JP3053794B2 - 低塩・低臭海藻およびその製造法並びにそれを利用した飲食物 - Google Patents
低塩・低臭海藻およびその製造法並びにそれを利用した飲食物Info
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Description
タノールで洗浄することにより、製造される塩分含量が
低く、なおかつ臭いの少ない海藻およびその製造方法お
よび当該海藻を使用した飲食物に関する。
して食用されてきた。海藻の主な栄養素としては、ミネ
ラル、食物繊維、ビタミンなどがあげられる。この古来
より、日本人に親しまれてきた海藻は、収穫時期が限ら
れ、また水分含量が多く腐敗や酵素による自己消化など
のために生状態では長期の保存が難しくて、従来より、
塩蔵したものや乾燥したものが流通されることが多い。
これらのものは、利用時に水洗いや水戻しなどが必要で
ある。
い食品原料が要望されている。この観点から、低塩の海
藻を得ようとして、海藻を水洗いし脱塩すると、海藻が
膨潤し、軟化したり、水溶性の高分子の溶出により系の
粘度が増大するために攪拌効率の悪化や固液分離が困難
になることが知られている。加えて、その後の海藻の乾
燥工程の負荷もかかる。また、栄養的には、食物繊維、
ミネラル、ビタミンなどの栄養成分の流出なども考えら
れる。従って、産業上、かかを効率的に低塩化する方法
は知られていなかった。
に好まないとする層も見られ、また利用する食品によっ
てもその臭いがマイナスになる場合もある。従って、嗜
好および応用の幅を広げる観点から臭いの低臭化が望ま
れるところである。海藻の低臭化に関しては、マスキン
グという観点から、シクロデキストリンや有機酸で処理
する(特公昭61−54390号公報)方法が知られて
いるが、海藻からでる臭気そのものを直接的に低減化す
る経済的に優れたものは知られていない。
的かつ経済的に塩分および海藻特有の臭いの低減化を図
ることを課題とする。
葉であるメカブ、昆布、ヒジキ、アラメなどは、古来よ
り日常食品として広く食べられているものである。近
年、これらの海藻が健康保持とくに高血圧や高脂血症な
どの生活習慣病の予防に有効とされるデータが発表され
るようになってきた(Japanese Circulation Journal 6
1, Suppl 1,64(1997)) 。このような事実から、健康の
維持・増進のために積極的に食生活にとり入れることが
望まれる。
噌汁など日本の伝統的なものが多く、現在の洋風化した
食生活には必ずしも、マッチしていない部分がある。洋
食には海藻の香りが生臭いものとして嫌われる傾向があ
り、特に洋食嗜好の低年齢層は海藻特有の香りを好まな
い人もいる。
の塩分を含んでおり、料理するには水戻しなどの工程が
必要となる。海藻は健康保持に寄与する食素材であり、
食機会を増やすためには、海藻料理のメニューを豊富な
ものにすることが望まれる。しかし、海藻の持つ特有の
磯臭さや大量の塩の共存による制限があった。また、
麺、スナック菓子、パンなどに練り込むことで海藻を摂
取することを狙った加工食品の製品もあったが、海藻の
臭いや塩分のために利用が制限されることもあった。
に、本発明者らは海藻の低塩化と低臭化について鋭意検
討を行った結果、含水アルコールで海藻を洗浄すること
で低塩化と低臭化を同時に行えることを見出だし、本発
明を完成するに至った。
部以外を含む)、昆布、ヒジキ、モズク、アラメなど食
用海藻である。
品で流通されることが多い。また、ワカメに関しては素
干しワカメの他にカットワカメと呼ばれるボイル塩蔵ワ
カメを原料とした乾燥ワカメが簡便性および衛生面から
急速に普及している。素干しの海藻は、海より採取した
ものを海水などで洗浄後乾燥したものであるために、乾
燥後の塩分濃度は8〜15%になっている。塩蔵品は塩
分20〜50%のものが流通されている。
中より採取した生海藻、素干しワカメ(葉状部以外を含
む)、素干し昆布、素干しヒジキ、素干しアラメ、素干
しモズクなど素干しの海藻、ボイル塩蔵ワカメ、塩蔵ワ
カメ、塩蔵ヒジキ、塩蔵モズクなどの塩蔵品の他に、上
記に示した急速に普及しているカットワカメなどであ
る。
ら、海藻は長寿に繋がる食素材の一つとして、積極的に
摂取することが望まれている。この健康に寄与する海藻
の主な栄養素としては以下にあげられるものが考えられ
ている。
に、ミネラルが非常に豊富に含まれている。カルシウム
や、カリウム、マグネシウムなどの主要ミネラルだけで
なく、生体反応の触媒である酵素の働きに必須な亜鉛、
銅、クロム、マンガン、セレンなどの微量ミネラルもバ
ランス良く含まれている。特に近年、野菜の育成に対し
て土壌の劣化から、微量ミネラルが不足していることが
指摘されており、海藻の利用が益々重要なものと考えら
れている。
のでは約その半分が食物繊維であるものもある。褐藻類
の食物繊維は、アルギン酸、フコイダン、セルロース、
ラミナランなどが知られている。アルギン酸は、ワカ
メ、昆布、ヒジキなどに多く、モズクではフコイダンが
豊富なことが報告されている。食物繊維の生理作用は数
々報告されている。例えば、降コレステロール効果(Ath
erosclerosis, 15,87(1972))、降血圧効果(J.Hyperte
n., 4(Suppl.3), S449(1986)) 、血糖値調節効果(Ann.
Internal. Med., 80,20(1977))などである。最近、フコ
イダンにはヘリコバクター・ピロリ菌の接着阻害作用
(日本農芸化学会講演要旨集,184(1995))やガン細胞の
アポトーシス誘導(糖質シンポジウム講演要旨集,93(1
996)) など注目すべき新しい機能が発見されている。
いる。このステロールは、植物ステロール同様に、動物
性のコレステロールの呼吸を阻害することで血清コレス
テロールを低下させることが報告されている。(J.Lipid
Res., 29,1573(1988)) 。また、フコステロールにはプ
ラスミノーゲンを活性化させ血栓の溶解を促進すること
も報告されている(Biosci. Rep., 6,1029(1986))。
緑系の色素とフコキサンチン・β−カロチンなどの黄色
系のカロチノイドの色素より構成されている。これらの
色素は、種々の生理機能を有していることが報告されて
いる。例えば、クロロフィルは降コレステロール効果
(栄養学雑誌,33,153(1975))や抗アレルギー効果(基
礎と臨床,21,4225(1987)、抗変異原生効果(Mutat. Re
s., 192,23(1987))などであり、カロチノイド系の色素
はガンの予防効果(Cancer Lett., 68,159(1993))や免疫
賦活作用(Ann, New York Acad. Sci., 691,262(1993))
などが報告されている。
成分をほとんど失うことなく、塩分を低下させる方法を
検討し、含水エタノールで洗浄することで、上記目的を
達成できることを見出だし、本発明を完成した。また、
含水エタノールで褐藻類を洗浄すると、脱塩と同時に磯
臭さなど海藻が有している臭いも低くなることを発見し
た。
10〜54%(v/v)である。これより低いエタノー
ル濃度では、海藻が大きく膨潤し攪拌効率が悪化するこ
とや含水アルコールと海藻の固液分離も困難になる。加
えて、洗浄後以降の海藻の乾燥工程の負荷が大きくなり
経済性を阻害し、アルギン酸やフコイダンなどの食物繊
維やミネラルなどの流出が大きくなるために海藻の栄養
価も落ちる。また、55%以上の濃度では、クロロフィ
ルやカロチノイド系の色素の流出が大きく、栄養的に劣
るばかりか、製造した海藻の色が薄くなるために商品価
値も落ちる。更に、好ましくはエタノール濃度が20〜
50%で行うことが、色素の流出、食物繊維やミネラル
の流出を抑制し、なおかつ、海藻の膨潤度も適当である
ために、塩分の除去に有利であり、その後の乾燥工程か
らも好ましい。
ては、海藻を含水エタノールに浸漬し攪拌する方法や、
超音波などで処理する方法などがあるが、その他、どの
ような方法でも良い。また、海藻は洗浄処理の効率をあ
げるためにチップ状に切断してあるものが好ましいが、
特に海藻の形状には限定されない。また、脱塩のために
海藻を含水エタノールで洗浄する時間は、海藻原料や、
その他の状況により、適宜条件を選ぶことが可能であ
り、限定されるものでない。含水エタノールの洗浄温度
は、食塩の溶解度については大きく寄与しないが、海藻
中の色素の流出には関与するため、一般的には常温程度
が望ましい。しかしながら、エタノール濃度や目標とす
る品質により条件は加減できる。
用いられている料理だけではなく、麺、パン、パスタ、
スナック菓子、飴など広く食品分野にも応用が可能であ
り、海藻を食べる機会を増加させることができる。ま
た、一般食品だけでなく、低塩の海藻を製造することの
できる本発明は健康食品などにも適用することができ
る。
に限定されるものではない。
2cm程度にカットしたものを、5〜55%の含水エタノ
ール1000mlで1時間洗浄後、濾過して80℃の真空
乾燥機にて乾燥した。表1に上記操作により得られた洗
浄液の色をクロロフィルの最大吸収波長である663nm
とカロチノイドの最大吸収波長である453nmの吸光度
を示した。また、代表例として30%含水エタノールで
洗浄した液の吸収曲線を図1に示した。
し、点線は洗浄された後の素干しワカメの吸収曲線を示
す。これよりエタノール洗浄液にはカロチノイドおよび
クロロフィルの吸収ピークがなく、クロロフィルおよび
カロチノイドは洗浄後に溶出されず素干しワカメにだい
ぶ残っていることがわかる。
潤度が激しく攪拌効率や水溶液の粘度増大のために濾過
が困難であった。また、55%洗浄液はクロロフィルや
カロチノイド系の色素の流出が激しかった。
て得た、海藻の分析結果を示した。塩分の分析はモール
法であるが、食塩が除去されていることがわかる。ま
た、ミネラル、食物繊維などの栄養素は良く保持されて
いることが判明した。
ー10人により官能試験を行った。原料の素干しワカメ
の臭いの強さを10点としたとき、30%エタノールで
洗浄したワカメの臭いの強さを点数化してもらった。1
0人のパネラーの平均点は3.8点であり、明らかに低
臭化しているとの評価が得られた。従って本実施例で得
られたワカメは官能試験により明らかに原料の素干しワ
カメに比較して低臭化していた。
(玉みどり)300gを15〜50%の間の含水エタノ
ール3Lで20分間洗浄した後、5分間静置後濾過し
た。乾燥は真空乾燥機で80℃3時間で行った。得られ
たワカメ粉末の分析データを表3に示す。
んどなかった。本実施例で得られた粉末ワカメの退色の
変化を蛍光灯の光(1300ルクス)を用い45日間の安定
度試験を行い色差計を用いて測定した。
の度合いは同じと考えて良い。従って本発明によって得
られたワカメの色調の安定性は変化していない。
気の官能試験を行ったところ、ワカメ特有の臭気はほと
んど感じなかった。
(株)製)10kgを20%の含水エタノール100Lで
15分間洗浄後、濾過、乾燥した。得られた海藻につい
て分析値を表4に示した。
ワカメの状態に有意な差は認められなかった。また、本
実施例で得られたワカメを食しても食感などに何ら相違
は認められなかった。
cm程度にカットしたものを、10〜50%の含水アルコ
ール1000mlで1時間洗浄後、濾過して80℃の真空
乾燥機にて乾燥した。表5に上記操作により得られた昆
布の分析値を示した。
25%)を水10Lで付着している食塩の大部分を脱塩
後、水を絞った。この時のワカメの重量は約1kgであ
り、塩分は約6%であった。このボイル塩蔵ワカメを本
発明に従い、各種含水エタノール3Lで20分洗浄、濾
過後80℃の真空乾燥機で3時間乾燥した結果を表6に
示した。
原料としても適用できることが確認された。
粉末ワカメを、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー
により臭気除去の分析を行った結果を図2に示した。図
2に示したように官能試験だけではなく、分析機器を用
いた試験でも臭気が顕著に低減していることが判明し
た。
クロマトグラフの条件は下記の通りである。 機 器: 島津製作所製 GC−14A 検出器: FID カラム: Fused Silica Capillary Column (0.25mm×
50m)信和化工製 ULBON HR−20M キャリアガス: ヘリウム インジェクション温度: 200℃ ディテクション温度 : 200℃ カラムオーブン温度 : 60℃→170℃(10℃/mi
n) バイアル瓶 加熱条件: 90℃,20 min
定した時に、原料の粉ワカメには低沸点のピーク(R
T: 2.596)が非常に強く、また、リテンションタイム
(RT)5分後のピークも多種におよんでいる。一方、
20%エタノールで洗浄したワカメは、低沸点のピーク
が減少しており、しかも5分後のピークについても明ら
かに減少している。分析機器を使用した試験でも臭気が
顕著に低減していることが確認された。
末を用いて、表7に示す配合でワカメロールパンを試作
した。
ワカメ粉末は磯臭さが強く、パンとして食しにくいもの
であったが、含水エタノールで洗浄したものは、わずか
にワカメの臭気を残し、色合いも良く、味の良いワカメ
パンが作成できた。
末を更に粉砕後、ワカメ飴を表8に示す配合で作成し
た。
る、緑色の飴ができ、風味の良いものであった。
エタノールで洗浄することで低塩で低臭の海藻を得るこ
とに成功し、これら含水エタノールで洗浄処理された海
藻は各種の食品へ広く応用できることが判明し、健康食
品素材としての海藻の活用の幅が増大した。
線)と素干しワカメ(点線)の吸収曲線を示す線図であ
る。
マトグラフィーの分析結果を示す線図である。
マトグラフィーの分析結果を示す線図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 アルコール濃度が10%〜54%(V/
V)の含水エタノールを洗浄剤に用いて食用海藻を洗浄
して有用な機能成分を殆んど失うことなしに塩分を低下
させると共に、海藻臭気を低減化することを特徴とする
海藻の処理方法。 - 【請求項2】 有用な機能成分がカロチノイド、クロロ
フィル、ミネラル、食物繊維、ビタミンAである請求項
1記載の処理方法。 - 【請求項3】 食用海藻が、ワカメ(葉状部以外を含
む)、昆布、ヒジキ、アラメ、モズクなどその他の食用
海藻である請求項1記載の処理方法。 - 【請求項4】 請求項1の方法で得られる低塩・低臭海
藻。 - 【請求項5】 請求項4の低塩・低臭海藻を用いたパ
ン、飴、その他の飲食物。
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-
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- 1997-12-17 JP JP9364168A patent/JP3053794B2/ja not_active Expired - Fee Related
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