JP2946986B2 - 耐摩耗鋼管の製造方法 - Google Patents

耐摩耗鋼管の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、優れた加工性及び溶
接性を有し、ごみ輸送などの空気輸送システムや鉱石質
スラリー石灰質スラリーのようなスラリー状物質や磨耗
性の高い硬質物質の輸送などに用いられる耐摩耗鋼管の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、鋼板の耐摩耗性は、その表面硬
度を上昇させることにより向上する。このため、従来の
耐摩耗性鋼板はCをはじめ多量の合金元素を含む鋼を焼
入れ処理して製造する場合が多い。しかし、このような
耐摩耗鋼では、その高硬度のため加工性に劣ること、ま
た、炭素等量が必然的に高くなり溶接性が劣ることなど
の欠点を有している。
【0003】これらの問題を解決するため、比較的低い
炭素等量の鋼を用いて圧延焼入れ処理により耐摩耗鋼を
製造する方法が提案されている(特公昭56−1412
7号公報、特開昭57−89426号公報、特開昭61
−76615号公報など)。
【0004】また、複合鋼板を用いて表面硬度のみを上
昇させて、鋼の加工性および溶接性は柔らかい内部で確
保し、表層の硬化部で耐摩耗性を確保する鋼板も開発さ
れている(特開平3−227223号公報)。
【0005】鋼管に関しては、鋼管の内面のみを硬化さ
せ、対磨耗性能を改善した鋼管も開発されている(特開
昭57−194213、特開平1−15323)。さら
に、溶接性や加工性に優れたオーステナイト乃至二相系
ステンレスを用いた耐摩耗鋼管を製造する方法(特開昭
51−13361号公報)や耐摩耗クラッド鋼管の製造
方法(特開昭63−290616号公報)も提案されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、焼入処
理により製造された鋼では、加工性が未だ十分とはいえ
ず、また複合鋼板や内面焼入処理により製造された鋼は
硬化層が薄く、硬化層が磨耗により減少するような環境
では長期間使用することができないなどの問題点があ
る。また、ステンレス鋼管やクラッド鋼管は高価である
という欠点を有している。
【0007】この発明はかかる事情に鑑みてなされたも
のであって、高加工性と優れた溶接性とを兼備し、かつ
耐摩耗性に優れた鋼管の製造方法を提供することを目的
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】この発明は、第
1に、重量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.
5〜2.0%、Mn:0.5〜2.5%を含み、残部が
Fe及び不可避不純物からなる鋼を熱間で圧延し、鋼管
に成形した後、フェライト及びオーステナイトの2相域
の温度に加熱し、5℃/秒以上の冷却速度で300℃以
下まで冷却することを特徴とする耐摩耗鋼管の製造方法
を提供する。
【0009】第2に、重量%で、C:0.05〜0.2
%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜2.5%
を含み、かつCu:0.05〜1.0%,Ni:0.0
5〜2.0%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.
05〜0.5%、Nb:0.005〜0.1%、V:
0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%、
B:0.0003〜0.002%のうち1種以上を含
み、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を熱間で圧
延し、鋼管に成形した後、フェライト及びオーステナイ
トの2相域の温度に加熱し、5℃/秒以上の冷却速度で
300℃以下まで冷却することを特徴とする耐摩耗鋼管
の製造方法を提供する。
【0010】本願発明者らは、高加工性と優れた溶接性
とを兼備し、すなわち比較的低い硬さと低い炭素当量と
を兼備し、かつ耐摩耗性に優れたベンド鋼管を製造すべ
く種々検討を重ねた結果、フェライトやベイナイトなど
の地組織中にマルテンサイトを分散させた鋼が、比較的
低い硬さを有しているため加工性に優れ、溶接性も良好
で、かつ優れた耐摩耗性を有することを見出した。ま
た、このような組織を得るためには従来鋼のように多量
の合金元素を添加する必要がなく、特定組成の低合金鋼
に特定の熱処理を施せば良いことを見出した。
【0011】すなわち、特定組成の低炭素鋼管を2相域
の温度に加熱して、フェライトとオーステナイトの2相
組織とすることにより、オーステナイト中に炭素やその
他の元素が拡散により濃縮され、その後の急令処理によ
りオーステナイトがマルテンサイトに変態するため、加
工性の良いフェライトと耐摩耗性の良いマルテンサイト
の2相組織が得られるのである。組織全体をマルテンサ
イト化するためには、溶接性を劣化させる炭素やその他
の合金元素などを多量に添加する必要があるが、組織の
一部をマルテンサイトにするためにはこれらの元素の添
加量は少量ですみ、溶接性の劣化も少ない。上記構成を
有する本発明は本願発明者らのこのような知見に基づい
てなされたものである。以下、本発明について詳細に説
明する。本発明は、鋼の成分組成と鋼管の熱処理条件と
からなるものである。先ず、鋼の成分組成の限定理由に
ついて説明する。 C :0.05〜0.2重量%
【0012】十分なマルテンサイトの面積率を確保する
ために、Cは重要な元素であるが、その添加量が0.0
5重量%未満ではその効果が小さく、逆に0.2重量%
を超えると溶接性の劣化を招く、従って、C量を0.0
5〜0.2重量%の範囲に規定する。 Si:0.50〜2.0重量%
【0013】Si量を低下させるとパーライト組織が生
成しやすくなりマルテンサイト量が低下し、良好な耐摩
耗性能が得られない。また、過剰に添加すると鋼板の熱
間延性の低下や溶接性の劣化を招く。これらの観点から
Si量を0.50〜2.0重量%の範囲、好ましくは0.
88〜2.0重量%に規定する。
【0014】Mnはマルテンサイト量を上昇させるため
に有効な元素であるが、0.5重量%未満ではその効果
が小さく、2.5重量%を超えて添加すると溶接性の劣
化を招く。従って、Mn量を0.5〜2.5重量%に規
定する。
【0015】以上は本発明の必須成分であるが、特性を
向上させるために上記必須成分の他に選択成分としてC
u,Ni,Cr,Mo,Nb,V,Ti及びBのうち1
種以上を含有させてもよい。
【0016】これらのうちNi,Cr,Mo,Nbはマ
ルテンサイト量の上昇、及び地組織の耐磨耗性能の向上
を図るためのものであり、これらを添加する場合には夫
々以下の範囲に規定される。 Cu:0.05〜1.0重量% Ni:0.05〜2.0重量% Cr:0.05〜0.5重量% Mo:0.05〜0.5重量% Nb:0.005〜0.1重量% いずれの元素もその下限はこれらの効果を得るために最
低必要な量であり、その上限は溶接性を劣化させずにそ
の効果が得られる上限値である。
【0017】また、V,Ti,Bは、地組織部分の硬さ
を上昇させて、より優れた耐摩耗性能を得るためのもの
であり、これらを添加する場合には夫々以下の範囲に規
定される。 V :0.005〜0.1重量% Ti:0.005〜0.1重量% B:0.0003〜0.002重量% これらの下限は硬さの上昇に効果がある最低量であり、
上限は溶接性や加工性を劣化させずに上記効果が得られ
る上限値である。
【0018】また、炭素当量(Ceq.)は0.45以下とし
て、溶接性を一般に構造用鋼として用いられているもの
と同等の値とするのがよい。以上のような組成を有する
鋼を熱間で圧延する。この際の熱間圧延は特殊な方法を
採用する必要はなく、通常この種の熱間圧延で採用され
ている条件で構わない。
【0019】本発明において鋼管に成形する方法は特に
限定されるものではない。例えば、シームレス鋼管、電
縫鋼管、UO鋼管、スパイラル鋼管などいずれも許容さ
れる。また、鋼管の製造に用いられる鋼板の製造方法も
特別な方法に限定されるものではない。
【0020】鋼管の加熱処理は、適性な量のフェライト
とオーステナイトの2相組織を得るために、オーステナ
イト及びフェライトの2相域の温度で行われる。具体的
にはAc1 からAc3 の範囲で行われ、この範囲の温度
範囲から急冷することにより適正な量のフェライトとマ
ルテンサイトの2相組織が得られる。この加熱温度がA
1 未満では、フェライトからオーステナイトへの変態
は生じず、加熱時にフェライトとオーステナイトの2相
組織が得られない。一方、Ac3 を超えると、加熱時に
オーステナイトのみとなり、炭素などの濃度の上昇が少
なくなり急冷処理を行っても好ましいフェライトとマル
テンサイトの2相組織が得難い。
【0021】加熱処理後の冷却速度は5℃/秒以上に規
定される。これは、加熱時のオーステナイトがこれ以上
の速度で冷却することによりマルテンサイトに変態する
ためであり、これ未満の冷却速度では安定してフェライ
トとマルテンサイトの2相組織が得られない。なお、冷
却速度の上限は特に限定されない。
【0022】この際の冷却停止温度は300℃以下に規
定される。これ以上の温度で冷却を停止すると、マルテ
ンサイト変態が充分に進行せず適正な2相組織が得られ
ない。上記加熱及び冷却の工程は、上記条件を満たす限
り、他の条件は特に限定されるものではない。
【0023】
【実施例】以下、この発明の実施例について説明する。
【0024】表1にこの実施例に用いた供試鋼管の鋼組
成及び炭素当量Ceqを示す。これら鋼のCeq値はいずれ
も0.45程度以下であり、その溶接性は一般に構造用
鋼として用いられているものと同等の値となっている。
なお、表1中鋼A〜Rまでは組成が本発明の範囲内に含
まれるもの、S〜Vはその範囲から外れるものである。
また、表1には各組成のAc1 及びAc3 の値も併記し
た。
【0025】
【表1】 表1に示した組成の鋼を用いて鋼管を製造した。その際
の鋼管の成形方法及び熱処理条件を表2に示す。
【0026】これらの鋼管について摩耗試験を行った。
摩耗試験は図1に示すような水と珪砂とを混合した環境
での試験片回転型の摩耗試験装置により行った。図1の
(a)は試験装置を示し、(b)はこの装置に用いる試
験片を拡大して示すものである。摩耗試験は、容器1に
珪砂と水とを装入し、円盤2を水平状態でこれらに埋設
し、この円盤2の外周近傍に(b)で示す形状を有する
試験片3を取り付け、回転軸4を軸に円盤2を回転させ
ることによって行われる。摩耗特性は、供試験材の試験
片とSS400試験片とを同時に試験してこれらの摩耗
減量を測定し、SS400試験片の摩耗減量を供試材の
試験片の摩耗減量で除した値で評価した。その値が大き
い程、耐摩耗特性が良好であることを意味する。このよ
うにして求めた摩耗特性も表2に併記する。
【0027】
【表2】 これらの表から明らかなように、本発明の範囲内の条件
で製造された実施例の鋼管はいずれも1.5以上の耐磨
耗性能が得られた。
【0028】しかし、鋼組成が本発明の範囲内であって
も、熱処理を施さないC−4、並びに熱処理条件が適当
でないC−2及びC−3は耐摩耗性能が低く目標とする
1.5以上の耐摩耗性能が得られなかった。また、S−
1,T−1,V−1のように、組成が本発明の範囲から
外れるものは熱処理条件が本発明の範囲内であっても良
好な耐磨耗性能を得ることができなかった。なお、組成
も熱処理条件もいずれも本発明から外れるU−1、U−
2はいうまでもなく耐磨耗性能が劣っていた。この結果
から、本発明の条件を満たす場合に耐摩耗性が良好な鋼
管が得られることが確認された。なお、本発明の方法で
得られた鋼管はいずれも加工性が良好であり、溶接性に
優れていた。
【0029】
【発明の効果】この発明によれば、特定組成の低合金鋼
に特定条件の熱処理を施すことにより、フェライトとマ
ルテンサイトの2相組織を形成するので、高加工性と優
れた溶接性とを兼備し、かつ耐摩耗性に優れた鋼管を製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩耗試験を説明するための図。
【符号の説明】
1;容器、2;円盤、3;試験片、4;回転軸。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 卯目 和巧 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−234520(JP,A) 特開 昭57−89426(JP,A) 特許2699785(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/10 C21D 9/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05〜0.2%,S
    i:0.5〜2.0%,Mn:0.5〜2.5%を含
    み、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を熱間で圧
    延し、鋼管に成形した後、フェライト及びオーステナイ
    トの2相域の温度に加熱し、5℃/秒以上の冷却速度で
    300℃以下まで冷却することを特徴とする耐摩耗鋼管
    の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.05〜0.2%,S
    i:0.5〜2.0%,Mn:0.5〜2.5%を含
    み、かつCu:0.05〜1.0%,Ni:0.05〜
    2.0%,Cr:0.05〜0.5%,Mo:0.05
    〜0.5%,Nb:0.005〜0.1%,V:0.0
    05〜0.1%,Ti:0.005〜0.1%,B:
    0.0003〜0.002%のうちの1種以上を含み、
    残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を熱間で圧延
    し、鋼管に成形した後、フェライト及びオーステナイト
    の2相域の温度に加熱し、5℃/秒以上の冷却速度で3
    00℃以下まで冷却することを特徴とする耐摩耗鋼管の
    製造方法。
  3. 【請求項3】重量%で、Si:0.88〜2.0%であ
    る請求項1又は2に記載の耐摩耗鋼管の製造方法。
  4. 【請求項4】Ceq.≦0.45である請求項1〜3のい
    ずれかに記載の耐摩耗鋼管の製造方法。
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