JP2981214B2 - マレイミド類の移送用のアクリロニトリル溶液 - Google Patents

マレイミド類の移送用のアクリロニトリル溶液

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JP2981214B2 JP10257223A JP25722398A JP2981214B2 JP 2981214 B2 JP2981214 B2 JP 2981214B2 JP 10257223 A JP10257223 A JP 10257223A JP 25722398 A JP25722398 A JP 25722398A JP 2981214 B2 JP2981214 B2 JP 2981214B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はマレイミド類を工業的規
模で多量に取扱うのに有用なマレイミド類の移送用のア
クリロニトリル溶液に関するものである。マレイミド類
は樹脂、医薬、農薬などの原料として有用な化合物であ
るが、本発明は工業的規模での取扱いが容易なマレイミ
ド類の移送用のアクリロニトリル溶液を提供するもので
ある。 【0002】 【従来の技術】従来、常温で固体のマレイミド類は粉
体、フレーク、タブレットなどの形状で取扱われている
のが一般的である。しかしながら、このような形態のマ
レイミド類中にはマレイミド類の微粉末が含まれてい
る。とくにこのような固体状のマレイミド類の移送中、
マレイミド類の粉化が進み、マレイミド類の微粉末が多
量に発生する。 【0003】マレイミド類そのものは人体に対して刺激
性があり、特に微粉末を吸入すると鼻腔、咽喉を刺激
し、咳、くしゃみが出、また皮膚に付着したまま放置す
ると炎症をおこすなど好ましくない性質を有している。
それゆえ、このような微粉末を含有しているマレイミド
類を取扱う場合には、できるかぎり皮膚への接触をさけ
るよう厳重な注意を払う必要がある。 【0004】したがって、マレイミド類の移送に際して
できるだけ微粉末を発生しないようにしたり、また移送
後のマレイミド類から微粉末を除去するために多大の労
力を要している。さらに、固体物質の移送は、多くの場
合、紙袋、ドラム缶、コンテナなどに固体物質を充てん
し移送されるが、これらの場合どうしてもマレイミド類
と人体との接触がさけられず、人体にマレイミド類の微
粉末が付着することは不可避である。 【0005】加えて、人体と接触しないようにするため
に固体物質の配管による移送は基本的にむつかしく配管
移送中に管内を閉塞したりするために、これら固体物質
を容易に移送するために、固体の形、大きさ、比重など
にきびしい制約が課せられる。このように、常温で固体
のマレイミド類の移送方法には数々の困難な問題がある
と言わざるをえない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】このようにマレイミド
類を固体で移送することは多くの問題点を有しており、
特に工業的に多量に取扱うに際して種々の不都合を生じ
ている。マレイミド類を液体の形で取扱うと、微粉末の
発生や管内の閉塞といった問題が解消されるが、マレイ
ミド類は加熱により重合する性質を有しているので、マ
レイミド類を加熱溶融した状態で工業的に多量に取扱う
ことは事実上不可能である。 【0007】マレイミド類を液体の形にするためには、
マレイミド類を液体中に懸濁または溶解させる方法が考
えられるが、懸濁させているとマレイミド類を使用する
際に溶解操作を行う必要があり煩雑であるため、溶解さ
せるのがよい。ただし、溶解させると溶媒の分だけかさ
ばることになる。したがって、マレイミド類を溶解させ
るための液体物質には、マレイミド類が溶解しやすいこ
と、マレイミド類の溶解度が高いこと、かつ、溶液が長
期にわたって安定であること(あるいは液体物質がマレ
イミド類と反応しないこと)が要求される。 【0008】そこで、本発明の目的は、移送において微
粉末の発生の心配がなく、配管、タンクのバルブ、ノズ
ル等の閉塞を起こさず簡単に移送に利用でき、飽和また
は過飽和濃度でなくても十分に高濃度でマレイミド類を
含むことができてマレイミド類が析出する心配がなく、
煩雑な溶解操作を行わずにマレイミド含有量の多い最終
樹脂製品を作ることができ、樹脂原料として有用なマレ
イミド類の溶液を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明者等は鋭意検討した結果、マレイミド類は
アクリロニトリルへ溶解し易く、かつ、溶解度が高いた
めに、容易に高濃度の溶液を得ることができ、さらに、
予期せざることではあるが、マレイミド類は常温より比
較的高い温度でも重合禁止剤の存在下アクリロニトリル
中において重合せず安定であることを発見した。その結
果、マレイミド類を温度40゜C以上の加温状態のアク
リロニトリル溶液となし、この形態で50重量%以上の
高濃度にすることにより全く微粉末の発生もなく容易に
取扱えることを見出し、本発明を完成するにいたったも
のである。 【0010】したがって、本発明は、マレイミド類の工
業的規模での移送用の溶液であって、マレイミド類が重
合禁止剤の存在下、温度40゜C以上のアクリロニトリ
ル中に50重量%以上の濃度で溶解してなる、マレイミ
ド類の移送用のアクリロニトリル溶液である。マレイミ
ド類はABS樹脂、AAS樹脂、AS樹脂、ACS樹脂
などの耐熱向上剤として広く使用されており、多くの場
合アクリロニトリル、スチレンなどのモノマーと共重合
させることにより用いられる。 【0011】ところが、マレイミド類はスチレンには溶
解しにくいばかりでなく、スチレン中で重合禁止剤の存
在下で常温においてさえ、容易に重合してしまう。それ
に対して、アクリロニトリルに対するマレイミド類の高
い溶解性、およびアクリロニトリル中でのマレイミド類
の重合に対する安定性などを考えると、マレイミド類を
アクリロニトリルの溶液として取扱うことによって、人
体へ直接接触することもなく、液体として取扱えること
から、容易に移送もでき、微粉末の発生もなく、樹脂合
成時においてもアクリロニトリルがマレイミド類以外の
共重合組成の1種類であることから、重合反応にマレイ
ミドのアクリロニトリル溶液をそのまま用いることがで
きるなど、多くの利点が得られる。 【0012】この様に、マレイミド類の移送するにあた
り、アクリロニトリル溶液として取扱う方法はまさに理
想的な方法であると言わざるをえない。 【0013】本発明によりアクリロニトリル溶液にでき
るマレイミド類としては、例えば、N−メチルマレイミ
ド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、
N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N
−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミ
ド、N−フェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレ
イミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−メチル
フェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミ
ド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−クロルフ
ェニルマレイミド、N−ジメチルフェニルマレイミド、
N−ジクロルフェニルマレイミド、N−ブロムフェニル
マレイミド、N−ジブロムフェニルマレイミド、N−ト
リクロルフェニルマレイミド、N−トリブロムフェニル
マレイミドなどが挙げられるが、これらに限定されるも
のではない。 【0014】また、固体状のマレイミド類をアクリロニ
トリルに溶解させるに際し用いられる重合禁止剤として
は例えば、メトキシベンゾノキン、p−メトキシフェノ
ール、フェノチアジン、ハイドロキノン、アルキル化ジ
フェニルアミン類、メチレンブルー、tert−ブチル
カテコール、tert−ブチルハイドロキノン、ジメチ
ルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン
酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、
チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミ
ダゾール、トリフェニルホスファイト、アルキルフェノ
ール類、アルキルビスフェノール類などが挙げられる
が、これらに限定されるものではない。その使用量はマ
レイミド類のアクリロニトリル溶液に対して0.000
1〜0.5重量%、好ましくは 0.001〜0.1重量%で
ある。尚、重合禁止剤の種類については、製造する重合
体の種類,重合の方法、使用する開始剤などを勘案して
選択される。 【0015】マレイミド類のアクリロニトリルへ溶解さ
せる温度は、加温状態であり、アクリロニトリルの沸点
以下であることが好ましく、アクリロニトリルが高い蒸
気圧を有するところから通常40〜60℃で溶解が行わ
れる。この発明のマレイミド類のアクリロニトリル溶液
は、マレイミド類の微粉末を発生することがなく、配管
などの閉塞を生じさせないので、パイプライン、タンク
ローリー、トラック、鉄道のタンク貨物車などの移送手
段を利用して、距離の長短に関わらず、化学コンビナー
トにおけるモノマー製造工場から重合工場へ移送するこ
と、コンビナート間で移送すること、モノマー製造会社
の工場からモノマーの利用会社(重合会社など)の工場
へ移送すること、同一会社内での移送(たとえば、モノ
マー製造会社内で製造工場から貯蔵容器へ移送すること
など)などが可能である。しかも、この発明のマレイミ
ド類のアクリロニトリル溶液は、マレイミド類を高濃度
で含有しているので、樹脂原料として広汎な用途に使用
でき、用途の制約が非常に少ない。マレイミド類を高濃
度で含有していても、加温状態であるため、溶解してい
るマレイミド類が析出するのが防がれる。特に、溶解し
ているマレイミド類の量が飽和溶解度となる温度以上に
加温した状態が好ましい。 【0016】なお、溶解方法については基本的にいずれ
の方法も採用できるが、マレイミド類にアクリロニトリ
ルを投入してもよいし、アクリロニトリル中にマレイミ
ド類を投入することもできる。マレイミド類のアクリロ
ニトリル溶液の濃度は、溶液を取扱う温度によって決め
られるが、通常マレイミド類の溶液が常温で取扱われる
ことから、50重量%程度の濃度が好んで用いられる。
しかしながら、最終樹脂製品としてマレイミド含有量の
高いものを必要とする場合には該溶液を保温してマレイ
ミド類の高濃度溶液として取扱われる。かかる場合に
は、50〜80重量%のマレイミド類濃度が用いられ
る。 【0017】 【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに詳しく
説明する。 実施例1 攪拌機と冷却管を取付けた500mlのフラスコにアク
リロニトリル100gとp−メトキシフェノール10m
gを入れた。水浴温度を調整し、内温を30℃とした。
次に攪拌しながら純度99.5重量%のN−フェニルマレイ
ミドの結晶を100g加えたところ、N−フェニルマレ
イミドの結晶はすみやかに溶解し、完全に澄明な黄色の
アクリロニトリルがえられた。 【0018】なお、この溶液を−5℃まで冷却してもN
−フェニルマレイミドの析出は見られず、安定した溶液
状態で取扱えるものであった。次に、内温を50℃にし
て30日間保持した。30日後も液の澄明さは変わら
ず、この溶液からアクリロニトリルを蒸発せしめたとこ
ろ、彩やかな黄色の結晶をえた。このもののN−フェニ
ルマレイミド含有量を高速液体クロマトグラフィーで測
定したところ、99.5重量%であり、全く重合は見ら
れなかった。 【0019】実施例2 実施例1において、p−メトキシフェノール10mgの
代わりにp−tert−ブチルカテコール50mgを加
えた以外は実施例1と同じ操作をし、完全に澄明な黄色
のアクリロニトリル溶液をえた。次に内温を50℃にし
て30日間保持した。30日後も液の澄明さは全く変わ
らず、この溶液からアクリロニトリルを蒸発せしめたと
ころ、彩やかな黄色の結晶をえた。このもののN−フェ
ニルマレイミド含有量を高速液体クロマトグラフィーで
測定したところ、99.5重量%であり、全く重合は見
られなかった。 【0020】比較例1 実施例1で用いたと同じフラスコにスチレン100gを
入れ、内温を30℃に調整した。続いて攪拌しながら純
度99.5重量%のN−フェニルマレイミドの結晶15
gと、p−tert−ブチルカテコール50mgを加え
たところ、溶解し完全に澄明な黄色のスチレン溶液がえ
られた。 【0021】次に、このものの内温を40℃にして保持
したところ3日後に溶液は著しく白だくした。この溶液
からスチレンを減圧下で留去したところ粘着性のある黄
白色の物質がえられた。このもののN−フェニルマレイ
ミド含有量を高速液体クロマトグラフィーにて測定した
ところ75.5重量%であり、明らかに重合しているこ
とがわかった。 【0022】比較例2 比較例1において、p−tert−ブチルカテコールの
代わりにp−メトキシフェノールを用い、保持した温度
を20℃にした以外は比較例1と同様の操作をしたとこ
ろ、7日後に溶液は白だくした。この溶液からスチレン
を減圧下で留去したところ粘着性のある黄白色の物質が
えられた。このもののN−フェニルマレイミド含有量を
高速液体クロマトグラフィーにて測定してところ90重
量%であり、明らかに重合していることがわかった。 【0023】実施例3 実施例1において、N−フェニルマレイミドの代わりに
純度99.5重量%のN−(o−メチルフェニル)マレ
イミドを用い、p−メトキシフェノールの代わりに2,
4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール100
mgを用いた以外は同様の操作を行い、澄明な淡黄色の
N−(o−メチルフェニル)マレイミドの50重量%の
アクリロニトリル溶液をえた。 【0024】この溶液の内温を50℃にして30日間保
持した。30日後、アクリロニトリルを蒸発せしめたと
ころ彩やかな淡黄色の結晶をえた。次にこのものの中の
N−(o−メチルフェニル)マレイミドの含有量を高速
液体クロマトグラフィーにて測定したところ99.5重
量%であり全く重合による変化は見られなかった。 【0025】実施例4 実施例1においてN−フェニルマレイミドの代わりに純
度99.0重量%のN−(o−クロルフェニル)マレイ
ミドを用い、p−メトキシフェノールの量を30mgと
した以外は同様の操作を行い澄明な淡黄色のN−(o−
クロルフェニル)マレイミドの50重量%のアクリロニ
トリル溶液をえた。 【0026】この溶液の内温を50℃にして30日間保
持した。30日後アクリロニトリルを蒸発せしめたとこ
ろ彩やかな淡黄色の結晶をえた。次にこのものの中のN
−(o−クロルフェニル)マレイミドの含有量を高速液
体クロマトグラフィーにて測定したところ99.0重量
%であり、全く重合による変化は見られなかった。 【0027】実施例5 攪拌機と冷却管を取付けた500mlのフラスコにアクリ
ロニトリル60gとp−メトキシフェノール0.6mgを
入れた。水浴温度を調整し内温を50℃とした。次に攪
拌しながら純度99.5重量%のN−フェニルマレイミ
ドの結晶を140g加えたところ、N−フェニルマレイ
ミドの結晶はすみやかに溶解し、完全に澄明な黄色のア
クリロニトリル溶液がえられた。 【0028】次にこの溶液の内温を70℃にして30日
間保持した。30日後も液の澄明さは変わらず、この溶
液からアクリロニトリルを蒸発せしめたところ彩やかな
黄色の結晶をえた。このもののN−フェニルマレイミド
の含有量を高速液体クロマトグラフィーで測定したとこ
ろ99.5重量%であり、全く重合は見られなかった。 【0029】参考例1 N−フェニルマレイミドのアクリロニトリルに対する溶
解度を測定した。えられた溶解度曲線を第1図に示し
た。 【0030】 【発明の効果】本発明のマレイミド類の移送用のアクリ
ロニトリル溶液は、マレイミド類が重合禁止剤の存在
下、加温状態のアクリロニトリル中に50重量%以上の
濃度で溶解しているので、移送において微粉末の発生の
心配がなく、配管、タンクのバルブ、ノズル等の閉塞を
起こさず簡単に移送に利用でき、飽和濃度でなくても十
分に高濃度でマレイミド類を含むことができてマレイミ
ド類が析出する心配がなく、煩雑な溶解操作を行わずに
マレイミド含有量の多い最終樹脂製品を作ることがで
き、樹脂原料として有用である。
【図面の簡単な説明】 【図1】第1図は参考例1でえられたN−フェニルマレ
イミドのアクリロニトリルに対する溶解度曲線である。 【符号の説明】 なし
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−135210(JP,A) 特開 昭60−109562(JP,A) 特公 昭51−40078(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 207/00 - 207/50

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.マレイミド類の工業的規模での移送用の溶液であっ
    て、マレイミド類が重合禁止剤の存在下、温度40゜C
    以上のアクリロニトリル中に50重量%以上の濃度で溶
    解してなる、マレイミド類の移送用のアクリロニトリル
    溶液。
JP10257223A 1998-09-10 1998-09-10 マレイミド類の移送用のアクリロニトリル溶液 Expired - Fee Related JP2981214B2 (ja)

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