JP3432944B2 - 捩り疲労強度の優れた高周波焼入れ軸部品用鋼材 - Google Patents
捩り疲労強度の優れた高周波焼入れ軸部品用鋼材Info
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材に係り、さらに詳しくは、図1の(a)〜(c)に示
したスプライン部を有するシャフト、フランジ付シャフ
ト、外筒付シャフト等の自動車の動力伝達系を構成する
軸部品用として好適な、優れた捩り疲労強度を有する鋼
材に関するものである。
は、通常中炭素鋼を所定の部品に成形加工し、高周波焼
入れ−焼戻しを施して製造されているが、近年の自動車
エンジンの高出力化および環境規制対応に伴い高捩り強
度化の指向が強い。これに対して、特開平5−1794
00号公報にはC:0.38〜0.45%、Si:0.
35%以下、Mn:1.0超〜1.5%、B:0.00
05〜0.035%、Ti:0.01〜0.05%、A
l:0.01〜0.06%、N:0.010%以下でフ
ェライト結晶粒度番号6以上の細粒組織を有する直接切
削−高周波焼入れ用鋼材が示されている。該発明材では
静的捩り強度については言及されているものの、捩り疲
労強度については全く配慮されていない。
ロセス」第7巻第3号第771頁、第1図には、S53
C鋼(代表的な成分系0.53C−0.25Si−0.
8Mn)をベースに捩り疲労強度に及ぼす合金元素の影
響を検討し、B、Si、Moが有効であることが示され
ている。しかしながら、高周波焼入れ用軸部品用鋼とし
ていかなる鋼材が適しているかについては全く開示され
ていない。
疲労強度の優れた高周波焼入れ軸部品用鋼材を提供しよ
うとするものである。
入れにより優れた捩り疲労強度を有する軸部品を実現す
るために、鋭意検討を行い次の知見を得た。 (1)高周波焼入れ材の捩り疲労破壊は、次の過程で起
きる。 A)表面または硬化層と芯部の境界で亀裂が発生する。 B)軸方向に平行な面または垂直な面で亀裂が初期伝播
する。 C)軸方向に45度の面で粒界割れを伴って脆性破壊を
起こし、最終破壊を起こす。 (2)表面硬化層で硬さのムラがあれば、早期に疲労亀
裂が発生する。高周波焼入れ前の組織のフェライト分率
が35%を超え、フェライト結晶粒径が20μmを超え
ると硬化層で顕著な硬さのムラを生じ、早期に疲労亀裂
が発生しやすい。
劣化を起こす。つまり、捩り疲労過程では、表面圧縮残
留応力の減衰、硬さの低下が起きる。疲労過程でこのよ
うな材質劣化を起こしやすい材料ほど疲労亀裂の発生が
早期に起きる。捩り疲労過程でのこうした材質劣化を抑
制するには、下記の方法が有効である。 高Mnにより焼入れ性を確保する。Crを多量添加
しない。 Moを添加する。 Siを増量する。 (4)上記捩り疲労破壊過程はC)の欄で述べた、軸方
向に45度の面で粒界割れを伴う脆性破壊を抑制するた
めには、次の方法による粒界強化が有効である。 Ti−B添加。 P,Cu,O量の低減。 (5)捩り疲労は破壊の亀裂が表面で発生する場合に比
べて、硬化層と芯部の境界で発生する場合には、捩り疲
労強度は低下する。これを抑制するためには、Nb,V
添加により析出強化を図ることが有効である。
されたものであり、本発明の要旨は以下の通りである。
重量比として、C:0.35〜0.65%、Si:0.
35〜2.5%、Mn:1.0〜1.8%、Mo:0.
05〜0.8%、S:0.01〜0.15%、Al:
0.015〜0.05%、Ti:0.005〜0.05
%、B:0.0005〜0.005%、N:0.002
〜0.01%、を含有し、P:0.020%以下、C
u:0.05%以下、O:0.0020%以下に制限
し、またはさらに、Nb:0.01〜0.25%、V:
0.03〜0.5%の1種または2種を含有し、または
さらに、Cr:0.05〜0.5%、Ni:0.1〜
3.5%の1種または2種を含有し、残部が鉄および不
可避的不純物からなり、かつフェライトの組織分率が3
5%以下で、フェライト結晶粒径が20μm以下である
ことを特徴とする捩り疲労強度の優れた高周波焼入れ軸
部品用鋼材である。
分含有範囲を上記の如く限定した理由について説明す
る。まず、Cは高周波焼入れ硬化層の硬さを増加させる
のに有効な元素であるが、0.35%未満では硬さが不
十分であり、また0.65%を超えるとオーステナイト
粒界への炭化物析出が顕著になって粒界強度を劣化さ
せ、脆性破壊強度の低下を招くとともに、焼き割れが発
生しやすくなるため、含有量を0.35〜0.65%に
定めた。次に、Siは捩り疲労過程での材質劣化の抑
制、オーステナイト粒界への炭化物析出抑制による粒
界強化を目的とし、および脱酸元素として添加する。
しかしながら、0.35%未満ではその効果は不十分で
あり、一方、2.5%を超える過剰添加は、むしろ粒界
脆性を招くので、その含有量を0.35〜2.5%とし
た。
制、焼入れ性の向上、および鋼中でMnSを形成する
ことによる高周波焼入れ加熱時のオーステナイト粒の
微細化と被削性の向上を目的として添加する。しかし
ながら、1.0%未満ではこの効果は不十分である。一
方、Mnはオーステナイト粒界に粒界偏析を起こし、粒
界強度を低下させて捩り応力下での脆性破壊を起こし易
くし、そのため強度を低下させる。特にこの傾向は1.
8%を超えると顕著になる。以上の理由から、Mnの含
有量を1.0〜1.8%とした。Moは捩り疲労過程
での材質劣化の抑制、オーステナイト粒界に粒界偏析
を起こすことによる粒界強度増加、および焼入れ性の
向上を狙いとして添加する。しかしながら、0.05%
未満ではこの効果は不十分であり、一方、0.8%を超
える過剰添加は、効果が飽和し経済性の観点から望まし
くないので、その含有量を0.05〜0.8%とした。
る高周波焼入れ加熱時のオーステナイト粒の微細化およ
び被削性の向上を目的として添加するが、0.01%未
満ではその効果は不十分である。一方、0.15%を超
えるとその効果は飽和し、むしろ粒界偏析を起こし粒界
脆化を招く。以上の理由から、Sの含有量を0.01〜
0.15%とした。Alは、Nと結合してAlNを形
成することによる高周波焼入れ加熱時のオーテスナイト
粒の微細化を目的とし、および脱酸元素として添加す
るが、0.15%未満ではその効果は不十分であり、一
方、0.05%を超えるとその効果は飽和し、むしろ靱
性を劣化させるので、その含有量を0.015〜0.0
5%とした。
なるが、これによる高周波焼入れ加熱時のオーステナ
イト粒の微細化、および固溶Nの完全固定によるBN
析出防止、つまり固溶Bの確保を目的として添加する。
しかしながら、、0.005%未満ではその効果は不十
分であり、一方、0.05%を超えるとその効果は飽和
し、むしろ靱性を劣化させるので、その含有量を0.0
05〜0.05%とした。Bは固溶状態でオーステナイ
ト粒界に粒界偏析し、P,Cu等の粒界不純物を粒界か
ら追い出すことにより粒界強度を増加させることを狙い
として添加する。しかしながら、、0.0005%未満
ではその効果は不十分であり、一方0.005%を超え
る過剰添加は、むしろ粒界脆化を招くので、その含有量
を0.0005〜0.005%とした。
る高周波加熱時のオーステナイト粒の微細化を目的とし
て添加するが、0.002%未満ではその効果は不十分
であり、一方0.01%超では、その効果は飽和し、む
しろBNを析出して固溶Bの低減を引き起こすので、そ
の含有量を0.002〜0.01%とした。一方、Pは
オーステナイト粒界に粒界偏析を起こし、粒界強度を低
下させて捩り応力下での脆性破壊を起こし易くし、その
ため強度を低下させる。特にPが0.020%を超える
と強度低下が顕著となるため、0.020%を上限とし
た。なお、より粒界強化を図る場合には、0.015%
以下が望ましい。また、CuもPと同様オーステナイト
粒界に粒界偏析を起こし、強度低下の原因となる。特に
Cuが0.05%を超えると強度低下が顕著となるた
め、0.05%を上限とした。さらに、Oは粒界偏析を
起こし粒界脆化を起こすとともに、鋼中で硬い酸化物系
介在物を形成し、捩り応力下での脆性破壊を起こし易く
し、強度低下の原因となる。特にOが0.0020%を
超えると強度低下が顕著となるため、0.0020%を
上限とした。
率が35%以下で、フェライト結晶粒径が20μm以
下」とする。高周波焼入れは急速加熱であるため、高周
波焼入れ前の組織のフェライト分率が大きくまたそれが
粗大であると、フェライトの部分はオーステナイト化
後、炭素の拡散が不十分で炭素濃度が添加炭素濃度より
も低くなり、焼入れ後、その位置での硬さが小さくな
る。そのため、この位置が疲労亀裂の発生起点となり易
い。以上の現象は、フェライトの組織分率が35%を超
えるか、またはフェライト結晶粒径が20μmを超える
と特に顕著になる。以上の理由でフェライトの組織分率
を35%以下で、フェライト結晶粒径を20μm以下と
した。なお、より高捩り疲労強度を図るためには、フェ
ライトの組織分率を25%以下とするか、またはさらに
フェライト結晶粒径を15μm以下とするのが望まし
い。また、本発明の高周波焼入れ軸部品用鋼材では、フ
ェライト以外の残りの組織を特に限定するものではな
く、その種類がパーライト、上部ベイナイト、下部ベイ
ナイト、中間段階組織、マルテンサイト、あるいはこれ
らの混合組織のいずれでもよい。
を析出硬化により増加させ、硬化層と芯部の境界での捩
り疲労亀裂の発生を抑制するとともに、高周波加熱時の
オーステナイト粒を一層微細化し、粒界破壊防止による
高強度化を図った軸部品用鋼材である。Nb,Vは鋼中
で炭窒化物を形成し、析出硬化により高周波焼入れ後の
芯部硬さを増加させるとともに、高周波加熱時のオース
テナイト粒を微細化させる効果を有する。しかしなが
ら、、Nb含有量が0.01%未満、V含有量が0.0
3%未満ではその効果は不十分であり、一方、Nb:
0.25%超、V:0.50%超ではその効果は飽和
し、むしろ靱性を劣化させるので、これらの含有量をN
b:0.01〜0.25%、V:0.03〜0.5%と
した。
捩り疲労過程での硬さの以下の抑制、および焼入れ性
の向上を図った軸部品用鋼材である。なお、Niには、
粒界近傍の靱性を改善し、脆性破壊を抑制する効果も有
する。ただし、Cr:0.05%未満、Ni:0.1%
未満ではこの効果は不十分である。一方、Cr:0.5
%超では高周波焼入れ前の組織中のセメンタイトが安定
化し、高周波焼入れ加熱時にセメンタイトの溶解が困難
になり、高周波焼入れ後の効果層の硬さが不十分とな
る。また、3.5%を超えるNiの多量添加は、効果が
飽和し経済性の観点から好ましくない。以上の理由か
ら、Cr:0.05%〜0.5%、Ni:0.1〜3.
5%とした。
材では、製造条件は特に限定せず、本発明の要件を満足
すればいずれの条件でもよい。例えば、鋼材素材の熱間
圧延による製造を仕上げ温度;750〜900℃、仕上
げ圧延後700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度;
0.1〜1.7℃/秒の条件で行う方法が挙げられる
が、本発明では特に限定するものではない。また、本発
明では、本発明の要件を満足すれば熱間圧延後、高周波
焼入れの前に焼準、焼鈍、熱間鍛造等の加工熱処理を必
要に応じて行うことができる。
に具体的に示す。表1,2の組成を有する鋼材を34m
mφの棒鋼に圧延した。この棒鋼から、光学顕微鏡観察
試験片を採取し、5%ナイタール液で腐食して200
倍、400倍で観察しフェライト分率およびフェライト
結晶粒径を求めた。表1,2にフェライト分率、フェラ
イト結晶粒径を示す。また、比較鋼材23,24,25
の材料については圧延後850度×1時間加熱し、85
0〜500℃の温度範囲を1.2℃/秒の冷却速度で冷
却した。本材料に新規に23M,24M,25Mと記号
を付し、フェライト分率およびフェライト結晶粒径を測
定した。その結果を表3に示す。これらの材料から、平
行部直径20mmの静的捩り試験片、捩り疲労試験片を
採取した。
周波数8.5kHzで高周波焼入れを行い、その後17
0℃×1時間の条件で焼戻しを行った。いずれも有効硬
化層深さは約5mmである。その後、静的捩り試験、捩
り疲労試験を行った。捩り疲労特性は5×105 サイク
ルでの時間強度で評価した。表4,5に各供試材の静的
捩り強度、捩り疲労強度を示す。また、捩り疲労過程で
の材質劣化挙動を評価するために、応力振幅700MP
aで1×104 サイクル疲労試験を行った試験片につい
て、表面での圧縮残留応力の減衰量およびフェライ
ト(211)面のX線回折ピークの単価幅の減衰量を評
価した。X線回折ピークの半価幅の減衰量は、疲労過程
での正味の硬さの低下量を評価するために用いた。X線
発生源としては、Cr管球を使用した。表4,5のN
o.1〜25Mは本発明鋼材であるが、本発明鋼材で
は、いずれも優れた静的捩り強度、捩り疲労強度を有し
ている。特に捩り疲労強度は、0.4%C鋼で概ね60
0MPa以上、0.5%C鋼で概ね700MPa以上と
優れた特性が得られている。
イト分率またはフェライト結晶粒径のいずれか、または
両者が本発明の範囲を上回った場合であり、比較鋼材2
6,27,28はSi,Mo,Bの含有量が本発明の範
囲を下回った場合であり、比較鋼材29,30はP,C
rの含有量が本発明の範囲を上回った場合であり、比較
鋼材31はSi,Mn,Mo,Ti,Bの含有量が本発
明の範囲を下回り、フェライト分率、フェライト結晶粒
径が本発明の範囲を上回った場合であり、いずれも同一
炭素量の本発明鋼材に比較して、静的捩り強度、捩り疲
労強度が劣っている。特に捩り疲労強度は、0.4%C
鋼で、いずれも600MPa未満、0.5%C鋼で70
0MPa未満であり、本発明鋼材に比較して顕著に劣っ
ている。比較鋼材の「疲労過程での残留応力減衰量」
「疲労過程での半価幅の減少量」は、同一炭素量の本発
明鋼に比較して相対的に大きい。つまり、本発明鋼材で
は、捩り疲労過程での材質劣化が抑制されたことによ
り、優れた捩り疲労強度が得られていることが明らかで
ある。
れ軸部品用鋼材を用いれば、捩り疲労強度の優れた高周
波焼入れ軸部品の製造が可能となり、産業上の効果は極
めて顕著なるものがある。
(b)はフランジ付シャフト、(c)は外筒付シャフト
を示した図
Claims (3)
- 【請求項1】 重量比として、 C :0.35〜0.65% Si:0.35〜2.5% Mn:1.0〜1.8% Mo:0.05〜0.8% S :0.01〜0.15% Al:0.015〜0.05% Ti:0.005〜0.05% B :0.0005〜0.005% N :0.002〜0.01% を含有し、 P :0.020%以下、 Cu:0.05%以下、 O :0.0020%以下に制限し、残部が鉄および不
可避的不純物からなり、かつフェライトの組織分率が3
5%以下で、フェライト結晶粒径が20μm以下である
ことを特徴とする捩り疲労強度の優れた高周波焼入れ軸
部品用鋼材。 - 【請求項2】 請求項1に記載の成分に加えて、 Nb:0.01〜0.25% V :0.03〜0.5% の1種または2種を含有し、かつフェライトの組織分率
が35%以下で、フェライト結晶粒径が20μm以下で
あることを特徴とする捩り疲労強度の優れた高周波焼入
れ軸部品用鋼材。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の成分に加
えて、 Cr:0.05〜0.5% Ni:0.1〜3.5% の1種または2種を含有し、かつフェライトの組織分率
が35%以下で、フェライト結晶粒径が20μm以下で
あることを特徴とする捩り疲労強度の優れた高周波焼入
れ軸部品用鋼材。
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- 1995-03-16 JP JP08344795A patent/JP3432944B2/ja not_active Expired - Fee Related
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