JP3081052B2 - 糖転移酵素遺伝子 - Google Patents

糖転移酵素遺伝子

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JP3081052B2 JP6934592A JP6934592A JP3081052B2 JP 3081052 B2 JP3081052 B2 JP 3081052B2 JP 6934592 A JP6934592 A JP 6934592A JP 6934592 A JP6934592 A JP 6934592A JP 3081052 B2 JP3081052 B2 JP 3081052B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、糖転移酵素遺伝子及び
糖質工学の分野において有用な該酵素の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】糖転移酵素の一種として、ラット由来の
UDP−N−アセチルグルコサミン:β−D−マンノシ
ドβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラ
ーゼIII(EC2.4.1.144:以下GnT−I
IIと略す)が知られている。GnT−IIIは、アス
パラギン結合型糖鎖のβ1−4結合したマンノース残基
(Man)に、UDP−N−アセチルグルコサミン(
DP−GlcNAc)中のGlcNAcを転移する酵素
としてナラシムハンによって報告された〔ナラシムハ
ン,S.(Narasimhan,S.)、ジャーナル
オブ バイオロジカル ケミストリー(J.Bio
l.Chem.)、第257巻、第10235〜102
42頁(1982)〕。GnT−IIIによって転移さ
れたGlcNAcはバイセクティングGlcNAcと称
され、各種の糖タンパク質の糖鎖に見出されている。ま
た、ラット肝のガン化に伴ってGnT−IIIの活性が
上昇することもナラシムハンら〔ナラシムハン,S.ら
ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、
第263巻、第1273〜1282頁(1988)〕、
パスカルら〔Pascale,R.ら カルシノゲネシ
ス(Carcinogenesis)、第10巻、第9
61〜964頁(1989)〕によって報告されてい
る。他にノビコフ(Novikoff)腹水ガンや肝ガ
ンの患者血清中でGnT−IIIの活性の上昇が知られ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の様に、GnT−
III は生体内で重要な役割を持ち、また、ガン化と関連
して活性が上昇するといったガン診断においても有用な
酵素であるにもかかわらず、GnT−III に関する報告
はその活性の測定にとどまり、GnT−III が生体より
単離されたという報告は無い。本発明の目的は、GnT
−III の性質を明らかにし、その遺伝子を特定し、Gn
T−III の遺伝子工学的製造方法を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明の第1の発明は、図面の図1に示す制限酵素地図で
表されるラット由来の長さが約1.8kbであるGnT
−IIIをコードする遺伝子を含有するDNA断片に関
する。また、本発明の第2の発明はGnT−IIIの製
造方法に関し、第1の発明のDNA断片を含有させた組
換体プラスミドを導入させた形質転換体を培養し、該培
養物からGnT−IIIを採取することを特徴とする。
【0005】本発明者らは、ラット腎臓ホモジネート中
より、種々の精製方法を用い、GnT−III を単離する
ことに成功し、次いで、該GnT−III のアミノ酸分析
を行い、その部分アミノ酸配列を決定した。次にそのア
ミノ酸配列より、PCR用のプライマーを調製し、ラッ
ト腎臓cDNAを鋳型としPCRを行い、GnT−III
をコードする遺伝子を増幅し、プローブを作成した。続
いて、該プローブを用いて、ラット腎臓のcDNAライ
ブラリー中より、GnT−III をコードする遺伝子を含
有するクローン体を検索し、GnT−III をコードする
遺伝子の単離及び該遺伝子を用いたGnT−III の発現
に成功し、本発明を完成させた。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。GnT−
III は例えばラット腎臓より、表1に示す工程により精
製することができる。
【0007】
【表1】 表 1 ──────────────────────────────────── 工 程 比活性 n mol/mg/h ──────────────────────────────────── 1.ホモジネート 2.16 2.トリトン抽出 8.94 3.QAE−セファロース 42.1 4.ヒドロキシアパタイト 74.6 5.Cu2+−キレーティングセファロース 248 6.ConAセファロース 578 7.Cu2+−キレーティングセファロース 820 8.UDP−ヘキサノールアミンアガロース 7,230 9.Gn,Gn−bi−Asnセファロース 331,000 ────────────────────────────────────
【0008】〔表中Gn,Gn−bi−AsnはGlcNAc
β1-2Man α1-6( GlcNAcβ1-2Manα1-3)Manβ1-4G
lcNAcβ1-4GlcNAc-Asnの略である。GnT−III 活性
はビオキミカ エ ビオフィジカ アクタ( Biochimica
et Biophysica Acta ) 第1035巻、第313〜31
8頁(1990)に記載の方法に準じ、80μMの蛍光
基質を用いて測定し、酵素の比活性は、転移された Glc
NAc(mol)/タンパク量(mg)/時間(h)で表し、2−ピ
リジルアミノ化GlcNAcを標準物質として使用した。タン
パク質は血清アルブミンを標準物質として、BCAキッ
ト(ピアス社製)を用いて測定した〕
【0009】精製GnT−III はポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動で単一バンドを示し、この精製GnT−III
を用い、アミノ酸配列の解析を行う。精製GnT−III
をプロテアーゼ、例えばトリプシンを用い限定分解を行
い、次に分解物のアミノ酸配列を解析することにより、
配列表の配列番号1〜4で表されるGnT−III の部分
アミノ酸配列が決定される。配列番号1で表されるポリ
ペプチドはT−7、配列番号2で表されるポリペプチド
はT−8、配列番号3で表される配列をC末端に有する
ポリペプチドはT−13、配列番号4で表されるポリペ
プチドはT−20と命名され、次に各配列より、PCR
用のミックスプライマーを作成することができる。例え
ばT−7より、配列表の配列番号5で表されるミックス
プライマーS1、及び配列番号6で表されるミックスプ
ライマーA1、T−8より、配列番号7で表されるミッ
クスプライマーS2、及び配列番号8で表されるミック
スプライマーA2、T−20より、配列番号9で表され
るミックスプライマーS3、及び配列番号10で表され
るミックスプライマーA3がそれぞれDNA合成機で合
成され、精製後GnT−III 遺伝子の検索に使用するこ
とができる。例えば、ラット腎臓よりRNAを調製し、
次にオリゴ(dT)−セルロース(ファルマシア社製)
カラムを用いてポリ(A)+ RNAの精製を行い、次に
例えば該ポリ(A)+ RNA5μgとオリゴ(dT)プ
ライマーを用い、cDNAシステムプラス(アマーシャ
ム社製)を使用し作成したcDNAを鋳型とし、前述の
ミックスプライマーを組合せ、PCRを行うことによ
り、GnT−III をコードするcDNAを増幅すること
ができる。例えばS2とA1を使用し、94℃(1
分)、50℃(2分)、72℃(3分間)を1サイクル
として40サイクル行うことにより、約160bpのDN
A断片が増幅され、同様にS3とA1を使用し、約63
0bpのDNA断片、S3とA2を使用し、約490bpの
DNA断片が増幅される。各増幅断片にはミックスプラ
イマー由来のHind III、EcoRI認識配列が付加されてお
り、増幅DNA断片はHind III、EcoRIで処理後、プラ
スミド、例えばプラスミドpUC19にサブクローニン
グすることができる。
【0010】次に、例えばこれらの増幅DNAをプロー
ブとし、ラット腎臓より調製したcDNAライブラリー
より、GnT−III をコードする遺伝子を組込んだクロ
ーン体を検索することができる。cDNAライブラリー
は、例えば前述のラット腎臓cDNAよりcDNAクロ
ーニングシステムλgt10(アマーシャム社製)を用
いて調製できる。前述のS3とA2で増幅されたDNA
をプローブとし、プラークハイブリダイゼーションを行
うことにより、例えば2.5×106 のプラークより、
4個の陽性クローンが得られ、これらのクローンはEcoR
I分解後、例えばブルースクリプト( Bluescript )II
KS(ストラタジーン社製)にサブクローニングされ
る。
【0011】サブクローニングされた4種のDNA(C
1、C2、C3、C4)の制限酵素分析による関係を図
2に示す。次に、これらのDNAを発現用プラスミドに
組込み、発現用細胞を形質転換し、GnT−III の発現
性の有無を検討することにより、GnT−III 産生細胞
を得ることができる。発現用細胞としては例えばCOS
−1細胞、HeLa細胞を使用することができ、例えば、真
核細胞での発現用ベクターpSVK3(ファルマシア社製)
にC1〜C4をそれぞれ組込み調製したプラスミドで、
これらの細胞を形質転換すれば良い。形質転換体を培養
し、転換体中に発現されたGnT−III 活性を測定する
ことによりGnT−III をコードする遺伝子が特定され
る。該遺伝子はC4であり、その制限酵素地図を図1に
示す。
【0012】C4を組込んだpSVK3はSV3と命名
され、SV3で形質転換された大腸菌XL1−Blue
(ストラタジーン社製)はEscherichia c
oli XL1−Blue SV3と命名、表示され
商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM
BP−4352として寄託されており、該微生物より
SV3を調製し、GnT−IIIの発現に使用すること
ができる。
【0013】以上、詳細に説明した様に、本発明により
糖転移酵素・GnT−III の遺伝子が単離され、該遺伝
子を用いたGnT−III の製法が提供される。該遺伝子
及びその分解物は、GnT−III の生体中での発現過程
の測定に使用することもでき、ガン診断等の遺伝子診断
においても有用である。また、本発明遺伝子のコードす
るポリペプチドを用いて、種々の抗体を免疫学的に作製
することもでき、これらの抗体も、診断の分野や、Gn
T−III の精製等に有用である。
【0014】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明
は、これら実施例に限定されるものではない。
【0015】実施例1 (GnT−IIIの精製) 工程1:ラット(ドンリューラット、雄)の腎臓2.2
kgを4倍容積の0.25Mショ糖、1mMベンザミジ
ン塩酸塩、20μM 4−(アミジノフェニル)メタン
スルホニルフルオライド(APMSF)を含む10mM
トリス−塩酸バッファー(pH7.4)の中でポリトロ
ン ホモジナイザー(ブリンクマン インスツルーメン
ツ社製)を用いホモジナイズした。なお各工程の操作
は0〜4℃の低温下で行った。
【0016】工程2:工程1で得たホモジナイズ溶液を
900×gで10分間遠心し、その上澄を105,00
0×gで60分間遠心した。沈殿を4倍容積の0.25
Mショ糖、1mMベンザミジン塩酸塩、20μM APM
SF、1%トリトンX100(w/v)を含む10mMト
リス−塩酸バッファー( pH7.4)に懸濁させ、再度
ホモジナイズした。懸濁液を1時間ゆるやかにかくはん
し、105,000×gにて1時間遠心分離を行い、ト
リトン抽出液を得た。沈殿に上記と同様の操作を3回繰
返し、計4回分のトリトン抽出液を得た。
【0017】工程3:工程2で得たトリトン抽出液をQ
AE−セファロースカラム(5×46cm)に供した。カ
ラムは、あらかじめ1mMベンザミジン塩酸塩、20μM
APMSF、0.1%トリトンX100を含む20mM
リン酸バッファー( pH7.4)で平衡化を行ってお
き、トリトン抽出液を供した。次に同一のバッファーを
流し、カラムからタンパク質の流出が見られなくなるま
で洗った。GnT−III の溶出は、塩化ナトリウムの濃
度グラジエント(0〜0.5M)を用いて行い、GnT
−III の活性画分を分画した。なおGnT−III 活性測
定は、前出の文献記載の様に、80μMのピリジルアミ
ノ(PA)化Gn,Gn−bi〔GlcNAcβ1-2Man α1-
6( GlcNAcβ1-2Man α1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4Gl
cNAc-PA 〕を受容体とし、10mM MnCl2 、200
mM GlcNAc、0.5%(v/v)トリトンX100を含
む125mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
バッファー(MESバッファー,pH6.25)溶液
に、最終濃度80μMになるように糖供与体であるUD
P−GlcNAcを加え、37℃1時間反応を行った後、HP
LCにて分析し、GnT−III の活性を測定した。
【0018】工程4:工程3で集めたGnT−III を含
むフラクションを、0.1%トリトンX100を含む2
00mMリン酸バッファーを用いて、イオン強度とpHを
調製した後、0.1%トリトンX100を含む50mMリ
ン酸バッファー( pH6.8)で平衡化したヒドロキシ
アパタイトカラム(14×13cm)に供し、GnT−II
I はこのカラムに吸着しないため、素通り画分をGnT
−III 画分として集めた。
【0019】工程5:工程4で得た画分を0.5M塩化
ナトリウム、0.05%トリトンX100を含む20mM
トリス−塩酸バッファー( pH8.0)で平衡化したC
2+−キレーティング セファロースカラム(5×15
cm)に供し、同一のバッファーでタンパク質の溶出が見
られなくなるまで洗った。次に0〜0.1Mのグリシン
の濃度グラジエントを用いてGnT−III を溶出し、活
性画分をYM30膜を装着したアミコン ダイアフロー
ウルトラフィルトレーターを用いて30mlに濃縮し
た。
【0020】工程6:工程5で得た濃縮液に0.3M塩
化ナトリウムを含む50mMトリス−塩酸バッファー( p
H7.4)を270ml加え、トリトンX100の濃度を
下げた後、0.3M塩化ナトリウムを含む50mMトリス
−塩酸バッファー( pH7.4)で平衡化した ConAセ
ファロースカラム(5×5cm)に供した。平衡化に用い
たと同じバッファーで、タンパク質の溶出が検出されな
くなるまでカラムを洗い、次にメチル−α−D−マンノ
シドを0.5M含む同一のバッファーで溶出し、GnT
−III 活性の画分を集めた。
【0021】工程7:工程6で得たGnT−III 画分を
工程5と同様の条件にてCu2+−キレーティング セフ
ァロースカラム(2.5×16cm)に供し、グリシンを
含むバッファーで溶出し、GnT−III の活性画分を集
めた。
【0022】工程8:工程7で得た画分を15mlに濃縮
した。方法は工程5に準じて行った。そのうち3mlを、
10mM MnCl2 、20%グリセロール、0.05%
トリトンX100を含む20mM MESバッファー( p
H6.3)で平衡化したUDP−ヘキサノールアミン
アガロースカラム(1.5×5.5cm)に供した。Gn
T−III は吸着しないため、素通り画分を集めた。更
に、この操作を4回繰返し、全素通り画分を濃縮し、4
mlにした。
【0023】工程9:工程8で集めた画分に80μlの
50mM UDP−Glcを添加後、そのうち1ml
を、10mM MnCl、0.05%トリトンX10
0、20%リセロール、1mM UDP−Glcを含
む20mM MESバッファー(pH6.3)で平衡化
したGn,Gn−bi−Asnセファロースカラム(1
×10cm)に供した。
【0024】なお、Gn,Gn−bi−Asnセファロ
ースは、ヒト・トランスフェリンをプロナーゼ(ベーリ
ンガーマンハイム社製)消化し、ゲルろ過を用いてAs
n結合糖鎖を調製した後、該糖鎖をシアリダーゼ(アル
スロバクター ウレアファシーンス由来:ナカライテス
ク社製)、β−ガラクトシダーゼ(ジャックビーン由
来:生化学工業社製)で分解し、Gn,Gn−bi−A
snを調製し、次に該調製物を活性化したCH−セファ
ロース(ファルマシア社製)に結合し、作成した。
【0025】GnT−III の全活性のうちの1/5量は
カラムに吸着せず素通りした。平衡化に用いたバッファ
ーからMnCl2 とUDP−Glcを含まない溶出用バ
ッファーを調製し、カラムに吸着された4/5量のGn
T−III を溶出させた。また、前述の1/5量の素通り
画分も、再クロマト後、活性画分を得た。以上の操作に
より、GnT−III は表1に示すように約150,00
0倍に純化され、8−25%濃度勾配ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動で単一なバンドを示した。
【0026】実施例2 (GnT−III 遺伝子のクローニング) (1)部分アミノ酸配列の決定 約3μgの精製したGnT−III を50mMトリス−塩酸
バッファー( pH8.0)に5日間透析した後トリプシ
ン(シグマ社製)で消化し、逆相HPLCにてペプチド
断片を精製した。次にアプライド バイオシステムズ社
製の470Aプロテインシークエンサーを用い、配列表
の配列番号1〜4でそれぞれ表されるGnT−III の部
分アミノ酸配列を決定した。
【0027】(2)cDNAの合成 ドンリューラット(雄)の腎臓より全RNAを調製し、
次にポリ(A)+ RNAをオリゴ(dT)−セルロース
カラムを用いて精製した。続いてポリ(A)+RNA5
μgを鋳型とし、オリゴ(dT)プライマーを使用し、
前出cDNAシステムプラスを用い、二本鎖cDNAを
合成した。
【0028】(3)PCR 前述のGnT−III の部分アミノ酸配列より、配列表の
配列番号5〜10でそれぞれ表されるPCR用プライマ
ーをDNA合成機で合成し、精製した。すなわち配列番
号1で表されるT−7のアミノ酸配列より、配列番号
5、6でそれぞれ表される、センスプライマーの5′末
端にはサブクローニング用のHind III認識配列、アンチ
センスプライマーの5′末端にはサブクローニング用の
EcoRI認識配列を付加した、ミックスプライマーS1、
A1をそれぞれ合成した。また、配列番号2で表される
T−8のアミノ酸番号2〜7の配列より、配列番号7、
8でそれぞれ表される、センスプライマーの5′末端に
Hind III認識配列、アンチセンスプライマーの5′末端
にEcoRI認識配列を付加したミックスプライマーS2、
A2をそれぞれ合成した。更にまた、配列番号3で表さ
れるT−20のアミノ酸番号4〜9の配列より、配列番
号9、10でそれぞれ表される、センスプライマーの
5′末端にHind III認識配列、アンチセンスプライマー
の5′末端にEcoRI認識配列を付加したミックスプライ
マーS3、A3をそれぞれ合成した。
【0029】次にPCRは50mM KCl、10mMトリ
ス−塩酸、pH8.3、1.5mMMgCl2 、0.01
%ゼラチン、各0.2mMの4種のdNTPs、各1μM
の一対のプライマー、40ngのラット腎臓の鋳型のcD
NA、2.5単位のタックポリメラーゼを含む総液量
0.1mlで行い、反応液は0.1mlのミネラルオイルを
添加した。反応は94℃(1分)、50℃(2分)、7
2℃(3分)のサイクルを40サイクル行い、最終サイ
クル後72℃で7分温度を維持した。S2とA1、S3
とA1、S3とA2の組合せで約160、630、49
0bpのDNAがそれぞれ増幅され、これらのDNAはEc
oRIとHind IIIで切断後、ベクターpUC19にそれぞ
れサブクローニングした。
【0030】(4)cDNAライブラリーの作成及び陽
性クローンの検索 ラット腎臓cDNAと、前出のcDNAクローニングシ
ステムλgt10を用いcDNAライブラリーを作成し
た。次に前述のS3とA2の組合せで増幅したDNAを
プローブとして用いるため、該DNAをマルチプライム
DNAラベリングシステム(アマーシャム社製)を用
い、(α32−P)dCTP(3000Ci/mmol:アマー
シャム社製)で標識した。次にこの標識DNAを用い、
cDNAライブラリーより、プラークハイブリダイゼー
ション法を用い、目的のクローンを検索した。2.5×
106 のプラークより、4個の陽性プラークが得られ、
ファージを単離後、そのEcoRI分解物をブルースクリプ
トII KSにサブクローニングし、サブクローニングさ
れた4種のそれぞれ1.5kbp 、1.3kbp 、1.3kb
p 、1.8kbp のDNAをそれぞれC1、C2、C3、
C4と命名した。各DNAの制限酵素地図、及びその関
係を図2に示す。
【0031】実施例3 (GnT−III の発現)GnT−III 発現用のCOS−
1細胞、HeLa細胞は5%CO2 下、湿条件で37℃で、
10%FCSをそれぞれ含むイーグル培地のダルベッコ
改変培地、イーグルの最少培地でそれぞれ培養した。実
施例2で調製したブルースクリプトII KSに組込まれ
たC1〜C4は、EcoRIで切出した後、真核細胞での発
現用ベクターpVSK3のEcoRIサイトに組込み、次にジー
ンパルサー(バイオラッド社製)を用い、エレクトロポ
レーションにより、上記真核細胞に導入した。約5×1
6 の細胞と組換えプラスミド、又は対照のベクターは
137mM塩化ナトリウム、5mM KCl、0.7mM N
2 HPO4 、6mMデキストロースを含む0.8mlの2
0mMヘペスバッファー、pH7.05中に懸濁され、電
圧250V/0.4cm、キャパシタンス960μFDで処
理を行った。
【0032】形質転換後、2日間培養を行い、細胞を集
め、PBS中で超音波破砕を行い、破砕液中のGnT−
III活性を測定した。結果を表2に示す。プラスミド
無処理の細胞、対照のプラスミドpSVK3処理の細胞
にはGnT−III活性は認められないのに対し、SV
3と命名されたC4を組込んだプラスミドpSVK3で
形質転換した細胞中にはGnT−IIIが発現した。ま
た、その発現量は形質転換に使用したプラスミド量に依
存し、COS−1細胞が高発現であった。なおGnT−
IIIの発現プラスミドSV3はEscherichi
a coliXL1−Blue SV3(FERMBP
−4352)より調製することができ、プラスミド中に
組込まれたGnT−III遺伝子の制限酵素地図は図1
で表される。
【0033】
【表2】 表 2 ────────────────────────────────── GnT−III 活性 ( p mol/mg タンパク/h) プ ラ ス ミ ド ────────────────── COS−1細胞 HeLa細胞 ────────────────────────────────── 無処理 <5 0 pSVK3(20μg) <5 0 SV3 (20μg) 2,800 18 SV3 (40μg) 3,600 56 ──────────────────────────────────
【0034】
【発明の効果】本発明によって、生体内で重要な役割を
有するGnT−III の遺伝子及び該酵素の工業的製造方
法が提供された。該遺伝子及び酵素は生化学、診断等の
分野で有用である。
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:6 配列の型:アミノ酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列番号:2 配列の長さ:7 配列の型:アミノ酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列の特徴:1 E 不明のアミノ酸 配列番号:3 配列の長さ:10 配列の型:アミノ酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列番号:4 配列の長さ:11 配列の型:アミノ酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列番号:5 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) アンチセンス:NO 配列: CAAGCTTAAY TAYGAYCART TYMG 24 配列番号:6 配列の長さ:25 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) アンチセンス:YES 配列: GGAATTCNCK RAAYTGRTCR TARTT 25 配列番号:7 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) アンチセンス:NO 配列: CAAGCTTGGN GAYTAYGARG AYAA 24 配列番号:8 配列の長さ:25 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) アンチセンス:YES 配列: GGAATTCYTT RTCYTCRTAR TCNCC 25 配列番号:9 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) アンチセンス:NO 配列: CAAGCTTTGG ATHGCNGAYG AYTA 24 配列番号:10 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) アンチセンス:YES 配列: GGAATTCRTC NGCDATCCAN CCRTCYTG 28
【図面の簡単な説明】
【図1】GnT−III をコードする遺伝子の制限酵素地
図を示す図である。
【図2】4種のDNAC1〜C4の関係を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 GENBANK/EMBL/DDBJ/G ENESEQ BIOSIS/WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の(1)に示す制限酵素地図で表さ
    れるラット由来の長さが約1.8kbであるβ−D−マ
    ンノシドβ1−4−N−アセチルグルコサミニルトラン
    スフェラーゼIIIをコードする遺伝子を含有するDN
    A断片。(1)
  2. 【請求項2】 請求項1記載のDNA断片を含有させた
    組換体プラスミドを導入させた形質転換体を培養し、該
    培養物からβ−D−マンノシドβ1−4−N−アセチル
    グルコサミニルトランスフェラーゼIIIを採取するこ
    とを特徴とするβ−D−マンノシドβ1−4−N−アセ
    チルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの製造方
    法。
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