JP2941577B2 - 安定な脂肪族ポリエステル組成物 - Google Patents

安定な脂肪族ポリエステル組成物

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JP2941577B2
JP2941577B2 JP4234908A JP23490892A JP2941577B2 JP 2941577 B2 JP2941577 B2 JP 2941577B2 JP 4234908 A JP4234908 A JP 4234908A JP 23490892 A JP23490892 A JP 23490892A JP 2941577 B2 JP2941577 B2 JP 2941577B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は実用上充分な熔融加工性
をもち、射出成形、中空成形、押出成形などを容易に可
能にする安定な熱可塑性脂肪族ポリエステル組成物に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、フィルム、繊維、その他の成形品
の成形に用いられていた高分子量ポリエステル(ここで
言う高分子量ポリエステルとは、数平均分子量が10,
000以上を指すものとする)は、テレフタル酸(ジメ
チルエステルを含む)とエチレングリコールまたは、ブ
タンジオール−1,4の縮合体であるポリエチレンテレ
フタレート、またはポリブチレンテレフタレートのよう
な芳香族ポリエステルに限られるといっても過言ではな
かった。テレフタル酸の代りに、2,6−ナフタレンジ
カルボン酸を用いた例もあるが、ジカルボン酸に脂肪族
タイプを使用して脂肪族ポリエステルを合成し、これを
フィルム、繊維等に成形し、実用化することは極めて困
難であった。それは、脂肪族ポリエステルが通常知られ
た重縮合反応では数平均分子量で15,000以上にな
らず、熱分解し易いためであった。
【0003】本発明者らは、先にこのような易熱分解性
の脂肪族ポリエステルの分子量を極力高めるべく検討を
重ねた結果、まず数平均分子量が5,000以上、望ま
しくは10,000以上で、末端基が実質的にヒドロキ
シル基であるポリエステルポリオールに、その融点以上
の熔融状態において、ジイソシアナートを添加すること
により、意外にも、ゲル化の危険がなく円滑に高分子量
のウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルを合成できる
ことを知り、例えば特開平4−189822号および特
願平4−91118号などですでに提案した。
【0004】また本発明者らはその後さらに研究した結
果、ジイソシアナートを添加しなくても、脱グリコール
反応を触媒の存在下所定の温度にて、特に0.05〜0.
1mmHgの高真空にすることによって数平均分子量が2
5,000〜70,000の高分子量のウレタン結合を含
まない脂肪族ポリエステルを合成することもできた(特
願平4−122205号)。しかしながら、これらウレ
タン結合を含むか、または含まない高分子量脂肪族ポリ
エステルは、それ自体にて熔融成形できることは勿論で
あるが、ポリエチレンやポリプロピレンのような汎用の
ポリオレフィンの汎用成形機械で成形加工する場合に着
色したり、エクストルーダー内または金型内で分子量低
下を起したり、肌荒れを起したりする課題があることが
判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、汎用プラス
チックス成形機械にて成形加工する場合、長時間にわた
る加熱下において着色したり、分子量低下を起したり、
肌荒れを起したりすることのない安定な高分子量の脂肪
族ポリエステル組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の汎用機械による
溶融成形時に、着色、分子量低下、肌荒れなどが起こら
ない安定な脂肪族ポリエステル組成物は、(1)脂肪族
(環状脂肪族を含む)グリコールと(2)脂肪族(環状
脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはその酸無水物)と
を主成分とし、(3)三価以上の多価アルコール、多価
オキシカルボン酸(またはその酸無水物)、または三価
以上の多価カルボン酸(またはその酸無水物)0.1〜
5モル(成分(2)100モルに対して)の存在下また
は非存在下に脱水反応および脱グリコール反応させて得
られるヒドロキシル基末端を有する脂肪族ポリエステル
ポリオール100重量部に、さらに多官能イソシアネー
0.5〜3重量部を反応させて得られる数平均分子量
10,000以上の脂肪族ポリエステル(A)100重
量部に対し、酸化防止剤(B)0.05〜3重量部、お
よび着色防止剤(C)として亜リン酸および亜リン酸の
有機エステル類からなる群から選ばれた、少なくとも一
種のリン化合物0.01〜3重量部および/または金属
石鹸、脂肪族炭化水素、高級脂肪族酸、脂肪族アマイド
および脂肪族エステルから選ばれた、少なくとも一種の
滑剤(D)0.05〜0.5重量部を混合して熔融混練
することによって得ることができる。
【0007】高分子量脂肪族ポリエステル(A)は、例え
ば特開平4−189822号および特願平4−9111
8号などに記載されている方法によって製造することが
できる。その詳細は省略するが、その概略を以下に述べ
る。即ち、本発明に使用される高分子量脂肪族ポリエス
テル(A)は、次の一般式(a)
【0008】
【化2】
【0009】(mは上記式のポリエステルポリオールの
数平均分子量が5,000以上、好ましくは10,00
0以上となるに必要な重合度、R1およびR2は炭素数2
〜10のアルキレン基である。但し、一般式(a)にお
いて、前記(3)成分が存在する場合には、分枝もあり
得る。)で表されるプレポリマーとしての脂肪族ポリエ
ステルポリオールとカップリング剤としての多官能イソ
シアナートとの反応で得られ、次の一般式(A)で表さ
れる、数平均分子量が10,000以上、好ましくは2
0,000〜100,000、さらに好ましくは25,
000〜70,000で、かつオルトクロロフェノール
の10%溶液の25℃における粘度が5〜1,000、
好ましくは10〜500ポイズである、ウレタン結合を
含む脂肪族ポリエステルである:一般式(A)
【0010】
【化3】
【0011】(式中、R1およびR2は炭素数2〜10の
アルキレン基であり、R3多官能イソシアナート残基で
あり、mは上記の定義と同じであり、Mは0または1以
上の数である。但し、一般式(A)において、少量の前記
(3)成分が存在する場合には、分枝もあり得る。) 前記一般式において、脂肪族ポリエステルポリオール
(a)の数平均分子量が10,000以上および/また
はウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルの数平均分子
量が20,000以上のときに、機械的強度に優れたも
のが得られる。さらにR1が(−CH2−CH2−)p(但し
pは1または2である)で表されるアルキレン基であ
り、R2が同様に(−CH2−CH2−)n(但しnは1また
は2である)で表されるアルキレン基である場合に、結
晶性で融点が高く、かつ成形性も良好な、脂肪族ポリエ
ステルのポリマーが得られるので好ましい。本発明にお
ける高分子量化では、高結晶性の脂肪族ポリエステルの
場合にプラスチックスとしてその物性を著しく向上させ
る。特に、R1がテトラメチレン基であり、R2がエチレ
ン基である場合に、優れた物性を有する高分子量、高結
晶性のポリエステルが得られる。またR3 としては、
【0012】
【化4】
【0013】があげられるが、脂肪族または脂環式、特
にヘキサメチレン基が、生成する脂肪族ポリエステルの
色相および脂肪族ポリエステルポリオールとの反応性、
または、生分解性などの点から好ましい。本発明におい
て、R1,R2およびR3はそれぞれ1種に限られることは
なく、2種以上の場合も含まれることは勿論である。こ
の場合、脂肪族ポリエステルポリオールの反応成分であ
る脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコール、または脂肪
族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはその酸無
水物)をそれぞれ2種以上使用してランダム共縮合させ
るかまたはブロック共縮合させて多成分系の複合ポリエ
ステルポリオールを合成し、それをウレタン化する方
法、或いは異種のポリエステルポリオールをウレタン化
する方法などが採用される。
【0014】本発明に使用されるウレタン結合を含む脂
肪族ポリエステル(A)は、それぞれ炭素数2〜10のア
ルキレン基をもつ脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコー
ルと脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはそ
の酸無水物)とを主成分とし、グリコール過剰で所望の
酸価(好適には10以下)迄エステル化した後、チタン
化合物のような反応触媒の存在下で脱グリコール反応を
行って、数平均分子量が5,000以上で、好ましくは
10,000以上で、末端基が実質的にヒドロキシル基
であるポリエステルポリオール(a)を合成し、その段階
でその融点以上の熔融状態において、分子量によっても
相違するがポリエステルポリオール100重量部に対し
0.5〜3重量部程度の多官能イソシアナートをポリエ
ステルポリオールと反応させることにより合成される。
【0015】反応成分である脂肪族(環状脂肪族を含む)
グリコールは、炭素数2〜10のアルキレン基をもつも
のであり、例えばエチレングリコール、プロピレングリ
コール、トリメチレングリコール、ブタンジオール−
1,3、ブタンジオール−1,4、ペンタンジオール−
1,5、3−メチルペンタンジオール−1,5、ヘキサ
ンジオール−1,6、ヘプタンジオール−1,7、オク
タンジオール−1,8、ノナンジオール−1,9、デカ
ンジオール−1,10、ネオペンチルグリコール並びに
それらの混合物があげられる。これらのなかで、炭素数
が偶数のもの、例えばエチレングリコール、ブタンジオ
ール−1,4、ヘキサンジオール−1,6が、高融点で
かつフィルム形成性の脂肪族ポリエステル(A)を合成
できるため好ましい。特にエチレングリコールおよびブ
タンジオール−1,4が良好な結果を与えるので、最適
である。
【0016】生成したポリエステルの生分解性は脂肪族
グリコールよりやや低下するが、環状脂肪族グリコー
ル、例えばシクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフ
ェノールAなども使用することができる。
【0017】脂肪族ジカルボン酸またはその酸無水物と
しては、炭素数2〜10のアルキレン基をもつもの、例
えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、
スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカル
ボン酸、ドデカン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸並
びにそれらの混合物があげられる。これらのなかで、炭
素数が偶数のもの、例えばコハク酸、アジピン酸、無水
コハク酸が高融点、フィルム形成性のポリエステルを合
成できるため好ましい。特に、コハク酸または無水コハ
ク酸が最適である。
【0018】また、環状脂肪族多価カルボン酸、例えば
テトラヒドロテレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル
酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸およびそれらのエ
ステル化合物なども使用することができる。
【0019】特に好ましい組合せは、ブタンジオール−
1,4とコハク酸またはその無水物(融点110〜11
5℃)、並びにエチレングリコールとコハク酸またはそ
の無水物(融点約105℃)、または、シクロヘキサンジ
メタノール−1,4とシクロヘキサンテレフタル酸(融
点約135〜140℃)であり、前2者の組合せが、ポ
リエチレンと類似の融点を示し、本発明にとっては、最
も望ましい組合せといえる。
【0020】当然のことながら、例えば、長鎖長の分枝
を導入して分子量分布を広げることによって優れた物性
をもつフィルムおよびシートにするために、目的を損な
わない範囲内で、三価以上の多価アルコール、多価オキ
シカルボン酸(またはその酸無水物)、三価以上の多価
カルボン酸(またはその酸無水物)などの成分の併用は
可能である。その際は、ポリエステルポリオールが製造
される。
【0021】三価以上の多価アルコール成分の例として
は、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリ
スリットなどがあげられる。また、脱水した形のモノエ
ポキシ化合物であるグリシドールも使用し得る。この成
分の使用量は、脂肪族ジカルボン酸(またはその酸無水
物)成分全体100モル(%)に対して、0.1〜5モ
ル(%)であり、エステル化の当初から加えるのが良
い。
【0022】多価オキシカルボン酸(またはその酸無水
物)成分は、市販品がいずれも利用可能ではあるが、低
コストで入手できるといった点からは、リンゴ酸、酒石
酸並びにクエン酸が好適である。この成分の使用量は、
脂肪族ジカルボン酸(またはその酸無水物)成分全体1
00モル(%)に対して、0.1〜5モル(%)であり、エ
ステル化の当初から加えることができる。
【0023】三価以上の多価カルボン酸(またはその酸
無水物)成分の例としては、トリメシン酸、プロパント
リカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット
酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペ
ンタテトラカルボン酸無水物などがあげられる。特に、
無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが好適で
ある。この成分の使用量は、脂肪族ジカルボン酸(また
はその酸無水物)成分全体100モル(%)に対して、
0.1〜5モル(%)であり、エステル化の当初から加え
ることができる。
【0024】本発明を代表するポリエステルジオール
は、末端基が実質的にヒドロキシ基であるが、そのため
には、合成反応に使用するグリコール成分および酸成分
の割合は、グリコールを幾分過剰に使用する必要があ
る。その割合は、酸成分1モルに対しグリコール成分
1.05〜1.2モル位が好適である。
【0025】ポリエステルポリオールを合成する方法は
特別なものではなく、一般に脱水反応(エステル化)に
続く脱グリコール反応により高分子量化される。
【0026】なお、脱グリコール反応の際には、少量の
触媒を用いる必要がある。有用な触媒としては、Ti,G
e,Zn,Fe,Mn,Co,Zr,V,Ir,La,Ce,Li,Caなどの
金属化合物、好ましくは有機酸塩、アルコキシド、アセ
チルアセトナートなどの有機金属化合物があげられる。
これらのなかで、例えば、ジブトキシジアセトアセトキ
シチタン(日本化学産業(株)社製“ナーセムチタ
ン”)、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタ
ン、テトラブトキシチタンなどが高活性であり好まし
く、いずれも市販品があり入手可能である。触媒の使用
割合は、通常ポリエステルポリオール100重量部に対
して0.01重量部を超え3重量部以下、望ましくは
0.05〜2重量部である。しかし、高活性チタン化合
物を用いる場合には、0.0001重量部程度の極く少
量の使用でも有効である。
【0027】触媒はエステル化の最初から加えてもよ
く、脱グリコール反応の直前に加えてもよい。エステル
化反応は160〜230℃で好ましくは不活性ガス雰囲
気下で実施される。この温度より低温では反応速度が遅
く実用性に乏しい。またこの温度より高温では分解の危
険性が高くなり避けた方がよい。従って、180〜22
0℃の間の温度で第1段のエステル化反応を実施するこ
とが好ましい。エステル化反応は、酸価が15以下好適
には10以下に達する迄実施される。得られるポリエス
テルは、両末端にヒドロキシル基を有する数平均分子量
1,000〜5,000程度のものである。この場合、
分子量が大きい程脱グリコール反応による分子量増大が
円滑に行えるので、高分子量のものが望ましい。脱グリ
コール反応は、5mmHg以下の減圧下、170〜230℃
で実施される。より好適には、1mmHg以下の高真空下、
180〜210℃で実施することが、反応速度および分
解防止の点から望ましい。
【0028】本発明においては使用されるポリエステル
ポリオール(a)は、末端基が実質的にヒドロキシル基で
ある、数平均分子量5,000以上、好ましくは10,0
00以上のものでなければならない。これが低分子量ポ
リエステルポリオール、例えば数平均分子量が2,50
0程度であると、本発明で利用する0.5〜3重量部程
度の多官能イソシアナートを用いても、良好な物性を有
する最終樹脂を得ることができないばかりか、熔融添加
にあっては、前出した0.5〜3重量部でも、量によっ
ては反応中にゲル化を生ずることが認められるなどの不
都合がある。従って、末端ヒドロキシル基の単位重量当
りの数(即ち分子の大きさ)がほぼ30mg−KOH/ポリ
マーg以下位でなければ、安全な反応が行えない。本発
明の分子量5,000以上のポリエステルポリオール
(a)は、必然的にこのレベルまたは以下のヒドロキシル
価であり、少量の多官能イソシアナートの使用で、熔融
状態といった苛酷な条件下でも、安全に高分子量の脂肪
族ポリエステル(A)を合成することができる。
【0029】従って、本発明でいうポリエステルポリオ
ールは、少なくとも分子量5,000当り1個のウレタ
ン結合を含むことになる。さらに、本発明の構成要素で
ある生成した分子量5,000以上、望ましくは10,
000以上の末端基が実質的にヒドロキシル基であるポ
リエステルポリオール(a)に、さらに分子量を高める
ために加えられる多官能イソシアナートには特に制限は
ないが、例えば市販の次の種類があげられる。2,4−
トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシ
アナートと2,6−トリレンジイソシアナートとの混合
体、ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフ
チレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナー
ト、水素化キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレ
ンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、特
に、ヘキサメチレンジイソシアナートが、生成樹脂の色
相、反応性、などの点から好ましい。
【0030】これら多官能イソシアナートの添加量は、
分子量にもよるが、ポリエステルポリオール100重量
部に対して0.5〜3重量部、望ましくは1〜2重量部
である。理論的にはヒドロキシ基とイソシアネート基は
当量比が1の場合が最適であるが、0.5位の範囲でそ
の一方を過剰使用しても実用上は問題ない。その添加法
は、ポリエステルポリオール(a)が均一な熔融状態で溶
剤を含まず、容易に撹拌可能な条件下で行われることが
望ましい。別に、固形状のポリエステルポリオールに添
加し、エクストルーダーを通して熔融、混合することも
不可能ではないが、一般にはポリエステルポリオール製
造装置内か、或は熔融状態のポリエステルポリオール
(例えばニーダー内での)に添加することが実用的であ
る。
【0031】上記のようにして製造され、本発明に使用
されるウレタン結合を含む高分子量脂肪族ポリエステル
(A)は、熔融成形時の機械加工性を考慮して、数平均
分子量が10,000以上、好ましくは20,000〜
100,000、さらに好適には25,000〜70,
000にすることが好ましい。その下限以下では熔融時
に水のように流れて成形加工ができ難く、またその上限
以上では金型内の流れが悪くて成形加工が事実上でき難
い。また、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルのオ
ルトクロロフェノールの10%溶液の25℃における粘
度は、5〜1,000ポイズ、望ましくは10〜500
ポイズが必要である。これより低い粘度では強靭な成形
品は得られないし、また高い粘度では、熔融流れが悪く
て成形加工ができない。
【0032】本発明に使用される高分子量脂肪族ポリエ
ステル(A)は、メルトフローレート(190℃、荷重
2.16kg)が0.01〜100g/10分、好適には
0.1〜50g/10分になるように、ポリエステルポ
リオール(a)の分子量と多官能イソシアナートの添加
量を制御することによって調節されることができる。
【0033】高分子量脂肪族ポリエステル(A)は、原
料の脂肪族グリコールの種類により熔融特性の分子量依
存性が変動するが、一方脂肪族ジカルボン酸の種類では
殆んど変動しない。例えば、数平均分子量(Mn)対メル
トフローレート(MFR)の関係を代表的な原料のエチレ
ングリコール/コハク酸(EG)系およびブタンジオール
−1,4/コハク酸(BD)系について図1に示した。M
FRが0.01〜100g/10分になる両系のMn
は、表1のようになる。
【0034】
【表1】
【0035】本発明においては、前記、脂肪族ポリエス
テルポリオールプレポリマーを合成した後、カップリン
グ剤としての多官能イソシアナートにより高分子量化し
た脂肪族ポリエステル(A)の他にカップリング剤を使用
せず、(1)脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコールと
(2)脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(また
はその酸無水物)とを主成分とし、少量の(3)三価以
上の多価アルコール、多価オキシカルボン酸(またはそ
の酸無水物)、または三価以上の多価カルボン酸(また
はその酸無水物)の存在下または非存在下にエステル化
し、生成したポリエステルポリオールを脱グリコール触
媒の存在下、180〜230℃の温度および0.005
〜0.1mmHgの高真空下で脱グリコール反応を行って得
られる、次の一般式(E)
【0036】
【化5】
【0037】(mは、上記式のポリエステルの数平均分
子量が25,000〜70,000となるのに必要な重合
度、R1およびR2は炭素数2〜10のアルキレン基であ
る。但し、一般式(E)において、少量の上記(3)成
分が存在する場合には、分枝もあり得る。)で表され、
メルトフローレート(JIS法、190℃、荷重2.16
kg)が0.01〜100g/10分である高分子量脂肪族
ポリエステル(E)も使用することができる(特願平4−
122205号)。
【0038】前記一般式において、R1が(−CH2−C
2−)p(但し、pは1または2である)で表されるア
ルキレン基であり、R2が同様に(−CH2−CH2−)
n(但し、nは1または2である)表されるアルキレン
基である場合に、結晶性で融点が高く、かつ成形性も良
好な高分子量脂肪族ポリエステルが得られるので好まし
い。特に、R1がテトラメチレン基であり、R2がエチレ
ン基である場合に融点が110℃以上のプラスチックス
として優れた物性を有する高結晶性の高分子量ポリエス
テルが得られている。
【0039】本発明において、R1およびR2はそれぞれ
1種に限られることはなく、2種以上の場合も含まれる
ことは勿論である。この場合、脂肪族ポリエステルの反
応成分である脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコールま
たは脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(または
その酸無水物)をそれぞれ2種以上使用して、ランダム
共縮合させるかまたはブロック共縮合させて、多成分系
の複合ポリエステルを合成する方法も採用される。
【0040】この脂肪族ポリエステル(E)の構成成分で
ある脂肪族(環状脂肪族を含む)グリコール、脂肪族
(環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはその酸無水
物)、三価以上の多価アルコール、多価オキシカルボン
酸(またはその酸無水物)、三価以上の多価カルボン酸
(またはその酸無水物)は、前記脂肪族ポリエステルポ
リオールプレポリマー(a)を合成する際に使用するも
のと同一であり、その使用量も同様である。また、脱グ
リコール触媒とその使用量も前記脂肪族ポリエステルポ
リオールプレポリマー(a)の合成する場合と同様であ
る。真空度が0.005〜0.1mmHgの範囲外では、所
望のMFRおよびMnを有する脂肪族ポリエステル
(E)を得ることができない。
【0041】本発明のウレタン結合を含む高分子量脂肪
族ポリエステル(E)は、ポリエチレンの汎用成形機器
で成形加工するために、メルトフローレートMFR(J
IS法、190℃、荷重2.16kg)が0.01〜10
0g/10分に、好ましくは0.1〜50g/10分に
制御することが好ましい。例えば、MFRが10〜10
0g/10分の場合には射出成形に適し、例えば板材、
容器、フォーク、ナイフなどを極めて容易に成形でき
る。また、MFRが1〜20g/10分の場合にはマル
チフィラメント用に、一方MFRが0.1〜2g/10
分の場合には中空成形用に、またMFRが0.01〜1
g/10分の場合にはフィルムの押出成形用に適してい
る。
【0042】本発明の熔融成形時に安定な脂肪族ポリエ
ステル組成物を調整するには、その目的に応じて脂肪族
ポリエステル(A)または脂肪族ポリエステル(E)に下記
の酸化防止剤(B)を添加する。即ち、加工および熱安定
剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用で
きる。例えば、トリエチレングリコール−ビス〔3−
(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート〕(商品名 IRGANOX 24
5)、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート〕(商品名 IRGANOX 259)、2,4−
ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−
3,5−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジ
ン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート〕(商品名 IRGANOX 1010)、2,2−
チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタ
デシル〔−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオネート((商品名 IRGANO
X 1076)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,
5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマ
ミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベン
ジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5
−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブ
チル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが使用で
きる。特に、IRGANOX 245,259,101
0および1076が好適に使用できる。
【0043】また、リン系加工安定剤、例えばトリス
(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品
名 IRGAFOS 168)、トリフェニルフォスフ
ァイト、トリラウリルフォスファイト、トリスノニルフ
ェニルフォスファイトなどを使用できる。特に、IRG
AFOS 168と前記の酸化防止剤、例えばIRGA
NOX 1010とを併用することが好ましく、その際
には成形品の加工安定性が向上し、かつ成形品の着色を
減らすことができる。
【0044】酸化防止剤(B)の添加量は、脂肪族ポリエ
ステル(A)または(E)100重量部に対して0.0
5〜3重量部である。0.05重量部未満では加熱成形
時の分子量低下の防止効果が小さすぎ、一方3重量部よ
り多い場合は着色の問題が起ることになる。
【0045】本発明においては、脂肪族ポリエステル
(A)または(E)と酸化防止剤(B)からなる組成物
に、さらに着色防止剤(C)としてリン化合物を配合
。着色防止剤(C)として用いられる無機および有機
のリン化合物としては、例えば次の種類があげられる。 ()亜リン酸 単独、または他のリン化合物と併用し、最も強力な色相
安定効果、並びに酸化分解防止的な働きが認められる。 ()亜リン酸の有機エステル類 例えばジブチル水素ホスファイトが市販され、本発明に
利用可能である。トリフェニルホスファイトも量を加え
れば効果があり、0.1〜0.5%添加で有用である
が、ポリエステルの特性を低下させる傾向もある。
【0046】ポリオレフィンなどでは無機リン化合物を
そのまま用いると、混和性の点で均一混合に難点がある
が、脂肪族ポリエステルではリン化合物に含まれる水分
に注意を払えば、そのままでも高温混合が可能である。
リン化合物の中では亜リン酸が優れた効果を示し、本発
明の目的には十分であることから、これを中心に本発明
を記述する。
【0047】本発明の方法に利用するリン化合物の添加
量は、生成する脂肪族ポリエステル100重量部に対し
て0.01〜3重量部である。亜リン酸に関していえ
ば、0.01〜0.5重量部、望ましくは0.01〜
0.3重量部である。0.01重量部未満では着色防止
作用が現れ難く、3重量部より多く加えても特に効果が
増大することはない。亜リン酸であれば0.3重量部以
上加えても効果の増加は認められない。亜リン酸を始め
とするリン化合物は150℃以上250℃以下の温度で
加えられる。
【0048】また、本発明においては、脂肪族ポリエス
テル(A)または(E)と酸化防止剤(B)からなる組成
物に、さらに滑剤(D)を配合してもよい。本発明に用い
られる滑剤(D)は、反応器からの製品の排出を良好に
し、成形加工時に作用して成形品の肌荒れを防止すると
共に、金型からの離型性を向上させるものである。
【0049】本発明に使用できる滑剤(D)は、金属石鹸
系滑剤、例えば、炭素数10個以上の脂肪酸の金属塩、
好ましくはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜
鉛、ステアリン酸スズなどである。また、脂肪族炭化水
素系滑剤としては、炭素数16個以上のパラフィン(流
動、天然、合成)、ポリオレフィンワックスおよびこれ
らの部分酸化物、あるいはフッ化物または塩化物などで
ある。高級脂肪酸系滑剤としては炭素数16個以上の天
然油脂からの分離精製品、例えばヤシ油、大豆油、ナタ
ネ油、米ぬかワックスからの分離精製品、一部ウレタン
ワックスなどである。また、上記の高級脂肪酸のアマイ
ドおよびビスアマイド系の滑剤も使用できる。また、脂
肪酸エステル系滑剤および複合滑剤も使用できる。
【0050】滑剤(D)の使用量は、脂肪族ポリエステル
(A)または(E)100重量部に対して0.05〜0.
5重量部である。0.05重量部未満では効果がなく、
一方0.5重量部より多い場合は成形品表面への滲み出
しが起り好ましくない。本発明では、ステアリン酸カル
シウムまたはステアリン酸亜鉛を0.1〜0.2重量部
を使用することが好ましい。着色防止剤(C)と滑剤
(D)は、上記範囲内で脂肪族ポリエステル(A)また
は(E)と酸化防止剤(B)からなる組成物に併用添加
してもよい。
【0051】本発明の脂肪族ポリエステル組成物は、脂
肪族ポリエステル(A)および(E)が反応器中で合成され
た際に、酸化防止剤(B)、必要に応じてさらに着色防
止剤(C)および/または滑剤(D)を150〜250
℃の温度で、同時に、または逐次に投入混合して得るこ
とができる。または、脂肪族ポリエステル(A)および
(E)を反応器から排出・固化して後に、上記添加剤を
ニーダールーダー内で150〜200℃にて熔融混合
し、エクストルーダーで押出してペレット化して得るこ
ともできる。
【0052】
【作用】本発明における酸化防止剤(B)は、熔融状態で
空気酸化または機械シェアーで発生するラジカルを補足
してポリマーの分子量低下を防止する。リン系着色防止
剤(C)は、加熱熔融時のポリエステルの着色を防止する
作用を有する。特に、カップリング剤の多官能イソシア
ナートによる黄変防止に効果がある。滑剤(D)は、ポリ
マー間の摩擦を少なくし、必要以上の摩擦熱の発生を防
止するという内部滑性としての作用と、ポリマーと金属
表面の滑りを良くするという外部滑性とにより、成形品
の肌荒れを防止するという作用を有する。
【0053】
【実施例】次に本発明の理解を助けるために、以下に実
施例を示す。なお、メルトフローレート(MFR)の測定
はJIS法K7210−1976のA法操作(手動切取
り法)の条件4(試験温度190℃、試験荷重2.16k
g、ポリエチレンおよびポリプロピレンなど用)に従っ
た。測定試料は、ペレットまたは切断小片を、予め90
℃の真空下で数時間乾燥したものを使用した。数平均分
子量の測定は、次のようにGPC法によった。 使用機種:Shodex GPC SYSTEM-11(昭和電工社製) 溶離液 :HFIP(ヘキサフロロイソプロパノール)/5mM
CF3COONa サンプルカラム :HFIP-800PおよびHFIP-80M×2本 リファレンスカラム:HPIP-800R×2本 ポリマー溶液 :0.1wt%、200μl 操作条件:液流量 1.0ml/分、カラム温度40℃、圧力30
kg/cm2 検出器 :Shodex RI 分子量スタンダード:PMMA(Shodex STANDARD M-75)
【0054】実施例1ポリエステル(A1)の製造 撹拌機、分溜コンデンサー、温度計を付した70Lの反
応器を窒素置換してから、1,4−ブタンジオール1
7.8kg、コハク酸22.2kgを仕込んだ。窒素気流中に
おいて昇温を行い、140〜200℃にて5時間、更に
窒素を停止して20〜2mmHgの減圧下に1.5時間にわ
たり脱水縮合によるエステル化反応を行った。採取され
た試料は、酸価が10.4mg/g、数平均分子量(M
n)が4,900、また重量平均分子量(Mw)が11,
200であった。引続いて、常圧の窒素気流下に触媒の
テトライソプロポキシチタン3.4gを添加した。温度
を上昇させ、温度215〜220℃で15〜0.2mmHg
の減圧下に6.0時間、脱グリコール反応を行った。採
取された試料は数平均分子量(Mn)が16,100、
また重量平均分子量(Mw)が44,100であった。
このポリエステル(a1)は凝縮水を除くと理論収量は3
3.9kgであった。
【0055】反応器の温度を170℃に冷却し、ポリエ
ステル(a1)を窒素下に金属トレー上に排出した。裁
断して後に90℃で6時間、真空乾燥した後のポリエス
テル(a1)の収量は30kgであった。このポリエステ
ル(a1)は、僅かにアイボリー調の白色ワックス状結
晶で、DSC法により測定した融点が110℃、数平均
分子量(Mn)が15,400、重量平均分子量(M
w)が38,600、密度は1.2g/cm2であった。
【0056】ポリエステル(a1)100重量部に対し
ヘキサメチレンジイソシアナート1.5重量部を加えて
笠松化工研究所製の35mmφニーダールーダーにてペレ
ット化をした。ニーダー温度180〜195℃、スクリ
ュー温度180〜200℃であった。得られたポリエス
テル(A1)は、数平均分子量(Mn)42,000、重量
平均分子量(Mw)205,900であった。
【0057】酸化防止剤(B)の配合試験 酸化防止剤を、ポリエステル(A1)100重量部当り
1重量部になるようにアセトンに溶解し、この溶液にペ
レット(A1)を浸漬した。ドラフト内でアセトンを揮
発させて後、ペレットを90℃、6時間真空乾燥し、J
IS法にてメルトフローレート(MFR,g/10分)の
経時変化を測定した。結果を表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】酸化防止剤により230℃の加熱熔融時に
おける分子量低下に基づくMFRの上昇が抑制された。
また、フォスファイトを併用したIRGANOX B2
15およびB225は着色度が少なく好ましかった。な
お、190℃、2.16kgのMFRは、酸化防止剤なし
が0.08g/10分、IRGANOX B215含有
物が0.02g/10分(6分後)で後者が良かった
が、留出物はややメルトフラクチャー(肌荒れ)気味であ
った。
【0060】ポリエステル(A1)を100重量部、I
RGANOX B215を0.3重量部、ステアリル酸
カルシウム0.3重量部にてニーダールーダーでペレッ
ト化した。ニーダーの羽根への樹脂の付着が少なく、ペ
レット化が順調であった。190℃、2.16kgのMF
Rは、0.06g/10分(6分後)であり、メルトフ
ラクチャーはなかった。
【0061】実施例2ポリエステル(A2)の製造 70Lの反応器を窒素置換してから、1,4−ブタンジ
オール19.0kg、無水コハク酸18.1kg、アジピン
酸2.9kgを仕込んだ。窒素気流下に昇温を行い、19
0〜210℃にて3.5時間、さらに窒素を停止して2
0〜2mmHgの減圧下にて3.5時間にわたり脱水縮合に
よるエステル化反応を行った。採取された試料は、酸価
が12.7mg/g、数平均分子量(Mn)が4,50
0、また重量平均分子量(Mw)が8,500であっ
た。引続いて、常圧の窒素気流下に触媒のテトライソプ
ロポキシチタン2.0gを添加した。温度を上昇させ、
温度210〜220℃で15〜0.2mmHgの減圧下にて
8.0時間、脱グリコール反応を行った。採取された試
料は数平均分子量(Mn)が19,800、また重量平
均分子量(Mw)が52,500であった。このポリエ
ステル(a2)は、凝縮水を除くと理論収量は32.8
kgであった。
【0062】ポリエステル(a2)32.8kgを含む反応
器に、酸化防止剤(B)としてIRGANOX 1010
(チバガイギー社製)を98g(0.3重量部)、着色
防止剤(C)として亜リン酸8.2g(0.025重量部)お
よび滑剤(D)としてステアリン酸カルシウムを98g
(0.3重量部)を加えて30分間撹拌を続けた。さら
に、ヘキサメチレンジイソシアナート305g(0.93
重量部)を添加し、160〜170℃で2時間カップリ
ング反応を行った。粘度は急速に増大したが、ゲル化は
生じなかった。引続いて、反応生成物をその温度で反応
器から排出し、4時間にわたってニーダールーダーを経
由して水冷ペレット化をした。90℃で6時間、真空乾
燥した後のポリエステル(A2)の収量は27kgであっ
た。
【0063】得られたポリエステル(A2)は、純白色結
晶で、融点が103℃、表3のように数平均分子量(M
n)が35,000〜40,000、重量平均分子量(M
w)が140,000〜180,000、MFR(190
℃,g/10分)は6〜8g/10分と4時間にわたって
極めて安定であった。
【0064】
【表3】
【0065】実施例3ポリエステル(A3)の製造 70Lの反応器を窒素置換してから、エチレングリコー
ル14.7kg、無水コハク酸21.5kgを仕込んだ。窒
素気流下に昇温を行い、150〜190℃にて3.5時
間、さらに窒素を停止し、195℃にて20〜2mmHgの
減圧下にて3.0時間にわたり脱水縮合によるエステル
化反応を行った。採取された試料は、酸価が23.9mg/
g、数平均分子量(Mn)が3,500、また重量平均分子
量(Mw)が11,400であった。引続いて、常圧の窒
素気流下に触媒のテトライソプロポキシチタン3.6gを
添加した。温度を上昇させ、温度210〜220℃で1
5〜0.4mmHgの減圧下にて15時間、脱グリコール反
応を行った。採取された試料は数平均分子量(Mn)が3
0,800、また重量平均分子量(Mw)が62,900で
あった。このポリエステル(a3)は凝縮水を除くと理
論収量は36.2kgであった。
【0066】このポリエステル(a3)に、酸化防止剤
(B)としてIRGANOX 1010(チバガイギー
社製)を109g(0.3重量部)、着色防止剤(C)
として亜リン酸9.1g(0.025重量部)および滑
剤(D)としてステアリン酸亜鉛109g(0.3重量
部)を加えて、30分間撹拌を続けた。さらに、ヘキサ
メチレンジイソシアナート724g(2.0重量部)を
添加し、170〜180℃で2時間カップリング反応を
行った。引続いて、反応生成物をその温度で反応器から
排出し、約4時間にわたってニーダールーダーを経由し
て水冷方式でペレット化した。90℃で6時間、真空乾
燥した後のポリエステル(A3)の収量は31kgであっ
た。
【0067】得られたポリエステル(A3)は、僅かに
アイボリー調の白色ワックス状結晶で、融点が96℃、
数平均分子量(Mn)が43,000〜75,000、
重量平均分子量(Mw)が143,000〜179,0
00、MFR(190℃)は0.02〜0.2g/10分
であり、反応器からの排出時間4時間にわたり、安定で
あった。
【0068】実施例4 70Lの反応器を窒素置換してから、1,4−ブタンジ
オール18.3kgとコハク酸22.4kgを仕込んだ。窒
素気流下に温度を上昇して後、温度192〜220℃に
て3.5時間、さらに窒素を停止して20〜2mmHgの減
圧下に3.5時間にわたり、脱水縮合によるエステル化
反応を行った。採取されたサンプルは、酸価が9.0mg/
g、数平均分子量(Mn)が4,970、また重量平均分子
量(Mw)が9,560であった。
【0069】引続いて、常圧の窒素気流下に触媒のテト
ライソプロポキシチタン3.4g(ポリマー100重量部
に対して0.01重量部)を添加した。温度を215〜2
20℃にし、真空オイルポンプにて15〜0.2mmHgの
真空下に4.5時間、第1次の脱グリコール反応を行っ
た。採取されたサンプルは、数平均分子量(Mn)が1
8.400、また重量平均分子量(Mw)が47,100で
あった。さらに、この反応系を上記の温度で0.2mmHg
の真空度にしてから、ドイツ・リーチェリー社製真空ポ
ンプに切替えて0.02mmHgの高真空下に4時間、第2
次の脱グリコール反応を行った。このポリエステル(E
1)は、凝縮水の理論量6.8kgを除くと理論収量が3
3.9kgであったが、反応器から押出された収量は約3
0kgであった。
【0070】ポリエステル(E1)を100重量部、酸化
防止剤(B)としてIRGANOX1010を0.1重量
部、着色防止剤(C)して亜リン酸0.025重量部およ
び滑剤(D)としてステアリン酸カルシウム0.15部並
びにステアリン酸亜鉛0.15部を、170℃のニーダ
ールーダーに同時に投入し、水中冷却方式でペレット化
した。ポリエステル組成物は、白色で成形加工時の熱安
定性が良かった。90℃で、6時間真空乾燥して後、熔
融成形用の高分子量脂肪族ポリエステル組成物は下記の
基本物性を示した。
【0071】 MFR 1.1g/10分 JIS 法K7210 条件4(190℃、荷重2.16kgf) Mn 35,000 GPC 法(HFIPA溶媒、ポリメチルメタアクリレート換算) Mw 164,000 GPC 法(HFIPA溶媒、ポリメチルメタアクリレート換算) 融点 110 ℃ DSC 法(ピーク温度) 密度 1.26g/cm3 比重法(水中) 粘度 240ps/25℃ o−クロロフェノール 10%濃度
【0072】
【発明の効果】高分子量脂肪族ポリエステル(A)また
は(E)100重量部に、酸化防止剤(B)0.05〜
3重量部、必要に応じてさらにリン系着色防止剤(C)
0.01〜3重量部および/または滑剤(D)0.05
〜0.5重量部を混合することによって、汎用プラスチ
ックス成形機械で成形加工する際に、着色がなく、分子
量低下がなく、肌荒れのない成形品を得ることができ
る。
【0073】本発明による安定な脂肪族ポリエステル組
成物により実用上充分な条件で射出成形、中空成形、押
出成形が可能となった。また、使用後の廃棄に当り、土
中に埋没すればフィルムならば6ケ月後、成形品ならば
2〜3年後には元の状態をとどめないまでに崩壊する
し、かつ6,000cal/g以下の低発熱量であるので容
易に焼却することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブタンジオール−1,4およびコハク酸(BD
系)とエチレングリコールおよびコハク酸(EG系)か
らそれぞれ合成された脂肪族ポリエステル(A)の数平
均分子量(Mn)とメルトフローレート(MFR)の関
係を示す。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)脂肪族(環状脂肪族を含む)グリ
    コールと(2)脂肪族(環状脂肪族を含む)ジカルボン
    酸(またはその酸無水物)とを主成分とし、(3)三価
    以上の多価アルコール、多価オキシカルボン酸(または
    その酸無水物)、または三価以上の多価カルボン酸(ま
    たはその酸無水物)0.1〜5モル(成分(2)100
    モルに対して)の存在下または非存在下に脱水反応およ
    び脱グリコール反応させて得られるヒドロキシル基末端
    を有する脂肪族ポリエステルポリオール100重量部
    に、さらに多官能イソシアネート0.5〜3重量部を反
    応させて得られる数平均分子量10,000以上の脂肪
    族ポリエステル(A)100重量部に対し、酸化防止剤
    (B)0.05〜3重量部、および着色防止剤(C)と
    して亜リン酸および亜リン酸の有機エステル類からなる
    群から選ばれた、少なくとも一種のリン化合物0.01
    〜3重量部を含む、熔融成形時に安定な脂肪族ポリエス
    テル組成物。
  2. 【請求項2】 金属石鹸、脂肪族炭化水素、高級脂肪族
    酸、脂肪族アマイドおよび脂肪族エステルから選ばれ
    た、少なくとも一種の滑剤(D)0.05〜0.5重量
    部をさらに含む請求項1に記載の安定な脂肪族ポリエス
    テル組成物。
  3. 【請求項3】 脂肪族ポリエステル(A)が、(1)脂
    肪族(環状脂肪族を含む)グリコールと(2)脂肪族
    (環状脂肪族を含む)ジカルボン酸(またはその酸無水
    物)とを主成分とし、(3)三価以上の多価アルコー
    ル、多価オキシカルボン酸(またはその酸無水物)、ま
    たは三価以上の多価カルボン酸(またはその酸無水物)
    0.1〜5モル(成分(2)100モルに対して)の存
    在下または非存在下にエステル化反応を行い、生成した
    ポリエステルポリオールを触媒の存在下180〜230
    ℃の温度および0.005〜0.1mmHgの高真空下で
    脱グリコール反応を行って製造される次の一般式(E) 【化1】 (mは、上記式のポリエステルの数平均分子量が25,
    000〜70,000となるのに必要な重合度、R1
    よびR2は炭素数2〜10のアルキレン基である。但
    し、一般式(E)において、少量の上記(3)成分が存
    在する場合には、分岐もあり得る。)で表され、メルト
    フローレート(JIS法、190℃、荷重2.16kg)
    が0.01〜100g/10分である脂肪族ポリエステ
    ル(E)である請求項1または2に記載の安定な脂肪族
    ポリエステル組成物。
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