JP3052431B2 - 重合性モノマ―の製造法 - Google Patents

重合性モノマ―の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、不飽和カルボン酸のシ
リルエステル化物からなる重合性モノマ―を製造する方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】不飽和カルボン酸のシリルエステル化物
からなる重合性モノマ―の製造は、米国特許第4,59
3,055号明細書に示されているように、従来、一般
的に、不飽和カルボン酸とモノクロロシランとを、塩基
の存在下で、脱塩化水素する方法で行われている。
【0003】たとえば、マレイン酸モノエステルのカル
ボキシル基をシリルエステル化して、分子内にシリル基
を導入した重合性モノマ―は、特開昭63−21578
0号公報に示されているように、マレイン酸モノエステ
ルとトリオルガノクロロシランとを、三級アミンからな
る塩基の存在下で、脱塩化水素する方法で製造されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、三級アミン
からなる塩基を用いた脱塩化水素による方法では、一般
に、まず不飽和カルボン酸のアミン塩を中間体として形
成したのちに、トリオルガノクロロシランと反応させる
ことになるため、反応工程が多段階となり、また三級ア
ミンの塩酸塩が副生するため、上記の塩酸塩を取り除く
工程が必要となるなど、製造工程上の不利を免れなかつ
た。
【0005】本発明は、上記従来の事情に鑑み、不飽和
カルボン酸のシリルエステル化物からなる重合性モノマ
―を製造する方法において、三級アミンからなる塩基を
用いないで脱塩化水素を行わせることにより、上記塩基
の使用に伴う製造工程上の不利を回避することを目的と
している。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために鋭意検討した結果、不飽和カルボン
酸のシリルエステル化における脱塩化水素が、反応系内
を所定温度に加熱することで達成でき、この加熱で発生
した塩化水素ガスを塩基性水溶液からなるトラツプ剤
で捕捉して、反応系内から効率よく除去するようにする
と、上記の脱塩化水素反応、つまりはシリルエステル化
反応を容易に促進できるものであることを知り、本発明
を完成するに至つた。
【0007】すなわち、本発明は、不飽和カルボン酸に
トリオルガノクロロシランを加え、加熱による脱塩化水
素を伴うシリルエステル化反応を行わせ、発生した塩化
水素ガスを塩基性水溶液からなるトラツプ剤で捕捉して
反応系内から除去して、不飽和カルボン酸のシリルエス
テル化物からなる重合性モノマ―を製造することを特徴
とする重合性モノマ―の製造法に係るものである。
【0008】
【発明の構成・作用】本発明に用いる不飽和カルボン酸
としては、分子内にカルボキシル基と重合性不飽和二重
結合とを有する化合物であればよく、たとえば、アクリ
ル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ア
ルキル(C1〜C12)マレイン酸モノエステル、フマ―
ル酸、アルキル(C1 〜C12)フマ―ル酸モノエステ
ル、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられる。
【0009】本発明に用いるトリオルガノクロロシラン
は、3個の有機基が互いに同一の基であつても異なる基
であつてもよい。有機基としては、炭素数が通常1〜2
1個の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げら
れ、その他アリ―ル基や置換アリ―ル基などであつても
よい。
【0010】上記のアルキル基としては、たとえば、メ
チル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−オクチ
ル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチ
ル、2−エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロヘキ
シルなどがあり、置換アリ―ル基としては、ハロゲン、
炭素数が10個程度までのアルキル基、アシル基、ニト
ロ基またはアミノ基などで置換されたアリ―ル基があ
る。
【0011】本発明においては、上記の不飽和カルボン
酸に、上記のトリオルガノクロロシランを加えて、シリ
ルエステル化反応を行うが、その際反応系内は無溶剤で
あつても、またトルエン、酢酸エチルなどの芳香族炭化
水素系溶剤、エステル系溶剤、エ―テル系溶剤、脂肪族
炭化水素系溶剤などの溶剤を用いた溶液状態とされてい
てもよい。
【0012】また、トリオルガノクロロシランの添加量
は、不飽和カルボン酸の種類、特にカルボキシル基の数
に応じて、適宜選択されるが、通常は不飽和カルボン酸
1当量に対し、通常1〜5当量、好ましくは1〜3当量
の添加量とするのがよい。
【0013】このようにトリオルガノクロロシランを加
えたのち、あるいは加えながら、反応系内の温度を通常
40℃以上、好ましくは40〜150℃程度の温度に加
熱すると、反応系内に塩化水素ガスが発生して、シリル
エステル化反応の進行が認められる。ここで、発生した
塩化水素ガスをトラツプ剤で捕捉して、反応系内から効
率よく除去すると、上記のシリルエステル化反応が容易
に促進される。
【0014】トラツプ剤としては、PHが7.1以上の
塩基性水溶液が好適で、たとえば、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの塩基性無機
塩、アンモニアなどの塩基を水に溶解させてなる水溶液
が用いられる。
【0015】このようにして得られる反応生成物は、不
飽和カルボン酸のシリルエステル化物(不飽和カルボン
酸がモノカルボン酸であればモノシリルエステル化物、
ジカルボン酸であればジシリルエステル化物)を主成分
としたものであつて、これには従来のようなアミン塩酸
塩の結晶が全く含まれていない。
【0016】したがつて、この反応生成物の溶液より、
溶剤を留去してから、減圧蒸留またはアルミナカラムに
て精製することにより、目的とする不飽和カルボン酸の
シリルエステル化物からなる重合性モノマ―を得ること
ができる。なお、シリルエステル化物であることの確認
は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)またはこれと赤外
線吸収スペクトル(IR)により、容易に行える。
【0017】本発明の方法にて得られる不飽和カルボン
酸のシリルエステル化物は、重合性モノマ―として既知
のラジカル重合法などの任意の方法で高分子ポリマ―と
され、主鎖中にシリル基を有するものとして、加水分解
性プラスチツク、水中防汚被覆剤、医療用高分子材料な
どの用途に幅広く利用することができる。
【0018】
【発明の効果】以上のように、本発明の加熱による脱塩
化水素によれば、従来のように不飽和カルボン酸のアミ
ン塩を中間体として生成する必要がなく、また三級アミ
ンの塩酸塩の副生もないため、不飽和カルボン酸のシリ
ルエステル化物からなる重合性モノマ―を製造容易に得
ることができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により、本発明を具体的に説明
する。
【0020】実施例1 攪拌機および加温冷却装置を付けた5リツトルの4つ口
フラスコに、ベンゼン2リツトルを入れ、その中にメタ
クリル酸(重合禁止剤としてヒドロキノンを200pp
m含む)1モルを加え、継続して攪拌しながら、トリイ
ソプロピルクロロシラン1.1モルを2時間かけて滴下
した。滴下終了後、反応液を80℃に加熱し、さらに2
時間攪拌を継続した。発生する塩化水素ガスは、3Nの
水酸化ナトリウム水溶液により、トラツプした。
【0021】このようにして得た反応生成物の溶液に、
ヒドロキノン0.2gを加え、その溶液から、ロ―タリ
―エバポレ―タ―、つづいて真空ポンプにより、ベンゼ
ンを完全に留去したのち、アルミナカラムにて精製し
た。得られた重合性モノマ―の収率は94.5重量%、
純度は99.5重量%であつた。
【0022】なお、純度は、ガスクロマトグラフイ―に
より測定したものであるが、この測定条件は、下記のと
おりである。 機種:HP社 5890 SERIES II カラム:G−100(化学品検査協会製) カラム温度:230℃(固定) インジエクシヨン・デイジエクシヨン温度:250℃ 流量:19.8ml/分 リテンシヨンタイム:30分
【0023】また、上記の実施例1で得られた重合性モ
ノマ―が、メタクリル酸のシリルエステル化物であるこ
とについては、NMRにより、 1H−NMR特性吸収:
δ(ppm )を調べることにより、確認した。表1にこの
NMRの特性吸収を、図1に同スペクトルを、それぞれ
示す。NMRの測定条件としては、CDCl3 溶液中、
内部標準CHCl3 (δ=7.27)である。
【0024】
【表1】
【0025】実施例2 攪拌機および加温冷却装置を付けた5リツトルの4つ口
フラスコに、トルエン2リツトルを入れ、その中にイソ
アミルマレイン酸モノエステル1モルを加え、継続して
攪拌しながら、トリイソプロピルクロロシラン1.1モ
ルを50分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を11
0℃に加熱し、さらに2時間攪拌を継続した。発生する
塩化水素ガスは、1Nの水酸化ナトリウム水溶液によ
り、トラツプした。
【0026】このようにして得た反応生成物の溶液か
ら、ロ―タリ―エバポレ―タ―にてトルエンを留去した
のち、減圧蒸留に供した。圧力1.5mmHgにて155〜
157℃までを本留として取り出した。得られた重合性
モノマ―の収率および純度を、実施例1と同様に測定し
たところ、収率は96.0重量%、純度は99.5重量
%であつた。
【0027】なお、この重合性モノマ―が、イソアミル
マレイン酸モノエステルのシリルエステル化物であるこ
とについては、前記の実施例1の場合と同様に、NMR
により確認同定した。表2にこの重合性モノマ―のNM
Rの特性吸収を示す。
【0028】
【表2】
【0029】実施例3 攪拌機および加温冷却装置を付けた5リツトルの4つ口
フラスコに、トルエン2リツトルを入れ、その中にメタ
クリル酸(重合禁止剤としてヒドロキノンを200pp
m含む)1モルを加え、継続して攪拌しながら、t−ブ
チルジメチルクロロシラン1.1モルを40分かけて滴
下した。滴下終了後、反応液を80℃に加熱し、さらに
2時間攪拌を継続した。発生する塩化水素ガスは、3N
の水酸化ナトリウム水溶液により、トラツプした。
【0030】このようにして得た反応生成物の溶液か
ら、ロ―タリ―エバポレ―タ―、つづいて真空ポンプに
より、トルエンを完全に留去したのち、アルミナカラム
にて精製した。得られた重合性モノマ―の収率および純
度を、実施例1と同様に測定したところ、収率は94.
8重量%、純度は99.5重量%であつた。
【0031】なお、この重合性モノマ―が、メタクリル
酸のシリルエステル化物であることについては、前記の
実施例1の場合と同様に、NMRにより確認同定した。
表3にこの重合性モノマ―のNMRの特性吸収を示す。
【0032】
【表3】
【0033】実施例4 攪拌機および加温冷却装置を付けた5リツトルの4つ口
フラスコに、トルエン2リツトルを入れ、その中にマレ
イン酸1モルを加え、加温装置にて45℃にし、その
後、継続して攪拌しながら、トリイソプロピルクロロシ
ラン2.0モルを40分かけて滴下した。滴下終了後、
反応液を110℃に加熱し、さらに2時間攪拌を継続し
た。発生する塩化水素ガスは、3Nの水酸化ナトリウム
水溶液により、トラツプした。
【0034】このようにして得た反応生成物の溶液か
ら、ロ―タリ―エバポレ―タ―、つづいて真空ポンプに
て、トルエンを完全に留去したのち、アルミナカラムに
て精製した。得られた重合性モノマ―の収率および純度
を、実施例1と同様に測定したところ、収率は96.1
重量%、純度は99.2重量%であつた。
【0035】なお、この重合性モノマ―が、マレイン酸
のジシリルエステル化物であることについては、前記の
実施例1の場合と同様に、NMRにより確認同定した。
表4にこの重合性モノマ―のNMRの特性吸収を示す。
【0036】
【表4】
【0037】比較例1 攪拌機および加温冷却装置を付けた5リツトルの4つ口
フラスコに、トルエン2リツトルを入れ、その中に無水
マレイン酸1モルを加え、溶解させたのち、さらにメチ
ルアルコ―ル1モルを加えた。その後、冷却装置にて5
℃以下にし、攪拌しながら、トリエチルアミン1モルを
1時間かけて滴下した。滴下部は一時黄色を呈するが、
攪拌することにより無色透明の液体となり、マレイン酸
モノエステルのアミン塩を生成した。反応温度は10℃
以下に維持した。
【0038】つぎに、この透明液体を10℃以下に保ち
ながら、継続して攪拌し、トリメチルクロロシラン1モ
ルを30分かけて滴下した。滴下直後からトリエチルア
ミンの塩酸塩の析出が観察された。滴下終了後、常温に
てさらに2時間攪拌を続け、反応生成物の粗溶液を得
た。
【0039】この反応生成物の粗溶液をガラスフイルタ
―にて吸引ろ過した。ろ過残渣をさらにトルエン0.5
リツトルにて洗浄し、この洗浄溶剤をろ液に加えた。つ
づいて、ろ液を分液ロ―トを用いて、1Nの炭酸水素ナ
トリウム水溶液各300mlにて2回洗浄後、さらにイオ
ン交換水各300mlにて3回洗浄を行つた。
【0040】この洗浄液に脱水剤としての無水硫酸マグ
ネシウム150gを加え、1夜放置して水分を除去し
た。その後、ガラスフイルタ―にて脱水剤をろ別し、ロ
―タリ―エバポレ―タ―にて、反応生成物溶液からトル
エンを留去したのち、減圧蒸留に供した。圧力2.5mm
Hgにて57〜58℃までを本留として取り出した。
【0041】このようにして得られた重合性モノマ―の
収率および純度を、実施例1と同様に測定したところ、
収率は56.3重量%、純度が91.5重量%であつ
た。なお、この重合性モノマ―が、マレイン酸モノエス
テルのシリルエステル化物であることについては、前記
の実施例1の場合と同様にして、NMRにより確認同定
した。表5にこの重合性モノマ―のNMR特性吸収を示
す。
【0042】
【表5】
【0043】比較例2 攪拌機および加温冷却装置を付けた5リツトルの4つ口
フラスコに、トルエン1リツトルを入れ、その中に無水
マレイン酸1モルを加え、溶解させたのち、さらにメチ
ルアルコ―ル1モルを加えた。その後、冷却装置にて5
℃以下にし、攪拌しながら、トリエチルアミン1モルを
1時間かけて滴下した。滴下部は一時黄色を呈するが、
攪拌することにより無色透明の液体となり、マレイン酸
モノエステルのアミン塩を生成した。反応温度は20℃
以下に維持した。
【0044】つぎに、この透明液体を10℃以下に保ち
ながら、継続して攪拌し、t−ブチルジメチルクロロシ
ラン1モルを15分かけて滴下した。滴下直後からトリ
エチルアミンの塩酸塩の析出が観察された。滴下終了
後、常温にてさらに2時間攪拌を続け、反応生成物の粗
溶液を得た。
【0045】この反応生成物の粗溶液をガラスフイルタ
―にて吸引ろ過した。ろ過残渣をさらにトルエン0.5
リツトルにて洗浄し、この洗浄溶剤をろ液に加えた。こ
のろ液から、ロ―タリ―エバポレ―タ―にて、トルエン
を留去したのち、減圧蒸留に供した。圧力8.0mmHgに
て112〜115℃までを本留として取り出した。蒸留
物には、一部白色針状晶がみられた。
【0046】このようにして得られた重合性モノマ―の
収率および純度を、実施例1と同様に測定したところ、
収率は71.5重量%、純度は82.2重量%であつ
た。なお、この重合性モノマ―が、マレイン酸モノエス
テルのシリルエステル化物であることについては、前記
の実施例1の場合と同様にして、NMRにより確認同定
した。表6にこの重合性モノマ―のNMR特性吸収を示
す。
【0047】
【表6】
【0048】以上の結果から明らかなように、本発明の
実施例1〜4においては、いずれも反応工程が簡素化さ
れており、かつ反応中に副生成物の発生がみられず、目
的とする重合性モノマ―の収率および純度も良好であつ
た。
【0049】これに対し、比較例1,2では、マレイン
酸モノエステルのアミン塩からなる中間体を生成する工
程が必要であり、かつ反応中に副生成物であるトリエチ
ルアミンの塩酸塩の発生がみられ、反応後にこれを取り
除く工程が必要となるなど、製造工程上の不利を免れな
かつた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた重合性モノマ―の核磁気共
鳴スペクトルを示す特性図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不飽和カルボン酸にトリオルガノクロロ
    シランを加え、加熱による脱塩化水素を伴うシリルエス
    テル化反応を行わせ、発生した塩化水素ガスを塩基性水
    溶液からなるトラツプ剤で捕捉して反応系内から除去し
    て、不飽和カルボン酸のシリルエステル化物からなる重
    合性モノマ―を製造することを特徴とする重合性モノマ
    ―の製造法。
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