JP3082892B2 - ポジ型レジスト材料 - Google Patents

ポジ型レジスト材料

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JP3082892B2 JP06130829A JP13082994A JP3082892B2 JP 3082892 B2 JP3082892 B2 JP 3082892B2 JP 06130829 A JP06130829 A JP 06130829A JP 13082994 A JP13082994 A JP 13082994A JP 3082892 B2 JP3082892 B2 JP 3082892B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、遠紫外線、電子線やX
線等の高エネルギー線に対して高い感度を有し、アルカ
リ水溶液で現像することによりパタンを形成できる、微
細加工技術に適したポジ型レジスト材料に関する。
【0002】
【従来の技術】LSIの高集積化と高速度化に伴い、パ
タンルールの微細化が求められているが、現在汎用技術
として用いられている光露光では、光源の波長に由来す
る本質的な解像度の限界に近付きつつある。g線(43
6nm)若しくはi線(365nm)を光源とする光露光で
は、おおよそ0.5μmのパタンルールが限界とされて
おり、これを用いて製作したLSIの集積度は、16M
ビットのDRAM相当までとなる。しかし、LSIの試
作は既にこの段階にまできており、更なる微細化技術の
開発が急務となっている。このような背景により、次世
代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィが有望視
されている。遠紫外線リソグラフィは、0.3〜0.4
μmの加工も可能であり、光吸収の小さいレジストを用
いた場合、基板に対して垂直に近い側壁を有するパタン
の形成が可能である。また、一括にパタンを転写するこ
とができるために、電子線リソグラフィよりもスループ
ットの点で有利である。近年、遠紫外線の光源として高
輝度なKrFエキシマレーザを利用する段になり、量産
技術として用いられるには、光吸収が小さく、そして高
感度なレジスト材料が要望されている。近年開発され
た、酸を触媒として化学増幅(chemical amplificatio
n) を行うレジスト材料〔例えば、リュー(Liu)ら、ジ
ャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テ
クノロジー(J.Vac. Sci. Technol.)、第B6巻、第
379頁(1988)〕は、従来の高感度レジストと同
等以上の感度を有し、しかも解像性が高く、ドライエッ
チング耐性も高い、優れた特徴を有する。そのため、遠
紫外線リソグラフィには特に有望なレジスト材料であ
る。ネガ型レジストとしてはシプリー(Shipley)社が、
ノボラック樹脂とメラミン化合物と酸発生剤からなる3
成分化学増幅レジスト(商品名 SAL601ER7) を既に商品
化している。しかし、化学増幅系のポジ型レジストはい
まだ商品化されたものはない。LSIの製造工程上、配
線やゲート形成などはネガ型レジストで対応できるが、
コンタクトホール形成は、ネガ型レジストを用いたので
はカブリやすいために微細な加工はむずかしく、ポジ型
レジストがはるかに適している。
【0003】そのため、高性能なポジ型レジストが強く
要望されている。従来、イトー(ItO)らは、ポリヒドロ
キシスチレンのOH基をt−ブトキシカルボニル基(t
Boc基)で保護したPBOCSTという樹脂に、オニ
ウム塩を加えてポジ型の化学増幅レジストを開発してい
る。しかし、用いているオニウム塩は金属成分としてア
ンチモンを含む〔参考文献:ポリマース イン エレク
トロニクス、ACS シンポジウム シリーズ(Polyme
rs in Electronics, ACS symposium Series)、第242
回(アメリカ化学会、ワシントン DC.1984)、
第11頁〕。基板への汚染を避けるために、一般的に
は、レジスト材料中の金属成分は嫌われる。そのために
PBOCSTレジストはプロセス上好ましいものではな
い。上野らはポリ(p−スチレンオキシテトラヒドロピ
ラニル)を主成分とし、酸発生剤を加えた遠紫外線ポジ
型レジストを発表している(参考:第36回応用物理学
会関連連合講演会、1989年、1p−k−7)。しか
し、本発明者らの検討によれば、この材料系は遠紫外
線、電子線やX線に対してはポジネガ反転しやすかっ
た。以上のような、OH基を保護基で保護した樹脂と酸
発生剤からなる2成分系ポジ型レジストでは、現像液に
溶解するようになるためには、多くの保護基を分解する
必要がある。その際に、膜厚変化や膜内の応力あるいは
気泡の発生等を引起こす可能性が高い。化学増感ポジ型
レジストとしては、機能をより分化させた3成分系、す
なわち、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻害剤、酸発生剤か
らなる材料系の方が、酸が分解すべき溶解阻害剤の量が
小量でよいため、上述のような膜厚変化や気泡発生等を
より少なくすることが可能であり、精密な微細加工には
より有用と推定される。
【0004】3成分ポジ型レジストとしては、ヘキスト
社がノボラック樹脂に溶解阻害剤としてアセタール化合
物を添加し、更に酸発生剤を添加したレジスト材料−R
AY/PF−をX線リソグラフィ用に開発されている。
この化学増幅過程で加水分解を行う系では、加水分解反
応に水を必要とするので、レジスト材料中に水分を含ん
でいることが必要となる。一般に、レジスト材料の塗布
溶媒には酢酸エトキシエチルのような、水と混合しない
有機溶媒を用いることが多く、レジストの樹脂自身も水
と相溶しにくい材料が多い。このような材料系に水を所
定量混合させることは容易ではなく、また、混合させる
ことができるにしても、制御すべき成分が増えることに
なるので、系がより複雑になり好ましいものではない。
一方、tBoc基の分解反応は、tBoc基と触媒であ
る酸の2成分で反応が進み、第3成分としての水を必要
としないため、反応が単純であり、化学増幅に利用する
には好都合である。tBoc化した化合物の多くが、ノ
ボラック樹脂の溶解性を阻害する効果を有し、tBoc
基が溶解阻害能を発現させるのに有用であることは知ら
れている。シュレゲル(Schlegel) らはノボラック樹脂
と、ビスフェノールAをtBoc化した溶解阻害剤と、
ピロガロールメタンスルホン酸エステルからなる3成分
ポジ型レジストを発表している(1990年春季、第3
7回応用物理学会関連連合講演会 28p−ZE−
4)。大西らはポリヒドロキシスチレンの水酸基の一部
をt−ブトキシカルボニルメチルオキシ基で置換した化
合物を溶解阻害剤として用いたレジストを開発した〔ジ
ャーナル オブ フォトポリマー サイエンス アンド
テクノロジー(J.Photopolym.Sci.Technol. )、第5
巻、第47頁(1992)〕。この材料は露光部と未露
光部の溶解速度比が大きくできる利点があるが、添加量
が増加するに伴い、ベースポリマーとの相溶性が問題に
なる。シュウォーム(Schwalm)らは、溶解阻害剤と酸発
生剤を組合せた材料として、ビス(p−t−ブトキシカ
ルボニルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロ
アンチモネートを開発している〔ポリマー フォア マ
イクロエレクトロニクス(Polymer for Microelectroni
cs) (東京、1989)、セッションA38〕。これを
ノボラック樹脂と混合して遠紫外線用ポジ型レジストと
している。しかし、この材料系は金属を含む点及びノボ
ラック樹脂の光吸収が大きいので実用上好ましいもので
はない。
【0005】また、従来の化学増幅系ポジ型レジスト
は、遠紫外線、電子線やX線でパタン形成を行うと、パ
タンがオーバーハング状になりやすい欠点を有してい
た。これは、レジスト表面の溶解性が低下するためと考
えられる〔参考;K.G.チオン(K.G.Chiong)
ら、ジャーナル オブ バキューム サイエンス アン
ドテクノロジー、第B7巻、(6)、第1771頁(1
989)、S.A.マクドナルド(S.A.Macdonald)
ら、プロシーディング オブ エスピーアイイー(SP
IE)〕。オーバーハング形状は、パタン寸法制御をむ
ずかしくし、ドライエッチングを用いた基板加工に際し
ても、寸法制御性を損ねる。また、パタン下部が細まる
のでパタンの倒壊を招きやすい。また、化学増幅系レジ
ストは露光から、PEBまでの放置時間が長くなると、
レジスト特性が変化する問題があり、これを実用に供す
る場合の大きなネックになっている。この問題はタイム
ディレーと呼ばれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
ノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレンをベース樹脂
とした、遠紫外線、電子線及びX線に感度を有する化学
増幅系ポジ型レジストは、従来数多く発表されている
が、いずれのものも問題点を含んでおり、いまだ実用上
に供することがむずかしいのが現状である。本発明の目
的は、従来技術を上回る、高感度、高解像性、プロセス
適用性に優れた高エネルギー線露光用ポジ型レジスト材
料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明はポジ型レジスト材料に関する発明であって、ポリ
ヒドロキシスチレンの水酸基の一部がt−ブトキシカル
ボニルメチルオキシ基で置換された樹脂、1分子中に2
個以上のt−ブチル基を含む溶解阻害剤、一般式(化
1):(R)nAM(式中Rは同じでも異なってもよく
芳香族基あるいは置換芳香族基を示し、Aはスルホニウ
ムあるいはヨードニウムを示す。Mはp−トルエンスル
ホネート基あるいはトリフルオロメタンスルホネート基
を示す。nは2あるいは3を示す)で表されるオニウム
塩及び窒素含有化合物の4成分のみからなる、アルカリ
水溶液で現像可能な高エネルギー線感応ポジ型レジスト
であって、該窒系含有化合物が、アニリン、N−メチル
アニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、ピ
コリン、2,4−ルチジン、キノリン、イソキノリン、
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメ
チルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトア
ミド、N,N−ジメチルメチルアセトアミド、2−ピロ
リドン、N−メチルピロリドン、イミダゾール、2−
チルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、アミノ安
息香酸、2−キノリンカルボン酸、2−アミノ−4−ニ
トロフェノール、2−(p−クロロフェニル)−4,6
−トリクロロメチル−s−トリアジン、フェニレンジア
ミンの中から選択された窒素含有化合物の1種以上であ
ることを特徴とする。
【0008】化学増幅系ポジ型レジストにおいて、現在
大きな問題はパタンがオーバーハング状になりやすいこ
ととタイムディレーの問題である。パタンがオーバーハ
ング状になるのは表面に形成される難溶化層の形成され
やすいためであり、その大きな原因の1つは空気中の窒
素含有化合物がレジスト表面から拡散しレジスト膜厚方
向に窒素含有化合物の分布が形成されるためである。窒
素含有化合物が存在すると露光により発生した酸を失活
させるため、表面でより溶解阻害剤の分解が起こり難く
なる。このため、表面に難溶化層が形成される。また、
タイムディレーの問題の原因も空気中の窒素含有化合物
が大きく関与していると推定される。露光により発生し
たレジスト表面の酸は空気中の窒素含有化合物と反応し
て失活する。PEBまでの放置時間が長ければそれだけ
失活する酸の量が増加するため、より感度が低下するこ
とになる。これがタイムディレーの問題になる。
【0009】本発明において化学増幅系ポジ型レジスト
に窒素含有化合物を添加するとパタンがオーバーハング
状になりやすいこととタイムディレーの2つ問題が一挙
に解決できることを発見した。レジスト中に既に窒素含
有化合物が存在するため、空気中の窒素含有化合物がレ
ジスト膜中に拡散してもレジストの膜厚方向にその分布
を形成できなくなると推定される。このため、レジスト
表面だけに難溶化層が形成されることがなくなる。
【0010】窒素含有化合物として各種アミン化合物、
アミド化合物を検討した結果、沸点が150℃以上の化
合物が有効であった。これはレジストを塗布した後の1
00℃のプリベークにおいて、沸点が150℃未満の化
合物は蒸発するため、レジスト膜中にほとんど存在しな
くなり、その効果が認められないためと推定される。
【0011】使用可能な窒素含有化合物の例としては以
下の化合物が挙げられる。アニリン、N−メチルアニリ
ン、N,N−ジメチルアニリン、p−トルイジン、o−
トルイジン、m−トルイジン、2,4−ルチジン、キノ
リン、イソキノリン、ホルムアミド、N−メチルホルム
アミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミ
ド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセト
アミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、イミ
ダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダ
ゾール、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、
o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ
安息香酸、2−キノリンカルボン酸、2−アミノ−4−
ニトロフェノール、2−(p−クロロフェニル)−4,
6−トリクロロメチル−s−トリアジン、o−フェニレ
ンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレン
ジアミン。
【0012】窒素含有化合物を添加する大きな欠点はレ
ジスト感度が低下することであるが、p−トルエンスル
ホネート系あるいはトリフルオロメタンスルホネート系
オニウム塩を使用する、1分子中の2個以上のt−ブチ
ル基を含む溶解阻害剤を使用する、及び窒素含有化合物
の添加量を4重量%以下に抑えることにより、感度低下
を少なくすることができる。レジストの高感度化が重要
の場合、窒素含有化合物の添加量は1重量%以下が好ま
しい。
【0013】オニウム塩としては下記式(化2)、(化
3)で表される化合物: (化2) (C6 5 2 +-3 SCF3 、 (化3) (C6 5 3 +-3 SCF3 が知られている。しかし、式(化2)はエチルセロソル
ブアセテート、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパ
ノール等のレジストの塗布に好適な溶媒に対して溶解性
が低いため、レジスト中に適量を混合することができな
い。式(化3)の溶解性は比較的良いが、これを用いて
3成分レジストを作製すると、溶解阻害剤の種類によら
ず、1〜4μC/cm2 の露光量で膜減りするものの、露
光部が完全に溶解する前にネガ反転してしまい、ポジ型
にはならなかった。このようなネガ反転に関しては、シ
ュレゲルらも公表しており(参考文献;前述)、トリフ
ルオロメタンスルホネート系のオニウム塩はtBoc系
溶解阻害剤を含む3成分ポジ型レジストには有用できな
いことが、これまでの常識であった。
【0014】従来、化学増幅レジスト用酸発生剤で最も
実用性のあるオニウム塩は、芳香族スルホニウム塩であ
るとされている(参考;笈川ら、第37回応用物理学会
関連連合講演会、1990年、28p−PD−2)。し
かし、上述したように、トリフルオロメタンスルホン酸
のスルホニウム塩は、tBoc化合物を溶解阻害剤とす
る3成分系ポジ型レジストの酸発生剤としては実用に供
さない。本発明者らは、有機のオニウム塩で、レジスト
塗布溶媒への溶解性が高く、ポリヒドロキシスチレン系
樹脂とtBoc溶解阻害剤と酸発生剤の3成分からなる
ポジ型レジスト材料に用いた場合に良好なポジ型特性を
示す酸発生剤を鋭意検討した。
【0015】その結果、以下のオニウム塩を使用するこ
とが出来る。ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニ
ウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル(p
−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタン
スルホネート、フェニル(p−フルオロフェニル)ヨー
ドニウムトリフルオロメタンスルホネート、フェニル
(p−メトキシフェニル)ヨードニウムトリフルオロメ
タンスルホネート、ジフェニル(p−フルオロフェニ
ル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ
フェニル(p−ヒドロキシフェニル)スルホニウムトリ
フルオロメタンスルホネート、フェニル(p−チオフェ
ノキシフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスル
ホネート、及び上記化合物のトリフルオロメタンスルホ
ネート基の部分がp−トルエンスルホネート基に代った
化合物。
【0016】本発明のレジストにおけるオニウム塩の含
量は0.5〜15wt%が好適である。0.5%未満でも
ポジ型のレジスト特性を示すが感度が低い。酸発生剤の
含量が増加すると、レジスト感度は高感度化する傾向を
示し、コントラスト(γ)は向上した。15%より多く
てもポジ型のレジスト特性を示すが、含量の増加による
更なる高感度化が期待できないこと、オニウム塩は高価
な試薬であること、レジスト内の低分子成分の増加はレ
ジスト膜の機械的強度を低下させること、等によりオニ
ウム塩の含量は15%以下が好適である。
【0017】オニウム塩を用いた、本発明によるところ
のレジスト材料は、溶解阻害剤として、1分子中に2個
以上のt−ブチル基を含むことを必須とする。溶解阻害
剤の含量は、7〜40wt%がよい。7%未満では溶解阻
害効果が小さく、40%より多くては、レジストの機械
的強度や耐熱性が低下する。従来、発表されているポジ
型レジスト用溶解阻害剤としてのtBoc化合物は、ビ
スフェノールAのOH基をtBoc化した材料がほとん
ど唯一であった。しかし、本発明者らは、鋭意検討した
結果、フロログルシンやテトラヒドロキシベンゾフェノ
ン、フェノールフタレイン、クレゾールフタレイン、チ
モールフタレイン等をtBoc化したものでも溶解阻害
剤として有用であることを見出した。また、カルボン酸
のt−ブチルエステル化合物も有効な溶解阻害剤となる
ことを見出した。この分解後にカルボン酸を生成する溶
解阻害剤は露光部と未露光部の溶解速度比を大きくでき
るため、解像性、フォーカスマージン及びタイムディレ
ーの問題に対しても優れた特性を示した。ベース樹脂と
してアルカリ可溶性のノボラック樹脂あるいはポリヒド
ロキシスチレンを使用できるが、ノボラック樹脂を用い
た場合、KrFレーザ光での吸収が大きい問題があり、
KrF用レジストには吸収の小さいポリヒドロキシスチ
レンを使用する方が好ましい。しかし、ポリヒドロキシ
スチレンは、溶解阻害剤を添加したときの溶解阻害効果
が小さい場合がある。これはポリヒドロキシスチレンの
溶解性が高いためであり、溶解性を制御するため、水酸
基の一部をtBoc基で置換したものが使用されてき
た。
【0018】しかし、水酸基の一部をt−ブトキシカル
ボニルメチルオキシ基で置換したところtBoc基の場
合より1桁以上の溶解阻害効果が得られた。また、露光
部ではレジスト反応によりアルカリ溶解性に優れるカル
ボン酸が生成するため、露光部と未露光部の溶解速度比
を大きくできることが判った。露光部と未露光部の溶解
速度が大きい程、解像性の良いことが知られている。こ
のため、ポリヒドロキシスチレンの水酸基の一部をt−
ブトキシカルボニルメチルオキシ基で置換したベース樹
脂の方が、tBoc基で置換したものより解像性に優れ
ていた。また、露光部のアルカリ溶解性が改善されたた
め、高感度となった。このt−ブトキシカルボニルメチ
ルオキシ基による置換率は10から50モル%が好まし
い。50モル%より高くなるとアルカリ水溶液への溶解
性が低下するため、一般に使用されている現像液では感
度が極度に低下する、また10モル%未満では溶解阻害
効果が小さい。
【0019】ポリヒドロキシスチレンの重量平均分子量
は形成されたレジストパタンの耐熱性の観点から一万以
上であることが好ましいが、ラジカル重合で得られるも
のは分散度が大きいため、アルカリ水溶液に溶解しにく
い分子量の大きいものを含み、これはパタン形成後の裾
ひきの原因となる。このため、分子量は大きく、分散度
はできる限り小さい方が、高精度のパタン形成に有利で
ある。本発明ではリビング重合により得られるポリヒド
ロキシスチレン(分子量1.4万、分散度1.1)を使
用したところ、0.2μmライン&スペースのパタンが
裾ひきなく精度良く形成できた。しかも、耐熱性につい
ては、150℃で10分間ベークしてもパタン変形は認
められなかった。ラジカル重合で得られた分子量1.2
万のものは、分散度が3.0であり、0.2μmライン
&スペースのパタンでパタン裾ひきがみられた。しか
し、微細パタン形成が可能であることに変わりはない。
窒素含有化合物を添加しない場合0.5μmライン&ス
ペースのパタンでもパタン裾ひきがみられたので、窒素
含有化合物の添加は解像性の向上にも有効であった。理
由についてはまだ明らかでないが、上記レジスト組成に
おいて感度及び解像性の観点から最も優れていた窒素含
有化合物はピロリドン、N−メチルピロリドン、各種ア
ミノ安息香酸であった。
【0020】本発明のレジストを用いたパタン形成は以
下のようにして行うことができる。本レジストの溶液を
基板にスピン塗布し、プリベークを行う。高エネルギー
線を照射する。この際、酸発生剤が分解して酸を生成す
る。PEBを行うことにより、酸を触媒としてtBoc
基が分解し、溶解阻害効果が消失する。アルカリ水溶液
で現像し、水でリンスすることによりポジ型パタンを得
る。なお、OH基のtBoc化はペプチド合成では良く
用いられる官能基の保護方法であり、ピリジン溶液中で
二炭酸ジt−ブチルと反応させることにより簡単に行う
ことができる。
【0021】以下に本発明で使用する原料の合成例を示
すが、これらに限定されない。 合成例1 ポリヒドロキシスチレンのt−ブトキシカル
ボニルメチルオキシ化 ポリヒドロキシスチレン5gをピリジン40mlに溶解さ
せ、45℃でかくはんしながらt−ブチルブロモ酢酸エ
ステルを2.5g添加する。N2 気流中で5時間反応さ
せる。濃塩酸20gを含む水1リットルに反応液を滴下
し、白色の沈殿を得る。ろ過したのち、アセトン50ml
に沈殿を溶解させ、水1リットルに滴下した。沈殿をろ
過したのち、40℃以下で真空乾燥した。H−NMRに
おける8ppm のOH基のピークを用いてt−ブトキシカ
ルボニルメチルオキシ基の導入率を求めた結果、20.
6%であった。
【0022】
【実施例】本発明を以下の実施例で説明するが、本発明
はこれら実施例に限定されない。
【0023】実施例1 ポリヒドロキシスチレンの水酸基の一部が t−ブトキシカルボニルメチル化された樹脂(合成例1) 80.6 重量部 2,2−ビス〔p−(t−ブトキシカルボニルオキシ) フェニル〕プロパン 14 重量部 ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート 5重量部 N−メチルピロリドン 0.4 重量部 ジグライム(溶媒) 400 重量部 からなるレジスト溶液をシリコン基板に2000rpm で
スピン塗布し、ホットプレート上にて85℃で1分間プ
リベークした。膜厚は0.7μmであった。加速電圧3
0kVの電子線で描画したのち、85℃で3分間PEBを
行った。2.4%のテトラメチルアンモニウムヒドロキ
シド(TMAH)の水溶液で1分間現像を行い、水で3
0秒間リンスした。ポジ型の特性を示し、D0 感度は7
μC/cm2 であった。電子線に代えて、遠紫外線である
KrFエキシマレーザ光(波長248nm)で評価した場
合のD0 感度は27mJ/cm2 であった。PEBを85℃
で5分間行った場合は、電子線感度は5.5μC/cm2
であった。KrFエキシマレーザ露光では、0.3μm
ライン&スペースパタンやホールパタンが解像し、垂直
な側壁を持つパタンが形成できた。また、電子線描画で
は0.2μmが解像した。PEB前3時間以上大気中に
放置しても感度・解像性に変化は認められなかった。
【0024】実施例2〜16 実施例1の溶解阻害剤2,2−ビス〔p−t−ブトキシ
カルボニルオキシ)フェニル〕プロパンに代えて、表1
の溶解阻害剤を用いて実施例1と同様の方法でレジスト
評価を行った。表1にKrFエキシマレーザ露光による
感度を示す。いずれの材料もKrFエキシマレーザ露光
では、0.3μmライン&スペースパタンやホールパタ
ンが解像し、垂直な側壁を持つパタンが形成できた。ま
た、電子線描画では0.2μmが解像した。PEB前3
時間以上大気中に放置しても感度・解像性に変化は認め
られなかった。
【0025】
【表1】
【0026】以下に、表1中の溶解阻害剤の構造式を示
す。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
【化16】
【0040】
【化17】
【0041】
【化18】
【0042】
【化19】
【0043】実施例17〜28 実施例1のオニウム塩ビス(p−t−ブチルフェニル)
ヨードニウムトリフル
【0044】
【表2】
【0045】Ts:p−トルエンスルホネート,O3
CF3 :トリフルオロメタンスルホネート
【0046】実施例29〜59 実施例1の窒素含有化合物N−メチロピロリドンに代え
て、表3及び表4の窒素含有化合物を用いて実施例1と
同様の方法でレジスト特性を評価した。表3及び表4に
KrFエキシマレーザ露光による感度を示す。いずれの
材料もKrFエキシマレーザ露光では、0.3μmライ
ン&スペースパタンやホールパタンが解像し、垂直な側
壁を持つパタンが形成できた。また、電子線描画では
0.2μmが解像した。PEB前3時間以上大気中に放
置しても感度・解像性に変化は認められなかった。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【発明の効果】本発明により得られるポジ型レジスト
は、高エネルギー線に感応し、感度、解像性、プラズマ
エッチング耐性に優れている。しかも、レジストパタン
の耐熱性が優れている。また、パタンがオーバーハング
状になりにくく、寸法制御性に優れている。窒素含有化
合物を含有するため、大気中の窒素含有化合物の影響を
受け難くタイムディレーの問題を無視できる特徴を有す
る。ベース樹脂にはポリヒドロキシスチレンの水酸基の
一部をt−ブトキシカルボニルメチルオキシ基で置換し
たものを使用しているため、露光部と未露光部の溶解速
度比が大きくでき、高解像性のパタンが形成できる。こ
れらより、特に電子線、X線や遠紫外線による微細加工
に有用である。特にKrFエキシマレーザの露光波長で
の吸収が小さいため、微細でしかも基板に対し垂直なパ
タンを容易に形成できる特徴がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河合 義夫 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (72)発明者 松田 維人 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (72)発明者 石原 俊信 東京都千代田区大手町2丁目6番1号 信越化学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−181279(JP,A) 特開 平5−289322(JP,A) 特開 平7−134419(JP,A) 特開 平7−120929(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G03F 7/039 G03F 7/004 H01L 21/027

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリヒドロキシスチレンの水酸基の一部
    がt−ブトキシカルボニルメチルオキシ基で置換された
    樹脂、1分子中に2個以上のt−ブチル基を含む溶解阻
    害剤、及び一般式(化1):(R)nAM(式中Rは同
    じでも異なってもよく芳香族基あるいは置換芳香族基を
    示し、Aはスルホニウムあるいはヨードニウムを示す。
    Mはp−トルエンスルホネート基あるいはトリフルオロ
    メタンスルホネート基を示す。nは2あるいは3を示
    す)で表されるオニウム塩及び窒素含有化合物の4成分
    のみからなる、アルカリ水溶液で現像可能な高エネルギ
    ー線感応ポジ型レジストであって、該窒系含有化合物
    が、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチル
    アニリン、トルイジン、ピコリン、2,4−ルチジン、
    キノリン、イソキノリン、ホルムアミド、N−メチルホ
    ルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトア
    ミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルメチ
    ルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリド
    ン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチ
    ルイミダゾール、アミノ安息香酸、2−キノリンカルボ
    ン酸、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−(p−
    クロロフェニル)−4,6−トリクロロメチル−s−ト
    リアジン、フェニレンジアミンの中から選択された窒素
    含有化合物の1種以上であることを特徴とするポジ型レ
    ジスト材料。
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