JP2967888B2 - 近赤外分光分析による温度推定法 - Google Patents

近赤外分光分析による温度推定法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、近赤外分光分析によ
り、穀物のサンプルの温度を推定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、近赤外分光分析計は、例えば穀物
に含まれる蛋白質等の各種の成分量を、近赤外分光分析
法により非破壊的に測定(推定)するものとして知られ
ている。
【0003】また、近赤外分光分析計により、サンプル
の蛋白質の含有量を推定する方法の一例としては、蛋白
質の含有量が既知のサンプルに対して蛋白質を吸収する
領域の所定波長の近赤外線を照射して吸光度を求めた
後、その吸光度を2次微分して2次微分吸光度を算出
し、その2次微分吸光度を説明変数にするとともにサン
プルの蛋白質の含有量を目的変数にして回帰分析を行い
検量線を求め、その検量線により未知のサンプルの蛋白
質の含有量を推定するものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の近赤外
分光分析計では、穀物サンプルの温度が測定精度に影響
を与えることが知られており、成分測定時にあわせてサ
ンプル温度を容易に把握することが望まれていた。
【0005】さらに、従来の近赤外分光分析による蛋白
質含有量の推定法では、外気温度の変化に伴うサンプル
温度の変化により、その推定値の誤差原因になり、その
解決が望まれていた。
【0006】そこで、本発明の目的は、穀物のサンプル
の温度変化に対して近赤外線の吸光度のずれがあること
に着目し、近赤外分光分析によりサンプル温度を推定す
る方法を提供するとともに、温度の推定精度を向上する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記の課題を達成するた
めに、本発明は、穀物のサンプルを所定の異なる各温度
条件にし、その温度が既知の各サンプルに対して、温度
との相関が高い1420nm付近の波長,1900nm
付近の波長,1960nm付近の波長のうち少なくとも
いずれか1つの波長の近赤外線を照射して吸光度を検出
し、前記サンプル温度を目的変数にするとともに前記吸
光度を説明変数にして回帰分析を行い、未知のサンプル
の温度を前記波長の近赤外線の吸光度から推定する。
【0008】
【作用】本発明は、近赤外線の波長として温度との相関
が高い1420nm付近の波長,1900nm付近の波
長,1960nm付近の波長のうち少なくともいずれか
1つの波長の近赤外線を選択した。従って、穀物サンプ
ル中の蛋白質などの成分の含有量により吸光度が変化せ
ず、温度のみにより吸光度が変化するので、温度の推定
精度が格段に向上する。
【0009】
【実施例】この発明は、近赤外分光分析計により近赤外
分光分析の対象となる穀物のサンプルは、その温度変化
により近赤外線の吸光度が変化することに着目し、その
相関を利用して未知のサンプルの温度を推定するもので
あり、以下にその実施例について図1を参照して説明す
る。
【0010】まず、サンプルとして例えば蛋白質の含有
量が6.5%〜10%程度の範囲にある玄米粉サンプル
(玄米を粉砕したもの)を用意する。そして、その玄米
粉サンプルを例えば摂氏6度とし、その温度が既知のサ
ンプルに対して公知の近赤外分光分析計により近赤外線
を照射し、その近赤外線の各波長に対する吸光度を検出
して2次微分し、2次微分吸光度を求める。これらの処
理を、N個のサンプルについて行う(S1)。
【0011】引き続き、玄米粉サンプルの温度を例えば
摂氏20度、摂氏31度にし、その各温度条件にある各
サンプルについて上記と同様な処理を繰り返す(S2、
S3)。
【0012】次に、近赤外線分光分析計に組み込まれて
いるコンピュータにより、サンプルの温度(実測値)を
目的変数にするとともに、上記で算出した2次微分吸光
度の中から波長がたとえば1902nm、および183
8nmにおける2次微分吸光度を説明変数にし、未知の
サンプルの温度を求めるために重回帰分析を行ない、検
量線を得る(S4)。
【0013】以後、このようにして得られた検量線を利
用することにより、未知サンプルの温度推定を行うが、
そのときには、サンプルの吸光度を近赤外分光分析計に
より求め、その所定の波長にかかる吸光度を上記の検量
線に代入し、サンプルの温度を推定する。これらのデー
タ処理は、近赤外分光分析計に組み込まれているコンピ
ュータにより行う。
【0014】ここで、サンプルの温度を摂氏6度、20
度、31度というように既知の温度とし、この温度が既
知のサンプルをこの実施例の温度推定法によりその温度
を推定し、サンプルの既知の温度(実測値)と推定温度
との関係を示すと図2が得られる。この散布図によれ
ば、サンプルの推定温度は、実用に十分な精度で得られ
ることがわかる。
【0015】このように、以上の実施例によれば、近赤
外分光分析計により未知サンプルの蛋白質などの各種の
成分測定時に、あわせてサンプル温度を推定できるの
で、その推定温度により温度に起因する成分測定の誤差
の補正が可能になる上に、サンプル温度を検出するため
の特別な温度検出器が不要となる。
【0016】また、この実施例により得られる推定温度
を表示器に表示して操作者が確認、またはその温度が所
定の温度領域にないときには警告音を発生するようにし
ても良い。このようにすると、近赤外分光分析計で未知
サンプルの蛋白質などの各種の成分測定に際して、測定
の不適当な温度を操作者が把握でき、外気温度が高すぎ
たり低すぎたりする場合や、サンプルを粉砕後に冷却が
不十分のな場合に測定の失敗を未然に防げる。
【0017】そして、近赤外線の波長を選択するに際
し、近赤外線の吸光度と温度との相関が高く、近赤外線
の吸光度と蛋白質との相関が低い波長を選択する(図3
および図4参照)。具体的には、図3で示すように、1
902nm,1424nm,1966nmの各波長が挙
げられる。このように近赤外線の波長を、吸光度がサン
プル中の成分との相関が低い波長を選択すると、サンプ
ル中の蛋白質などの成分含有量により吸光度が変化せ
ず、温度のみによってサンプルの吸光度が変化するの
で、温度の推定精度が格段に向上する。
【0018】次に、上記の実施例から得られるサンプル
の推定温度を活用し、その推定温度の結果に応じてあら
かじめ求めてある複数の温度ごとの検量線の中から1つ
を選択し、その選択した検量線を用いてサンプルの成分
測定を行う方法について、以下に説明する。
【0019】この方法では、事前に、公知の近赤外線分
光分析計を用いて蛋白質の含有量が既知であってその温
度が摂氏6度であるサンプルについて、1224nmの
近赤外線を照射してその吸光度を検出し、その吸光度を
2次微分して2次微分吸光度を求める。これらの処理を
N個の既知サンプルについて行う。次に、蛋白質の含有
量を目的変数にするとともに、上記の2次微分吸光度を
説明変数として重回帰分析を行い、図5の直線Aで示す
ような摂氏6度の検量線を得る。引き続き、上記と同様
の分析により、図5の直線Bで示すような摂氏20度の
検量線、および同図の直線Cで示すような摂氏31度の
検量線を得る。
【0020】そして、このような重回帰分析の結果得ら
れる複数の検量線を使用することにより、以後、以下の
ような処理により未知サンプルの温度推定を行う。すな
わち、未知サンプルの温度を上記のように推定し、その
推定結果が摂氏15度未満のときには検量線Aを、摂氏
15度以上で摂氏25度未満のときには検量線Bを、摂
氏25度以上のときには検量線Cを、使用して未知サン
プルの蛋白質の含有量を推定する。
【0021】このような未知サンプルの成分推定法によ
れば、サンプルの温度変動による測定誤差を減少でき、
またサンプルを粉体で測定するような場合であっても、
粉砕直後に冷却せずに測定しても測定誤差を小さくでき
る。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、近赤外線
の波長として、温度との相関が高い1420nm付近の
波長,1900nm付近の波長,1960nm付近の波
長のうち少なくともいずれか1つの波長の近赤外線を選
択した。従って、サンプル中の蛋白質などの成分の含有
量により吸光度が変化せず、温度のみにより吸光度が変
化するので、温度の推定精度が格段に向上する。
【0023】また、成分の異なる各種サンプルの温度が
推定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の実施例のサンプルの処理例を
示すフローチャートである。
【図2】温度が既知のサンプルを、実施例の推定法によ
り推定し、サンプル温度の実測値とその推定値との関係
を示す散布図である。
【図3】近赤外線の吸光度と温度との相関を波長ごとに
プロットした図である。
【図4】近赤外線の吸光度と蛋白質との相関を波長ごと
にプロットした図である。
【図5】推定温度に応じて蛋白質の含有量を予測する方
法を説明する図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−298030(JP,A) 特開 昭61−53549(JP,A) 特開 昭62−245124(JP,A) 特開 昭63−285428(JP,A) 特開 昭56−55824(JP,A) 特開 平3−15741(JP,A) 特開 平3−175341(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 穀物のサンプルを所定の異なる各温度条
    件にし、その温度が既知の各サンプルに対して、温度と
    の相関が高い1420nm付近の波長,1900nm付
    近の波長,1960nm付近の波長のうち少なくともい
    ずれか1つの波長の近赤外線を照射して吸光度を検出
    し、前記サンプル温度を目的変数にするとともに前記吸
    光度を説明変数にして回帰分析を行い、未知のサンプル
    の温度を前記波長の近赤外線の吸光度から推定してなる
    近赤外分光分析による温度推定法。
JP25041391A 1991-09-03 1991-09-03 近赤外分光分析による温度推定法 Expired - Fee Related JP2967888B2 (ja)

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