y)は−100℃以下, B単
独添加鋼は−30〜−35℃であり、 Ti,B複合添加鋼
(鋼Y)は極めて優れた耐二次加工脆性を有することを
確認した。
詳細な調査、検討を積み重ねた結果完成したものであ
り、 Ti−IF鋼に適量のBを添加し意図的に固溶Bを残
し、 適正な熱延条件、焼鈍条件で製造することにより、
良好な深絞り性と耐二次加工脆性の両立が可能であるこ
とを新規に見出したものである。 即ち従来、 Bは深絞り
性を劣化させると考えられ、 深絞り性を犠牲にしてでも
耐二次加工脆性を向上させることを狙いとした場合、 あ
るいはNをBNとして析出固定させる場合以外は、 深絞
り用冷延鋼板に積極的に添加されることはほとんどなか
ったのに対し、 本発明は比較的多量のBを積極的に添加
することにより、 逆に深絞り性を向上させることを可能
にしたものであり、 優れた深絞り性と耐二次加工脆性を
有する冷延鋼板の全く新たな製造技術である。
する。 C: Cは良好な深絞り性、 延性を確保し、かつ非時効
性とするためにはその含有量は低いほど好ましい。 本発
明では、 固溶Cを完全に析出固定するために十分な量のT
iを添加することを基本としているが、 Cが0.0030
%を越えると、 Cを固定するために必要なTi量が増える
ことになりコスト上昇をもたらすばかりでなく、 材質面
でもTiCが増えることにより延性、 深絞り性が劣化す
る。 また、 多量のTiを添加しても固溶Cを完全に析出固
定することが困難となる。 そのため、本発明ではC量を
0.0030%以下に限定する。
あれば、 本発明の作用効果に悪影響を及ぼすものではな
いが、 多量に添加した場合には深絞り性、 延性の低下を
招く。そこで良好な深絞り性、 延性を確保するためにSi
を0.05%以下に限定する。
固定されるため、 Mn添加量は通常の軟質冷延鋼板より低
くても、 とくに本発明の作用効果に悪影響を及ぼすもの
ではない。 一方、 0.30%を越えるMn添加はMnによる固
溶強化により鋼板を硬質化させ、 深絞り性、 延性を低下
させるため、 0.30%以下に限定する。
な耐二次加工脆性を得るためにはその添加量は低いほど
好ましい。 また、 粒界にPが存在すると後述するような
粒界偏析Bによる再結晶時の集合組織改善効果、 すなわ
ち深絞り性向上効果が弱まる。さらに、 Ti−IF鋼にP
を添加すると、 FeTiPのようなりん化物を形成する場合
があり、 炭窒化物形成元素としてのTiの歩留まりを低下
させるばかりか、 材質の劣化をもたらす。 したがって、
このようなPの悪影響を排除するため本発明ではPを0.
010%以下に限定する。
Sとして析出固定させる。 その際、 Sが0.010%を越
えると、 Cの場合と同様に、 Sを固定するために必要な
Ti量が増えることになりコスト上昇をもたらすばかりで
なく、材質面でもTiSが増えること、 および化学量論的
に十分なTiを添加してもCを完全に析出固定することが
困難になることにより延性、 深絞り性が劣化する。 一
方、 適量のTiSはTiCの析出核としての作用を有しTiC
の析出を促進させ、深絞り性向上に寄与する。 Sが0.0
03%未満では、 このようなTiSの効果が十分に発揮さ
れないため、 固溶Cが残り易くなり、 深絞り性に対する
固溶Cの悪影響によりBの添加効果が十分に発揮されな
くなる。 そのため、 Sは0.003〜0.010%に限定す
る。
に、 Cに比べ常温時効性を劣化させる程度も大きいた
め、 極力低くすることが望ましい。 本発明においてはこ
のような有害な固溶NはTiによりTiNとして析出固定す
る。 その際、 Nが0.0025%を越えるとNを析出固定
するために多量のTi添加を必要としコスト上昇をもたら
すばかりでなく、 材質面でもTiNが増えることにより延
性、 深絞り性が劣化する。 また、 Nが増えるとTiのみで
はなくBによりBNとして析出しやすくなり、 固溶Bが
減少し、 Bの複合添加による深絞り性向上効果が十分に
発揮されなくなる。 そのため、 Nの上限を0.0025%
に限定する。
酸化を抑制しTiの添加歩留まりを向上させ、 その結果と
して材質のバラツキを小さくする。 この効果を発揮させ
るためには0.015%以上の添加が必要である。 一方、
0.055%を越える過剰の添加を行っても、 その効果が
飽和するばかりか、 逆に酸化物が増えることにより深絞
り性、 延性を劣化させる。 そのため、sol.Al量を0.01
5〜0.055%に限定する。
性、 延性と非時効性を発揮させるために添加する重要な
元素であり、 その添加量はC,S,N量に応じて限定さ
れる。前述のようにS,Nを固定すると同時に、 Cも完
全に析出固定するために添加するものである。 N時効を
抑制し常温非時効性とし、 N,Sによる延性、深絞り性
に対する悪影響を回避するためには、 少なくともTi* =
Ti-(48/32)S-(48/14)N>0を満たすだけのTiを添加す
る必要がある。 さらにCをも完全に固定し優れた深絞り
性を発揮させるためには、 少なくとも (Ti* /48)/ (C/1
2)≧3.0,すなわちTi* /C≧12.0の添加が必要であ
る。 さらに、 Tiのより重要な作用効果は、 このようにTi
添加量を制御することにより、 BをBNとしてではなく
固溶Bとして鋼中に存在させることであり、 これにより
Bによる深絞り性向上効果を発揮させることが可能とな
る。 固溶Cがほとんど存在しない状況のもとで、 焼鈍時
のフェライト粒界にBが偏析していることが、 深絞り性
を向上させるうえで最も重要な点である。 一方、 (Ti*
/48)/(C/12)>7.5すなわちTi* /C>30.0あるいはTi
>0.080%となるような過剰なTi添加を行っても、 顕
著な添加効果が認められなくなるばかりか、 表面欠陥が
発生しやすくなるためスラブ手入れが必要となり、 また
合金コストの上昇をもたらすことにもなる。 そのため、
Ti添加量はTi* /C=12.0〜30.0かつTi≦0.080
%を満たす範囲内に限定する。
である。 固溶Bがフェライト粒界に偏析することにより
粒界を強化し、 IF鋼特有の二次加工脆化を防止する作
用を有することは従来よりよく知られていることである
が、 本発明においてさらに重要なBの添加効果は、 熱延
条件,焼鈍条件の適正化とともにB添加量を最適範囲に
制御することにより、 再結晶集合組織を変化させ深絞り
性を向上させる効果をも発揮する点にある。 このような
深絞り性向上効果を発揮させるためには、 二次加工脆化
防止に必要な量よりもさらに多くのBをフェライト粒界
に偏析させる必要がある。 最適B添加量はTi*/C値に応
じて定まり、 本発明においてはB添加量は11≦{B×
104-0.5(Ti*/C)}≦26に限定する。
化を示した図である。即ちC:0.0020〜0.0025%,S:
0.003〜0.005%,N:0.0020〜0.0025%
を含有し、 Ti* /C=8.0〜30.0,B:0.0015〜
0.0043%の種々の鋼をスラブ加熱温度:1200
℃、仕上温度:850〜860℃、巻取温度:660℃
の条件で熱間圧延し、 冷圧率80%の冷延後、 均熱温度
840℃で連続焼鈍し、r値の測定を行った。 図2から
明らかなようにTi* /C値が低い場合は高r値を得るた
めの最適B添加量も比較的少なくなり、 Ti* /C値が高
い場合には最適B添加量も相対的に多くなる。 これは、
現状では明らかではないがTi* /C値によりフェライト
粒界のC量が変化し、 それにより粒界でのBの占める位
置や量が変化するためと考えられる。 図2に示されてい
るように、 B添加量が11≦{B×104-0.5(Ti* /
C)}≦26からはずれる場合には、 Bの深絞り性向上
効果が十分に発揮されず2.0以上の良好なr値が得られ
なくなる。 これは粒界偏析B量が不足するか、 あるいは
逆に固溶Bが過剰となり粒内にも固溶Bが残る、 または
B−Constituent, ほう化物が形成されるためと考えら
れる。 また、 Ti* /C<12.0では固溶Cが若干残存し
ているため、 Bを複合添加しても2.0以上の良好なr値
が得られない。
る。 本発明では、 上記のような組成の鋼を最適な熱延条
件で製造することがとくに重要である。即ちスラブ加熱
温度は、 オーステナイト粒を微細化させオーステナイト
粒界への固溶Bの偏析を促進させるため、 およびスラブ
加熱時の炭窒化物の再固溶を抑制するために、 1200
℃以下さらには1150℃以下とすることが好ましい。
一方、 1050℃より低温になると、 スラブ加熱以降の
過程でのBの拡散が不十分となり、 組織の均一性が劣化
する。 また、 粗圧延、仕上圧延時の熱延負荷が大きくな
る。 そのため、 スラブ加熱温度は1050〜1200℃
に限定する。
であり、 最適温度範囲に制御する必要がある。 即ち図3
は、B添加量と仕上温度FTによるr値の変化を示した図
である。Ti* /C=14〜26,S:0.003〜0.00
4%,B:0.0014〜0.0044%の種々の鋼を、 7
90〜910℃の仕上温度で熱延し、 冷延、焼鈍後のr
値を測定した。 スラブ加熱温度:1200℃,巻取温
度:640℃,冷圧率:78%,連続焼鈍の均熱温度:
850℃である。 同図より明らかなように、 B添加量に
応じた最適仕上温度で熱延することにより優れた深絞り
性が発揮される。B添加による深絞り性向上効果を発揮
させるために仕上温度FTは、 860−1.4×(B×10
4)≦FT≦895−0.6×(B×104)のように限定す
る。 これは、仕上温度が低すぎる場合は巻取温度を制御
しても熱延板組織に加工組織が残るか、 あるいは粗大化
してしまい、 また仕上温度が高すぎるとやはり結晶粒が
粗大化してしまい、 いずれの場合も均一な細粒組織とす
ることが困難となるためである。 その結果、 Bの添加効
果が十分に発揮されなくなってしまう。 これは、 Bによ
る再結晶抑制効果と変態抑制効果に関連しているため、
B添加量に応じて最適仕上温度は変化することになる。
るためには、 熱延板の組織を再結晶組織でかつ均一な細
粒組織とする必要がある。 そのために巻取温度CTは仕
上温度FTとの関係により定まり、 本発明においては−
0.7×FT+1190 ≦CT≦−0.3×FT+950に
限定する。 図4は仕上温度FTと巻取温度CTによるr
値の変化を示した図である。即ちTi* /C=19〜2
3, S:0.005〜0.006%でB:0.0023%の鋼
XとB:0.0035%の鋼Yを、 それぞれ鋼Xは仕上温
度855℃と875℃の2条件、 鋼Yは仕上温度815
℃と840℃の2条件で熱延し、 570〜710℃の種
々の温度で巻取り、 冷延 、焼鈍後のr値を測定した。 ス
ラブ加熱温度:1150℃、冷圧率:80%(0.8mm) 、
連続焼鈍の均熱温度:830℃である。 同図より明らか
なように、 巻取温度CTを式と式によって−0.7×
FT+1190≦CT≦−0.3×FT+950のように
制御することにより、 高r値を得ることができる。 巻取
温度が低すぎる場合は加工組織が残りやすく、 高い場合
は粒成長により粗大化してしまう。 仕上温度FTが相対
的に高い場合は、 加工組織が残りにくいので巻取温度は
比較的低い温度とし、仕上温度FTが低い場合は加工組
織が残らないように比較的高い温度で巻取る。しかし、
高過ぎる場合は上述のように粗粒化してしてしまうの
で、 上記のように限定する。
深絞り性に好ましい集合組織とするためには高いほうが
良く、 75%以上に限定する。
バッチ焼鈍では加熱速度が遅いため、 粒界偏析Bにより
深絞り性に好ましい{111}<112>近傍の先鋭な
再結晶集合組織を形成させることができない。 加熱速度
は速い方が深絞り性に好ましい{111}<112>近
傍の先鋭な再結晶集合組織を形成させる上で有利である
が、 通常の連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛メッキライン
等で実施されている加熱速度であれば、 Bの添加効果が
十分発揮されるため、 とくに限定しない。
場合にはオーステナイト変態により、 深絞り性に好まし
い集合組織が破壊されてしまうため深絞り性が劣化す
る。 また、 本発明鋼は通常の鋼板に比べBを多量に添加
しているため再結晶温度が上昇しており、 焼鈍温度が低
い場合には一部未再結晶組織が残存する恐れがある。 そ
の場合やはり深絞り性の劣化をもたらす。 このような変
態温度、 再結晶温度はいずれもB添加量の影響が大きい
ため、 B添加量に応じて最適焼鈍温度が定まる。
度Ta(℃)を750+2.0×(B×104)≦ Ta ≦910
−0.6×(B×104)に限定する。 図5は焼鈍均熱温度Ta
によるr値の変化を示した図である。Ti* /C=20〜
22, S:0.003〜0.004%でB添加量がそれぞれ0.
0010,0.0022,0.0029,0.0036,0.0
050%の鋼A〜Eを熱延、 冷延により0.75mm(冷圧
率75%)とし、 750〜930℃の種々の均熱温度で連続
焼鈍し、 r値を測定した。 スラブ加熱温度:1200
℃、 仕上温度:850〜860℃、 巻取温度:620℃
である。 同図より、 本発明の鋼組成を有し上記の最適温
度範囲で連続焼鈍したときにのみ、 高いr値が得られる
ことがわかる。
要はないが、 生産効率を劣化させずに、 かつ完全な再結
晶組織とするためには10秒以上、 3分以下とするのが
望ましい。また、 焼鈍後の冷却速度もとくに限定する必
要はなく、 常法に従い実施すれば良い。 さらにその後必
要に応じて調圧を行うが、 伸長率はとくに規定するもの
ではなく、 常法に従い1.0%以下程度で実施すればよ
い。
気亜鉛メッキ、 溶融亜鉛メッキおよび合金化溶融亜鉛メ
ッキ等の表面処理鋼板の素材となる冷延鋼板をも含むも
のである。
良好な深絞り性が得られる原因については、現状では十
分に解明できていないが、 深絞り性の最も主要な支配因
子である再結晶集合組織を詳細に調査、 検討した結果、
本発明者らはその機構を以下のように推定している。即
ち本発明鋼は従来鋼(比較鋼)に比べ、 極めて先鋭な
{111}<112>集合組織を示していた。 これは深
絞り性に対して好ましい方位であり、 この方位への集積
度が強まることにより深絞り性は向上する。 このような
再結晶集合組織の変化は、 鋼組成、 製造条件の限定理由
の説明のなかでも述べてきたように、 (1) 適量の固溶B
が存在することにより熱延時のオーステナイト粒界にB
が偏析しγ→α変態の遅滞をもたらし、 さらに変態後の
フェライト粒界に偏析したBのDragging効果により粒成
長が抑制され、 熱延板組織が均一かつ細粒となること、
(2) さらに、 このような細粒組織の粒界に偏析したB
が、 冷延後の焼鈍中の再結晶核生成および粒成長の方位
選択性に変化をもたらすこと、によるものと推定され
る。
成元素 (Ti, Nb, V, Zr)とBを複合添加した極低炭素
鋼をスラブ加熱温度1200℃,仕上温度870℃,巻
取温度630℃の条件で熱間圧延し、 酸洗後0.75mm
(冷圧率80.3%)の板厚に冷間圧延した。
し、 伸長率0.6%の調質圧延を施した後、 機械特性値、
r値を測定した。 これらの測定結果を前記表2に併せて
示したが、表2より、 Nb, V,ZrとBの複合添加鋼では
深絞り性、 延性ともに劣っており、 TiとBの複合添加の
場合にのみ優れた深絞り性と延性を有することがわか
る。
10の2鋼種の鋼をスラブ加熱温度1150℃,仕上温度
810〜890℃,巻取温度680℃の条件で3.6mmの
板厚に熱間圧延し、 酸洗後0.8mmの板厚に冷間圧延した
(冷圧率77.8%)。
し、 伸長率0.6%の調質圧延を施した後、 機械特性値、
r値,AI, 二次加工脆化遷移温度Tthを測定した。 こ
れらの測定結果を熱延仕上温度とともに次の表5に示し
た。 なお、 AIは8%予歪み後100℃×60min の熱
処理を行い、熱処理前後での降伏強度の上昇量で評価し
たが、 すべて0.5kgf/mm2 以下であり完全非時効性とよ
べるレベルであった。 また、二次加工脆化遷移温度Tth
は、 絞り比2.1の条件で深絞り成形後、 耳をトリムし、
円錐コーンの上にサンプルをふせ、 種々の温度で衝撃荷
重を加え、 縦割れ発生遷移温度を求め評価した。
深絞り性と耐二次加工脆性を兼ね備えていることがわか
る。
する28鋼種の鋼を次の表6に示す熱延条件で熱間圧延
し、 冷圧率80%で0.7mmに冷間圧延した後、 835℃
の均熱温度で連続焼鈍し、 伸長率0.4%の調質圧延を施
した。
工脆化遷移温度Tthの測定結果および表面欠陥発生状況
の観察結果は前記表5および次の表6に示した。 本発明
による鋼板は優れた深絞り性と耐二次加工脆性を兼ね備
え、 良好な延性と完全非時効性を有してていることが確
認された。
優れた深絞り性と共に耐二次加工脆性を両立せしめて具
備した軟質冷延鋼板を安定且つ的確に製造することがで
きるものであって、工業的にその効果の大きい発明であ
る。
Y),B単独添加鋼(鋼Z)の仕上温度によるr値の変
化を示した図表である。
表である。
た図表である。
を示した図表である。
である。
Claims (1)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.0030%以下,S
i:0.05%以下,Mn:0.30%以下,P:0.
010%以下,S:0.003〜0.010%,so
l.Al:0.015〜0.055%,N:0.002
5%以下を含有するとともに、 Ti*=Ti−(48/32)S−(48/14)N>
0,Ti*/C=12.0〜30.0,Ti≦0.08
%,11≦{B×104−0.5(Ti*/C)}≦2
6 を満たす範囲内のTi,Bを含有し、残部Fe及び不可
避的不純物からなる鋼を、スラブ加熱温度1050〜1
200℃,仕上圧延終了温度FT(℃)が下記式を満
たす温度範囲で,かつ巻取温度CT(℃)が下記式を
満たす温度範囲で熱間圧延し、75%以上の冷圧率で冷
間圧延した後、均熱温度Ta(℃)が下記式を満たす
温度範囲で連続焼鈍することを特徴とする深絞り性、耐
二次加工脆性の優れた軟質冷延鋼板の製造方法。 860−1.4×(B×104)≦FT≦895−
0.6×(B×104) −0.7×FT+1190≦CT≦−0.3×FT
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