JP2924650B2 - 光ディスク及びその製造方法 - Google Patents

光ディスク及びその製造方法

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JP2924650B2 JP6186474A JP18647494A JP2924650B2 JP 2924650 B2 JP2924650 B2 JP 2924650B2 JP 6186474 A JP6186474 A JP 6186474A JP 18647494 A JP18647494 A JP 18647494A JP 2924650 B2 JP2924650 B2 JP 2924650B2
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  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学的に情報の再生が
可能な光ディスクに関し、特に高密度型光ディスクに関
する。
【0002】
【従来の技術】近年光ディスクの大容量化が検討され、
種々の提案が成されている。光ディスクの高密度記録に
於いては、記録時のレーザ光パワーを制御することによ
って、光スポット径よりも小さな記録マークを形成する
ことが可能であるが、その限界は、媒体の結晶粒径に依
存する分解能や、媒体の光強度に関する閾値、媒体の応
答速度等によって左右される。しかし、記録できる記録
マークの最小限界値は、再生可能な記録マークの最小限
界値に比較してはるかに小さい。
【0003】これは、光ディスクの再生時に、再生用レ
ーザ光(以下、再生用レーザ光を単に再生光とも記す)
をレンズで集光する時の光スポット径が光学理論で決定
される限界値を持つことに起因しており、従って光ディ
スクの高密度化は、いかに再生レーザ光のスポット径を
小さくするかにかかっている。再生可能な記録マーク
(ピット)の繰り返し波長の限界値は、再生用レーザ光
の波長をλ、前記レーザ光を集光する集光レンズの開口
数をNAとすると、λ/2NA で与えられる。
【0004】よって、より短い記録波長の記録マークを
識別して再生するためには、波長λの短い光で再生する
か開口数NAが大きなレンズを用いれば良いことが分か
る。しかし再生に用いる半導体レーザーの短波長化は技
術的に困難が多く、また開口数NAの大きなレンズを光
ディスク装置に組み込むことも容易ではない。これらの
方法とは別に、再生時に光スポットを実効的に小さくす
る方法が、「固体物理」VOL.26 NO.6 1991 P393〜P398
に記載されている。これは、レーザ光が集光されて光磁
気ディスク媒体に照射される時に、この光スポット内に
低温領域と高温領域とが発生することを利用するもの
で、前記高温部或いは低温部のみが読みだし可能になる
とするものである。そして結果的に光スポットの直径を
実質的に縮小する効果が得られるとされている。
【0005】しかしこの技術は、光磁気方式による書き
換え可能型光ディスク(以下、書き換え可能型光ディス
クをRAM型光ディスクとも記す)には適用出来るが、
再生専用型光ディスク(以下、再生専用型光ディスクを
ROM型光ディスクとも記す)には適用できないと言う
問題がある。これを解決するために、金属−非金属転移
を示す物質からなる金属−非金属転移層を、あらかじめ
情報が周回状に形成された透明基板上に設けて再生光ス
ポットの直径を実質的に縮小するようにした光ディスク
の発明が本出願人から出願されている(特願平5−29
900号)。この先願の光ディスクは、図2に示すよう
な構成となっており、2の金属−非金属転移を示す物質
としてはVO2 が用いられている。
【0006】図2は、先願の光ディスクの構成を示す断
面図である。図2に示すROM型(読みだし専用型)光
ディスク20は、透明基板1と、金属ー非金属転移層2
と、反射層3と、保護層4とをこの順に積層した構成の
光ディスクである。前記金属ー非金属転移層2として
は、例えば二酸化バナジウムVO2 からなる薄膜を用
い、前記反射層3として膜厚200nmのAl薄膜を用
いる。
【0007】実験で得られた前記VO2 薄膜の特性例を
図4に示す。図4は、VO2 薄膜に於ける温度と反射率
の関係を示す図である。図4に示すように、昇温時の相
転移点Tchが略65℃、降温時の相転移点Tclが略
55℃の金属−非金属転移を示し、反射率は低温相で1
6%、高温相で3.5%で可逆的に変化した。次に前記
VO2 薄膜を構成要素とするROM型光ディスク20の
製造方法について簡単に述べる。ここでは、ドライエッ
チングによって予め情報ピットが形成された石英ガラス
基板の上にDCマグネトロンスパッタ装置によりVO2
膜を形成し、その上にスパッタ法によりAl反射膜を形
成し、さらにその上にスピンコート法により紫外線硬化
型保護膜を形成する。
【0008】そして前記光ディスク20の基板側から波
長が780nmのレーザ光を照射し、前記光ディスク2
0のランド部(ミラー部)からの反射光を検出して光デ
ィスクの反射率を測定した。その結果、VO2 膜の膜厚
を変えた時の低温相と高温相に於ける夫々の反射率は、
図5に示す通りであった。図5は、本発明の光ディスク
に於けるVO2 膜の膜厚と反射率との関係を示す図であ
る。
【0009】図5に於いて、横軸はVO2 薄膜の膜厚、
縦軸はレーザ光を光ディスクの透明基板側から照射した
場合のミラー部の反射率を示す。また、実線で示す曲線
Aは周囲温度20℃で測定された低温相に於ける特性を
示し、点線で示す曲線Bは周囲温度100℃で測定され
た高温相に於ける特性を示す。図5に於いて、VO2
厚が50nmの時には、反射率が、低温相で5%、高温
相で42%であった。
【0010】この反射率の差を利用して高密度ディスク
の再生を行ったところ隣接トラックの記録マークからの
クロストークや同一トラック内の符号間干渉が減少し
た。さらに、VO2 膜厚が130nmの時には、反射率
が、低温相で20%、高温相で3%であった。この反射
率の差を利用して高密度ディスクの再生を行ったところ
同様に隣接トラックの記録マークからのクロストークや
同一トラック内の符号間干渉が減少した。
【0011】以下に、図2に示す光ディスクの再生方法
について説明をする。図2に示すROM型光ディスクの
再生は、回転している光ディスクに再生用レーザ光(再
生光)が集光されて基板側から照射され、光ディスクか
らの戻り光が検出される。そして前記戻り光を利用し
て、レーザ光を光ディスクの所定位置にスポット状に照
射するためのフォーカス制御とトラッキング制御がかけ
られ、微小な記録マーク(ピット)の読み出しが行われ
る。
【0012】光ディスク20の金属−非金属転移層2に
再生光が照射されると、その光が吸収され温度が上昇す
る。レーザ光スポットの光強度分布はガウス分布をとる
ため光ディスクが停止している場合にはレーザ光スポッ
トの中心部が光強度に応じて高温となる。しかし再生時
には光ディスクが回転しているために、レーザ光スポッ
トの周辺ではトラック方向に温度分布が生じる。即ち光
ディスクの回転方向に関してレーザ光スポットの前方、
即ち先に光ビームが照射された方の温度より、レーザ光
スポットの後方、即ち後に光ビームが照射された方の温
度が高くなる。
【0013】そしてレーザ光スポットの前方の温度が相
転移点Tcより低くなり、後方の温度がTcより高くな
るようにレーザ光の出力が設定されると、レーザ光スポ
ット内の部分部分で屈折率の差が生じる。この結果図5
に示した如く、例えばVO2 の膜厚が130nm時のよ
うに相転移点Tcより高温で反射率Rが低下する場合に
は、レーザ光スポットの前方からの反射光のみが強くな
り、再生信号が得られる。この結果再生光スポットの直
径が縮小したのと実質的に同等の効果が得られる。
【0014】また例えばVO2 の膜厚が50nm時のよ
うに相転移点Tcより高温で反射率Rが上昇する場合に
は、レーザ光スポットの後方からの反射光のみが強くな
り、再生信号が得られる。この結果再生光スポットの直
径が縮小したのと実質的に同等の効果が得られる。そし
て、隣接するトラックの記録マークからのクロストーク
や同一トラック内の符号間干渉を低減することが出来
る。
【0015】ところで、従来から知られているVO2 薄
膜の製造方法として、アルゴンと酸素の混合ガス中でバ
ナジウム金属をスパッタしバナジウムを酸化させる反応
性スパッタリング法や酸素ガス中でバナジウムを電子ビ
ームで蒸発させ酸化させる反応性蒸着法がある。これら
の方法で得られた薄膜は、そのままでは金属−非金属転
移を示さず、酸素雰囲気中か空気中で熱処理を施すこと
によってはじめて金属−非金属転移を示すようになると
各種文献で報告されている。バナジウムイオンは最高5
価までの原子価がとれ、代表的な酸化バナジウムとして
VO、V2 3 、VO2 、V2 5 が知られている。
【0016】これ以外に、一般式 Vn 2n-1 (n=
3、4、6)で表される中間化合物が非常に狭い組成範
囲で存在する。それらは、平衡する酸素分圧により制御
されるため、多数の酸化物の中からVO2 薄膜だけを選
択的に得ることは難しく、また成膜の再現性も乏しい。
一方、VO2 を書き換え型光ディスクに応用した例
が、"Preparation of VO2thin film and its direct op
tical bit recording characteristics."(APPLIEDOPTIC
S Vol.22 No.2 265(1983))に記載されている。それによ
れば、バナジウム金属ターゲットを窒素−酸素プラズマ
中でRF(高周波)スパッタリングすることによって、
VO2 を成膜後の熱処理なしで得ている。
【0017】しかし、一般的に用いられる不活性ガスで
あるアルゴン中に酸素を混合させて作った場合には、薄
膜の表面性が粗く、また、金属−非金属転移を示さない
25 に似た黄色の膜が得られるとしている。(この
文献は、VO2 を記録膜として用いるものであり、本発
明は再生補助層として用いるためVO2 膜に要求される
特性が本質的に異なる。VO2 を記録膜に用いる時に
は、VO2 が本来持っている金属−非金属転移を示す温
度(68℃)を室温以下に低下させなければ記録状態
(金属状態)を保持することができない。これに対し、
本発明に於ける再生補助層(バナジウム酸化物薄膜)で
は転移温度が室温より高いことを積極的に利用し、再生
光があたった時だけ転移を示すことを利用するものであ
る。)
【0018】そこで、本発明者らは、VO2 膜と透明基
板との間にバナジウム下地層を設けることで、大面積に
屈折率が均一な所定膜厚のVO2 薄膜を再現性良く形成
し、光スポット径を実質的に縮小するようにした光ディ
スクを提案している。以下、その光ディスクに付いて説
明する。図3は、従来の光ディスクの構成を示す断面図
である。図3に於いて、ROM型光ディスク30は、上
記光ディスク20の透明基板1とバナジウム酸化物層2
との間にバナジウム下地層5を形成した構成となってい
る。上記バナジウム下地層5の膜厚は3〜30nmにあ
り、また前記バナジウム酸化物薄膜層2は、膜厚が10
nm〜5μmの二酸化バナジウムVO2 からなる薄膜で
ある。
【0019】上記光ディスク30は、図6に示すような
直流マグネトロン装置により、製造される。ここで、図
6に示す直流マグネトロン装置40は、一対の陰極(タ
ーゲット)と陽極(基板ホルダー)からなる直流マグネ
トロン装置を示している。図6に於いて、真空チャンバ
ー11内に基板12とターゲット22を対向して配置
し、この間に膜厚センサ14を設ける。基板にはガラス
基板、ターゲットにはバナジウム金属を用いる。膜厚セ
ンサー14は水晶式のもので水晶振動子の表面に薄膜が
付着すると共振周波数が変化することを利用している。
成膜の間、基板は基板ホルダーに埋め込んだヒーター1
3で300〜500℃に加熱する。
【0020】真空チャンバー11は真空ポンプ18によ
り予め8×10-4Pa以下に排気する。排気調節弁によ
って排気量を調節した後、Arガスを導入して所定の真
空度にし、本スパッタに先立ちバナジウム金属をスパッ
タする。これによってターゲット表面の酸化層を除去す
る。続いてシャッター15を開け所定の膜厚になるまで
バナジウム下地層5を成膜する。バナジウム下地層5の
膜厚は3〜30nmにあり、基板を通して光を入射する
場合には、入射光量が減衰しないような膜厚にするのが
好ましい。
【0021】ついでArとO2 の混合ガス中で反応性ス
パッタを行う。ターゲット表面の酸化状態が定常になる
までシャッター15を閉じて前スパッタをしたのち、シ
ャッター15を開け所定の膜厚までVO2 を成膜する。
このとき成膜速度を膜厚センサ14でモニターして一定
の速度になるように制御器19を通して直流電源16の
投入電力を、例えば電流で調節する。成膜速度が速いと
VO2 に対し酸化不足(バナジウム過剰)となり、逆に
遅いと過剰に酸化する。バナジウムの酸化状態は酸素分
圧に敏感で、わずかな変動でも著しく変化する。また、
酸素分圧と投入スパッタ電力とを固定しても成膜速度は
変動するためバナジウム酸化物の生成速度に対応する成
膜速度を直接モニターし、調節することが必要となる。
この方法によりas-depo (アズデポジション)で金属−
非金属転移を示す多結晶のVO2 を均一しかも再現性よ
く得ることができる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】ところで、バナジウム
酸化物VO2 とバナジウムVとの間には格子定数に大き
な違いがあるため、バナジウム下地層5上にVO2 を積
層するとVO2 が不規則に積層されてしまい、VO2
結晶粒が、回析限界以下に形成された微小な記録マーク
(ピット)の大きさに比べて無視できない大きさになっ
てしまうという問題が発生した。このように大きな結晶
粒は、光を用いて情報を検出する光ディスクにおいて、
再生信号のノイズの原因となり、再生エラー発生率を増
加させてしまうことになる。
【0023】そこで、本発明者らは、バナジウムとVO
2 との格子定数を緩和させるために、上記バナジウム下
地層5と、上記バナジウム酸化物薄膜2との間に、深さ
方向に酸素の含有量を徐々に異ならせたバナジウム酸化
物VOx によるバナジウム酸化物中間層(以下、VOx
中間層または中間層と記載する)を設けた構造とした。
この結果、VO2 薄膜表面の平滑性は、バナジウム下地
層上に直接VO2 を積層する場合よりも向上した。しか
し、VOx 中間層を設けたとしても、VO2 薄膜表面の
結晶粒の大きさは記録マーク(ピット)の大きさに対し
て完全に無視できる程度まで小さくならないため、高密
度記録がある程度で制限されてしまうことになる。この
ため、光ディスクを更に高密度記録するために、VO2
薄膜表面の平滑性を更に向上させることが要求されるの
である。
【0024】本発明は、前記問題点に鑑みて成されたも
ので、高密度記録するのに十分な優れた表面平滑性を有
するVO2 薄膜を形成した光ディスク及びその製造方法
を提供することを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の請求項1に係る発明は、「少なくとも、透明基板と、
金属−非金属転移を示すバナジウム酸化物薄膜と、反射
膜とをこの順に設けた光ディスクにおいて、前記透明基
板と前記金属−非金属転移を示すバナジウム酸化物薄膜
との間にタンタル或いはチタンから成る下地層を有する
ことを特徴とする光ディスク。」を提供するものであ
り、
【0026】また、請求項2に係る発明は、「少なくと
も、透明基板と、金属−非金属転移を示すバナジウム酸
化物薄膜と、反射膜とをこの順に設けた光ディスクの製
造方法において、不活性ガスによるタンタル金属或いは
チタン金属のスパッタリングによって前記透明基板表面
にタンタル或いはチタンから成る下地層を生成し、前記
下地層を形成した透明基板の温度を250〜500℃に
保ち、酸素分圧を3.5%以下にした不活性ガス中で、
成膜速度を2×10-2〜6×10-2nm/sに制御し
て、バナジウム金属を反応性スパッタリングして前記下
地層上に金属−非金属転移を示すバナジウム酸化物薄膜
を生成することを特徴とする光ディスクの製造方法。」
を提供するものである。
【0027】
【作用】光ディスクの金属−非金属転移層に再生光が照
射されると、その光が吸収され温度が上昇する。再生光
スポットの光強度分布はガウス分布をとるため停止して
いる光ディスクでは再生光スポットの中心部が高温とな
るが、回転時には再生光スポットの前方より後方の温度
が高くなる。そして再生光スポットの前方の温度が相転
移点より低く、後方の温度が相転移点より高くなるよう
にレーザ光出力が設定されると、再生光スポット内で屈
折率の変化(分布)が生じる。この結果、相転移点Tc
より高温で反射率が低下する場合には、再生光スポット
の前方からの反射光のみが強くなって再生信号が得ら
れ、相転移点Tcより高温で反射率が上昇する場合に
は、レーザ光スポットの後方からの反射光のみが強くな
って再生信号が得られる。この結果再生光スポットの直
径が縮小したのと実質的に同等の効果が得られ、光スポ
ットより小さい微小ピットからの情報が光学的に読み出
される。この結果隣接するトラックの記録マークからの
クロストークや同一トラック内の符号間干渉を低減する
ことが出来る。尚、透明基板上にタンタルやチタンから
成る下地層を設けると、この下地層の薄膜を核として積
層するバナジウム酸化物が結晶成長を起こし、金属−非
金属転移を示す多結晶のバナジウム酸化物薄膜が形成さ
れると共に、表面の平滑性の良いバナジウム酸化物薄膜
を得ることができる。
【0028】
【実施例】本発明の光ディスクは、透明基板と反射層の
間に、温度変化に応じて金属−非金属転移を起こすバナ
ジウム酸化物薄膜物質からなる層を設けた光ディスクで
あって、再生時には、光ディスク上に照射された再生用
レーザ光(再生光)の光スポット内で生じる温度分布に
伴う光学特性の変化を利用し、光の回折限界以下の微小
な記録マークを読み出せるようにしたものである。従っ
てこの光ディスクは、特に高密度型の光ディスクに適合
するものである。まず、本発明の光ディスクで用いる金
属−非金属転移を示す物質について述べる。
【0029】金属−非金属転移を示す物質とは、その物
質の温度を変化させた時に物質の性質が金属から非金属
に又はその逆に転移するものを言う。前記金属−非金属
転移は一般にモット(Mott)転移として知られてい
る。また前記非金属とは、半導体及び絶縁体を指す。前
記金属−非金属転移に伴い、物質の電気的特性や光学的
特性が大きく変化するが、本発明の光ディスクでは、実
数部m及び虚数部kで示される複素屈折率(m−ik)
の変化に伴う反射率R或いは光の位相の変化を利用して
再生が行われる。
【0030】金属−非金属転移を示す物質としては、例
えば、VO2 、VO、V2 3 、Ti2 3 等の結晶性
の薄膜があるが、本発明の光ディスクでは転移温度Tc
が室温より高いVO2 を採用している。このVO2 薄膜
は、前記転移温度Tcより低温側では半導体的な性質を
有し高温側では金属的な性質を有するが、この性質の変
化は温度変化と共に可逆的に、即ち昇温時にも降温時に
も起こる。以下、本発明の光ディスクの製造方法につい
て、その第1の実施例をROM型光ディスクを例に図1
を基に説明する。図1は、本発明の光ディスクの構成を
示す断面図である。図1に於いて、ROM型光ディスク
10は、予め情報ピットが形成された上記透明基板1の
上に、下地層6、上記バナジウム酸化物薄膜層2、上記
反射層3、上記保護膜4がこの順に積層されている。情
報ピットは、同心円状或いは螺旋状に設けられて情報ト
ラックが形成されている。
【0031】上記基板1としては、通常の光ディスクに
用いられている一般的な透明基板材料例えばポリカーボ
ネート、アクリル、エポキシ、ポリオレフィン等のプラ
スチックや、ガラス等から選択して使用される。この基
板上には予め情報が凹凸状のピットとして周回状に形成
されているピット部と、ピットのないランド部(ミラー
部)とが設けられている。前記ピットはドライエッチン
グ法、フォトポリマ−法、射出成形法等によって製造さ
れる。上記反射層3は、Au、Ag、Cu、Al、I
n、Pt、Cr、Ni等の金属の内の1種又はこれらの
合金が用いられ、真空蒸着やスパッタにより膜厚が10
〜500nmの範囲、好ましくは膜厚が50〜200n
mの範囲で形成される。
【0032】上記下地層は、タンタル(Ta)或いはチ
タン(Ti)から成り、その膜厚は5〜100nmにあ
り、基板を通して再生光を入射する場合には、入射光量
が減衰しないような膜厚にするのが望ましい。しかし、
逆に下地層6が薄すぎるとその製造時に酸素雰囲気中で
の加熱により下地層6が全て酸化されてしまい、その後
のVO2 形成を促す効果がなくなる。このため、下地層
6の膜厚は、10〜50nmがより好ましい。ここで、
タンタル(Ta)或いはチタン(Ti)で下地層6を構
成したとしても、その後のVO2 積層時にこの下地層6
が形成された基板は、加熱され、更に酸素が混入された
アルゴン(Ar)ガス中にさらされるので、厳密には、
下地層6の表面に酸化層が形成されていると考えられ
る。この下地層6は、VO2 の結晶成長を促進させると
共に、VO2 薄膜の表面平滑性を向上させるために設け
られるものである。
【0033】次に、本発明の光ディスクの製造方法につ
いて図1及び図6を基に説明する。上記光ディスクを製
造するには上述の従来の光ディスク30と同様に図6に
示す直流マグネトロン装置40を用いる。図6に於い
て、真空チャンバー11内に基板12とターゲット22
を対向して配置し、この間に上記膜厚センサ14を設け
る。基板にはガラス基板、ターゲットにはバナジウム金
属を用いる。VO2 の成膜の間、基板は基板ホルダーに
埋め込んだヒーター13で250〜500℃に加熱す
る。真空チャンバー11は真空ポンプ18により予め8
×10-4Pa以下に排気する。排気調節弁によって排気
量を調節した後、Arガスを導入して所定の真空度にす
る。
【0034】まず、下地層6を室温で成膜する。基板に
はガラス基板を用い、ターゲットには、タンタルまたは
チタン金属を用いる。シャッター15を開け所定の膜厚
になるまでタンタル(Ta)或いはチタン(Ti)下地
層6を成膜する。この下地層6の膜厚は、上述のように
5〜100nmにあり、好ましくは、10〜50nmに
する。
【0035】ここで、タンタルやチタンの他に、無作為
に選んだニオブ(Nb),ジルコニウム(Zr),金
(Au),モリブテン(Mo),ハフニウム(Hf),
ゲルマニウム(Ge),コバルト(Co),銅(Cu)
等を用いて下地層6を形成してこの下地層6の上にVO
2 を積層することを試みたが、VO2 を成膜することが
できなかった。しかし、Nb,Zr,Au,Mo,H
f,Ge,Co,Cuの上にタンタル或いはチタンを積
層するとVO2 を成膜できた。即ち、タンタル或いはチ
タンを下地層6とすれば、この下地層上にVO2 を容易
に形成可能であることを初めて見出したのである。
【0036】ついでタンタル或いはチタンから成る下地
層6上に、VO2 薄膜を形成する。上記下地層6が形成
された基板を250〜500℃に加熱し、ArとO2
混合ガス中でバナジウムの反応性スパッタを行う。以
下、上記光ディスク30と同様に、シャッター15を閉
じて前スパッタをしたのち、成膜速度を2×10-2〜6
×10-2nmの範囲で制御し、更に酸素分圧を3.5%
以下に制御してVO2 を成膜させる。以上のようなVO
2 成膜の実験を行った結果、基板の加熱温度は、300
〜380℃の範囲が好ましく、この範囲内であると、V
2 薄膜が大面積に渡って膜厚や結晶状態等が均一に形
成されることが明らかになった。これ以外の範囲では、
VO2 の成膜が可能ではあるものの、例えば、不均一な
膜厚で成膜されてしまう等、光ディスクとして使用不可
能な薄膜が形成されてしまうものもあった。
【0037】以上の方法によりas-depo (アズデポジシ
ョン)で金属−非金属転移を示す多結晶のVO2 薄膜
を、優れた表面平滑性で、均一しかも再現性よく得るこ
とができる。また、タンタル或いはチタンにより下地層
6を構成することで、バナジウム下地層5を有する上記
光ディスク30よりも基板加熱温度が低温であってもV
2 の積層が可能となる。
【0038】<実験例1>真空チャンバー11内の雰囲
気を3×10-4Paまで排気した後、アルゴンを導入
し、4.0×10-1Paとした。まず、ガラス基板に室
温でTa下地層を20nm形成した。このTa下地層の
スパッタリング時の条件は、スパッタリング電流0.2
5〜0.3A、電圧300V、成膜速度0.1nm/s
で行った。ついで、酸素とアルゴンを導入し、全圧力
4.2×10-1Pa、酸素分圧1.4×10-2Paと
し、スパッタリング電流0.1A、電圧410Vで30
分間プレスパッタリングを行った後、表面温度360℃
のTa下地層付きのガラス基板上へ本スパッタリングを
成膜速度を制御して行った。成膜速度2〜6×10-2
m/sの範囲でVO2 膜が再現性良く生成された。この
VO2 膜の温度に対する反射率変化を波長690nmで
測定したところ金属−非金属転移が68℃に観察され、
VO2 膜厚が60nmのときに、低温相で17%、高温
相で30%であった。光学的変化の大きなVO2 膜が熱
処理なしで得られた。結晶粒径は走査型電子顕微鏡で観
察できないほど微細であった。
【0039】<実験例2>実施例1と同様の方法で次の
条件のみを変更して成膜を行った。下地層としてTiを
20nm形成(スパッタリング電流0.6A、電圧40
0〜420V、成膜速度0.7〜0.8nm/s)した
後、基板表面温度を300℃にしてVO2を40nm形
成した。このVO2 膜の温度に対する反射率変化を波長
690nmで測定したところ金属−非金属転移が68℃
に観察され、低温相で14%、高温相で24%であっ
た。光学的変化の大きなVO2 膜が熱処理なしでこれま
でよりも低温で得られた。結晶粒径は走査型電子顕微鏡
で観察できないほど微細であった。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光ディス
ク及びその製造方法によれば、光学的に均一なバナジウ
ム酸化物薄膜を大面積にas-depo (アズデポジション)
で形成することが出来るので、光ディスクは、低ノイ
ズ、低エラーレートとなり、高密度記録の光ディスクの
再生が可能となり、更に、タンタルまたはチタンから成
る下地層を設けることで、バナジウム酸化物薄膜層表面
の平滑性が向上され、高密度記録された光ディスクに十
分に適応させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ディスクの第一の実施例の構成を示
す断面図である。
【図2】先願の光ディスクの構成を示す断面図である。
【図3】先願の光ディスクの構成を示す断面図である。
【図4】VO2 膜の温度と反射率との関係を示す図であ
る。
【図5】本発明光ディスクに於けるVO2 膜の膜厚と反
射率との関係を示す図である。
【図6】直流マグネトロン装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
10、20、30 光ディスク 1 透明基板 2 バナジウム酸化物薄膜 3 反射層 4 保護層 5 下地層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 7/24 G11B 7/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも、透明基板と、金属−非金属転
    移を示すバナジウム酸化物薄膜と、反射膜とをこの順に
    設けた光ディスクにおいて、 前記透明基板と前記金属−非金属転移を示すバナジウム
    酸化物薄膜との間にタンタル或いはチタンから成る下地
    層を有することを特徴とする光ディスク。
  2. 【請求項2】少なくとも、透明基板と、金属−非金属転
    移を示すバナジウム酸化物薄膜と、反射膜とをこの順に
    設けた光ディスクの製造方法において、 不活性ガスによるタンタル金属或いはチタン金属のスパ
    ッタリングによって前記透明基板表面にタンタル或いは
    チタンから成る下地層を生成し、 前記下地層を形成した透明基板の温度を250〜500
    ℃に保ち、酸素分圧を3.5%以下にした不活性ガス中
    で、成膜速度を2×10-2〜6×10-2nm/sに制御
    して、バナジウム金属を反応性スパッタリングして前記
    下地層上に金属−非金属転移を示すバナジウム酸化物薄
    膜を生成することを特徴とする光ディスクの製造方法。
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