JP2946653B2 - 高強度歯車の製造方法 - Google Patents

高強度歯車の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【発明の目的】
(産業上の利用分野) この発明は、機械加工による歯形成形時の被削性に優
れた高強度歯車を製造するのに利用される高強度歯車の
製造方法に関するものである。 (従来の技術) 従来の歯車の製造方法としては、例えば、JIS SCr420
Hなどの低合金肌焼鋼を用い、鍛造により歯車粗材とし
たのち、機械加工により所定の歯車形状とし、次いで浸
炭焼入れ焼もどしを行って、歯車完成品としていた。 また、高い疲労強度が必要なものについては、浸炭焼
入れ焼もどし後にショットピーニングを施していた。 一方、機械加工における生産性を高めるため、低合金
肌焼鋼に鉛(Pb),いおう(S)等の快削元素を適量添
加した快削鋼が用いられることもあった。 (発明が解決しようとする課題) しかしながら、これらの快削元素は、強度の低下を伴
うため、比較的強度の低下が少ない鉛を0.05〜0.10重量
%添加した鉛快削鋼が主流となっているが、この鉛快削
鋼は、浸炭焼入れ焼もどしの状態では、鉛非添加鋼(以
下、「ベース鋼」と略す。)と同等の疲労強度を有する
ものの、ショットピーニングによる疲労強度向上の効果
が少ないという欠点があり、良好な被削性と高強度とを
両立させる有効な手段がないという課題があった。 (発明の目的) この発明は、このような従来の課題にかんがみてなさ
れたもので、機械加工による歯形成形時の被削性に優れ
ていると共に、浸炭焼入れ焼もどし後のショットピーニ
ングによる疲労強度向上の効果が大きく、被削性と高疲
労強度とを両立させた歯車を製造することが可能である
高強度歯車の製造方法を提供することを目的としてい
る。
【発明の構成】
(課題を解決するための手段) この発明に係わる高強度歯車の製造方法は、重量%
で、C:0.10〜0.30%、Si:1.00%以下、Mn:2.50%以下、
Cr:2.00%以下、Mo:2.00%以下、Ni:3.00%以下、S:0.0
50%以下、O:0.002%以下、B:0.0040〜0.0200%、N:0.0
050〜0.0200%、必要に応じてAl:0.001〜0.100%、残
部:実質的にFeから成り、かつBとNとの間では重量比
で0.5≦B/N≦4.0の関係を満足しているBN含有快削鋼鋼
材を鍛造後、歯車形状に機械加工を行い、さらに浸炭焼
入れ焼もどしを行うことによりHv550を基準硬さとした
有効硬化層深さを歯面のピッチ点上で0.9mm以上とした
後、アークハイトで0.3〜1.2mmAのショットピーニング
を行う構成としたことを特徴としており、このような高
強度歯車の製造方法を前述した従来の課題を解決するた
めの手段としている。 次に、この発明に係わる高強度歯車の製造方法におい
て適用されるBN含有快削鋼鋼材の化学成分組成(重量
%)の限定理由について説明する。 C:0.10〜0.30% Cは焼入れ性および歯元硬度を向上させる働きのある
重要な元素であるため、0.10%以上が必要である。しか
し、0.30%を超えると歯元硬度が高くなりすぎて靭性が
低下するため、Cの範囲は0.10〜0.30%とした。 Si:1.00%以下 Siは鋼溶製時に脱酸のために必要な元素であり、かつ
また焼入れ性を高めるために添加するが、1.00%を超え
て添加すると靭性を低下させるため、Siの範囲は1.00%
以下とした。 Mn:2.50%以下 Mnは有害なSと結合してMnSを作り、熱間脆化の防止
に寄与すると共に、焼入れ性を向上させるため、より望
ましくは0.3%以上含有させるが、2.50%を超えて添加
すると被削性を低下させるため、Mnの範囲は2.50%以
下、より望ましくは0.30〜2.50%とするのがよい。 Ni:3.00%以下、Cr:2.00%以下、Mo:2.00%以下 Ni,Cr,Moはいずれも焼入れ性を向上する元素であり、
必要に応じて添加するのがよい。しかし、それぞれ3.00
%、2.00%、2.00%を超えて添加すると被削性が大幅に
低下するため、Niは3.00%以下、Crは2.00%以下、Moは
2.00%以下とする必要がある。 S:0.050%以下 SはMnSとなって被削性向上に寄与するが、0.050%を
超えると強度が低下するため、Sの範囲は0.050%以下
とした。 B:0.0040〜0.0200%、N:0.0050〜0.0200%、 B,Nは、潤滑性を有するBNとなって鋼中に析出するこ
とにより、被削性を高めるために有効な元素である。こ
のBNによって、機械的性質および熱間加工性を低下させ
ずに良好な被削性を得るためには、B,Nはそれぞれ0.004
0%以上、0.0050%以上含有させることが必要である。
しかし、B,Nをともに0.0200%を超えて含有させると、
熱間加工性や鋼の鋳造性を悪化させるので好ましくな
い。さらに、このB,Nについては、両者の含有比B/Nを0.
5≦B/N≦4.0の関係を満足させることが必要である。こ
の理由は、B/N比が0.5より小さい場合は鋼の熱間加工性
が低下し、4.0より大きい場合は被削性の低下を生じる
からである。 O:0.002%以下 Oは前述したように、Bと結合してB2O3を形成するこ
とにより、被削性の向上に寄与するBNの形成を阻害する
ため、Oの含有量は0.002%以下とする必要がある。 Al:0.001〜0.100% Alは脱酸剤として有効であると同時に、必須元素であ
るBがB2O3を形成して無効となることを防止するのに有
効な元素であるので、必要に応じて0.001%以上含有さ
せることもよい。しかし、0.100%を超えると地きず発
生の原因となるため、含有させるとしても0.001〜0.100
%とするのがよい。 この発明に係わる高強度歯車の製造方法は、上記化学
組成になるBN含有快削鋼鋼材を素材としてこれを鍛造し
たのち、歯車形状に機械加工を行い、さらに常法等によ
り浸炭焼入れ焼もどしを行ったのちショットピーニング
を行うようにしているが、次に、前記ショットピーニン
グおよび前記浸炭焼入れ焼もどしによる有効硬化層深さ
について説明する。 ショットピーニング:アークハイト0.3〜1.2mmA 前述のように、従来の快削鋼ではショットピーニング
の効果が少なく、そのため一般的には、快削鋼を用いた
歯車においては、ショットピーニングは行われていなか
った。しかし、BN含有快削鋼を用いた歯車においては、
ベース歯並の効果が期待できることから、この発明にお
いてはショットピーニングを行うこととした。この場
合、ショットピーニングによるアークハイトは0.3mmA未
満では疲労強度向上の効果がほとんどなく、1.2mmA超過
では面粗度が極端に低下するため、ショットピーニング
のアークハイトは0.3〜1.2mmAとした。 有効硬化層深さ:0.9mm以上 ショットピーニングにより歯元の疲労強度は向上する
が、ケースクラッシュ等の歯面疲労については、ショッ
トピーニングだけでは不十分である。この場合、歯面の
ピッチ点上でのHv550を基準硬さとした有効硬化層深さ
を0.9mm以上とすることにより、歯面疲労強度を向上さ
せることが可能であるので、浸炭焼入れ焼もどしによる
Hv550を基準硬さとした有効硬化層深さが歯面のピッチ
点上で0.9mm以上であるものとする。 (発明の作用) この発明に係わる高強度歯車の製造方法は、上記した
構成を有し、鋼素材中にB,Nが潤滑性を有するBN化合物
となって鋼中に析出することにより被削性が向上したも
のになっているので、機械加工による歯形成形時の被削
性に優れたものになっていると共に、浸炭焼入れ焼もど
し後のショットピーニングによる疲労強度向上の効果が
大きく、被削性と高強度とを両立させた高疲労強度の歯
車が製造されるようになる。 (実施例) この発明では、第1表に示すように基本的にクロム鋼
の化学成分をするBおよびPbを含まないベース鋼(記号
X)と、従来の快削鋼であるPbを含む鉛快削鋼(記号
Y)と、Bを含みかつPbを含まないBN快削鋼(記号Z)
を各々素材とする各歯車について、ホブ切りによる被削
性試験および疲労強度の比較を行った。 このときの被削性試験条件を第2表に示す。 第1図にBN含有快削鋼を含む3鋼種(記号X,Y,Z)の
ホブ切りによる被削性試験の結果を示す。 第1図に示した結果より、BN含有快削鋼は鉛快削鋼と
同等の工具寿命を有し、いずれもベース鋼に比べ優れて
いることがわかる。 第2図にBN含有快削鋼を用いた本発明例の歯車ならび
にベース鋼および鉛快削鋼を用いた従来の歯車の動力循
環式歯車疲労試験機による疲労試験結果を示す。 また、第3表および第3図に疲労試験に用いた歯車の
諸元および形状を示す。 第3図(a)は小歯車1の形状を示すもので、d1=6
4.5mm,d2=50mm,t1=10mmの寸法を有する。また、第3
図(b)は大歯車2の形状を示すもので、d3=78.3mm,d
4=50mm,t2=15mmの寸法を有するものである。これらの
歯車1,2はいずれも1200℃で熱間鍛造を行った第1表に
示す化学成分の粗材を機械加工により歯車形状とした
後、900℃で3時間の浸炭焼入れを行い、170℃で約90分
間の焼もどしを行ったものである。そして、一部につい
てはさらに、遠心投射式ショットピーニング装置によ
り、直径0.8mm,硬さHRC52〜55のショットを用い、アー
クハイトがアルメンスリップAで0.5mmとなるように、
ショットピーニング処理を行っている。 第2図に示す結果より明らかなように、本発明による
歯車(記号Z+ショットピーニング)の疲労強度は、従
来の鉛快削鋼製歯車(記号Y+ショットピーニング)よ
りも大幅に優れており、ベース鋼製歯車(記号X+ショ
ットピーニング)と同等以上であることがわかる。すな
わち、本発明者らは、BN含有快削鋼を用いた浸炭歯車
は、ショットピーニングの効果がベース鋼製歯車と同等
以上であることを発見したものである。そして、アーク
ハイト0.7mmA以上の強力なショットピーニングを行った
場合、面粗度が低下することがあるため、必要なものに
ついてはショットピーニング後にハードフィニッシュ等
の歯面研磨を行うが、本発明による歯車は、この場合に
おいても良好な切削性能を有しているため、砥石の寿命
向上も図れる。 第4図にFF車(前置エンジン前輪駆動車)用トンラン
スアクスルのファイナルギアセットにおけるモーターダ
イナモによる実機耐久試験結果を示す。この結果は有効
硬化層深さと歯面疲労強度との関係を示したものであ
り、破損形態はいずれもケースクラッシュであった。 ここで使用した歯車素材はいずれもBN含有快削鋼であ
り、アークハイト0.7mmAのショットピーニングを行って
いる。ただし、浸炭時間をコントロールすることによ
り、Hv550を基準硬さとした有効硬化層深さ0.7mmおよび
0.9mmとしている。 第4図に示した結果より明らかなように、Hv550を基
準硬さとした有効硬化層深さを0.9mm以上とすることに
より、歯面疲労強度が大幅に向上することがわかる。
【発明の効果】
この発明に係わる高強度歯車の製造方法では、B:0.00
40〜0.0200%,N:0.0050〜0.0200%を含むBN含有快削鋼
を用いた鍛造粗材を機械加工により歯車形状とし、浸炭
焼入れ焼もどしを行うことによりHv550を基準硬さとし
た有効硬化層深さを歯面のピッチ点上で0.9mm以上とし
た後、アークハイトで0.3〜1.2mmAのショットピーニン
グ処理を行う構成としたため、機械加工時の被削性に優
れていると共に、歯面疲労強度(耐面圧強度)および歯
元の曲げ疲労強度が高い高強度歯車を提供することが可
能となり、機械加工時の被削性と使用時の高疲労強度と
を両立させた高強度歯車を得ることができるという著し
く優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
第1図はBN含有快削鋼を含む3鋼種のホブ切りによる被
削性試験の評価結果を示すグラフ、第2図はBN含有快削
鋼を含む3鋼種からなる各歯車の疲労試験結果を示すグ
ラフ、第3図(a)(b)は第2図の疲労試験に供した
歯車の形状を示す部分縦断面説明図、第4図は有効硬化
層深さと歯面疲労強度(耐久寿命比)との関係を調べた
結果を示すグラフである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、 C :0.10〜0.30%、 Si:1.00%以下、 Mn:2.50%以下、 Cr:2.00%以下、 Mo:2.00%以下、 Ni:3.00%以下、 S :0.050%以下、 O :0.002%以下、 B :0.0040〜0.0200%、 N :0.0050〜0.0200%、 残部:実質的にFe から成り、かつBとNとの間では重量比で 0.5≦B/N≦4.0 の関係を満足しているBN含有快削鋼鋼材を鍛造後、歯車
    形状に機械加工を行い、さらに浸炭焼入れ焼もどしを行
    うことによりHv550を基準硬さとした有効硬化層深さを
    歯面のピッチ点上で0.9mm以上とした後、アークハイト
    で0.3〜1.2mmAのショットピーニングを行うことを特徴
    とする高強度歯車の製造方法。
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