JP3104872B2 - オルガノシランから不純物を除去する方法 - Google Patents

オルガノシランから不純物を除去する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】電子産業では広くオルガノシ
ランを使う。例えば、テトラエチルオルトシリケート
(TEOS)を二酸化シリコンを堆積(成長)させるた
めの主要な供給源として使う。13(IIIA)族のホ
ウ素および15(VA)族のリンとヒ素は、二酸化シリ
コンの膜を得る際に不純物として振る舞う。工業的な要
求の一つに、超高純度のTEOSを作るためにTEOS
から効果的にこの不純物を取り除くことがある。(元素
周期表の番号付けについてはHawleyのConde
nsed Chemical Dictionaly
(第11版、著者:N.lrving Sax他(19
87))参照。)
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】J.
M.Rosamiliaは1994 Proceedi
ngs Institute of Environm
ental Scienceの156ページでTEOS
の分析方法と不純物濃度の一部を示した。彼らはまた、
ホウ素不純物を取り除くことは、それらがTEOSと共
に蒸留されてしまう揮発性のトリエトキシボロン錯体を
形成するので、難しいことを示した。
【0003】半導体産業で高性能のデバイスを作るため
に、超高純度の先駆物質は特に重要である。トランジス
ターの数が増えデバイスの密度が高くなると同時に、デ
バイスの大きさは極微少の寸法に低下する。0.25μ
m以下の技術では、極少量(10億分の1から1兆分の
1)の不純物でさえもデバイスの故障率を高め性能を下
げる。
【0004】小型化と多重レベル的な設計に加えて、各
レベルの間の誘電体層の厚さがどんどん薄くなってい
る。誘電体層のこの厚さの減少はデバイスをギガヘルツ
域の高速で動作させるために必要である。結果として少
量の不純物でさえも高温下でこれらの誘電体層を簡単に
拡散し、デバイスの故障の原因となる。ホウ素とリンが
不純物である場合、この影響は高い処理温度で著しい。
これはホウ素(11B)不純物のように小さい原子は、簡
単に薄い接合部を通って拡散してしまうからである。
【0005】不純物が存在することに起因する他のいく
つかの問題には、以下のようなものがある。 1) 接合部での漏洩電流。 2) 二酸化シリコンの電子的特性の不安定化。 3) 望ましくない合金を作ってしまうシリコンの局所
的な共融。
【0006】全ての物質を分析するために高感度の技術
を日常的に使う。原子圧イオン化質量分光分析法(AP
IMS)、誘電結合プラズマ質量分光分析器(ICPM
S)および、誘電結合プラズマ原子放出器(ICPA
E)などの機器を使い、<5ppbの範囲の低レベルの
不純物を検出する。
【0007】ホウ素について予期することができる典型
的な反応は、Advanced Inorganic
Chemistryの第5版(著者:F.Albert
Cotton および Geoffrey Wilk
inson、1998年)の162〜207ページに記
載されている。
【0008】水中でのホウ素や他の不純物の除去は、ホ
ウ素選択性のある樹脂を使用してずっと以前に示されて
いる(Amberlite IRA−173 Ion
Exchange Resin Separation
Technology bulletin,Rolm
& Hass(1989))。特にホウ素をホウ酸と
して結合させるためにN−メチルグルカミンを含むイオ
ン交換樹脂が使用されている。この技術は洗浄水や溶液
からホウ素を取り除くために使用されている。Robe
rt Kunin および Albert F.Pre
ussによるI&EC Product Resear
ch Development、第3巻4号(196
4)の304ページを参照。
【0009】高純度のアルコキシシランの精製はキトサ
ンのようなキレート樹脂を使用し、続いて真空蒸留およ
び不活性ガスを用いての拡散で行ってきた。このキレー
ト樹脂はHN(CH2 COOH)2 のような原子団を含
んでいる。特開平4−082892号公報を参照。ここ
ではNa、K、Caおよび,Cuのような不純物の除去
を示している。
【0010】一般にTEOSは汚染物を最小にするため
に超高純度の出発物質を使用して作られる。塩素、ナト
リウム、およびカリウムなどは一般的な不純物である。
精製したアルコキシシランを得るために、アルコキシシ
ラン中のハロゲン化物は金属亜鉛と反応させて除去され
る。これについては、米国特許第5,104,999号
明細書を参照。
【0011】半導体産業で使用するTEOSの合成と製
造は、シリコンを含む高純度の出発物質と不純物のない
試薬を使って注意深く監視される。このようしてに得ら
れた製品を分留により更に精製する。結果として、これ
らの分留では前蒸留物質の形で収量の損失が生じる(2
5から30%)。蒸留を何回か繰り返した後でも、TE
OSは50ppb以上の汚染物を含む。
【0012】一般に従来の技術では13族のホウ素不純
物を取り除くためにイオン交換樹脂の使用を必要とす
る。その他の技術は水性媒体からのホウ素不純物の分離
や、繰り返しの分留と高純度の出発物質の使用を伴うア
ルコキシシランの精製を含む。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明では、高純度の製
品を得るために製品に対し可溶で製品よりも揮発度の低
い反応物を使用し、オルガノシランからホウ素、リン、
ヒ素およびそれらの混合物からなる群より選択される元
を除去するための従来の技術では不十分であった点を
克服する。以下で更に詳細を説明するように、この結果
として蒸留の際の損失が減少し製品の純度が高くなる。
【0014】本発明は、ホウ素、リン、ヒ素およびそれ
らの混合物からなる群より選択される元素を含むオルガ
ノシランから、ホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合
物からなる群より選択される元素を除去する方法であっ
て、次の群、すなわち
【0015】i) X4-n SiYn (この式中のn=0〜4であり、n=0のときX=R1
であり、n=1〜2のときY=R2 およびX=H、Fま
たはR1 であり、n=3〜4のときY=OR2およびX
=H、FまたはR1 であり、R1 およびR2 は独立にア
ルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基ま
たはそれらの混合物である。)、
【0016】 ii) 環状の[−(R1 )(R2 )SiO−]m (この式中のm=3〜6であり、R1 およびR2 は独立
にH、F、アルキル、アルケニル、アルキニルもしくは
アリール基またはそれらの混合物である。)、 iii) (R1 3 SiO−[(R1 )(R2 )Si
O−]m Si(R2 3 (この式中のm=0〜4であり、R1 およびR2 は独立
にH、F、アルキル、アルケニル、アルキニルもしくは
アリール基またはそれらの混合物である。)並びに
i),ii)および、iii)のいずれかの混合物、か
らなる群より選ばれたオルガノシランを、このオルガノ
シランに対し実質的に可溶でありホウ素、リン、ヒ素お
よびそれらの混合物からなる群より選択される元素とオ
ルガノシランよりも揮発性の低い錯体を形成する反応物
と接触させることを含む。この反応物はチオール、アル
コール、カルボン酸、アミンまたはそれらの混合物から
なる官能基のいずれかの有機分子より選ばれる。この様
にしてできた錯体は蒸留でオルガノシランから分離され
る。
【0017】好ましくは、反応物はpKa が3〜19.
7、好ましくはpKa が9〜11,もっと言えば概ねp
a が10であるアルコール、カルボン酸またはそれら
の混合物からなる群より選ばれる。
【0018】あるいは、反応物が一級、二級、三級アミ
ンまたはそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0019】好ましくは、反応物を取り除くホウ素、
リン、ヒ素およびそれらの混合物からなる群より選択さ
れる元素のおよそ3〜10モル当量の範囲の量で加え
る。
【0020】代わりに、反応物を取り除くべきホウ
素、リン、ヒ素およびそれらの混合物からなる群より選
択される元素に対する化学量論的な量を最低でも10%
超過する量で加える。
【0021】本発明は、より具体的にはホウ素、リンお
よびそれらの混合物からなる群より選ばれる元素を、そ
れらの元素を不純物として含むテトラアルコキシシラン
から除去する方法で、テトラアルコキシシランを2,
4,6−トリメチルフェノール、トリフェニルシラノー
ル、ドデカノールおよびそれらの混合物からなる群より
選ばれる反応物と接触させてこの元素との錯体を形成さ
せ、テトラアルコキシシランをこの錯体から蒸留で分離
することを含む。
【0022】本発明は、最も具体的にはホウ素、リンお
よびそれらの混合物からなる群より選ばれる元素を、そ
れらの元素を不純物として含むテトラエトキシシランか
ら除去する方法で、テトラエトキシシランを2,4,6
−トリメチルフェノールと接触させてこの元素との錯体
を形成させ、テトラエトキシシランをこの錯体から蒸留
で分離することを含む。
【0023】本発明は、テトラエトキシシランとしても
知られるテトラエチルオルトシリケート(TEOS)の
ようなオルガノシランから、ホウ素、リン、ヒ素および
それらの混合物からなる群より選択される元素を例えば
5重量ppb以下のようなレベルまで除去することを含
む。本発明はアルコキシシラン、ことにTEOSなどの
オルガノシラン精製のための現行の工業的蒸留方法をい
ずれも変えずに、不純物を選択的に捕捉する新しいアプ
ローチでもって立体的に大きなアルコール、カルボン酸
およびアミン反応物を使用する。
【0024】この反応物は揮発性のホウ素、リン、ヒ素
およびそれらの混合物からなる群より選択される元素の
不純物と錯体を作り、特に分留の処理で簡単に分離する
ための低揮発度または不揮発性の錯体を形成する。たと
えばTEOSの場合、反応物は特にホウ素、リン、ヒ素
およびそれらの混合物からなる群より選択される元素
結びつき低揮発度または不揮発性の錯体を形成して、蒸
留されない残留物として取り除くことができる。この方
法では分留の方法を変更せずにTEOSの純度を高く
(金属アッセイを基に>99.9999重量%)保て、
また効果的に製品の収率を高められる。結果として得ら
れた製品は、ホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合物
からなる群より選択される元素の不純物の濃度が<5重
量ppbであり、結果として少なくとも不純物の99体
積%が除去されているようにできる
【0025】TEOS中には少量のホウ素が無機のホウ
素としても有機のホウ素としても存在できる。TEOS
の濃度が高いために、ホウ素は素早くTEOS中のエト
キシ基と交換して簡単にトリエトキシボロンを形成する
と考えられる。トリエトキシボロンは比較的高い蒸気圧
を持ち、蒸留による精製の処理で簡単にTEOSと共に
蒸留できてしまう。本発明の精製法で使用する反応物は
TEOSのエトキシ基との交換プロセスを実質的に十分
に遅らせるように配位結合をしてホウ素配位圏を包み込
む。結果として生じたホウ素錯体は、伝統的なTEOS
精製の条件では塔頂生成物や軽い留分としては簡単に蒸
留できない不揮発性の錯体である。ホウ素と反応物によ
る錯体の形成過程は以下のようなものである。
【0026】
【化1】
【0027】本発明の重要な面は、上記の反応物が錯体
を形成したホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合物か
らなる群より選択される元素の不純物と製品との揮発度
の差を増すことで蒸留を促進するということである。関
連する揮発度の値を以下に示す。
【0028】
【表1】
【0029】反応物2,4,6−トリメチルフェノール
の揮発度は、20℃で1.3Torr(1.7×102
Pa)よりはるかに低く、この反応物の揮発度は分析機
器の検出限界に近い。結果として生じた錯体B(OC9
113 の揮発度は20℃でやはり無視できる。
【0030】伝統的に高純度のTEOSを得るために
は、ホウ素や他の不純物を完全に取り除くために前蒸留
物質が多く(25〜30%)必要であった。ホウ素不純
物を<5ppbに減らすのに加えて、効果的に前蒸留物
質の損失を最小にすることも大切である。本発明はオル
ガノシラン中のホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合
物からなる群より選択される元素、特にホウ素、リンお
よびそれらの混合物からなる群より選ばれる元素の不純
物の除去に焦点を当てる。この方法は、蒸留の前にオル
ガノシラン試料に錯体形成剤を加えることを含む。
【0031】いずれの特別な理論にもとらわれたくはな
いが、本発明の発明者はフェノールのような酸性のアル
コールは簡単に解離してフェノキシドと酸性のプロトン
を作ると考える。このような状況下では、ホウ素アルコ
キシドはたやすく得られる酸に触媒されるフェノキサイ
ドイオンとの配位子交換を受けて、不揮発性の錯体を形
成する。これらの不純物の不揮発性の錯体または配位子
は、簡単に分離できる蒸留の残留物の中に容易に残され
る。
【0032】以下a〜dの有機反応物をオルガノシリコ
ン化合物の精製の際、ホウ素、リン、ヒ素およびそれら
の混合物からなる群より選択される元素を取り除くのに
使える。
【0033】a)R−OHおよびR−SHのような、一
価または多価のアルコール(−OH)およびチオール
(−SH)。ここでRはC1 〜C20の有機基で、好まし
くはC1 〜C10
【0034】b)RCOOHのようなカルボン酸(−C
OOH)。ここでRはC1 〜C20の有機基で、好ましく
はC1 〜C10
【0035】c)原子団R、R’、R’’からなる群を
含む一級、二級、三級のアミン(−NRR’R’’)。
ここでR、R’、R’’はそれぞれHかC1 〜C20、好
ましくはC1 〜C10の有機基であるが、最低でも1つの
Rは有機基でなければならない。
【0036】d)a〜cに挙げた上記原子団の任意の組
み合わせ。
【0037】
【表2】
【0038】好ましい反応物は不純物と一緒になって不
揮発性の錯体を形成できる有機配位子である。このよう
な場合、大きな有機基は反応物の沸点を上昇させ、また
結果として生じる錯体の沸点をも上昇させてより良い反
応物を提供する。有機基はC1 〜C20、好ましくはC1
〜C10の範囲の炭素数のアルキル、アルケニル、アリー
ル基でよい。
【0039】より具体的には、水素のイオン化ポテンシ
ャルまたはpKa が3〜19.7の範囲,好ましくは9
〜11,最も好ましくは約10で、ホウ素、リン、ヒ素
およびそれらの混合物からなる群より選択される元素
不揮発性の錯体を形成する大きな有機酸とアルコールが
考えられる。
【0040】より具体的には、置換されたフェノールと
アルキルアルコールをホウ素、リン、ヒ素およびそれら
の混合物からなる群より選択される元素を取り除く良好
な反応物として使用した。ホウ素、リン、ヒ素およびそ
れらの混合物からなる群より選択される元素を取り除く
ことで、有機シリコン化合物を精製するのに使用できる
有機反応物の典型的なpKa は3〜19.7の範囲であ
る。
【0041】反応物はホウ素、リン、ヒ素およびそれら
の混合物からなる群より選択される元素の不純物と錯体
をつくたったり配位結合をすること以前に、この不純物
を取り除くことができるようにTEOSに実質的に可溶
で本質的に均一な溶液を形成すべきであり、またオルガ
ノシランよりも揮発度が低くなければならない。
【0042】一般的には、化学量論的に反応物の3〜1
0モル当量を使用すべきである。しかし状況によって、
ホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合物からなる群よ
り選択される元素と反応物の反応を完璧にするために過
剰量(10%)の反応物が適切である。
【0043】3〜10モル当量の範囲または10%の過
剰量で使用する反応物の量の決定は以下に示すように行
う。
【0044】
【数1】
【0045】典型的な好ましい反応物はC1 からC3
アルキル基を持つフェノール類、例えば2,4,6−ト
リメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノールおよ
び、2,6−ジイソプロピルフェノールのようなもので
ある。
【0046】オルガノシランを精製するための本発明の
方法の利点を以下に挙げる。 1) 大量のホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合物
からなる群より選択される元素の不純物を取り除くのに
前処理が不要。 2) 高純度のオルガノシランを得るために蒸留のパラ
メータを変更しない。 3) ホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合物からな
る群より選択される元素の汚染物質を<5ppbに減ら
すことができる。 4) 多量の前蒸留物質を必要としない。 5) 前蒸留物質の廃物の処分を最小化する。 6) 前記不純物が残留物中に濃縮され、蒸留工程の後
で簡単に取り除ける。 7) TEOSのようなオルガノシランを製造するのに
経済的。
【0047】本発明について考えられるオルガノシラン
は以下のi)〜iv)からなる群より選ばれる。
【0048】i) X4-n SiYn (この式中のn=0〜4であり、n=0のときX=R1
であり、n=1〜2のときY=R2 およびX=H、Fま
たはR1 であり、n=3〜4のときY=OR2およびX
=H、FまたはR1 であり、R1 およびR2 は独立にア
ルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基ま
たはそれらの混合物である。)
【0049】ii) 環状の[−(R1 )(R2 )Si
O−]m (この式中のm=3〜6であり、R1 およびR2 は独立
にH、F、アルキル、アルケニル、アルキニルもしくは
アリール基またはそれらの混合物である。)
【0050】iii) (R1 3 SiO−[(R1
(R2 )SiO−]m Si(R2 3 (この式中のm=0〜4であり、R1 およびR2 は独立
にH、F、アルキル、アルケニル、アルキニルもしくは
アリール基またはそれらの混合物である。)
【0051】iv) 上記i),ii)および、ii
i)のいずれかの混合物
【0052】それぞれの群において考えられる具体的な
化合物には下記のものが含まれる。
【0053】1)アルキルシラン: ジ、トリおよびテ
トラアルキルシラン、例えば、ジエチルシラン、トリエ
チルシランおよびテトラエチルシラン。
【0054】2)アルコキシシラン: トリアルコキシ
シラン、フルオロトリアルコキシシランおよびテトラア
ルコキシシラン、例えばトリエトキシシラン、フルオロ
トリエトキシシラン、テトラエトキシシランおよびテト
ラメトキシシラン。
【0055】3)環状アルコキシシラン: テトラアル
キルシクロテトラシロキサンおよびオクタアルキルシク
ロテトラシロキサン、例えばテトラメチルシクロテトラ
シロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、オ
クタメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタエチル
シクロテトラシロキサン。
【0056】4)シリコーン、アルキルシロキサンおよ
びアルコキシシロキサン: トリアルキルジシロキサ
ン、テトラアルキルジシロキサンおよびヘキサアルキル
ジシロキサン、トリアルコキシジシロキサン、テトラア
ルコキシジシロキサン、ヘキサアルコキシジシロキサ
ン、例えばトリメチルジシロキサン、テトラメチルジシ
ロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、トリエチルジシ
ロキサン、テトラエチルジシロキサン、ヘキサエチルジ
シロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチル
テトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプ
タメチルトリシロキサン、1,1,3,5,5−ペンタ
メチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサンおよ
びポリマー状のシリコーンオイル。
【0057】
【実施例】ホウ素およびリンの不純物の除去用の従来
の技術のオルガノシランまたはTEOSの処理の典型例
に相当する比較例の実験をいくつか行った。
【0058】[例1(比較例)] 水の精製工程において、微量のホウ素を取り除くために
水をアンバーライト(Amberlite(商標))樹
脂に通す。同様な処理を、ホウ素(600〜1000p
pbの範囲)とリン(>10ppb)を含むTEOSを
アンバーライトIRA 173に通して試みた。精製し
たTEOSをホウ素とリンに関してICPAEで分析し
た。分析は一貫しないデータを示し、空試験の分留に比
べて不純物の減少に関し大きな改善は見られなかった
(ホウ素の濃度は100〜750ppbに留まり、リン
は>10ppbであった)。
【0059】この方法は2つの主な理由で、有機シリコ
ン化合物の大規模な製造の際の精製には効果的ではな
い。1つ目は量的な減少がほとんどないこと、2つ目は
多量の樹脂が必要なことと使用した樹脂を捨てなければ
ならないことの両方の点から経済性が低い方法だという
ことである。
【0060】[例2(比較例)] アンバーライトIRA 173の主成分はN−メチルグ
ルカミンである。ホウ素とリンを除去する比較のための
蒸留を大過剰のN−メチルグルカミンを反応物として使
用し、例1で説明したようにして行った。蒸留された製
品の分析の結果、ホウ素とリンは140〜300ppb
の範囲であった。これらの結果は空試験の結果と同様で
あり(後の表3)、大きな改善はないことを示した。
【0061】本発明の方法を使用して、TEOSでホウ
素を不揮発性ホウ素錯体として錯体化する最初の実験を
グリセロール、1−ドデカノール、トリフェニルシラノ
ールおよび2,4,6−トリメチルフェノールのような
何種類かアルコールを使用して試みた。これらの実験の
結果、蒸留された製品中の不純物の量は減少した。下の
表3にあるように2,4,6−トリメチルフェノールを
反応物として使用したときに最高の結果を得た。結果と
して立体的に大きくて酸性のアルコールを組み合わせる
ことが効果的に不純物を除去するのに適当だと考えられ
る。結果として得られたこれらのアルコールとの錯体は
これらの蒸留温度で不揮発性の錯体を作り、簡単に分離
できる蒸留の残留物に残すことができる。
【0062】上で挙げた従来技術の比較例と対照的に、
以下の例は本発明の技術がもたらす意外な精製の促進を
証明する。各例において、TEOSの分留はオールダー
ショウ(oldershaw)塔を使用して行った。リ
ボイラー内のTEOSは大気圧でその沸点(168.9
℃)まで加熱した。前もって測定した量のホウ素汚染物
質を含むTEOS試料中で不揮発性のホウ素錯体を形成
するために、一般的には化学量論的に3モル当量の反応
物を使ったが、以下に示すようにいくつかの例では反応
物とホウ素の反応を完璧にするために、過剰量(10
%)の反応物を使った。
【0063】[例3] ホウ素と錯体を形成する反応物を使用する例と比較する
ために、ICPAEの分析で770ppbのホウ素を含
んでいることが分かっている3kgの粗製TEOSを、
このような反応物で処理しないで分留した。TEOSの
分留はオールダーショウ塔を使用して行った。リボイラ
ーを大気圧でTEOSの沸点(168.9℃)に加熱し
た。最初に100ml(3%)を蒸留した後、純粋なT
EOSを窒素雰囲気で集めた。次に、TEOSの分析を
GC/MS,GCアッセイ,およびICPAEで行っ
た。精製した試料を分析した結果、ホウ素の濃度は24
3ppbの範囲であった。この分析結果は68%のホウ
素の除去を示す。この結果は後の表3で示す。
【0064】[例4] ICPAEの分析で3000ppbのホウ素を含んでい
ることが分かっている3kgの粗製TEOSを大過剰の
2,4,6−トリメチルフェノールで処理した。TEO
Sの蒸留はオールダーショウ塔を使用して行った。リボ
イラーを大気圧でTEOSの沸点(168.9℃)に加
熱した。最初に100ml(3%)を蒸留した後、純粋
なTEOSを窒素雰囲気で集めた。TEOSの分析はG
C/MS,GCアッセイ,およびICPAEで行った。
精製した試料を分析した結果、ホウ素とリンの濃度は1
〜5ppbの範囲であった。この分析結果は>99%の
ホウ素の除去を示す。TEOSの純度は金属アッセイを
基に>99.9999%であると測定された。
【0065】[例5] ICPAEの分析で769ppbのホウ素を含んでいる
ことが分かっている3kgの粗製TEOSを3モル当量
の2,4,6−トリメチルフェノールで処理した。蒸留
は例4で説明したようにして行った。TEOSの分析は
GC/MS,GCアッセイ、およびICPAEで行っ
た。精製した試料を分析した結果、ホウ素とリンの濃度
は<5ppbの範囲であった。この分析結果は>99%
のホウ素が除去されていることを示す。TEOSの純度
は金属アッセイを基に>99.9999%であると測定
された。
【0066】[例6] 含んでいるホウ素の量(3000ppb)が予め分かっ
ている3kgの粗製TEOSを例4で説明するようにし
て過剰の1−ドデカノールと反応させる。次に製品の分
析をGC/MS,GCアッセイ,およびICPAEで行
った。精製した製品のホウ素とリンの濃度は<300p
pbの範囲であった。この分析結果は>95%のホウ素
が除去されていること示す。この結果は後に表3で示
す。
【0067】[例7] 含んでいるホウ素の量(770ppb)が予め分かって
いる3kgの粗製TEOSを例4で説明するようにして
大過剰のトリフェニルシラノールと反応させる。製品の
分析はGC/MS,GCアッセイ,およびICPAEで
行った。精製した製品のホウ素とリンの濃度は<76p
pbであった。この分析結果は>90%のホウ素が除去
されていること示す。この結果は後に表3で示す。
【0068】
【表3】
【0069】これらの結果は、本発明の反応物を化学量
論的な量または過剰な量の、どちらで使用しても不純物
が効率的に取り除かれることを示す。予めホウ素汚染物
の量が分かっているTEOS試料中のホウ素の錯体化を
完璧にするためには、化学量論的には3モル当量の反応
物で足りる。3〜10モル当量の範囲の反応物を使うこ
とができる。しかしながら、ホウ素と反応物の反応を完
璧にするためには、10%の過剰な量が推奨される。
【0070】テトラエチルオルトシリケートのようなオ
ルガノシリコン化合物が、この方法を使って精製され
る。この方法で精製できるこのほかの化合物には、先に
挙げたようなアルキルシラン、アルコキシシラン、環状
アルコキシシランおよび、アルキルシロキサンおよび、
アルコキシシロキサンが含まれる。
【0071】電子産業は半導体材料とデバイスを生産す
るために使用する先駆物質の純度を上げることを常に望
んでる。TEOSのようなオルガノシランは二酸化シリ
コンの層とデバイスを作るときにこの産業にとって重要
な先駆物質となる。ラインの幅とデバイスの形状寸法が
縮少するにつれて、ホウ素、リン、ヒ素およびそれらの
混合物からなる群より選択される元素不純物は半導体デ
バイスの製造にとってより致命的になり、半導体デバイ
スを高い収率で得るためはこの不純物を最少限にしなけ
ればならない。
【0072】本発明は、電子産業向けの先駆物質である
オルガノシランが大規模集積回路の設計により強いられ
る更に向上する純度の要求を、この産業で伝統的に使用
されているのと同じ分留精製の装置と方法を使用する一
方で、オルガノシランに対し実質的に可溶でかつ不純物
と低揮発性の錯体を形成して慣用的な分留精製の際にそ
れらを除去するのを容易にする単純で安価な反応物を用
いて、意外なほどホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混
合物からなる群より選択される元素の不純物を減少させ
ながら、満足するのを可能にする。
【0073】本発明が主要な原料費または動力費をほと
んど付加せずに純度レベルを有意に向上させることは、
電子産業への先駆物質の供給における有意の改善であ
る。加えてホウ素、リン、ヒ素およびそれらの混合物か
らなる群より選択される元素の不純物と本発明の反応物
との錯体の揮発度とオルガノシラン製品の揮発度の差が
増すので、蒸留過程でのオルガノシランの損失が減少
し、結果として製品の収率が向上し、精留留分の環境へ
の廃棄が減る。
【0074】本発明をいくつかの好ましい例に関して示
してきたが、本発明の完全な範囲は特許請求の範囲で確
認すべきである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−24089(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 7/20 C07F 7/04 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホウ素、リンおよびそれらの混合物から
    なる群より選ばれる元素を、これらの元素を汚染物質と
    して含むテトラアルコキシシランから除去する方法であ
    って、当該テトラアルコキシシランを2,4,6−トリ
    メチルフェノール、トリフェニルシラノール、ドデカノ
    ールおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる反応
    と接触させてこれらの反応体と上記元素との錯体を形
    成し、蒸留により上記錯体から当該テトラアルコキシシ
    ランを分離することを含む元素の除去方法。
  2. 【請求項2】 ホウ素、リンおよびそれらの混合物から
    なる群より選ばれる元素を、これらの元素を汚染物質と
    して含むテトラエトキシシランから除去する方法であっ
    て、当該テトラエトキシシランを2,4,6−トリメチ
    ルフェノールと接触させて、この2,4,6−トリメチ
    ルフェノールと上記元素と錯体を形成し、蒸留により
    当該テトラエトキシシランを上記錯体から分離すること
    を含む元素の除去方法。
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