JP2989248B2 - ポリ(モノクロロ―p―キシリレン)を酸化して得られる重合体及びその製造方法並びに該重合体からなる保護膜 - Google Patents

ポリ(モノクロロ―p―キシリレン)を酸化して得られる重合体及びその製造方法並びに該重合体からなる保護膜

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を酸
化して得られる新規な高分子化合物及びかかる高分子化
合物の製造方法並びかかる高分子化合物よりなる耐摩耗
性、耐食性及び密着性に優れた保護膜に関する。
[従来の技術] 近年、コスト、機械加工性、エネルギー積という点で
一層有利な稀土類鉄系磁石が注目されており、例えば、
原子比で稀土類元素8〜30%、B2〜28%、及びFe残部よ
りなる稀土類鉄系磁石が知られている。
ところが、稀土類鉄系磁石は酸化し易いNd、Feを多く
含むため、酸、アルカリ等の薬品に腐食されまた水分に
より錆びやすく、耐食性という点ではSm−Co系に比べ劣
っていた。このため、かかる磁石を有効利用すべく、ポ
リ(p−キシリレン)等のポリマーを用いる表面保護膜
が検討されている。
[発明が解決しようとする課題] 例えば、ポリ(p−キシリレン)を真空蒸着法により
永久磁石の全周にコーティングする方法が開示されてい
る(特許公開公報第55−103714号)が、この方法は蒸着
膜の磁石に対する密着性及び膜の緻密性が十分でないた
め防錆等の耐食の目的には満足できるものでなかった。
別の表面保護方法として高分子樹脂膜を稀土類鉄系磁石
の表面に塗布する方法が知られているが(特開昭61−19
8221号公報、同56−81908号公報、同60−63901号等)、
この方法では耐食性及び磁石への密着性を同時に満足で
きないという問題があった。即ち、高分子樹脂膜は、一
般に透過湿性及び酸素透過性を有し、また、稀土類鉄系
磁石との親和性に欠ける。例えば、エポキシ樹脂は耐食
性に欠け、弗素樹脂では被覆の際に磁石の酸化を招く高
温焼付けを必要とするという問題があった。従って、前
記従来技術の高分子膜では、稀土類鉄系磁石等に良好に
密着し且つ満足な耐食機能を発揮する保護膜を得ること
ができなかった。
本願発明者らはかかる従来技術の欠点に鑑み、密着性
を向上させるためにプラズマ処理による密着性の改善に
関する発明(特願平1−67521号)を、また、膜硬度を
増加させるためにポリパラキシリレン膜上にエポキシ膜
をコーティングする発明を(特願平1−141235号)を特
許出願している。
しかしながら、上記の密着性及び膜硬度の不足という
両方の問題を同時に解決する技術が要望されていた。
そこで、本発明の目的は、膜硬度及び密着性に関する
前記従来技術の欠点を同時に解消し且つ耐食性にも優れ
る保護膜をもたらす新規高分子化合物並びにかかる新規
高分子材料よりなる保護膜を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明者は、従来技術の欠点を十分に検討した結果、
ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を所定条件下で熱
酸化処理することにより耐摩耗性、耐食性及び密着性に
優れた膜材料をもたらすことを見い出した。すなわち本
発明は、下記(1)式及び式(2)の繰り返し単位より
なる重合体であって、重合体中、単位(1)が1〜100
モル%であり、単位(2)が0〜99モル%である線状高
分子化合物を提供するものである。
上記高分子化合物において、繰り返し単位(1)及び
(2)のモル比は、好ましくは、単位(1)が50〜90モ
ル%であり、単位(2)が10〜50モル%である。上記高
分子化合物の分子量は、一般に10000〜200000の範囲で
ある。かかる高分子化合物の一具体例を以下に示す。
本発明の第2の態様は、ポリ(モノクロロ−p−キシ
リレン)膜を酸化処理することによる上記高分子化合物
の製造方法に関する。
本発明に従えば、まず、ポリ(モノクロロ−p−キシ
リレン)膜を用意する。ポリ(モノクロロ−p−キシリ
レン)膜は、以下の操作により成膜することができる。
まず、クロロ−p−キシリレンの二量体を蒸発炉中で減
圧下で1Torr以下程の減圧下で昇華蒸発させ、得られた
ガス状のクロロ−p−キシリレンの二量体を分解炉に導
入して600〜700℃、約0.5Torrで熱分解させる。次い
で、該分解ガスを、重合室に導き、常温にて、0.01〜0.
1Torrの条件下で磁石表面に重合させる。かかるの操作
は、パリレン重合装置モデル1010(ユニオン・カーバイ
ド社製)を用いて行なうことができる。
本発明に従えば、こうして得られたポリ(モノクロロ
−p−キシリレン)膜を酸化処理する。酸化処理とし
て、例えば、熱酸化処理が挙げられ、熱処理方法して
は、輻射加熱、熱伝導加熱、遠赤外加熱、高周波加熱、
マイクロ波加熱等が挙げられるが、それらに限定され
ず、いずれの方法も用いることができる。ガラス転移点
以下では高分子化合物の各部分の熱運動が抑制されてい
るため酸化反応が起きにくいという理由から、熱酸化処
理における加熱温度は上記ポリ(モノクロロ−p−キシ
リレン)のガラス転移点以上の温度、すなわち80〜400
℃の温度が好ましい。400℃以上の温度では重合膜の熱
分解が起こるため好ましくない。熱処理雰囲気はポリ
(モノクロロ−p−キシリレン)の酸化を促すために、
空気等の1%以上の酸素を含むガス、O3等の酸化性ガス
の雰囲気である。加熱時間は上記ポリマーの酸化を十分
に実行するのに30分以上が適当である。
こうして得られた化合物が上記の本発明の高分子化合
物であるか否かを確認するには、後述のような熱分解ガ
スクロマトグラフ質量分析及びFT−IR(フーリエ変換赤
外分光)を用いることができる。また、ポリ−モノクロ
ロ−p−キシリレンが式(1)の化合物に酸化する過程
をTG(熱重量測定)及びDSC(示差走査型熱量測定)を
用いて追跡することができる。また、本発明の第3の態
様は上記本発明の高分子化合物よりなる保護膜に関す
る。かかる保護膜は上記の新規な高分子化合物の製造方
法により得られる。形成する保護膜の膜厚は、十分な耐
食性を確保するために、0.1空50μmが好ましく、特に
1〜10μmが好ましい。かかる保護膜は稀土類磁石等の
金属磁石の保護膜として好適である。
[作用] 本願発明者らはポリ(モノクロロ−p−キシリレン)
を熱酸化することによって、稀土類等の磁石保護膜材料
に好適な高分子材料を見いだした。かかる高分子材料の
例は(3)式に見られる通りであるが、より一般的には
請求項1に示した繰り返し単位(1)/(2)比を有す
る高分子化合物が得られる。すなわち、本発明者らの実
験したところによれば、ポリ(モノクロロ−p−キシリ
レン)中のベンゼン環の一定の配置にあるCのメタ位
のメチレン基と酸素が反応してカルボニル基が形成され
る。酸化条件(温度、時間)により酸化程度すなわちO2
の含有量が変化する。完全に酸化、すなわちCに対し
メタ位のメチレン基が完全に酸化されると重合膜は黄変
する。このことから、ポリ(モノクロロ−p−キシリレ
ン)中のかかるメタ位のCの存在割合によって、得ら
れる本発明の高分子化合物中の繰り返し単位(1)/
(2)も変化すると考えられる。従って、ポリ(モノク
ロロ−p−キシリレン)の化学構造を適宜選択して熱酸
化処理することにより所望の化学構造を有する本発明の
高分子化合物を得ることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発
明はそれらに限定されない。
[実施例] 実施例1 本発明の新規な高分子化合物の製造方法を以下に示
す。
パリレン重合装置(ユニオン・カーバイト社製モデル
1010)を用いて、アルミニウム箔、KBr板、シリコンウ
ェハー等の基板や磁石上にポリ(モノクロロ−p−キシ
リレン)膜を成膜した。この際、クロロ−p−キシリレ
ンの二量体を蒸発炉中に導入して120℃、約1Torrで蒸発
させ、得られたガス状のクロロ−p−キシリレンの二量
体を熱分解炉に導入して650℃、約0.5Torrで熱分解させ
た。さらに、該分解ガスを上記基板を配置した重合室に
導いて、25℃、約0.035Torrの条件下で基板表面に膜厚
が10μmになるように重合させた。こうして得られた重
合膜の化学構造を熱分解ガスクロマトグラフ及びFT−IR
を用いて同定した。第1図に熱分解ガスクロマトグラフ
そして第2図にFT−IRを示す。これらスペクトルより得
られた重合膜の化学構造は下記式のポリ(モノクロロ−
p−キシリレン)であることがわかった。
次にこうして得られたポリ(モノクロロ−p−キシリ
レン)膜を恒温槽を用いて空気中で200℃にて3時間酸
化処理した。
第3図及び第4図に、それぞれ、空気中で熱酸化処理
した場合のTG(熱重量測定)及びDSC(示差走査型熱量
測定)の結果を示す。TGの結果より260℃付近の加熱温
度にて酸化反応に伴う3%程度の質量増加があることが
わかる。またDSCの結果より、ガラス転移点付近から酸
化反応が起こり始め、同様の温度付近にて酸化反応によ
る発熱のピークが生じていることがわかった。更に上記
熱酸化処理して得られた重合体の熱分解ガスクロマトグ
ラフを第5図に示す。これらのスペクトルより第1表の
ような成分が存在することがわかった。
更に第6図に、空気中で熱酸化処理して得られた重合
膜のFT−IRを示す。第2図のFT−IRと比較してみると、
熱酸化処理した重合膜のFT−IRは2850、2930及び3030cm
-1のメチル及びメチレン基の吸収が減少し、1250、1280
及び1725cm-1のカルボニル基を示すピークが出現したこ
とがわかる。これらのスペクトル等の結果より、上記酸
化膜の化学構造はベンゼン環のC基に対してメタ位の
メチレン基と酸素が反応してカルボニル基に変化したも
のと推定される。熱酸化処理により得られた重合膜の化
学構造を下記式に示す。
融点の測定 上記のような化学構造を有する物質の融点を測定した
が、TG/DTAの結果より、この物質は600℃以上で熱分解
するが、それまでに融点を示す吸熱ピークが認められな
かった。従って、この物質の融点は600℃以上であるこ
とが推定される。
実施例2 実施例1で得られたポリ(モノクロロ−p−キシリレ
ン)膜を、酸素雰囲気下(O2 latm)、O2流量を100ml/
分として、室温から310℃まで10℃/分の条件で昇温加
熱処理した。熱分解ガスクロマトグラフ等の結果から第
1表に示したのと同様の成分を有しており、前記の化学
構造であることがわかった。
第7図に、上記酸素雰囲気中で熱酸化処理した場合の
DSC(示差走査型熱量測定)の結果を示す。また、第8
図に熱分解ガスクロマトグラフィーの結果を示す。これ
よりこの実施例で処理して得られた重合体は第1表に示
したのと同様の成分を有しており、実施例1で示したの
と同様の化学構造を有する高分子が得られたことがわか
る。
第9図は上記処理して得られた重合体のFT−IRであ
る。同図よりカルボニル基の出現及びメチレン基の減少
が明らかになる。
実施例3 実施例1で得られたポリ(モノクロロ−p−キシリレ
ン)膜を、酸素分圧32mmHgにて200℃中3時間保持して
熱酸化処理した。こうして得られた重合膜についてガス
クロマトグラフ等の分析をしたところ、第1表に示した
のと同様の成分を有しており、それゆえ上記の化学構造
であることがわかった。
膜硬度試験 実施例1の操作に従って、アルミニウム箔上に成膜
後、熱酸化処理した上記保護膜の鉛筆硬度を、熱酸化処
理前の重合膜、すなわちポリ(モノクロロ−p−キシリ
レン)膜のそれと比較した。以下に結果を示す。
熱酸化処理前;HB 熱酸化処理後;5H 塩水噴霧試験 磁石上に成膜後、熱酸化処理した上記の保護膜の塩水
噴霧試験を、熱酸化処理前のポリ(モノクロロ−p−キ
シリレン)膜及び保護膜のない磁石と比較して行った。
その結果、保護膜のない磁石は3時間で錆びの発生が認
められたのに対して、上記保護膜を備えた磁石では共に
96時間で錆びの発生は認められなかった。
密着性試験及びピーリング試験 アルミニウム箔上に成膜した後、熱酸化処理した上記
の保護膜の碁盤目試験及びそれに続くピーリング試験
を、熱酸化処理前のポリ(モノクロロ−p−キシリレ
ン)膜と比較して行った。以下に結果を示す。
粘弾性試験 上記のようにして得られた重合体は基体との密着性が
向上して剥離できなかったため、粘弾性を測定すること
はできなかった。
[発明の効果] 本発明の新規な高分子化合物から構成した保護膜は、
良好な耐食性を備え、ポリ(モノクロロ−p−キシリレ
ン)膜の欠点とされていた膜硬度及び密着性が同時に改
善されるため、稀土類磁石等の磁石の保護膜として好適
である。よって、本発明の当業界における工業的価値は
極めて高い。
【図面の簡単な説明】
第1図にポリ(モノクロロ−p−キシリレン)の熱分解
ガスクロマトグラフである。 第2図はポリ(モノクロロ−p−キシリレン)のFT−IR
である。 第3図はポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を空気
中、熱酸化処理したときのTGを示す図である。 第4図はポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を空気中
で熱酸化処理した場合のDSC(示差走査型熱量測定)を
示す図である。 第5図はポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を空気中
で熱酸化処理して得られた重合体の熱分解ガスクロマト
グラフである。 第6図はポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を空気中
で加熱酸化処理して得られた重合体の熱分解ガスクロマ
トグラフである。 第7図は、ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を酸素
雰囲気中で熱酸化処理した場合のDSCである。 第8図は、ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を酸素
雰囲気中で熱酸化処理して得られた重合体の熱分解ガス
クロマトグラフを示す。 第9図は、ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)を酸素
雰囲気中で熱酸化処理して得られた重合体のFT−IRであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 61/00 - 61/12 CA(STN) REGISTRY(STN) WPIL(QUESTEL)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式の繰り返し単位(1)及び単位
    (2): よりなる重合体であって、単位(1)が1〜100モル%
    であり、単位(2)が0〜99モル%である線状高分子化
    合物。
  2. 【請求項2】請求項1の高分子化合物よりなる磁石用保
    護膜。
  3. 【請求項3】ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)膜を
    酸化処理する請求項1の高分子化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】ポリ(モノクロロ−p−キシリレン)膜を
    80〜400℃で酸化処理する請求項3の高分子化合物の製
    造方法。
  5. 【請求項5】下記構造を有する高分子化合物:
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