JPH08225854A - 深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法

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JPH08225854A
JPH08225854A JP5506795A JP5506795A JPH08225854A JP H08225854 A JPH08225854 A JP H08225854A JP 5506795 A JP5506795 A JP 5506795A JP 5506795 A JP5506795 A JP 5506795A JP H08225854 A JPH08225854 A JP H08225854A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動車用鋼板として好適な深絞り性に優れた
高強度冷延鋼板を得る。 【構成】 C:0.001〜0.01%,Si:2.0
%以下,Mn:1.0〜4.0%,P:0.20%以
下,S:0.02%以下,酸可溶Al:0.005〜
0.1%,N:0.007%以下,Ti:[(48/1
2)×%C+(48/14)×%N+(48/32)×
%S]〜0.1%,B:0.0005〜0.003%,
更に必要に応じてNb:0.01〜0.1%,V:0.
01〜0.1%,Zr:0.01〜0.1%の1種又は
2種以上、更にCu:0.1〜0.4%及びNi:0.
4%以下を含む鋼スラブに熱延巻取り温度を400〜6
00℃とする熱間圧延を施し、冷間圧延後に連続焼鈍設
備で加熱速度5〜30℃/秒,焼鈍温度Ac1 変態点〜
920℃,均熱時間80秒以下,焼鈍温度から500℃
までの平均冷却速度40℃/秒以上の連続焼鈍を施す。 【効果】 490N/mm2 以上の強度及び1.4以上
のランクフォード値をもつ鋼板が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用内板等として
使用され、高強度で且つプレス成形性に優れた高強度冷
延鋼板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用鋼板として、安全性,車体重量
の軽減,素材使用量の削減等から高強度鋼板が広く使用
されている。この自動車用鋼板は、厳しい成形加工が施
されることから、良好なプレス成形性、特に深絞り性の
指標であるランクフォード値が高いことが要求される場
合が多い。高強度の冷延鋼板については、従来から多く
の提案がされている。たとえば、特開昭62−2052
31号公報では、低炭素鋼にSi,Mn及びPを添加
し、熱間圧延の条件を適正化することにより、490N
/mm2 級以上の高強度を得ている。しかし、この鋼板
は、ランクフォード値が約1.0程度であり、深絞り性
に劣る。深絞り性を改善する手段として、特公昭62−
34804号公報では、極低炭素鋼にTiを添加したも
のをベースとして少量のMn等を添加し、且つ冷延及び
焼鈍条件を適正化している。この方法によるとき、約
2.0程度のランクフォード値が得られるが、鋼材の強
度レベルが390N/mm2 以下と低くなっている。特
開平2−173242号公報では、Ti及びNbを複合
添加した極低炭素鋼にMn及びPを添加した加工用冷延
鋼板の製造方法が紹介されているが、この場合にも得ら
れた鋼板の強度が390N/mm2 以下と低くなってい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の方法で高強度化
しようとするとランクフォード値が低くなり、鋼板の成
形性が劣化する。逆に、成形性を改良するためにランク
フォード値を上げた場合には、強度が不足する傾向にあ
る。このように相反する傾向を示す強度及びランクフォ
ード値を共に改善する方法は、これまでのところ実用化
されていない。そのため、強度及びランクフォード値の
何れか一方に重点をおいた鋼材の選択を余儀なくされ
る。本発明は、このような問題を解消すべく案出された
ものであり、焼鈍時における集合組織変化を利用してラ
ンクフォード値を高めることにより、自動車用鋼板とし
て要求される490N/mm2 以上の高強度をもち、且
つランクフォード値が1.4以上を示す深絞り性に優れ
た高強度冷延鋼板を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の高強度冷延鋼板
製造方法は、その目的を達成するため、C:0.001
〜0.01重量%,Si:2.0重量%以下,Mn:
1.0〜4.0重量%,P:0.20重量%以下,S:
0.02重量%以下,酸可溶Al:0.005〜0.1
重量%,N:0.007重量%以下,Ti:[(48/
12)×%C+(48/14)×%N+(48/32)
×%S]〜0.1重量%,B:0.0005〜0.00
3重量%及び残部は実質的にFeからなる組成をもつ鋼
スラブに熱延巻取り温度を400〜600℃とする熱間
圧延を施し、冷間圧延後に連続焼鈍設備で加熱速度5〜
30℃/秒,焼鈍温度Ac1 変態点〜920℃,均熱時
間80秒以下,焼鈍温度から500℃までの平均冷却速
度40℃/秒以上の連続焼鈍を施すことを特徴とする。
使用する鋼スラブは、更にNb:0.01〜0.1重量
%,V:0.01〜0.1重量%及びZr:0.01〜
0.1重量%の1種又は2種以上を含むことができる。
また、Cu:0.1〜0.4重量%及びNi:0.4重
量%以下を含むこともできる。
【0005】
【作用】本発明者等は、連続焼鈍時における組織変化が
強度やランクフォード値に及ぼす影響を調査・研究し
た。その結果、オーステナイト形成元素であるMnを含
ませた極低炭素Ti含有鋼では、適正条件下の焼鈍を施
すことにより490N/mm2 以上の高強度及び1.4
以上のランクフォード値が得られることを見い出した。
すなわち、極低炭素Ti含有鋼にオーステナイト形成元
素であるMnを含ませ、鋼の変態点を低下させるとき、
連続焼鈍工程でα+γ二相域又はγ単相域の焼鈍が比較
的容易になる。そこで、加熱過程におけるα→γ変態時
の集合組織変化及び冷却過程におけるγ→α変態時の集
合組織変化を利用することにより、連続焼鈍の加熱過程
で生じる再結晶集合組織が高ランクフォード値化され
る。
【0006】また、冷却過程におけるγ→α’変態のミ
クロ組織変化を利用して、焼鈍後の組織をポリゴナルフ
ェライト相と擬ベイナイト相の二相、又は擬ベイナイト
単相とすることにより、高強度化が図られる。擬ベイナ
イト相は、極低炭素鋼をAc1 変態点以上に加熱し、均
熱後、急冷した場合に得られる変態組織であり、低炭素
鋼等で得られているベイナイト組織に似た組織である。
擬ベイナイト相は、ポリゴナルフェライト組織と比較し
て転位密度が高く、高強度をもっている、また、ランク
フォード値の改善に有効な{111}変態集合組織も発
達している。本発明は、焼鈍時におけるこれらの変態を
有効に活用するため、極低炭素Ti含有鋼に所定量のM
nを含ませた鋼スラブを使用する。そして、鋼スラブに
熱延巻取り温度400〜600℃の熱間圧延を施し、冷
延後に得られた冷延鋼板に加熱速度,焼鈍温度,焼鈍時
間,冷却速度等を適正化した条件下で連続焼鈍すると
き、強度及びプレス成形性の双方が改善された深絞り用
高強度冷延鋼板が得られることを見い出した。
【0007】以下、本発明で使用する鋼材に含まれる合
金元素,含有量,製造条件等に付いて説明する。 C:0.001〜0.01重量% 深絞り性や延性を改善する上では、C含有量は少ないほ
ど好ましい。また、炭化物,窒化物,炭窒化物,炭硫化
物等として固定されることによっても、加工性に及ぼす
Cの悪影響を抑制できる。しかし、C含有量が0.01
重量%を超えると、Cの固定に必要なTiやNb等の添
加量が増大し、鋼材コストを上昇させる原因となるばか
りでなく、ランクフォード値の向上にも不利となる。し
かし、C含有量を0.001重量%未満まで下げること
は、製鋼過程における製造コストを上昇させる。 Si:2.0重量%以下 鋼板の強度を上げる有効な合金元素である。しかし、
2.0重量%を超えるSi含有量では、延性及びランク
フォード値が大きく低下する。
【0008】Mn:1.0〜4.0重量% オーステナイト形成元素であり、Mn含有量が増大する
と変態点が低下し、α+γ二相又はγ単相が比較的低温
焼鈍でも容易に得られるようになる。本発明において
は、連続焼鈍時に形成される再結晶衆愚お組織を加熱過
程のα→γ変態及び冷却過程のγ→α変態の集合組織変
化を利用し、高ランクフォード値化を図る。また、冷却
過程のγ→α変態によるミクロ組織変化により、高強度
化が図られる。高いランクフォード値が示される理由は
明らかでないが、加熱過程で形成される再結晶集合組織
と、α+γ二相又はγ単相における比較的低い温度の焼
鈍によって生じる強いγの集合組織、更に冷却過程のγ
→α変態を急冷することによるバリアント選択により、
ランクフォード値と相関のある強い{554}〈22
5〉方位の変態集合組織が形成されることによるものと
推察される。また、高強度化を示す理由は、γ→α変態
を急冷することにより、細粒のポリゴナルフェライト相
と転移密度が高く硬質となる擬ベイナイト層の二相組織
又は擬ベイナイト単相組織が得られるためと推察され
る。以上の作用を得るためには、Mnを1.0重量%以
上含ませることが必要である。しかし、4.0重量%を
超えるMn含有量では、鋼板の延性が大きく低下する。
【0009】P:0.20重量%以下 鋼板の強度を上げる有効な合金元素であるが、0.20
重量%を超えて多量のPが含まれると、プレス加工時に
二次加工割れが著しく助長される。 S:0.02重量%以下 Mnと結合して非金属介在物を形成し、プレス加工時に
加工割れ等の欠陥を発生させ易くなる。また、Tiと反
応してTiSを形成することにより、Cの固定に必要な
Ti量を増加させる原因ともなる。したがって、S含有
量は低ければ低いほど好ましく、本発明ではその上限を
0.02重量%に規定した。 酸可溶Al:0.005〜0.1重量% 製鋼過程における脱酸剤として必要な添加元素であり、
所定の脱酸効果を得るためには0.005重量%以上の
Alが必要である。しかし、0.1重量%を超える多量
のAl含有量では、Al23 等の介在物が増加し、加
工性や表面品質を劣化させる。
【0010】N:0.007重量%以下 固溶Nとして残存すると深絞り性を劣化させることか
ら、TiやNbにより固定化する。しかし、N含有量の
増加に伴ってTiNの析出量が多くなり、{111}再
結晶集合組織の発達が抑制される。そこで、本発明にあ
っては、N含有量の上限を0.007重量%に規定し
た。 Ti:[(48/12)×%C+(48/14)×%N
+(48/32)×%S]〜0.1重量% C,N及びSを固定して延性や加工性を改善すると共
に、ランクフォード値を高くする{111}方位の再結
晶集合組織を発達させる作用を呈する。これら作用は、
C,N及びSの固定に必要な量以上のTi含有量で得ら
れるが、0.1重量%で飽和する。 B:0.0005〜0.003重量% 結晶粒界にPよりも優先的に位置し、Pの偏析に起因し
た粒界脆性、ひいてはプレス成形性の劣化を抑制する。
この効果は、0.0005重量%以上のB含有で顕著と
なる。しかし、0.003重量%を超えるB含有量で
は、粒成長が阻害され、鋼板のランクフォード値や延性
が低下する。
【0011】Nb:0.01〜0.1重量% 必要に応じて添加される合金元素であり、Cを固定し、
{111}方位の再結晶集合組織を発達させる作用を呈
する。これらの作用は、0.01重量%以上のNb含有
量で顕著になるが、0.1重量%で飽和する。 V:0.01〜0.1重量% 必要に応じて添加される合金元素であり、Cを固定し、
{111}方位の再結晶集合組織を発達させる作用を呈
する。これらの作用は、0.01重量%以上のV含有量
で顕著になるが、0.1重量%で飽和する。 Zr:0.01〜0.1重量% 必要に応じて添加される合金元素であり、Cを固定し、
{111}方位の再結晶集合組織を発達させる作用を呈
する。これらの作用は、0.01重量%以上のZr含有
量で顕著になるが、0.1重量%で飽和する。
【0012】Cu:0.1〜0.4重量% 必要に応じて添加される合金元素であり、鋼板の耐食性
を改善する作用を呈する。Cuの作用は、0.1重量%
以上の含有量で顕著になる。しかし、0.4重量%を超
える多量のCuが含まれると、耐食性改善効果が飽和す
るばかりでなく、延性も大きく低下する。 Ni:0.4重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Cuに起因し
た熱間脆性を防止し、熱延時に高温割れの発生を防止す
る。Niの添加は、耐食性の改善にも有効に働く。特に
Cu添加鋼にあっては、熱間赤熱脆性を防止するため、
Cuと同量のNiを添加することが好ましい。しかし、
0.4重量%を超えるNi含有量は、Ni添加の効果が
飽和するばかりでなく、高価なNiを多量に消費するこ
とから鋼材のコストが上昇する。
【0013】以上の組成を持つ鋼材を転炉,電気炉等で
溶製した後、スラブに連続鋳造する。得られたスラブ
は、そのまま直送し、或いは一旦冷却して冷片却とした
後、熱間圧延される。 熱間圧延 熱間圧延温度及び熱延仕上げ温度は、特に限定されるも
のでないが、Ar3変態点以上で圧延を終了することが
好ましい。ただし、熱延巻取り温度は、400〜600
℃の範囲に設定する。巻取り温度を600℃以下とする
ことにより、熱延板の細粒化及び強い熱延集合組織を形
成することができる。この熱延板の細粒化及び強い熱延
集合組織は、焼鈍時の再結晶集合組織である{554}
〈225〉方位への集積度を高める。しかし、400℃
を下回る熱延巻取り温度では、巻取り後の板形状に不良
が発生し易くなる。
【0014】連続焼鈍 熱間圧延後の鋼板は、常法に従って酸洗・冷間圧延さ
れ、連続焼鈍工程に送られる。連続焼鈍工程では、変態
直前に再結晶を完了させるため加熱速度の上限を30℃
/秒に設定した。他方、極端に遅い加熱速度では、再結
晶粒が粗大化することから、下限を5℃/秒と設定し
た。変態時の集合組織変化及びミクロ組織変化を利用し
て特性の改善を図るため、Ar1 変態点以上の温度で焼
鈍する。しかし、920℃を超える焼鈍温度では、通常
の連続焼鈍設備を用いた生産が困難になる。また、結晶
粒の粗大化及びランクフォード値に悪影響を及ぼす変態
集合組織の形成を抑制するため、焼鈍時の均熱時間を8
0秒以下にすることが必要である。均熱後の冷却速度
は、深絞り性に有効な集合組織及び高強度化に有効な擬
ベイナイト組織の生成・発達に関係する。冷却速度を4
0℃/秒以上に設定すると、これら集合組織や擬ベイナ
イト組織が発達し、深絞り性の改善及び高強度化が図ら
れる。他方、40℃/秒に満たない冷却速度では、必要
な集合組織や擬ベイナイト組織が十分に成長しない。
【0015】
【実施例】
実施例1:表1及び表2に示す組成をもつ各種鋼材を溶
製し、スラブに連鋳した。得られたスラブに、スラブ加
熱温度1250℃及び仕上げ温度920℃の条件下で熱
間圧延を施し、種々の巻取り温度で巻き取った。各熱延
鋼板を酸洗した後、圧下率75%で板厚1mmまで冷間
圧延した。得られた冷延鋼板に、表3に示す条件下で連
続焼鈍を施し、更に伸び率1%の調質圧延を施した。そ
して、各鋼板からJIS5号試験片を切り出し、引張り
試験によって機械的性質を求めた。調査結果を示す表4
にみられるように、本発明に従って製造された試験番号
1〜12の鋼板は、490N/mm2 以上の強度をも
ち、強度−延性バランスに優れ、且つ1.4以上の高い
ランクフォード値を示している。これに対し、試験番号
13〜15の鋼板は、熱延巻取り温度又は連続焼鈍条件
が本発明で規定した範囲を外れることから、強度の上昇
がみられるものの、ランクフォード値及び延性が大きく
低下している。また、試験番号16〜20の鋼板は、
C,Si,Mn,P等の含有量及び熱延巻取り温度又は
連続焼鈍条件が本発明で規定した範囲を外れることか
ら、ランクフォード値が大きく低下している。この対比
から明らかなように、組成、熱延巻取り温度及び連続焼
鈍条件を最適に組み合わせることにより、高強度で且つ
ランクフォード値が高い鋼板が得られることが確認され
た。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】実施例2:耐食性を調査するため、本発明
鋼のうちCuを含有する鋼材番号6,11,12、及び
比較鋼のうちCuを含有しない鋼材番号14,16の冷
延焼鈍板を腐食試験に供した。試験片は、70mm×1
50mmのサイズをもち、端面及び裏面をポリエステル
テープでシールした。腐食試験は、JIS Z2371
の塩水噴霧試験に準じ、濃度0.5%の塩水噴霧2時間
→60℃の熱風乾燥4時間→JIS C1234の湿潤
2時間の合計8時間を1サイクルとし、300サイクル
繰り返す複合腐食試験を行った。そして、腐食し健吾の
最大侵食深さを測定し、その大きさで耐食性を評価し
た。調査結果を示す表5にみられるように、本発明鋼
は、比較鋼に比べて最大侵食深さが浅く、耐食性に優れ
ていることが判る。
【0021】
【表5】
【0022】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、Mnを添加することにより変態点を下げた極低炭素
Ti含有鋼のスラブを熱間圧延して400〜600℃で
巻き取った後、α+γ二相域又はγ単相域での焼鈍を容
易にし、α−γ変態による集合組織変化を利用してラン
クフォード値を高めると共に、焼鈍後の組織をポリゴナ
ルフェライト相と擬ベイナイト相の二相又は擬ベイナイ
ト単相とすることにより高強度化を図っている。このよ
うにして、本発明によるとき、自動車用鋼板として好適
な深絞り性に優れた高強度冷延鋼板が得られる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年4月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】Mn:1.0〜4.0重量% オーステナイト形成元素であり、Mn含有量が増大する
と変態点が低下し、α+γ二相又はγ単相が比較的低温
焼鈍でも容易に得られるようになる。本発明において
は、連続焼鈍時に形成される再結晶集合組織を加熱過程
のα→γ変態及び冷却過程のγ→α変態の集合組織変化
を利用し、高ランクフォード値化を図る。また、冷却過
程のγ→α変態によるミクロ組織変化により、高強度化
が図られる。高いランクフォード値が示される理由は明
らかでないが、加熱過程で形成される再結晶集合組織
と、α+γ二相又はγ単相における比較的低い温度の焼
鈍によって生じる強いγの集合組織、更に冷却過程のγ
→α変態を急冷することによるバリアント選択により、
ランクフォード値と相関のある強い{554}〈22
5〉方位の変態集合組織が形成されることによるものと
推察される。また、高強度化を示す理由は、γ→α変態
を急冷することにより、細粒のポリゴナルフェライト相
と転移密度が高く硬質となる擬ベイナイト層の二相組織
又は擬ベイナイト単相組織が得られるためと推察され
る。以上の作用を得るためには、Mnを1.0重量%以
上含ませることが必要である。しかし、4.0重量%を
超えるMn含有量では、鋼板の延性が大きく低下する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】実施例2:耐食性を調査するため、本発明
鋼のうちCuを含有する鋼材番号6,11,12、及び
比較鋼のうちCuを含有しない鋼材番号14,16の冷
延焼鈍板を腐食試験に供した。試験片は、70mm×1
50mmのサイズをもち、端面及び裏面をポリエステル
テープでシールした。腐食試験は、JIS Z2371
の塩水噴霧試験に準じ、濃度0.5%の塩水噴霧2時間
→60℃の熱風乾燥4時間→JIS C1234の湿潤
2時間の合計8時間を1サイクルとし、300サイクル
繰り返す複合腐食試験を行った。そして、腐食試験後の
最大侵食深さを測定し、その大きさで耐食性を評価し
た。調査結果を示す表5にみられるように、本発明鋼
は、比較鋼に比べて最大侵食深さが浅く、耐食性に優れ
ていることが判る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.001〜0.01重量%,S
    i:2.0重量%以下,Mn:1.0〜4.0重量%,
    P:0.20重量%以下,S:0.02重量%以下,酸
    可溶Al:0.005〜0.1重量%,N:0.007
    重量%以下,Ti:[(48/12)×%C+(48/
    14)×%N+(48/32)×%S]〜0.1重量
    %,B:0.0005〜0.003重量%及び残部は実
    質的にFeからなる組成をもつ鋼スラブに熱延巻取り温
    度を400〜600℃とする熱間圧延を施し、冷間圧延
    後に連続焼鈍設備で加熱速度5〜30℃/秒,焼鈍温度
    Ac1 変態点〜920℃,均熱時間80秒以下,焼鈍温
    度から500℃までの平均冷却速度40℃/秒以上の連
    続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り性に優れた高強度
    冷延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の鋼スラブが更にNb:
    0.01〜0.1重量%,V:0.01〜0.1重量%
    及びZr:0.01〜0.1重量%の1種又は2種以上
    を含むものである高強度冷延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の鋼スラブが更にCu:
    0.1〜0.4重量%及びNi:0.4重量%以下を含
    むものである高強度冷延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の鋼スラブが更にNb:
    0.01〜0.1重量%,V:0.01〜0.1重量%
    及びZr:0.01〜0.1重量%の1種又は2種以上
    とCu:0.1〜0.4重量%及びNi:0.4重量%
    以下を含むものである高強度冷延鋼板の製造方法。
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Cited By (4)

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KR100470643B1 (ko) * 2000-12-05 2005-03-07 주식회사 포스코 드로잉성 및 내2차 가공취성이 우수한 고강도 냉연강판 및그 제조방법
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