JP3042016B2 - ボイル適性を有する水性印刷インキ - Google Patents

ボイル適性を有する水性印刷インキ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水性印刷インキに関す
るもので、詳しくは、表面処理を施されたプラスチック
フィルム、特に延伸ポリプロピレン,ポリエステルフィ
ルムにグラビア及びフレキソ印刷され、すぐれた接着
性,ラミネート加工適性を有し、かつ、ボイル適性にす
ぐれた水性印刷インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、包装材料としてのプラスチックフ
ィルムは包装内容物の複雑化、包装技術の高度化に伴な
い各種のものが開発され、又、包装形態の多様化によ
り、例えば包装材料の高性能化のため、印刷後にドライ
ラミネート加工、エクストルージョンラミネート加工な
どが行なわれるようになった。又、食品包装後に、ボイ
ル殺菌、レトルト殺菌工程を経由する食品の包装に用い
られる溶剤型印刷インキは、耐ボイル性,耐レトルト性
を満足するため、印刷時にポリイソシアネート化合物を
配合せしめ二液反応型インキとして使用されている。し
かしながらこれら溶剤型インキは、炭化水素系、エステ
ル系、ケトン系などの有機溶剤を含むため、印刷作業時
に発生する溶剤蒸気による衛生上好ましくない影響だけ
でなく、印刷時、乾燥工程で発生する溶剤蒸気は、大気
中に放出され、大気汚染面で好ましくなく、また火災の
危険性もあり、印刷インキの水性化が強く望まれてい
た。
【0003】従来の水性印刷インキ用のベヒクルとして
は、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン
−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、(メタ)アクリル酸
エステル−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、水性ポリエ
ステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが用いられて来
たが、たとえ、プラスチックフィルムに印刷後ラミネー
ト加工等の後加工適性を有し、ラミネート強度が十分で
あったとしても、ボイル加工,レトルト加工の際、水性
印刷インキベヒクルに含まれるカルボキシル基等の親水
基が残っているため、デラミ等の現象が発生し、ボイル
加工,レトルト加工には適していない。このため、カル
ボキシル基含有水溶性及び又は水分散性樹脂を用いた水
性印刷インキに、アジリジン等のエチレンイミン系硬化
剤を用いることにより、カルボキシル基との架橋反応が
起こり、耐ボイル性は向上する。しかしながら、衛生面
で好ましくないという欠点がある。又、カルボジイミド
系架橋剤やポリイソシアネートの乳化物等が水性インキ
に使用されるが、硬化が不十分であり、ボイル,レトル
ト殺菌を経由する用途には適さない。
【0004】特開平2−504524号公報には、水分
散性ポリエステル樹脂と、M〔CH−(COC
3 2 n (Mは多価金属、かつnはMの化学原子
価)の1種又はそれ以上のアセチルアセトネートを含ん
でなるインキ組成物が開示されているが、上記に示され
た金属キレート化合物では、ボイル,レトルト耐性が得
られないばかりか、インキの貯蔵安定性を著しく損う欠
点がある。又、川研ファインケミカル(株)のカタログ
中に水性アルキッド塗料にアルミニウムモノアセチルア
セトネートビス(エチルアセトアセテート)を含有する
ことで、耐水性を改良する事が示されているが、水性ア
ルキッドは、本発明者が所望するグラビア及び又はフレ
キソ印刷適性が得られない欠点がある。溶剤型グラビア
及び又はフレキソインキに対し、有機チタンキレートを
代表とする、有機金属キレート化合物を添加すること
で、耐水性,耐熱性が向上することは良く知られている
が、ラミネート用水性印刷インキに対し耐ボイル,耐レ
トルト性の向上を目的とし、有機金属キレート化合物を
添加した例は示されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術で
解決しえなかった問題点、即ち、表面処理を施されたポ
リプロピレン,ポリエステル等のプラスチックフィルム
に印刷され、ラミネート加工がなされた後、ボイル殺
菌,レトルト殺菌工程を経由する食品包装材料に用いら
れる水性印刷インキを開発すべく、鋭意研究を行った結
果、カルボキシル基を有する水溶性及び又は水分散性樹
脂をベヒクルとする水性印刷インキに、アルミニウムモ
ノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテー
ト)を含有させることにより、グラビア及び又はフレキ
ソ印刷適性を損うことなく良好なボイル,レトルト適性
を有する水性印刷インキが得られる事を見い出し本発明
に至ったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、カルボキシル
基を持つ水溶性及び又は水分散性及び又はその中間的な
ハイドロゾル型樹脂をベヒクルとする水性印刷インキ
に、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチ
ルアセトアセテート)を含有せしめた水性印刷インキで
ある。
【0007】本発明においてカルボキシル基含有水性樹
脂として(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン
酸、フマール酸、クロトン酸などの重合性不飽和カルボ
ン酸またはそれらの無水物と、(メタ)アクリル酸メチ
ル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブ
チル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリ
ル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸
エステル類、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリ
ル等の(メタ)アクリル酸以外の(メタ)アクリル系モ
ノマー及び必要に応じてα−メチルスチレン、酢酸ビニ
ルなどを乳合重合、溶液重合、塊状重合などの重合法に
より共重合させて得られるアクリル樹脂及びカルボキシ
ル基含有水性ポリエステル樹脂、その他カルボキシル基
を持つ水性樹脂でプラスチックフィルム特に表面処理を
施された延伸ポリプロピレン,ポリエステルフィルムに
接着が良く、ラミネート強度が得られ、安定なインキを
製造しうるものであれば良く、単独又は混合して用いる
ことが出来る。
【0008】これらカルボキシル基含有の水性樹脂の酸
価は30〜300の範囲好ましくは60〜200である
ことが望ましい。酸価が30以下だと水溶性が不十分と
なり、水性インキとして適さない。又、酸価が300以
上だと水溶性が高すぎるため、ボイル,レトルト耐性が
不十分となるばかりでなく、金属キレート剤を多量に使
用しなければならず、経済性,印刷適性面で著しく不利
となる。上記カルボキシル基含有水性樹脂は、トリメチ
ルアミン,トリエチルアミン,ジメチルアミノエタノー
ル,モノエタノールアミン,トリエタノールアミン,モ
ルホリン等の有機アミン、又はアンモニア、好ましくは
アンモニアで中和してpH6〜9程度の樹脂酸塩であ
る。
【0009】本発明における、アルミニウムモノアセチ
ルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の使用
量は0.5重量%を越え、かつ10重量%未満である。
0.5重量%以下の場合においては、耐ボイル性、耐レ
トルト性が不充分であり、10重量%を越えると、非経
済的であるばかりでなくインキの経時粘度上昇や再溶解
性低下による版詰りを招き、結果的に印刷効果を損う。
本発明に係る水性印刷インキは、顔料などの着色材、充
填材その他必要な添加材を加え、公知の製造方法により
得られる。又、本発明の水性印刷インキには、その性能
を阻害しない範囲で、必要に応じてシェラック樹脂、ロ
ジン変性マレイン酸樹脂、カルボキシル化石油樹脂、セ
ルロース系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等も併用でき
る。
【0010】
【作用】これら組成物から成る水性印刷インキは樹脂中
のカルボキシル基をアルミニウムモノアセチルアセトネ
ートビス(エチルアセトアセテート)により架橋する事
で耐水性,耐油性,耐熱性を高める作用があり、これに
より安定したボイル,レトルト耐性が得られる。
【0011】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。例
中、部とは重量部を、%とは重量%をそれぞれ表わす。 製造例1〜5 イソプロピルアルコール300部を83℃に加熱し、こ
れを還流させながら、表1に示す組成の単量体混合物2
00部、及びアゾビスイソブチロニトリル6部を2時間
で滴下した後、83℃で4時間反応させた。次に、イソ
プロピルアルコール全量を減圧留去させ、反応生成物中
のカルボキシル基と当量のアンモニアを含有する水60
0部を添加し、表1に示すアクリル系樹脂の水溶液(固
型分25%)(a)〜(e)を得た。尚、樹脂のガラス
転移温度はGordon−Taylor則を用いて計算
を行ない、いづれも15℃とした。
【0012】実施例1〜5及び比較例1〜7 製造例1〜5で得られたアクリル系樹脂水溶液(a)〜
(e)を用いて実施例、比較例として表2に示した組成
の混合物100部を混練し、水性印刷インキを調整し
た。得られたインキを40℃1週間恒温槽にて貯蔵し貯
蔵安定性を評価した。貯蔵粘度が仕上り粘度に比較して
1〜1.5倍であるものを○、1.5〜2.0倍である
ものを△、2倍以上を×で表わした。
【0013】得られた水性印刷インキをそれぞれ水とイ
ソプロピルアルコールの等量混合物で希釈し、粘度をザ
ーンカップNo3で18秒(25℃)となるように調整
し、グラビア印刷機(版:ヘリオ250線/インチ)に
て、塩化ビニリデンコートポリエステルフィルムに印刷
し、得られた印刷物の印刷面上にポリウレタン系「EL
443A,EL443B」(東洋モートン(株)製)を
アンカーコート剤として塗布し、塗布面上にさらに低密
度ポリエチレン「ユカロンLK30」(三菱油化(株)
製)にてエクストルージョンラミネート加工を行った。
得られたラミネート物のラミネート強度及び90℃での
ボイル適性を評価した。ボイル適性は得られたラミネー
ト物のポリエチレンフィルム側を内側にしてヒートシー
ルし、得られた袋体に内容物として水を充填し、90℃
で30分間煮沸した時の外観で評価した。評価結果を表
2に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【発明の効果】本発明により、食品包装後のボイル殺
菌,レトルト殺菌工程に必要な耐ボイル性,耐レトルト
性を有する水性印刷インキを提供できるようになった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】樹脂の酸価が30〜300であるカルボキ
    シル基を有する水溶性及び又は水分散性及び又はハイド
    ロゾル型樹脂をベヒクルとする水性インキに、アルミニ
    ウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセ
    テート)を0.5重量%を越え、かつ10重量%未満
    有せしめたことを特徴とするボイル適性を有する水性印
    刷インキ。
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