JP2732798B2 - マレイミド類のアクリロニトリル溶液の輸送ならびに貯蔵方法 - Google Patents

マレイミド類のアクリロニトリル溶液の輸送ならびに貯蔵方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマレイミド類をアクリロ
ニトリルの溶液として輸送ないし貯蔵する方法に関する
ものである。
【0002】マレイミド類は樹脂、医薬、農薬などの原
料として有用な化合物であるが、本発明は取扱いが容易
で安全かつ簡単なマレイミド類の輸送ならびに貯蔵方法
を提供するものである。
【0003】
【従来の技術】従来、常温で固体のマレイミド類は粉
体、フレーク、タブレットなどの形状で取扱われている
のが一般的である。しかしながら、このような形態のマ
レイミド類中にはマレイミド類の微粉末が含まれてい
る。
【0004】とくにこのような固体状のマレイミド類の
輸送中、マレイミド類の粉化が進み、マレイミド類の微
粉末が多量に発生する。
【0005】マレイミド類そのものは人体に対して刺激
性があり、特に微粉末を吸入すると鼻腔、咽喉を刺激
し、咳、くしゃみが出、また皮膚に付着したまま放置す
ると炎症をおこすなど好ましくない性質を有している。
それゆえ、このような微粉末を含有しているマレイミド
類を取扱う場合には、できるかぎり皮膚への接触をさけ
るよう厳重な注意を払う必要がある。
【0006】したがって、マレイミド類の移送に際して
できるだけ微粉末を発生しないようにしたり、また移送
後のマレイミド類から微粉末を除去するために多大の労
力を要している。
【0007】さらに、固体物質の移送は、多くの場合、
紙袋、ドラム缶、コンテナなどに固体物質を充填し移送
されるが、これらの場合どうしてもマレイミド類と人体
との接触がさけられず、人体にマレイミド類の微粉末が
付着することは不可避である。
【0008】加えて、人体と接触しないようにするため
に固体物質の配管による移送は基本的にむずかしく配管
移送中に管内を閉塞したりするために、これら固体物質
を安定に移送するために、固体の形、大きさ、比重など
にきびしい制約が課せられる。
【0009】このように、常温で固体のマレイミド類の
移送方法には数々の困難な問題があると言わざるをえな
い。同様のことは、その貯蔵方法についてもいえる。
【0010】一方、マレイミド類をアクリロニトリルの
溶液として輸送あるいは貯蔵する方法が特開昭62−1
26167号公報に開示されている。この方法は、マレ
イミド類を取扱う上で上述のような問題点を解決できる
という点ですぐれた方法といえる。
【0011】通常、マレイミド類のアクリロニトリル溶
液はタンクローリー車、バルクコンテナー、タンク貨
車、あるいはタンカーなどを用いて輸送される。
【0012】しかしながら、マレイミド類をかかるアク
リロニトリル溶液の形態で輸送することはマレイミド類
の輸送効果が悪い、いいかえればマレイミド類単位重量
当りの輸送コストが高くついてしまうために経済的な方
法ではないという欠点があった。
【0013】そこで、輸送コストを出来るだけ安価にす
るために高濃度のアクリロニトリル溶液の形で輸送する
ことも考えられるが、アクリロニトリル溶液中のマレイ
ミド類濃度を上げることによって、マレイミド類はアク
リロニトリル溶液から容易に析出してしまい溶液全体が
スラリー化あるいは固化してしまう、それゆえ輸送ある
いは貯蔵上かえって取扱いが困難になってしまう欠点も
指摘されるのである。
【0014】また、このようなマレイミド類の析出を防
止するためには、アクリロニトリル溶液の輸送あるいは
貯蔵のための槽あるいは輸送配管、バルブなどを高い温
度で保温する必要があり、そのために非常に複雑かつ高
価な保温設備を必要とするという経済的に大きな問題も
ひきおこす。
【0015】かかる問題は特に冬期あるいは寒冷地での
アクリロニトリル溶液での輸送にとって重大かつ致命的
となるのである。そればかりか、アクリロニトリルの沸
点が77.3℃(760mmHg)と低いこと、毒性が
強くきわめて引火性が高いということを考えるとアクリ
ロニトリル溶液を高い温度で保持するということは安全
上問題があるといわざるをえない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来のマ
レイミド類をアクリロニトリルに溶解して輸送ないし貯
蔵する方法は完成された方法とは言えなかった。そこ
で、本発明の目的はマレイミド類をアクリロニトリルか
ら析出させにくくすることにより、高濃度のマレイミド
類溶液を低い温度でも容易に安全かつ安価に輸送あるい
は貯蔵する方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明者等は鋭意検討した結果、マレイミド類の
アクリロニトリル溶液からの析出は、マレイミド類の純
度が高くなればなるほど飽和溶解度付近で容易に析出し
てしまうが、それに対してマレイミド類のアクリロニト
リル溶液中に、下記一般式(1):
【0018】
【化2】
【0019】(式中、R1は、水素、炭素数1〜20の
アルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル
基、ビリジル基、キノリル基およびこれらの基にハロゲ
ン置換、カルボキシ基置換、ニトロ基置換のあるものの
中から選ばれるものである。)で示されるN−置換マレ
アミン酸化合物を共存させることによってマレイミド類
をアクリロニトリル溶液から析出させにくくすることが
でき、低温でも容易に取扱えるような安定な過飽和溶液
を作れるということを見出し、本発明を完成するにいた
ったものである。
【0020】高濃度のマレイミド類のアクリロニトリル
溶液に前記一般式(1)で示されるN−置換マレアミン
酸化合物を加えることにより、マレイミド類の結晶化を
防止させることができ、過飽和溶液として安定かつ安全
に取扱えるということは全く驚くべきことであり、まさ
に当該溶液での取扱い上大きい進歩であると言わざるを
えない。
【0021】すなわち、本発明はマレイミド類を、前記
一般式(1)で示されるN−フェニルマレアミン酸化合
物の共存下アクリロニトリル溶液の形態で取扱うことを
特徴とするマレイミド類の輸送ならびに貯蔵方法であ
る。
【0022】本発明の方法により移送ならびに貯蔵でき
るマレイミド類とは、N−メチルマレイミド、N−エチ
ルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチル
マレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ベンジルマ
レイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニ
ルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−メ
トキシフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイ
ミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ヒドロ
キシフェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミ
ド、N−ジメチルフェニルマレイミド、N−ジクロルフ
ェニルマレイミド、N−ブロムフェニルマレイミド、N
−ジブロムフェニルマレイミド、N−トリクロルフェニ
ルマレイミドおよびN−トリブロムフェニルマレイミド
である。
【0023】アクリロニトリル溶液中に共存させるべき
当該化合物は、前記一般式(1)で示されるN−置換マ
レアミン酸化合物である。
【0024】上記の当該化合物以外に共存してもよい化
合物の具体的な例としては、以下のものがあげられる。
アクリロニトリル、当該マレイミド類、スチレン、メチ
ルスチレン、エチルスチレン、ブタジエン、メタクリル
酸エステル類、アクリル酸エステル類からなる群から選
ばれた少なくとも1種からなるオリゴマーおよび/また
はポリマー。
【0025】下記一般式(2):
【0026】
【化3】
【0027】、下記一般式(3):
【0028】
【化4】
【0029】及び下記一般式(4):
【0030】
【化5】
【0031】(一般式(2)〜(4)中、R1、R2は水
素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ベンジ
ル基、シクロヘキシル基、ビリジル基、キノリル基およ
びこれらの基にハロゲン置換、カルボキシ基置換、ニト
ロ基置換のあるものの中から選ばれるものである。)で
示される化合物などがあげられるが、これらに限定され
るものではない。
【0032】当該化合物の使用量はアクリロニトリル溶
液中のマレイミド類に対して0.01〜20重量%、好
ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜
5重量%である。
【0033】当該化合物の効果としては、その種類およ
び添加量によっても異なるが、大体において当該化合物
1重量%の添加量により約5〜40℃にわたってアクリ
ロニトリル溶液からのマレイミド類の析出温度を低くす
ることができる。
【0034】0.01重量%以下の添加は効果がうす
く、逆に20重量%以上の添加は重合時において重合反
応がすみやかに進行せず、さらに最終の重合体の物性を
損うという問題がある。
【0035】なお、当該化合物の種類および量は当該ア
クリロニトリル溶液を使用してなる最終重合体の種類、
重合の方法、重合条件などを勘案して選択されることも
もちろんである。
【0036】マレイミド類のアクリロニトリルへ溶解さ
せる温度はアクリロニトリルの沸点以下であることが好
ましく、アクリロニトリルが高い蒸気圧を有するところ
から通常40〜60℃で溶解が行なわれ、しかるのち−
10〜50℃の範囲において取扱われる。
【0037】なお、溶解方法については、基本的にいず
れの方法も採用できるが、マレイミド類と当該化合物に
アクリロニトリルを投入してもよいし、アクリロニトリ
ル中に当該化合物およびマレイミド類を溶解させてもよ
い。この時使用するマレイミド類は固体でもよいし、液
体でもよい。
【0038】さらに、好ましい実施形態においては、ア
クリロニトリルのオリゴマーおよび/あるいはポリマー
を含有するアクリロニトリルにマレイミド類を溶解させ
る方法、マレイミド類製造時にマレインアミド酸の分子
間縮合物、アミノスクシンイミド類を生成せしめたのち
あらかじめこれら化合物を含有したマレイミド類をアク
リロニトリルと混合溶解させる方法などが考えられる
が、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0039】マレイミド類のアクリロニトリル溶液中の
濃度は溶液を取扱う温度、当該化合物の添加量等によっ
て決められるが、通常アクリロニトリル溶液中マレイミ
ド類濃度が高いほど輸送コストが安価になることから4
0〜90重量%の濃度が好ましい。
【0040】
【発明の効果】以上、本発明について説明したが、本発
明により得られる利点は以下のとおりである。
【0041】(1)マレイミド類を人体へ直接接触させ
ることなく液体として容易に扱え、輸送、貯蔵が簡単で
安全である。
【0042】(2)高濃度のマレイミド類を低い温度
で、マレイミド類を析出させることなく安定かつ安全に
取扱うことができる。
【0043】(3)高濃度のマレイミド類の輸送および
貯蔵が容易にできるため輸送、貯蔵コストが安価であ
る。
【0044】(4)高濃度のマレイミド類を安定かつ安
全に取扱うことができるため、当該溶液を用いてマレイ
ミド類含有量の高い最終重合物を得ることができる。
【0045】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに詳しく
説明する。
【0046】実施例1 攪拌機と冷却管を取付けた500mlのフラスコ中に、
下記組成をもつN−フェニルマレイミド200g、平均
分子量2500の液状ポリブタジエン0.5重量%を含
有するアクリロニトリル100gを加えた。
【0047】N−フェニルマレイミド組成 N−フェニルマレイミド 99.6 重量% 2−アニリノ−N−フェ 0.3 〃 ニルスクシンイミド (分子量266) N−フェニルマレアミン酸 0.1 〃 (分子量191) 水浴温度を調整し、内温を50℃としたところ、すみや
かに溶解し、完全に澄明な黄色のアクリロニトリル溶液
がえられた。
【0048】この溶液の飽和溶解温度は、45℃である
が、この溶液を25℃にまで冷却してもN−フェニルマ
レイミドの結晶の析出は見られず、また25〜30℃の
温度範囲ではげしく攪拌しても安定であった。
【0049】比較例1 実施例1においてN−フェニルマレイミドを下記の組成
のものとし、またアクリロニトリルに液状ポリブタジエ
ンを加えなかった以外は同様の操作を行なった。
【0050】 N−フェニルマレイミド組成 N−フェニルマレイミド 99.9 重量%以上 他分子量100以上のもの 0.01 重量%以下 この溶液からはN−フェニルマレイミドの結晶が44℃
で析出した。
【0051】実施例2 実施例1で用いたと同じ装置を用いて、アクリロニトリ
ルと純度99.9重量%を有するN−フェニルマレイミ
ド、そしてN−フェニルマレアミン酸を添加してN−フ
ェニルマレイミドの析出温度を測定した。結果を表1に
示す。
【0052】比較例2 実施例1において、N−フェニルマレアミン酸の代わり
に無水マレイン酸を添加した以外は同様にして、N−フ
ェニルマレイミドの析出温度を測定した。結果を表1に
示す。
【0053】
【表1】
【0054】実施例3〜5 下記組成をもつN−フェニルマレイミドをアクリロニト
リルに溶解せしめ各々の濃度における析出温度を測定し
た。結果を表2に示す。
【0055】N−フェニルマレイミド組成 N−フェニルマレイミド 98.5 重量% 2−アニリノ−N−フェ 0.5 〃 ニルスクシンイミド (分子量266) N−フェニルマレアミン酸 0.1 〃 (分子量191) 化合物(A)* 0.9 〃 (分子量364) 化合物(A):
【0056】
【化6】
【0057】
【表2】
【0058】比較例3〜5 実施例3〜5において用いたN−フェニルマレイミドの
代わりに下記組成をもつN−フェニルマレイミドを用い
て測定した。結果を表3に示す。
【0059】N−フェニルマレイミド組成 N−フェニルマレイミド 99.5 重量% 無水マレイン酸 0.5 〃 (分子量98)
【0060】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂本 健太郎 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地 の1 日本触媒化学工業株式会社姫路研 究所内 審査官 冨永 保 (56)参考文献 特開 昭62−126167(JP,A) 特開 昭60−109562(JP,A) 特開 昭53−68770(JP,A) 特開 昭52−62390(JP,A) 特公 昭51−40078(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マレイミド類を40〜90重量%の濃度
    のアクリロニトリル溶液の形態で取り扱うに当り、該マ
    レイミド類に対して0.01〜20重量%の割合で、下
    記一般式(1): 【化1】 (式中、R1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル
    基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、ピリ
    ジル基、キノリル基およびこれらの基にハロゲン置換、
    カルボキシ基置換、ニトロ基置換のあるものの中から選
    ばれるものである。)で示されるN−置換マレアミン酸
    化合物を共存させることを特徴とするマレイミド類の輸
    送ならびに貯蔵方法。
JP6062694A 1987-09-02 1994-03-31 マレイミド類のアクリロニトリル溶液の輸送ならびに貯蔵方法 Expired - Fee Related JP2732798B2 (ja)

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