JP2968378B2 - ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フィルム、繊維、その
他の成形品等を形成した場合に、実用上十分な強度を有
し且つ融点の高いウレタン結合を含む脂肪族ポリエステ
ルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】脂肪族ポリエステルは融点が低く、たと
え数平均分子量が10,000以上の高分子領域にあった場合
でも、飽和芳香族構造を含むポリエステル、例えばポリ
エチレンテレフタレートのように実用上十分な機械的物
性を示さないため、今迄実用性がないものとされてい
た。実際、フィルム形成性がある場合でも、製造された
フィルムは、引裂き強度や引張強度が弱く、実用に耐え
るものではなかった。これらの中でも、1,4−ブタンジ
オールをグリコール成分とする脂肪族ポリエステルは、
比較的強度があり、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン
酸といった脂肪族ジカルボン酸とエステル化すれば、十
分な強度はもたないものの、フィルム形成可能なポリエ
ステルを製造できることが見出された。とくに、二塩基
酸としてコハク酸を用いて製造した脂肪族ポリエステル
の場合には、融点が110〜115℃と高くなり、脂肪
族ポリエステルのほとんどが70℃以下の融点しか示さ
ないのに比較して特異的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、1,4−
ブタンジオールとコハク酸とを用いて製造した脂肪族ポ
リエステルは、結晶性であり、通常のエステル化および
脱グリコール反応を行って数平均分子量を10,000〜15,0
00としても、ややもろい傾向が認められる。このもろさ
は、他のジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン
酸、ドデカン酸等を併用することにより改良できるが、
カルボキシル基間のメチレン結合の数が増加するに従っ
て、フレキシビリティは増す傾向があるが、融点は下降
してしまう。本発明は、上記のような従来の課題を解決
し、実用上十分な強度をもたせることができ、且つ融点
も高いウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルの製造方
法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
の結果、上記のような従来の課題を解決することができ
た。すなわち本発明は、(1) 1,4−ブタンジオール
とコハク酸とを反応して得られる、末端基が実質上ヒド
ロキシル基で、数平均分子量が5,000以上の飽和ポ
リエステル、および(2) 1,4−ブタンジオールとア
ジピン酸とを反応して得られる、末端基が実質上ヒドロ
キシル基で、数平均分子量が5,000以上の飽和ポリ
エステル、前記(1)および(2)の飽和ポリエステル
合計100重量部に対して、(3) 0.1〜5重量部
のジイソシアネートを、該飽和ポリエステルの融点以上
の熔融状態で添加することを特徴とする、ウレタン結合
を含む脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するもので
ある。
【0005】以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、特記しない限り、数平均分子量を単に分子量と表
す。本発明は、1,4−ブタンジオールとコハク酸とから
製造された飽和ポリエステル(以下、コハク酸系飽和ポ
リエステルという)および1,4−ブタンジオールとアジ
ピン酸とから製造された飽和ポリエステル(以下、アジ
ピン酸系飽和ポリエステルという)をブレンドすること
により、両者の飽和ポリエステルのそれぞれの欠点を補
い合うことができ、さらにこれにジイソシアネートを加
えることにより、分子量を10,000以上とし、これにより
前記目的が達成されることを見出し、完成したものであ
る。すなわち、コハク酸系飽和ポリエステルは結晶性が
良く、融点も110〜115℃と高いが、やや固く、も
ろい傾向を示す。これに反して、アジピン酸系飽和ポリ
エステルは、融点が約60℃と低いうえ、フィルムとし
たときも軟らかすぎる傾向にある。この両者を、適切な
割合で混合し、さらにジイソシアネートを加えれば、例
えば、高い融点を維持しながら、しかもフレキシビリテ
ィのある脂肪族ポリエステルフィルムが形成可能とな
る。
【0006】コハク酸系飽和ポリエステルおよびアジピ
ン酸系飽和ポリエステルのそれぞれの製造は、公知技術
で行うことができる。コハク酸系飽和ポリエステルおよ
びアジピン酸系飽和ポリエステルは、いずれも末端基が
実質的にヒドロキシル基で、且つ分子量は5,000以
上であることが必要である。分子量が5,000未満で
は、ジイソシアネートの添加量が多くなり、ゲル化の危
険性が急増する。コハク酸系飽和ポリエステルとアジピ
ン酸系飽和ポリエステルを混合する場合、短時間で、ポ
リエステル相互にエステル交換が生じなければ、混合ポ
リエステルの融点はある範囲内では混合比によらないこ
とが認められている。混合ポリエステルの融点を70℃
以上とするための、コハク酸系飽和ポリエステルとアジ
ピン酸系飽和ポリエステルの混合割合は、一般に、両者
を混合した100重量部に対し、コハク酸系飽和ポリエ
ステルが50〜95重量部、好ましくは60〜90重量
部である。50重量部未満では、融点が上昇しない。ま
た、95重量部を超えると、混合の意味を失い好ましく
ない。混合は、熔融状態で行うのが好適である。混合時
に、両飽和ポリエステル成分のエステル交換が行われる
ような状態は、製造される混合ポリマーの性質が一定し
ないので、避けるのがよい。
【0007】次に、ジイソシアネートの添加について説
明する。本発明に使用されるジイソシアネートは、とく
に限定されず、市販のものをそのまま用いることができ
るが、これを添加して得られた反応生成物の着色防止の
ために、脂肪族ジイソシアネート、例えばヘキサメチレ
ンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水
素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジ
イソシアネートを選択するのが望ましい。その使用割合
は、コハク酸系飽和ポリエステルおよびアジピン酸系飽
和ポリエステルの合計100重量部に対して0.1〜5
重量部、好ましくは0.5〜2重量部がよい。ジイソシ
アネートの添加は、前記飽和ポリエステルの融点以上、
すなわち十分に撹拌、混合可能な150℃以上で行うの
が好適である。ジイソシアネートの添加は、前記飽和ポ
リエステル同士を熔融混合した後行ってもよく、また、
コハク酸系飽和ポリエステルにジイソシアネートを、ア
ジピン酸系飽和ポリエステルにジイソシアネートを、そ
れぞれ予め反応させておき、この分子量の増大した少量
のウレタン結合を含むポリエステル同士をブレンドして
もよい。
【0008】末端がヒドロキシル基であるポリエステル
に、ジイソシアネートを反応させ、ポリウレタン樹脂と
して、塗料、接着剤、成形品、発泡体とすることは公知
であり、広く実用化されている。これら既存のポリウレ
タン樹脂と本発明の相違は、次のように要約される。 (イ) 本発明に使用する飽和ポリエステルは、結晶性で
あることがフィルムの強度発現等の点から求められる
が、一般にポリウレタン樹脂を、溶剤に溶解された塗料
および接着剤や、ゴム、発泡成形品等に用いるために
は、飽和ポリエステルは、非結晶性でなければならな
い。 (ロ) 既存のウレタン樹脂を製造するために用いられる
ヒドロキシルポリエステルは、取扱性、物性をよくする
ために、一般的には分子量約2000〜2500のいわ
ばプレポリマーである。このプレポリマーに対して、通
常、10重量部以上という多量のジイソシアネートを反
応させることによって、実用に耐え得る物性を得てい
る。本発明で提案している0.1〜5重量部のジイソシ
アネート量では、既存のプレポリマーでは実用に耐え得
る物性が発現しない。 (ハ) ジイソシアネートは、従来のポリウレタン樹脂製
造では、常温またはこれに近い温度で加えられている。
塗料の焼き付けにみられるマスクされたジイソシアネー
トの使用には、ジイソシアネートを再生する温度が必要
であり、このような温度を加える場合にジイソシアネー
トをそのまま用いた場合は、塗膜形成途上で望ましから
ざるゲル化を起こすことから、均一な塗膜を得ることが
できず、実用性がなかった。従って、従来の常識では、
ジイソシアネートを高温(約150℃以上)で直接加え
ることは、ゲル化のトラブルが生じるため、考えられな
いことであった。事実、分子量2,000〜2,500の
プレポリマーに、10重量部(ポリエステル100重量
部に対して)以上のジイソシアネートをポリエステルの
融点以上の高温で加えると、必ずゲル化が生じる。本発
明にみられるように、ポリエステルの分子量と、ジイソ
シアネートの使用量を適切に選択しなければ、実用性の
ある脂肪族ポリエステルを得ることは出来ない。上記の
ように製造した脂肪族ポリエステル組成物は、実用上十
分な強度およびフレキシビリティを有し、さらに融点も
高いので各種用途に合わせて、各種の成形方法を利用で
きる。例えば本発明によって製造された脂肪族ポリエス
テル組成物を用いてフィルムを形成する場合は、公知の
フィルム形成方法を利用でき、とくに制限されない。ま
た、成形時に、その用途に応じて各種の成形助剤、例え
ばフィラー(無機、有機)、着色剤、補強材、ワックス
類、熱可塑性ポリマー、オリゴマー等を併用することも
できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明を実施例によって説明する。飽和ポリエステル製造例 (コハク酸系飽和ポリエステル(A)の製造)撹拌機、
分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を備えた3l容
セパラブルフラスコに、1,4−ブタンジオール750
g、コハク酸885gおよびテトライソプロピルチタネ
ート1.6gを仕込み、窒素気流中195〜200℃でエ
ステル化し、酸価を9.0とした後、最終的には0.6To
rrの減圧下、210〜215℃で6時間脱グリコール反
応を行った。その結果、分子量16,800(Shodex GPC SY
STEM-11、昭和電工社製を用いたGPC分析の結果)の
コハク酸系飽和ポリエステルが得られた。室温まで冷却
したコハク酸系飽和ポリエステル(A)は、白色で、ワ
ックス状となって固化した。融点は110〜115℃で
あった。 (アジピン酸系飽和ポリエステル(B)の製造)上記の
ポリエステル(A)の製造例と同様の設備を備えた3l
容セパラブルフラスコに、1,4−ブタンジオール750
g、アジピン酸1095gおよびテトライソプロピルチ
タネート1.8gを仕込み、窒素気流中190〜200℃
でエステル化し、酸価を7.4とした後、最終的には0.
5Torrの減圧下とし、205〜210℃で7時間脱グリ
コール反応を行った。その結果、分子量15,200のアジピ
ン酸系飽和ポリエステルが得られた。室温まで冷却した
アジピン酸系飽和ポリエステル(B)は、やや黄色を帯
び、ワックス状となって固化した。融点は、約58℃で
あった。
【0010】実施例 1 撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を備え
た1l容セパラブルフラスコに、ポリエステル(A)を
400gおよびポリエステル(B)を100gを仕込
み、加熱し均一に溶解したものを、10分間、1〜1.
5Torrの減圧下とし、常圧に戻して窒素気流中、200
℃でヘキサメチレンジイソシアネート6gを加えた。粘
度は急速に増大し、ほぼ5分後には上昇が止まったもの
と判断された。得られたジイソシアネート処理した脂肪
族ポリエステル組成物(C)は、やや黄色を帯びた白色
ワックス状であり、融点は約110℃であった。分子量
は、約29800であった。この組成物(C)5gを、厚さ1
50μのポリエチレンテレフタレートフィルム間、15
0℃、10kg/cm2の圧力下で、厚さ約120〜130
μの円板状透明シートを形成させた。このシートは人力
では引裂くことができなかった。また、これを各方向3
倍ずつに2軸延伸した透明フィルムの引張強さ(JIS
K6760を用いて測定)は610kg/cm2であっ
た。
【0011】実施例 2 ジイソシアネート反応飽和ポリエステル(D)の調製 実施例1と同様の装置に、ポリエステル(A)を300
g仕込み、200℃で撹拌しながらイソホロンジイソシ
アネート3g加えた。粘度は急速に増大した。得られた
ジイソシアネート反応飽和ポリエステル(D)は、白色
ワックス状で、融点約115℃、分子量33,200であっ
た。 ジイソシアネート反応飽和ポリエステル(E)の調製 実施例1と同様の装置に、ポリエステル(B)を300
g仕込み、200℃で撹拌しながらイソホロンジイソシ
アネート4g加えた。増粘後のポリエステル(E)の室
温での状態は、淡黄色ワックス状で、融点は約58℃、
分子量は30,400であった。ポリエステル(D)210g
とポリエステル(E)90gを熔融ブレンドした。得ら
れた脂肪族ポリエステル組成物(F)の融点は、約10
7〜108℃であった。また、実施例1と同様にして、
ポリエステル組成物(F)を成形して得られた透明フィ
ルム(厚さ30〜35μ)の引張強さ(JIS K67
60で測定)は、560〜570kg/cm2であった。
【0012】
【発明の効果】フィルム等を形成した場合に、実用上十
分な強度をもたせることができ、且つ融点も高い脂肪族
ポリエステルの製造方法が提供される。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1) 1,4−ブタンジオールとコハク酸
    とを反応して得られる、末端基が実質上ヒドロキシル基
    で、数平均分子量が5,000以上の飽和ポリエステ
    ル、および (2) 1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを反応して
    得られる、末端基が実質上ヒドロキシル基で、数平均分
    子量が5,000以上の飽和ポリエステル、前記(1)
    および(2)の飽和ポリエステル合計100重量部に対
    して、 (3) 0.1〜5重量部のジイソシアネートを、該飽和
    ポリエステルの融点以上の熔融状態で添加することを特
    徴とする、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルの製
    造方法。
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