JP2936479B1 - 単結晶SiCの育成方法及びその装置 - Google Patents
単結晶SiCの育成方法及びその装置Info
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Abstract
による結晶欠陥やマイクロパイプ欠陥等の発生がなく、
非常に高品質、高性能で、かつ、大型の単結晶SiCを
生産性よく育成することができるようにする。 【解決手段】 α−SiC単結晶基板1とその表面に熱
CVD法により成膜されたβ−SiC多結晶板2とから
なる複合体3を挟み込み保持可能な一対の熱盤4,5の
加熱温度を高周波誘導加熱コイル6,7を介して各別に
制御しつつ、不活性ガス雰囲気中で、かつ、SiC飽和
蒸気雰囲気下で熱処理することによって、β−SiC多
結晶板2のSi原子及びC原子を分解拡散させ、かつ、
それら原子をα−SiC単結晶基板1の表面で再配列さ
せて該α−SiC単結晶基板1の結晶方位に倣った単結
晶を一体に育成する。
Description
成方法及びその装置に関するもので、詳しくは、発光ダ
イオードやX線光学素子、高温半導体電子素子の基板ウ
エハなどとして用いられる単結晶SiCの育成方法及び
育成装置に関するものである。
械的強度に優れているだけでなく、放射線にも強く、さ
らに不純物の添加によって電子や正孔の価電子制御が容
易である上、広い禁制帯幅を持つ(因みに、6H型のS
iC単結晶で約3.0eV、4H型のSiC単結晶で
3.26eV)ために、Si(シリコン)やGaAs
(ガリウムヒ素)などの既存の半導体材料では実現する
ことができない高温、高周波、耐電圧、耐環境性を実現
することが可能で、次世代のパワーデバイス用半導体材
料として注目され、かつ期待されている。
従来、黒鉛るつぼ内の低温側に種結晶を固定配置し、高
温側に原料となるSiC粉体を挿入配置して黒鉛るつぼ
内を不活性雰囲気中で2100〜2400℃まで加熱す
ることによって、上記SiC粉体から昇華したSiCガ
スを閉鎖空間内で拡散輸送させて低温に設定されている
種結晶の表面上で再結晶させて単結晶の育成を行なうを
る昇華再結晶法(改良レーリー法)や、アチソン法ある
いは昇華法によって得られたSiC基板上に、1850
℃以上の基板温度で化学気相成長法(CVD法)を用い
てエピタキシャル成長させることにより立方晶のSiC
単結晶(β−SiC)を育成させる高温CVDエピタキ
シャル法等が知られている。
た従来の製造方法のうち、昇華再結晶法(改良レーリー
法)にあっては、単結晶の大形化に困難を伴うばかりで
なく、結晶成長の過程で黒鉛るつぼ内の種結晶周辺の環
境が変化するために、不純物等が混入しやすくて高純度
雰囲気及び種結晶側と原料のSiC粉体側との所定の温
度差を保つことが困難であり、混入した不純物や熱に起
因する歪みの影響で結晶欠陥やマイクロパイプ欠陥等が
発生しやすく、性能的にも品質的にも安定した単結晶が
得られないという問題がある。また、高温CVDエピタ
キシャル法は、基板温度が高いために再蒸発量も多く、
高純度の還元性雰囲気を作ることも必要で設備的に非常
に困難であり、さらに、エピタキシャル成長のため結晶
成長速度にも自ずと限界があって、単結晶SiCの生産
性が低く、生産コストが非常に高価なものになるという
問題があり、このことが既述のようにSiやGaAsな
どの既存の半導体材料に比べて多くの優れた特徴を有し
ながらも、その実用化を阻止する要因になっている。
で、成長過程での不純物の混入及び熱歪みの影響による
結晶欠陥やマイクロパイプ欠陥等の発生がなく、非常に
高品質高性能で、かつ、大型の単結晶SiCを生産性よ
く育成することができ、半導体材料としての実用化を促
進できる単結晶SiCの育成方法及びその装置を提供す
ることを目的としている。
に、請求項1に記載の発明に係る単結晶SiCの育成方
法は、一対の熱盤間に、SiC単結晶基板とSi原子及
びC原子により構成された多結晶板とを積層してなる複
合体を挟み込み保持させるとともに、不活性ガス雰囲気
中で、かつ、SiC飽和蒸気雰囲気下で上記一対の熱盤
の加熱温度を上記多結晶板側が高温、SiC単結晶基板
側が低温となるように各別に制御することにより、上記
多結晶板のSi原子及びC原子を上記SiC単結晶基板
の表面で再配列させてSiC単結晶基板の結晶方位に倣
った単結晶を一体に育成させることを特徴とするもので
あり、また、請求項4に記載の発明に係る単結晶SiC
の育成装置は、SiC単結晶基板とSi原子及びC原子
により構成された多結晶板とを積層してなる複合体を挟
み込み保持可能な一対の熱盤と、これら一対の熱盤の加
熱温度を各別に制御可能な高周波誘導加熱コイルとを備
え、上記一対の熱盤間に複合体を挟み込み保持させると
ともに、不活性ガス雰囲気中で、かつ、SiC飽和蒸気
雰囲気下で、高周波誘導加熱コイルを介して一対の熱盤
の加熱温度を多結晶板側が高温、SiC単結晶基板側が
低温となるように制御することによって上記多結晶板の
Si原子及びC原子を上記SiC単結晶基板の表面で再
配列させてSiC単結晶基板の結晶方位に倣った単結晶
を一体に育成可能に構成したことを特徴とするものであ
る。
び請求項4に記載の発明によれば、SiC単結晶基板と
Si原子及びC原子により構成された多結晶板とを積層
してなる複合体を挟み込み保持する一対の熱盤の加熱温
度を各別に制御することによって、基板側と多結晶板側
との間で必要な温度差の確保や結晶成長過程で周辺環境
温度が変化したときの温度コントロールなど所定の単結
晶育成にとって最も重要不可欠な要素となる温度条件を
容易に、かつ、微細に調整し保持することが可能であ
り、これによって、周辺環境温度の変化や多結晶板及び
SiC単結晶基板の性状のばらつきにかかわらず、両者
の界面をSi原子及びC原子の分解拡散並びにそれら原
子のSiC単結晶基板表面での再配列による単結晶化に
適した温度状態に維持して熱変化に起因する歪みの影響
でマイクロパイプ欠陥が生じることを防止できる。ま
た、SiC飽和蒸気雰囲気下での熱処理によって、Si
の外部放出によるやせ細り及び周辺雰囲気から界面への
不純物の混入も防止して不純物の混入に起因する結晶欠
陥等の発生もなくすることができ、これによって、高純
度、高品質で、かつ、量的にも大型の単結晶を安定よく
育成させることが可能である。
iCの育成方法において、多結晶板としては、請求項2
に記載のように、SiC多結晶板、SiCアモルファス
もしくは高純度SiC焼結体のいずれを使用してもよい
が、そのうち特に、請求項3に記載のように、SiC単
結晶基板表面への熱化学的蒸着法(以下、熱CVD法と
称する)により板状に成膜されたものを使用する場合
は、多結晶板自体が不純物の少ない高純度なものである
ことから、界面に結晶粒界などが形成されず、より高純
度、高品質な単結晶SiCを得ることができる。
結晶SiCの育成装置において、一対の熱盤の構成材料
としては、単結晶化のための加熱温度(2100〜23
00℃)に十分に耐える耐熱温度の高い材料、例えば焼
結カーボンやセラミックスなどが考えられるが、特に、
請求項5に記載のように、焼結カーボンから構成する場
合は、材料コストが安い上に製作も容易で、装置全体の
低廉化が図れる。
にもとづいて説明する。図1は本発明に係る単結晶Si
Cの育成に際して使用される複合体3の説明図であり、
この実施の形態では、SiC単結晶基板として、アチソ
ン法により作られたα−SiC単結晶塊(図示省略)か
ら切り出された平板状の六方晶系(6H型)のα−Si
C単結晶基板1を使用し、このα−SiC単結晶基板1
のC軸方向の(0001)面1a上に、熱CVD法によ
り約1mm厚さのβ−SiC多結晶板2を成膜し、その
β−SiC多結晶板2の表面2aを表面粗度3S程度に
平らに研削したものである。
置を示す概略構成図であり、この育成装置10は、上記
図1に示すような複合体3を挟み込み保持可能で、その
挟み込み状態でβ−SiC多結晶板2の平らな表面(上
面)2a及びα−SiC単結晶基板1の裏面(下面)1
bに密着可能な平滑面4a,5a及び外方へ突出する円
柱状部4b,5bを有する上下一対の熱盤4,5と、こ
れら一対の熱盤4,5における突出円柱状部4b,5b
の外周面に螺旋状に巻回され高周波電源11,12に接
続されて高周波電力の通電量調整によって一対の熱盤
4,5の加熱温度を各別に制御可能とされた高周波誘導
加熱コイル6,7とを備えている。
ける一対の熱盤4,5間に、上記複合体3の複数個(図
2では2個の複合体3で示すが、単数であっても、3個
以上であってもよい)を、α−SiC単結晶基板1が下
部の熱盤5側に位置するように挟み込み保持させるとと
もに、複合体3の周囲に小豆ぐらいの大きさのSiC塊
8…を取り囲み配置する。なお、上記一対の熱盤4,5
間の外周部はSiC等の耐熱性の壁材9で囲繞されてお
り、この壁材9と一対の熱盤4,5とにより単結晶育成
空間Sが構成されている。
育成空間S内に注入するとともに、高周波誘導加熱コイ
ル6,7への高周波電力の通電に伴う高周波誘導加熱に
よって上部の熱盤4が2200℃、下部の熱盤5が21
50℃で、α−SiC単結晶基板1とβ−SiC多結晶
板2との間に約50℃の温度差がつくように1時間かけ
て平均速度で昇温させ、かつ、その加熱温度で2時間程
度保持させた後、放冷させるといったように、不活性ガ
ス雰囲気中で、かつ、SiC飽和蒸気雰囲気下で熱処理
を施すことにより、β−SiC多結晶板2からSi原子
及びC原子を分解拡散させるとともに、それら拡散した
Si原子及びC原子を低温側のα−SiC単結晶基板1
の表面で該α−SiC単結晶基板1の結晶方位に倣って
再配列させて図3に示すように、β−SiC多結晶板2
の存在箇所にα−SiC単結晶基板1の単結晶部分1´
と一体化されたα−6H−SiC単結晶部分2´を育成
し、所定の単結晶SiC(製品)13を得ることができ
る。
7への高周波電力の通電量調整に伴い複合体3を挟み込
み保持する一対の熱盤4,5の加熱温度を各別に制御す
ることによって、α−SiC単結晶基板1とβ−SiC
多結晶板2との間に約50℃程度の温度差を確保し、か
つ、結晶成長過程で周辺環境温度が変化したときも同様
にそれぞれの加熱温度を各別にコントロールすることに
よって、周辺環境温度の変化やβ−SiC多結晶板2及
びα−SiC単結晶基板1の性状のばらつきにかかわら
ず、両者の界面をSi原子及びC原子の分解拡散並びに
それら原子のα−SiC単結晶基板1表面での再配列に
適した温度状態に維持することが可能である。また、複
合体3の周囲に小豆ぐらいの大きさのSiC塊8…を取
り囲み配置してSiCの飽和蒸気雰囲気下で熱処理する
ことにより、α−SiC単結晶基板1及びβ−SiC多
結晶板3からのSiの放出が抑制されて、α−SiC単
結晶基板1及びβ−SiC多結晶板3のやせ細りが防止
されると共に、雰囲気から界面への不純物の混入も防止
されるので、結晶成長の途中で、その中に取り込まれる
不純物や熱に起因する歪みによってマイクロパイプ欠陥
や格子欠陥等が発生することもなくなり、高純度、高品
質で、かつ、量的にも安定した大型の単結晶を効率よく
育成することが可能である。
盤4,5間に複数個の複合体3を挟み込み保持させて複
数の単結晶育成を同時に行なうことによって、所定の単
結晶育成による単結晶SiC(製品)の生産性向上を図
ることができる。
C単結晶基板1として6H型のものを用いたが、4H型
のものを使用してもよい。
C原子により構成される多結晶板として、熱CVD法に
より成膜されるβ−SiC多結晶板3を用いたもので説
明したが、これに代えて、高純度(1014atm /cm3
以下)のSiCアモルファス板、高純度SiC焼結体を
熱CVD法による成膜手段でなく、単なる積層手段で使
用しても、上記と同様な高純度、高品質の単結晶SiC
を得ることが可能である。
記載の発明によれば、SiC単結晶基板と多結晶板とを
積層してなる複合体を挟み込み保持する一対の熱盤の加
熱温度を各別に制御することにより、基板側と多結晶板
側との間で必要な温度差を確保できるとともに、結晶成
長過程で周辺環境温度が変化したときも自在に温度コン
トロールすることができるといったように、所定の単結
晶育成にとって最も重要不可欠な要素となる温度条件を
容易に、かつ、微細に調整し保持することができる。そ
の上、SiC飽和蒸気雰囲気下での熱処理によって、S
iの外部放出によるやせ細り及び周辺雰囲気から界面へ
の不純物の混入も防止することができる。したがって、
周辺環境温度の変化や多結晶板及びSiC単結晶基板の
性状のばらつきにかかわらず、両者の界面をSi原子及
びC原子の分解拡散並びにそれら原子のSiC単結晶基
板表面での再配列による単結晶化に適した温度状態に維
持して熱変化や不純物の混入に起因する歪みの影響でマ
イクロパイプ欠陥や結晶欠陥等を生じることもなく、高
純度、高品質で、かつ、量的にも大型の単結晶を生産性
よく育成させることができ、これによって、Si(シリ
コン)やGaAs(ガリウムヒ素)などの既存の半導体
材料に比べて高温、高周波、耐電圧、耐環境性に優れパ
ワーデバイス用半導体材料として期待されている単結晶
SiCの実用化を促進することができるという効果を奏
する。
表面への熱CVD法により板状に成膜されたものを使用
する場合は、多結晶板自体が不純物の少ない高純度なも
のであることから、界面に結晶粒界などが形成されず、
単結晶SiCの純度及び品質を一層向上することができ
る。
対の熱盤の構成材料として、焼結カーボンを使用する場
合は、材料コストが安い上に熱盤の製作も容易で、装置
全体の低廉化が図ることができる。
れる複合体の説明図である。
成図である。
育成された単結晶SiCを示す模式図である。
される板材の一例) 3 複合体 4,5 熱盤 6,7 高周波誘導加熱コイル 10 単結晶SiCの育成装置
Claims (5)
- 【請求項1】 一対の熱盤間に、SiC単結晶基板とS
i原子及びC原子により構成された多結晶板とを積層し
てなる複合体を挟み込み保持させるとともに、不活性ガ
ス雰囲気中で、かつ、SiC飽和蒸気雰囲気下で上記一
対の熱盤の加熱温度を上記多結晶板側が高温、SiC単
結晶基板側が低温となるように各別に制御することによ
り、上記多結晶板のSi原子及びC原子を上記SiC単
結晶基板の表面で再配列させてSiC単結晶基板の結晶
方位に倣った単結晶を一体に育成させることを特徴とす
る単結晶SiCの育成方法。 - 【請求項2】 上記多結晶板として、SiC多結晶板、
SiCアモルファスもしくは高純度SiC焼結体の中か
ら選択された一種を使用する請求項1に記載の単結晶S
iCの育成方法。 - 【請求項3】 上記SiC多結晶板が、SiC単結晶基
板表面への熱化学的蒸着法により板状に成膜されたもの
である請求項2に記載の単結晶SiCの育成方法。 - 【請求項4】 SiC単結晶基板とSi原子及びC原子
により構成された多結晶板とを積層してなる複合体を挟
み込み保持可能な一対の熱盤と、 これら一対の熱盤の加熱温度を各別に制御可能な高周波
誘導加熱コイルとを備え、 上記一対の熱盤間に複合体を挟み込み保持させるととも
に、不活性ガス雰囲気中で、かつ、SiC飽和蒸気雰囲
気下で、高周波誘導加熱コイルを介して一対の熱盤の加
熱温度を多結晶板側が高温、SiC単結晶基板側が低温
となるように制御することによって上記多結晶板のSi
原子及びC原子を上記SiC単結晶基板の表面で再配列
させてSiC単結晶基板の結晶方位に倣った単結晶を一
体に育成可能に構成したことを特徴とする単結晶SiC
の育成装置。 - 【請求項5】 上記一対の熱盤が、焼結カーボンから構
成されている請求項4に記載の単結晶SiCの育成装
置。
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