JP2017085102A - 回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュールならびに、パワーモジュールの製造方法 - Google Patents

回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュールならびに、パワーモジュールの製造方法 Download PDF

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澄夫 平山
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雅彦 横山
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Abstract

【課題】回路基板用金属板の厚みの大小によらず、パターニングによる所要の絶縁性を確保しつつ、回路基板を容易に製造することのできる回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュール、ならびに、パワーモジュールの製造方法を提供する。【解決手段】この発明の回路基板用金属板1は、プレス成形により形成されてなるものである。【選択図】図1

Description

この発明は、回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュールならびに、パワーモジュールの製造方法に関するものであり、特には、回路基板の絶縁基板上に設ける金属板の厚みの大小によらず、所要の絶縁性を確保できるパターニングを可能にする技術を提案するものである。
民生機器用や、ガソリン自動車、電気自動車その他の車載用等として用いられ得るパワーモジュールは一般に、絶縁基板の両面のそれぞれに、銅箔等の金属板を接合してなる回路基板を、ヒートシンクとして機能するベース板上に固定し、その回路基板上にパワートランジスタ等の半導体素子を搭載させて使用に供されるものであり、使用に際し、半導体素子が発する高熱をベース板に伝導させて、その熱を速やかに放散することが求められる。
なお、そのような回路基板では一般に、金属板に接合させる絶縁基板として、セラミックス基板を用いることがある。この場合、セラミックス基板には、当該金属板との直接接合が可能なアルミナ(Al23)が用いられていたが、近年は、このアルミナ製セラミックス基板に代えて、特許文献1〜3等に記載されているように、優れた熱伝導性を有する窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物セラミックス基板とすることが有効であると考えられている。絶縁基板は樹脂材料等の他の材料で構成することもある。
特開昭64−84648号公報 特公平5−18477号公報 特開平5−218229号公報
ところで、上述したような回路基板を製造するには、セラミックス基板等に代表される絶縁基板に、金属板を接合させた後、金属板の露出表面上に感光性フィルムをラミネートし、次いで、その感光性フィルムを露光及び現像することにより、感光性フィルムに所定のレジストパターンを形成し、その後、エッチングによって、レジストパターンを介して金属板の不要な部分を除去することにより、金属板に回路パターンを形成し、最後に、レジストパターンを剥離して除去することが一般に行われている。
しかるに、このように、絶縁基板上の金属板に、エッチングによって金属板の不要部分を除去することは、回路基板の製造工程を複雑化させて製造能率を低下させるとともに、製造コストの増大を招くという問題がある。特に、窒化アルミニウムからなる絶縁基板は比較的高価であるので、これを用いる回路基板では、エッチングによる回路パターンの形成は、回路基板の価格をさらに上昇させる。
また、上述したようにしてエッチングにより回路パターンを形成すると、エッチング反応が拡散律速で等方的に進行することに起因して、図11に断面図で示すように、回路基板101の厚み方向で、金属板102の露出表面Seから絶縁基板103側の接合表面Sbに向かうに従って、金属板102の除去される部分が少なくなる。その結果として、回路基板101の断面視で、エッチングにより除去せずに残した金属板102の複数の回路構成部分102a、102bの相互が、絶縁基板103側に向かうに従って次第に接近するテーパ形状をなすパターン溝104が形成されることが知られている。
これにより、特に、放熱性の向上等を目的として、回路基板101の金属板102を厚みが比較的厚いものとした場合は、絶縁基板103との接合表面Sb側の金属板102の不要部分がエッチングで十分に除去されずに、絶縁基板103側で金属板の複数の回路構成部分102a、102bが極めて近接し、又は甚だしくは接触することになり、パターニングによる絶縁性が確保されなくなるという問題があった。
この金属板は半導体素子の直下に位置することがあり、その厚みはパワーモジュールの放熱に大きく影響するところ、エッチングによって回路パターンの形成する手法では、上述した絶縁性低下の理由より、金属板の厚みを厚くすることには限界があるので、この手法によっては、金属板厚みの増大による放熱性の更なる向上を実現することができなかった。
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、回路基板用金属板の厚みの大小によらず、パターニングによる所要の絶縁性を確保しつつ、回路基板を容易に製造することのできる回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュール、ならびに、パワーモジュールの製造方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、当該技術分野ではこれまでに用いられていなかったプレス成形により、たとえば回路パターンに合わせた所定の形状の金属板を予め成形した後に、これを絶縁基板に接合させるという新規な手法を用いることにより、先述したようなエッチングによって回路パターンを形成する場合の問題を解決できることを新たに見出した。
かかる知見に基き、この発明の回路基板用金属板は、プレス成形により形成されてなるものである。
この発明の回路基板用金属板は、プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されたものとすることができる。
ここで、当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されていることがある。
この場合、前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合は、百分率で表して10%以下であることが好ましい。
またこの場合、前記ダレ部を通る断面視で、回路基板用金属板の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比が、1/3以下であることが好ましい。
また、この発明の回路基板用金属板は、互いに離隔する複数個の回路構成部品を有することが好ましい。
上記の回路構成部品の厚みは、0.2mm〜3.0mmの範囲内とすることが好ましい。
上記の複数個の回路構成部品は、互いに切り離されて独立して存在するものとすることができる。
この発明の回路基板用金属板成形品は、上記の回路基板用金属板を備えるものであって、複数個の回路構成部品のそれぞれの形状に対応する複数個の嵌合孔部を設けた部品保持部材を有し、前記部品保持部材の複数個の嵌合孔部内に、複数個の回路構成部品が、厚み方向の少なくとも一部で摩擦係合して嵌め込まれてなるものである。
この場合においては、部品保持部材の厚み方向で、回路構成部品の、前記嵌合孔部内への嵌込み量を、回路構成部品の厚みの10%〜70%の範囲内とすることが好ましい。
またここでは、回路構成部品の、前記嵌合孔部内への嵌込み量の最大値と最小値の差を、0.3mm以下とすることが好ましい。
またこの場合、前記嵌合孔部内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品が、部品保持部材の表面側で該表面から窪んで位置するとともに、部品保持部材の裏面側で該裏面から突出して位置するものとすることができる。
なお、この明細書及び特許請求の範囲では、部品保持部材等の「表面」及び「裏面」との用語は、単に、部品保持部材等の一方の面と、その裏側の他方の面とを区別するためのみに用いており、「裏面」と「表面」とを入れ替えて解釈することも可能である。
そしてまたここでは、前記嵌合孔部内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品の相互間の間隔は、回路構成部品の厚みに対する比で表して、0.5以上とすることが好ましい。
なお、上記の部品保持部材は、一方向に向けて延びる金属条の形状をなすものとすることができる。
この発明の回路基板は、上記のいずれかの回路基板用金属板の回路構成部品と、前記回路構成部品が接合された絶縁基板とを備えるものである。
この発明の回路基板では、絶縁基板上に接合された複数個の回路構成部品が、該回路構成部品の厚み方向の全体にわたって、0.5mm〜5.0mmの範囲内で互いに離隔して配置されていることが好ましい。
またこの発明のパワーモジュールは、上記のいずれかの回路基板を備えるものである。
この発明のパワーモジュールの製造方法は、プレス成形により金属材料を打ち抜いて、該金属材料から、互いに離隔する複数個の回路構成部品を成形し、その後、回路構成部品を絶縁基板上に貼付させ、回路構成部品上に半導体素子を搭載することにある。
この発明のパワーモジュールの製造方法では、プレス成形により回路構成部品を成形するに当り、前記金属材料を打ち抜いて、該金属材料を、互いに離隔する複数個の回路構成部品と、複数個の回路構成部品のそれぞれの外輪郭形状に対応する形状をなす複数個の嵌合孔部を設けた部品保持部材とに分離し、次いで、各回路構成部品を、部品保持部材の対応する各嵌合孔部内に、厚み方向の少なくとも一部で摩擦係合させて嵌め込んで、回路構成部品及び部品保持部材を有する金属板成形品を形成し、回路構成部品を絶縁基板上に貼付させるに際し、前記金属板成形品の回路構成部品を絶縁基板に接合させ、その後、絶縁基板上の回路構成部品から、前記金属板成形品の部品保持部材を取り外して、該部品保持部材を除去することが好ましい。
この発明によれば、プレス成形により所定の形状に成形された回路基板用金属板を、絶縁基板、例えばセラミックス基板上に接合させることにより、回路基板を容易に製造することができる。
また、プレス成形では、先述のエッチングのようなテーパ形状の断面にならない切断面を形成することができるので、金属板のパターニングによる所要の絶縁性を確保することができる。
この発明の回路基板用金属板の一の実施形態を、セラミックス基板及び金属箔とともに示す斜視図である。 図1の回路基板用金属板を用いて製造した回路基板を示す斜視図である。 図2のIII−III線に沿う断面図である。 回路基板用金属板を成形することのできるプレス成形の各工程を模式的に示す部分断面図である。 図4のプレス成形により成形された回路基板用金属板における切断面の正面図及び、そのb−b線に沿う部分断面図である。 図1のVI−VI線に沿う断面図である。 この発明の回路基板用金属板成形品の一の実施形態を、セラミックス基板及び金属箔とともに示す斜視図である。 図7の回路基板用金属板成形品の裏面側を示す斜視図である。 図7の回路基板用金属板成形品を成形することのできるプレス成形の各工程を模式的に示す部分断面図である。 図7のX−X線に沿う断面図である。 エッチングによりセラミックス基板上の金属板の不要部分を除去して製造された回路基板の部分断面図である。
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に例示するところにおいて、図中1は、この発明の一の実施形態の回路基板用金属板(以下、単に「金属板」ともいう。)を示し、また、図中2は、回路基板用金属板1が表面に接合される絶縁基板を、図中3は、絶縁基板2の裏面に接合された金属箔をそれぞれ示す。
ここで、絶縁基板2は、セラミックス又は樹脂その他の材料からなるものである。絶縁基板2をセラミックス材料からなるものとする場合、そのようなセラミックス材料の具体例としては、たとえば、アルミナ(Al23)等の酸化物セラミックス又は、窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物アルミニウムを挙げることができる。なかでも、窒化アルミニウムは、優れた熱伝導性を有し、パワー半導体素子により生じた熱を効果的に放散させることができるので、絶縁基板2の材質として好適である。
またここで、金属板1は、たとえば、純銅又は、所要の元素を添加した銅合金等の金属材料からなる金属箔ないし金属板の形態をなすものとすることができ、絶縁基板2の表面に直接的に接合され、又は銀のろう材もしくはチタンの接合層等を介して間接的に接合される。
より具体的には、金属板1を構成する純銅としては、たとえば、タフピッチ銅や、無酸素銅、高純度銅等を挙げることができ、また、銅合金としては、たとえば、錫含有銅やジルコニウム含有銅、銀含有銅、クロム含有銅等を挙げることができる。
そしてまた、金属箔3は、金属板1と同様の、純銅又は、所要の元素を添加した銅合金等の金属材料からなるものであり、絶縁基板2の裏面に直接的又は間接的に接合される。但し、回路基板によっては、絶縁基板2の裏面側にこのような金属箔3を設けないこともあるので、この発明の回路基板では、金属箔3は必須の構成ではない。
ここにおいて、従来は、金属箔を絶縁基板の表面上に、たとえば直接的に接合させた後、その金属箔の露出表面に感光性フィルムを積層させるとともに露光・現像してマスクし、エッチングによりマスクを介して金属箔の不要部分を除去して、金属箔に回路パターンを形成していた。
しかしながら、このようなエッチングによる回路パターンの形成は、工程が複雑であり、製造能率の低下及び製造コストの増加を招く他、特に金属箔の厚みを増加させた場合に、金属箔の厚み方向にわたって不要部分を確実にエッチング除去できないことから、絶縁性の低下をもたらすという問題があった。
この問題に対処するため、この実施形態では、金属条等の形状をなす金属材料にプレス成形を施して、所定の形状の金属板1を予め成形し、この金属板1を、図1に矢印で示す如く絶縁基板2の表面上に接合させる。
それにより、従来技術のような複雑なエッチング工程を経ることなしに、図2に示すような回路基板4を製造することができる。またプレス成形により、図3に断面図で示すように、たとえば、金属板1の表面Sfや裏面Sbに対して略垂直な切断面8を形成することが可能になり、この場合、金属板1の厚み方向の全体にわたって、互いに対向する切断面8を所定の距離で離して位置させることができるので、所要の絶縁性を確実に確保することができる。
なお、上記の回路基板4を、必要に応じて、金属箔3側で、図示しないベース板(ヒートシンク)上に固定するとともに、回路基板4の金属板1上に、これも図示しない半導体素子を搭載することにより、パワーモジュールを製造することができる。
図1に示す実施形態では、金属板1は、プレス成形により回路パターン6が形成されたことに起因して、回路パターン6によって互いに離隔される複数個の回路構成部品7を有するものである。
さらにこの実施形態の金属板1では、図1に示すように、複数個の回路構成部品7が、互いに連結されずに切り離されて、独立に存在している。
そのため、図1の実施形態では、同図に矢印で示すように、金属板1の別個独立した複数個の回路構成部品7のそれぞれを、絶縁基板2の表面上の所定の箇所に接合することにより、図2に示すような回路パターン6を有する回路基板4を製造することができる。
このような互いに独立した複数個の回路構成部品7を有する金属板1は、後述のプレス成形の打抜き加工によって形成することができる。
金属板1を構成する各回路構成部品7の厚みDは、たとえば、0.2mm〜3.0mmの範囲内とすることができる。特に、金属板1を、たとえば0.5mm以上の厚みの回路構成部品7からなるものとした場合、上述したようにエッチングによってはパターニングによる絶縁性が低下する場合が多いので、この実施形態のように、プレス成形により回路パターン6を予め付与した金属板1を用いることが有利である。
従って、この観点から、回路構成部品7は、厚みが0.2mm〜3.0mmのものであることが有利である。この一方で、回路構成部品7の厚みが上記の上限値を超えるものである場合は、回路構成部品の形状不良が発生するおそれがある。
なお、このように回路構成部品7の厚みDを比較的厚くすることで、その上に搭載される半導体素子が発する熱を、回路構成部品7で有効に放散することが可能になって、絶縁基板側に設けていたヒートシンクを不要とすることができる場合がある。この場合、ヒートシンクを設けないことにより、パワーモジュール全体として飛躍的な薄肉化、小型化を実現することができる。
上記のような金属板1をプレス成形により製造するには、たとえば、図4(a)に模式的に示すように、平板状の金属材料51を、互いに離隔させて位置させたパンチ61及びダイ62の間に配置し、その後、図4(b)に示すように、パンチ61を、金属材料51の厚みを超える押し込み量で、ダイ62に向けて押し込んで、金属材料51を打ち抜くことにより、金属板1の回路構成部品7を分離させてそれぞれ得ることができる。
この場合、金属板1の回路構成部品7の側面は、図5(a)に例示するような、上記のプレス成形の抜き加工により形成される切り口面としての切断面8になる。
より詳細には、この切断面8は、金属板1の厚み方向(図5(a)では上下方向)に直交する幅方向(図5(a)では左右方向)に延びる各一層の破断面領域8a及びせん断面領域8bからなるものであり、ここでは、破断面領域8aは、金属板1の表面Sf側に位置するとともに、破断面領域8aに隣接するせん断面領域8bは、金属板1の裏面Sb側に位置する。
なおここで、切断面8の上記のせん断面領域8bは、プレス成形によって金属板1の厚み方向に引き伸ばされた際にパンチ61又はダイ62に擦れることによって形成されるものと考えられ、図5(a)に示すように、厚み方向に若干の線状模様の入った平滑面となる。一方、破断面領域8aは、プレス成形で引き伸ばされた後に、スクラップとなる金属板残部から引きちぎられることによって生じるものと考えられ、図5(a)に示すように、せん断面領域8bとは明確に異なり、凹凸が存在するディンプル状の面となることが知られている。
金属板1が、このような切断面8を有する場合、その切断面8のせん断面領域8bと、金属板1の裏面Sbとがなす角部に、図5(b)及び図6に断面図で示すように、切断面8側(図5(b)では左側)に向けて金属板1の厚みを漸減させる向きに湾曲する曲面状等の傾斜面を有するダレ部9が形成されることがある。このようなダレ部9の形成は、プレス成形時のパンチの61の押し込みに起因するものと考えられている。
かかるダレ部9が大きく形成されると、このダレ部9側である金属板1の裏面Sbを、絶縁基板2に接合した際に、ダレ部9で絶縁基板2と十分に密着しないことになるので、回路基板4としての十分な密着性を確保し得ないことがある。なお、金属板1の表面Sf側の角部には、表面Sfから突出するバリが形成され得るので、この表面Sf側を絶縁基板2に接合することは、密着性の観点から望ましいとはいえない。
それ故に、図6に示すように、ダレ部9を通る断面で視て、金属板1を構成する回路構成部品7の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合(Wd/Wp)は、百分率で表して10%以下とすることが好ましく、なかでも3%以下とすることがより好ましい。
また、同様にダレ部9を通る断面で視た場合、金属板1を構成する回路構成部品7の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比(Hd/D)は、1/3以下とすることが好ましく、特に百分率で1%以下とすることがより好ましい。
それにより、ダレ部9を比較的小さくして、プレス成形により形成した金属板1であっても、絶縁基板2との密着性を大きく向上させることが可能になる。
回路構成部品7の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合(Wd/Wp)が10%を超える場合、ダレ部9が大きな幅方向の範囲で絶縁基板2と密着しないことから、密着性が不十分になるおそれがある。また、回路構成部品7の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比(Hd/D)が1/3を超える場合、絶縁基板2との密着力が低下することが懸念される。
なおここで、ダレ部9は、図6に示す断面で、ダレ部9を通る断面で、回路構成部品7の、厚みが一定になる幅方向中央部の裏面Sbに平行な直線と、切断面8の特にせん断面領域8bに平行な直線とで囲まれる領域にある部分とする。従って、回路構成部品7の厚みは、図6に示すように、切断面8側に向かうに従って、ダレ部9で次第に薄くなるところ、ダレ部形成領域の幅Wdは、その厚みが薄くなり始める位置Paから、切断面8のせん断面領域8bまでの長さを意味し、また、ダレ部形成領域の高さHdは、その位置Paから、せん断面領域8bまでの長さを意味する。
図7に、一の実施形態の回路基板用金属板成形品21(以下、単に「金属板成形品21」ともいう。)を示す。
図7に示す金属板成形品21は、先述したような複数個の回路構成部品27と、さらに、回路構成部品27のそれぞれが嵌め込まれた複数個の嵌合孔部28aを有する部品保持部材28とを有する。この実施形態では、部品保持部材28は、たとえば平面視が方形状等のプレート形状をなすものとしたが、図示は省略するが、一方向に向かって延びる長尺の金属条の形状のものとすることも可能であり、このような部品保持部材では、複数個の回路構成部品27が嵌め込まれた複数個の嵌合孔部28aの複数組を、長尺の金属条の長手方向に一定のピッチで設けることができる。
ここでは、嵌合孔部28aのそれぞれは、各回路構成部品27の外輪郭形状に対応させてそれと同一の平面輪郭形状を有するものとしている。そして、これらの嵌合孔部28aのそれぞれに、各回路構成部品27が嵌め込まれ、回路構成部品27が嵌合孔部28a内に、その厚み方向の少なくとも一部で摩擦により係合している。
この金属板成形品21では、回路構成部品27は、部品保持部材28とほぼ同一の厚みを有し、そして、各回路構成部品27を厚み方向の一部で、嵌合孔部28aに摩擦係合させている。それにより、回路構成部品27は、部品保持部材28の表面Sf側では、図7に示すように、その表面Sfから窪む位置に回路構成部品27の表面が存在するとともに、部品保持部材28の裏面Sb側では、図8に示すように、その裏面Sbから突出する位置に回路構成部品27の裏面が存在する。
このような金属板成形品21を成形するには、たとえば、いわゆる順送金型等で、一方向に向けて間欠的に送られる金属材料51に対し、図9(a)及び(b)に例示するように、先述した実施形態と同様にして、パンチ61を、金属材料51の厚みを超える押し込み量で、ダイ62に向けて押し込む打抜き加工を施すことにより、金属材料51を、複数個の回路構成部品27と、それらの回路構成部品27を抜いた箇所に複数個の嵌合孔部28aが形成された部品保持部材28とに分離する。
そしてその後、図9(c)に示すように、部品保持部材28から分離した回路構成部品27を、部品保持部材28の対応する嵌合孔部28aに押し戻して、各回路構成部品27を、対応する各嵌合孔部28a内に嵌め込むことにより、金属板成形品21を成形することができる。
金属板成形品21は、かかるプレス成形により成形されるものであるので、回路構成部品27の外周面(側面)には、先述したような破断面領域及びせん断面領域が形成された切断面となる。
金属板成形品21をパワーモジュールの製造に用いるに当っては、回路構成部品27が突出する側の裏面Sbを、絶縁基板2の表面上に接合した後、たとえば、回路構成部品27を絶縁基板2側に押圧した状態で、絶縁基板2側とは反対側の向きに、部品保持部材28を引っ張ることで、回路構成部品27から部品保持部材28を取り外して、部品保持部材28を除去する。なおその後は、先述したところと同様にして、回路構成部品27上に半導体素子を搭載させるとともに、必要に応じて、金属箔3側にベース板を設けることにより、パワーモジュールを製造することができる。
ここでは、絶縁基板2の表面に接合させるまで、絶縁基板2上での所期した回路パターンを形成する複数個の回路構成部品27の所定の配置態様を、部品保持部材28により維持することができるので、回路構成部品27を、部品保持部材28に保持された状態で、絶縁基板2の表面に接合させるという極めて簡便な方法により、回路基板4を製造することができる。また、この実施形態の金属板成形品21は、複数個の回路構成部品27の形状が部品保持部材28で確実に維持されるので、微細な回路の形成精度を大きく高めることができる。
上記の金属板成形品21では、回路構成部品27を部品保持部材28に確実に保持させつつ、回路構成部品27を絶縁基板2の表面に接合した後の部品保持部材28の分離を、大きな力を要することなしに容易に行い得るものとすることが望ましい。
この観点から、部品保持部材28の厚み方向で、回路構成部品27の、嵌合孔部28aへの嵌込み量Veは、図10に示すように、回路構成部品27の厚みDの10%〜70%とすることが好適である。回路構成部品27の嵌込み量Veが小さすぎると、回路構成部品27が、部品保持部材28から意図せずして外れるおそれがある。この一方で、回路構成部品27の嵌込み量Veが大きすぎると、回路構成部品27と部品保持部材28とが強固に摩擦係合することになって、絶縁基板2上への回路構成部品27の貼付時に、部品保持部材28が分離し難くなる他、その分離により回路構成部品27に意図しない変形が生じることが懸念される。
そのため、回路構成部品27の嵌込み量Veは、その厚みDの30%〜95%とすることがより一層好ましい。
なお、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた回路構成部品27は、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた部分のうち、たとえば、回路構成部品27の表面Sf側の角部に形成されて表面Sfから突出するバリ等を含む接触部で、部品保持部材28の嵌合孔部28aの壁面と接触して保持され得る。つまり、回路構成部品27は、プレス成形により形成されることにより、図5(b)に示す切断面8のような凹凸のある切断面を有することから、部品保持部材28と、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた部分の側面全体では接触せずに、その一部のみの接触部で接触して保持される場合がある。
この場合、回路構成部品27における、部品保持部材28と接触するこの接触部の厚み方向の領域は、たとえば回路構成部品27の厚みDの1〜5%、典型的には回路構成部品27の厚みDの3%程度とすることができる。かかる接触部の領域は、回路構成部品27の外周面の擦られた痕跡を確認することにより特定することができる。
そして、部品保持部材28で回路構成部品27を確実に保持させるとともに、絶縁基板2上へ回路構成部品27を高い精度で強固に貼付するため、上述した嵌込み量Veの最大値と最小値の差は、0.3mm以下とすることが好適である。言い換えれば、嵌込み量Veの最大値と最小値の差が0.3mmを上回ると、回路構成部品27の各位置で嵌込み量のばらつきが生じて、部品保持部材28からの回路構成部品27の意図しない外れが生じる可能性がある他、絶縁基板2上に回路構成部品27を貼付する際に、それらの十分な密着性が得られない懸念があるとともに、若干ずれて貼付されて所望の回路パターンが得られないことも考えられる。この観点より、嵌込み量Veの最大値と最小値の差は、0.1mm以下とすることがより好ましい。
嵌込み量Veの最大値と最小値の差は、回路構成部品27を嵌合孔部28a内へ嵌め込んだパターン5枚について、三次元計測器等を用いて回路構成部品27の高さを測定し、最大の高さと最小の高さの差を求めることにより算出することができる。例えば定盤上にパターンを置き、定点に対する高さの差から求めることも可能である。
嵌込み量Veの最大値と最小値の差を上記のようにコントロールするには、たとえば、金型にスペーサを配置したり、ポンチの高さの調整を行って押し戻し量を調整したりすること等により行うことができる。
ここでは、金属板成形品21はその全体にわたって均一な厚みDを有するものとしているところ、回路構成部品27の、部品保持部材28の裏面Sbからの突出高さHpでいえば、回路構成部品27の厚みDの30%〜90%とすることが好適であり、この突出高さHpは、より好ましくは、厚みDの5%〜70%とする。
なお、回路構成部品27と部品保持部材28との間には、その厚み方向の少なくとも一部に、摩擦係合箇所FEが存在することになる。この摩擦係合箇所FEは、回路構成部品27が部品保持部材28に保持されるのであれば、回路構成部品27の周方向でその外周面の一部に存在するものであってもよいが、通常は、回路構成部品27の外周面のほぼ全周にわたって存在する。
また、プレス成形により形成される金属板成形品21では、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品27の相互間の間隔G(つまり回路パターン幅)は、最も狭い箇所で、回路構成部品27の厚みDに対する比(G/D)で表して、0.5以上とすることができる。これは、回路構成部品27の厚みDに対する間隔Gの比(G/D)が0.5未満のものは、プレス成形による成形が困難となる可能性があることによる。
このような金属板1や、金属板成形品21を用いることにより、絶縁基板2上に接合された複数個の回路構成部品7、27が、回路構成部品の厚み方向の全体にわたって、0.5mm〜5.0mmの範囲で離隔した回路基板4を製造することが可能になる。
次に、この発明の回路基板用金属板を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
(試験例1)
回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合を、表1及び2に示すように変化させたサンプルA〜Eの回路基板用金属板を作製し、各サンプルA〜Eを、拡散接合(熱圧着)、ろう付け等によりセラミックス板や樹脂に貼付して、その貼付け状況を外観観察により調査した。それらの結果をそれぞれ表1及び2に示す。
表1及び2中、「○」は、セラミックス板や樹脂と回路基板用金属板間に空隙・剥離等の欠陥がなく良好であったことを示し、「△」は、セラミックス板や樹脂と回路基板用金属板間に一部空隙や剥離の欠陥が認められたことを示し、「×」は、セラミックス板や樹脂と回路基板用金属板が貼り付かなかったことを示す。
表1及び2に示すところから、ダレ部形成領域の幅の割合(Wd/Wp×100)が小さいほど、特に10%以下であれば、セラミックス板や樹脂との貼り付けが良好になることが解かる。
(試験例2)
図7、8、10に示すように、部品保持部材の嵌合孔部に回路構成部品を嵌め込んだ金属板成形品で、その嵌込み量の最大値と最小値との差を、表3及び4に示すように変化させたサンプルA〜Eを作製し、各サンプルA〜Eを、拡散接合(熱圧着)、ろう付け等によりセラミックス板や樹脂に貼付して、その貼付け状況を外観観察により調査した。それらの結果をそれぞれ表3及び4に示す。
表3及び4中、「○」は、セラミックス板や樹脂と金属板成形品間に空隙・剥離等の欠陥がなく良好であったことを示し、「△」は、セラミックス板や樹脂と金属板成形品間に一部空隙や剥離の欠陥が認められたことを示し、「×」は、セラミックス板や樹脂と金属板成形品が貼り付かなかったことを示す。
表3及び4より、嵌込み量の最大値と最小値の差が小さいほど、セラミックス板や樹脂との密着性が良好になり、特にこの差が0.3mm以下の場合は、セラミックス板や樹脂との間に、貼り付けの欠陥がほぼ確認されなかった。
1 回路基板用金属板
2 絶縁基板
3 金属箔
4 回路基板
6、26 回路パターン
7、27 回路構成部品
8 切断面
8a 破断面領域
8b せん断面領域
21 回路基板用金属板成形品
28 部品保持部材
28a 嵌合孔部
51 金属材料
61 パンチ
62 ダイ
D 金属板、金属材料、回路構成部品の厚み
Hp 回路構成部品の突出高さ
Sf 表面
Sb 裏面
FE 摩擦係合箇所
この発明は、回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュールならびに、パワーモジュールの製造方法に関するものであり、特には、回路基板の絶縁基板上に設ける金属板の厚みの大小によらず、所要の絶縁性を確保できるパターニングを可能にする技術を提案するものである。
民生機器用や、ガソリン自動車、電気自動車その他の車載用等として用いられ得るパワーモジュールは一般に、絶縁基板の両面のそれぞれに、銅箔等の金属板を接合してなる回路基板を、ヒートシンクとして機能するベース板上に固定し、その回路基板上にパワートランジスタ等の半導体素子を搭載させて使用に供されるものであり、使用に際し、半導体素子が発する高熱をベース板に伝導させて、その熱を速やかに放散することが求められる。
なお、そのような回路基板では一般に、金属板に接合させる絶縁基板として、セラミックス基板を用いることがある。この場合、セラミックス基板には、当該金属板との直接接合が可能なアルミナ(Al23)が用いられていたが、近年は、このアルミナ製セラミックス基板に代えて、特許文献1〜3等に記載されているように、優れた熱伝導性を有する窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物セラミックス基板とすることが有効であると考えられている。絶縁基板は樹脂材料等の他の材料で構成することもある。
特開昭64−84648号公報 特公平5−18477号公報 特開平5−218229号公報
ところで、上述したような回路基板を製造するには、セラミックス基板等に代表される絶縁基板に、金属板を接合させた後、金属板の露出表面上に感光性フィルムをラミネートし、次いで、その感光性フィルムを露光及び現像することにより、感光性フィルムに所定のレジストパターンを形成し、その後、エッチングによって、レジストパターンを介して金属板の不要な部分を除去することにより、金属板に回路パターンを形成し、最後に、レジストパターンを剥離して除去することが一般に行われている。
しかるに、このように、絶縁基板上の金属板に、エッチングによって金属板の不要部分を除去することは、回路基板の製造工程を複雑化させて製造能率を低下させるとともに、製造コストの増大を招くという問題がある。特に、窒化アルミニウムからなる絶縁基板は比較的高価であるので、これを用いる回路基板では、エッチングによる回路パターンの形成は、回路基板の価格をさらに上昇させる。
また、上述したようにしてエッチングにより回路パターンを形成すると、エッチング反応が拡散律速で等方的に進行することに起因して、図11に断面図で示すように、回路基板101の厚み方向で、金属板102の露出表面Seから絶縁基板103側の接合表面Sbに向かうに従って、金属板102の除去される部分が少なくなる。その結果として、回路基板101の断面視で、エッチングにより除去せずに残した金属板102の複数の回路構成部分102a、102bの相互が、絶縁基板103側に向かうに従って次第に接近するテーパ形状をなすパターン溝104が形成されることが知られている。
これにより、特に、放熱性の向上等を目的として、回路基板101の金属板102を厚みが比較的厚いものとした場合は、絶縁基板103との接合表面Sb側の金属板102の不要部分がエッチングで十分に除去されずに、絶縁基板103側で金属板の複数の回路構成部分102a、102bが極めて近接し、又は甚だしくは接触することになり、パターニングによる絶縁性が確保されなくなるという問題があった。
この金属板は半導体素子の直下に位置することがあり、その厚みはパワーモジュールの放熱に大きく影響するところ、エッチングによって回路パターンの形成する手法では、上述した絶縁性低下の理由より、金属板の厚みを厚くすることには限界があるので、この手法によっては、金属板厚みの増大による放熱性の更なる向上を実現することができなかった。
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、回路基板用金属板の厚みの大小によらず、パターニングによる所要の絶縁性を確保しつつ、回路基板を容易に製造することのできる回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュール、ならびに、パワーモジュールの製造方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、当該技術分野ではこれまでに用いられていなかったプレス成形により、たとえば回路パターンに合わせた所定の形状の金属板を予め成形した後に、これを絶縁基板に接合させるという新規な手法を用いることにより、先述したようなエッチングによって回路パターンを形成する場合の問題を解決できることを新たに見出した。
かかる知見に基き、この発明の回路基板用金属板は、プレス成形により形成されてなる回路基板用金属板であって、プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されており、当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されており、前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下であるものである
また、この発明の回路基板用金属板は、プレス成形により形成されてなる回路基板用金属板であって、プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されており、当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されており、前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比が、1/3以下であるものである。
また、この発明の回路基板用金属板は、互いに離隔する複数個の回路構成部品を有することが好ましい。
上記の回路構成部品の厚みは、0.2mm〜3.0mmの範囲内とすることが好ましい。
上記の複数個の回路構成部品は、互いに切り離されて独立して存在するものとすることができる。
この発明の回路基板用金属板成形品は、上記の回路基板用金属板を備えるものであって、複数個の回路構成部品のそれぞれの形状に対応する複数個の嵌合孔部を設けた部品保持部材を有し、前記部品保持部材の複数個の嵌合孔部内に、複数個の回路構成部品が、厚み方向の少なくとも一部で摩擦係合して嵌め込まれてなるものである。
お、この明細書及び特許請求の範囲では、部品保持部材等の後述する「表面」及び「裏面」との用語は、単に、部品保持部材等の一方の面と、その裏側の他方の面とを区別するためのみに用いており、「裏面」と「表面」とを入れ替えて解釈することも可能である。
そしてまたここでは、前記嵌合孔部内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品の相互間の間隔は、回路構成部品の厚みに対する比で表して、0.5以上とすることが好ましい。
なお、上記の部品保持部材は、一方向に向けて延びる金属条の形状をなすものとすることができる。
この発明の回路基板は、上記のいずれかの回路基板用金属板の回路構成部品と、前記回路構成部品が接合された絶縁基板とを備えるものである。
この発明の回路基板では、絶縁基板上に接合された複数個の回路構成部品が、該回路構成部品の方向の全体にわたって、0.5mm〜5.0mmの範囲内で互いに離隔して配置されていることが好ましい。
またこの発明のパワーモジュールは、上記のいずれかの回路基板を備えるものである。
この発明のパワーモジュールの製造方法は、プレス成形により金属材料を打ち抜いて、該金属材料から、互いに離隔する複数個の回路構成部品を成形し、その後、回路構成部品を絶縁基板上に貼付させ、回路構成部品上に半導体素子を搭載する、パワーモジュールの製造方法であって、前記プレス成形により、前記回路構成部品に、破断面領域とせん断面領域とを有する切断面を形成するとともに、前記回路構成部品の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて前記回路構成部品の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部を形成し、前記ダレ部を通る断面視で、当該回路構成部品の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下であるものである。
また、この発明のパワーモジュールの製造方法は、プレス成形により金属材料を打ち抜いて、該金属材料から、互いに離隔する複数個の回路構成部品を成形し、その後、回路構成部品を絶縁基板上に貼付させ、回路構成部品上に半導体素子を搭載する、パワーモジュールの製造方法であって、前記プレス成形により、前記回路構成部品に、破断面領域とせん断面領域とを有する切断面を形成するとともに、前記回路構成部品の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて前記回路構成部品の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部を形成し、前記ダレ部を通る断面視で、当該回路構成部品の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比が、1/3以下であるものである。
この発明のパワーモジュールの製造方法では、プレス成形により回路構成部品を成形するに当り、前記金属材料を打ち抜いて、該金属材料を、互いに離隔する複数個の回路構成部品と、複数個の回路構成部品のそれぞれの外輪郭形状に対応する形状をなす複数個の嵌合孔部を設けた部品保持部材とに分離し、次いで、各回路構成部品を、部品保持部材の対応する各嵌合孔部内に、厚み方向の少なくとも一部で摩擦係合させて嵌め込んで、回路構成部品及び部品保持部材を有する金属板成形品を形成し、回路構成部品を絶縁基板上に貼付させるに際し、前記金属板成形品の回路構成部品を絶縁基板に接合させ、その後、絶縁基板上の回路構成部品から、前記金属板成形品の部品保持部材を取り外して、該部品保持部材を除去することが好ましい。
この発明によれば、プレス成形により所定の形状に成形された回路基板用金属板を、絶縁基板、例えばセラミックス基板上に接合させることにより、回路基板を容易に製造することができる。
また、プレス成形では、先述のエッチングのようなテーパ形状の断面にならない切断面を形成することができるので、金属板のパターニングによる所要の絶縁性を確保することができる。
この発明の回路基板用金属板の一の実施形態を、セラミックス基板及び金属箔とともに示す斜視図である。 図1の回路基板用金属板を用いて製造した回路基板を示す斜視図である。 図2のIII−III線に沿う断面図である。 回路基板用金属板を成形することのできるプレス成形の各工程を模式的に示す部分断面図である。 図4のプレス成形により成形された回路基板用金属板における切断面の正面図及び、そのb−b線に沿う部分断面図である。 図1のVI−VI線に沿う断面図である。 この発明の回路基板用金属板成形品の一の実施形態を、セラミックス基板及び金属箔とともに示す斜視図である。 図7の回路基板用金属板成形品の裏面側を示す斜視図である。 図7の回路基板用金属板成形品を成形することのできるプレス成形の各工程を模式的に示す部分断面図である。 図7のX−X線に沿う断面図である。 エッチングによりセラミックス基板上の金属板の不要部分を除去して製造された回路基板の部分断面図である。
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に例示するところにおいて、図中1は、この発明の一の実施形態の回路基板用金属板(以下、単に「金属板」ともいう。)を示し、また、図中2は、回路基板用金属板1が表面に接合される絶縁基板を、図中3は、絶縁基板2の裏面に接合された金属箔をそれぞれ示す。
ここで、絶縁基板2は、セラミックス又は樹脂その他の材料からなるものである。絶縁基板2をセラミックス材料からなるものとする場合、そのようなセラミックス材料の具体例としては、たとえば、アルミナ(Al23)等の酸化物セラミックス又は、窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物アルミニウムを挙げることができる。なかでも、窒化アルミニウムは、優れた熱伝導性を有し、パワー半導体素子により生じた熱を効果的に放散させることができるので、絶縁基板2の材質として好適である。
またここで、金属板1は、たとえば、純銅又は、所要の元素を添加した銅合金等の金属材料からなる金属箔ないし金属板の形態をなすものとすることができ、絶縁基板2の表面に直接的に接合され、又は銀のろう材もしくはチタンの接合層等を介して間接的に接合される。
より具体的には、金属板1を構成する純銅としては、たとえば、タフピッチ銅や、無酸素銅、高純度銅等を挙げることができ、また、銅合金としては、たとえば、錫含有銅やジルコニウム含有銅、銀含有銅、クロム含有銅等を挙げることができる。
そしてまた、金属箔3は、金属板1と同様の、純銅又は、所要の元素を添加した銅合金等の金属材料からなるものであり、絶縁基板2の裏面に直接的又は間接的に接合される。但し、回路基板によっては、絶縁基板2の裏面側にこのような金属箔3を設けないこともあるので、この発明の回路基板では、金属箔3は必須の構成ではない。
ここにおいて、従来は、金属箔を絶縁基板の表面上に、たとえば直接的に接合させた後、その金属箔の露出表面に感光性フィルムを積層させるとともに露光・現像してマスクし、エッチングによりマスクを介して金属箔の不要部分を除去して、金属箔に回路パターンを形成していた。
しかしながら、このようなエッチングによる回路パターンの形成は、工程が複雑であり、製造能率の低下及び製造コストの増加を招く他、特に金属箔の厚みを増加させた場合に、金属箔の厚み方向にわたって不要部分を確実にエッチング除去できないことから、絶縁性の低下をもたらすという問題があった。
この問題に対処するため、この実施形態では、金属条等の形状をなす金属材料にプレス成形を施して、所定の形状の金属板1を予め成形し、この金属板1を、図1に矢印で示す如く絶縁基板2の表面上に接合させる。
それにより、従来技術のような複雑なエッチング工程を経ることなしに、図2に示すような回路基板4を製造することができる。またプレス成形により、図3に断面図で示すように、たとえば、金属板1の表面Sfや裏面Sbに対して略垂直な切断面8を形成することが可能になり、この場合、金属板1の厚み方向の全体にわたって、互いに対向する切断面8を所定の距離で離して位置させることができるので、所要の絶縁性を確実に確保することができる。
なお、上記の回路基板4を、必要に応じて、金属箔3側で、図示しないベース板(ヒートシンク)上に固定するとともに、回路基板4の金属板1上に、これも図示しない半導体素子を搭載することにより、パワーモジュールを製造することができる。
図1に示す実施形態では、金属板1は、プレス成形により回路パターン6が形成されたことに起因して、回路パターン6によって互いに離隔される複数個の回路構成部品7を有するものである。
さらにこの実施形態の金属板1では、図1に示すように、複数個の回路構成部品7が、互いに連結されずに切り離されて、独立に存在している。
そのため、図1の実施形態では、同図に矢印で示すように、金属板1の別個独立した複数個の回路構成部品7のそれぞれを、絶縁基板2の表面上の所定の箇所に接合することにより、図2に示すような回路パターン6を有する回路基板4を製造することができる。
このような互いに独立した複数個の回路構成部品7を有する金属板1は、後述のプレス成形の打抜き加工によって形成することができる。
金属板1を構成する各回路構成部品7の厚みDは、たとえば、0.2mm〜3.0mmの範囲内とすることができる。特に、金属板1を、たとえば0.5mm以上の厚みの回路構成部品7からなるものとした場合、上述したようにエッチングによってはパターニングによる絶縁性が低下する場合が多いので、この実施形態のように、プレス成形により回路パターン6を予め付与した金属板1を用いることが有利である。
従って、この観点から、回路構成部品7は、厚みが0.2mm〜3.0mmのものであることが有利である。この一方で、回路構成部品7の厚みが上記の上限値を超えるものである場合は、回路構成部品の形状不良が発生するおそれがある。
なお、このように回路構成部品7の厚みDを比較的厚くすることで、その上に搭載される半導体素子が発する熱を、回路構成部品7で有効に放散することが可能になって、絶縁基板側に設けていたヒートシンクを不要とすることができる場合がある。この場合、ヒートシンクを設けないことにより、パワーモジュール全体として飛躍的な薄肉化、小型化を実現することができる。
上記のような金属板1をプレス成形により製造するには、たとえば、図4(a)に模式的に示すように、平板状の金属材料51を、互いに離隔させて位置させたパンチ61及びダイ62の間に配置し、その後、図4(b)に示すように、パンチ61を、金属材料51の厚みを超える押し込み量で、ダイ62に向けて押し込んで、金属材料51を打ち抜くことにより、金属板1の回路構成部品7を分離させてそれぞれ得ることができる。
この場合、金属板1の回路構成部品7の側面は、図5(a)に例示するような、上記のプレス成形の抜き加工により形成される切り口面としての切断面8になる。
より詳細には、この切断面8は、金属板1の厚み方向(図5(a)では上下方向)に直交する幅方向(図5(a)では左右方向)に延びる各一層の破断面領域8a及びせん断面領域8bからなるものであり、ここでは、破断面領域8aは、金属板1の表面Sf側に位置するとともに、破断面領域8aに隣接するせん断面領域8bは、金属板1の裏面Sb側に位置する。
なおここで、切断面8の上記のせん断面領域8bは、プレス成形によって金属板1の厚み方向に引き伸ばされた際にパンチ61又はダイ62に擦れることによって形成されるものと考えられ、図5(a)に示すように、厚み方向に若干の線状模様の入った平滑面となる。一方、破断面領域8aは、プレス成形で引き伸ばされた後に、スクラップとなる金属板残部から引きちぎられることによって生じるものと考えられ、図5(a)に示すように、せん断面領域8bとは明確に異なり、凹凸が存在するディンプル状の面となることが知られている。
金属板1が、このような切断面8を有する場合、その切断面8のせん断面領域8bと、金属板1の裏面Sbとがなす角部に、図5(b)及び図6に断面図で示すように、切断面8側(図5(b)では左側)に向けて金属板1の厚みを漸減させる向きに湾曲する曲面状等の傾斜面を有するダレ部9が形成されることがある。このようなダレ部9の形成は、プレス成形時のパンチの61の押し込みに起因するものと考えられている。
かかるダレ部9が大きく形成されると、このダレ部9側である金属板1の裏面Sbを、絶縁基板2に接合した際に、ダレ部9で絶縁基板2と十分に密着しないことになるので、回路基板4としての十分な密着性を確保し得ないことがある。なお、金属板1の表面Sf側の角部には、表面Sfから突出するバリが形成され得るので、この表面Sf側を絶縁基板2に接合することは、密着性の観点から望ましいとはいえない。
それ故に、図6に示すように、ダレ部9を通る断面で視て、金属板1を構成する回路構成部品7の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合(Wd/Wp)は、百分率で表して10%以下とすることが好ましく、なかでも3%以下とすることがより好ましい。
また、同様にダレ部9を通る断面で視た場合、金属板1を構成する回路構成部品7の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比(Hd/D)は、1/3以下とすることが好ましく、特に百分率で1%以下とすることがより好ましい。
それにより、ダレ部9を比較的小さくして、プレス成形により形成した金属板1であっても、絶縁基板2との密着性を大きく向上させることが可能になる。
回路構成部品7の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合(Wd/Wp)が10%を超える場合、ダレ部9が大きな幅方向の範囲で絶縁基板2と密着しないことから、密着性が不十分になるおそれがある。また、回路構成部品7の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比(Hd/D)が1/3を超える場合、絶縁基板2との密着力が低下することが懸念される。
なおここで、ダレ部9は、図6に示す断面で、ダレ部9を通る断面で、回路構成部品7の、厚みが一定になる幅方向中央部の裏面Sbに平行な直線と、切断面8の特にせん断面領域8bに平行な直線とで囲まれる領域にある部分とする。従って、回路構成部品7の厚みは、図6に示すように、切断面8側に向かうに従って、ダレ部9で次第に薄くなるところ、ダレ部形成領域の幅Wdは、その厚みが薄くなり始める位置Paから、切断面8のせん断面領域8bまでの長さを意味し、また、ダレ部形成領域の高さHdは、その位置Paから、せん断面領域8bまでの長さを意味する。
図7に、一の実施形態の回路基板用金属板成形品21(以下、単に「金属板成形品21」ともいう。)を示す。
図7に示す金属板成形品21は、先述したような複数個の回路構成部品27と、さらに、回路構成部品27のそれぞれが嵌め込まれた複数個の嵌合孔部28aを有する部品保持部材28とを有する。この実施形態では、部品保持部材28は、たとえば平面視が方形状等のプレート形状をなすものとしたが、図示は省略するが、一方向に向かって延びる長尺の金属条の形状のものとすることも可能であり、このような部品保持部材では、複数個の回路構成部品27が嵌め込まれた複数個の嵌合孔部28aの複数組を、長尺の金属条の長手方向に一定のピッチで設けることができる。
ここでは、嵌合孔部28aのそれぞれは、各回路構成部品27の外輪郭形状に対応させてそれと同一の平面輪郭形状を有するものとしている。そして、これらの嵌合孔部28aのそれぞれに、各回路構成部品27が嵌め込まれ、回路構成部品27が嵌合孔部28a内に、その厚み方向の少なくとも一部で摩擦により係合している。
この金属板成形品21では、回路構成部品27は、部品保持部材28とほぼ同一の厚みを有し、そして、各回路構成部品27を厚み方向の一部で、嵌合孔部28aに摩擦係合させている。それにより、回路構成部品27は、部品保持部材28の表面Sf側では、図7に示すように、その表面Sfから窪む位置に回路構成部品27の表面が存在するとともに、部品保持部材28の裏面Sb側では、図8に示すように、その裏面Sbから突出する位置に回路構成部品27の裏面が存在する。
このような金属板成形品21を成形するには、たとえば、いわゆる順送金型等で、一方向に向けて間欠的に送られる金属材料51に対し、図9(a)及び(b)に例示するように、先述した実施形態と同様にして、パンチ61を、金属材料51の厚みを超える押し込み量で、ダイ62に向けて押し込む打抜き加工を施すことにより、金属材料51を、複数個の回路構成部品27と、それらの回路構成部品27を抜いた箇所に複数個の嵌合孔部28aが形成された部品保持部材28とに分離する。
そしてその後、図9(c)に示すように、部品保持部材28から分離した回路構成部品27を、部品保持部材28の対応する嵌合孔部28aに押し戻して、各回路構成部品27を、対応する各嵌合孔部28a内に嵌め込むことにより、金属板成形品21を成形することができる。
金属板成形品21は、かかるプレス成形により成形されるものであるので、回路構成部品27の外周面(側面)には、先述したような破断面領域及びせん断面領域が形成された切断面となる。
金属板成形品21をパワーモジュールの製造に用いるに当っては、回路構成部品27が突出する側の裏面Sbを、絶縁基板2の表面上に接合した後、たとえば、回路構成部品27を絶縁基板2側に押圧した状態で、絶縁基板2側とは反対側の向きに、部品保持部材28を引っ張ることで、回路構成部品27から部品保持部材28を取り外して、部品保持部材28を除去する。なおその後は、先述したところと同様にして、回路構成部品27上に半導体素子を搭載させるとともに、必要に応じて、金属箔3側にベース板を設けることにより、パワーモジュールを製造することができる。
ここでは、絶縁基板2の表面に接合させるまで、絶縁基板2上での所期した回路パターンを形成する複数個の回路構成部品27の所定の配置態様を、部品保持部材28により維持することができるので、回路構成部品27を、部品保持部材28に保持された状態で、絶縁基板2の表面に接合させるという極めて簡便な方法により、回路基板4を製造することができる。また、この実施形態の金属板成形品21は、複数個の回路構成部品27の形状が部品保持部材28で確実に維持されるので、微細な回路の形成精度を大きく高めることができる。
上記の金属板成形品21では、回路構成部品27を部品保持部材28に確実に保持させつつ、回路構成部品27を絶縁基板2の表面に接合した後の部品保持部材28の分離を、大きな力を要することなしに容易に行い得るものとすることが望ましい。
この観点から、部品保持部材28の厚み方向で、回路構成部品27の、嵌合孔部28aへの嵌込み量Veは、図10に示すように、回路構成部品27の厚みDの10%〜70%とすることが好適である。回路構成部品27の嵌込み量Veが小さすぎると、回路構成部品27が、部品保持部材28から意図せずして外れるおそれがある。この一方で、回路構成部品27の嵌込み量Veが大きすぎると、回路構成部品27と部品保持部材28とが強固に摩擦係合することになって、絶縁基板2上への回路構成部品27の貼付時に、部品保持部材28が分離し難くなる他、その分離により回路構成部品27に意図しない変形が生じることが懸念される。
そのため、回路構成部品27の嵌込み量Veは、その厚みDの30%〜95%とすることがより一層好ましい。
なお、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた回路構成部品27は、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた部分のうち、たとえば、回路構成部品27の表面Sf側の角部に形成されて表面Sfから突出するバリ等を含む接触部で、部品保持部材28の嵌合孔部28aの壁面と接触して保持され得る。つまり、回路構成部品27は、プレス成形により形成されることにより、図5(b)に示す切断面8のような凹凸のある切断面を有することから、部品保持部材28と、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた部分の側面全体では接触せずに、その一部のみの接触部で接触して保持される場合がある。
この場合、回路構成部品27における、部品保持部材28と接触するこの接触部の厚み方向の領域は、たとえば回路構成部品27の厚みDの1〜5%、典型的には回路構成部品27の厚みDの3%程度とすることができる。かかる接触部の領域は、回路構成部品27の外周面の擦られた痕跡を確認することにより特定することができる。
そして、部品保持部材28で回路構成部品27を確実に保持させるとともに、絶縁基板2上へ回路構成部品27を高い精度で強固に貼付するため、上述した嵌込み量Veの最大値と最小値の差は、0.3mm以下とすることが好適である。言い換えれば、嵌込み量Veの最大値と最小値の差が0.3mmを上回ると、回路構成部品27の各位置で嵌込み量のばらつきが生じて、部品保持部材28からの回路構成部品27の意図しない外れが生じる可能性がある他、絶縁基板2上に回路構成部品27を貼付する際に、それらの十分な密着性が得られない懸念があるとともに、若干ずれて貼付されて所望の回路パターンが得られないことも考えられる。この観点より、嵌込み量Veの最大値と最小値の差は、0.1mm以下とすることがより好ましい。
嵌込み量Veの最大値と最小値の差は、回路構成部品27を嵌合孔部28a内へ嵌め込んだパターン5枚について、三次元計測器等を用いて回路構成部品27の高さを測定し、最大の高さと最小の高さの差を求めることにより算出することができる。例えば定盤上にパターンを置き、定点に対する高さの差から求めることも可能である。
嵌込み量Veの最大値と最小値の差を上記のようにコントロールするには、たとえば、金型にスペーサを配置したり、ポンチの高さの調整を行って押し戻し量を調整したりすること等により行うことができる。
ここでは、金属板成形品21はその全体にわたって均一な厚みDを有するものとしているところ、回路構成部品27の、部品保持部材28の裏面Sbからの突出高さHpでいえば、回路構成部品27の厚みDの30%〜90%とすることが好適であり、この突出高さHpは、より好ましくは、厚みDの5%〜70%とする。
なお、回路構成部品27と部品保持部材28との間には、その厚み方向の少なくとも一部に、摩擦係合箇所FEが存在することになる。この摩擦係合箇所FEは、回路構成部品27が部品保持部材28に保持されるのであれば、回路構成部品27の周方向でその外周面の一部に存在するものであってもよいが、通常は、回路構成部品27の外周面のほぼ全周にわたって存在する。
また、プレス成形により形成される金属板成形品21では、嵌合孔部28a内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品27の相互間の間隔G(つまり回路パターン幅)は、最も狭い箇所で、回路構成部品27の厚みDに対する比(G/D)で表して、0.5以上とすることができる。これは、回路構成部品27の厚みDに対する間隔Gの比(G/D)が0.5未満のものは、プレス成形による成形が困難となる可能性があることによる。
このような金属板1や、金属板成形品21を用いることにより、絶縁基板2上に接合された複数個の回路構成部品7、27が、回路構成部品の方向の全体にわたって、0.5mm〜5.0mmの範囲で離隔した回路基板4を製造することが可能になる。
次に、この発明の回路基板用金属板を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
(試験例1)
回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合を、表1及び2に示すように変化させたサンプルA〜Eの回路基板用金属板を作製し、各サンプルA〜Eを、拡散接合(熱圧着)、ろう付け等によりセラミックス板や樹脂に貼付して、その貼付け状況を外観観察により調査した。それらの結果をそれぞれ表1及び2に示す。
表1及び2中、「○」は、セラミックス板や樹脂と回路基板用金属板間に空隙・剥離等の欠陥がなく良好であったことを示し、「△」は、セラミックス板や樹脂と回路基板用金属板間に一部空隙や剥離の欠陥が認められたことを示し、「×」は、セラミックス板や樹脂と回路基板用金属板が貼り付かなかったことを示す。
表1及び2に示すところから、ダレ部形成領域の幅の割合(Wd/Wp×100)が小さいほど、特に10%以下であれば、セラミックス板や樹脂との貼り付けが良好になることが解かる。
(試験例2)
図7、8、10に示すように、部品保持部材の嵌合孔部に回路構成部品を嵌め込んだ金属板成形品で、その嵌込み量の最大値と最小値との差を、表3及び4に示すように変化させたサンプルA〜Eを作製し、各サンプルA〜Eを、拡散接合(熱圧着)、ろう付け等によりセラミックス板や樹脂に貼付して、その貼付け状況を外観観察により調査した。それらの結果をそれぞれ表3及び4に示す。
表3及び4中、「○」は、セラミックス板や樹脂と金属板成形品間に空隙・剥離等の欠陥がなく良好であったことを示し、「△」は、セラミックス板や樹脂と金属板成形品間に一部空隙や剥離の欠陥が認められたことを示し、「×」は、セラミックス板や樹脂と金属板成形品が貼り付かなかったことを示す。
表3及び4より、嵌込み量の最大値と最小値の差が小さいほど、セラミックス板や樹脂との密着性が良好になり、特にこの差が0.3mm以下の場合は、セラミックス板や樹脂との間に、貼り付けの欠陥がほぼ確認されなかった。
1 回路基板用金属板
2 絶縁基板
3 金属箔
4 回路基板
6、26 回路パターン
7、27 回路構成部品
8 切断面
8a 破断面領域
8b せん断面領域
21 回路基板用金属板成形品
28 部品保持部材
28a 嵌合孔部
51 金属材料
61 パンチ
62 ダイ
D 金属板、金属材料、回路構成部品の厚み
Hp 回路構成部品の突出高さ
Sf 表面
Sb 裏面
FE 摩擦係合箇所

Claims (19)

  1. プレス成形により形成されてなる回路基板用金属板。
  2. プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されてなる請求項1に記載の回路基板用金属板。
  3. 当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されてなる請求項2に記載の回路基板用金属板。
  4. 前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下である請求項3に記載の回路基板用金属板。
  5. 前記ダレ部を通る断面視で、回路基板用金属板の厚みDに対するダレ部形成領域の高さHdの比が、1/3以下である請求項3又は4に記載の回路基板用金属板。
  6. 互いに離隔する複数個の回路構成部品を有してなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路基板用金属板。
  7. 前記回路構成部品の厚みを、0.2mm〜3.0mmの範囲内としてなる請求項6に記載の回路基板用金属板。
  8. 複数個の回路構成部品が、互いに切り離されて独立して存在してなる請求項6又は7に記載の回路基板用金属板。
  9. 請求項6又は7に記載の回路基板用金属板を備える回路基板用金属板成形品であって、複数個の回路構成部品のそれぞれの形状に対応する複数個の嵌合孔部を設けた部品保持部材を有し、前記部品保持部材の複数個の嵌合孔部内に、複数個の回路構成部品が、厚み方向の少なくとも一部で摩擦係合して嵌め込まれてなる回路基板用金属板成形品。
  10. 部品保持部材の厚み方向で、回路構成部品の、前記嵌合孔部内への嵌込み量を、回路構成部品の厚みの10%〜70%の範囲内としてなる請求項9に記載の回路基板用金属板成形品。
  11. 回路構成部品の、前記嵌合孔部内への嵌込み量の最大値と最小値の差を、0.3mm以下とする請求項9又は10に記載の回路基板用金属板成形品。
  12. 前記嵌合孔部内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品が、部品保持部材の表面側で該表面から窪んで位置するとともに、部品保持部材の裏面側で該裏面から突出して位置してなる請求項9〜11のいずれか一項に記載の回路基板用金属板成形品。
  13. 前記嵌合孔部内に嵌め込まれた複数個の回路構成部品の相互間の間隔を、回路構成部品の厚みに対する比で表して、0.5以上としてなる請求項9〜12のいずれか一項に記載の回路基板用金属板成形品。
  14. 前記部品保持部材が、一方向に向けて延びる金属条の形状をなす請求項9〜13のいずれか一項に記載の回路基板用金属板成形品。
  15. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の回路基板用金属板の回路構成部品と、前記回路構成部品が接合された絶縁基板とを備える回路基板。
  16. 絶縁基板上に接合された複数個の回路構成部品が、該回路構成部品の厚み方向の全体にわたって、0.5mm〜5.0mmの範囲内で互いに離隔して配置されてなる請求項15に記載の回路基板。
  17. 請求項15又は16に記載の回路基板を備えるパワーモジュール。
  18. プレス成形により金属材料を打ち抜いて、該金属材料から、互いに離隔する複数個の回路構成部品を成形し、その後、回路構成部品を絶縁基板上に貼付させ、回路構成部品上に半導体素子を搭載する、パワーモジュールの製造方法。
  19. プレス成形により回路構成部品を成形するに当り、前記金属材料を打ち抜いて、該金属材料を、互いに離隔する複数個の回路構成部品と、複数個の回路構成部品のそれぞれの外輪郭形状に対応する形状をなす複数個の嵌合孔部を設けた部品保持部材とに分離し、次いで、各回路構成部品を、部品保持部材の対応する各嵌合孔部内に、厚み方向の少なくとも一部で摩擦係合させて嵌め込んで、回路構成部品及び部品保持部材を有する金属板成形品を形成し、
    回路構成部品を絶縁基板上に貼付させるに際し、前記金属板成形品の回路構成部品を絶縁基板に接合させ、その後、絶縁基板上の回路構成部品から、前記金属板成形品の部品保持部材を取り外して、該部品保持部材を除去する、請求項18に記載のパワーモジュールの製造方法。
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