JP3106673B2 - Fe−Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法 - Google Patents

Fe−Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法

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JP3106673B2 JP04078505A JP7850592A JP3106673B2 JP 3106673 B2 JP3106673 B2 JP 3106673B2 JP 04078505 A JP04078505 A JP 04078505A JP 7850592 A JP7850592 A JP 7850592A JP 3106673 B2 JP3106673 B2 JP 3106673B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面粗さを適切にし、
耐焼付性に優れ、エッチングむらのない特異な表面性状
をもったFe−Ni系シャドウマスク用薄板およびその適切
な製造方法を提供しようとするものである。なお本発明
におけるRku とはクルトシス指数を示すものである。
【0002】
【従来の技術】シャドウマスクの板表面は良好なエッチ
ング性を確保しつつ、エッチング後の焼鈍時における密
着防止のために適切な粗さを備えていることが必要であ
る。特に、近年はカラーテレビの高品位化に伴って、色
ずれの問題に対応できる低熱膨張のシャドウマスク材料
として注目されているFe−Ni系のインバー合金は、従来
の低炭素鋼シャドウマスク材料に比べて、エッチング後
におけるフラットマスクの焼鈍温度が高く密着焼き付き
が著しい。しかし、この問題を解決するための好ましい
提案はなされていない。
【0003】すなわち、特開昭62−238003号公
報「シャドウマスク用素材およびその製造方法」のよう
に、ダル加工されたロールをポリッシングし、このロー
ルを用いて表面の適正化、すなわち、Raが0.2μmから
2.0μmでRsk を0以上とする提案はあるものの、この
発明の比較例が、−0.1≦Rsk ≦−0.2程度であったの
に対して、実施例ではRsk を+0.2としているにすぎな
い。Fe−Ni系インバー合金の場合、この程度のRsk では
密着焼き付きを十分に防止できない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したような従来技
術では、低炭素鋼フラットマスクの焼鈍時における密着
焼き付きを防止しているのみである。前記したFe−Ni合
金であるインバー合金の強度は低炭素鋼に比べて高く、
そのためプレス成形前の焼鈍温度は低炭素鋼の場合に比
べて高く採らざるを得ず、この場合、これらの従来技術
ではインバー合金フラットマスク焼鈍時の焼き付き防止
をなし得ない。事実、この従来技術で到達し得た表面粗
度であるRaが0.65μmでありかつRsk が+0.2のイン
バー合金では、焼鈍時に密着焼き付きが著しかったので
ある。
【0005】そこで、本発明が解決しようとする課題
は、Fe−Ni系シャドウマスク用薄板及びその製造方法に
おいて、板表面粗さが適切とされたFe−Ni系シャドウマ
スク用薄板およびその薄板を簡易かつ安定に比較的低コ
ストで製造することのできる方法を提供しようとするも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段は、鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.8μmと
し、かつ3.0≦Rku ≦7.0で、50μm≦Sm≦150μ
mとしたことを特徴とするFe−Ni系シャドウマスク用薄
板である。
【0007】また、圧延作業ロール表面粗さを0.6μm
≦Ra≦1.6μmで、50μm≦Sm≦150μmかつ2.0
≦Rku ≦5.0の範囲にダル加工した上下一対の作業ロー
ルを50kg/mm2 ≦ヘルツ応力≦150kg/mm2 の範囲
の応力で接触させ、1000から10000回転転動さ
せたのちに、このロールを用いて鋼板を圧延し、前記記
載の鋼板の表面粗さとしたFe−Ni系シャドウマスク用薄
板の製造方法である。
【0008】
【作用】本発明の作用を次に説明する。近時のカラーテ
レビの高品位化に伴う色ずれを防止するためにシャドウ
マスクとして使用される、低熱膨張のFe−Ni系の鋼板の
表面粗さを0.3μm≦Raとし、かつ3.0≦Rku とするこ
とにより、適正な大きさの凸部を板に発生させ、フラッ
トマスクを積層して行うプレス前焼鈍時の板相互の実質
接触面積を減小させ、密着焼き付きを適切に防止する。
【0009】またRaの上限を0.8μmとすることにより
エッチングを適切に行なわしめ、さらに、Rku の上限を
7.0とすることによってエッチングむらの発生を防止す
るとともに、Rku 過大により、板突起部の応力集中によ
る局所的密着の発生を回避する。
【0010】0.6μm≦Ra≦1.6μmかつ2.0≦Rku ≦
5.0にダル加工したロールを用いることにより、転動処
理後のRaを適正に保ち、かつ、ロールパターンを適切に
変化させ、圧延後の板粗さを0.3μm≦Ra≦0.8μmと
し、かつ、3.0≦Rku ≦7.0として、フラットマスク焼
鈍時の焼き付きを防止する。
【0011】本発明で規定した表面粗度にダル加工され
た前記ロールを、ヘルツ応力50kg/mm2 以上の応力に
て接触させて回転転動させることにより、ダル加工によ
り形成された大きく滑らかな凸部を適切に除去して、凸
部相互間でさらに鋭利な凹凸をロールに形成させて、有
効な加工結果を得ることができる。転動前のロールのRk
u 値を2.0から5.0とすることにより、転動後のロール
のRku 値を適正に確保できる。かつ、このヘルツ応力を
150kg/mm2 以下とすることにより、ロール接触によ
り発生する接触マークすなわちタッチマークの発生を防
止する。
【0012】また、転動回転数を1000回転以上とす
ることによりダル加工による大きく滑らかな凸部の好ま
しい除去と、凸部相互間でさらに鋭利な凹凸をロールに
形成させ、また、その上限を10000回とすることに
より、ロールの転動疲労上昇とそれによる劣化を回避し
効率的な加工を得ることができる。工業的にはこれ以上
回転させても効果が少ない。なお、ヘルツ応力は次の
(1)式により、またRku は次の(2)式によって求め
た値である。
【0013】
【数1】
【0014】
【数2】
【0015】また、50μm≦Sm≦150μmの範囲と
することによりダル凸部の単位面積当りの数が、適正に
保ち、局所的焼付きをも防止する。Sm≧150μmで
は、単位面積当りの凸部個数が過小となり、フラットマ
スクを積層して行うプレス前焼鈍時に、凸部1ケ当りに
かかる荷重が過大となり、局所的密着が発生する。逆に
50≧Smの場合、単位面積当りの凸部数が過大となり、
鋼板表面の接触面積が増加し、やはり局所的的焼付きが
発生する。
【0016】
【実施例】以下に前記したような本発明の具体的な実施
態様について説明する。本発明者等は、36%Ni−Fe合
金によるシャドウマスク用薄板について、圧延後の板粗
さのRaとRku とが種々に変化したものを製造し、それら
のエッチング後のフラットマスクを焼鈍したときの密着
焼き付き発生の有無及びエッチング時のむら発生の有無
について検討した。このとき、焼鈍条件は1050℃を
60分連続させて行なった。その結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】すなわち、AのもののRaは本発明の要件を
満足するもののRku が低く、かつSmが大きく、また、
H、IのものもRku を満足しない場合であり、K、Lの
ものはRku 、Smについては本発明の要件を満足するがRa
については本発明に達していない場合である。いずれ
も、焼鈍後の焼き付き発生が認められる。これらに対し
て、C、D、E、F、G、JのものはRaとRku 、Smのい
ずれもが本発明の範囲内のものであって、いずれのもの
も焼鈍後における焼き付きの発生及びエッチングむらを
認めることができなかった。なお、BとKからNのもの
においては、Rku 、Sm及びRaのいずれかひとつまたはふ
たつ以上が本発明の範囲外であって、焼き付き及びエッ
チングむらの何れかまたは双方が認められる。
【0019】次に、本発明によるロールを用いて、次の
表2に示す圧延スケジュールにより、前記36%Ni−Fe
合金によるシャドウマスクの圧延を実施した。なお、シ
ョットブラストでは、#240グリットを用いて、ダル
加工を行いSm=80μmとした。
【0020】
【表2】
【0021】また、次の表3にこの圧延により得られた
板粗さについて、ロール粗さとともに示す。本発明によ
る1600回転動したロールにより圧延したものは、Ra
が0.65μmであるが、Rku は6.5と高い値を示してお
り、エッチング性及びエッチング後の焼鈍時における密
着防止効果において卓越したものであることが確認され
た。
【0022】
【表3】
【0023】本発明におけるロールのショットブラスト
による一例についての転動回数とロール粗さとの関係を
図1に示す。試験に用いたロール径は120mmであり材
質はSKD相当である。同図は、転動回数とロール間の
ヘルツ応力がロール粗さに与える影響を示したものであ
り、以下に示すことが判明した。
【0024】第一に、ヘルツ応力が100kg/mm2 では
1000回転でロール磨耗が安定する。すなわち、ロー
ルの大きく滑らかな凸部が充分除去され、かつ、凸部ど
うしのロールにより鋭利な凹凸が安定して発生するため
に、圧延材のRku を向上させる。第二に、ヘルツ応力3
0kg/mm2 ではロール磨耗が進行しない。第三に、ヘル
ツ応力50kg/mm2 では1200回程度で収束する。
【0025】次に、表4にはロールのショットブラスト
ダル加工の条件と転動後のロール粗さ及び転動回数と圧
延後の板粗さとを示した。No. 1と2は比較例であり、
No.3から7に本発明の条件によるものを示している。
なお、転動時のロール間ヘルツ応力は100kg/mm2
ある。
【0026】
【表4】
【0027】前記した表4のものの圧延スケジュールを
焼鈍時の焼付きの有無とともに次の表5に示す。即ち本
発明による No.3〜7のもののみが焼鈍後の密着がな
く、良好な製品となる事が理解される。
【0028】
【表5】
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるとき
は、シャドウマスクの鋼板表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.
8μmとし、かつ3.0≦Rku ≦7.0、50μm≦Sm≦1
50μmとしてエッチング焼鈍時における密着焼き付き
を適切に防止できる。また、このような特性をもったシ
ャドウマスク用薄板を容易にかつ的確に製造することが
でき、結果として品質的に好ましいシャドウマスクが低
廉に得られる。さらに、歩留りの向上を図ることがで
き、しかも、ロールに対する転動処理が頗る容易で、こ
れらの点からも有利にシャドウマスクを得ることができ
る等の効果があり、工業的に大きな効果を得ることがで
きる発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるロールのショットブラストによ
る一例についての転動回数とロール粗さとの関係を示
す。
フロントページの続き (72)発明者 平川 智之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−10336(JP,A) 特開 昭62−243782(JP,A) 特開 昭62−238003(JP,A) 特開 平4−103744(JP,A) 特開 昭61−39344(JP,A) 特開 昭64−52022(JP,A) 特開 平1−252725(JP,A) 特開 平3−193846(JP,A) 特開 平3−193847(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 29/07 C22C 38/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.8μ
    mとし、かつ3.0≦Rku ≦7.0で、50μm≦Sm≦15
    0μmとしたことを特徴とするFe−Ni系シャドウマスク
    用薄板。
  2. 【請求項2】 圧延作業ロール表面粗さを0.6μm≦Ra
    ≦1.6μmで、50μm≦Sm≦150μmかつ2.0≦Rk
    u ≦5.0の範囲にダル加工した上下一対の作業ロールを
    50kg/mm2 ≦ヘルツ応力≦150kg/mm2 の範囲の応
    力で接触させ、1000から10000回転転動させた
    のちに、このロールを用いて鋼板を圧延し、鋼板の表面
    粗さを形成することを特徴とするFe−Ni系シャドウマス
    ク用薄板の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0561974U (ja) * 1992-01-22 1993-08-13 株式会社イナックス フック付電源コード
US6185532B1 (en) 1992-12-18 2001-02-06 International Business Machines Corporation Digital broadcast system with selection of items at each receiver via individual user profiles and voice readout of selected items
JP5905981B1 (ja) * 2015-07-17 2016-04-20 株式会社玄海 故人の立体遺影額縁構造
KR101823564B1 (ko) * 2016-01-29 2018-01-30 조현목 반려동물 형상의 기능성 유골함

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