JP3009066B2 - 連続焼鈍薄鋼板の製造方法 - Google Patents

連続焼鈍薄鋼板の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、缶詰等に用いられる錫
めっき鋼板やティンフリースチールなどの缶用鋼板等の
原板となる連続焼鈍薄鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】絞りーしごき成形缶(所謂DI缶)や、
比較的深い再絞り缶などの形成に用いられる缶用鋼板に
は、調質度がJISで規定するTー1、Tー2、Tー3
の軟質のものが適しているので、従来均熱時間の長いバ
ッチ焼鈍によるものが主として用いられていた。しかし
バッチ焼鈍は、全体としての焼鈍時間が長いため、作業
工程の管理が厄介である、表面汚れを生じて耐蝕性が損
なわれ易い、コイル内での硬度のばらつきが比較的大き
い等の欠点があるため、最近連続焼鈍による軟質の缶用
鋼板の製造方法が提案されている(例えば特開平2−1
18024号公報)。
【0003】この方法は、Cが0.004重量%以下の
アルミニュウムキルド連続鋳造鋼片を、常法により熱間
圧延、酸洗、冷間圧延、連続焼鈍して、ロックウエル硬
度(HR−30T:以下硬度と呼ぶ)が50以下の連続
焼鈍薄鋼板を製造するものである。一般に缶用鋼板は、
バッチ焼鈍薄鋼板又は連続焼鈍薄鋼板を適宜の圧延率で
調質圧延又は冷間圧延(所謂DR[ダブルレデユース]
圧延)した後、錫めっき等の表面処理を施されるのであ
るが、歪時効性と絞り加工性の改善のため、炭素固定能
の大きいNbを適量、好ましくは0.01−0.03重
量%含有することが望ましい。しかしながら、従来の
組成及び製造方法によるときは、Nbが0.01重量%
以上になると、連続焼鈍の際の再結晶温度が高くなる
(730℃以上)ため、連続焼鈍時の加熱温度が高くな
り、連続焼鈍の際にヒートバックル(加熱による板のゆ
がみ)を生じて、通板が困難になり易く、また、焼鈍の
ための熱エネルギー使用量が増大するという問題があっ
た。特に、缶用材料として用いられる缶用薄鋼板はその
加工特性と板厚が薄いために連続焼鈍の際にヒートバッ
クルが起こりやすい。しかもこれらの薄鋼板は焼鈍後の
調質圧延又は冷間圧延においては、各バッチ共に予め一
定板厚に合わせてロールギャップを設定された冷間圧延
機に薄鋼鈑が通板されるが、このような薄板となると僅
かのヒートバックルが生じて、狭いロールギャップの
ため座屈して噛み込まれやすく、通板時の障害となって
生産交率を阻害するのみか、噛み込み等を生じるとロー
ルを損傷することとなる。一旦このようなヒートバック
ルを生じた薄鋼板は、再度平坦化のための圧延、再焼鈍
等するが加工特性等が変化するため規格の緩やかな他の
用途に振り向けるほかない。このような缶用薄鋼鈑にお
けるヒートバックルに伴う問題は、最近、特に省エネル
ギー対策や材料コストの削減のため、缶用鋼板として板
厚が更に薄いものが用いられるようになって来ているこ
とから重要度を増しており、その解決が強く求められて
いる
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Nbを所定
量含有するアルミニュウムキルド極低炭素連続鋳造鋼片
を素材とする、ヒートバックルを生じることなく連続焼
鈍を行うことが可能な缶用薄鋼板の製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の缶用薄鋼板の製
造方法は、Cが0.003重量%以下のアルミニュウム
キルド極低炭素連続鋳造片を、熱間圧延、酸洗、冷間圧
延、連続焼鈍して、連続焼鈍薄鋼板を製造する方法であ
って、該連続鋳造鋼片のNbが0.01〜0.03重量
%、Pが0.005重量%以下であり、連続焼鈍におけ
る均熱温度が720℃以下であることを特徴とする。
【0006】
【作用】連続鋳造鋼片はアルミニュウムキルド鋼である
ので、この鋼片より製造された連続焼鈍薄鋼板は、調質
圧延後の固溶Nに基づく歪時効硬化が起こらない。また
Cが0.003重量%以下と低いので、全体として軟質であ
る上に、Nbを0.01〜0.03重量%含有しているため、固
溶CはNbにより固定されて、固溶Cに基づく歪時効硬
化も起らず、さらに絞り加工性が改善される。Nbが0.
01重量%より少ないと、この効果が十分でなく、一方0.
03重量%を越えてもこの効果がさらに上昇することはな
く、むしろ製造コストが高くなる。Pが0.005重量%以
下の場合は、理由は必ずしも明らかでないが、後述のよ
うに連続焼鈍のさいの均熱温度が720 ℃以下でも再結晶
が行なわれる。そのため連続焼鈍のさいにヒートバック
ルが起こり難い。
【0007】
【発明の実施の態様】 本発明の連続鋳造鋼片は、 転炉で
の溶製鋼を真空脱ガス処理して脱炭した後、Alを添加
して脱酸処理した溶鋼から、連続鋳造機で連続鋳片を作
製する。この連続鋳造鋼片の組成は、C:0.003重
量%以下、Si:0.03重量%以下、Mn:0.10
〜0.20重量%、P:0.005重量%以下、S:
0.02重量%以下、sol.Al:0.03〜0.0
7重量%、N:0.003重量%以下で、残りは不可避
的不純物よりなるものであることが望ましい。
【0008】この連続鋳造鋼片を好ましくは熱間仕上温
度Ar3点以上、巻取温度650℃以下で熱間圧延して熱延
ストリップとする。この熱延ストリップを連続酸洗した
後、好ましくは90%以上の圧延率で冷間圧延して冷延ス
トリップを作製する。この冷延ストリップは、連続焼鈍
時の均熱温度が720℃以下でも再結晶するので、この冷
延ストリップを均熱温度720℃以下で連続焼鈍して連続
焼鈍薄鋼板を製造する。連続焼鈍後の硬度は50以下であ
る。
【0009】連続焼鈍薄鋼板は最終製品の硬度、すなわ
ち調質度(T−1、T−2、T−3、T−4等の)に合
わせて、適宜の圧延度で調質圧延またはDR圧延され
て、所謂冷延薄鋼板とされる。冷延薄鋼板はそのまま使
用されるか、または錫めっき等の表面処理を施されて、
錫めっき鋼板等の缶用鋼板等となる。
【0010】次に具体例について述べる。C:0.0020重
量%、Si:0.02重量%、Mn:0.16重量%、P:0.00
3重量%、S:0.002重量%、sol.Al:0.055重量
%、N:0.0021重量%、Nb:0.019重量%、残り不可
避的不純物よりなる、極低P含有量の連続鋳造鋼片(以
下A鋼片とよぶ)を、熱間仕上温度880℃、巻取温度620
℃で熱間圧延して、板厚2.3mmの熱延ストリップに形成
した後、これを連続酸洗し、次いで圧延率90%で冷間圧
延して、板厚0.23mmの冷延ストリップを作製した。
【0011】比較のため、C:0.0023重量%、Si:0.
02重量%、Mn:0.15重量%、P:0.019重量%、S:
0.002重量%、sol.Al:0.047重量%、N:0.0018
重量%、Nb:0.019重量%、残り不可避的不純物より
なる、P含有量が通常の連続鋳造 鋼片(以下B鋼片と
よぶ)より、A鋼片と同様の条件で熱間圧延、冷間圧延
を行なって、板厚0.23mmの冷延ストリップを作製した。
【0012】上記の本発明のA鋼片及び比較例のB鋼片
の冷延ストリップよりそれぞれ切り出したテストピース
を、試験用連続焼鈍炉(炉内雰囲気はNHガス)で10
℃/秒の加熱速度で、640℃から800℃までの種々
の均熱温度まで加熱し、各均熱温度に30秒保持した
後、40℃/秒の速度で50℃まで冷却した。放冷によ
り室温に冷却後の各テストピースについて、硬度測定、
光学顕微鏡による組織観察、およびX線反射強度測定に
よる集合組織の調査を行った。また、10℃/秒の加熱
速度で、均熱温度720℃及び760℃(比較例のB鋼
片からのテストピースの場合は760℃のみ)に加熱
し、この温度に30秒から300秒までの種々の時間保
持した後、40℃/秒の速度で50℃まで冷加し、放冷
により室温に冷却後の各テストピースについて、硬度を
測定した。
【0013】均熱温度を640℃から800℃まで変え
た場合の、硬度測定の結果を図1に示す。図1の結果か
本発明のA鋼片からのテストピースの場合は、図に見
るように均熱温度が600℃を超えると共に硬度が急激
に低下して、680℃付近で硬度50以下となり、70
0℃近傍から硬度が水平に近づくことが判る。同時に行
った光学顕微鏡による組織観察の結果とから、再結晶温
度は720℃であった。これに対して、比較例のB鋼片
からのテストピースの場合は、図に示すように均熱温度
680℃を超えてから硬度の低下が大きくなるが、硬度
50以下となるのは760℃以上の温度であった。光学
顕微鏡による組織観察結果と併せて再結晶温度は760
℃であることが判明した。また、図から明らかなよう
に、本発明のテストピースは、比較的低温度の均熱処理
によって速やかに硬度が低下して焼鈍処理の効果を発揮
するが、比較例のテストピースは、760℃近傍で硬度
50近傍となるものの、通常の均熱処理の上限の800
℃付近においてもかなりの硬度を保って、なお温度と共
に変化する傾向にあり、収束しない。 X線反射強度測定
により観察した集合組織の変化については、図2および
3に示すように、同じ均熱温度の場合、本発明のA鋼片
からのテストピースの方が比較例のB鋼片からのテスト
ピースよりも、(222)成分が多く、(100)成分
がすくない。すなわち本発明の鋼板は比較例のものより
ランクフォード値が高く、絞り加工性に優れている
とが判る。なお、(211)成分及び(110)成分
(図示を省略した。)については、両者の間に殆ど差は
なかった。
【0014】均熱時間を変えた場合の、硬度測定結果を
図4に示す。本発明のA鋼片からのテストピースの場合
は、均熱温度720℃及び760℃のいずれの場合も
熱時間が60秒を超えた後の硬度の低下は起こらず、
平となっていることから、均熱温度720℃で既に再結
晶が充分に行われていることが判る。一方、比較例の
鋼片からのテストピースは、760℃の均熱温度でも保
持時間と共に徐々に硬度が低下し、保持時間が60秒を
超えても一定しない。 即ち、図1及び図4の結果から明
らかなように、比較例のB鋼片によるテストピースは、
通常の焼鈍の均熱温度範囲において、比較的高温度まで
十分に軟化し難く且つ硬度が均熱温度が高くなるにつれ
て、またその保持時間が長くなるにつれて低下し続けて
変化する傾向がある。これに対して、本発明のA鋼片に
よるテストピースは、速やかに軟化すると共に低い均熱
温度において所定の軟化処理が達成されていることが判
る。このことから、本発明の薄鋼板は、低い均熱温度と
相俟つて、均一一様な軟化処理が行われ、ヒートバック
ルを生じることがないと考えられる。
【0015】更に、P含有量の影響の確認のため、P含
有量が通常よりも少ない連続鋳造鋼片から、テストピー
スを作製した。C:0.0021重量%、Si:0.0
2重量%、Mn:0.16重量%、P:0.007重量
%、S:0.002重量%、sol.Al:0.050
重量%、N:0.0020重量%で、Nb:0.019
重量%、残り不可避的不純物よりなる、連続鋳造鋼片
(C鋼片)より、A鋼片と同様の条件で熱間圧延、冷間
圧延を行って、板厚0.23mmの冷延ストリップを作
製した。この冷延ストリップより切り出したテストピー
スを、前記の試験用連続焼鈍炉で10℃/秒の加熱速度
で、種々の均熱温度まで加熱し、各均熱温度に30秒保
持した後、40℃/秒の速度で50℃まで冷却した。放
冷により室温に冷却後の各テストピースについて、硬度
測定、光学顕微鏡による組織観察を行って再結晶温度を
調べたところ、737℃であることが判明した。即ち、
Pの含有量の減少と共に再結晶温度が低下するが、同時
に、前記のA鋼片によるテストピースによる結果とあわ
せて、実用上所要の焼鈍効果を得るためのP含有量は、
C鋼片の場合よりも低くP:0.005重量%以下で達
成できることが判る。
【0016】本発明は、以上の実施例によって制約され
るものでなく、例えば缶用鋼板以外の、例えば家電用鋼
板、自動車用鋼板など適宜の用途の鋼板の製造にも適用
されるものである。
【0017】
【発明の効果】本発明のNb含有Alキルド極低炭素連
続鋳造鋼片を素材とする連続焼鈍薄鋼板の製造方法は、
比較的低い均熱熱温度で連続焼鈍を行うことができ、
かも均一一様な軟化処理が行われるため、缶用薄鋼板に
おいても連続焼鈍の際ヒートバックルが起こり難いの
で、通板を効率よく行うことができ、最近の一層板厚の
薄くなりつつある缶用鋼鈑の要求に応えると共に、熱エ
ネルギーコストが低減されるという効果を奏する。ま
た、本発明の方法で製造された連続焼鈍薄鋼板は絞り加
工性が改善されるというメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法と比較例の方法の場合における、
連続焼鈍のさいの均熱温度と硬度の関係を示す線図であ
る。
【図2】本発明の方法と比較例の方法の場合における、
連続焼鈍のさいの均熱温度と(222)成分の集積度の関
係を示す線図である。
【図3】本発明の方法と比較例の方法の場合における、
連続焼鈍のさいの均熱温度と(100)成分の集積度の関係
を示す線図である。
【図4】本発明の方法と比較例の方法の場合における、
連続焼鈍のさいの均熱時間と硬度の関係を示す線図であ
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Cが0.003重量%以下のアルミニュウ
    ムキルド極低炭素連続鋳造鋼片を、熱間圧延、酸洗、冷
    間圧延、連続焼鈍して、連続焼鈍薄鋼板を製造する方法
    において、該連続鋳造鋼片のNbが0.01〜0.03
    重量%、Pが0.005重量%以下であり、連続焼鈍に
    おける均熱温度が720℃以下であることを特徴とする
    缶用薄鋼板の製造方法。
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