JP3067361B2 - 高分子量脂肪族ポリエステルを用いて成形してなるフィルム - Google Patents

高分子量脂肪族ポリエステルを用いて成形してなるフィルム

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フィルム形成に必要な
熔融時の粘度と分岐構造を有し、且つウレタン結合を含
む高分子量の脂肪族ポリエステルを用いて成形された実
用上十分な強度を有するフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、フィルム、成形品、繊維などの成
形に用いられていた高分子量ポリエステル(ここでいう
高分子量ポリエステルとは、数平均分子量が10,00
0以上を指すものとする)は、テレフタル酸(ジメチル
エステルを含む)とエチレングリコールの縮合体である
ポリエチレンテレフタレートに限られる、といっても過
言ではなかった。テレフタル酸の代りに、2,6−ナフ
タレンジカルボン酸を用いた例もあるが、ジカルボン酸
に脂肪族タイプを使用してポリエステルを合成し、これ
をフィルム、成形品、繊維などに成形し、実用化された
例は皆無といってよい。
【0003】実用化されていない理由の一つは、たとえ
結晶性であったとしても、脂肪族ポリエステルの融点は
100℃以下のものがほとんどであり、その上熔融時の
熱安定性に乏しいこと、ポリエステルの成分によって
は、例えばグリコール成分としてエチレングリコールを
用いた場合のように、熔融粘度が比較的低く、フィルム
形成性、例えばインフレーション法によるフィルム形成
性が必ずしも十分でないこと、さらに重要なことは脂肪
族ポリエステルの性質、特に引張り強さで代表される性
質が、ポリエチレンテレフタレートと同一レベルの数平
均分子量でも、著しく劣った値しか示さず、実用性がま
ったく見出せなかったからに他ならない。脂肪族ポリエ
ステルの数平均分子量をより上昇させて物性向上を期待
する研究は、その熱安定性の不良から十分に進展してい
ないように思われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熔融時の熱
安定性に優れ、実用的な機械的強度を有するフィルムを
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特にフィ
ルム形成に必要な熔融粘度を高めるために、ポリエステ
ルの数平均分子量(MN)と、重量平均分子量(MW)との比
率(MW/MN)を極力大きくすべく検討を重ねた結果、グ
リコール成分にペンタエリスリットを併用し、脂肪族
(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはその酸無水物)
成分と反応させて得られる、数平均分子量が10,00
0以上、望ましくは15,000以上で末端基が実質的
にヒドロキシル基であるポリエステル100重量部に、
0.1〜3重量部の多価イソシアナートを、該ポリエス
テルの融点以上の熔融状態で反応させて得られる、高分
子量脂肪族ポリエステルが実用上十分な高分子量を有
し、フィルム成形に必要な熔融時の粘度を有し、これか
ら成形されたフィルムは熱安定性に優れ、実用的な機械
的強度を有することを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0006】即ち、本発明は、(1)(イ)グリコール成
分、(ロ)脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(また
はその酸無水物)成分、(ハ)ペンタエリスリット の3成分を反応して得られる、数平均分子量が10,0
00以上で末端基が実質的にヒドロキシル基である融点
60℃以上のポリエステル100重量部に、 (2)該ポリエステルの融点以上の熔融状態で、0.1〜
3重量部の多価イソシアナートを反応させて得られる、
高分子量脂肪族ポリエステルを用いて成形してなるフィ
ルムに関する。
【0007】ペンタエリスリットを適量併用すると、ポ
リエステルに分岐構造を導入することができ、多価イソ
シアナートの添加、反応と相俟って、数平均分子量に比
し、重量平均分子量を著しく増大させることが可能とな
る。
【0008】本発明に利用可能なグリコール成分は、ポ
リエステルの融点が60℃以上といった点から、エチレ
ングリコール、ブタンジオール1,4、ヘキサンジオー
ル1,6、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが
一般的であり、特にエチレングリコール、ブタンジオー
ル1,4が本発明には好適である。
【0009】本発明において、グリコール成分と併用す
る多価アルコールは、4官能のペンタエリスリットであ
る。ペンタエリスリットの使用割合は、グリコール成分
100モル%に対して3モル%以下0.1モル%以上、
望ましくは0.1〜2モル%であることが好ましい。ペ
ンタエリスリットは、反応当初から加えてもよく、また
反応の途中から添加してもよい。
【0010】ペンタエリスリットの使用割合が0.1モ
ル%未満では添加の意味が薄れ、3モル%より多い場合
は反応中にゲル化の危険性が増大する。
【0011】以上のクリコール成分とペンタエリスリッ
トからなる混合多価アルコールと併用し、エステル化、
脱グリコール反応によりポリエステルを得るための脂肪
族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはその酸無水
物)成分には、カルボキシル基間のメチレン基の数が偶
数である種類が、融点を60℃以上に保つのに有利であ
る。それらの例としては、コハク酸、アジピン酸、スベ
リン酸、セバシン酸、ドデカン酸があげられる。勿論こ
れら相互の併用も可能である。
【0012】ポリエステルの合成は、一般にエステル化
および脱グリコール反応により行われ、脱グリコール反
応には金属の無機並びに有機の化合物が必要量併用され
る。かくして得られたポリエステルの数平均分子量は、
10,000以上であることが必要である。数平均分子
量が10,000未満では、多価イソシアナートの添加
量が多くなり、ゲル化の危険性が急増する。
【0013】さらに、本発明の構成要素である生成した
数平均分子量10,000以上、望ましくは15,00
0以上の末端基が実質的にヒドロキシル基であるポリエ
ステルに、さらに分子量を高めるために加えられる多価
イソシアナートには特に制限はないが、例えば市販の次
の種類があげられる。2,4−トリレンジイソシアナー
ト、2,4−トリレンジイソシアナートと2,6−トリ
レンジイソシアナートとの混合体、ジフェニルメタンジ
イソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナー
ト、キシリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジ
イソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イ
ソホロンジイソシアナート、特に、ヘキサメチレンジイ
ソシアナートが、生成樹脂の色相、ポリエステル添加時
の反応性、などの点から好ましい。また、3官能のイソ
シアナートを用いることもできる。
【0014】これら多価イソシアナートの添加量は、分
子量にもよるが、ポリエステル100重量部に対して
0.1〜3重量部、望ましくは0.5〜2重量部であ
る。多価イソシアナートの添加量が0.1重量部未満で
は、本発明の効果が得られず、また3重量部より多い場
合はゲル化の危険が生じる。
【0015】添加は、ポリエステルが均一な熔融状態で
溶剤を含まず、容易に撹拌可能な条件下で行われること
が望ましい。別に、固形状のポリエステルに添加し、エ
クストルーダーを通して熔融、混合することも不可能で
はないが、一般にはポリエステル製造装置内か、或は熔
融状態のポリエステル(例えばニーダー内での)に添加
することが実用的である。
【0016】本発明の分岐構造を有し、ウレタン結合を
含む高分子量脂肪族ポリエステルは、インフレーション
法、T−ダイス法などの成形法によってフィルムまたは
シート化される。従って、本発明ではフィルムおよびシ
ートを含めてフィルムと称する。
【0017】分岐構造を有し、ウレタン結合を含む高分
子量脂肪族ポリエステルから1軸または2軸延伸フィル
ムを得るには、ポリエステルを通常のT−ダイまたは環
状ダイから、フラット状またはチューブ状に170〜2
00℃で押出成形し、得られた未延伸物を1軸延伸また
は2軸延伸する。例えば1軸延伸の場合、フィルム、シ
ート状の場合はカレンダーロールなどで押出方向に、ま
たはテンターなどで押出方向と直交する方向に延伸し、
チューブ状の場合はチューブの押出方向または円周方向
に延伸する。
【0018】2軸延伸の場合、フィルム、シート状の場
合には押出フィルムまたはシートをロールなどで縦方向
に延伸した後テンターなどで横方向に延伸し、チューブ
状の場合にはチューブの押出方向およびチューブの円周
方向、即ちチューブ軸と直角をなす方向にそれぞれ同時
に、または別々に延伸する。延伸温度は室温〜90℃で
あり、必要に応じ選択される。また、延伸倍率は用途に
よって適宜選定される。
【0019】本発明による、分岐構造を有し、ウレタン
結合を含むポリエステルを用いて成形された1軸延伸ま
たは2軸延伸フィルムは、頗る強靭であり、包装フィル
ム、農業用マルチフィルムに利用可能である。また、本
発明のフィルムは生分解性でもある。
【0020】本発明の高分子量脂肪族ポリエステルを使
用するに際しては、必要に応じて、滑剤、ワックス類、
着色剤、フィラーなどを併用できることは勿論である。
【0021】
【実施例】次に、本発明の理解を助けるために、以下に
実施例を示す。
【0022】実施例1 撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付し
た1lのセパラブルフラスコに、エチレングリコール2
00g、ペンタエリスリット4g(約1モル%)、コハク酸
354g、テトライソプロピルチタネート0.05gを仕
込み、200〜205℃、窒素気流中でエステル化して
酸価8.1とした後、温度210〜215℃で最終的に
0.5Torrの減圧下、4時間脱グリコール反応を行っ
た。
【0023】数平均分子量18,100、重量平均分子
量88,000のポリエステル(a)が得られた。なお、
分子量の測定は、Shodex GPC SYSTEM
−11による。溶離液CF3COONa,5mmol/HFIP
(ヘキサフロロイソプロパノール,1l),カラム温度
40℃,流量1.0mol/min,検出器Shodex R
Iで行った。
【0024】ポリエステル(a)を215℃に加熱し、ヘ
キサメチレンジイソシアナート6gを加えた。粘度は急
速に増大したが、ゲル化はしなかった。
【0025】得られたウレタン結合を含み、分岐構造を
有するポリエステル(A)は、淡アイボリー調のワックス
状で融点が95℃、数平均分子量が41,000、重量
平均分子量が244,000、MW/MNが約6であっ
た。JIS−K−7210で規定されたメルトフロー測
定では、サンプル5g、温度190℃、荷重0.325
kgで4.4g/10分を示した。
【0026】ポリエステル(A)を用いて、200℃で
T−ダイ法により厚さ70μのフィルムを製造し、これ
を50℃で3倍に1軸延伸したフィルムの引張り強さ
は、13.7kg/mm2であり、頗る強靭で人力で引裂くこ
とはできなかった。しかるに、ポリエステル(a)からの
フィルムは、T−ダイでは巻取る時に切断し、目的とす
るフィルムが得られなかった。
【0027】実施例2 撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付し
た1lのセパラブルフラスコに、ブタンジオール1,4
を200g、ドデカン酸460g、ペンタエリスリット3
g(約0.8モル%)、テトライソプロピルチタネート
0.06gを仕込み、窒素気流中、200〜205℃で
エステル化して酸価6.4とした後、215〜220
℃、最終的には0.6Torrの減圧下、6時間脱グリコー
ル反応を行い、数平均分子量15,700、重量平均分
子量88,000のポリエステル(b)を合成した後、温
度200℃で、イソホロンジイソシアナート8gを加え
た。粘度は急速に増大したが、ゲル化はしなかった。
【0028】融点72℃、淡黄褐色ワックス状のウレタ
ン結合を含み、分岐構造を有するポリエステル(B)が、
数平均分子量38,000、重量平均分子量211,00
0で得られ、MW/MNは約6となった。
【0029】JIS−K−7210で規定されたメルト
フロー測定では、サンプル量5g、温度190℃、荷重
2.16kgで、ポリエステル(B)は0.01g/10分
以下であった。170℃でプレス成形して得られた75
〜80μのフィルムを4倍延伸した時のポリエステル
(B)を用いたフィルムの引張り強さは13.1kg/mm2
示し、頗る強靭であった。しかるに、ポリエステル(b)
よりのフィルムは、延伸途中で破断し、強度測定が行え
なかった。
【0030】
【発明の効果】本発明の分岐構造を有し、ウレタン結合
を含む高分子量脂肪族ポリエステルから成形されたフィ
ルムは、生分解性を有し、熱安定性および引張り強さに
優れており、包装フィルム、農業用マルチフィルムなど
として有用である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)(イ)グリコール成分、 (ロ)脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはそ
    の酸無水物)成分、 (ハ)ペンタエリスリット の3成分を反応して得られる、数平均分子量が10,0
    00以上で末端基が実質的にヒドロキシル基である融点
    60℃以上のポリエステル100重量部に、 (2)該ポリエステルの融点以上の熔融状態で、0.1〜
    3重量部の多価イソシアナートを反応させて得られる、
    高分子量脂肪族ポリエステルを用いて成形してなるフィ
    ルム。
  2. 【請求項2】 ペンタエリスリットの使用割合が、グリ
    コール成分100モル%に対して、3モル%以下、0.
    1モル%以上である、請求項1記載の高分子量脂肪族ポ
    リエステルを用いて成形してなるフィルム。
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