JPH0772174B2 - マレイミド類の輸送ないし貯蔵方法 - Google Patents

マレイミド類の輸送ないし貯蔵方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はマレイミド類の取り扱い方法に関する。さらに
詳しくは、本発明はマレイミド類を着色及び重合の防止
された溶融状態で輸送ないし貯蔵する等の取り扱い方法
に関する。
〔従来の技術〕
マレイミド類は樹脂、医薬、農薬などの原料として有用
な化合物である。
従来、常温で固体のマレイミド類は粉体、フレーク、タ
ブレットなどの形状で取扱われているのが一般的であ
る。しかしながら、このような形態のマレイミド類中に
はマレイミド類の微粉末が含まれている。とくにこのよ
うな固体状のマレイミド類の輸送中、マレイミド類の粉
化が進み、マレイミド類の微粉末が多量に発生する。
マレイミド類そのものは人体に対して刺激性があり、特
に微粉末を吸入すると鼻腔、咽喉を刺激し、咳、くしゃ
みが出、また皮膚に付着したまま放置すると炎症をおこ
すなど好ましくない性質を有している。それゆえ、この
ような微粉末を含有しているマレイミド類を取扱う場合
には、できるかぎり皮膚への接触をさけるよう厳重な注
意を払う必要がある。
したがって、マレイミド類の移送に際してできるだけ微
粉末を発生しないようにしたり、また輸送後のマレイミ
ド類から微粉末を除去するために多大の労力を要してい
る。
さらに、固体物質の輸送は、多くの場合、紙袋、ドラム
缶、コンテナなどに固体物質を充填し輸送されるが、こ
れらの場合どうしてもマレイミド類と人体との接触がさ
けられず、人体にマレイミド類の微粉末が付着すること
は不可避である。
加えて、全体と接触しないようにするために固体物質の
配管による輸送は基本的にむずかしく配管輸送中に管内
を閉塞したりするために、これら固体物質を安定に輸送
するために、固体の形、大きさ、比重などにきびしい制
約が課せられる。
このように、常温で固体のマレイミド類の輸送または移
送方法には数々の困難な問題があると言わざるをえな
い。同様のことは、その貯蔵方法についてもいえる。
一方、上記問題点を解決する方法として、マレイミド類
を輸送ないし貯蔵するに際して、アクリロニトリル、ス
チレンあるいは(メタ)アクリル酸エステルの溶液とし
て取り扱う方法が特開昭62-126167号、同62-143911号、
同62-145062号および同63-316767号に開示されている。
これらの方法は人体に悪影響を与えるマレイミド類の微
粉末の発生もないことから固体状で取り扱う方法に比較
して優れた方法といえる。しかしながら、該方法におい
てマレイミド類を高濃度に溶解させた溶液で取り扱う場
合には温度を高める必要があるが、用いる溶媒はそれ自
体重合性を有している化合物であるために、長期間マレ
イミド類の溶液を高温に保つことはできない。すなわ
ち、溶媒自体の重合体、マレイミド類と溶媒との共重合
体等の不純物が生成し該溶液を着色させる原因となって
いる。該溶液はそのまま濃度調整されてABS樹脂、AAS樹
脂、AS樹脂、ACS樹脂の耐熱性向上剤としてこれらの樹
脂を構成する単量体と共重合するのに用いられている。
このとき、上記のような着色したマレイミド類溶液を使
用した場合には最終製品を着色させてしまうために商品
価値を著しく低下させている。
すなわち、従来の固体状あるいは溶液でマレイミド類を
取り扱う方法は万全の方法とは言い難い。
〔発明が解決しようとする課題〕
従って、本発明の目的は、マレイミド類の新規な取り扱
い方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、輸送ないし貯蔵時に微粉末の発生
の心配のないマレイミド類の安全かつ簡単な輸送ないし
貯蔵方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、マレイミド類の着色及び重合を防
止し長期間高品質を維持できるマレイミド類の取り扱い
方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、マレイミド類を溶媒に溶解させることな
く、マレイミド類を融点以上に加熱して得た溶融品すな
わち液状品で取り扱う際におけるマレイミド類の着色及
び重合防止等の熱安定性について鋭意検討した結果、マ
レイミド類の着色及び重合は、二種類の異なった安定剤
を組み合せて使用し、かつ、気相中の分子状酸素濃度を
特定濃度以上に保つことにより上記目的が達成できるこ
とを知り、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
すなわち、本発明は安定剤として、アルキル置換ヒドロ
キシベンゼン類から選ばれる少なくとも1種と、亜リン
酸エステル類、リン酸エステル類、及びリン酸アミド類
から選ばれる少なくとも1種のリン化合物を組み合せて
使用し、かつ、気相部の分子状酸素含有量が0.1〜10容
量%の条件下で、マレイミド類を融点以上の温度で輸送
ないし貯蔵することを特徴とするマレイミド類の輸送な
いし貯蔵方法を提供する。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の方法により輸送ないし貯蔵等取り扱いのできる
マレイミド類としては、例えば、N−メチルマレイミ
ド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、
N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド等の
N−アルキルマレイミド;N−ベンジルマレイミド;N−シ
クロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイ
ミド;N−フェニルマレイミド;N−ニトロフェニルマレイ
ミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−メチルフ
ェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミ
ド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−クロルフ
ェニルマレイミド、N−ジメチルフェニルマレイミド、
N−ジクロルフェニルマレイミド、N−ブロムフェニル
マレイミド、N−ジブロムフェニルマレイミド、N−ト
リクロルフェニルマレイミド、N−トリブロムフェニル
マレイミド等のニトロ基、アルコキシル基、アルキル
基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等
が置換してなるN−置換フェニルマレイミドなどが挙げ
られるが、これらに限定されるものではない。
マレイミド類を融点以上の温度で取り扱うに際し用いら
れる安定剤としてのアルキル置換ヒドロキシベンゼン類
としては、例えば2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフ
ェノール、4−tert−ブチルカテコール、2,5−ジ−ter
t−ブチルハイドロキノン、2−tert−ジブチルハイド
ロキノン、4,4′−チオ−ビス(6−tert−ブチル−m
−クレゾール)、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6
−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)
−1,3,5−トリアジン、2,2′−チオビス−(4−メチル
−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコー
ル−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオネイト)、ペンタエリス
リチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネイト)、オクタデシ
ル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネイト、2,2−チオ−ジエチレンビス
(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネイト)、1,6−ヘキサンジオール−ビス
(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネイト)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,
5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N′−ヘキサ
メチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネイト−ジエチルエス
テル等を挙げることができる。なかでも、2,4−ジメチ
ル−6−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルカ
テコール、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2
−tert−ジブチルハイドロキノン、4,4′−チオ−ビス
(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,4−ビス
(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−
ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2′
−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノー
ル)及びトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−
t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プ
ロピオネイト)の使用がマレイミド類の着色防止効果及
び重合防止効果の点において優れているので好適であ
る。
亜リン酸エステル類としては、トリフェニルホスファイ
ト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリエチ
ルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフ
ァイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシ
ル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフ
ェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフ
ェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノトリデ
シルホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイ
ト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニル
ハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレ
ングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ
(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイ
ト、テトラ(トリデシル)−4,4′−イソプロピリデン
ジフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスフ
ァイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホ
スファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリト
ールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトー
ルジホスファイト、トリス(2,4−ジターシャリブチル
フェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールA・ペン
タエリスリトールホスファイトポリマー、水添ビスフェ
ノールA・ホスファイトポリマーなどが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
リン酸エステル類およびリン酸アミド類としては、エチ
ルジエチルホスホノアセテート、エチルアシッドホスフ
ェート、β−クロロエチルアシッドホスフェート、ブチ
ルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、ブ
トキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシ
ルアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホ
スフェート、エチレングリコールアシッドホスフェー
ト、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッド
ホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェー
ト、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、オクチ
ルジクロロプロピルホスフェート、フェニルジクロロプ
ロピルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエ
チルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオク
チルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフ
ェニルホスフェート、ヘキサメチルホスリックトリアミ
ドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。
本発明におけるアルキル置換ヒドロキシベンゼン類から
選ばれる少なくとも1種と、亜リン酸エステル類、リン
酸エステル類及びリン酸アミド類から選ばれる少なくと
も1種のリン化合物の使用量は、マレイミド類に対して
それぞれ0.0001〜1.0重量%、好ましくは、0.001〜0.1
重量%である。安定剤の種類については、製造する重合
体の種類、重合の方法、使用する開始剤などを勘案して
選択される。
本発明者らの知見に依れば、マレイミド類の着色及び重
合が前記のアルキル置換ヒドロキシベンゼン系安定剤
と、前記のリン系安定剤を組み合せて使用することによ
り、一般に使用されているp−メトキシフェノール、ハ
イドロキノンなどと比較して著しく改善されること、さ
らに着色及び重合と気相分子状酸素濃度との間にはっき
りとした関係があり、気相部の分子状酸素濃度が0.1容
量%未満ではマレイミド類が速い速度で重合してしま
う。特に安定剤の非共存下、分子状酸素濃度が0.1%未
満では、この重合は促進されてしまう。また、分子状酸
素濃度が高くなると重合は抑制できるが、着色が進行す
る傾向にあることがわかった。
本発明における気相部の分子状酸素濃度は0.1%以上、
好ましくは0.1%以上10容量%以下に保つことにより良
い結果がえられる。特に、気相部が窒素、二酸化炭素、
アルゴンなどの不活性気体に置換されているほうがさら
に好ましい。
マレイミド類を取り扱う温度は、該マレイミド類の融点
以上であるが、着色を少なくするという観点からする
と、マレイミド類の融点よりも1〜50℃、好ましくは5
〜20℃の高い温度範囲が採用される。
〔発明の効果〕
以上、本発明について説明したが、本発明によって得ら
れる利点は以下のとおりである。
人体に対して強い刺激性を有するマレイミド類を粉
体の形でなく、液体状で取り扱えるようになったため、
マレイミド類の取扱いが安全かつ容易になった。
マレイミド類を液体状で高品質のまま長期間にわた
り、貯蔵できるようになった。
液状に保持されたマレイミド類を用いて重合物を製
造したとき、製品の着色がほとんど見られず高品質の最
終製品を得ることができる。
このように、本発明方法をもってすればマレイミド類を
液状で安全かつ高品質のまま貯蔵、移送等の取り扱いを
行うことが可能となった。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例1〜14及び比較例1〜8 マレイミド類の種類、安定剤の種類、その添加量及び気
相部の分子状酸素濃度などの条件を種々かえて、マレイ
ミド類と安定剤とを密閉可能なステンレス容器に計入
し、所定温度のオイルバスにつけて加熱した。なおこの
時気相部は窒素ガスで置換し、気相部の分子状酸素濃度
を所定濃度に調節した。3ケ月経過後、この容器を取り
出し溶液の外観を目視した。さらに加熱後のマレイミド
類をスチレンと溶液重合させて、生成したポリマーの外
観を目視し第1表に示すような結果を得た。
(参考例) ポリマーの合成 攪拌機と冷却器、窒素ガス導入管及び滴下ロートをそな
えた1の4つ口フラスコに44gのメチルエチルケトン
を仕込み、気相部を充分に窒素置換し80℃に加熱した。
これに別に調整したN−フェニルマレイミド96.55g,ス
チレン58.07gおよびメチルエチルケトン460gの混合溶液
とアゾイソブチロニトリル0.77g,およびメチルエチルケ
トン11gの溶液を内温80℃に保ちならが4時間で滴下し
さらに1時間攪拌をつづけた。次に反応物を冷却し2lの
メタノールに移し、ろ過し乾燥後147.8gのポリマーを得
た。このポリマーは白色粉末状で分子量10万(GPC分析
による)であった。同様の方法で各種マレイミドとスチ
レンのモル比を1、アゾイソブチロニトリルを対モノマ
ー0.5重量%とし対応するポリマーを合成し外観を判定
した。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】安定剤として、アルキル置換ヒドロキシベ
    ンゼン類から選ばれる少なくとも1種と、亜リン酸エス
    テル類、リン酸エステル類、及びリン酸アミド類から選
    ばれる少なくとも1種のリン化合物を組み合わせて使用
    し、かつ、気相部の分子状酸素含有量が0.1〜10容量%
    の条件下で、マレイミド類を融点以上の温度で輸送ない
    し貯蔵することを特徴とするマレイミド類の輸送ないし
    貯蔵方法。
  2. 【請求項2】アルキル置換ヒドロキシベンゼン類が、2,
    4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4−tert
    −ブチルカテコール、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロ
    キノン、2−tert−ブチルハイドロキノン、4,4′−チ
    オビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,4−
    ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,
    5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、
    2,2′−チオビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフ
    ェノール)、及びトリエチレングリコール−ビス−(3
    −(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフ
    ェニル)プロピオネイト)からなる群から選ばれた少な
    くとも1種である請求項(1)記載の方法。
  3. 【請求項3】亜リン酸エステル類及びリン酸エステル類
    がトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリステア
    リルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトール
    ジホスファイト及びトリス(2−クロロエチル)ホスフ
    ェートからなる群から選ばれた少なくとも1種である請
    求項(1)記載の方法。
  4. 【請求項4】該リン化合物及びアルキル置換ヒドロキシ
    ベンゼン類の使用量がマレイミド類に対しそれぞれ0.00
    01〜1重量%の範囲である請求項(1)記載の方法。
  5. 【請求項5】輸送ないし貯蔵温度がマレイミド類の融点
    以上、融点+50℃以下の温度範囲である請求項(1)記
    載の方法。
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