JP3021957B2 - 高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法 - Google Patents
高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高い飽和磁化を有す
るFe16N2鉄窒化物の有利な製造方法に関するものであ
る。
るFe16N2鉄窒化物の有利な製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年の電子工業の飛躍的発展は、磁性材
料の開発研究に負うところが極めて大きいが、とくに最
近では鉄心、磁気録音、電気機器の小型化及び情報の高
密度化などのため飽和磁気モーメントが高くまた磁歪特
性も良好な磁性材料が求められている。従来、磁気モー
メントの高い材料を得るためには、鉄を合金化すること
によりその飽和磁化を増大させる手法が主流であった
が、かような合金化添加元素はPtやPd等の高価な元素ば
かりであるため、工業的に利用されるまでには至ってい
ない。
料の開発研究に負うところが極めて大きいが、とくに最
近では鉄心、磁気録音、電気機器の小型化及び情報の高
密度化などのため飽和磁気モーメントが高くまた磁歪特
性も良好な磁性材料が求められている。従来、磁気モー
メントの高い材料を得るためには、鉄を合金化すること
によりその飽和磁化を増大させる手法が主流であった
が、かような合金化添加元素はPtやPd等の高価な元素ば
かりであるため、工業的に利用されるまでには至ってい
ない。
【0003】1972年に、高橋らは、{高橋実:固体物
理. Vol.7 (1972), 483 }, {T. K.Kim and M. Takaha
shi:Appl. Phys. Lett. Vol.20 (1972), 492}及び
{高橋実:学術月報、Vol.24 (1972), 719}において、
2×10-4〜2×10-3Torrの窒素雰囲気中で蒸着した鉄薄
膜の飽和磁化の値は 26400〜29000 ガウス(G)であ
り、純鉄薄膜の飽和磁化の値 21500Gに比較してはるか
に高いという極めて興味深い実験結果を示した。そして
この高い飽和磁化は、鉄薄膜中に優先形成したFe16N2の
鉄窒化物に由来することを電子回折による結晶構造解析
から明らかにした。その後、光岡及び近角らは、{光岡
勝也、宮島英紀、近角総信、第2回日本応用磁気学会講
演概要集、(1978) P.176}及び{近角総信:応用物理、
53 (1984),291 }において、Fe16N2鉄窒化物はB.C.
T.(Body Centered Tetragonal)構造であるためN原
子の侵入による格子の伸びによって磁化が増加すること
を示した。
理. Vol.7 (1972), 483 }, {T. K.Kim and M. Takaha
shi:Appl. Phys. Lett. Vol.20 (1972), 492}及び
{高橋実:学術月報、Vol.24 (1972), 719}において、
2×10-4〜2×10-3Torrの窒素雰囲気中で蒸着した鉄薄
膜の飽和磁化の値は 26400〜29000 ガウス(G)であ
り、純鉄薄膜の飽和磁化の値 21500Gに比較してはるか
に高いという極めて興味深い実験結果を示した。そして
この高い飽和磁化は、鉄薄膜中に優先形成したFe16N2の
鉄窒化物に由来することを電子回折による結晶構造解析
から明らかにした。その後、光岡及び近角らは、{光岡
勝也、宮島英紀、近角総信、第2回日本応用磁気学会講
演概要集、(1978) P.176}及び{近角総信:応用物理、
53 (1984),291 }において、Fe16N2鉄窒化物はB.C.
T.(Body Centered Tetragonal)構造であるためN原
子の侵入による格子の伸びによって磁化が増加すること
を示した。
【0004】また上記の技術とは別に発明者らは、{Y.
Inokuti, N.Nishida and N.Ohashi:Met. Trans. 6A (1
975), 733}及び{井口征夫:日本金属学会報, 15 (197
5),101 }において、(100)面方位の純鉄単結晶
を、 450℃から 500℃の温度範囲においてアンモニアと
水素ガスとの窒化雰囲気中で処理すると、単結晶試料表
面近傍に 0.5〜5μm 程度のFe16N2が優先析出するこ
と、またFe16N2と地鉄マトリックスとの整合関係は、
Inokuti, N.Nishida and N.Ohashi:Met. Trans. 6A (1
975), 733}及び{井口征夫:日本金属学会報, 15 (197
5),101 }において、(100)面方位の純鉄単結晶
を、 450℃から 500℃の温度範囲においてアンモニアと
水素ガスとの窒化雰囲気中で処理すると、単結晶試料表
面近傍に 0.5〜5μm 程度のFe16N2が優先析出するこ
と、またFe16N2と地鉄マトリックスとの整合関係は、
【数1】 {001}Fe16N2 // {001}α , <100> Fe16N2 //<100>α を満足することを示した。
【0005】さらに最近、日立研究所の小園らは、日刊
工業新聞(1989年11月28日発行)において、Fe16N2の格
子定数がインジウム、ガリウム・砒素合金と同じことに
着目し、MBE法によりFe16N2の薄膜を作成し、これが
29000Gの飽和磁化を有することを示した。またNTT
の小野らは、ECRスパッタ法を用いてGaAs(100) の上
にN2雰囲気中でFe薄膜を作成、さらに長岡大学の中島ら
は、イオンプランテーション法を用いて MgO(100) の上
にFe薄膜を作成し〔高橋実:汎用材料委員会資料、平成
2年11月22日、(JCRM)〕、いずれもこれらの薄膜は高い
飽和磁化を有することを報告している。
工業新聞(1989年11月28日発行)において、Fe16N2の格
子定数がインジウム、ガリウム・砒素合金と同じことに
着目し、MBE法によりFe16N2の薄膜を作成し、これが
29000Gの飽和磁化を有することを示した。またNTT
の小野らは、ECRスパッタ法を用いてGaAs(100) の上
にN2雰囲気中でFe薄膜を作成、さらに長岡大学の中島ら
は、イオンプランテーション法を用いて MgO(100) の上
にFe薄膜を作成し〔高橋実:汎用材料委員会資料、平成
2年11月22日、(JCRM)〕、いずれもこれらの薄膜は高い
飽和磁化を有することを報告している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Fe16N2
に関する最近の研究成果はFeの薄膜が主体であり、工業
材料として使用するにはあまりも小さすぎるため、材料
として安定に大量使用するには難点があることがしばし
ば指摘されている。またFe薄膜中に析出させたFe16N2を
利用するには工程が不安定であることから、高飽和磁化
を有するFe16N2を安定して得ることができ、しかもかか
るFe16N2析出物の大量供給が可能な製造方法の開発が待
ち望まれている。この発明は、上記の要請に有利に応え
るもので、高飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の安定し
た大量供給が可能な製造方法を提案することを目的とす
る。
に関する最近の研究成果はFeの薄膜が主体であり、工業
材料として使用するにはあまりも小さすぎるため、材料
として安定に大量使用するには難点があることがしばし
ば指摘されている。またFe薄膜中に析出させたFe16N2を
利用するには工程が不安定であることから、高飽和磁化
を有するFe16N2を安定して得ることができ、しかもかか
るFe16N2析出物の大量供給が可能な製造方法の開発が待
ち望まれている。この発明は、上記の要請に有利に応え
るもので、高飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の安定し
た大量供給が可能な製造方法を提案することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】さて発明者らは、上記の
要請に応えるべく鋭意研究を重ねた結果、〔100〕軸
が圧延方向に強く集積した方位の結晶粒を有する薄板に
対して窒化処理を施すことにより、Fe16N2が表層に優先
的に析出し、しかもそのFe16N2をエッチングにより抽出
することによって高い飽和磁化を有するFe16N2が容易に
得られることの知見を得た。この発明は、上記の知見立
脚するものである。
要請に応えるべく鋭意研究を重ねた結果、〔100〕軸
が圧延方向に強く集積した方位の結晶粒を有する薄板に
対して窒化処理を施すことにより、Fe16N2が表層に優先
的に析出し、しかもそのFe16N2をエッチングにより抽出
することによって高い飽和磁化を有するFe16N2が容易に
得られることの知見を得た。この発明は、上記の知見立
脚するものである。
【0008】すなわちこの発明は、圧延・再結晶処理の
回復・初期再結晶段階において圧延方向と同一方向に20
〜200000G程度の磁場を印加することにより得られた、
結晶粒の〔100〕軸が圧延方向に強く集積した集合組
織を有する鉄又は鉄合金薄板に、窒化処理を施し、該薄
板の表面にFe16N2を優先形成させたのち、エッチングに
より鉄又は鉄合金を除去してFe16N2鉄窒化物を取り出す
ことからなる高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製
造方法(第1発明)である。
回復・初期再結晶段階において圧延方向と同一方向に20
〜200000G程度の磁場を印加することにより得られた、
結晶粒の〔100〕軸が圧延方向に強く集積した集合組
織を有する鉄又は鉄合金薄板に、窒化処理を施し、該薄
板の表面にFe16N2を優先形成させたのち、エッチングに
より鉄又は鉄合金を除去してFe16N2鉄窒化物を取り出す
ことからなる高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製
造方法(第1発明)である。
【0009】またこの発明は、圧延・再結晶処理の回復
・初期再結晶段階において圧延方向と同一方向に20〜20
0000G程度の磁場を印加することにより得られた、結晶
粒の〔100〕軸が圧延方向に強く集積した集合組織を
有する鉄又は鉄合金薄板に、圧延方向と同方向に磁場を
印加しながら窒化処理を施し、該薄板の表面にFe16N2を
優先形成させたのち、エッチングにより鉄又は鉄合金を
除去してFe16N2鉄窒化物を取り出すことからなる高い飽
和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法(第2発明)
である。
・初期再結晶段階において圧延方向と同一方向に20〜20
0000G程度の磁場を印加することにより得られた、結晶
粒の〔100〕軸が圧延方向に強く集積した集合組織を
有する鉄又は鉄合金薄板に、圧延方向と同方向に磁場を
印加しながら窒化処理を施し、該薄板の表面にFe16N2を
優先形成させたのち、エッチングにより鉄又は鉄合金を
除去してFe16N2鉄窒化物を取り出すことからなる高い飽
和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法(第2発明)
である。
【0010】以下、この発明の基礎となった実験結果に
ついて説明する。C:0.002 wt%(以下単に%で示
す)、Si:0.003 %、Mn:0.08%、P:0.005 %、S:
0.005 %、Al:0.004 %、N:0.0015%及びO:0.007
%を含み、残部は実質的にFeの組成になる高純度溶鋼
を、連続鋳造によりスラブとしたのち、熱間圧延により
1.6 mm厚の熱延板とした。ついで熱延方向と同じ方向
(L方向)及び90°方向(C方向)の冷間圧延を交互に
行ういわゆるクロス圧延によって、0.15mm厚の冷延板と
した。その後、圧延方向に磁場を印加しながら 880℃の
温度で焼鈍することにより、圧延方向に〔100〕軸が
強く集積した結晶粒を成長させたのち、表面を研削し、
ついで電解研磨を施して鏡面状態に仕上げたのち 450℃
の窒素雰囲気中で窒化処理を施すことにより、表面にFe
16N2を析出させた。なおかかる窒化処理は、表1に示す
3条件、すなわち(a) 試料と垂直方向、(b) 試料と圧延
方向にそれぞれ2000Gの磁場を印加しながら、(c) 磁場
の印加なしに、行った。その後、しゅう酸とH2O2との混
合水溶液からなるエッチング液を用いて鋼板表面上に析
出したFe16N2を抽出した。このようにして抽出したFe16
N2の飽和磁化について調べた結果を、表1に併記する。
ついて説明する。C:0.002 wt%(以下単に%で示
す)、Si:0.003 %、Mn:0.08%、P:0.005 %、S:
0.005 %、Al:0.004 %、N:0.0015%及びO:0.007
%を含み、残部は実質的にFeの組成になる高純度溶鋼
を、連続鋳造によりスラブとしたのち、熱間圧延により
1.6 mm厚の熱延板とした。ついで熱延方向と同じ方向
(L方向)及び90°方向(C方向)の冷間圧延を交互に
行ういわゆるクロス圧延によって、0.15mm厚の冷延板と
した。その後、圧延方向に磁場を印加しながら 880℃の
温度で焼鈍することにより、圧延方向に〔100〕軸が
強く集積した結晶粒を成長させたのち、表面を研削し、
ついで電解研磨を施して鏡面状態に仕上げたのち 450℃
の窒素雰囲気中で窒化処理を施すことにより、表面にFe
16N2を析出させた。なおかかる窒化処理は、表1に示す
3条件、すなわち(a) 試料と垂直方向、(b) 試料と圧延
方向にそれぞれ2000Gの磁場を印加しながら、(c) 磁場
の印加なしに、行った。その後、しゅう酸とH2O2との混
合水溶液からなるエッチング液を用いて鋼板表面上に析
出したFe16N2を抽出した。このようにして抽出したFe16
N2の飽和磁化について調べた結果を、表1に併記する。
【0011】
【表1】
【0012】同表から明らかなように、(b), (c), (a)
の順に飽和磁化が高い。これらの試料をそれぞれ、SE
MによりFe16N2の観察を行ったところ、図1(a),
(b),(c)にそれぞれ示すようにFe16N2の析出状態
に相違が認められた。また、析出した後のFe16N2につい
ても同様のSEM観察を行ったところ、(b)の試料はほ
ぼ完全な形、すなわち本発明者がすでに発表した論文
{Y. Inokuti,N. Nishida and N. Ohashi:Met. Tran
s., 6A (1975), 733 参照}と同様の 0.5〜5μm Fe16N
2をほぼ完全な形態で抽出できたことが確認された。こ
れに対して(a) 及び(c) の条件では、Fe16N2とFeとが混
在した状況が観察された。またこの場合、Fe16N2がエッ
チングによって形状が壊れたものも観察された。
の順に飽和磁化が高い。これらの試料をそれぞれ、SE
MによりFe16N2の観察を行ったところ、図1(a),
(b),(c)にそれぞれ示すようにFe16N2の析出状態
に相違が認められた。また、析出した後のFe16N2につい
ても同様のSEM観察を行ったところ、(b)の試料はほ
ぼ完全な形、すなわち本発明者がすでに発表した論文
{Y. Inokuti,N. Nishida and N. Ohashi:Met. Tran
s., 6A (1975), 733 参照}と同様の 0.5〜5μm Fe16N
2をほぼ完全な形態で抽出できたことが確認された。こ
れに対して(a) 及び(c) の条件では、Fe16N2とFeとが混
在した状況が観察された。またこの場合、Fe16N2がエッ
チングによって形状が壊れたものも観察された。
【0013】上述した実験結果から、この発明に従い、
圧延方向に対する結晶粒の〔100〕軸集積度の高いFe
又はFe合金薄板について、窒化処理、より好ましくは
〔100〕軸方向への磁場印加の下に、窒化処理を施し
て、Fe16N2を優先析出させ、その後このFe16N2をほぼ完
全な形で抽出することにより、飽和磁化の高い磁性材料
を安定して得ることが可能となったのである。
圧延方向に対する結晶粒の〔100〕軸集積度の高いFe
又はFe合金薄板について、窒化処理、より好ましくは
〔100〕軸方向への磁場印加の下に、窒化処理を施し
て、Fe16N2を優先析出させ、その後このFe16N2をほぼ完
全な形で抽出することにより、飽和磁化の高い磁性材料
を安定して得ることが可能となったのである。
【0014】
【作用】この発明の出発素材としては、Feを主成分とす
るものであれば良く、添加元素はとくに限定しない。し
かし、とくに好ましくは下記のように各元素を制限した
高純度鋼である。
るものであれば良く、添加元素はとくに限定しない。し
かし、とくに好ましくは下記のように各元素を制限した
高純度鋼である。
【0015】C:0.05%以下 Cは、鋼中に多量に存在すると磁気特性を劣化させるだ
けでなく、〔100〕軸に集束した結晶粒を発達させる
ことが困難となるので、0.05%以下とすることが好まし
い。
けでなく、〔100〕軸に集束した結晶粒を発達させる
ことが困難となるので、0.05%以下とすることが好まし
い。
【0016】Si:0.001 〜0.1 % Siは、電気抵抗を高めて鉄損を低下させる有用元素であ
るが、多量添加は磁束密度の低下を招くので、10%以下
とする必要があり、とくに〔100〕軸に強く集積した
結晶粒を発達させるためには、 0.001〜0.1 %が好適で
ある。
るが、多量添加は磁束密度の低下を招くので、10%以下
とする必要があり、とくに〔100〕軸に強く集積した
結晶粒を発達させるためには、 0.001〜0.1 %が好適で
ある。
【0017】Mn:0.01〜0.5 % Mnは、加工性の向上に有効に寄与するが、大量に添加す
ると磁気特性を劣化させるだけでなく、MnS 等の介在物
量が増大するので、0.01〜0.5 %程度が好ましい。
ると磁気特性を劣化させるだけでなく、MnS 等の介在物
量が増大するので、0.01〜0.5 %程度が好ましい。
【0018】P:0.05%以下 Pは、鋼中において、結晶粒界や表面に濃縮して粒界割
れを多発させるので、0.05%以下程度に抑制することが
好ましい。
れを多発させるので、0.05%以下程度に抑制することが
好ましい。
【0019】S:0.02%以下 Sは、Pと同様、鋼中において粒界偏析元素であり、結
晶粒界や表面に濃縮して粒界割れを多発させるので、0.
02%以下程度に抑制することが好ましい。
晶粒界や表面に濃縮して粒界割れを多発させるので、0.
02%以下程度に抑制することが好ましい。
【0020】Al:0.01%以下 Alは、酸化物等の介在物をつくり、しかもFe16N2の優先
析出を阻害する元素であるので、0.01%以下に抑制する
ことが好ましい。
析出を阻害する元素であるので、0.01%以下に抑制する
ことが好ましい。
【0021】N:0.01%以下 Nは、〔100〕軸集積度の高い結晶粒を製造するに
は、出発素材中における含有量はできる限り少なく、具
体的には0.01%以下程度とするのが好ましい。
は、出発素材中における含有量はできる限り少なく、具
体的には0.01%以下程度とするのが好ましい。
【0022】O:0.02%以下 Oも、Alと同様、酸化物等の介在物をつくり、またFe16
N2の優先析出を阻害する元素でもあるので、0.02%以下
に抑制することが好ましい。
N2の優先析出を阻害する元素でもあるので、0.02%以下
に抑制することが好ましい。
【0023】その他の元素についても、少量であればこ
の発明を妨げるものではない。
の発明を妨げるものではない。
【0024】次に、製造方法について具体的に説明す
る。さて所望の成分組成に調整した溶鋼を、連続鋳造に
よりスラブとしたのち、通常の製造工程すなわちスラブ
加熱−粗圧延−熱間圧延により熱延板とし、ついで熱延
方向と直角方向に圧延(C方向圧延)を行ったり、又は
上記したようなクロス圧延の後、好ましくは再結晶焼鈍
又はかかる圧延と焼鈍を繰り返し行うことによって{1
00}面方位の結晶粒を発達させるが、この発明のよう
に{100}面よりもむしろ〔100〕軸に強く集積し
た結晶粒を得るためには、圧延・再結晶処理の回復・初
期再結晶段階において圧延方向と同一方向に20〜200000
G程度の磁場を印加することが必要である。
る。さて所望の成分組成に調整した溶鋼を、連続鋳造に
よりスラブとしたのち、通常の製造工程すなわちスラブ
加熱−粗圧延−熱間圧延により熱延板とし、ついで熱延
方向と直角方向に圧延(C方向圧延)を行ったり、又は
上記したようなクロス圧延の後、好ましくは再結晶焼鈍
又はかかる圧延と焼鈍を繰り返し行うことによって{1
00}面方位の結晶粒を発達させるが、この発明のよう
に{100}面よりもむしろ〔100〕軸に強く集積し
た結晶粒を得るためには、圧延・再結晶処理の回復・初
期再結晶段階において圧延方向と同一方向に20〜200000
G程度の磁場を印加することが必要である。
【0025】ついで上記のようにして結晶粒の〔10
0〕軸を圧延方向に高度に集積させた薄板を、表面研磨
後、 100〜700 ℃の窒化雰囲気中で、より好ましくは薄
板の圧延方向に磁場を印加しつつ、窒化処理を施すこと
により、Fe16N2鉄窒化物を、前掲図1の(b) に示した析
出形態に優先析出させる。なお窒化処理後の冷却は、急
冷処理とする方が望ましい。またその後、鋼板表面上に
析出したFe16N2のみを地鉄表面から取り出すためには、
Fe16N2が準安定物であることから、弱いエッチング例え
ば数%のHNO3液又はしゅう酸とH2O2との混合液等を用い
て鉄基板を除去すれば良い。
0〕軸を圧延方向に高度に集積させた薄板を、表面研磨
後、 100〜700 ℃の窒化雰囲気中で、より好ましくは薄
板の圧延方向に磁場を印加しつつ、窒化処理を施すこと
により、Fe16N2鉄窒化物を、前掲図1の(b) に示した析
出形態に優先析出させる。なお窒化処理後の冷却は、急
冷処理とする方が望ましい。またその後、鋼板表面上に
析出したFe16N2のみを地鉄表面から取り出すためには、
Fe16N2が準安定物であることから、弱いエッチング例え
ば数%のHNO3液又はしゅう酸とH2O2との混合液等を用い
て鉄基板を除去すれば良い。
【0026】
【表2】 をそれぞれ含み、残部は実質的にFeの組成になる各熱延
板に、クロス圧延を施して0.1 mm厚の冷延板とした。つ
いで圧延方向に 500Gの磁場を印加しつつ、880℃で焼
鈍して、〔100〕軸に強く集積した結晶粒を発達させ
たのち、この試料表面を研磨して鏡面状態に仕上げた。
その後(NH3+H2)中で、圧延方向に1000Gの磁場を印加
しながら(a-1, b-1)、また磁場印加なし(a-2, b-2)
で 460℃,20分間の窒化処理を施したのち、数%のHNO3
液中でFe16N2を抽出した。
板に、クロス圧延を施して0.1 mm厚の冷延板とした。つ
いで圧延方向に 500Gの磁場を印加しつつ、880℃で焼
鈍して、〔100〕軸に強く集積した結晶粒を発達させ
たのち、この試料表面を研磨して鏡面状態に仕上げた。
その後(NH3+H2)中で、圧延方向に1000Gの磁場を印加
しながら(a-1, b-1)、また磁場印加なし(a-2, b-2)
で 460℃,20分間の窒化処理を施したのち、数%のHNO3
液中でFe16N2を抽出した。
【0027】かくして得られたFe16N2薄膜の飽和磁化を
測定したところ、表3に示すような値が得られた。また
比較のため、磁場を印加せずに回復・再結晶を施して得
たもの(a-3, b-3、a-4, b-4)についての測定結果も、
表3に併せて示す。
測定したところ、表3に示すような値が得られた。また
比較のため、磁場を印加せずに回復・再結晶を施して得
たもの(a-3, b-3、a-4, b-4)についての測定結果も、
表3に併せて示す。
【表3】
【0028】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、飽和磁化が
極めて高いFe16N2を、容易かつ簡単に得ることができ、
従ってその大量供給を安定して行うことができる。
極めて高いFe16N2を、容易かつ簡単に得ることができ、
従ってその大量供給を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】窒化処理に際し、磁場を試料と垂直方向(同図
a)、平行方向(同図b)に印加した場合及び磁場を印
加しなかった場合(同図c)における、Fe16N2の析出状
態を比較して示した図である。
a)、平行方向(同図b)に印加した場合及び磁場を印
加しなかった場合(同図c)における、Fe16N2の析出状
態を比較して示した図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 8/26 C23F 1/00 H01F 1/12
Claims (2)
- 【請求項1】 圧延・再結晶処理の回復・初期再結晶段
階において圧延方向と同一方向に20〜200000G程度の磁
場を印加することにより得られた、結晶粒の〔100〕
軸が圧延方向に強く集積した集合組織を有する鉄又は鉄
合金薄板に、窒化処理を施して、該薄板の表面にFe16N2
を優先形成させたのち、エッチングにより鉄又は鉄合金
を除去してFe16N2鉄窒化物を取り出すことを特徴とする
高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法。 - 【請求項2】 圧延・再結晶処理の回復・初期再結晶段
階において圧延方向と同一方向に20〜200000G程度の磁
場を印加することにより得られた、結晶粒の〔100〕
軸が圧延方向に強く集積した集合組織を有する鉄又は鉄
合金薄板に、圧延方向と同方向に磁場を印加しながら窒
化処理を施して、該薄板の表面にFe16N2を優先形成させ
たのち、エッチングにより鉄又は鉄合金を除去してFe16
N2鉄窒化物を取り出すことを特徴とする高い飽和磁化を
有するFe16N2鉄窒化物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4122057A JP3021957B2 (ja) | 1992-05-14 | 1992-05-14 | 高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4122057A JP3021957B2 (ja) | 1992-05-14 | 1992-05-14 | 高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05311390A JPH05311390A (ja) | 1993-11-22 |
JP3021957B2 true JP3021957B2 (ja) | 2000-03-15 |
Family
ID=14826557
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4122057A Expired - Fee Related JP3021957B2 (ja) | 1992-05-14 | 1992-05-14 | 高い飽和磁化を有するFe16N2鉄窒化物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3021957B2 (ja) |
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BR112015018935A2 (pt) * | 2013-02-07 | 2017-07-18 | Univ Minnesota | imã permanente de nitreto de ferro e técnica para formar imã permanente de nitreto de ferro |
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KR20180009394A (ko) | 2014-03-28 | 2018-01-26 | 리전츠 오브 더 유니버시티 오브 미네소타 | 코팅된 나노입자들을 포함하는 질화철 자성 재료 |
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BR112017002471A2 (pt) | 2014-08-08 | 2017-12-05 | Univ Minnesota | materiais magnéticos duros de nitreto de ferro multicamadas |
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AU2015301085A1 (en) | 2014-08-08 | 2017-03-02 | Regents Of The University Of Minnesota | Forming iron nitride hard magnetic materials using chemical vapor deposition or liquid phase epitaxy |
JP2018510497A (ja) | 2015-01-26 | 2018-04-12 | リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ | 窒化鉄磁石の歪みの保持 |
US10748687B2 (en) * | 2018-03-12 | 2020-08-18 | General Electric Company | Methods of making a component with variable magnetization and related components |
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-
1992
- 1992-05-14 JP JP4122057A patent/JP3021957B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05311390A (ja) | 1993-11-22 |
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