JP2947098B2 - 継目無鋼管素材用連続鋳造鋳片の製造方法 - Google Patents

継目無鋼管素材用連続鋳造鋳片の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭素鋼、低合金鋼、高
合金鋼およびステンレス鋼等の継目無鋼管の素材として
好適な角または丸ビレットもしくはブルームなどの鋳片
を得るための連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】継目無鋼管の製造方法の一つとして、丸
または角断面の連続鋳造鋳片から、マンネスマン・マン
ドレルミル方式やマンネスマン・プラグミル方式等の穿
孔機を用いて穿孔圧延する方法が行なわれている。
【0003】これらのマンネスマン方式による継目無鋼
管の製造方法は、加熱炉で所定の圧延温度に加熱した素
材(角または丸ビレット)を穿孔機で穿孔圧延した後、
その中空素管をマンドレルミルやプラグミル等の延伸圧
延機で拡管して肉厚を減じた後、ストレッチレデューサ
やサイザ等の絞り圧延機で外径を絞り、鋼管に仕上げる
ものである。
【0004】継目無鋼管は使用する素材の内質部が管の
内表面となるため、素材の外表面のみならず内質部での
健全性が要求される。
【0005】ところで、連続鋳造された鋳片は、鋳造時
の最終凝固位置に相当する鋳片の横断面(引抜方向に対
して直角方向の断面)中心部に、軸方向に不連続の内部
空隙(センターポロシティ)が存在する。この内部空隙
が穿孔圧延時に十分に圧着されないで管内面に露出して
管内面疵となる場合がある。
【0006】また、内部空隙を圧着させようとして分塊
工程を経たものを丸ビレットとして使用した場合でも、
内部空隙が十分に圧着されないで穿孔圧延時に管内面疵
となることがあり、完全には管内面疵の発生を防止する
ことができない。
【0007】特開平3−124352号公報には、この
内部空隙を排除することができる「内部品質に優れた連
続鋳造鋳片の製造方法」が提案されている。この方法
は、鋳片の厚さの2〜5倍の直径を有するロールを用い
て鋳片内部の未凝固部を圧下することにより、凝固した
鋳片に対する圧下に比べ弱い圧下力で内部空隙を低減さ
せるものである。この方法を用いることで、それなりの
内部空隙低減効果を期待することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平3−124
352号公報に示される連続鋳造鋳片の製造方法では、
鋳片のサイズや温度によっては、圧下力の内部への浸透
が不十分で内部空隙を完全に圧着することができない場
合があり、更に圧下力を増して大きな圧下を施すと凝固
界面に割れが生じ、いわゆる「内部割れ」が問題とな
る。
【0009】また、丸ビレットの場合、圧下により真円
度が損なわれることは避けられず、丸ビレット鋳片とす
ることの本来の狙いであるネアーネット・シェイプ・キ
ャスティングの意義を失うことになる。
【0010】本発明の目的は、上記従来技術に見られる
問題点を解決し、穿孔圧延時に管内面疵が発生しない継
目無鋼管素材用連続鋳造鋳片の製造方法を提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の継
目無鋼管素材用連続鋳造鋳片の製造方法にある。
【0012】継目無鋼管素材用鋳片の連続鋳造におい
て、鋳型直下から鋳片中心部が凝固を開始し出すより以
前までの間の二次冷却を、鋳片周方向に冷却強度を変化
させて施すことにより、鋳片中心に対して非対称の凝固
シェルを生成させた後、さらに凝固末期二次冷却を、末
凝固液芯の中心部が凝固を開始し出した後から液芯の中
心固相率が0.8以上となるまで、継続して施すことを
特徴とする継目無鋼管素材用連続鋳造鋳片の製造方法。
【0013】本発明者らは、種々の実験検討を重ねた結
果、以下の〜の手段により、前記の課題を解決する
ことができることを見い出した。
【0014】鋳型直下から鋳片中心部が凝固を開始し
出すより以前までの間で、鋳片の周方向で冷却強度を変
化させることにより、中心に対して非対称の偏心した凝
固シェルを生成させる。凝固初期に非対称に生成した凝
固シェルは、最終まで周方向に均一にならずに成長し、
円形断面の中心から偏心した最終凝固となる。偏心して
最終凝固することにより、空隙(ポロシティ)は鋳片中
心から外れた位置に生成する。
【0015】さらに、凝固末期において、液芯部が凝
固を開始し出した後から、液芯中心の固相率が0.8以
上となる間までを継続して冷却することにより、偏心し
て生成しつつあるポロシティは低減し、小さくなる。
【0016】鋳片中心から偏心し、かつ小さなポロシ
ティ有する鋳片を穿孔圧延する。
【0017】
【作用】図1および図2に基づいて、本発明方法を実現
するための連続鋳造装置の構成例、および本発明方法と
その作用効果を説明する。
【0018】図1は丸ビレット用湾曲型連続鋳造装置の
例を示す側面方向の縦断面である。
【0019】この装置は、レードルノズル2、浸漬ノズ
ル4をそれぞれ備えたレードル1およびタンディッシュ
3、タンディッシュ3の下流の鋳型5、鋳型5の直下で
鋳片7の凝固初期を冷却するための二次冷却スプレー帯
6、鋳片7の凝固末期を冷却するための凝固末期二次冷
却スプレー帯8およびピンチロール9群を備えている。
【0020】図1において符号10は溶鋼である。
【0021】鋳型5の直下の二次冷却スプレー帯6は、
鋳型5の直下から鋳片7の中心部の凝固開始点より以前
の間にあって、鋳片7の周方向で冷却強度を変化させる
ことにより、鋳片7の中心に対して非対称の凝固シェル
11を生成させるための冷却装置である。以下、これを偏
心冷却スプレー帯6と称する。
【0022】図2は、偏心冷却スプレー帯6の構造例を
示す外観図である。この偏心冷却スプレー帯6は、多段
階に設けた複数のリングスプレー12から構成され、リン
グスプレー12は、鋳片(丸ビレット)7を取り囲み、リ
ングスプレー12の中心と鋳片7の中心とが一致するよう
に配置される。
【0023】偏心冷却スプレー帯6では、次のような偏
心凝固冷却を施す。すなわち、鋳型5の直下から1〜
1.5m の範囲までは、バルジング防止を目的として一
律の水量密度で鋳片7の全周の冷却強度を均一とする。
この範囲では鋳片7の凝固シェル11が薄く、ここで周方
向に不均一に冷却すれば、熱応力により凝固シェル11が
破断する可能性があるためである。偏心冷却スプレー帯
6の平均冷却水量密度の望ましい下限は30リットル/
(min・m2) である。一方、この水量密度は高くてもよい
ので上限は定めないが、鋳片の曲り抑制を考慮したとき
の望ましい上限は800リットル/(min・m2) である。
【0024】鋳型5の直下の1〜1.5m から6 mまで
の間では、平均冷却水量密度を減少させるとともに、鋳
片7の全周のうち、鋳片7の内アール半周の平均冷却水
量密度を全体の100〜60%程度、内アールと反対側
半周の平均冷却水量密度を全体の0〜40%程度に分割
して、鋳片7の周方向で不均等にスプレーする。これに
より、鋳片の最終凝固位置を偏心させることが可能とな
る。凝固シェルの望ましい偏心量の範囲は鋳片径の1%
以上である。
【0025】偏心冷却スプレー帯6の長さおよび上記の
全周の冷却強度を均一とする長さ、ならびに各平均冷却
水量密度は、鋳片径によって変わる。したがって、リン
グスプレー12の数は最大偏心冷却効果を考慮して決定す
ればよい。しかし、鋳片引き抜き方向にはできるだけ均
一なスプレー密度とすべきであり、そのためリングスプ
レー12の望ましい間隔の範囲は50〜800mm程度であ
る。
【0026】偏心冷却スプレー帯6による二次冷却の停
止は、鋳片液芯の中心部が凝固を開始し出す以前、具体
的には中心固相率が0.2となるより前に行う。しか
し、スプレー停止位置は、その停止後復熱により鋳片表
面温度が最大となる時点の中心固相率が、0.2となる
時点より以前とすることが望ましい。これは、鋳片液芯
の中心固相率が0.2となる時点からポロシティが生成
し出し、この間で表面温度が復熱で上昇している状態に
あると、鋳片内部に引張応力が働き、ポロシティの拡大
を招くおそれがあるからである。
【0027】さらに、偏心冷却スプレー帯6から、上記
のとおりの一定以上の間隔を空けて、鋳片7の凝固末期
に相当する位置に凝固末期二次冷却スプレー帯(以下、
凝固末期冷却スプレー帯という)8が設けられる。この
冷却装置は、特に限定されないが、図2に示す偏心冷却
スプレー帯6と同じ構造のものとしてもよい。この冷却
は、鋳片7の外面から冷却による熱収縮を与え、鋳片内
部に凝固収縮で生成しようとするポロシティを抑制する
ために施すものである。
【0028】凝固末期スプレーの開始位置は、鋳片7の
中心固相率が0.2〜0.3の範囲となる時点が最も効
果的である。この理由は、この時点から溶鋼の流動性が
悪くなり、凝固収縮による負圧が発生しても溶鋼流動が
充分に起こらず、収縮孔を充填しにくくなることにより
ポロシティが生成するので、ここで鋳片に熱収縮を与
え、内部の凝固収縮を補うためである。
【0029】さらに、未凝固液芯の中心部が凝固を開始
し出した時点(最終凝固段階)から鋳片の熱収縮により
ポロシティの生成を抑制し、ポロシティの拡がりを小さ
くするために、この凝固末期冷却においては、液芯中心
部が少なくとも固相率0.8となるまで継続して冷却し
なければならない。固相率が0.8以下の部分は、鋳片
に強度がなく脆弱であり、これより以下の固相率での冷
却停止による復熱で中心部に引張応力が生じると容易に
破断し、ポロシティがかえって拡大することになる。
【0030】凝固末期冷却スプレー帯8の平均冷却水量
密度の範囲は25〜100リットル/(min・m2) とする
のが望ましい。100リットル/(min・m2) を超える
と、鋳片表面の冷却が急速に進んで低温状態となり、冷
却速度がかえって低下して鋳片内部に引張り応力が生
じ、ポロシティの拡大を招く。一方、25リットル/(m
in・m2) 未満では、鋳片表面の収縮効果が少なく、充分
にポロシティの生成を抑制することができなくなる。
【0031】冷却媒体は、いずれの冷却スプレーとも
に、通常の水またはそれに代わる冷却媒体、エアーミス
トスプレーなどを用いることができる。
【0032】上記の方法により、下記 (1)〜(4) の効果
を得ることができる。
【0033】(1)鋳型直下から鋳片中心部が凝固を開始
し出すより以前での間、鋳片の周方向で冷却強度を変化
させることにより、中心に対して非対称な凝固シェルを
生成させ、さらにこの凝固シェルが鋳片中心から偏心し
たままで最終的に凝固させることにより、ポロシティが
鋳片の中心からずれて生成する (2)ポロシティが小さい場合、これをそのまま、または
所定の大きさのビレットに加工した後に穿孔圧延で製管
すれば、ポロシティは管内面に出てこずに管の肉厚中と
なり、加工中に完全に圧着され、管の内面疵とはならな
い。
【0034】(3)一般的にポロシティは鋳片の径方向に
拡がりを持っている。この拡がりが大きい場合、製管中
に管内面に暴露、酸化されてスケールを発生し、これが
加工中に巻き込まれて内面疵となる。
【0035】しかし、最終凝固段階(液芯中心部が凝固
を開始し出した時点)から新たに鋳片表面を冷却するこ
とにより、鋳片の熱収縮によりポロシティの生成を抑制
し、ポロシティの拡がりを小さくすることが可能とな
る。
【0036】(4)ポロシティを小さく抑制すること、お
よび上記(2) の理由により、管内面疵を低減することが
できる。
【0037】
【実施例】図1および図2に示すビレット用湾曲型連続
鋳造装置を用い、本発明例では下記条件で鋳片を製造し
た。
【0038】鋼種:13%Cr鋼 鋳片径:190mm 定常の鋳造速度:2.5 m/min 偏心冷却スプレー帯 長さ:6m リングスプレー数:鋳型直下から1m までは10個 1〜6m までは50個 リング間隔:500mm 冷却媒体:水 水量密度:鋳型直下から1m までは300リットル/(m
in・m2) で均一冷却 1〜6m までは、 鋳片の内アール半周は120リットル/(min・m2) 内アールと反対側半周は20リットル/(min・m2) 凝固末期冷却スプレー帯(リングスプレー) 位置:鋳型内溶湯メニスカスから20〜25m 冷却開始は中心固相率が0.2の時点 リングスプレー数:51個 リング間隔:100mm 冷却媒体:水 水量密度:50リットル/(min・m2) 比較例1として、鋳型直下から1m の範囲のみで鋳片周
方向に均等に二次冷却したもの(これは、従来の通常の
鋳造方法に相当する)、比較例2として、鋳型直下1m
までの均一冷却と偏心冷却スプレーのみを使用したも
の、比較例3として、鋳型直下1m までの均一冷却と凝
固末期冷却スプレーのみを使用したものとし、上記条件
以外は本発明例と同じとした。
【0039】以上のようにして得られた鋳片を加熱炉で
1200℃に加熱した後、穿孔機により穿孔圧延し、外
径63mm、肉厚5mmの中空素管を製造した。
【0040】図3は、丸鋳片中に存在するポロシティと
穿孔圧延加工の状況を説明する側面方向の縦断面図であ
る。13はプラグ、14は丸鋳片、15はポロシティ、16は中
空素管、17は鼓型ロールである。図4は、図3の線a−
a′における丸鋳片の横断面と凝固シェルの偏心量、ポ
ロシティ存在径を説明する図である。
【0041】得られた鋳片と素管の一部からサンプルを
切り出し、凝固シェルの偏心量、ポロシティ存在径およ
び製管後の内面疵の発生個数を調査した。その結果を表
1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】表1に示すように、本発明例では偏心量が
10mm(鋳片径の約5.3%)あり、ポロシティ存在径
が15mmと小さくなった。図3に示すように、穿孔圧延
時にプラグ13の先端を丸鋳片14の中心に置いているた
め、プラグ13にポロシティ15の存在部分はかからず、圧
延によってポロシティ15は中空素管16の肉厚中で圧着さ
れる。その結果、製管後の管内面疵は発生しなかった。
【0044】一方、比較例の場合は、いずれもプラグに
ポロシティの存在部分がかかることになり、管内面疵が
発生した。
【0045】
【発明の効果】本発明方法によれば、連続鋳造鋳片の最
終凝固位置に発生するポロシティを鋳片横断面の中心部
から表面側外方へずらし、かつその存在径を小さくする
ことにより、穿孔圧延時に管内面疵が発生しない継目無
鋼管素材用の連続鋳造鋳片を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実現するための丸ビレット用湾曲
型連続鋳造装置の例を示す側面方向の縦断面図である。
【図2】偏心冷却スプレー帯の構造例を示す外観図であ
る。
【図3】丸鋳片中に存在するポロシティと穿孔圧延加工
の状況を説明する側面方向の縦断面図である。
【図4】図3の線a−a′における丸鋳片の横断面と凝
固シェルの偏心量、ポロシティ存在径を説明する図であ
る。
【符号の説明】
1:レードル、2:レードルノズル、3:タンディッシ
ュ、4:浸漬ノズル、5:鋳型、 6:二次冷却スプ
レー帯(偏心冷却スプレー帯)、7:鋳片、8:凝固末
期二次冷却スプレー帯、 9:ピンチロール、10:溶
鋼、11:凝固シェル、12:リングスプレー、13:プラ
グ、 14:丸鋳片、15:ポロシティ、16:中空素
管、 17:鼓型ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/124 B22D 11/00 B22D 11/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】継目無鋼管素材用鋳片の連続鋳造におい
    て、鋳型直下から鋳片中心部が凝固を開始し出すより以
    前までの間の二次冷却を、鋳片周方向に冷却強度を変化
    させて施すことにより、鋳片中心に対して非対称の凝固
    シェルを生成させた後、さらに凝固末期二次冷却を、末
    凝固液芯の中心部が凝固を開始し出した後から液芯の中
    心固相率が0.8以上となるまで、継続して施すことを
    特徴とする継目無鋼管素材用連続鋳造鋳片の製造方法。
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