JP3031583B2 - 熱転写式記録装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、供給ロール部から繰り
出されたインクシートと、受像シートとを、記録ヘッド
とプラテンとの間に挟んで同方向に、かつ受像シートの
方を高速で搬送しつつ、前記記録ヘッドにより、インク
シートのインク又は染料を画像情報に応じて選択的に溶
融又は昇華させ、これを受像シートに転写して画像記録
を行う熱転写式記録装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】サーマルヘッドや通電記録ヘッドなどの
記録ヘッドを用いる上記形式の熱転写式記録装置におい
ては、インクシートの搬送速さが受像シートの搬送速さ
よりも遅くなるように、その各搬送速さが設定されてい
るので、インクシートの利用効率を高め、その使用量を
低減でき、ランニングコストを下げることが可能であ
る。

【０００３】この形式の記録装置は、上述のようにラン
ニングコストの低減を図ることができるのであるが、そ
の反面、インクシートと受像シートが相対的に移動する
ので、これらの間に摩擦力が作用し、これによってイン
クシートの搬送速さが変動する所謂「スティック・スリ
ップ」現象が発生するおそれがある。かかるスティック
・スリップが発生すると、記録画像に濃度むらを生じ、
画像品質が著しく低下する。

【０００４】上述のスティック・スリップ現象の発生
は、インクシートが繰り出されるインクシート供給ロー
ル部と、該シートが巻き取られる巻取ロール部の間の長
さ、すなわちインクシートの搬送距離に大きく関係し、
この長さないしは搬送距離を短かくすればする程、ステ
ィック・スリップの発生を抑え、これを防止することが
できる。

【０００５】一方、１つのインクシートと、受像シート
とを重ね合せ、該受像シートの搬送方向に沿って複数個
の記録ヘッドを設け、そのそれぞれによって受像シート
上に記録画像を形成する熱転写式記録装置が提案されて
いる（例えば特公平３−２６７５号公報参照）。このよ
うに複数個の記録ヘッドを用いる熱転写式記録装置によ
れば、受像シートへの多色画像の記録を容易に行うこと
ができ、或いは単色の画像を形成するときも、その記録
時間の短縮を図ることが可能である。

【０００６】ところが、この形式の記録装置において、
受像シートをインクシートよりも高速で搬送させる構成
を採用すると、インクシートの搬送距離が長くなってし
まうため、前述のスティック・スリップ現象が発生し易
くなる。例えば、ｍ個の記録ヘッドを用い、互いに隣接
し合う記録ヘッド間の間隔をＬとすると、インクシート
の搬送距離は、少なくとも（ｍ−１）Ｌを必要とするた
め、どうしてもこの距離が大きくなってしまうのであ
る。インクシートの搬送方向における各色のインク塗布
幅をＷ、受像シートの搬送方向における記録画像（画像
領域）長さをＱとし、インクシートの搬送速さが受像シ
ートの搬送速さの１／ｎ（ｎ＞１）であるとすると、Ｌ
＝Ｗｎ／（ｎ−１）＝Ｑ／（ｎ−１）（Ｗ＝Ｑ／ｎ）で
表わされるので、各記録ヘッドの間隔ＬはＱとｎとによ
り自動的に定まり、その値を下げるには限度がある。こ
のため、インクシートの搬送距離を思うように短かくす
ることはできない。記録ヘッドの数が増えれば増える
程、インクシートの搬送距離が増大し、スティック・ス
リップが発生し易くなる。

【０００７】また上述のようにＬ＝Ｑ／（ｎ−１）であ
るため、記録画像長さＱを大きくしようとすると、記録
ヘッド間の距離Ｌと、ｎとの少なくとも一方を大きくし
なければならないが、Ｌを大きくすれば装置の大型化を
招き、またｎを大きくすればインクシートのマルチ性
能、すなわち多数回転写性能を上げる必要があり、ｎを
著しく大きく設定することは技術的に困難である。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、記録ヘッド
を複数個設け、しかも受像シートをインクシートよりも
高速で搬送させても、構成の複雑化とコストの上昇を抑
えつつ、スティック・スリップの発生を防止し、記録画
像の高画質化を図ることができ、しかも装置の大型化を
招くことなく、記録画像長さの増加を図ることの可能な
熱転写式記録装置を提供することを目的とするものであ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するため、供給ロール部から繰り出されたインクシー
トと、受像シートとを、記録ヘッドとプラテンとの間に
挟んで同方向に、かつ受像シートの方を高速で搬送しつ
つ、前記記録ヘッドにより、インクシートのインク又は
染料を画像情報に応じて選択的に溶融又は昇華させ、こ
れを受像シートに転写して画像記録を行うと共に、前記
記録ヘッドを、受像シートの搬送方向に沿って複数個配
設した熱転写式記録装置において、受像シートよりも低
速で搬送されつつ巻取ロール部側に巻き取られるインク
シートを、各記録ヘッドに対して１つずつ設け、全ての
インクシートの供給ロール部と巻取ロール部を駆動する
１つの駆動源を設けた構成を提案する。

【００１０】その際、記録ヘッドの数をｍ、互いに隣接
する記録ヘッド間の間隔をＬとし、ｎを１より大なる数
とすると共に、各インクシートの搬送速さが受像シート
の搬送速さの１／ｎであるとしたとき、全ての記録ヘッ
ドによる受像シートへの画像記録の終了後に、前記共通
の駆動源を逆回転させて、各インクシートを、ゼロより
大でかつ（ｍ−１）Ｌ／ｎ以下の長さだけ、供給ロール
部の側に巻き戻すように構成することが望ましい。

【００１１】また、記録ヘッドの数をｍ、互いに隣接す
る記録ヘッド間の間隔をＬ₁，Ｌ₂，…Ｌm-₁とし、ｎを
１より大なる数とすると共に、各インクシートの搬送速
さが受像シートの搬送速さの１／ｎであるとしたとき、
全ての記録ヘッドによる受像シートへの画像記録の終了
後に、前記共通の駆動源を逆回転させて、各インクシー
トを、ゼロより大でかつ前記間隔Ｌ₁，Ｌ₂，…Ｌm-₁の
総和をｎで割った値以下の長さだけ、供給ロール部の側
に巻き戻すように構成することもできる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に
説明する。

【００１３】図１は本発明に係る熱転写式記録装置を模
式的に示した説明図であり、例えば記録紙より成る受像
シート１は図における右から左へ速さｖ₁で搬送され
る。

【００１４】このような受像シート１の搬送方向に沿っ
て複数の、図の例では３個のサーマルヘッド５ａ，５
ｂ，５ｃが配設され、各サーマルヘッド５ａ，５ｂ，５
ｃに対して１つずつインクシート２ａ，２ｂ，２ｃが設
けられている。サーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃは記録
ヘッドの一例をなすものであり、かかるサーマルヘッド
に代えて通電記録ヘッドを用いることもできる。

【００１５】各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃは、供給
軸３ａ，３ｂ，３ｃに巻回されたインクシートの供給ロ
ール部１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃから繰り出されて
巻取軸４ａ，４ｂ，４ｃに巻回された各インクシートの
巻取ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃの側に巻き
取られる。各供給ロール部から繰り出された各インクシ
ート２ａ，２ｂ，２ｃは、受像シート１と共に、各サー
マルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃと、これらに対置されて反
時計方向に回転するローラより成るプラテン６ａ，６
ｂ，６ｃとの間に挟まれて同方向に搬送される。かかる
挟持部において受像シート１と各インクシート２ａ，２
ｂ，２ｃは互いに圧接する。。

【００１６】このときの各インクシート２ａ，２ｂ，２
ｃの搬送速さをｖ₂とすると、この速さｖ₂は、各供給ロ
ール１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃの周速であり、受像
シート１の搬送速さｖ₁に対してｖ₁／ｖ₂＝ｎの関係を
有するように設定されている（ｎは１より大なる数、す
なわちｎ＞１である）。このように受像シート１は各イ
ンクシート２ａ，２ｂ，２ｃよりも高速で搬送される。
その際、本例では受像シート１とインクシートが連続送
りされるように構成されているが、これらを間欠的に搬
送するようにしてもよい。

【００１７】各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃは、その
基材シート上に熱溶融型又は熱昇華型のインク又は染料
を塗布したものより成り、本例では各インクシートのイ
ンク又は染料の色が互いに相違している。すなわち、イ
ンクシート２ａは、イエロー、次のインクシート２ｂは
マゼンタ、そして最後のインクシート２ｃはシアンとな
っている。

【００１８】各サーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃは図１
の紙面に対して垂直な方向にライン状に配列された多数
の発熱素子を備えており、かかるサーマルヘッド５ａ，
５ｂ，５ｃと各プラテン６ａ，６ｂ，６ｃとの間に挟ま
れた各インクシートと受像シート１は同方向に搬送され
るが、このとき各サーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃの発
熱素子が画像情報に応じて発熱し、各インクシート２
ａ，２ｂ，２ｃのインク又は染料が選択的に溶融又は昇
華し、これが受像シート１に転写され、該シート１上に
記録画像が形成される。このようにして、各サーマルヘ
ッドにより受像シート１に対して画像記録が実行され、
最終的に受像シート１上にフルカラーの記録画像が形成
されるのである。

【００１９】この画像記録動作時に、各インクシート２
ａ，２ｂ，２ｃは受像シート１よりも低速で搬送される
ので、インクシートの使用量を抑え、ランニングコスト
の低減を達成できる。

【００２０】画像記録動作の概要は以上の通りである。
その際、全てのインクシート２ａ，２ｂ，２ｃの供給ロ
ール部１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃと巻取ロール部２
０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃが、１つの共通の駆動源７
によって駆動される。その詳細は以下の通りである。

【００２１】図１に示すように、各インクシートの供給
軸３ａ，３ｂ，３ｃには、それぞれタイミングプーリ８
ａ，８ｂ１，８ｂ２，８ｃが固定されている。すなわち
一番目の供給軸３ａにはタイミングプーリ８ａが固定さ
れ、二番目の供給軸３ｂには２つのタイミングプーリ８
ｂ１，８ｂ２が同軸状に固定され、三番目の供給軸３ｃ
にはタイミングプーリ８ｃが固定されている。これらの
プーリには図１に示すようにタイミングベルト９ａ，９
ｂがそれぞれ巻き掛けられていて、プーリ８ａ，８ｂ１
にはベルト９ａが、また他のプーリ８ｂ２，８ｃにはも
う１つのベルト９ｂが巻き掛けられている。

【００２２】一番目の供給軸３ａ、すなわちタイミング
プーリ８ａは、ステッピングモータと減速機から成る駆
動源７によって回転駆動され、その回転が各タイミング
ベルト９ａ，９ｂを介して他のタイミングプーリ８ｂ
１，８ｂ２，８ｃに伝えられ、これによって他の供給軸
３ｂ，３ｃも回転駆動され、各供給ロール１０２ａ，１
０２ｂ，１０２ｃが回転する。

【００２３】一方、一番目の供給軸３ａには、他のタイ
ミングプーリ１０ａが固定され、該プーリ１０ａと、さ
らに他のタイミングプーリ１０ｂにはタイミングベルト
１１が巻き掛けられている。

【００２４】また各巻取軸４ａ，４ｂ，４ｃには、例え
ばスプリングクラッチ或いは電磁パウダなどから成るす
べり伝達手段１５ａ，１５ｂ，１５ｃを介してタイミン
グプーリ１３ａ，１３ｂ１，１３ｂ２，１３ｃがそれぞ
れ連結されている。２つのプーリ１３ｂ１，１３ｂ２は
同軸状に、かつ互いに一体に連結されている。かかるタ
イミングプーリ１３ａと１３ｂ１にはタイミングベルト
１４ａが巻き掛けられ、タイミングプーリ１３ｂ２と１
３ｃにはもう１つのタイミングベルト１４ｂが巻き掛け
られていて、タイミングプーリ１３ａと、前述のタイミ
ングプーリ１０ｂは、ワンウェイクラッチ１２を介して
連結されている。

【００２５】上述の構成により、駆動源７の回転は、タ
イミングプーリ１０ａ，１０ｂ、これらに巻き掛けられ
たタイミングベルト１１、ワンウェイクラッチ１２、タ
イミングプーリ１３ａ，１３ｂ１，１３ｂ２，１３ｃ、
タイミングベルト１４ａ，１４ｂ及びすべり伝達手段１
５ａ，１５ｂ，１５ｃを介して、各インクシート２ａ，
２ｂ，２ｃの巻取軸４ａ，４ｂ，４ｃに伝達される。

【００２６】タイミングプーリ１０ｂの歯数は、これに
ベルト１１を介して駆動連結されたタイミングプーリ１
０ａの歯数よりも少なく設定され、これにより、タイミ
ングプーリ１３ａ，１３ｂ１，１３ｂ２，１３ｃの角速
度は、タイミングプーリ８ａ，８ｂ１，８ｂ２，８ｃの
角速度よりも大きくなる。このようなタイミングプーリ
１３ａ，１３ｂ１，１３ｂ２，１３ｃの回転は、すべり
伝達手段１５ａ，１５ｂ，１５ｃを介して各インクシー
トの巻取ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃに伝え
られるので、これらのロール部２０２ａ，２０２ｂ，２
０２ｃは、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃに対して張
力を作用させつつ、インクシートの搬送速さｖ₂の周速
で回転し、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃを巻き取
る。

【００２７】上述のように、全てのインクシート２ａ，
２ｂ，２ｃの供給ロール部１０２ａ，１０２ｂ，１０２
ｃと巻取ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃが１つ
の共通の駆動源７によって駆動されるが、その作用の詳
細は以下の通りである。

【００２８】画像記録動作の開始に伴って、受像シート
１が図示していない搬送装置によって図１の右側から左
方へ向けて搬送され、受像シート先端側の画像記録開始
位置が一番目のサーマルヘッド５ａに到達すると、駆動
源７が回転を開始する。これによって、前述の如く駆動
源７に駆動連結された供給ロール部１０２ａ，１０２
ｂ，１０２ｃと、巻取ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２
０２ｃが図１における時計方向に回転し、全てのインク
シート２ａ，２ｂ，２ｃがｖ₂の速さで搬送される。

【００２９】このとき、一番目のサーマルヘッド５ａに
通電し、受像シート１に対する画像記録を開始する。さ
らに受像シート１の先端側の画像記録開始位置が二番目
のサーマルヘッド５ｂに到達したとき、このサーマルヘ
ッド５ｂに通電し、該ヘッド５ｂによる画像記録を開始
する。次いで、受像シート１の画像記録開始位置が三番
目のサーマルヘッド５ｃに到達したとき、このサーマル
ヘッド５ｃに通電して該ヘッド５ｃによる画像記録を実
行する。

【００３０】このようにして３つのサーマルヘッド５
ａ，５ｂ，５ｃによる受像シート１への画像記録を行
い、受像シート１の後端側の画像記録後端位置が最後の
サーマルヘッド５ｃを通過した後、駆動源７の回転を停
止させ、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃの搬送を止め
る。

【００３１】上述の如く、図示した熱転写式記録装置に
よれば、受像シート１の搬送方向に沿って配設された複
数個のサーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃのそれぞれに対
して、１個ずつのインクシート２ａ，２ｂ，２ｃを設
け、そのそれぞれによって受像シート１に対して画像記
録を行うように構成されているので、各インクシート２
ａ，２ｂ，２ｃの搬送距離を充分に短かくでき、スティ
ック・スリップの発生を防止することができる。

【００３２】既に提案されている従来の熱転写式記録装
置にように、１つのインクシートによって受像シートに
対して複数色の画像を転写するように構成されている
と、このインクシートを、複数の全てのサーマルヘッド
を通過させなければならないので、当該インクシートの
供給ロール部から巻取ロール部までの長さとして、少な
くとも、一番目のサーマルヘッドから最後のサーマルヘ
ッドに至るまでの長さを必要とし、その長さが大変長い
ものとなってしまい、スティック・スリップが発生し易
くなる。

【００３３】図１に示した構成においては、複数のイン
クシートを用い、そのそれぞれによって受像シート１に
画像を形成するので、個々のインクシート２ａ，２ｂ，
２ｃを、１つのサーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃとこれ
に対向するプラテン６ａ，６ｂ，６ｃとの間を通すだけ
でよく、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃの供給ロール
部１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃと巻取ロール部２０２
ａ，２０２ｂ，２０２ｃとの距離を大幅に短かくするこ
とができるのである。このようにして図１に示した熱転
写式記録装置においてはスティック・ステップの発生を
防ぎ、濃度むらのない高品質な記録画像を得ることがで
きる。

【００３４】しかも全てのインクシート２ａ，２ｂ，２
ｃの供給ロール部１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃと、巻
取ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃとを、１個の
駆動源７によって駆動するので、インクシートがサーマ
ルヘッドと同数の複数個設けられてはいるが、その駆動
手段の構成を簡素化でき、コストの上昇を抑えることが
できる。

【００３５】また、各サーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃ
の配置間隔を、記録画像長さやインクシートのマルチ性
能とは無関係に決めることができ、これによって記録装
置の大型化を招くことなく、記録画像長さを長くするこ
とができる。

【００３６】なお、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃの
供給ロール部１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃを一定の角
速度で回転させた場合、各供給ロール部１０２ａ，１０
２ｂ，１０２ｃの巻径の変化に伴い、インクシート２
ａ，２ｂ，２ｃの搬送速さｖ₂が若干変化するが、かか
る変化による画像濃度の変動は極くわずかであるため、
通常は問題となることはない。勿論、各インクシート２
ａ，２ｂ，２ｃの搬送速さｖ₂を厳密に一定にする必要
のあるときは、供給ロール部１０２ａ，１０２ｂ，１０
２ｃの巻径に応じて、供給軸３ａ，３ｂ，３ｃの角速度
が変るように、駆動源７を制御すればよい。

【００３７】ところで、前述の実施例において、各イン
クシート２ａ，２ｂ，２ｃの供給ロール部１０２ａ，１
０２ｂ，１０２ｃは、共通の駆動源７により同期して回
転駆動されるので、一番目のサーマルヘッド５ａによる
画像記録終了後も、インクシート２ａは、その供給ロー
ル部１０２ａから繰り出され、最後のサーマルヘッド５
ｃによる画像記録を終了し、受像シート１が排出された
ときには、インクシート２ａは２Ｌ／ｎ（Ｌは互いに隣
接するサーマルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃ間の間隔）だ
け、その未使用部分が繰り出されてしまっている。二番
目のインクシート２ｂも、Ｌ／ｎだけその未使用部分が
繰り出されてしまっており、このような状態を放置した
まま、次の受像シートに画像記録を行ったとすれば、イ
ンクシートが無駄に消費されることになる。

【００３８】そこで、図示した実施例では、全てのサー
マルヘッド５ａ，５ｂ，５ｃによる受像シート１への画
像記録を終了した後、駆動源７を逆回転させ、各インク
シート２ａ，２ｂ，２ｃを２Ｌ／ｎだけ各供給ロール部
１０２ａ，１０２ｂ，１０２ｃの側に巻き戻すように構
成されている。この逆転時に、ワンウェイクラッチ１２
の作用によって、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃの巻
取ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃには、駆動源
７からの回転が伝えられることはない。すなわち各巻取
ロール部２０２ａ，２０２ｂ，２０２ｃと巻取軸４ａ，
４ｂ，４ｃは、各インクシート２ａ，２ｂ，２ｃの巻き
戻し動作によって連れ回わりするのである。

【００３９】ここでワンウェイクラッチ１２を設けず
に、巻き戻し動作時に駆動源７の回転が巻取軸４ａ，４
ｂ，４ｃにも伝えられるように構成したとすると、タイ
ミングプーリ１０ａと１０ｂとの歯数比が前述のように
設定されているので、巻取ロール部２０２ａ，２０２
ｂ，２０２ｃの周速が、供給ロール部１０２ａ，１０２
ｂ，１０２ｃの周速より大きくなり、インクシート２
ａ，２ｂ，２ｃが両ロール部間でたるんでしまうことに
なる。ワンウェイクラッチ１２を設けることによって、
このような不具合の発生を確実に阻止できるのである。

【００４０】ところで、各インクシート２ａ，２ｂ，２
ｃを２Ｌ／ｎの長さ巻き戻すことによって、一番目のイ
ンクシート２ａの未使用部分が無駄となることを防止で
きるのであるが、このような巻き戻し動作によって、二
番目と三番目のインクシート２ｂ，２ｃも２Ｌ／ｎだけ
巻き戻されるので、これらのインクシート２ｂ，２ｃに
ついては、既に使用済みのインクシート部分が巻き戻さ
れることになる。すなわち二番目のインクシート２ｂは
Ｌ／ｎの長さの使用済み部分が、また三番目のインクシ
ート２ｃは２Ｌ／ｎの長さの使用済み部分が巻き戻され
る。

【００４１】一方、受像シート１に対する画像記録を開
始するとき、全ての供給ロール部１０２ａ，１０２ｂ，
１０２ｃが同時に回転を開始し、これらの各ロール部か
らインクシート２ａ，２ｂ，２ｃが繰り出される。従っ
て、一番目のサーマルヘッド５ａだけが受像シート１へ
の画像記録を行っているときに、二番目と三番目の供給
ロール部１０２ｂ，１０２ｃから繰り出されるインクシ
ート部分は、実際に画像記録に使用されないまま巻取ロ
ール部２０２ｂ，２０２ｃの側へ巻き取られる。このよ
うな動作は、二枚目以降の受像シートについても、その
画像記録の開始に伴って行われる。ここで例えば二枚目
の受像シートに対して一番目のインクシート２ａだけが
画像記録を行っている時間帯について考えてみると、こ
の時間帯には、一枚目の受像シート１への画像記録の終
了後に、前述の如く二番目と三番目の供給ロール部１０
２ｂ，１０２ｃに巻き戻された使用済みの、それぞれＬ
／ｎと２Ｌ／ｎの長さのインクシート部分が各供給ロー
ル部１０２ｂ，１０２ｃから繰り出されることになる。
このため、二枚目の受像シート先端側の画像記録開始位
置が二番目のサーマルヘッド５ｂへ至ったとき、丁度二
番目のインクシート２ｂの未使用部分の先端がサーマル
ヘッド５ｂのところに搬送されている。同様に二枚目の
受像シート先端側の画像記録開始位置が三番目のサーマ
ルヘッド５ｃに至ったとき、三番目のインクシート２ｃ
の未使用部分の先端がサーマルヘッド５ｃに至ってい
る。このような動作が三枚目以降の受像シートの画像記
録時にも同様にして行われ、二番目と三番目のインクシ
ート２ｂ，２ｃによって支障なく、しかもその無駄を防
止しつつ画像記録を行うことができる。

【００４２】一枚目の受像シート１の画像記録開始時
に、その先端側の画像記録開始位置が二番目と三番目の
サーマルヘッド５ｂ，５ｃにそれぞれ達する前に、その
各供給ロール部１０２ｂ，１０２ｃから繰り出されてし
まったインクシート２ｂ，２ｃの部分については、二枚
目以降の受像シートへの画像記録時にも使用されずに、
これらのインクシート部分の全て、又はその一部が無駄
となるが、一枚目の受像シート１に対して一番目のサー
マルヘッド５ａだけが画像記録を行っているとき、二番
目と三番目の各供給ロール部１０２ｂ，１０２ｃから繰
り出されるインクシート部分、すなわち上述のように全
く使用されないインクシート部分については、インク又
は染料が塗布されていないインクシート２ｂ，２ｃを用
いれば、インクないしは染料が使用されないまま無駄と
なることを完全に回避することができる。

【００４３】上述した実施例では、三番目のサーマルヘ
ッド５ｃによる画像記録を終了した後、各インクシート
２ａ，２ｂ，２ｃを２Ｌ／ｎだけ各供給ロール２０２
ａ，２０２ｂ，２０２ｃの側に巻き戻し、インクシート
の無駄をなくすように構成したが、各インクシートを、
ゼロより大であって、２Ｌ／ｎ以下の長さだけ巻き戻す
ように構成すれば、各インクシートを巻き戻さない場合
に比べ、インクシートの無駄をなくし、ないしはその無
駄を少なくできる効果が得られる。

【００４４】上述した構成は、インクシートとサーマル
ヘッドをそれぞれ３個ずつ設けた場合の例であるが、例
えばサーマルヘッドより成る記録ヘッドが等間隔にｍ個
設けられている、より一般的な場合について上述の関係
を示すと次の通りである。

【００４５】すなわち、記録ヘッドの数をｍ、互いに隣
接する記録ヘッド間の間隔をＬとし、ｎを１より大なる
数とすると共に、各インクシートの搬送速さが受像シー
トの搬送速さの１／ｎであるとしたとき、全ての記緑ヘ
ッドによる受像シートへの画像記録の終了後に、共通の
駆動源を逆回転させて、各インクシートを、ゼロより大
でかつ（ｍ−１）Ｌ／ｎ以下の長さだけ、供給ロール部
の側に巻き戻す。

【００４６】また各記録ヘッド間の間隔が等しい場合だ
けでなく、各間隔が異なっているときも含めた、より一
般的な場合について上述の関係を示すと次の通りであ
る。

【００４７】すなわち、記録ヘッドの数をｍ、互いに隣
接する記録ヘッド間の間隔をＬ₁，Ｌ₂，…Ｌm-₁とし、
ｎを１より大なる数とすると共に、各インクシートの搬
送速さが受像シートの搬送速さの１／ｎであるとしたと
き、全ての記録ヘッドによる受像シートへの画像記録の
終了後に、共通の駆動源を逆回転させて、各インクシー
トを、ゼロより大でかつ前記間隔Ｌ₁，Ｌ₂，…Ｌm-₁の
総和をｎで割った値以下の長さ、すなわち（Ｌ₁＋Ｌ₂＋
…Ｌm-₁）／ｎ以下の長さだけ供給ロール部の側に巻き
戻す。

【００４８】図１には、受像シート１が直線状に搬送さ
れ、各サーマルヘッドに対して１個ずつプラテンを設け
た熱転写式記録装置を示したが、他の適宜な形式の記録
装置にも本発明を適用可能である。例えば、ドラム状の
１つのプラテンの周囲に、その周方向に沿って複数の記
録ヘッドを配設し、該記録ヘッドとプラテンとの間にイ
ンクシートと受像シートを挟んで搬送する形式の記録装
置などにも本発明を適用できる。このように、受像シー
トの搬送手段、搬送形態、或いは記録ヘッドの配置など
は自由に設定することができるものである。

【００４９】またフルカラー画像ないしは多色画像を得
る目的ではなく、記録スピードを速める目的で複数の記
録ヘッドを用いる熱転写式記録装置にも本発明を適用で
きる。この場合には、例えば各記録ヘッドによって数ラ
インおきに画像記録を行い、最終的に所定の記録画像を
得るように、各記録ヘッドを制御する。このような記録
装置において単色の記録画像を得るときは、同一色のイ
ンクシートが用いられる。

【００５０】

【発明の効果】請求項１に記載の熱転写式記録装置によ
れば、複数の記録ヘッドのそれぞれに対して１つずつの
インクシートを用いたため、各インクシートの搬送距離
を短かく設定でき、これによってスティック・スリップ
の発生を防ぎ、濃度むらのない高画質な記録画像を得る
ことができる。

【００５１】しかも全てのインクシートの供給ロール部
と巻取ロール部を１つの共通の駆動源で駆動するので、
インクシートが複数設けられてはいるが、その駆動手段
の構成を簡素化でき、コストの上昇を抑えることができ
る。

【００５２】また記録ヘッドの配置間隔を、記録画像長
さや、インクシートのマルチ性能とは関係なく定めるこ
とができるので、装置の大型化を招くことなく、記録画
像長さの増加を図ることが可能である。

【００５３】記録ヘッドが等間隔に配置されている請求
項２に記載の熱転写式記録装置においては、全ての記録
ヘッドによる受像シートへの画像記録の終了後に、共通
の駆動源を逆回転させて、各インクシートを、ゼロより
大であって、（ｍ−１）Ｌ／ｎ以下の長さ巻き戻すよう
に構成されているので、インクシートの無駄をなくし、
或いはその無駄を抑制することができる。

【００５４】請求項３に記載の熱転写式記録装置によれ
ば、記録ヘッド間の間隔が異なるときも、請求項２と同
じ効果を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明一実施例の熱転写式記録装置の説明図で
ある。

【符号の説明】

１ 受像シート ２ａ インクシート ２ｂ インクシート ２ｃ インクシート ６ａ プラテン ６ｂ プラテン ６ｃ プラテン ７ 駆動源 １０２ａ 供給ロール部 １０２ｂ 供給ロール部 １０２ｃ 供給ロール部 ２０２ａ 巻取ロール部 ２０２ｂ 巻取ロール部 ２０２ｃ 巻取ロール部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B41J 2/325 B41J 3/54 B41J 17/06 B41J 17/14 B41J 35/16 B41J 23/02

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 供給ロール部から繰り出されたインクシ
   ートと、受像シートとを、記録ヘッドとプラテンとの間
   に挟んで同方向に、かつ受像シートの方を高速で搬送し
   つつ、前記記録ヘッドにより、インクシートのインク又
   は染料を画像情報に応じて選択的に溶融又は昇華させ、
   これを受像シートに転写して画像記録を行うと共に、前
   記記録ヘッドを、受像シートの搬送方向に沿って複数個
   配設した熱転写式記録装置において、受像シートよりも
   低速で搬送されつつ巻取ロール部側に巻き取られるイン
   クシートを、各記録ヘッドに対して１つずつ設け、全て
   のインクシートの供給ロール部と巻取ロール部を駆動す
   る１つの駆動源を設けたことを特徴とする熱転写式記録
   装置。
2. 【請求項２】 記録ヘッドの数をｍ、互いに隣接する記
   録ヘッド間の間隔をＬとし、ｎを１より大なる数とする
   と共に、各インクシートの搬送速さが受像シートの搬送
   速さの１／ｎであるとしたとき、全ての記録ヘッドによ
   る受像シートへの画像記録の終了後に、前記共通の駆動
   源を逆回転させて、各インクシートを、ゼロより大でか
   つ（ｍ−１）Ｌ／ｎ以下の長さだけ、供給ロール部の側
   に巻き戻すことを特徴とする請求項１に記載の熱転写式
   記録装置。
3. 【請求項３】 記録ヘッドの数をｍ、互いに隣接する記
   録ヘッド間の間隔をＬ_１，Ｌ_２，…Ｌｍ−_１とし、ｎを
   １より大なる数とすると共に、各インクシートの搬送速
   さが受像シートの搬送速さの１／ｎであるとしたとき、
   全ての記録ヘッドによる受像シートへの画像記録の終了
   後に、前記共通の駆動源を逆回転させて、各インクシー
   トを、ゼロより大でかつ前記間隔Ｌ_１，Ｌ_２，…Ｌｍ−
   _１の総和をｎで割った値以下の長さだけ、供給ロール部
   の側に巻き戻すことを特徴とする請求項１に記載の熱転
   写式記録装置。