JP3041601B2 - サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドの製造方法

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JP3041601B2
JP3041601B2 JP14409098A JP14409098A JP3041601B2 JP 3041601 B2 JP3041601 B2 JP 3041601B2 JP 14409098 A JP14409098 A JP 14409098A JP 14409098 A JP14409098 A JP 14409098A JP 3041601 B2 JP3041601 B2 JP 3041601B2
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裕二 中村
義則 佐藤
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セイコーインスツルメンツ株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリやプリン
ター等の感熱記録に用いられるサーマルヘッドの製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来は、図10(a)、(b)に示すよ
うに、セラミック等の絶縁性基板1上に蓄熱層としてグ
レーズ層2を設け、Ta系やシリサイド系、Ni−Cr
系等の発熱抵抗体材料及びAl,Cr−Cu,Au等の
電極材料をスパッタリングや蒸着法などによって成膜
し、フォトリソ工程によるパターニングにより発熱抵抗
体3、共通電極及び個別電極の配線電極12を形成し、
その後、前記発熱抵抗体3の酸化防止、耐摩耗のために
SiO2 、Ta25、SiAlON、Si34、SiC
等の保護膜9をスパッタリング、イオンプレーティン
グ、CVD法により成膜しサーマルヘッドを製造してい
る。
【0003】しかし、従来のサーマルヘッドの製造方法
では、共通電極及び個別電極の配線電極12の周縁部断
面形状はほぼ直角になっている為、保護膜9の表面にも
同様の段差が生じ、さらに発熱抵抗体3と配線電極12
の保護膜成膜時の成長過程の違いから、保護膜層に膜の
面方向の連続性の断たれた断層10が発生する。
【0004】このため、このようなサーマルヘッドは早
期に抵抗値が上昇し、このサーマルヘッドを使用して印
字した場合にはドット抜けの原因となりサーマルヘッド
の印字走行寿命の低下となっていた。また、保護膜の前
記断層部10に起因して印字走行時における感熱紙のイ
オン、大気中の水分、Na+ ,Cl- イオン等の侵入
が考えられ、この結果、発熱抵抗体3、配線電極12が
腐食し、耐腐食性が劣るという課題があった。
【0005】これら課題を解決する従来例として、発熱
抵抗体3に接続する配線電極12先端部をテーパー形状
に形成し、保護膜の断層及び段差を低減する製造方法
(例えば、特開昭56−129184号公報)や、発熱
抵抗体3に接続する配線電極12先端部を2回程フォト
及びエッチング工程を行うことにより2段形状にし、段
差を低減する製造方法(例えば、特公昭55−3046
8号公報)、あるいは保護膜形成時に高周波バイアスス
パッタリングを付加することにより亀裂、クラックを防
止する製造方法(例えば、特開昭63−135261号
公報)などが公開されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の製造方
法で作製されたサーマルヘッドでは、配線電極は発熱抵
抗体に接続する先端部のみに特殊な形状を与えていた
が、印字耐久性向上、信頼性向上の若干効果は十分でな
かった。つまり、電極の段差による保護膜の断層、段差
は発熱抵抗体に接続する先端部以外の、少なくとも保護
膜領域における電極周縁部の全ての部分に発生する。
【0007】一方、前記段差があれば、感熱紙の摺動及
びプラテンローラーによる押し付け圧による保護膜の段
差部に対する機械的応力、あるいは発熱抵抗体部と電極
部との熱膨張係数の差による熱応力により保護膜断層部
10から保護膜9の欠け剥離が生じやすい。従って、感
熱紙の摺動及びプラテンローラーによる押し付け圧の影
響は、発熱抵抗体上のみでなくその周辺部にも影響を及
ぼし、配線電極の先端以外の他の周縁部分をきっかけと
しても保護膜の欠け剥離が生じやすい。また、記録紙に
付着した異物などによるスクラッチによっても配線電極
の段差部と前記異物がひっかかり、前述と同様に電極先
端以外の部分においても保護膜の剥離などが発生しやす
い。
【0008】このように、電極先端部のみならず配線電
極の周縁からも保護膜の欠け剥離が生じサーマルヘッド
の印字走行寿命を低下させていた。また近年、耐摩耗性
の向上を狙い保護膜硬度の高い材料が利用されるように
なったが、上記の問題点が強調されるようになった。特
に硬い保護膜で被覆した場合、外力を柔軟に受けること
ができず、また応力も緩和しにくいため上記保護膜の剥
離等の現象が顕著になりやすい問題があった。
【0009】逆に、保護膜硬度が低いと耐摩耗性が劣
り、保護膜の摩耗による発熱抵抗体破壊を生じ印字走行
寿命の向上は望めない。また、電極周縁部の段差により
印字走行時における感熱紙のイオン、大気中の水分、N
+ 、Cl- イオン等の侵入により発熱抵抗体、電極
の腐食の原因となり、特に印字待機時における耐腐食性
が劣るという課題があった。
【0010】そこで、この発明の目的は、従来のこのよ
うな課題を解決するため、電極周縁部をテーパー形状に
して保護膜表面の段差を少なくし、耐摩耗性を有した断
層のないサーマルヘッドを得ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明は、絶縁基板上に、少なくとも発熱抵抗
体、発熱抵抗体に電力を供給するための配線電極、およ
び発熱抵抗体とその周辺の配線電極を覆う保護膜を有す
るサーマルヘッドにおいて、少なくとも発熱抵抗体近傍
の保護膜領域における配線電極の周縁部の断面形状がテ
ーパー形状とすることによって基板面との配線電極の段
差を和らげ、かつ被覆される保護膜の硬度をビッカース
硬度でHv1200以上としている。
【0012】
【作用】上記のように構成されたサーマルヘッドにおい
ては、絶縁基板面と配線電極周縁部との段差がなだらか
なテーパー状となっているため保護膜の被覆性が高まる
こととなり、よって配線電極周縁部において生じやすか
った断層がなくなって、保護膜は面方向に連続的なつな
がりを持つ膜となる。そして保護膜硬度をビッカース硬
度でHv1200以上の高い硬度の被膜としても、従来
生じやすかった配線電極周縁部の保護膜断層からの剥離
による故障を抑制でき、また保護膜断層部からの腐食性
イオン等の侵入もなく、よって印字走行耐久性が向上す
ると同時に環境信頼性が向上する。
【0013】
【実施例】
[実施例1]以下に、この発明の実施例を図に基づいて
説明する。図1(a)は本発明によるサーマルヘッドの
発熱抵抗体周辺部の発熱部断面拡大図、図1(b)は同
電極周縁部の断面図である。
【0014】これらの図面において、絶縁性基板1の表
面にはグレーズ2が形成されており、発熱抵抗体3に電
気的に接続するように配線電極4が形成されている。5
は該配線電極4のテーパー部で、前記発熱抵抗体3に対
向する周辺及び配線電極4全ての周縁部に形成されてい
る。9は保護膜であって発熱抵抗体3とその周縁部の配
線電極4を覆うよう形成されている。配線電極4の周縁
の断面がテーパー形状になっていることにより、保護膜
9を成膜した際に、配線電極4による段差および発熱抵
抗体3と配線電極4上の成長過程の違いを無くし断層が
なくなるように構成されている。
【0015】また、図2(a)および図2(b)におい
て、絶縁性基板1の表面にはグレーズ2が形成されてお
り、さらにその表面には発熱抵抗体3が形成され、該発
熱抵抗体3に電気的に接続するように配線電極4が形成
されている。6は多段部で発熱抵抗体3に対向する周辺
及び配線電極4全ての周縁部に形成されている。9は保
護膜でこれら全てを覆うように形成されている。
【0016】配線電極4の周縁部全てが多段形状になっ
ていることにより保護膜9を成膜した際に、配線電極4
による段差および発熱抵抗体3と配線電極4上の成長過
程の違いを無くし断層がなくなるように構成されてい
る。本願の製造過程を順に説明すれば、図3(a)に示
すように、例えばアルミナセラミックス等からなる絶縁
性基板1上に蓄熱のためにグレーズ2を形成する。次に
発熱抵抗体材料としてTaを主成分とするTa−N、T
a−SiO2 膜等をスパッタリングにより約0.1μm
程度形成した後、フォトリソグラフィにより発熱抵抗体
3を形成する。次いで発熱抵抗体3に電力を供給するた
めの電極材料としてAlを主成分とするAl、Al−S
i、Al−Si−Cu膜等をスパッタリング等により約
1〜2μm程度形成した後、フォトレジスト塗布し、フ
ォトマスクを用いて露光現像して、配線電極形状をもつ
レジスト8を形成する。
【0017】次に、図3(b)において、りん酸、酢
酸、硝酸及び純水等からなる混合酸性水溶液などを、そ
の混合比により粘度調整したエッチング液において、粘
度の低いエッチング液でAl膜をエッチングすると該エ
ッチング液はAlエッチングと同時にレジスト8とAl
界面にも入り込み、導体層の面方向にもエッチングが進
行し、この面方向と膜厚方向のエッチング速度の関係を
適度にすると、エッチング終了時には電極周縁部はテー
パー面5をもたせることができる。
【0018】その後、図3(c)において、有機溶剤な
どの剥離液でレジスト8を除去し、配線電極およびテー
パー部5を形成する。次に、図3(d)に示すように、
発熱抵抗体3及び配線電極4の酸化防止と耐摩耗のため
に、これらを覆うようにSi34とSiO2 などの混合
膜をスパッタリング等により約3〜6μm程度被覆し保
護膜9を形成する。
【0019】以上の工程によって得られるサーマルヘッ
ドでは、配線電極の周縁部が断崖状とならず適度なテー
パー斜面となっているため、この配線電極のテーパー面
5を覆う保護膜には配線電極の周縁部に断層が生じにく
い。特にスパッタリングは段差の被覆性が劣るので、ス
パッタリングで保護膜を形成した本発明のサーマルヘッ
ドと従来のサーマルヘッドでは、保護膜の被覆性に顕著
な差が生じる。この効果については、評価結果と併せ後
述する。
【0020】[実施例2]次に、図4に示すようにAl
を主成分とする電極材料を多層にすることにより電極周
縁部をテーパー状に形成する製造方法について説明す
る。図4(a)は実施例1同様にアルミナセラミックス
等の絶縁性基板1上にグレーズ2を形成し、発熱抵抗体
3を形成する。次いで発熱抵抗体3に電力を供給するた
めの電極材料として1層目にAlを主成分とするAl電
極4b膜をスパッタリングにより約0.3〜0.8μm
程度形成し、2層目にAlを主成分としSi、Cu、T
iなどを添加したAl合金電極4c膜をスパッタリング
等により0.3〜0.6μm程度形成し合計約1〜2μ
mの電極膜を形成する。その後実施例1と同様にして、
レジスト8を形成する。
【0021】次に、図4(b)において、りん酸、酢
酸、硝酸及び純水の酸性混合水溶液からなるエッチング
液を用いて1層目及び2層目のエッチングを行うと1層
目のAlを主成分とするAl電極4b膜に比べてAlに
Si、Cu、Ti等を添加した2層目のAl合金電極4
c膜は結晶粒径が微細になるためにエッチングレートが
速くなる。このため、平面及び膜厚方向のエッチングが
進み、エッチング終了時には電極周縁部はテーパー形状
を示す。その後、図4(c)において、レジスト8を有
機溶剤などの剥離液により除去し、配線電極およびテー
パー部5を形成する。そして前述の実施例と同様に図4
(d)において保護膜9を形成する。
【0022】[実施例3]次に、図5に示すように電極
の結晶粒径を膜厚方向に変化させてテーパー形状にする
方法を説明する。図5(a)は実施例1同様にアルミナ
セラミックス等の絶縁性基板1上にグレーズ2を形成
し、その上面に発熱抵抗体3を形成する。さらにその上
面には前記発熱抵抗体3に電力を供給するための電極材
料としてAlを主成分とする膜をスパッタリングにより
1〜2μm形成する。このとき、Alの結晶粒径は、ス
パッタDCパワー、基板温度、スパッタ圧力等によって
変化する。通常のAlスパッタ膜の結晶粒径は2〜4μ
mである。本実施例では、スパッタDCパワーと基板温
度を制御して結晶粒径を変化させ粒径の異なるAl電極
4dを成膜した。成膜初期では、通常の条件により成膜
を行い、時間の経過と共に徐々にスパッタのDCパワー
を低下させて成膜を行った。これと同時にスパッタパワ
ーを低下させると、成膜速度が低下するために基板温度
が低下する。このときの結晶粒径はAl表面付近では
0.5μmであるのに対して下層付近では2μm程度で
あった。そして、その上面にレジスト8を形成する。
【0023】次に、図5(b)において、りん酸、酢
酸、硝酸及び純水の混合液からなるエッチング液におい
てAlをエッチングすると膜厚方向において結晶粒径が
異なるためにエッチングレートが変化する。つまり、微
細な結晶粒径の方がエッチングレートが速い。このため
平面及び膜厚方向にエッチングされるようになりエッチ
ング終了時には電極周縁部はテーパー形状を示す。その
後、図5(c)において有機溶剤などの剥離液において
前記レジスト8を除去し、配線電極およびテーパー部5
を形成する。そして前述の実施例と同様に図5(d)に
おいて保護膜9を形成する。
【0024】[実施例4]次に、図6に示すようにレジ
スト形成、エッチング工程を複数回用いることにより配
線電極周縁部を多段にし、電極テーパー化と同様の効果
を得る製造方法について説明する。
【0025】図6(a)は、実施例1同様にアルミナセ
ラミックス等の絶縁性基板1上にグレーズ2を形成し、
グレーズ2上に発熱抵抗体3を形成する。さらにその上
面に発熱抵抗体3に電力を供給するための電極材料とし
てAlを主成分とする膜をスパッタリングにより1〜2
μm形成する。その後、レジスト8−1を形成の後、図
6(b)において、りん酸、酢酸、硝酸及び純水等から
なる混合酸性水溶液などからなるエッチング液において
通常のエッチングを行う。さらに、図6(c)において
有機溶剤などの剥離液によりレジスト8aを除去して配
線電極4aを形成するが、この形成された配線電極4a
は1段目である。次に、図6(d)において配線電極4
aの2段目を形成すべく再度フォトレジストを塗布した
後、配線電極4aの1段目に形成された配線電極4aの
輪郭に対して露光パターンの輪郭を5μm以上小さくし
たフォトマスクを用いて露光現像することにより2段目
の配線電極形状のレジスト8ー2を形成する。次に図7
(a)において、りん酸、酢酸、硝酸及び純水等を含む
混合酸性水溶液からなるエッチング液によりエッチング
を行うが、エッチングを膜厚に対して10〜90%で終
了させることにより配線電極4aに段部6をつけられ
る。その後、図7(b)において、有機溶剤などの剥離
液によりレジスト8ー2を除去し2段の配線電極4aを
形成する。さらに、これら工程を繰り返すことにより3
段以上の配線電極4aを形成することも可能である。最
後に保護膜9を形成する。図7(c)は本実施例で得ら
れた配線電極4aに保護膜9を形成した結果である。従
来に比べて保護膜9の段差が少なくなっていることが確
認された。尚配線電極4aの段差は、2段よりも3段の
方が少なくなっていることが確認されている。つまり、
配線電極4aを2、3段にすることにより電極テーパー
化と同様の効果が得られる。
【0026】[実施例5]次に、図8に示すようにフォ
トレジスト現像、エッチング工程を複数回用いることに
より配線電極周縁部を多段にすることにより、配線電極
の周縁形状のテーパー化と同様の効果を得る製造方法に
ついて説明する。
【0027】図8(a)は、実施例1同様にアルミナセ
ラミックス等の絶縁性基板1上にグレーズ2を形成し、
発熱抵抗体3を形成する。発熱抵抗体3に電力を供給す
るための電極材料としてAlを主成分とする膜をスパッ
タリングにより1〜2μm形成する。その後、レジスト
8aを形成し、図8(b)において、りん酸、酢酸、硝
酸及び純水等からなる混合酸性水溶液などからなるエッ
チング液において膜厚に対して10〜90%をエッチン
グしてエッチングを終了させる。
【0028】さらにこの後、従来の方法ではレジスト8
を有機溶剤などの剥離液において除去し配線電極4aを
形成するが、現像液はレジスト8に対して膜減りを起こ
す特徴を有することから、本実施例では図8(c)に示
すように通常のエッチングを行った後に再度現像液に浸
漬することにより強制的に膜減りを発生させる2回目の
現像を行って、レジスト8を5μm以上後退させる。次
に、図8(d)において、りん酸、酢酸、硝酸及び純水
等からなる混合酸性水溶液などからなるエッチング液に
おいてエッチングを行い、これを終了させることにより
配線電極に多段部6を形成する。その後、図9(a)に
おいて有機溶剤などの剥離液においてレジスト8を除去
し、2段の配線電極4aを形成する。
【0029】さらに、これら工程を繰り返すことにより
3段以上の配線電極4aを形成することも可能である。
最後に、保護膜9を形成する。図9(b)は本実施例で
得られた配線電極4aに保護膜9を形成した結果であ
る。配線電極周縁の段差がステップ状となった分、従来
に比べて保護膜の段差が穏やかになり、配線電極周縁の
保護膜の断層も抑制されている。なお、各段の配線電極
4aの段差は、2段よりも3段の方が保護膜の被覆性も
向上する。発明者らの実験では、通常のスパッタリング
法により保護膜の形成をする場合、段差が0.2〜0.
3μm程度を境に段差部被覆性、即ち段差部における保
護膜の断層の発生不発生が顕著に変化した。従って、各
段差は0.3μm以下に抑えることが望ましい。
【0030】[各実施例の評価]以下に上述した実施例
の評価結果について説明する。図表17に、図1におけ
るテーパー角度7を変化させた時の本実施例の評価結果
を示す。
【0031】図表17において、耐パルス性とは、発熱
抵抗体に電圧パルスを印加し、印加パルス数に対する発
熱抵抗体の抵抗値変化の大小による評価である。耐腐食
性とは、高温高湿下で感熱紙や薬品と接触させて電極の
腐食や保護膜の剥離有無の評価である。耐スクラッチ性
とは、発熱抵抗体周辺の配線電極上を含む保護膜にサン
ドペーパーなどでキズを入れて保護膜の剥離を評価した
ものである。印字耐久性とは、摩耗性が高く、腐食性不
純物を多く含有する粗悪な感熱紙を用いて連続印字を行
った時の故障発生率で評価した。
【0032】図表17から、テーパー角度7が60〜3
0degを境にそれ以下であれば、各特性が急激に向上
することが確認できる。サーマルヘッドにおいては特に
印字走行時には、発熱抵抗体からの発熱、プラテンロー
ラーの圧力、感熱紙などの摺動により発熱部および発熱
抵抗体近傍の配線電極周縁部に大きなストレスが生じる
が、これらの影響を含んだ総合的な印字耐久性は、図表
17から明確なようにテーパー角度が15deg以下で
きわめて良好なものを得ることができる。
【0033】上記評価は保護膜の硬度Hv約1500の
例であるが、発明者らは、保護膜の硬度をHv約900
の試料、Hv約1200、Hv約1800の試料につい
てもスクラッチ評価した。結果を図表18に示す。この
結果から、従来の様な段差あるいはテーパー角度が大き
く段差のきつい配線電極では、スクラッチがからむと硬
度を高くしても印字耐久性はそれほど高くならないこと
が判る。これは、配線電極にAlなど軟らかい材料を用
いているため、保護膜が硬いほど異物などによって局所
的な外力が加わると膜の面方向にその力が伝わり、配線
電極周縁の保護膜の断層部にストレスを集めてしまうか
らだと説明できる。従って、本発明の効果は、Hv12
00以上の保護膜を持つサーマルヘッドではとりわけ顕
著である。耐摩耗性は硬度の高い保護膜が有利であっ
て、保護膜に面方向の連続性が得られる限り、耐スクラ
ッチ性も結果として高くなるのであるから、本発明はH
v1200以上の保護膜と組み合わせることで最大限の
効果を発揮することができる。
【0034】以下に、テーパー角度7が15degであ
るときの本実施例の評価結果を詳説する。図11に本発
明の印字走行耐久試験を示す。従来例では印字走行距離
50km程度で電極段差部をきっかけとして機械的応力
やスクラッチなどにより保護膜の断層部から保護膜剥
離、欠けなどが生じる。これにより印字走行距離100
kmでは不良ドットが10%になるのに対して本実施例
では、100km以上の印字後においても保護膜剥離、
欠けなどの現象は起こらなかった。また、保護膜硬度を
Hv1200以上にすることにより、保護膜摩耗量を2
μm以下に抑えることが出来る。つまり、本実施例では
従来の破壊原因であった保護膜剥離、欠け、保護膜摩耗
などを電極をテーパー化して保護膜硬度を高めることに
より、様々な破壊を抑止することが可能であり、印字耐
久性は従来例の4倍以上になることが確認でき、印字走
行性が向上する。
【0035】図12に本発明の耐パルス性を評価するた
めに連続パルス通電試験の結果を示す。従来例では抵抗
値上昇は1×108 パルスで5%程度になり、6×10
8 パルスでは15%以上となる。ところが、本実施例で
は抵抗値上昇は1×108 パルスにおいても抵抗値変化
は認められずに、6×108 パルスにおいても抵抗値上
昇は3%程度であり耐パルス性が向上する。つまり本実
施例では、従来、電極段差部による保護膜断層部をきっ
かけとして発熱抵抗体が酸化などにより劣化していたも
のを、電極テーパー化により発熱抵抗体の劣化を防止す
ることが可能であり、耐パルス性が向上することが確認
できた。
【0036】図13に本発明の耐腐食性を評価するため
に電解腐食試験の結果を示す。試験は、温度85℃、湿
度85%、ヘッド電圧5Vさらには感熱紙を印加させた
状態で放置試験を行った。従来例では、不良ドットは初
期的から多く発生し48hrでは5%以上、96hrに
至っては約15%になっていたが、本実施例では48h
rにおいては不良ドットは認められずに、96hrにお
いても約3%の不良ドットが認められるだけである。つ
まり本実施例では、電極テーパー化により、水分、感熱
紙のイオンなどがたやすく進入せず、電極などの腐食を
防止することが可能であり、耐腐食性が向上することが
確認できた。
【0037】また、図16に示す従来のサーマルヘッド
断面構造に比べ、図15に示す本発明のように電極テー
パー化をすることにより抵抗体上保護膜と感熱記録紙、
プラテンローラーなど記録媒体との接触が良くなる。図
14に本発明の印字濃度試験の結果を示す。
【0038】試験結果により本実施例では、従来と同一
の印字記録濃度を得る場合でも約20%以上の省電力化
が可能となり、印字発熱効率が向上することを確認し
た。
【0039】
【発明の効果】この発明は、以上説明したようにサーマ
ルヘッドの保護膜領域における電極をテーパー形状にし
たことにより保護膜の段差を少なくし、よって保護膜の
断層発生を抑え、特に、保護膜硬度がビッカース硬度で
Hv1200以上との組合せによって、耐摩耗性は当然
に、さらに耐スクラッチ性を著しく向上させるため、よ
って印字耐久性を極めて高くし、さらに環境信頼性をも
向上させる効果がある。
【0040】また、配線電極周縁部の断面形状をテーパ
ー化させるための本発明の製造方法は、バイアススパッ
タ装置等特殊な装置を用いずとも可能であり、特にエッ
チングや電極の構造に特徴をもたせた加工を用いれば工
程数を増やさずして電極の周縁断面をテーパー化でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサーマルヘッドの発熱部断面拡大断面
図および電極周縁部断面図である。
【図2】本発明のサーマルヘッドの発熱部の拡大断面図
および電極周縁部断面図である。
【図3】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図4】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図5】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図6】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図7】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図8】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図9】本発明のサーマルヘッドの製造工程を示した説
明図である。
【図10】従来のサーマルヘッドの発熱部断面拡大断面
図および電極周縁部断面図である。
【図11】本発明のサーマルヘッドの印字走行試験結果
を示した説明図である。
【図12】本発明のサーマルヘッドの連続パルス通電試
験結果を示した説明図である。
【図13】本発明のサーマルヘッドの電解腐食試験結果
を示した説明図である。
【図14】本発明のサーマルヘッドの印字濃度試験結果
を示した説明図である。
【図15】本発明のサーマルヘッドと記録媒体との接触
部を示した説明図である。
【図16】従来のサーマルヘッドと記録媒体との接触部
を示した説明図である。
【図17】本実施例の評価結果を表す図表である。
【図18】本発明のスクラッチ試験の評価結果を表す図
表である。
【符号の説明】
1 絶縁性基板 2 グレーズ 3 発熱抵抗体 4、4a、12 配線電極 4b Al電極 4c Al合金電極 4d 粒径の異なるAl電極 5 テーパー部 6 多段部 7 テーパー角度 8、8−1、8−2 レジスト 9 保護膜 10 保護膜断層部 11 記録媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−129184(JP,A) 特開 昭53−147544(JP,A) 特開 昭57−20375(JP,A) 特開 平1−204762(JP,A) 特開 平2−192959(JP,A) 特開 平4−305466(JP,A) 特開 昭60−235403(JP,A) 特開 昭62−88342(JP,A) 実開 平2−19546(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/335

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁基板上に発熱抵抗体を形成する第一
    工程と、 前記発熱抵抗体と電気的に接続する配線電極を形成する
    第二工程と、 発熱抵抗体と発熱抵抗体周辺の前記配線電極を覆う保護
    膜を形成する第三工程とを有するサーマルヘッドの製造
    方法であって、 前記第二工程が、基板から離れるにしたがってエッチン
    グレートの大きい材料で構成される配線電極用薄膜を形
    成する成膜工程と、前記配線電極用薄膜上にレジストを
    形成する工程と、前記配線電極用薄膜を1種類のエッチ
    ング液による1回のエッチング処理により配線電極を形
    成する工程と、を備えることにより、電極周縁部の断面
    形状がテーパー形状に形成された配線電極を形成するこ
    とを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記成膜工程が、Alを主成分とする第
    1電極膜を形成する工程と、前記第1電極膜上に添加物
    を含んだAl合金電極膜を形成する工程と、を備えるこ
    とにより配線電極用薄膜を形成することを特徴とする請
    求項1に記載のサーマルヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】前記成膜工程が、時間経過とともに条件を
    変化させるスパッタリング法により配線電極用薄膜を成
    膜する工程を有し、該配線電極用薄膜がその厚み方向に
    おいて基板から離れるにしたがって結晶粒径が小さいA
    l薄膜であることを特徴とする請求項1に記載のサーマ
    ルヘッドの製造方法。
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