JP2984778B2 - 高純度チタン材の鍛造方法 - Google Patents

高純度チタン材の鍛造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スパッタリング用チタ
ンターゲットの製造に用いられる高純度チタン材の鍛造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体ディバイスの製造においては、配
線材料やバリヤメタルを半導体素子に形成するために、
スパッタリングによる高純度チタンの薄膜形成技術が用
いられている。このスパッタリングに用いられる高純度
チタンターゲットは、通常、鋳造、鍛造、圧延、熱処理
の各プロセスを経て製造される。
【0003】ところで、このようなスパッタリング用チ
タンターゲットにおいては、スパッタ膜厚の均一化を図
るために、結晶粒の微細化が必要とされており、そのた
めに鍛造および圧延で形状を整えると共に、圧延および
熱処理での再結晶により、結晶粒径を制御するようにし
ている。
【0004】ここで鍛造は、従来は鋳造材の整形を主眼
として行なわれ、スパッタリング用チタンターゲットの
製造でも専ら鋳造材の形状を圧延に適した形状に整える
ために行なわれていたが、一部では鋳造組織の破壊にも
利用されていた。例えば特開昭62−286639号公
報には、スパッタリングターゲットを製造するためのも
のではないが、チタン合金の鍛造において鍛伸と据え込
みの繰り返しにより変態点以上の温度では鍛錬成形比5
〜8の鍛造を行い、変態点以下の温度では3〜4の鍛造
を行った場合に、結晶粒が微細化されたことが示されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような鍛伸と据え
込みの繰り返しによる鍛造は、高純度チタンの場合にも
鋳造組織の破壊に有効である。しかし、その高純度チタ
ンの鍛造材を圧延、熱処理してスパッタリングターゲッ
トとしても、スパッタ膜厚の均一化に与える影響は小さ
く、実効性のある効果は得られなかった。
【0006】本発明の目的は、膜厚均一化効果の高いス
パッタリング用チタンターゲットを製造するための高純
度チタンの鍛造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】膜厚均一化効果の高いス
パッタリング用チタンターゲットを製造するため、本発
明者らは鍛造プロセスに着目し、実験を繰り返した。そ
の結果、鍛伸と据え込みの繰り返しによる鍛造加工、特
に変態点以下の温度での鍛造加工が、スパッタリング用
チタンターゲットの製造では重要であること、特開昭6
2−280639号公報に示されている繰り返し鍛造が
スパッタリングターゲットを製造する場合に十分機能し
ないのは、変態点以下の温度での鍛造加工が不足するた
めであり、変態点以下の温度での鍛造加工を変態点以上
の温度での鍛造加工と同等かこれより大きなものとする
ことにより、その鍛造材から製造されたスパッタリング
ターゲットは、高い膜厚均一化効果を示すことが明らか
になった。
【0008】本発明はかかる知見に基づきなされたもの
で、スパッタリング用チタンターゲットを製造するため
の高純度チタン材の鍛造プロセスにおいて、変態点以上
の温度で鍛錬成形比が5以上となるように鍛伸と据え込
みを組み合わせた1次鍛造加工を1回以上行った後、変
態点以下の温度で鍛錬成形比が5以上となるように鍛伸
と据え込みを組み合わせた2次鍛造加工を1回以上行な
うことを特徴とする高純度チタン材の鍛造方法を要旨と
する。
【0009】
【作用】本発明の鍛造方法で高純度チタンとは4N5
(99.995%)以上のものを指す。また、鍛錬成形比
とは、図1に示すように、鍛伸および据え込みでの各断
面積比を合計した値である。そして本発明の鍛造方法で
は、鍛錬成形比が5以上の1次鍛造加工および2次鍛造
加工が行われる。
【0010】1次鍛造加工は鋳造組織の破壊を目的とす
る。そのため、加工性が良好な変態点以上の温度でこの
加工を行なう。ただし、必要以上に高い鍛造温度は材料
表面の酸化を促進する。望ましい鍛造温度は900〜9
50℃である。1次鍛造加工での鍛錬成形比を5以上と
したのは、これ未満では鋳造組織の破壊が不足するから
である。ただし、この加工では後述する2次鍛造加工ほ
ど加工度が大きな意味を持たず、大きな加工度はむしろ
経済性を悪化させる原因になるので、成形比の上限とし
ては10以下が望ましく、加工回数は1回で十分であ
る。
【0011】2次鍛造加工は加工歪の蓄積を目的とす
る。1次鍛造加工では加工性の良い変態点以上の温度で
加工が行われるので、鋳造組織を破壊することはできて
も加工歪を蓄積することはできない。2次鍛造加工で加
工歪を蓄積するこにより、これに続く圧延・熱処理工程
で再結晶が促進され、結晶粒の微細化が図られることに
より、そのスパッタリングターゲットは膜厚の均一性に
優れたものとなる。加工歪を蓄積するため、2次鍛造加
工での鋳造温度は、加工性の良くない変態点以下の温度
で行う。ただし、鍛造温度が低すぎると加工で割れが生
じるおそれがあるので、2次鍛造加工での鍛造温度の下
限としては500℃以上が望ましい。加工度としては最
小限5以上の鍛錬成形比が必要であり、10以上が望ま
しく20以上が更に望ましい。ただし経済性を考慮する
と10〜20が望ましく15〜20が特に望ましい。加
工の回数も2以上が望ましく3回が特に望ましい。
【0012】1次鍛造加工および2次鍛造加工において
鍛伸と据え込みの組み合わせを使用するのは、1次鍛造
加工では、鍛錬成形比を増加させることにより鋳造組織
を破壊してマクロ組織を均一にするためであり、2次鍛
造加工では鍛錬成形比を増加させることにより加工歪を
蓄積し、その後の圧延、熱処理工程での結晶粒を微細化
するためである。
【0013】
【実施例】以下に本発明の実施例を示し、比較例と対比
することにより本発明の効果を明らかにする。
【0014】不純物を表1に示す99.995%(4N
5)の高純度チタン鋳塊を表2の条件で鍛造した。各条
件での鍛造材に対し、鍛伸と据え込み方向のそれぞれに
対して垂直な断面のマクロ組織判定を行った。マクロ組
織判定の合格基準は、結晶粒の最大長さで5mm以下と
した。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】各条件での鍛造材を加熱温度300℃、圧
下率50%で圧延した後、500℃の熱処理を行ってス
パッタリングターゲットとした。切断法によりターゲッ
トの結晶粒径を測定した。また、各ターゲットを使用し
てスパッタリングを行い、膜厚分布を測定した。スパッ
タリングにより形成された薄膜の平均膜厚は約500オ
ングストロームであり、膜厚分布は(最大膜厚−最小膜
厚)/(平均膜厚×2)×100(%)で表した。
【0018】No. 1では、1次鍛造加工で鍛伸と据え込
みの組み合わせを採用せず2次鍛造加工も行わなかった
ので、鍛造材のマクロ組織が不合格となり、圧延・熱処
理を受けたターゲットにも未再結晶粒が残り、スパッタ
膜厚分布は12%であった。No. 2,3のように2次鍛
造加工を行ってもスパッタ膜厚はそれほど均一化されな
い。
【0019】No. 4,5では、1次鍛造加工で鍛伸と据
え込みの組み合わせを行ったので、鍛造材のマクロ組織
は合格となったが、ターゲットには未再結晶粒が残り、
スパッタ膜厚分布はNo. 1の場合と変わらなかった。N
o. 6のように2次鍛造加工を行なっても、それが不十
分であると、1次鍛造加工での加工度を大きくしてもス
パッタ膜厚はそれほど均一化されない。
【0020】これらに対し、No. 7〜12では1次鍛造
加工および2次鍛造加工で鍛伸と据え込みの組み合わせ
を行い、かつその2次鍛造加工で十分な加工を行ったの
で、鍛造材のマクロ組織は合格となり、ターゲットでも
未再結晶粒のない微細な結晶粒が得られ、その結果、ス
パッタ膜厚の分布は大幅に均一化された。
【0021】
【発明の効果】以上に説明した通り、本発明の高純度チ
タン材の鍛造方法は、変態点以上の1次鍛造加工に続け
て変態点以下で十分な2次鍛造加工を行うことにより、
スパッタ膜厚の均一性に優れた高品質なスパッタリング
用チタンターゲットを提供でき、半導体ディバイスの高
集積化等に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】鍛伸と据え込みの組み合わせ加工およびその加
工での鍛錬成形比を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 21/285 301 H01L 21/285 301Z (56)参考文献 特開 昭62−286639(JP,A) 特開 平6−280009(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/34 B21J 1/04,5/00 H01L 21/203,21/285

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スパッタリング用のチタンターゲットを
    製造するための高純度チタン材の鍛造プロセスにおい
    て、変態点以上の温度で鍛錬成形比が5以上となるよう
    に鍛伸と据え込みを組み合わせた1次鍛造加工を1回以
    上行った後、変態点以下の温度で鍛錬成形比が5以上と
    なるように鍛伸と据え込みを組み合わせた2次鍛造加工
    を1回以上行なうことを特徴とする高純度チタン材の鍛
    造方法。
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