JP3081764B2 - 複合皮膜を有する炭素部材とその製造方法 - Google Patents
複合皮膜を有する炭素部材とその製造方法Info
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Description
金属やセラミックスもしくはサーメットなどの溶射皮膜
と、からなる複合皮膜を形成してなる炭素部材とその製
造方法に関するものである。上記の炭素部材とは、焼結
炭素製の各種ロール類, 金属およびガラス質溶解坩堝,
各種電池および電解用電極類, 飛翔体構造部材, 発熱
体, 通電体, 機械構造部材, ラケット, ゴルフ, 釣竿な
どのスポーツ・レジャー用品などの炭素製品として用い
られる、基質の主成分が炭素質で、炭素が繊維状となっ
たり、SiC, TiC, CrC, WCなどの炭化物を含む製品をい
う。
的・熱的安定性に優れ、非金属でありながら熱や電気伝
導性がよいなどの特徴を有し、とくに繊維状に加工した
炭素は、高温環境下において鋼鉄にも勝る機械的強度を
示すことから、化学, 繊維, 高分子, 金属精錬, 窯業,
航空宇宙などの先端工業分野で広く採用されている。し
かし、その一方で、こうした炭素製品は耐摩耗性に乏し
く、かつ金属との接合力が低いという欠点があるため、
他の材料との複合化による欠点の克服が重要な課題とな
っている。
合力向上、炭素製品部材の機械的性質の向上、溶融金属
や溶融ガラスの内部侵入の防止対策として、各種の表面
処理技術が研究されている。例えば、炭素質製品の表面
に、金属やセラミックス等を溶射被覆するのもその一つ
である。溶射法は一般に、製品の大きさによる制限が少
ないうえ、任意の金属を自由にしかも他の金属被覆法に
比較すると厚く成膜することができ、さらには金属被覆
の上部に酸化物, 硼化物などのセラミックス類の成形も
容易なことから、これまでにも多数の溶射技術による被
覆法が提案されている。すなわち、炭素(含黒鉛)基材
の表面に対し、溶射法を適用する場合、 (1) 炭素基材表面に直接、酸化物(Al2O3 , MgO , Z
rO2など)を被覆するものとして、特開昭50−55540 号
公報, 特開昭56−37279 号公報, 特開昭57−135771号公
報, 特開昭58−37171 号公報, 特開昭58−64287 号公
報, 特開平1−145386号公報などがある。 (2) 炭素基材表面に直接金属を溶射する方法およびその
上に酸化物系セラミックスを成形する技術として、特開
昭58−125679号公報, 特開昭60−224771号公報,特開昭6
0−221591号公報, 特開昭61−30657 号公報, 特開昭62
−113782号公報,特開平4−59978 号公報, 特開平4−1
39084号公報, 特開平5−70268 号公報などがそれぞれ
提案されている。
した溶射皮膜は、その成膜原理からも理解できるよう
に、溶融状態の金属もしくはセラミックス粒子の集合,
積層体であるとともに、炭素基材とは直接冶金的に結合
せず、もっぱら溶射粒子が基材上で冷却, 凝固する過程
で生ずる収縮現象によって基材と物理的に結合している
に過ぎない。このため、溶射皮膜と炭素基材との接合力
は、金属基材に溶射したときの皮膜接合力に比べると小
さく、溶射被覆そのものの特性が如何に優れていたとし
ても、その特性を十分に発揮できないという欠点があ
る。
め、溶射金属と炭素基材との熱膨張係数の比を0.73〜1.
44とするとともに、炭素と化学的親和力のある金属を選
定することによって、溶射被覆の密着力を大幅に改善す
る技術を、特開平5−70268号公報として以前に提案し
た。ところが、最近では、炭素基材上に形成する溶射被
覆に対する要求性能はますます高くなり、これにともな
って本発明者らの先行提案技術を超えるような高い密着
力を有する溶射被覆の出現が望まれるようになってき
た。
術は、炭素基材は一般に耐高温酸化性が悪く、一方、そ
の解決のために炭素基材表面に金属などを溶射被覆した
ものでは皮膜の密着性が悪く、そのために溶射被覆の特
性が十分に発揮できないという欠点があった。とくに、
炭素基材表面に形成した溶射被覆というのは、その接合
力が甚だしく低いことから、単にその溶射材料のみを改
善しても、炭素基材との接合力の方も改善しない限り、
その特性が十分に発揮できないのである。
る皮膜の接合力の向上を図ることにある。また、本発明
の他の目的は、耐高温酸化性に優れた複合皮膜を有する
炭素部材を有利に製造する技術を提案することにある。
に形成する溶射被覆の密着性を向上させるため、溶射に
先立ち、次のような化学(気相)反応を伴う熱処理を行
う点に特徴がある。すなわち、本発明は、各種の炭素製
品が焼結製品であることに起因し、その表面に微細な無
数の気孔が存在していることに着目し、この気孔の中
に、当該炭素基材と反応ガスとの気相反応によって析出
する微粒子状の反応性に富んだ金属クロム(以下、単に
「反応性金属クロム」という) を充填する一方、基材の
表面にもこの金属クロムを全面にわたって被覆する下地
処理を施すことにしたものである。その後、前記反応性
金属クロム下地層の上に、金属, セラミックスもしくは
サーメットのいずれか1種以上の材料を溶射被覆して耐
高温酸化性に優れた複合皮膜を形成する技術である。こ
のような方法の採用によって、炭素基材は、気相反応に
よって生成した反応性金属クロム微粒子がその表面に残
存する開気孔中に深く侵入し、気孔壁を被覆し、さらに
気孔を充填する。それが基材表面と連結することによ
り、接合力を高め、さらにこの気相反応を 600℃以上の
高温で行うため、金属クロムと炭素基材が冶金的に反応
して結合し、両者の密着力を著しく高めることとなるの
である。
りである。 (1) 炭素基材の表面に溶射層を設けてなる炭素部材にお
いて、前記基材表面と前記溶射層との間に、前記炭素基
材を水素ガスを含むハロゲン化クロムガス中で熱処理す
ることによって気相反応を起こして生成する微粒子状の
反応性金属クロムの層を設けてなる複合皮膜を有する炭
素部材。 (2) 上記反応性金属クロムの層は、炭素基材の表面を覆
う皮膜と、該炭素基材の表面に開気孔を介して含浸させ
た金属クロムによって構成されていることを特徴とす
る。 (3) 上記反応性金属クロムの層では、炭素基材と反応金
属クロム微粒子との境界において、Cr23C6型炭化ク
ロムを反応生成していることを特徴とする。 (4) そして、前記炭素部材は、炭素基材を、まず水素ガ
スを含むハロゲン化クロムガス中で 600〜1200℃, 1〜
20時間の条件で熱処理することにより、外炭素基材表面
に微細な反応性金属クロムを析出させると同時に、この
反応性金属クロムを基材中に含浸ならびに基材表面に被
覆し、その後、かかる反応性金属クロムの層の上に常法
に従って、金属, セラミックもしくはサーメットを溶射
被覆することによって製造することができる。 (5) なお、上記炭素基材は、平均気孔半径が 0.1〜2.5
μmで、開気孔の気孔率が5〜30%の範囲にあるものを
用いることが望ましい。 (6) また、本発明では、下地の金属クロム層の上に溶射
皮膜を形成するに当たっては、直接もしくはブラスト処
理を施したのち金属やセラミックスなどを溶射被覆する
ことが望ましい。 (7) なお、溶射材料としては、Ni, Cr, Co, Mo, Ti, C
u, Nb, Ta, Al, Feなどの金属およびその合金、金属酸
化物, 金属炭化物, 金属硼化物, 金属窒化物などのセラ
ミックス、およびこれらのセラミックスと前記金属とそ
の合金類とのサーメットを用いることが好ましい。
材の表面に溶射皮膜を形成するまでの工程順に従って説
明する。 (1) 気相反応を伴う熱処理工程(下地皮膜の形成) 被処理材となる炭素基材を、水素ガスを含むハロゲン化
クロムガス中に保持して熱処理を行う。この熱処理によ
り、雰囲気中では次のような水素還元反応を起し、極め
て微細な反応性金属クロムの粒子(0.1μm以下) が析出
すると同時に、この反応性金属クロム微粒子は、炭素基
材の表面に存在する気孔中に侵入してこれを充填する。 CrX2+H2 → Cr+2HX …(1) なお、Xは塩素, 弗素, 沃素, 臭素などのハロゲン元素
である。ここで、析出した上記反応性金属クロム微粒子
は、炭素基材の開気孔中に侵入してこれを充填するのみ
ならず、この気相中で生成した反応性金属クロムが炭素
基材の表面に付着するため、炭素基材全体がこの反応性
金属クロム微粒子で被覆されることとなる。しかし、こ
の反応性金属クロムからなる皮膜は、通常の溶射皮膜と
は異なり、その皮膜下面が炭素基材の開気孔中に深く侵
入しているため、該反応性金属クロムの皮膜と炭素部材
とは強固に結合することとなる。しかも、上記(1) 式の
反応は、 600〜1200℃の高温下で行うため、炭素基材と
接触する反応性金属クロムの微粒子は、炭素と反応して
Cr23C6型炭化クロムを生成するので、両者の接合は
冶金反応的となり、非常に強固なものとなる。 23Cr + 6C → Cr23C6 …(2) また、この熱処理は水素ガスを含んでいるため、炭素基
材を高温状態にしても、大気中のような酸化消耗を伴う
ことはない。
ガス中での熱処理は、例えば図1に示すような装置によ
って行うことができる。図1において、1はNi基合金製
の処理容器、2はハロゲン化クロムガス導入管、3はア
ルゴンガス導入管、4は水素ガス導入管、5はガス排出
管であり、それぞれの配設管にはガスの供給あるいは排
出調整が可能なバルブ6, 7, 8を備えている。また、
処理容器全体は電気炉中に置かれ、外部から加熱される
ようになっている。9は処理容器内の温度計測用の管で
ある。10は被処理体であり、多孔質なアルミナ焼結板11
の上に設置できるようになっている。熱処理の操作は、
先ずアルゴンガスを導入しつつ、処理容器を所定の温度
に上昇した後、水素ガスとハロゲン化クロムを導入する
方法によって行う。
置によっても行うことができる。図2において、21はNi
基合金製処理容器、22は水素ガス導入管、23はガス排出
管、24は処理容器内の温度計測管、25は被処理体、26は
ハロゲン化クロムを発生させるための浸透剤で、例えば
ハロゲンとして塩素(Cl)を用いる場合の組成は、金属ク
ロム粉末70wt%, Al2O3粉末29wt%, 塩化アンモン(NH
4Cl) 1.0 wt%である。
外部から加熱されるが、水素ガスを流しつつ加熱して、
330℃に達すると次のように塩化アンモンが分解してHC
l ガスが発生する。 NH4Cl → NH3+ HCl …(3) ここで発生したHCl は、浸透剤中の金属クロム粉末と反
応して、塩化クロムガス(CrCl2) を生成する。 Cr +2HCl → CrCl2+H2 …(4) そして、(4) 式で発生したCrCl2は、処理容器外から導
入される水素ガスによって前記(1) 式の反応によって微
細な反応性金属クロムを気相析出し、これが被処理体の
炭素基材の気孔中に侵入したり、その表面に析出付着す
る。
で行うのがよく、特に 800〜1100℃の温度が実用的であ
る。600 ℃より低いと、前記(1) 式および(4) 式の反応
が遅く、また、1200℃以上では反応は速くなるものの、
処理容器の損耗が甚だしく、加熱エネルギーの損失とと
もに経済的でない。また加熱時間は、1時間〜20時間が
よく、1 時間より少ないと反応性金属クロムの析出, 付
着量が少なく、20時間以上では経済的な損失を招き得策
でない。本発明に使用するハロゲン化クロムとしては、
塩化クロム( CrCl2), 弗化クロム(CrF2), 沃化クロム
(CrI2), 臭化クロム(CrBr2) などが使用できるが、人
体に与える影響, 環境汚染の点から塩化クロムの使用が
好ましい。
て、炭素基材との密着性に優れた反応性金属クロムの層
を形成するには、炭素基材はミクロ的に多孔質で、外部
に開放された開気孔を有することが必要である。この
点、発明者らが各種の実験を行った結果、600 〜1200
℃, 1〜20時間の熱処理条件によって良好な反応性金属
クロムの層を得るには、炭素基材の平均気孔半径は 0.1
〜2.5 μmがよく、特に 0.5〜2.0 μmの範囲にあるこ
とが好ましい。0.1 μm未満では金属クロムの内部侵入
が難しく、また、2.5 μmより大きければ反応性金属ク
ロム微粒子による開気孔中への充填に長時間を要するう
え、この反応性金属クロムの層の表面が凹凸状となる欠
点がある。一方、外部に開放された気孔率は、5〜30%
の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは10〜20%の範
囲にあれば優れた金属クロム被覆を形成させることがで
きる。気孔率が5%未満では投錨効果に乏しく、また30
%以上では炭素基材そのものの機械的強度が低く、構造
材料としての有用性が低くなる。
2型炭化物(斜方晶)、もしくはこれとCr7C3型炭化
物(三方晶または斜方晶)との混合物であるが、これは
本発明における上記Cr23C6型炭化クロム(立方晶)
とは特性の上で大きな違いがある。即ち、従来の結晶型
(Cr3C2, Cr7C3)の炭化クロムは、Crがそれぞれ8
6.8%,91.0%である。これに対し、Cr23C6型の炭化
クロムは94.3%と、Crが占める割合が大きく、密度なら
びに硬度が高い。特に、水素ガスとハロゲン化クロムと
の反応によって析出した金属クロムが遊離炭素と接触す
ると、一旦は Cr3C2, Cr7C3が生成しても、やがて
はこの熱処理雰囲気(500〜1200℃) の中および冷却過程
でCr23C6を主成分とする炭化物に移行することにな
る。本発明は、このCr23C6型炭化クロムにて炭素基
材の表面部を改質した点に特徴を有する。
ス中で熱処理を行うことで、炭素基材は、その全面が反
応性金属クロムの層からなる下地皮膜が形成されている
が、ここでは、その表面に直接あるいは軽くAl2O3粒
子でブラスト処理した後に間接的に金属もしくは各種の
セラミックスまたはサーメットを溶射被覆する。この場
合、炭素基材上に下地層としての金属クロム被覆は極め
て強固に炭素基材と接合しているため、可燃性ガスの燃
焼炎はもとより、プラズマ, アーク, レーザなど現在市
販されているすべての熱源の溶射方式によって成膜する
ことが可能である。溶射の材料としては、Ni, Cr, Co,
Mo, Ti, Cu, Nb, Ta, Al, Feなどの金属およびその合
金、金属酸化物, 金属炭化物, 金属硼化物, 金属窒化物
などのセラミックスと、このセラミックスと前記金属と
その合金類などとの混合物にかかるセラミックスを用い
ることが好ましい。
炭素基材を熱処理することによって気相反応を起こして
析出する反応性金属クロムの下地皮膜形成の条件につい
て検討した。 (1) 供試材:炭素基材 市販の炭素焼結材(冷間等方圧加圧成形を経た緻密質等
方性黒鉛;平均気孔半径 1.5μm, 気孔率13%) を巾50
mm×長さ100 mm×厚さ10mmに切り出して用いた。 (2) 熱処理方法および条件 図1の装置を用い、ハロゲン化クロムとして取扱いが容
易な塩化クロムガス(CrCl2) を使用して、CrCl2ガ
スのみ、および水素ガスを含むCrCl2ガス中でそれぞ
れ1000℃×10時間の熱処理を行い、等方性黒鉛材上への
金属クロムの生成状況を観察した。なお、1000℃におけ
るCrCl2の飽和蒸気圧は約11mmHg (1.47×10−3MPa)で
あり、水素ガスを添加する場合はこれと同分圧の水素を
容器外から導入した。
ける熱処理後の等方性黒鉛材の断面ミクロ組織を示した
もので、反応性金属クロムの皮膜が均等に生成してお
り、しかも気孔部内にもこの反応性金属クロム微粒子の
侵入が認められる。
察結果を示したものである。水素ガスを含まないCrCl2
ガス中での熱処理では、薄い金属クロムの生成が点在し
ていたが、黒鉛材の表面を完全に被覆するまでにはなっ
ておらず、不完全であった。この金属クロムの生成は、
おそらく雰囲気中に僅かに存在していたH2O , O2など
が高温下で等方性黒鉛材と反応してCOガスを生成し、
これによってCrCl2の一部が還元されたものと推定され
る。これに対し、水素ガスを含むCrCl2ガス中では、水
素ガスによるCrCl2の還元が効率的に行われ、雰囲気中
に微細な反応性金属クロム微粒子が析出し、これが等方
性黒鉛材上に付着するとともに開気孔内部にも侵入し、
かつ全面にわたって被覆している。なお、熱処理後の本
発明の等方性黒鉛材を用いて大気中で 650℃×30分の加
熱を行った後、これを25℃の水中へ投入しても、反応性
金属クロムの層は剥離せず、優れた密着性を有すること
が確認された。
炭素焼結材の高温酸化特性について実験した。 (1) 供試材:炭素焼結材 実施例1と同じ等方性黒鉛材を使用した。 (2) 熱処理方法および条件 図2の装置を用い、水素ガスを1分間当たり 100ml流し
つつ 950℃で10時間熱処理を行った。 (3) 高温酸化試験 試験用の等方性黒鉛材を管状式電気炉の中心に静置し、
空気を1分間当たり4l流しつつ、下記条件で高温酸化
試験を行った。 550℃×24時間、 700℃×2.5 時間、1200℃×1
時間 また、試験用の等方性黒鉛材は、では2個、および
ではそれぞれ4個を用いた。なお、比較用の等方性黒
鉛材として、本発明の熱処理を行わない無処理のものを
供試した。
ものである。この結果から明らかなように、比較例の無
処理の等方性黒鉛材は、550 ℃では重量減少率の平均は
3.8%程度と少ないが、700 ℃になると10.7%, 1200℃
では僅か1時間の加熱で21.5%も減少し、高温酸化に弱
いことがうかがえる。これに対し、本発明の熱処理を施
した等方性黒鉛材は、 550℃で 0.1%、700℃で1%、1
200℃でも 2.1%の重量減少を示したに過ぎず、高い高
温酸化特性を保有していることが確認された。この原因
は、さきに図3において示したミクロ組織試験結果から
明らかなように、本発明の熱処理を行うことにより、等
方性黒鉛材の表面 (正確には空気と接触する黒鉛材の表
面) が反応性金属クロムで完全に被覆されているため、
空気による炭素の酸化反応が抑制されたものと考えられ
る。
気孔半径 2.2μm, 気孔率23%, 巾50×長さ100 ×厚さ
10mm) を試験材とし、これに本発明の水素ガスを含むハ
ロゲン化クロムガス中で熱処理を行った後、溶射被覆し
たものと、従来技術によって異方性黒鉛材に直接溶射被
覆したものの密着力の差を測定した。 (1) 本発明の被覆 上記の異方性黒鉛材を、図2の装置を用いて水素ガスを
流しつつ 950℃×10時間の熱処理を行った後、その表面
に各種の溶射法によって下記の溶射材料を用いてそれぞ
れ150 μm厚となるように成膜した。 溶射方法と溶射成膜材料 a.アーク溶射法: Al, Ni, Fe 13wt%Cr鋼 b.フレーム溶射法:Al, Ni, Fe 13wt%Cr鋼 c.大気プラズマ溶射法:Mo, Ni, Fe 13wt%Cr鋼 d.減圧プラズマ溶射法:Mo, Ni, Fe 13wt%Cr鋼 (2) 比較例の被覆 異方性黒鉛材に直接前記の溶射法によって同質の溶射
材料を同じ厚さ(150μm) に成膜した。
り取り、図4に示すような密着力測定方法によって溶射
被覆層の密着力を測定した。なお、図示の41および42は
固定治具、43は異方性黒鉛材、44は溶射被覆層 (本発明
の被覆層の場合は溶射被覆層と異方性黒鉛材との間に、
水素ガスを含むハロゲン化クロムガス中で熱処理して得
られるクロム層が存在する) 、45は合成樹脂による接合
部を示す。密着力の測定は、直径25mm×長さ80mmの炭素
鋼(SS400) を2本準備し、それぞれの端面部に熱硬化性
のエポキシ樹脂を塗布し、これを溶射被覆層とその反対
側の黒鉛試験母材部に圧着させた後、150 ℃×90分の加
熱によって樹脂を焼付け固化させた。
明らかなように、比較例の黒鉛材に直接溶射被覆した層
は、Fe(No.8), 13Cr鋼(No.10) などの鋼鉄系被覆で 1
28, 180 kgf/cm2 の密着力を示したが、例えばAlの被
覆層はすべて55kgf/cm2以下の低い測定値を示し、極め
て密着力に乏しいことが判明した。また、密着力測定後
の溶射被覆層の剥離は、すべて溶射被覆層と炭素母材と
の境界部で発生しており、両材料の熱膨張係数の大きな
相違が、剥離を助長したものと考えられる。因みに、本
実施例に用いた異方性黒鉛材/金属溶射被覆材料の熱膨
張係数比は、Al 1:3.80, Ni 1:2.15, Fe 1:1.95, Mo
1:0.82, 13Cr鋼 1:2.00である。ただ、Mo被覆のよう
に異方性黒鉛材との熱膨張係数のあまり相違しないもの
では、母材の異方性黒鉛材を構成する黒鉛粒子の相互結
合力が弱いため、黒鉛粒子の結合部から剥離していた。
これに対し、本発明の溶射被覆層の密着力は、同質の溶
射材料を用いても2倍〜8倍の高い密着力を示し、溶射
法の種類に関係なくすべての溶射法の被覆において認め
られた。この原因は、炭素焼結母材に生成している金属
クロム被覆が、各種の溶射被覆のアンダーコートとして
作用し、高い密着力を発揮したものである。
後、その表面に直接酸化物系および炭化物系セラミック
スを溶射被覆を形成したものの密着性を調べた。また、
比較例として熱処理を施こさない炭素部材に同材質の溶
射被覆を形成させた。 (1) 本発明の被覆 異方性黒鉛材を図2の装置を用いて、水素ガスを流しつ
つ 950℃×10時間の熱処理を行った後、その表面に大気
ブラズマ溶射法もしくは高速フレーム溶射法によって被
覆を形成させた。 プラズマ溶射法によって、8wt%Y2O3−92wt%ZrO2 150 μm プラズマ溶射法によって、40wt%TiO2−60wt%Al2O3 150 μm プラズマ溶射法によって、73wt%Cr3C2-20wt%Cr−7wt%Ni 150 μm 高速フレーム溶射法によって、92wt%WC−8wt%Co 100 μm (2) 比較例の被覆 異方性黒鉛材に直接、前記〜の溶射被覆を形成 (3) 溶射被覆の密着力測定方法 実施例3と同じ方法で実施した。
この結果から明らかなように、比較例の被覆(No.5, 6,
7) では、38〜44kgf/cm2の低い密着力を示すに過ぎな
い。また、溶射状態のままで、すでに溶射被覆と異方性
黒鉛材との接合部の黒鉛部材側において亀裂の発生が認
められた。高速フレーム溶射法によって形成させようと
した92wt%WC−8wt%Co被覆は、焼結母材の損耗が激し
く、密着力を測定できるような被覆の形成はできなかっ
た。これに対し、本発明の熱処理を施して異方性黒鉛材
の表面に反応性金属クロムからなる層を形成させたもの
は、その上に施工した酸化物系および炭化物系被覆とも
良好な密着性を示した。
の炭素焼結材を水素ガスを含むハロゲン化クロムガス中
で熱処理を施して、その表面に反応性金属クロムを被覆
した炭素焼結材は、高温耐酸化性に優れるとともに、そ
の上に溶射被覆を形成する方法で得られる処理層は、こ
の反応性金属クロムからなる層が炭素焼結材の気孔部に
も食い込んだ状態にあるので、その上に形成される溶射
被覆ともども、極めて高い密着力を発揮する。そのう
え、この反応性金属クロムからなる層が緻密で雰囲気ガ
スと炭素との接触を妨げるため、酸化環境下でも高温状
態で使用することができ、豊富な溶射材料による各種の
機能皮膜の創生を相ともなって、炭素製品の利用拡大に
貢献することが期待できる。
焼結材を熱処理する装置の概要を示したものである。
て、炭素焼結材を熱処理する装置の概要を示したもので
ある。
理した等方性黒鉛材と金属クロムとの接合界面組織の顕
微鏡写真である。
測定した治具の概要を示したものである。
Claims (5)
- 【請求項1】 炭素基材の表面に溶射層を設けてなる炭
素部材において、前記基材表面と前記溶射層との間に、
前記炭素基材を水素ガスを含むハロゲン化クロムガス中
で熱処理することによって気相析出させた微粒状の反応
性金属クロムの層を設けたことを特徴とする複合皮膜を
有する炭素部材。 - 【請求項2】 上記反応性金属クロムの層は、炭素基材
の表面を覆う皮膜と、該炭素基材中に開気孔を介して含
浸させた金属クロムによって構成されていることを特徴
とする請求項1に記載の炭素部材。 - 【請求項3】 上記反応性金属クロムの層では、炭素基
材と反応性金属クロム微粒子との境界において、Cr23
C6型炭化クロムを反応生成していることを特徴とする
請求項1に記載の炭素部材。 - 【請求項4】 溶射層を有する炭素部材の製造に当た
り、炭素基材を、まず水素ガスを含むハロゲン化クロム
ガス中で 600〜1200℃, 1〜20時間の条件で熱処理する
ことにより、該炭素基材表面に微粒子状の反応性金属ク
ロムを気相析出させて、この反応性金属クロムを基材中
に開気孔を介して含浸させかつ基材表面にも被覆し、そ
の後、この反応性金属クロムの層の上に、金属, セラミ
ックもしくはサーメットのいずれか1種以上を溶射被覆
することを特徴とする複合皮膜を有する炭素部材の製造
方法。 - 【請求項5】 上記炭素基材は、平均気孔半径が 0.1〜
2.5 μm、開気孔の気孔率が5〜30%の範囲にあるもの
を用いることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
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JP06307127A JP3081764B2 (ja) | 1994-11-17 | 1994-11-17 | 複合皮膜を有する炭素部材とその製造方法 |
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JP06307127A JP3081764B2 (ja) | 1994-11-17 | 1994-11-17 | 複合皮膜を有する炭素部材とその製造方法 |
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JPH08143385A JPH08143385A (ja) | 1996-06-04 |
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JP5552303B2 (ja) | 2009-12-02 | 2014-07-16 | 東洋炭素株式会社 | 炭素材の製造方法 |
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-
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- 1994-11-17 JP JP06307127A patent/JP3081764B2/ja not_active Expired - Fee Related
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