JP3087030B2 - SiC複合体およびその製造方法ならびに単結晶SiC - Google Patents

SiC複合体およびその製造方法ならびに単結晶SiC

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JP3087030B2 JP24741997A JP24741997A JP3087030B2 JP 3087030 B2 JP3087030 B2 JP 3087030B2 JP 24741997 A JP24741997 A JP 24741997A JP 24741997 A JP24741997 A JP 24741997A JP 3087030 B2 JP3087030 B2 JP 3087030B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、SiC複合体およ
びその製造方法ならびに単結晶SiCに関するもので、
詳しくは、発光ダイオードやULSI(ウルトラ・ラー
ジスケール・インテグレッド・サーキット)、整流素
子、スイッチング素子、増幅素子、光センサーなどの高
温半導体電子素子の基板ウエハなどとして用いられるS
iC複合体およびその製造方法ならびに単結晶SiCに
関するものである。
【0002】
【従来の技術】SiC(炭化珪素)の単結晶体は、耐熱
性および機械的強度に優れているだけでなく、不純物の
添加によって電子や正孔の価電子制御が容易である上、
広い禁制帯幅を持つ(因みに、6H型のSiC単結晶で
約3.0eV、4H型のSiC単結晶で3.26eV)
ために、Si(シリコン)やGaAs(ガリウムヒ素)
などの既存の半導体材料では得ることができない優れた
高温特性、高周波特性、耐圧特性、耐環境特性を実現す
ることが可能で、次世代のパワーデバイス用半導体材料
として注目され、かつ期待されている。
【0003】ところで、この種のSiC単結晶の成長
(製造)方法として、従来では、種結晶を用いた昇華再
結晶法によってSiC単結晶を成長させる方法や、高温
度での場合はシリコン基板上に化学気相成長法(CVD
法)を用いてエピタキシャル成長させることにより立方
晶のSiC単結晶(β−SiC)を成長させる方法など
が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来の製造方法は共に結晶成長速度が1μm/hr.
と非常に低いだけでなく、昇華再結晶法によって得られ
たSiC単結晶にあっては、多くの欠陥が存在し品質面
で十分満足できるものでない。特に、マイクロパイプ欠
陥と呼ばれ半導体電子素子を作製した際の漏れ電流等の
致命的な欠点となる結晶の成長方向に貫通する直径数ミ
クロンのピンホールが100〜1000/cm2 程度成
長結晶中に多数存在するという問題があり、このことが
既述のようにSiやGaAsなどの既存の半導体材料に
比べて多くの優れた特徴を有しながらも、その実用化を
阻止する要因になっている。
【0005】また、高温CVD法の場合は、基板温度が
1700〜1900℃と高い上に、高純度の還元性雰囲
気を作ることが必要であって、設備的に非常に困難であ
り、さらに、エピタキシャル成長のため成長速度にも自
ずと限界があるという問題があった。
【0006】本発明は上記実情に鑑みてなされたもの
で、結晶成長条件を均一化してマイクロパイプ欠陥およ
び結晶粒界が殆ど存在しない単結晶体を効率よく成長さ
せることができるSiC複合体およびその製造方法なら
びに単結晶SiCを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明に係るSiC複合体は、α−S
iC単結晶基材の表面に減圧熱化学的蒸着法でβ−Si
C層を形成してなるSiC複合体であって、上記β−S
iC層は多結晶体からなっていて上記α−SiC単結晶
基材との境界面がミラー指数(111)または(22
0)の高結晶配向膜に形成されていることを特徴とする
ものである。
【0008】上記構成の請求項1記載の発明によれば、
α−SiC単結晶基材の表面に減圧熱化学的蒸着法で形
成された多結晶体であるβ−SiC層の上記α−SiC
単結晶基材との境界面がミラー指数(111)または
(220)の高結晶配向膜に形成されていることから、
その複合体の熱処理によりβ−SiC層の多結晶体がα
−SiCに転化されα−SiC単結晶体として成長して
いくときの起点となるα−SiC単結晶基材との境界面
での結晶成長条件がほぼ均一化されている。それゆえ
に、単結晶SiCの中間物質としてのSiC複合体は、
それを熱処理したとき、β−SiC層の多結晶体が上記
境界面の全域からほぼ一斉かつ急速にα−SiCに転化
されα−SiC単結晶体として成長されることになり、
結晶成長速度の不揃いによる歪や結晶粒界の残留がな
く、またマイクロパイプ欠陥の影響を受けない範囲にま
で単結晶体を大きく成長させることが可能となる。
【0009】ここで、上記高結晶配向膜としては、Si
Cのβ型結晶構造からα型単結晶への転化を容易にする
ために、ロッキング曲線が5°以内であることが望まし
い。ロッキング曲線が5°を越えると、転化の過程にお
いて結晶の成長方法の相違が大きくなり、α型単結晶に
良好に転化できない恐れがある。つまり、高品質の単結
晶に転化できない恐れがある。
【0010】また、請求項2記載の発明に係るSiC複
合体の製造方法は、α−SiC単結晶基材の表面に、反
応ガスおよびキャリアガスを用いて1350〜1500
℃の温度範囲で、かつ5Kpa〜12Kpaの圧力範囲
で熱化学的蒸着法(以下、熱CVD法という)でβ−S
iC層を形成して、該β−SiC層の上記α−SiC単
結晶基材との境界面をミラー指数(111)または(2
20)の高結晶配向膜にすることを特徴とするものであ
って、α−SiC単結晶基材との境界面に残留歪や結晶
粒界がなく、またマイクロパイプ欠陥が殆ど存在しない
高品質な単結晶SiCの中間物質としてのSiC複合体
を工業的規模で効率よくかつ安定に製造し供給すること
が可能である。
【0011】特に、上記請求項2記載のSiC複合体の
製造方法における製造条件として、請求項3記載のよう
に、上記反応ガスとして四塩化珪素ガス及び四塩化炭素
ガスを使用するとともに上記キャリアガスとして水素ガ
スを使用し、かつ、上記反応ガスとキャリアガスの混合
比率をモル比において20倍以上、好ましくは40倍以
上に設定することが望ましい。すなわち、反応ガスとキ
ャリアガスとの混合比率がモル比において20倍未満で
あると、SiC以外の反応生成物、つまり、分解ガス濃
度が大きくなり過ぎて水素ガスによる還元反応が不十分
となり、その反応生成物がSiC蒸着面に不純物として
付着し、上述したような境界面での均一かつ急速な結晶
成長条件が崩れることになる。
【0012】さらに、請求項4記載の発明に係る単結晶
SiCは、α−SiC単結晶基材の表面に減圧熱CVD
法でβ−SiC層を形成して該β−SiC層の上記α−
SiC単結晶基材との境界面をミラー指数(111)ま
たは(220)の高結晶配向膜に形成してなるSiC複
合体を熱処理することにより、上記β−SiC層の多結
晶体をα−SiCに転化させて上記α−SiC単結晶基
材の結晶軸と同方位の単結晶を成長させていることを特
徴とするものであり、請求項1記載の発明におけるSi
C複合体を単に熱処理するだけで、高品質の単結晶Si
Cを非常に容易かつ効率的に得るすることが可能であ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
にもとづいて説明する。図1は本発明に係る単結晶Si
Cの熱処理前の状態、すなわち、本発明に係るSiC複
合体の断面構造を示す模式図であり、同図において、1
は六方晶系(6H型、4H型)のα−SiC単結晶基材
で、その表面に減圧熱CVD法により立方晶系のβ−S
iC層2を厚さ400μmに成膜することにより、単結
晶SiCの中間物質としてのSiC複合体Mが作製され
ている。
【0014】上記SiC複合体Mの作製時における上記
β−SiC層2の減圧熱CVD法による成膜条件は、次
のとおりである。反応ガス:四塩化珪素ガス(SiCl
4 )および四塩化炭素ガス(CCl 4 )を使用する。 キャリアガス:水素ガス(H2 )を使用する。 反応ガスとキャリアガスの混合比率:モル比において2
0倍以上、好ましくは40倍以上に設定する。 温度:1400℃(1350〜1500℃の範囲)に設
定する。 圧力:10Kpa(5Kpa〜12Kpaの範囲)に設
定する。
【0015】上記のような成膜条件での減圧熱CVD法
によりα−SiC単結晶基材1の表面にβ−SiC層2
多結晶体を成膜することにより、図2の顕微鏡による
断面エッチング写真で明示されているように、β−Si
C層2の上記α−SiC単結晶基材1表面との境界面3
がミラー指数(111)または(220)の高結晶配向
膜に形成されたSiC複合体Mが作製される。
【0016】この後、上記複合体Mの全体を、カーボン
発熱体を用いた高温電気炉内に入れて1800〜240
0℃、好ましくは2000〜2200℃の範囲の温度
で、かつSiC飽和蒸気圧の雰囲気中で8時間に亘り熱
処理することにより、上記境界面3から固相エピタキシ
ャル成長を生じさせて図3の顕微鏡による断面エッチン
グ写真で明示されているように、上記β−SiC層2の
多結晶体4がα−SiCに転化されて該SiC層2に上
記α−SiC単結晶基材1の結晶軸と同方位に配向され
た単結晶5が基材1側の単結晶と一体化して育成され
る。
【0017】ここで、単結晶SiCの中間物質としての
上記SiC複合体Mにおける上記境界面3がミラー指数
(111)または(220)の高結晶配向膜に形成され
ているので、上記の熱処理に伴い上記β−SiC層2の
多結晶体4が上記境界面3の全域からほぼ一斉かつ急速
にα−SiCに転化されα−SiC単結晶5として成長
されることになる。これによって、結晶成長速度の不揃
いによる歪や結晶粒界の残留がなく、またマイクロパイ
プ欠陥の影響を受けない範囲にまでα−SiC単結晶5
を大きく成長させて結晶欠陥のない高品質の単結晶Si
Cが得られるのである。
【0018】因みに、本出願人は上記のようにして製造
された単結晶SiCの試料について、X線回折装置を用
いて結晶によるX線の回折を行ない、横軸を2θ、縦軸
を回折強度とする回折パターンを測定した。その結果、
CuKα線において2θが40〜70°間に等間隔で回
折強度の鋭いピークが認められた。これによって、上記
のように製造された試料は、残留結晶粒界やマイクロパ
イプなどの欠陥がなく、その構成原子が規則正しく並ん
でいる単結晶であることを確認できた。
【0019】なお、上記α−SiC単結晶基材1とし
て、6H型のものを使用するときは、熱処理に伴ってβ
−SiC層2の多結晶体からα−SiCに転化される単
結晶が6H型の単結晶と同じ形態で育成されやすく、ま
た、4H型の単結晶基材1を使用するときは、熱処理に
伴ってその4H型の単結晶と同じ形態の単結晶が転化育
成されやすいことになる。
【0020】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によ
れば、α−SiC単結晶基材の表面に減圧熱CVD法で
形成されたβ−SiC層の多結晶体が熱処理に伴いα−
SiCに転化されα−SiC単結晶体として成長してい
くときの起点となるα−SiC単結晶基材との境界面を
高配向膜にして結晶成長条件を境界面の全域に亘りほぼ
均一化しているので、単結晶SiCの中間物質としての
SiC複合体を熱処理したとき、β−SiC層の多結晶
体を上記境界面の全域からほぼ一斉にかつ急速にα−S
iCに転化しα−SiC単結晶体として成長させること
が可能であり、したがって、結晶成長速度の不揃いによ
る歪や結晶粒界の残留がないとともに、マイクロパイプ
欠陥の影響を受けない範囲にまで単結晶体を大きく成長
させて非常に高品質の単結晶SiCを得るための結晶成
長条件を備えたSiC複合体とすることができるという
効果を奏する。
【0021】また、請求項2記載の発明によれば、請求
項1記載の発明でいう高品質な単結晶SiCの中間物質
としてのSiC複合体を工業的規模で効率よくかつ安定
に製造し供給することができるという効果を奏し、特
に、請求項3記載のような製造条件の採用によって、S
iC以外の反応生成物がSiC蒸着面に不純物として付
着することもなくして、上述したような境界面での均一
かつ急速な結晶成長条件を確保することができる。
【0022】さらに、請求項4記載の発明によれば、請
求項1記載の発明におけるSiC複合体を単に熱処理す
るだけで、高品質の単結晶SiCを非常に容易かつ効率
的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るSiC複合体の断面構造を示す模
式図である。
【図2】本発明に係るSiC複合体の顕微鏡による断面
エッチング写真である。
【図3】本発明に係る単結晶SiCの顕微鏡による断面
エッチング写真である。
【符号の説明】
1 α−SiC単結晶基材 2 β−SiC層 3 境界面 4 多結晶体 5 単結晶 M SiC複合体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−290968(JP,A) 米国特許5200022(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 CA(STN) 特許ファイル(PATOLIS) EPAT(QUESTEL)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α−SiC単結晶基材の表面に減圧熱化
    学的蒸着法でβ−SiC層を形成してなるSiC複合体
    であって、 上記β−SiC層は多結晶体からなっていて上記α−S
    iC単結晶基材との境界面がミラー指数(111)また
    は(220)の高結晶配向膜に形成されていることを特
    徴とするSiC複合体。
  2. 【請求項2】 α−SiC単結晶基材の表面に、反応ガ
    スおよびキャリアガスを用いて1350〜1500℃の
    温度範囲で、かつ5Kpa〜12Kpaの圧力範囲で熱
    化学的蒸着法でβ−SiC層を形成して、該β−SiC
    層の上記α−SiC単結晶基材との境界面をミラー指数
    (111)または(220)の高結晶配向膜にすること
    を特徴とするSiC複合体の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記反応ガスとして四塩化珪素ガス及び
    四塩化炭素ガスを使用するとともに上記キャリアガスと
    して水素ガスを使用し、かつ、上記反応ガスとキャリア
    ガスの混合比率をモル比において20倍以上に設定して
    いる請求項2に記載のSiC複合体の製造方法。
  4. 【請求項4】 α−SiC単結晶基材の表面に減圧熱化
    学的蒸着法でβ−SiC層を形成して該β−SiC層の
    上記α−SiC単結晶基材との境界面をミラー指数(1
    11)または(220)の高結晶配向膜に形成してなる
    SiC複合体を熱処理することにより、上記β−SiC
    層の多結晶体をα−SiCに転化させて上記α−SiC
    単結晶基材の結晶軸と同方位の単結晶を成長させている
    ことを特徴とする単結晶SiC。
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JP4786782B2 (ja) * 1999-08-02 2011-10-05 東京エレクトロン株式会社 耐食性に優れたCVD−SiCおよびそれを用いた耐食性部材、ならびに処理装置
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