JP2976847B2 - ブロックポリエステルの製造方法 - Google Patents

ブロックポリエステルの製造方法

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JP2976847B2 JP7153446A JP15344695A JP2976847B2 JP 2976847 B2 JP2976847 B2 JP 2976847B2 JP 7153446 A JP7153446 A JP 7153446A JP 15344695 A JP15344695 A JP 15344695A JP 2976847 B2 JP2976847 B2 JP 2976847B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生分解可能なブロック
ポリエステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、生分解性を示す樹脂は、天然物は
別として、脂肪族ポリエステルのみといっても過言では
なく、それらは大別して(i)開環重付加によるものと、
(ii)重縮合反応により合成されるタイプとに分けられ
る。(i)の開環重付加により得られる代表的なポリエス
テルは、ポリ乳酸である。このポリ乳酸は、数平均分子
量が10万以上にも達し、融点も187℃となって、透
明性が良く、一見非結晶の硬いポリエステルである。し
かし、このポリ乳酸は、脆い傾向があり、かつ熱安定性
に乏しいため、融点以上の温度に数分〜数十分間保持す
ると、著しく分子量の低下が起ることも知られており、
例えば数平均分子量が約20万のポリ乳酸を200℃で
20分保持しただけで、分子量が約7万となった例も知
られている。このことは、物性面は当然のことである
が、成形性にも著しい悪影響を及ぼすことになる。
【0003】一方、(ii)の重縮合反応により得られる
代表的なポリエステルは、昭和高分子株式会社で開発
し、現在市販に供されている融点が70℃以上で、分子
中に1〜2個のウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル
(商品名,ビオノーレ)が知られている。この脂肪族ポ
リエステルは、熱安定性が良好で、例えば200℃で3
0分間保持しても、ほとんど分子量の低下はみられず、
成形性も損なわれないという特長を有している。しか
し、この脂肪族ポリエステルは、その融点が120℃以
下で、脂肪族ポリエステルの性状も結晶性のため白色ワ
ックス状を呈しており、半硬質とも呼ぶべき性質を示
す。すなわち、この脂肪族ポリエステルの融点は、ポリ
チレンなみで必ずしも高いとは言えない上、成形品は透
明性に欠ける傾向がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来技術の欠点を解決し、脂肪族ポリエステルとして
は高い融点を示しながら、熱安定性があって成形性が良
く、物性のバランスのとれた生分解性ブロックポリエス
テルの製造方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々検討
を重ねた結果、特定の脂肪族ポリエステルとポリ乳酸と
を併用することにより、両者のポリエステルのそれぞれ
の欠点を補い合うことができ、さらにこれに適量の多価
イソシアナート化合物を添加反応させることにより、上
記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するこ
とができた。すなわち、本発明は、〔I〕(1)融点が
70℃以上、数平均分子量が10,000以上で、末端
基が実質的にヒドロキシル基である脂肪族ポリエステル
1〜99重量%と(2)数平均分子量が10,000以
上のポリ乳酸99〜1重量%とを、(3)リン化合物の
存在下に溶融混合し、次いで前記(1)の脂肪族ポリエ
ステルおよび(2)のポリ乳酸の合計100重量部に対
して、〔II〕0.1〜5重量部の多価イソシアナート化
合物を添加反応させて、数平均分子量を30,000以
上とすることを特徴とする、ブロックポリエステルの製
造方法を提供するものである。
【0006】また本発明は、(3)のリン化合物の使用
量が、(1)の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ乳酸の
合計100重量部に対して、0.001〜3重量部であ
る、前記のブロックポリエステルの製造方法を提供する
ものである。
【0007】さらに本発明は、(3)のリン化合物が、
リン酸およびそのアルキルエステル類、ホスホン酸有機
エステル類、亜リン酸、亜リン酸の有機エステル類およ
びポリリン酸からなる群から選ばれた少くとも1種の無
機または有機リン化合物である、前記のブロックポリエ
ステルの製造方法を提供するものである。
【0008】さらにまた本発明は、〔I〕(1)融点が
70℃以上、数平均分子量が10,000以上で、末端
基が実質的にヒドロキシル基である脂肪族ポリエステル
1〜99重量%および(2)数平均分子量が10,00
0以上のポリ乳酸99〜1重量%からなり、前記(1)
の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ乳酸の合計100重
量部に対して、〔II〕0.1〜5重量部の多価イソシア
ナート化合物を添加反応させるに際し、予め溶融状態の
(1)の脂肪族ポリエステルに多価イソシアナート化合
物を添加反応させた後、(2)のポリ乳酸を添加し、溶
融反応させて、数平均分子量を30,000以上とする
ことを特徴とする、ブロックポリエステルの製造方法を
提供するものである。
【0009】以下、本発明をさらに詳細に説明する。本
発明でいう脂肪族ポリエステルとは、脂肪族(環状脂肪
族を含む)グリコール(以下、グリコール類と略称す
る)と脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸または
その酸無水物(以下、脂肪族ジカルボン酸と略称する)
との2成分、あるいは必要に応じて、これに第三成分と
して、3官能または4官能の多価アルコール、オキシカ
ルボン酸および多価カルボン酸(またはその酸無水物)
から選ばれる少くとも1種の多官能成分を加えて反応し
て得られる、融点が70℃以上、数平均分子量が10,
000以上で、末端基が実質的にヒドロキシル基の脂肪
族ポリエステルである。
【0010】使用されるグリコール類としては、例えば
エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,
10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオー
ル、並びにそれらの混合物があげられる。
【0011】脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハ
ク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,10
−デカンジカルボン酸、無水コハク酸、1,4−シクロ
ヘキサンジカルボン酸、並びにそれらの混合物等があげ
られる。
【0012】これらのグリコール類および脂肪族ジカル
ボン酸の他に、必要に応じて、これに第三成分として、
3官能または4官能の多価アルコール、オキシカルボン
酸および多価カルボン酸(またはその酸無水物)から選
ばれる少くとも1種の多官能成分を加えて反応させても
良い。この第三成分を加えることにより、分子に長鎖の
枝分れを生じ、分子量が大となるとともにMw/Mnが
大となり、すなわち分子量分布が広くなって、フィルム
やシート等の成形に望ましい性質を付与することができ
る。添加される第三成分の量は、ゲル化の危険がないよ
うにするためには、脂肪族ジカルボン酸の成分全体10
0モル%に対して3官能の場合は0.1〜5モル%であ
り、4官能の場合は0.1〜3モル%である。3官能ま
たは4官能の第三成分の例としては、トリメチロールプ
ロパン、グリセリンおよびペンタエリスリット等の多価
アルコール、リンゴ酸、クエン酸並びに酒石酸等のオキ
シカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット
酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペ
ンタンテトラカルボン酸無水物等の多価カルボン酸(ま
たはその酸無水物)があげられる。
【0013】上記の成分を用いて、通常のエステル化反
応および脱グリコール反応により脂肪族ポリエステルが
合成される。脱グリコール反応触媒としては、例えばア
セトアセトイル型チタンキレート化合物、並びに有機ア
ルコキシチタン化合物等のチタン化合物があげられる。
これらの例としては、例えばジアセトアセトキシオキシ
チタン(日本化学産業(株)社製“ナーセムチタン”)、
テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テト
ラブトキシチタン等があげられる。チタン化合物の使用
割合は、生成する脂肪族ポリエステル100重量部に対
して0.001〜1重量部、望ましくは0.01〜0.
1重量部である。チタン化合物はエステル化の最初から
加えても良く、また、脱グリコール反応の直前に加えて
も良い。
【0014】エステル化反応は、160〜230℃、5
〜16時間、好ましくは不活性ガス雰囲気下で実施する
ことができる。この温度より低温では反応速度が遅く実
用性に乏しい。またこの温度より高温では分解の危険性
が高くなり避けた方が良い。従って180〜220℃の
間の温度で第1段のエステル化反応を実施することが好
ましい。エステル化反応は、脂肪族ポリエステルの酸価
が30以下、好ましくは15以下、さらに好適には10
以下に達するまで実施される。この場合、分子量が大き
い程脱グリコール反応による分子量増大が円滑に行える
ので、高分子量のものが望ましい。脱グリコール反応
は、5Torr以下の減圧下、170〜230℃で2〜16
時間実施される。より好適には、1Torr以下の高真空
下、180〜220℃で実施することが、反応速度およ
び分解防止の点から望ましい。得られる脂肪族ポリエス
テルは、末端基が実質的にヒドロキシル基であり、酸価
はゼロとなる。
【0015】このようにして得られる脂肪族ポリエステ
ルは、生分解性であることが必須であり、融点が70℃
以上、数平均分子量が10,000以上で、末端基が実
質的にヒドロキシル基であることが必要である。脂肪族
ポリエステルの融点が70℃未満では、耐熱性が不十分
であり、また数平均分子量が10,000未満では必要
な物性と成形性を得るための多価イソシアナート化合物
の使用量が多くなり、その結果ゲル化の危険性が著しく
大きくなる。
【0016】なお、本発明に使用される脂肪族ポリエス
テルは、上記の特定条件を満たせば、市販されているも
のを使用することができ、例えば、昭和高分子株式会社
製の“ビオノーレ”があげられる。本発明において、特
に好ましく使用される脂肪族ポリエステルは、1,4−
ブタンジオール、エチレングリコールおよび1,4−シ
クロヘキサンジメタノールより選ばれた少くとも1種の
グリコール類に、他のグリコール類を併用するかあるい
はせずに、コハク酸を反応させたタイプである。この場
合、コハク酸の一部を生成脂肪族ポリエステルの融点を
70℃未満としない範囲で、アジピン酸、セバシン酸、
ドデカン二酸等の長鎖二塩基酸で置換したタイプであっ
ても良い。
【0017】本発明に使用されるポリ乳酸は、特にその
合成方法、並びに物性に制限はないが、実用的見地から
するならば、L−乳酸の環状ダイマーを精製し、開環重
付加により合成される数平均分子量10,000以上、
望ましくは50,000以上で、融点が170℃以上が
良い。その理由は、脂肪族ポリエステルとポリ乳酸との
配合割合にもよるが、ブロックポリエステルの外見上の
融点は、高融点成分により決められるからである。ポリ
乳酸の数平均分子量が10,000未満では、成形が困
難である上、脆く実用に耐えない。
【0018】(1)融点が70℃以上、数平均分子量が
10,000以上で、末端基が実質的にヒドロキシル基
である脂肪族ポリエステルと、(2)数平均分子量が1
0,000以上のポリ乳酸との配合割合は、脂肪族ポリ
エステル1〜99重量%とポリ乳酸99〜1重量%であ
り、好ましくは脂肪族ポリエステル10〜90重量%と
ポリ乳酸90〜10重量%からなる。脂肪族ポリエステ
ルの配合割合が1重量%未満またはポリ乳酸の配合割合
が99重量%より多い場合は、熱安定性に乏しく、成形
性や機械的特性が十分満足すべきブロックポリエステル
が得られない。また、脂肪族ポリエステルの配合割合が
99重量%より多い場合またはポリ乳酸の配合割合が1
重量%未満の場合は、ブロック化の効果が現われない。
【0019】本発明の第1の方法は、(1)の脂肪族ポ
リエステル1〜99重量%と(2)のポリ乳酸99〜1
重量%とを、(3)リン化合物の存在下に溶融混合し、
次いで前記(1)の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ
乳酸の合計100重量部に対して、多価イソシアナート
化合物0.1〜5重量部を添加反応させ、以て数平均分
子量が30,000以上のブロックポリエステルとする
ことよりなる。
【0020】(1)の脂肪族ポリエステルと(2)のポ
リ乳酸とを溶融混合するに際して、リン化合物を併用す
る理由は、エステル化並びに開環重付加の際に使用した
触媒の作用を停止させることにある。触媒の活性を減殺
しなければ、脂肪族ポリエステルとポリ乳酸を溶融混合
する際にエステル交換が起って、融点、物性が著しく変
化する等の欠点を生ずる。
【0021】このために使用されるリン化合物として
は、次の種類の無機または有機リン化合物があげられ
る。 (イ)リン酸およびそのアルキルエステル類 市販品としては、トリアルキルエステルであるトリメチ
ルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチル
ホスフェート等がある。 (ロ)ホスホン酸有機エステル類 入手可能な市販品としては、ジブチルブチルホスホネー
トがあげられる。 (ハ)亜リン酸 単独、または他のリン化合物と併用し、最も強力な色相
安定効果、並びに酸化分解防止的な働きが認められる。 (ニ)亜リン酸の有機エステル類 例えばジブチル水素ホスファイトが市販されており、本
発明に利用可能である。トリフェニルホスファイトも量
を加えれば効果があり、0.1〜0.5%添加で有用で
あるが、ポリエステルの特性を低下させる傾向もある。 (ホ)その他の無機リン化合物 例えばポリリン酸である。
【0022】リン化合物の使用量は、リン化合物の分子
量(リン原子の含有率)によっても相違するが、一般に
は(1)の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ乳酸の合
計100重量部に対して、0.001〜3重量部、好ま
しくは0.01〜1重量部である。リン化合物の使用量
が0.001重量部未満では、添加の効果が認められ
ず、3重量部より多い場合は効果が増すことがない。
【0023】さらに本発明では、多価イソシアナート化
合物の所望量を、リン化合物の存在下に(1)の脂肪族
ポリエステルと(2)のポリ乳酸を溶融混合したものに
添加反応させることにより、得られるブロックポリエス
テルの数平均分子量を30,000以上とする。
【0024】使用される多価イソシアナート化合物とし
ては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート、2,
6−トリレンジイソシアナートと2,4−トリレンジイ
ソシアナートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシア
ナート、キシリレンジイソシアナート、1,5−ナフチ
レンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナ
ート、水素化キシリレンジイソシアナート、水素化ジフ
ェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソ
シアート、イソホロンジイソシアナート、トリフェニル
メタントリイソシアナート、並びにジイソシアナートと
多価アルコールとの付加体、さらにはジイソシアナート
の3量体である。中でも、ヘキサメチレンジイソシアナ
ート、水素化ジフェニルメタンジイソシアナート、水素
化キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシア
ナート、等の脂肪族並びに環状脂肪族のジイソシアナー
トがあげられる。
【0025】多価イソシアナート化合物の使用量は、
(1)の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ乳酸の合計
100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは
0.5〜3重量部である。多価イソシアナート化合物の
使用量が0.1重量部未満では添加の効果が乏しく、5
重量部を超える使用量ではゲル化の危険性を増大させ
る。
【0026】本発明の第2の方法は、(1)の脂肪族ポ
リエステル1〜99重量%と(2)のポリ乳酸99〜1
重量%からなり、前記(1)の脂肪族ポリエステルと
(2)のポリ乳酸の合計100重量部に対して、多価イ
ソシアナート化合物0.1〜5重量部を添加反応させる
に際し、予め溶融状態の(1)の脂肪族ポリエステルに
多価イソシアナート化合物を添加反応させた後、(2)
のポリ乳酸を添加し、溶融反応させ、以て数平均分子量
が30,000以上のブロックポリエステルとすること
よりなる。
【0027】この方法において、予め溶融状態の(1)
の脂肪族ポリエステルに多価イソシアナート化合物を添
加反応させた後、(2)のポリ乳酸を添加し、溶融反応
させる理由は、(2)のポリ乳酸の合成の際に、触媒と
して有機スズ化合物を用いた場合、この(2)のポリ乳
酸と(1)の脂肪族ポリエステルとを、リン化合物を使
用せずに同時に溶融混合し、これに多価イソシアナート
化合物を加えると、前記のエステル交換以外に、(2)
のポリ乳酸部分が急速に多価イソシアナート化合物と反
応するためか、ゲル化の起ることがあり、これを防止す
るためである。
【0028】多価イソシアナート化合物の添加量は、
(1)の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ乳酸の合計
100重量部に対して、0.1〜5重量部である。この
方法において、予め溶融状態の(1)の脂肪族ポリエステ
ルに多価イソシアナート化合物を添加する場合は、上記
の範囲内、すなわち0.1〜5重量部の範囲内の多価イ
ソシアナート化合物を一度に全量添加し、必要時間反応
させた後、ポリ乳酸を加え、均一溶融混合し、反応させ
ることによって、構造が一定し、物性の安定したブロッ
クポリエステルとすることができる。理由は必ずしも明
らかではないが、ブロック化により、ポリ乳酸の熱分解
性は大幅に改良され、実際の成形操作に支障ないように
なる。なお、上記でいう必要時間とは、混合物が均一
で、成形した場合、成形品例えばフィルムにムラや析出
物のなくなる時間であり、通常は15〜60分位であ
る。
【0029】以上のようにして得られた本発明のブロッ
クポリエステルは、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの混
合比率によっても成分が異なる可能性はあるが、考え方
の上では次の3種類のポリエステルの混合体と見做すこ
とができる。すなわち、 (ア)ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルのブロックポリエ
ステル。 (イ)脂肪族ポリエステル同志のイソシアナートによる
分子量増大。 (ウ)ポリ乳酸同志のイソシアナートによる連結。 実際には(ア)のポリ乳酸と脂肪族ポリエステルのブロッ
クポリマーが、(イ),(ウ)の相溶化剤の役割を果た
していることも想定される。本発明では以上を一括して
ブロックポリエステルと称することとする。
【0030】本発明で得られるブロックポリエステル
は、成形性、物性を保持するために、数平均分子量が3
0,000以上であることが必要である。
【0031】本発明によるブロックポリエステルは、そ
の実用化に当って無機並びに有機のフィラー、補強材、
離型剤、ワックス類、各種安定剤、着色剤等を必要に応
じて併用できることは勿論である。
【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、融点はDSC(示差走査熱量計)法によって測定
した。また、分子量測定は次のGPC測定により行っ
た。 Shodex GPC SYSTEM−11(昭和電工社
製) 溶離液 CF3COONa 5mM/HFIP(ヘキサフロ
ロイソプロパノール) サンプルカラム HFIP − 800P HFIP − 80M×2本 リファレンスカラム HFIP − 800R×2本 ポリマー溶液 0.1wt%,200μl カラム温度 40℃ 流量 1.0ml/分 圧力 30 kg/cm2 検出器 Shodex RI 分子量スタンダード PMMA(Shodex STANDA
RD M−75)
【0033】実施例1脂肪族ポリエステル(A)の合成 撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付し
た1リットルのセパラブルフラスコに、1,4−ブタン
ジオール284g、コハク酸348gを仕込み、窒素ガ
ス気流中、210〜215℃にてエステル化して酸価
9.1とした後、脱グリコール触媒としてテトライソプ
ロポキシチタン0.1gを加え、最終的には0.6Torr
の減圧下、215〜220℃で8時間脱グリコール反応
を行い、数平均分子量25,100、重量平均分子量5
7,000、融点114℃の白色ワックス状の脂肪族ポ
リエステル(A)を得た。
【0034】ポリ乳酸(B)の合成 クロロホルムで3回再結晶した環状乳酸ダイマー140
gを、ジブチルスズジラウレート0.05g、ラウリル
アルコール0.02gと混合した後、アンプルに入れ、
0.1Torrの減圧下、当初170℃、最終的には200
℃で20時間開環重付加を行った。この反応をそれぞれ
3回繰返し、合計して得られたポリ乳酸を粉砕し、アセ
トンで未反応ダイマーの抽出を行った後、加熱乾燥し
た。数平均分子量102,000、重量平均分子量約4
80,000、融点176℃、結晶化温度109℃のポ
リ乳酸(B)が得られた。
【0035】ブロックポリエステル(a)の合成 温度計、ガス導入管を付した250ccの加温ニーダー
に、ポリエステル(A)100gを入れ、窒素ガス気流
中、190℃に加熱溶融した後、ヘキサメチレンジイソ
シアナート1.5gを加え15分混練した後、ポリ乳酸
(B)50gを追加し、30分間溶融反応させた。得ら
れたブロックポリマー(a)は、数平均分子量52,0
00、重量平均分子量208,500、MFR(190
℃、荷重2.16kg)が10.6g/10分、DSC法
によって融点を測定した結果113.5℃と172.9
℃の2ケ所に融点が認められた。このもののDSC曲線
を図1に示す。このブロックポリエステルを190℃で
プレス成形し、常温で3倍に一軸延伸したところ、延伸
性が良好であり、厚さ約55μの一軸延伸フィルムは半
透明であり、その引張り強度(JIS K6760を用
いて測定)は、9.2kg/mm2であった。
【0036】実施例2ブロックポリエステル(b)の合成 温度計、ガス導入管を付した500ccの加温ニーダー
に、脂肪族ポリエステル(A)100gと、ポリ乳酸(B)
100g、さらに亜リン酸0.05gを仕込み、190
℃で均一に加熱溶融した後、ヘキサメチレンジイソシア
ナート2.6gを追加し、均一に混合した。この時点で
は急速な増粘は起らなかった。次いで、テトライソプロ
ポキシチタン0.1gを加えると速かに粘度が増大した
がゲル化はしなかった。加熱混合を開始してから、ほぼ
10分後にニーダーのモーターの撹拌抵抗が最大値を示
したので混合を中止し、溶融物を金属バットに注入、固
化させた。得られたブロックポリエステル(b)は、数
平均分子量70,100、重量平均分子量334,00
0で、DSC法によって測定した結果、114℃と18
7℃の2ケ所に融点を示した。このブロックポリエステ
ル(b)を190℃でプレス成形し、常温で3倍に一軸
延伸して厚さ約50μの半透明の延伸フィルムを得た。
この延伸フィルムの引張り強度は8.1kg/mm2であっ
た。
【0037】比較例1 実施例2において、亜リン酸0.05gを添加せず、同
一量の脂肪族ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)とを
190℃で同時溶融し、次いで同一量のヘキサメチレン
ジイソシアナートを加えた場合は、ポリ乳酸(B)のみ
がヘキサメチレンジイソシアナートと急速に反応してゲ
ル化し、脂肪族ポリエステル(A)から分離して、均一
なブロックポリエステルが得られなかった。
【0038】実施例3脂肪族ポリエステル(D)の合成 撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付し
た1リットルのセパラブルフラスコに、エチレングリコ
ール205g、ポリエチレングリコール(分子量40
0)20g、コハク酸354g、グリセリン2g、テト
ライソプロポキシチタン0.06gを仕込み、窒素ガス
気流中、195〜205℃にてエステル化して酸価9.
4とした後、温度215〜220℃で最終的に0.6To
rrの減圧下、8時間脱グリコール反応を行った。得られ
た脂肪族ポリエステル(D)は、淡黄色ワックス状で、
融点101℃、数平均分子量54,500、重量平均分
子量468,000、MFR10.9g/10分であっ
た。
【0039】ブロックポリエステル(d)の合成 実施例1と同様のニーダーに、脂肪族ポリエステル
(D)70gを仕込み、窒素ガス気流中、190℃で加
熱溶融させた後、混練しながらヘキサメチレンジイソシ
アナート1gを加え15分さらに混練した後、ポリ乳酸
(B)70gを加え、さらに30分混練し、均一化した。
得られたブロックポリエステル(d)の数平均分子量は
56,400、重量平均分子量は437,000、MF
Rは15.4g/10分であった。また、融点は図2に
見られるように、96.8℃と165.6℃に2つ見ら
れたが、外見上の溶融状態は170℃以上でなければ観
察されなかった。このブロックポリエステル(d)を19
0℃でプレス成形し、常温で3倍に一軸延伸して厚さ約
40μの延伸フィルムを得た。このフィルムの引張り強
度は7.9kg/mm2であり、僅かに曇りを帯びた透明フィ
ルムであった。
【0040】
【発明の効果】本発明によって得られるブロックポリエ
ステルは、生分解性を備え、かつ脂肪族ポリエステルと
しては高い融点を示しながら、熱安定性があって成形性
が良く、機械的強度にすぐれ、物性のバランスがとれて
いる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたブロックポリエステル
(a)のDSC測定結果を示す図である。
【図2】実施例3で得られたブロックポリエステル
(d)のDSC測定結果を示す図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 〔I〕(1)融点が70℃以上、数平均
    分子量が10,000以上で、末端基が実質的にヒドロ
    キシル基である脂肪族ポリエステル1〜99重量%と
    (2)数平均分子量が10,000以上のポリ乳酸99〜
    1重量%とを、(3)リン化合物の存在下に溶融混合
    し、次いで前記(1)の脂肪族ポリエステルおよび
    (2)のポリ乳酸の合計100重量部に対して、〔II〕
    0.1〜5重量部の多価イソシアナート化合物を添加反
    応させて、数平均分子量を30,000以上とすること
    を特徴とする、ブロックポリエステルの製造方法。
  2. 【請求項2】 (3)のリン化合物の使用量が、(1)
    の脂肪族ポリエステルと(2)のポリ乳酸の合計100
    重量部に対して、0.001〜3重量部である、請求項
    1記載のブロックポリエステルの製造方法。
  3. 【請求項3】 (3)のリン化合物が、リン酸およびそ
    のアルキルエステル類、ホスホン酸有機エステル類、亜
    リン酸、亜リン酸の有機エステル類およびポリリン酸か
    らなる群から選ばれた少くとも1種の無機または有機リ
    ン化合物である、請求項1記載のブロックポリエステル
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 〔I〕(1)融点が70℃以上、数平均
    分子量が10,000以上で、末端基が実質的にヒドロ
    キシル基である脂肪族ポリエステル1〜99重量%およ
    び(2)数平均分子量が10,000以上のポリ乳酸9
    9〜1重量%からなり、前記(1)の脂肪族ポリエステ
    ルと(2)のポリ乳酸の合計100重量部に対して、
    〔II〕0.1〜5重量部の多価イソシアナート化合物を
    添加反応させるに際し、予め溶融状態の(1)の脂肪族
    ポリエステルに多価イソシアナート化合物を添加反応さ
    せた後、(2)のポリ乳酸を添加し、溶融反応させて、
    数平均分子量を30,000以上とすることを特徴とす
    る、ブロックポリエステルの製造方法。
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