JP2944863B2 - 四輪駆動トラクタの輪距調節装置 - Google Patents

四輪駆動トラクタの輪距調節装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、四輪駆動トラクタの輪
距調節装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トラクタの輪距は、例えば畝間に適応さ
せるため或いは狭い場所での走行を可能にするために調
節できるようにしてある。この輪距を調整する装置とし
て、車軸を伸縮自在な構造とすると共に車軸の伸縮をピ
ンによって固定するようにしたもの、ディスクの裏返し
とディスクとリムの取付け位置の変更とを組み合わせて
調節するようにしたもの等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のものにあって
は、車輪の輪距調節作業が煩雑で面倒であるという問題
がある。また、車輪の移動が容易なものとして、車軸の
伸縮を油圧シリンダによって行い得るようにしたものも
あるが、コスト高になるばかりでなく、操向輪に採用す
るとタイロッドの調節が必要となり、輪距調節作業が煩
雑になる。そこで、これらの欠点がないものとして、車
輪のリム側に螺旋形レールを設けると共に、車軸に固定
のディスク側に螺旋形レールに摺動・固定自在に嵌合す
るクランパーを設け、螺旋形レールとクランパーとの固
定を解除し、車軸を回転駆動させることで、リムとディ
スクとを相対回転させてクランパーを螺旋形レールに沿
って摺動させ、これによってリムをディスクに対して車
輪の回転軸心方向に移動させるようにした螺旋レール式
輪距調節機構がある。
【0004】しかしながら、螺旋レール式輪距調節機構
を四輪駆動トラクタの車輪、例えば前輪に採用すると、
輪距調節しようとしても、後輪によって車体を介して前
輪のタイヤが押されて回転し、したがって、リムとディ
スクとが略同調して回転し、輪距調節が行えないことと
なる。本発明は前記問題点に鑑みて、螺旋レール式輪距
調節機構のような、リムとディスクとの相対回転によっ
てリムをディスクに対して車輪の回転軸心方向に移動さ
せるようにした機構を四輪駆動トラクタに採用し得るよ
う考慮することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明が、前記目的を達
成するために講じた技術的手段は、エンジン1からの動
力により、左右一対の前輪16と、左右一対の後輪7と
を回転駆動させるようにした四輪駆動トラクタにおい
て、前輪16を後輪7と同調した周速で回転させるよう
に動力伝達する同速機構18と、前輪16を後輪7より
も速い周速で回転させるように動力伝達する前輪増 速機
構17とを備えると共に同速機構18と前輪増速機構1
7とを選択的に切換え自在とした動力切換装置11をエ
ンジン1から前輪デフ装置13への動力伝達系統に設
け、前輪16のリム21と、前輪デフ装置13から動力
伝達される前車軸15に固定されるディスク22とを、
相対回転・固定自在で且つ相対回転によってリム21が
ディスク22に対して前輪16の回転軸心方向に移動
し、しかも一方向の相対回転によって左右のリム21が
相反する方向に移動するように結合し、リム21とディ
スク22との固定を解除すると共に動力切換装置11を
前輪増速機構17に切換えた状態で、トラクタを前進或
いは後進させることにより、リム21を前輪16の回転
軸心方向に移動させるようにした点にある。
【0006】
【作用】前輪の輪距を調節するには、先ず左右両前輪の
リムとディスクとの固定を解除してリムとディスクとが
相対回転し得るようにすると共に、動力切換装置を前輪
増速機構に切換えておく。次いで、トラクタを前進或い
は後進させると、前輪は後輪に押され或いは引かれて後
輪と略同調して回転しようとするが、前車軸はこれより
速く回転するので、リムとディスクとが相対回転し、こ
れによって、リムがディスクに対して前輪の回転軸心方
向に移動する。この時、左右のリムは相反する方向に移
動して、左右の前輪の輪距調節が同時に行われる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は四輪駆動トラクタの走行動力伝達系の構成
図を示し、同図において、1はエンジンで、該エンジン
1からクラッチ2を介して走行変速装置3に動力が伝達
されるようになっている。この走行変速装置3はベベル
ピニオン軸4を介して後輪デフ装置5に連動連結され、
後輪デフ装置5は左右の終減速装置6等を介して左右の
後輪7に連動連結されており、各後輪7が駆動されるよ
うになっている。また、後輪デフ装置5と終減速装置6
との間には後輪7を制動するブレーキ装置8が介装され
ている。
【0008】前記ベベルピニオン軸4にはギヤー列9を
介して中間軸10が連動連結され、この中間軸10には
動力切換装置11を介して推進軸12が連動連結され、
推進軸12は前輪デフ装置13,左右の終減速装置1
4,左右の前車軸15等を介して左右の前輪16に連動
連結されており、ベベルピニオン軸4からの動力により
各前輪16が駆動されるようになっている。動力切換装
置11はギヤー伝動機構からなる前輪増速機構17と同
速機構18とを備えると共に、これら17,18を選択
する油圧クラッチ19を備えてなる。そして、油圧クラ
ッチ19を前輪増速機構17側に接続すると、前輪16
が後輪7よりも速い周速で回転し、油圧クラッチ19を
同速機構18側に接続すると、前輪16が後輪7と略同
調した周速で回転するよう構成されている。この油圧ク
ラッチ19の切換スイッチは運転席近傍の操縦部に設け
られる。
【0009】図2及び図3に示すように、前輪16はタ
イヤ20と、タイヤ20を装着するリム21と、前車軸
15の外端に取付固定されるディスク22とを備えてな
る。リム21の内周面には複数本(本実施例では4本)
の螺旋形レール23が固着されており、ディスク22に
は螺旋形レール23に摺動自在に嵌合するコ字形溝が形
成されたクランパー24が螺旋形レール23に対応した
数(4個)設けられている。前記クランパー24はディ
スク22にボルト25固定されており、このボルト25
の締付けによって螺旋形レール23側に押圧されてディ
スク22と螺旋形レール23とが固定されるように、デ
ィスク22の取付面に傾斜面で接当している。
【0010】前記螺旋形レール23は断面四角形の棒材
からなり、左右両前輪16ともに、前進回転方向A後方
から前方に向けて左右方向外側方から内側方に移行する
ように形成されている。また、複数本の螺旋形レール2
2の内一本のレールは、図3及び図4に示すように、両
端部にストッパ26が固着され、中間部にコ字形ストッ
パ27をボルト28固定するための挿通孔29が形成さ
れている。前記構成において、前輪16の輪距を調節す
るには、左右両前輪16のクランパー24を固定するボ
ルト25を緩めると共に、動力切換装置11の油圧クラ
ッチ19を前輪増速機構17側に接続させておく。
【0011】次いで、トラクタを前進させると、前輪1
6は後輪7に押されて後輪7と同調して回転しようとす
るが、前車軸15は、前輪16を後輪7よりも速い周速
で回転させるように回転するので、リム21に対してデ
ィスク22が前進回転方向Aに回転することとなり、ク
ランパー24が螺旋形レール23に沿って相対的に摺動
して、左右両前輪16のリム21がディスク22に対し
て回転軸心B方向外側方に同時に移動する。また、逆に
トラクタを後進させると、前記とは逆の作用で、左右両
前輪16のリム21がディスク22に対して回転軸心B
方向内側方に同時に移動する。
【0012】したがって、前車軸15の前進回転によっ
て前輪16の輪距が広くなり、前車軸15の後進回転に
よって前輪16の輪距が狭くなる。なお、本発明は前記
各実施例に限定されることはなく、後輪に採用してもよ
く、また、後輪の周速を増速させるようにしてもよい。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、エンジン1からの動力
により、左右一対の前輪16と、左右一対の後輪7とを
回転駆動させるようにした四輪駆動トラクタにおいて、
前輪16を後輪7と同調した周速で回転させるように動
力伝達する同速機構18と、前輪16を後輪7よりも速
い周速で回転させるように動力伝達する前輪増速機構1
7とを備えると共に同速機構18と前輪増速機構17と
を選択的に切換え自在とした動力切換装置11をエンジ
ン1から前輪デフ装置13への動力伝達系統に設け、
輪16のリム21と、前輪デフ装置13から動力伝達さ
れる前車軸15に固定されるディスク22とを、相対回
転・固定自在で且つ相対回転によってリム21がディス
ク22に対して前輪16の回転軸心方向に移動し、しか
も一方向の相対回転によって左右のリム21が相反する
方向に移動するように結合し、リム21とディスク22
との固定を解除すると共に動力切換装置11を前輪増速
機構17に切換えた状態で、トラクタを前進或いは後進
させることにより、リム21を前輪16の回転軸心方向
に移動させるようにしたので、螺旋レール式輪距調節機
構のような、リムとディスクとの相対回転によってリム
をディスクに対して前輪の回転軸心方向に移動させるよ
うにした機構を四輪駆動トラクタに採用でき、しかも前
進或いは後進によって、輪距調節を左右同時に行うこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る四輪駆動トラクタの走行動力伝達
系の構成図である。
【図2】実施例に係る前輪の平面断面図である。
【図3】実施例に係る前輪の斜視図である。
【図4】実施例に係る螺旋形レールの拡大図である。
【符号の説明】
7 後輪 15 前車軸 16 前輪 17 前輪増速機構 21 リム 22 ディスク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本庄 邦章 大阪府堺市石津北町64番地 株式会社ク ボタ 堺製造所内 (56)参考文献 特開 昭60−110507(JP,A) 特開 昭63−215402(JP,A) 実開 昭63−152701(JP,U) 実開 昭56−48905(JP,U) 実開 昭62−30931(JP,U) 特公 昭39−22304(JP,B1) 実公 昭31−15110(JP,Y1) 実公 昭35−15211(JP,Y1) 実公 昭36−7704(JP,Y1) 実公 昭36−9209(JP,Y1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B60B 23/12 B60B 35/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン(1)からの動力により、左右
    一対の前輪(16)と、左右一対の後輪(7)とを回転
    駆動させるようにした四輪駆動トラクタにおいて、前輪(16)を後輪(7)と同調した周速で回転させる
    ように動力伝達する同速機構(18)と、前輪(16)
    を後輪(7)よりも速い周速で回転させるように動力伝
    達する前輪増速機構(17)とを備えると共に同速機構
    (18)と前輪増速機構(17)とを選択的に切換え自
    在とした動力切換装置(11)をエンジン(1)から前
    輪デフ装置(13)への動力伝達系統に設け、 前輪(1
    6)のリム(21)と、前輪デフ装置(13)から動力
    伝達される前車軸(15)に固定されるディスク(2
    2)とを、相対回転・固定自在で且つ相対回転によって
    リム(21)がディスク(22)に対して前輪(16)
    の回転軸心方向に移動し、しかも一方向の相対回転によ
    って左右のリム(21)が相反する方向に移動するよう
    に結合し、リム(21)とディスク(22)との固定を
    解除すると共に動力切換装置(11)を前輪増速機構
    (17)に切換えた状態で、トラクタを前進或いは後進
    させることにより、リム(21)を前輪(16)の回転
    軸心方向に移動させるようにしたことを特徴とする四輪
    駆動トラクタの輪距調節装置。
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