JP3044252B1 - 薄肉板の打抜き方法及びそれに用いる積層板 - Google Patents

薄肉板の打抜き方法及びそれに用いる積層板

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弘光 永島
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Abstract

【要約】 【課題】 0.5mm厚以下のような薄肉板を汎用の打
抜き機を用いて効率良くしかも高精度に打ち抜くことの
できる打抜き方法及びそれに用いる積層板を提供する。 【解決手段】 打抜き用薄肉板を捨て板に仮接着した
後、前記打抜き用薄肉板が下刃側になるようにして打抜
き、前記捨て板と分離することにより高精度にして低コ
ストで薄板製品を得られるように構成するとともに、打
抜き用薄肉板と捨て板とを仮接着手段を介してなる多種
の薄肉板の積層板を予め用意しておいて顧客の薄板の要
求にいつでも対応できるように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】この発明は、例えば、0.
5mm厚以下のような薄肉板を汎用の打抜き機を用いて
効率良くしかも高精度に打ち抜くことのできる打抜き方
法及びそれに用いる積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、打抜き用基材に穴あけしたり、打
抜き用基材から所望形状の製品を取るなどのために、タ
レットパンチングプレスと呼ばれる打抜き機が広く用い
られている。
【0003】前記タレットパンチングプレス機は打抜き
基材の一縁を把持して所望のプログラムに従ってテーブ
ル上を縦横に走行するクランプと、該クランプに支持さ
れた打抜き基材をパンチングするための上刃と下刃を交
換可能にセットしたタレットとの作動タイミングにより
高速にして高精度に打抜き加工できるものである。
【0004】上記打抜き機で打ち抜き加工のできる基材
の板厚、特に、薄さには限界があった。即ち、薄肉であ
って、テーブル上を縦横に走行するクランプに一縁を把
持させると基材自体が撓んでしまう場合には加工が極め
て困難であったし、撓まないまでも上刃と下刃とにパン
チングに必要なクリアランスがあるため、打ち抜かれた
後の製品部分のエッジに、せん断過程において受けた曲
げモーメントによる変形やバリが発生するという不都合
があった。
【0005】従って、上記のような薄肉板、特に、0.
5mm厚以下の薄肉板は、上述の汎用の打抜き機を用い
て打ち抜くことは殆ど不可能であった。それでも顧客の
要求がある場合には他の機械(レーザ加工機)による加
工に頼ることとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、レーザ
加工機は電力消費量が嵩んだばかりでなく、上記汎用の
打抜き機を用いて打ち抜く場合と異なり多くの作業時間
を要し、製造コストを高騰させ、しかも製品のエッジ部
やその近傍に焦げ目が入ってしまい、商品価値を著しく
低下させるという種々の問題があった。
【0007】本発明は、上記種々の問題を一挙に解消す
るためのもので、その目的とするところは、0.5mm
厚以下のような薄肉板にも上記汎用の打抜き機を用いて
効率良くしかも高精度にして安価に打ち抜くことのでき
る打抜き方法及びそれに用いる積層板を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は、打抜き用薄肉板を捨て板に仮接着した
後、前記打抜き用薄肉板が下刃側になるようにして打抜
き、前記捨て板と分離することを特徴とし、汎用の打抜
き機を用いて薄肉板の打ち抜き加工ができるように構成
した。
【0009】また、請求項2に記載の発明に係る積層板
は、打抜き用薄肉板と捨て板とを仮接着手段を介して積
層してなることを特徴とし、打ち抜き用薄肉板の材質及
び厚さを異にする多種の積層板を予め用意しておくこと
により顧客の如何なる材質や薄さの要求にも即応でき得
るように構成した。
【0010】
【発明の実施の態様】次に、本発明の実施の態様を添付
図面に基づいて説明すると、まず、顧客の要求する厚み
の打抜き用薄肉板1を図1(a)の如く用意する。この
「顧客の要求する板厚」とは、上記汎用の打抜き機のク
ランプに一縁を把持させたときに、打抜き作業が困難に
なる程度からそれ以下のものをいう。0.5mm厚以下
のような薄肉板はこれに含まれることは勿論である。前
記薄肉板1の材質としては鉄、アルミ、真鍮、銅、金、
銀、その他でもよい。
【0011】次に、前記薄肉板1の片面1aに同図
(b)の如く塗布具Tを用いて接着剤2を塗布する。該
接着剤2は「貼って剥がせる性質」を具えたものを使用
して満足できる。「貼って剥がせる性質」は接着剤自身
の性質として持っているとともに剥がした後に接着剤が
薄肉板1に残らないものがよい。尤も、一定の薬剤(例
えば、シンナーなど)によって溶けるものであってもよ
い。
【0012】次いで、前記接着剤2が未だ可膠性を保持
する間に、同図(c)の如く厚肉の捨て板3に仮接着し
て積層板4得る。前記捨て板3の具体的な厚さ及び材質
としては特に問わない。尤も、上記汎用の打抜き機に備
える「手持ち型(刃)」によっても異なるが、通常では
1〜2mm厚程度の鉄板等の鋼材が使用されることが多
い。
【0013】前記仮接着に用いた接着剤2の可膠後、前
記積層板4をその打抜き用薄肉板1が下刃側になるよう
にタレットパンチングプレス機のクランプ(図示せず)
に把持させた後、所望のプログラムに従って製品の打抜
き加工作業を開始することとなる。なお、前記積層板4
は打ち抜き用薄肉板1の厚さや材質を異にする多種のも
のを予め用意しておき、いつでも顧客の材質や薄さの要
求にも応じられるようにしておくことが好ましい。
【0014】前記タレットパンチングプレス機のクラン
プ(図示せず)に把持させた積層板4はタレット(図示
せず)の上刃10と下刃11との間に打抜き用薄肉板1
が下になるようにして供給し、前述の如く、所望のプロ
グラムに従って上刃10を図2(a)の如く下動させる
と、積層板4は下刃11とのかみ合わせにより製品部分
4aが打抜かれる。なお、4bは非製品部分である。
【0015】上刃10と下刃11とをかみ合わせると
き、前記積層板4の製品部分4aのエッジ部には上刃1
0による圧縮のために曲げモーメントを受けて変形6が
現われるが、該変形6は捨て板3にのみ生じ、製品7
(打抜き用薄肉板1)には、図2(b)の如く及ばな
い。
【0016】前記打抜き作動時、積層板4には接着剤2
を介して捨て板3と打抜き用薄肉板1との一体化が阻害
されるような大きな付加が掛かるが、積層板4は下刃1
1の周囲と上刃10の周辺鍔10aとにより必要な力
(矢印イ、ロ)で挟持されることから、一体化を維持し
た状態(密着状態)で打抜かれ、一体化を阻害されるよ
うなことはない。
【0017】前記打抜き作動の結果、得られた製品部分
4aは、未だ、接着剤2を介して捨て板3と打抜き用薄
肉板1とが接着したままの状態であり、この状態のとき
に下刃側(製品7=薄肉板1)に極く僅かに現われるこ
とがあるバリをヤスリなどの工具(図示せず)を用いて
取り除くこととなる。即ち、薄く形態安定性の低い製品
7でも、分離前には捨て板3により補強されるため、ヤ
スリなどの工具が使い易く作業し易いものである。
【0018】前述の如く、得られた製品部分4aからバ
リなどを取り除いた後、例えば、シンナーなどの液中に
必要時間(分)浸漬し、接着剤2を溶解させて打抜き用
薄肉板1を図2(c)の如く捨て板3から分離する。こ
れにより0.5mm厚以下のような薄肉板1にも上記タ
レットパンチングプレス機を用いて効率良くしかも高精
度にして安価に打抜き製品7が得られることとなる。
【0019】なお、上記実施態様において示した上刃と
下刃はタレットパンチングプレス機のものを例にして説
明したが、これに限定されるものではないし、外形と孔
とを同時に打抜くいわゆるコンパウンド(組合せ打抜
き)打抜きその他にも応用できるものであることは勿論
である。
【0020】
【実施例】今、1200mm×400mmの面積を有す
る0.5mm厚のステンレス製の打抜き用薄肉板1と、
同面積を有する1.5mm厚の鋼材からなる捨て板3と
を「はってはがせる55」(住友スリーエム株式会社
製)の接着剤2を使用して仮接着してなる積層板4を用
意し、該積層板4の一縁をタレットパンチングプレス機
(株式会社アマダ製=VIPROS−255)のクラン
プに把持させ、図5に示す如く、各角を落とした長方形
の外形Aと板中に2つの楕円B、B′と2つの小円C、
C′を持つ製品7を50個取りした。
【0021】
【比較例】一方、上記実施例と同面積を有する0.5m
m厚のステンレス製の打抜き用薄肉板を用意し、該板を
レーザ加工機(株式会社アマダ製=アペリオ)を用い、
図5に示す製品7を50個取りした。
【0022】上記実施例により得た製品と、比較例によ
り得た製品とを比較した処、比較例品には焦げ目が入っ
たのに比して、本願実施品にはかかる焦げ目のない高品
質のものが得られた。
【0023】また、本願実施例品は、積層板をタレット
パンチングプレス機のクランプにセットしてから打抜き
完了後、捨て板を分離させるまでの作業時間として10
分間を要したが、比較例品では60分の長時間を要し
た。
【0024】さらに、本願実施例品の製造コストは、捨
て板の価格分、電気消費量その他を含めても17500
円(350円/個)であったが、比較例品の製造コスト
は電気消費量その他を含めて40000円(800円/
個)となり、本願実施例品の製造コストは比較例品に比
して大幅に安価であることが分かった。
【0025】
【発明の効果】以上の如く、本発明に係る方法は、打抜
き用薄肉板を捨て板に仮接着した後、前記打抜き用薄肉
板が下刃側になるようにして打抜き、前記捨て板と分離
することを特徴としているから、汎用の打抜き機を用い
て薄肉板の打ち抜き加工製品が高精度にして低コストで
製造できるという優れた効果を奏するものである。
【0026】また、請求項2に記載の発明に係る積層板
は、打抜き用薄肉板と捨て板とを仮接着手段を介して積
層してなることを特徴としているから、打ち抜き用薄肉
板の材質及び厚さを異にする多種の積層板を予め用意し
ておくことにより顧客の如何なる薄い板厚の要求にも即
応できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)、(c)は本願方法の前段の工
程を示す説明図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は本願方法の後段の工
程を示す説明図である。
【図3】上刃と下刃とのかみ合せで積層板が打抜かれる
一過程を示す説明図である。
【図4】上刃と下刃とのかみ合せで積層板が打抜かれた
直後を示す説明図である。
【図5】実施例及び比較例で打抜かれる1つの製品の形
態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 打抜き用薄肉板 1a 片面 2 接着剤 3 捨て板 4 積層板 4a 製品部分 4b 非製品部分 6 変形 7 製品 T 塗布具 10 上刃 11 下刃 A 外形 B、B′ 楕円 C、C′ 小円

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 打抜き用薄肉板を捨て板に仮接着した
    後、前記打抜き用薄肉板が下刃側になるようにして打抜
    き、前記捨て板と分離することを特徴とする薄肉板の打
    抜き方法。
  2. 【請求項2】 打抜き用薄肉板と捨て板とを仮接着手段
    を介して積層してなることを特徴とする積層板。
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