JP2853069B2 - Fe−Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法 - Google Patents

Fe−Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面粗さを適切にした
Fe−Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】シャドウマスクの板表面は良好なエッチ
ング性を確保しつつ、エッチング後の焼鈍時における密
着防止のために適切な粗さを備えていることが必要であ
る。特に、近年はカラーテレビの高品位化に伴って、色
ずれの問題に対応できる低熱膨張のシャドウマスク材料
として注目されているFe−Ni系のインバー合金は、
従来の低炭素鋼シャドウマスク材料に比べて、エッチン
グ後のフラットマスクの焼鈍温度が高く密着焼き付きが
著しい。しかし、この問題を解決するための好ましい提
案はなされていない。
【0003】すなわち、特開昭62−238003号公
報「シャドウマスク用素材およびその製造方法」のよう
に、ダル加工されたロールをポリッシングし、このロー
ルを用いて表面の適正化、すなわち、Raが0.2μm
から2.0μmでRskを0以上とする提案はあるもの
の、この発明の比較例が、−0.1≦Rsk≦−0.2
程度であったのに対して、実施例ではRskを+0.2
としているにすぎない。Fe−Ni系インバー合金の場
合、この程度のRskでは密着焼き付きを十分に防止で
きない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したような従来技
術では、低炭素鋼フラットマスクの焼鈍時の密着焼き付
きを防止しているのみである。前記したFe−Ni合金
であるインバー合金の強度は低炭素鋼に比べて高く、そ
のためプレス成形前の焼鈍温度は低炭素鋼の場合に比べ
て高く採らざるを得ず、この場合、これらの従来技術で
はインバー合金フラットマスク焼鈍時の焼き付き防止を
なし得ない。事実、この従来技術で到達し得た表面粗度
であるRaが0.65μmでありかつRskが+0.2
のインバー合金では、焼鈍時に密着焼き付きが著しかっ
たのである。
【0005】そこで、本発明が解決しようとする課題
は、Fe−Ni系シャドウマスク用薄板及びその製造方
法において、板表面粗さが適切とされたFe−Ni系シ
ャドウマスク用薄板およびその薄板を簡易かつ安定に比
較的低コストで製造することのできる方法を提供しよう
とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段は、鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.8
μmとし、かつ3.0≦Rku≦7.0としたFe−N
i系シャドウマスク用薄板である。
【0007】また、圧延作業ロール表面粗さを0.6μ
m≦Ra≦1.6μmかつ2.0≦Rku≦5.0の範
囲にダル加工した上下一対の作業ロールを50kg/m
2 ≦ヘルツ応力≦150kg/mm2 の範囲のロール
間最大接触応力で接触させ、1000から10000回
転転動させたのちに、このロールを用いて鋼板を圧延
し、前記記載の鋼板の表面粗さとしたFe−Ni系シャ
ドウマスク用薄板の製造方法である。
【0008】
【作用】本発明の作用を次に説明する。近時のカラーテ
レビの高品位化に伴う色ずれを防止するためにシャドウ
マスクとして使用される、低熱膨張のFe−Ni系の鋼
板の表面粗さを0.3μm≦Raとしかつ3.0≦Rk
uとすることにより、エッチング後の焼鈍時における密
着焼き付きを適切に防止する。またRaの上限を0.8
μmとすることによりエッチングを適切に行なわしめ、
さらに、Rkuの上限を7.0とすることによってエッ
チングむらの発生を防止するとともに、Rku過大によ
り、板突起部の応力集中による局所的密着の発生を回避
する。
【0009】0.6μm≦Ra≦1.6μmかつ2.0
≦Rku≦5.0にダル加工したロールを用いることに
より、転動処理後のRaを適正に保ち、かつ、ロールパ
ターンを適切に変化させ、圧延後の板粗さを0.3μm
≦Ra≦0.8μmとし、かつ、3.0≦Rku≦7.
0として、フラットマスク焼鈍時の焼き付きを防止す
る。
【0010】本発明で規定した表面粗度にダル加工され
た前記ロールを、ヘルツ応力50kg/mm2 以上のロ
ール間接触最大応力にて接触させて回転転動させること
により、ダル加工により形成された大きく滑らかな凸部
を適切に除去して、凸部どうしでさらに鋭利な凹凸をロ
ールに形成させて、有効な加工結果を得ることができ
る。転動前のロールのRku値を2.0から5.0とす
ることにより、転動後のロールのRku値を適正に確保
できる。かつ、このヘルツ応力を150kg/mm2
下とすることにより、ロール接触により発生する接触マ
ークすなわちタッチマークの発生を防止する。
【0011】また、転動回転数を1000回転以上とす
ることによりダル加工による大きく滑らかな凸部の好ま
しい除去と、凸部どうしでさらに鋭利な凹凸をロールに
形成させて、また、その上限を10000回とすること
により、ロールの転動疲労上昇とそれによる劣化を回避
し効率的な加工をうることができる。工業的にはこれ以
上回転させても効果が少ない。なお、ヘルツ応力は次の
(1)式により、またRkuは次の(2)式によって求
めた値である。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】
【実施例】以下に前記したような本発明の具体的な実施
態様について説明する。本発明者等は、36%Ni−F
e合金によるシャドウマスク用薄板について、圧延後の
板粗さのRaとRkuとが種々に変化したものを製造
し、それらのエッチング後のフラットマスクを焼鈍した
ときの密着焼き付き発生の有無及びエッチング時のむら
発生の有無について検討した。このとき、焼鈍条件は1
000℃を60分連続させて行なった。その結果を表1
に示す。
【0015】
【表1】
【0016】すなわち、AのもののRaは本発明の要件
を満足するもののRkuが低く、また、H、Iのものも
Rkuを満足しない場合であり、K、LのものはRku
については本発明の要件を満足するがRaについては本
発明に達していない場合である。いずれも、焼鈍後の焼
き付き発生が認められる。これらに対して、C、D、
E、F、G、JのものはRaとRkuのいずれもが本発
明の範囲内のものであって、いずれのものも焼鈍後にお
ける焼き付きの発生及びエッチングむらを認めることが
できなかった。なお、BとKからNのものにおいては、
Rku及びRaのいずれか一方または双方が本発明の範
囲外であって、焼き付き及びエッチングむらのいずれか
または双方が認められる。
【0017】次に、本発明によるロールを用いて、次の
表2に示す圧延スケジュールにより、前記36%Ni−
Fe合金によるシャドウマスクの圧延を実施した。
【0018】
【表2】
【0019】また、この圧延により得られた板粗さにつ
いて、表3にロール粗さとともに示す。本発明による1
600回転動したロールにより圧延したものは、Raが
0.65μmであるが、Rkuは6.5と高い値を示し
ており、エッチング性及びエッチング後の焼鈍時におけ
る密着防止効果において卓越したものであることが確認
された。
【0020】
【表3】
【0021】本発明におけるロールのショットブラスト
による一例についての転動回数とロール粗さとの関係を
図1に示す。試験に用いたロール径は120mmであり
材質はSKD相当である。同図は、転動回数とロール間
のヘルツ応力がロール粗さに与える影響を示したもので
あり、以下に示すことが判明した。
【0022】第一にヘルツ応力が100kg/mm2
は1000回転でロール磨耗が安定する。すなわち、ロ
ールの大きく滑らかな凸部が充分除去され、かつ、凸部
どうしのロールにより鋭利な凹凸が安定して発生するた
めに、圧延材のRkuを向上させる。第二にヘルツ応力
30kg/mm2 ではロール磨耗が進行しない。第三に
ヘルツ応力50kg/mm2 では1200回程度で収束
する。
【0023】次に、表4にロールのショットブラストダ
ル加工の条件と転動後ロール粗さ及び転動回数と圧延後
の板粗さとを示した。No.1と2は比較例であり、N
o.3から7に本発明の条件によるものを示している。
なお、転動時のロール間ヘルツ応力は100kg/mm
2 である。
【0024】
【表4】
【0025】また、上記表4のものの圧延スケジュール
を次の表5に示す。
【0026】
【表5】
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるとき
は、シャドウマスクの鋼板表面粗さを0.3μm≦Ra
≦0.8μmとし、かつ3.0≦Rku≦7.0として
エッチング焼鈍時における密着焼き付きを適切に防止で
きる。また、このような特性をもったシャドウマスク用
薄板を容易にかつ的確に製造することができ、結果とし
て品質的に好ましいシャドウマスクが低廉に得られる。
さらに、歩留りの向上を図ることができ、しかも、ロー
ルに対する転動処理が頗る容易で、これらの点からも有
利にシャドウマスクを得ることができる等の効果があ
り、工業的に大きな効果を得ることができる発明であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるロールのショットブラストによ
る一例についての転動回数とロール粗さとの関係を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21B 1/22 B21B 3/00 - 3/02 H01J 9/14 H01J 29/07

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦
    0.8μmとし、かつ3.0≦Rku≦7.0としたこ
    とを特徴とするFe−Ni系シャドウマスク用薄板。
  2. 【請求項2】 圧延作業ロール表面粗さを0.6μm≦
    Ra≦1.6μmかつ2.0≦Rku≦5.0の範囲に
    ダル加工した上下一対の作業ロールを50kg/mm2
    ≦ヘルツ応力≦150kg/mm2 の範囲のロール間最
    大接触応力で接触させ、1000から10000回転転
    動させたのちに、このロールを用いて鋼板を圧延し、請
    求項1記載の鋼板の表面粗さを得ることを特徴とするF
    e−Ni系シャドウマスク用薄板の製造方法。
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