JP2901291B2 - 新規ポリペプチド及びその遺伝子 - Google Patents

新規ポリペプチド及びその遺伝子

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JP2901291B2 JP1313198A JP31319889A JP2901291B2 JP 2901291 B2 JP2901291 B2 JP 2901291B2 JP 1313198 A JP1313198 A JP 1313198A JP 31319889 A JP31319889 A JP 31319889A JP 2901291 B2 JP2901291 B2 JP 2901291B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、ペネム、カルバペネム系β−ラクタム抗
生物質を分解、不活化する活性を有する新規ポリペプチ
ド、更に詳しくは該活性を有するミクロゾーマルジペプ
チダーゼ(MDP:microsomal dipeptidase又はDHP−I:deh
ydropeptidase−Iとも呼ばれる)に相当する新規ポリ
ペプチド並びに該ポリペプチドをコードする遺伝子に関
する。
(従来の技術) 近年、哺乳動物の腎臓に、ペネム、カルバペネム系β
−ラクタム抗生物質を分解、不活化するプロテアーゼの
存在が認められており(H.KroppらAntimicrob.Agents.C
hemother.22 62−70,1982,F.M.KahanらJ.Antimicrob.Ch
emother.12,(Suppl.D),1−35 1983など)、またヒト
腎臓より、上記作用を持つプロテアーゼが単離されてい
る(B.J.CampbellらJ.Biol.Chem 259 14586−14590 198
4)。
McIntyre T.ら(J.Biol.Chem.257,11915−11921,198
2)及びKozak,E.M.ら(J.Biol.Chem.257 6322−6327)
によってブタMDPは糖蛋白質であることが報告されてい
る。さらにKim,H.S.ら(J.Membr.Biol.75,115−122,198
3)により6.04%の糖鎖を含むことが報告されている。
またHirota,T.ら(Eur.J.Biochem.160,521−525,1986)
によりラットMDPも糖蛋白質であることが報告されてい
るが、現在までヒトのMDPと同様の活性を有することは
知られているものの、本発明で得られたヒトのMDPとの
差異は明らかではない。
(発明が解決しようとする課題) 本発明者らは、これらの事実に注目し、MDPの全構造
を明らかにすることは、MDPに安定なペネム、カルバペ
ネム系抗生物質の創製に有用と考え、鋭意研究を行っ
た。その結果、MDPに対する遺伝子を単離、同定するこ
とに成功し、その全構造を明らかにし、また動物細胞に
於てその遺伝子を発現させ、活性を確認することによ
り、本発明を完成した。
即ち、本発明は、ペネム、カルバペネム系β−ラクタ
ム抗生物質を分解、不活化する新規ポリペプチドの一次
構造、並びに該ポリペプチドをコードする遺伝子を提供
するものである。
(課題を解決するための手段) MDPの精製とその性質の検討 ヒト腎臓を6倍量の50mM Tris/HCl pH7.6(10mMフ
ェニルメチルスルフォニルフルオリドを含む)中でホモ
ジナイズ後、遠心分離し、沈澱を120mMのオクチル−β
−D−グルコシドを含む50mM Tris/HCl pH7.6に懸濁
して24時間攪はんする。この懸濁液を更に遠心分離し、
上清を集め、50mM Tris/HClに対し透析する。更に、透
析後DEAE−Sepharoseカラム、MDPの阻害剤であるcilast
atinをCH−Sepharoseに結合させたアフィニティカラム
で精製することによりMDP標品を得ることができる。
得られたMDP標品については、SDS−ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)及びTSK G3000SWXLカ
ラムを用いたゲル過により分子量を知ることができ
る。
本発明の新規ポリペプチドにおいては、SDS−PAGEで
得られた分子量とゲル過で得られた分子量の値が異な
ることから糖蛋白質である可能性が示唆された。そこで
MDP標品のConA−Sepharoseカラム(ファルマシア社製)
上での挙動を検討し、MDPの活性がメチル−α−D−マ
ンノピラノシドにより溶出されたことから、MDPは糖蛋
白質であることが示された。さらにMDPをエンドグリコ
シダーゼF(ベーリンガーマンハイム社製)により糖鎖
を切断し、SDS−PAGE上での分子量が変化することを見
出した。得られたMDPは62kDaの蛋白質(単量体)の二量
体であり、糖蛋白質であることが示唆された。
これらの結果はCampbellらが報告したMDPは59kDaの蛋
白質(単量体)の四量体であり、糖蛋白質ではないとい
う結果と異なるものである。
MDPの精製方法としては、Campbellらの報告と同様に
グリシルデヒドロフェニルアラニン(GDPA)を基質とし
て活性を測定し、MDPの特異的阻害剤であるシラスタチ
ンをリガンドとしたアフィニティーカラムを用いて精製
することができる。該精製法により処理した結果、本発
明における新規ポリペプチドはCampbellらにより報告さ
れたものと同様の活性、即ちMDP活性を有する蛋白質で
あると考えられた。
また、等電点(pI)を測定したところ、5.9−6.3であ
った。
次に、構造解析のためにMDP標品のアミノ酸配列分析
を行うこととした。
MDPの部分アミノ酸配列の決定 まず、標品20μgを6N塩酸0.15ml中で、減圧下110℃
で24時間加水分解し、日立835−50型アミノ酸分析機を
用いてアミノ酸組成を決定した。その結果、本発明の新
規ポリペプチドは、少なくとも以下のアミノ酸組成(mo
l%): Asp/Asn12.73,Thr5.24,Ser7.40,Gln/Glu11.49,Pro6.80,
Gly7.57,Ala7.88,Val8.59,Met1.76,Ile3.32,Leu11.09,T
yr2.66,Phe3.30,Lys2.50,His1.97,Arg5.71 を有する物であることが判明した。
精製したMDPの部分アミノ酸配列を決定するために
は、以下の条件でトリプシン分解を行い、HPLCにてペプ
チドフラグメントを得ることができる。まず、精製蛋白
質に適量のTPCK−トリプシン(シグマ社製)を加え、37
℃で2時間インキュベートする。この試料をトリフルオ
ロ酢酸、水、アセトニトリルの系でμBONDASPHERE5μ30
0Åカラム(日本ミリポア社製)を用いたHPLCにより分
画し、230nmで各フラグメントを検出する。溶出は1.5ml
/minの流速で行い、得られたペプチドフラグメントを気
相シークエンサーにかけることによりアミノ酸配列を決
定することができる。
以上の結果より本発明の新規ポリペプチドは以下の特
性により表される。即ち、少なくとも以下のアミノ酸組
成(mol%): Asp/Asn12.73,Thr5.24,Ser7.40,Gln/Glu11.49,Pro6.80,
Gly7.57,Ala7.88,Val8.59,Met1.76,Ile3.32,Leu11.09,T
yr2.66,Phe3.30,Lys2.50,His1.97,Arg5.71 及び少なくとも以下のN末端アミノ酸配列: を有し、分子量:約62kDa(還元条件下)、約130kDa
(非還元条件下)、等電点(pI):5.9−6.3及び糖鎖を
有する新規ポリペプチドである。
酸素学的性質 精製MDP標品についてグリシルデヒドロフェニルアラ
ニン(GDPA)、シスチニルビスグリシン S−N−エチルマレイミド−L−システィニルグリシン
(S−MalNEt−L−Cys−Gly)、ロイコトリエンD4、L
−Leu−L−Leuについて、酵素学的検討を行った。各々
の基質についてミカエリス定数Km及びVmaxを求めた。MD
Pは通常のジペプチドのみならずロイコトリエンD4やS
−MalNEt−L−Cys−GlyなどのS−置換−L−Cys−Gly
誘導体をかなり分解することが明らかとなった。
次に、判明した部分アミノ酸配列に基づきプローブを
作製し、MDPのcDNAを単離することとした。
MDPcDNAの調製 まず、オリゴdTカラムを用いて得られる、ヒト腎臓か
らのポリA+RNA(mRNA)より以下の塩基配列を有する(d
T)17−アダプター: 及びAmersham社のcDNA合成キットを用いて(−)鎖を合
成し、以下の塩基配列を有するアダプター: 及びMDPアミノ末端アミノ酸配列に対応し以下の塩基配
列を有する3′MDPプライマー: を用いてポリメラーゼチェインリアクション(PCR)に
よりMDPに対するcDNAを得ることができる。得られたcDN
Aをアガロース電気泳動法により分画し、MDPの部分アミ
ノ酸配列に対応し以下の塩基配列を有するオリゴヌクレ
オチド をT4ポリヌクレオチドキナーゼ及びγ−32PATPを用いて
5′末端をラベルし、これをプローブとして上記のcDNA
のうち、目的とするcDNAを選択する。次に、ヒト腎臓及
び胎盤のcDNAライブラリー(Clontech社)より、上記で
得られたcDNAをプローブとして両ライブラリーよりポジ
ティブなクローンを得る。本発明においては5個のクロ
ーンが得られ、その内2個のクローンをM13ファージベ
クターにリクローニングしファージDNAを単離した。San
gerらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 71 5463−5467,
1977)により塩基配列を調べたところ、ペプチドフラグ
メントのアミノ酸配列に対応する塩基配列が含まれてい
ることが見出された。制限酵素切断によるDNA断片の解
析から両クローン(MDP4,MDP7)は同一のcDNAに由来す
るものと考えられたため、両クローンについて全塩基配
列を決定した。即ち、第8図のストラテジーに従い塩基
配列を決定した結果、MDP4に挿入されたcDNAは第1図に
示す如く、翻訳開始コドンATGに始まり、翻訳終始コド
ンTGAで終わる翻訳可能領域(オープンリーディングフ
レーム)を有していた。この領域には部分アミノ酸配列
を決定したすべてのペプチドフラグメントがコードされ
ており、得られたcDNAは間違いなく、MDPのものと判断
された。
次に、得られたcDNAを実際に発現させるために動物細
胞を用いて発現を試みることとした。
MDP cDNAの動物細胞での発現 得られたMDP4クローンのcDNAを制限酵素EcoR Iで消化
しアガロースゲル電気泳動法によりDNAを分離し、ジー
ンクリーン(Geneclean,BIO 101社)により精製した
後、発現ベクターpdKCR−dhfrのEcoR Iサイトに挿入す
る。次に、E.coli JM109に形質転換し、pdKCR−dhfrに
おけるプロモーターの転写方向に挿入されたもの、及び
逆向きに挿入された組換体を得る。両組換体からのプラ
スミドDNAの調製は常法により行うことができる。次
に、宿主細胞(例えば、COS−1細胞)に両プラスミドD
NAをトランスフェクトし、3日後に該細胞及び培養上清
を回収、精製することにより本発明の新規ポリペプチド
を得ることができる。なお、グリシルデヒドロフェニル
アラニン(GDPA)を基質としてMDP活性を測定すること
により目的とする新規ペプチドの発現を確認することが
できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例1 MDPの精製 ヒト腎臓118gを708mlの50mM Tris/HCl,pH7.6(10mM
フェニルメチルスルフォニルフルオリドを含む)中で
Ultra Turrax(IkaWerk社)を用いてホモジナイズし、
105,000gで60分遠心した。遠心後沈澱を100mlの50mM T
ris/HCl(120mM オクチル−β−D−グルコシドを含
む)に懸濁し、24時間攪はんした。その懸濁液を105,00
0gで60分間遠心し、上清を集め、50mM Tris/HClに対し
透析した。透析後DEAE−Sepharoseカラム(2.5×25cm)
にアプライし、洗浄後、NaClの0−0.5Mの直線濃度勾配
により溶出した。MDPは0.2M NaCl付近で溶出し、その画
分をプールし50mM Tris/HCl(0.1mM ZnCl2,0.5M NaCl
を含む)に対し透析した。透析後、MDPの阻害剤であるc
ilastatinをCH−Sepharose(ファルマシア社製)に結合
させたアフィニティカラムにアプライし、洗浄後、10mg
/ml cilastatin及び20%グリセロールを含む溶液で溶
出した。溶出画分を50mM Tris/HCl pH7.6に対し透析
し、活性を測定し、第2図に示した画分をMDP標品とし
た。
以上の手順により得られたMDPの精製過程を第1表に
示した。精製倍率は、665.2倍であり、収率は40.2%で
あった。
全ての値は実施例に記載された条件下で、基質として
50μM GDPAを用いて検定を行った。
得られた標品をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動法(SDS−PAGE)で分析した。即ち、10−20%グラジ
エントSDS−PAGEゲル(第一化学薬品社製)を用い、50m
Aの定電流で泳動し、クーマシーブリリアントブルーR
−250で染色した。その結果、第3図に示す様に還元条
件下で62kDa及び非還元条件下で130kDaの分子量を有す
ることが明らかとなった。またTSK G3000SWXL(4.6mm
×30cm東ソー株式会社)カラムを用いたゲルろ過を以下
の条件、即ち、溶媒として50mM Tris/HCl pH7.6、0.5
M Naclを用い流速は0.5ml/minで280nmのUV吸収で検出し
たところ、180kDaの移動度をもつ単一のピークが得られ
た。
以上の結果よりMDPはオリゴマー(SDS−PAGEの結果よ
り二量体)として存在することが示唆されたが、SDS−P
AGEで得られた分子量とゲル過で得られた分子量の値
が異なることから糖蛋白質である可能性が示唆された。
そこで、糖蛋白質であることの確認のために標品のConA
−Sepharoseカラム上での挙動を検討した。25.1μg
(0.763unit)の標品を50mM Tris/HCl pH7.6 0.5M
NaClに溶かし0.5×3cmのConA−Sepharoseカラムにアプ
ライし洗浄後、0.5Mメチル−α−D−マンノピラノシド
を含む50mM Tris/HCl pH7.6 0.5M NaClで溶出した。
55%の活性がメチル−α−D−マンノピラノシドにより
溶出され、MDPは糖蛋白質であることが示された(第4
図参照)。さらにMDPをエンドグリコシダーゼFにより
糖鎖を切断し、SDS−PAGE上での分子量が変化すること
を見出した。14μgのMDP標品を0.25unitのエンドグリ
コシダーゼF(ベーリンガーマンハイム社)と混合し、
0.05%NP−40を含む50mM Tris/HCl(pH7.6)中で37℃1
6時間加温した。非処理の標品とともにSDS−PAGEを行う
と、還元条件下で62kDaのバンドは42kDaに移動した。こ
の42kDaのバンドがMDPであることはウェスタンブロッテ
ィングにより分析した(第5図参照)。約30kDaのバン
ドはエンドグリコシダーゼFである。
次に10%グリセロール及び終濃度2%のバイオライト
3−10(バイオラッド社)を含む厚さ1mmのポリアクリ
ルアミドゲルを作製し、2117型マルチフォー(LKB社)
で泳動を行った。同時に泳動したISOELECTRIC FOCUSING
CALIBRATION KIT(ファルマシア社)における等電点既
知の蛋白質から得られた等電点よりMDPの等電点を算出
した。
以上の結果より得られたMDPは62kDaの蛋白質(単量
体)の二量体であり、糖蛋白質であることが示唆され
た。これらの結果はCampbellらが報告したMDPは59kDaの
蛋白質(単量体)の四量体であり、糖蛋白質ではないと
いう結果と異なるものである。しかしながら、MDPの精
製方法としてはCampbellらの方法によった。即ちGDPAを
基質として活性を測定し、特異的阻害剤であるシランス
タチンをリガンドとしたアフィニティーカラムを用いて
精製を行っており、得られたMDPは同様の活性を有する
蛋白質であると考えられた。
そこで、MDP標品のアミノ末端配列分析を行い、判明
したアミノ酸配列に基づきMDPのcDNAを単離することと
した。
実施例2 MDPの部分アミノ酸配列の決定 MDPのアミノ末端アミノ酸配列の決定を行うため200μ
gの精製MDPをアプライドバイオシステムズ社477A気相
シークエンサーにかけ、以下の19個のアミノ酸配列を決
定できた。
また上記標品50μgを0.1M重炭酸ナトリウムバッファ
ー(pH8.1)中で1μgのTPCK−トリプシンと37℃2時
間反応させ、分解物をμBONDASPHERE 5μ300Åカラム
(5.6×150mm)を用いてHPLCで分画し、それぞれのペプ
チドフラグメントを分取した。カラムの流速は1.5ml/mi
nであり、ピークの検出には230nmを用いた。溶出はA液
(水とトリフルオロ酢酸の比が1000:1)とB液(アセト
ニトリルとトリフルオロ酢酸の比が1000:1)による直線
濃度勾配で行った。溶出パターンを第7図に示す。得ら
れたフラグメントを気相シークエンサーにかけたとこ
ろ、以下に示すように、2個の部分アミノ酸配列が明ら
かとなった。
実施例3 酵素学的性質 GDPA, S−MalNEt−L−Cys−Gly,ロイコトリエンD4,L−Leu−
L−Leuを基質として酵素学的性質を検討した。GDPAは2
74nmのUV吸収の減少により分解を測定した。分子吸光定
数Δεは15300M-1cm-1を用いた。
及びS−MalNEt−L−Cys−GlyについてはHPLCを用い
て、各々のピークの減少により分解を測定した。ロイコ
トリエンD4の分解はロイコトリエンD4のHPLCにおけるピ
ークの減少により測定し、ロイコトリエンE4の出現も確
認した。L−Leu−L−Leuの分解はSugiura,M.等(Bioc
him.Biophys.Acta 522 541−550,1978)の方法により測
定した。Lineweaber−BurkプロットによりKm,Vmaxの値
を算出した。その結果を第2表に示した。
実施例4 MDP cDNAの単離、同定 (1)プローブの造成 5gのヒト腎臓よりChirgwinらの方法(Chirgwin,J.M.
らBiochemistry 18,5294−5299,1979)に従い、4Mグア
ニジウムチオシアネートを用いて8mgのRNAを抽出した。
次に0.5M LiCl2,10mM EDTA及び0.5% SDSを含む10Mmト
リス塩酸緩衝液(pH7.2)を結合バッファーとして用
い、オリゴdTセルロースに結合したpoly(A)+RNA(mR
NA)700μgを分離した。得られたpoly(A)+RNA 1
μgを65℃3分間加温し、氷上で冷却した後、Amersham
社のcDNA合成キットを用いて(−)鎖のcDNAを合成し
た。その組成は以下の様である。
5×1stバッファー 4μ PPi 1μ HPRI 1μ dNTPs 2μ (dT)17アダプター(10A260/ml) 1μ 逆転写酵素(生化学的工業) 1μ 41℃で1時間保温した後、上記溶液を10mM Tris/HCl
1mM EDTA緩衝液(pH8.0)で1mlに希釈した。上記で得
られた(−)鎖cDNA1μに以下の溶液を加え95℃で5
分間加温後72℃に冷却した。
アダプター(1A260/ml) 3μ 3′MDP(10A260/ml) 1μ 10×Taqバッファー 10μ dNTPs(1.25mM) 16μ H2O 69μ その後、Taqポリメラーゼを0.5μ加えミネラルオイ
ルを重層し、58℃2分、72℃40分加温した後、Perkin−
Elmer−Cetus社のDNA Thermal Cyclerを用いてポリメ
ラーゼチェインリアクションを行った。反応は94℃1
分,58℃2分,72℃4分のステッププログラムにより30回
行った。
上記反応によって得られた産物を1.2%アガロース電
気泳動法により分離しエチジウムブロマイドで染色する
と0.8,1.1,1.4kbの位置にDNAのバンドが認められた。そ
こでMDPの部分アミノ酸配列に対応するオリゴデオキシ
ヌクレオチドHMDP1を32Pでラベルし、ハイブリダイゼー
ションを行ったところ1.4kbのバンドのみがハイブリダ
イズした。さらに制限酵素Sal Iで消化後1.4kbのバンド
を分画し、ジーンクリーンより回収し、Sal I消化したp
UC19ベクターにリクローニングした。プラスミドDNAを
常法通り調製し、Sangerらの方法に従い、塩基配列の解
析を行ったところ、アミノ末端のアミノ酸配列に対する
塩基配列を有していたので、この1.4kbをプローブと
し、cDNAライブラリーをスクリーニングすることとし
た。
(2)MDPのcDNAクローンの分離 上で得られた1.4kbのDNA断片を用いてClonetech社の
ヒト腎臓及びヒト胎盤cDNAライブラリーについてスクリ
ーニングを行った。ヒト腎臓cDNAライブラリーより1.0
×106個のクローンを一夜培養したE.coli C600Hfl株に
感染させ、トップアガーとともにLB寒天プレート上で一
夜37℃で培養した。次にニトロセルロースフィルターを
トップアガー上に置き約30秒後フィルターをはがし、0.
5N NaOHに浸し、つづいて0.5M NaClを含む0.5Mトリス
塩酸緩衝液で中和し、3×SSC(SSC:0.15M NaCl,0.015
Mクエン酸ナトリウム)に浸した。風乾後80℃で2時間
焼きつけを行った。続いて上記で得られた1.4kbのDNA断
片をNick−translationキット及びα−32P−dCTPを用い
てラベルし、これをプローブとして上記フィルターに固
定化されたDNA分子とのハイブリダイゼーションを行っ
た。用いたプローブの比活性は約1×108cpm/μgであ
り5×106cpm/mlの濃度でハイブリダイゼーションに用
いた。ハイブリダイゼーションは、0.5×Denhardt′s
solution(0.2%BSA,0.2%Ficolおよび0.2%ポリビニ
ルピロリドンからなる)100μg/mlのサケ精巣DNAを含む
3×SSC中で65℃にて16時間行った。次にフィルターを
6×SSC,0.1%SDS中で65℃にて30分間ずつ2回洗浄し、
風乾後X線フィルムに感光させた。この操作で4個のポ
ジティブクローンが得られた。またヒト胎盤cDNAライブ
ラリーより2.5×105クローンをE.coli Y1090株に感染
後上記と同様の操作を行い、1個のポジティブクローン
を得た。
次にこれらのクローンよりファージDNAを常法により
分離し、EcoR I消化を行い挿入されているcDNAの大きさ
を調べたところヒト腎臓由来のクローンは0.9,1.1,1.2,
1.4kbであり、ヒト胎盤由来のクローンは1.8kbであっ
た。さらに種々の制限酵素による切断パターンの比較よ
り、上記5クローンは同じmRNAに由来しているものと考
えられたのでヒト腎臓由来の1.4kb(MDP7)及びヒト胎
盤由来の1.8kb(MDP4)をM13ベクターにクローニング
し、Sangerらの方法により塩基配列の決定を行った。そ
の結果、両クローンは第1図に示す様に、MDPのトリプ
シン分解断片のアミノ酸配列に対応する塩基配列を含ん
でおり、これらのクローンはMDPのcDNAを含むことが認
められた。そこで、次にクローンMDP4及びMDP7について
cDNAの前塩基配列を決定した。挿入DNA領域の塩基配列
決定に利用した制限酵素切断部位と塩基配列決定のスト
ラテジーを第8図に示した。図中塩基配列決定の方法は
矢印で示した。MDP4らに挿入されたcDNAの塩基配列およ
びその塩基配列に対応するアミノ酸配列を第1図に示し
た。当該挿入cDNAの配列には、翻訳開始コドンATGから
始まり、終始コドンTGAで終わる長い翻訳可能配列(オ
ープンリーディングフレーム)が存在し、アミノ末端ア
ミノ酸配列の解析の結果より16アミノ酸からなるシグナ
ルペプチドが存在することが示された。したがってMDP
は395個のアミノ酸から成ることが明らかになった。ト
リプシン分解断片のアミノ酸配列はすべてこの中に存在
しており、得られたcDNAは間違いなくMDPのものと判断
された。第1図に於て380番目から395番目のアミノ酸配
列は疎水性に富んでおり、その構造から、この部分がプ
ロセッシングされ、フォスファチジルイノシトールを介
して膜に共有結合しているものと推定される。また第1
図の塩基配列において3′末端付近に真核細胞メッセン
ジャーRNAのポリA配列上流に一般的にみられるAATAAA
が存在している。更に、MDP分子中には4個のN−糖鎖
結合可能部位が存在することが示唆された。
実施例5 MDP cDNAの動物細胞での発現 実施例4で得られたpUC19ベクターにリクローニング
されたMDP4のcDNAをEcoR Iで消化後アガロースゲル電気
泳動法により分離しジーンクリーンを用いて回収し、発
現ベクターpdKCR−dhfrにリクローニングした。E.coli
JM109株に形質転換し得られた形質転換体のプラスミドD
NAを常法どうり調製し制限酵素による消化断片の比較よ
り発現ベクターpdKCR−dhfrにおけるSV40由来のプロモ
ーターの転写方向とMDP cDNAの転写方向の同じプラス
ミド、また逆向きのプラスミドを得た。逆向きに挿入さ
れたプラスミドはCOS−1細胞における発現のコントロ
ールとした。両プラスミドDNAを常法どうり調製し、そ
の10μgをトランスフェクションの前日に植え継いだ1
×106個のCOS−1細胞(100mmシャーレ,DMEM倍地)にCe
ll Phect Transfection Kit(Pharmacia社)を用い
てトランスフェクションとした。トランスフェクション
の3日後に培養上清を集めた。細胞はPBSで2回洗浄
し、Disposable Cell Scraper(Costar社)により回
収し2000rpmで5分遠心し上清を捨て回収した。回収し
た細胞は120mMのオクチル−β−D−グリコシドを含む1
0mM Tris/HCl pH7.4 1mM MgCl2,20μM ZnSO4500
μにサスペンドし4℃で2時間放置した。10000rpmで
10分遠心し、上清についてGDPAを基質としてMDP活性を
測定した。また蛋白量をウシ血清アルブミンを標準とし
たLowry法(Lowry.O.H.et al,J.Biol.Chem.,193,265−
275,1951)により測定した。第3表に示す様にコントロ
ールの細胞ではMDP活性は見いだされないのに対してト
ランスフェクションした細胞では細胞抽出物及び培養上
清にMDP活性が認められた。
全てのサンプル調製物は基質として50μMのGDPAを用
いて検定を行った。
a: 各4つの調製物についての平均値±標準偏差値 なお、本発明の遺伝子を含む発現ベクターを寄託する
ため、このベクターにより形質転換された宿主細胞(CH
O細胞)はCHO MDP cell SBM307と命名され、工業技
術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第11130号(FER
M P−11130)として寄託されている。
(発明の効果) 本発明により、ペネム、カルバペネム系抗生物質とMD
Pの反応様式(蛋白側の接触部位の同定、立体構造な
ど)が推測可能となり、このことはよりMDPに対して安
定なペネム、カルバペネム系β−ラクタム抗生物質の開
発にきわめて役立つものと考えられる。また、本発明に
より、MDPを遺伝子工学的手法を用いて製造することが
可能となり、実験的に大量に利用できることになる。ま
た遺伝子が得られたことから、種々の病態におけるMDP
の存在状態をmRNA合成という観点より解析することが可
能となった。このように本発明の利用分野は多岐に渡
り、その利用価値は大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、MDP活性を有するポリペプチドのアミノ酸配
列及び該アミノ酸配列をコードする遺伝子を示すもので
あり、 第2図は、アフィニティークロマトグラフィーによるMD
Pの精製における溶出パターンを示すグラフであり、 第3図Aは、MDP標品のSDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動のパターンを示す図であり、1は分子量マーカ
ー、2は還元条件下のMDP標品、3は非還元条件下のMDP
標品を泳動したものである。 第3図Bは、MDP標品のウェスタンブロットのパターン
を示す図であり、4はPre−Stained SDS PAGE STAND
ARDS(BioRad社)、5は還元条件下のMDP標品、6は非
還元条件下のMDP標品をウェスタンブロットしたもので
ある。 第4図は、ConA−Sepharoseカラムによる溶出パターン
を示すチャートであり、矢印はメチル−α−D−マンノ
ピラノシドによる溶出開始点を示す。 第5図Aは、MDP標品のエンドグリコシダーゼ感受性を
示すSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のパターン
を示す図であり、1は分子量マーカー、2は非処理のMD
P標品、3はエンドグリコシダーゼFとともに保温したM
DP標品であり、 第5図Bは、MDP標品のエンドグリコシダーゼ感受性を
示すウエスタンブロットのパターンを示す図であり、4
は非処理のMDP標品、5はエンドグリコシダーゼFとと
もに保温したMDP標品であり、 第6図は、ConA−Sepharoseカラムによる溶出パターン
を示す図であり、1は等電点マーカー、2は非処理のMD
P、3はエンドグリコシダーゼFとともに加温したMDP標
品であり、 第7図は、MDP標品のトリプシン分解断片のHPLCによる
分画パターンであり、 第8図は、クローンMDP4,MDP7の塩基配列に用いた制限
酵素の切断部位とストラテジーを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻本 雅文 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1 号 サントリー株式会社生物医学研究所 内 (72)発明者 中里 紘 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1 号 サントリー株式会社生物医学研究所 内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 15/57 - 15/59 C12N 9/48 - 9/76 C07K 14/47 WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG) MEDLINE(STN) Geneseq/Geubank/EMB L/DDBJ/PIR/Swisspro t

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも以下のアミノ酸組成(mol
    %): Asp/Asn12.73,Thr5.24,Ser7.40,Gln/Glu11.49,Pro6.80,
    Gly7.57,Ala7.88,Val8.59,Met1.76,Ile3.32,Leu11.09,T
    yr2.66,Phe3.30,Lys2.50,His1.97,Arg5.71 及び以下のN末端アミノ酸配列: を有し、 分子量:約62kDa(還元条件下)、約130kDa(非還元条
    件下) 等電点(pI):5.9〜6.3 及び糖鎖を有する新規ポリペプチド。
  2. 【請求項2】下記に記載されるアミノ酸配列を有する請
    求項第1項記載の新規ポリペプチド。
  3. 【請求項3】請求項第1項記載の新規ポリペプチドをコ
    ードする下記の制限酵素地図で表される遺伝子。
  4. 【請求項4】下記に記載されるアミノ酸配列をコードす
    る遺伝子。
  5. 【請求項5】新規ポリペプチドの製造法において、下記
    に記載されるアミノ酸配列をコードする遺伝子含有する
    発現プラスミドにより宿主細胞をトランスフェクトし、
    該宿主細胞を培養することにより該ポリペプチドを発現
    させ、該宿主細胞及び培養上清を回収、精製することに
    より該ポリペプチドを得ることを特徴とする製造法。
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