JP2922989B2 - 高電気抵抗と低温度係数を有する精密抵抗合金およびその製造方法 - Google Patents

高電気抵抗と低温度係数を有する精密抵抗合金およびその製造方法

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JP2922989B2 JP16001590A JP16001590A JP2922989B2 JP 2922989 B2 JP2922989 B2 JP 2922989B2 JP 16001590 A JP16001590 A JP 16001590A JP 16001590 A JP16001590 A JP 16001590A JP 2922989 B2 JP2922989 B2 JP 2922989B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、精密抵抗合金に関し、さらに詳しくは高電
気抵抗と低温度係数を有するNi−Cr−Cu−Al系精密抵抗
合金に関するものである。
(従来の技術) 近年歪みセンサや温度センサ等の抵抗変化型機能素子
の開発がめざましいが、それらはかなり厳しい環境下で
使用される場合もある。これら機能素子の性能を十分に
発揮するためには、温度変化による出力ドリフトを極力
抑えることが重要である。その一般的な方法としては、
補償抵抗や基準抵抗などの精密抵抗材料を回路に組み込
んだハイブリッド化によって、高信頼性や高安定性を得
ている。
従来これらの精密抵抗材料としては電気抵抗の温度係
数が小さいCu−Mn系合金、Ni−Cu系合金、Ni−Cr系合金
やアモルファス合金の他にこれらの金属箔膜抵抗等が使
用されている。
(発明が解決しようとする課題) ところで、エレクトロニクスの発達した今日では各種
デバイスは超精密、小型化および高性能化に向ってお
り、それに伴って精密抵抗材料もさらに優秀なものが求
められつつある。その要求条件としては比電気抵抗が大
きいこと、電気抵抗の温度係数が小さいこと、細線化や
薄板化などの冷間加工が容易なこと、薄膜への成膜化が
容易なことならびに安価なこと等が挙げられる。
前述したCu−Mn系合金やNi−Cu系合金は、電気抵抗の
温度係数が±20×10-6-1で極めて小さく、加工性に富
みしかも安価であるが、比電気抵抗が35〜50μΩ・cmで
小さいだけでなく、製造工程が複雑である等の欠点を有
する。
またNi−Cu系合金は比電気抵抗が100〜130μΩ・cmで
大きいが、加工性がやや悪い欠点を有する。
またアモルファス合金は、比電気抵抗が100〜180μΩ
・cmと極めて大きく、かつその温度係数も±20×10-6
-1の優秀な特性も得られているが、特性の再現性が悪
く、加工性が極めて困難でしかも加熱処理によって結晶
化が進み、特性が急激に悪化する欠点がある。
さらにまた金属箔膜抵抗は比電気抵抗およびその温度
係数に関しては上記の合金素材より優れているが、高電
圧やサージ電圧などの変動に対する対応性が悪く、しか
も大電力用のものが製造できない欠点がある。
以上述べたようにこれらの材料は一長一短があるため
に、用途別に使い分けたり条件付きでの使用を余儀なく
されている。
(課題を解決するための手段) 上記材料のうちで、Ni−Cu系合金は比較的大きな電気
抵抗を有するだけでなく、電気的特性の安定性や高温に
おける耐酸化性などが優れている。この合金にCuやAl等
を数%添加して電気抵抗の温度係数を改善した合金が既
に実用化されているが、反面比電気抵抗の最高値は約13
0μΩ・cmで、これ以上高い電気抵抗は現在得られてい
ない。
その理由としては、AlやCuの多量添加によって、加工
性が著しく悪化することならびに大気中熱処理によって
酸化が著しいためである。したがって実用材料において
は、AlおよびCuの最大含有量はいずれも約3%である。
本発明の目的は、比電気抵抗およびその温度係数がそ
れぞれ130μΩ・cm以上および±50×10-6-1の電気的
特性を有するNi−Cr−Cu−Al系合金を得ることおよび該
合金の高温度における酸化対策と良好な加工性を解決す
るための新規な製造法を提供することを特徴とするもの
である。
本発明は、これらの点に鑑みなされたものであって、
多くの実験と詳細な研究を鋭意進めた結果、クロム(C
r)10〜26%、銅(Cu)3.5〜15%、アルミニウム(Al)
2.5〜10%、コバルト(Co)0.01〜20%、マンガン(M
n)0.01〜15%、タングステン(W)0.01〜5%、チタ
ン(Ti)0.01〜5%、シリコン(Si)0.01〜5%で、し
かもCr,CuおよびAlの合計が25〜40%とCo,Mn,W,Tiおよ
びSiの合計が0.01〜20%、および残部が実質的にニッケ
ル(Ni)からなる組成において、130μΩ・cm以上の高
い比電気抵抗と±50×10-6-1の極めて低い電気抵抗の
温度係数を有するNi−Cr−Cu−Al系精密抵抗合金が得ら
れた。さらに該合金の加工法において、βCrAl,Ni3Al,
Al2O3あるいはCr2O3等の化合物を極力抑える新規の製造
方法を見い出した。
本発明合金および製造法は次の通りである。
1.重量比にて、クロム10〜26%、銅3.5〜15%およびア
ルミニウム2.5〜10%の合計25〜40%、コバルト0.01〜2
0%、マンガン0.01〜15%、タングステン0.01〜5%、
チタン0.01〜5%およびシリコン0.01〜5%の内から選
ばれた1種あるいは2種以上の合計0.01〜20%および残
余ニッケルからなる合金を、溶解鋳造し、合金の断面積
より若干大きい内面を有する耐熱性容器に挿入し、300
℃以上1200℃以下で1分以上50時間以下加熱後、50〜30
0℃/hrの炉冷、又は300〜2000℃/hrの強制冷却を施し、
素材と容器一体で加工率20%以上90%以下の冷間加工に
より所望の寸法に成形し、適当な寸法により該容器を取
り除き、その後300℃以上1200℃以下の温度および1分
以上50時間加熱し、炉冷するかあるいは空冷する熱処理
を施すことによって得られた合金が、比電気抵抗が130
μΩ・cm以上および室温付近における電気抵抗の温度係
数が+100×10-6-1乃至−100×10-6-1若しくは+50
×10-6-1乃至−50×10-6-1を有ることを特徴とする
精密抵抗合金。
2.重量比にて、クロム10〜26%、銅3.5〜15%およびア
ルミニウム2.5〜10%の合計25〜40%、コバルト0.01〜2
0%、マンガン0.01〜15%、タングステン0.01〜5%、
チタン0.01〜5%およびシリコン0.01〜5%の内から選
ばれた1種あるいは2種以上の合計0.01〜20%および残
余ニッケルからなる合金を、溶解鋳造し、真空中、ある
いは不活性ガス雰囲気中若しくはスポンジチタン或いは
ニッケル板で成形品を包み込み300℃以上1200℃以下で
1分以上50時間以下加熱後、50〜300℃/hrの炉冷、又は
300〜2000℃/hrの強制冷却を行なった後、加工率20%以
上90%以下の冷間加工を施し所望の寸法に成形し、さら
にこの成形品を300℃以上1200℃以下の温度および1分
以上50時間にて加熱し、炉冷するかあるいは空冷する熱
処理を施すことによって、比電気抵抗が130μΩ・cm以
上および室温付近における電気抵抗の温度係数が+100
×10-6-1乃至−100×10-6-1若しくは+50×10-6
-1乃至−50×10-6-1を有する合金を得ることを特徴と
する精密抵抗合金の製造方法。
因に化合物βCrAlおよびNi3Alはそれぞれ室温から約8
60℃および約1400℃まで安定状態にあり、極めて硬く脆
いため加工は全て不可能である。しかしできるだけ高温
に加熱することによって化合物は分解し母合金中に固溶
して、加工が容易になる性質がある。
またAl2O3やCr2O3等の化合物はNi3Alと同様に加工性
を悪化させるが、高温での酸化を防止する工夫によって
加工が容易になる性質がある。
そこで本発明合金の製造工程においては、上記の問題
を解決するための手段として、合金を加工率20%以上90
%以下の冷間加工と300℃以上1200℃以下で1分以上50
時間以下の加熱後、50〜2000℃/hrの炉冷あるいは強制
冷却の熱処理とを交互に繰り返すことによって、βCrA
l,Ni3Al,Al2O3あるいはCr2O3等の化合物生成が抑制さ
れ、良好な加工性が達せられることを見いだした。
ここで本発明合金の加工法としては全て冷間加工を採
用したが、その理由は大気中高温加熱処理や熱間加工は
合金内部深く酸化が浸透して加工が困難になるためであ
る。
(作用) 以下本発明について詳細に説明する。
本発明合金を製造するには、重量比にてクロム10〜26
%、銅3.5〜15%およびアルミニウム2.5〜10%の合計25
〜40%、コバルト0.01〜20%、マンガン0.01〜15%、タ
ングステン0.01〜5%、チタン0.01〜5%およびシリコ
ン0.01〜5%の内から選ばれた1種または2種以上の合
計0.01〜20%と残部が実質的にニッケルからなる合金を
非酸化性雰囲気中あるいは真空中において適当な溶解炉
を用いて溶解し、十分撹拌し均一な溶融合金にする。
つぎにこれを適当な形および大きさの鋳型に注入し
て、健全な鋳塊を得る。この鋳塊の表面の疵を丁寧に取
り除き、加工率20以上90%以下の冷間加工を施した後、
素材を容器に密封するかあるいは任意の方法により素材
の酸化を防止して、300〜1200℃で1分以上50時間以下
加熱する。その後50〜300℃/hrの炉冷、好ましくは300
〜2000℃/hrで強制冷却する。これらの操作を繰り返し
て、目的の形状のもの、例えば線材、板材や箔材等が得
られる。これらの成形品についてさらに上記と同じ温度
(300℃以上1200℃以下)および時間(1分以上50時
間)にて加熱し、炉冷するかあるいは空冷する熱処理を
施すことによって、比電気抵抗が130μΩ・cmおよび室
温付近における電気抵抗の温度係数が+100×10-6-1
乃至−100×10-6-1以上の特性が得られる。
なおまた本発明は、重量比にて、クロム10〜26%、銅
4〜15%およびアルミニウム2.5〜9%の合計30〜35
%、さらにコバルト0.01〜20%、マンガン0.01〜15%、
タングステン0.01〜5%、チタン0.01〜5%およびシリ
コン0.01〜5%の内から選ばれた1種あるいは2種以上
の合計0.01〜20%と残部が実質的にニッケルからなる合
金を上述した加工法および熱処理法によって、比電気抵
抗が130μΩ・cm以上および電気抵抗の温度係数が+50
×10-6-1乃至−50×10-6-1の極めて優れた特性が得
られる。
本発明合金の製造法において、合金に含まれる主成分
のCuやAlの含有量が多くなると大気中高温加熱による耐
酸化性を損なうので、通常の熱間加工は不可能である。
そこで成形加工は全て冷間加工のみとしたが、当然歪
み取り焼鈍が必要である。しかし従来のNi−Cr系合金で
行なわれている一般的な熱処理法を本発明合金に採用し
た場合には、合金素材が酸化したり金属間化合物が生成
して加工性を悪化させることになる。これらの諸問題を
解決する方法としては、加工性を向上するための熱処理
および成形のための冷間加工、最後に所望の特性を得る
ための熱処理などの工程が必要である。つぎには各工程
の内で重要な2種類の熱処理方法について詳細に説明す
る。
雰囲気遮断法(A) 本発明合金を適当な溶解炉にて溶解し、鋳造後インゴ
ット表面の疵等を除去して、さらに表面を丁寧に研磨す
る。つぎに該合金の断面積より若干大きい断面積を有す
る適当な耐熱性容器に挿入して、この容器全体を電気炉
を使用して300〜1200℃の温度で1分以上50時間以下加
熱後、50〜300℃/hrで炉冷するかあるいは300〜2000℃/
hrで強制冷却する。つぎに容器から出した素材をスウェ
ージングあるいは線引機等により加工率20%以上90%以
下の冷間加工を施し、所望の寸法に成形する。加工方法
としては、この他にも合金素材と容器を一体として加工
し、所望の寸法に成形後容器を取り除き、最後に成形さ
れた線材や板材等を連続加熱炉中に通し、上記の熱処理
条件にて熱処理を施す。
雰囲気処理法(B) 本発明合金を適当な溶解炉にて溶解し、鋳造後インゴ
ット表面の疵等を除去して、さらに表面を丁寧に研磨す
る。つぎに該合金を適当な電気炉を使用して、真空中あ
るいは不活性ガス雰囲気中若しくはスポンジチタン等の
ガス吸収材で合金を包み込み300〜1200℃の温度で1分
以上50時間以下加熱後、50〜300℃/hrの炉冷好ましくは
300〜2000℃/hrの強制冷却を行う。さらにスウェージン
グあるいは線引機等により加工率20%以上90%以下の冷
間加工を施し所望の寸法に成形する。成形された線材や
板材等には、さらに真空中あるいは不活性ガス雰囲気中
若しくはスポンジチタン等のガス吸収材で成形品を包み
込み、最後に上記と同様の熱処理を施す。
かくして上記2種類の熱処理によって、素材は金属光
沢を有しかつ結晶粒径も極めて小さく、さらに悪性金属
間化合物がほとんど生成されず、しかも延性があり良好
な加工性を発揮した。例えば、線径0.06mm以下の極細線
加工も容易であった。
したがって本発明の製造法は本発明合金ばかりでな
く、銅やアルミニウム等が多量に含有した合金の場合に
も適用可能であり、工業上利するところが多大である。
上記の新規な製造法により得られた本発明合金は、比
電気抵抗が130μΩ・cm以上および室温付近における電
気抵抗の温度係数が±50×10-6-1乃至−50×10-6-1
の優れた特性を示す。
第1図、第2図および第3図は、Ni−0〜30%Cr−0
〜20%Cu−0〜10%Al合金を1000℃で1時間加熱後300
℃/hrで冷却した場合のそれぞれCr量、Cu量およびAl量
に対する20℃における比電気抵抗ρと0〜50℃における
電気抵抗の平均温度係数TCRの変化を示す。また第4図
および第5図は、Ni−20%Cr−10%Cu−5Al合金にCo25
%以下、Mn15%以下、W5%以下、Ti5%以下あるいはSi5
%以下を添加した場合のそれぞれCo量あるいはMn量およ
びW量、Ti量あるいはSi量に対するρおよびTCRの変化
を示す。
実施例1 合金番号No.14(組成Ni=70%,Cr=15%,Cu=10%,Al=
5%)の合金の製造 原料は純度99.9%以上の電解ニッケルと電解クロム、
純度99.99%以上の無酸素銅と電解アルミニウムを用い
た。
試料を造るには、全重量10gの原料を坩堝に入れ高周
波誘導電気炉を用いて真空中で溶解した。その後よく撹
拌して均質な溶融合金とした。つぎにこれを内径10mm、
高さ120mmの鉄型に鋳込み健全な鋳塊を得た。この鋳塊
表面の疵などを旋盤により丁寧に削り取り、直径約9mm
の丸棒にした。この丸棒をスエージング機により直径5m
mまで冷間加工(加工率69%)して原試料とした。
この原試料について、加工を容易にするための熱処理
(工程I)、各種形状に成形するための冷間加工(工程
II)および要求特性を得るための熱処理(工程III)等
の各種工程を組み合わることによって所望の試料を作製
した。
ここで工程IIにおいて、本実験では冷間加工のみとし
た理由は、本発明合金の場合高温で熱処理すると酸化が
合金内部に深く浸透して脆くなり、熱間加工が困難とな
るからである。
つぎにこれら製造工程について説明する。
工程I 5mmの丸棒を、その断面積より若干大きめの乾燥した
石英管(内径6mm)に封入して、これを電気炉(内径30m
m、長さ1m)に入れる。そして予め300〜1200℃の各種の
温度にセットした電気炉(内径30mm、長さ1m)に入れ大
気中にて2分、1時間および10時間加熱した後、電気炉
を任意の速度50〜300℃/hrで冷却する炉冷方式と電気炉
をファン等を使用したりあるいは電気炉内石英管を移動
して300〜5000℃/hrで冷却する強制冷却方式で室温まで
冷却する。以上の方法で熱処理後、丸棒を石英管から取
り出した結果、すべて金属光沢が認められた。ここで明
らかになったことは、比較的低温でしかも長時間加熱し
たり、あるいは極めてゆっくり冷却すると、合金の加工
性が悪化することである。
工程II 工程Iの熱処理を施した丸棒をミゾロール、スウェー
ジング機あるいは伸線機等により、冷間加工を施して線
径2mmの線材を得る。この場合の加工率は84%である。
つぎに工程Iと同様の熱処理と本工程とを繰り返して、
最終的には線径0.5mmの細線を得る。この間の加工率は2
0%,50%,75%,80%および93%の5種類であった。しか
し本発明合金の製造法において、加工率93%での加工は
加工硬化が極端に進行して困難であった。したがって加
工率の限界値は約90%であることが分かった。
工程III 工程IIで得られた線径0.5mmの細線から長さ100mmに切
断して、直線状とした後内径1mm以下の石英管に入れ真
空封入して上記の製造工程Iと同様の加熱温度および時
間にて種々の熱処理を施した後、種々の速度で冷却す
る。また800℃以下における熱処理の場合では、試料全
体をスポンジチタン等で包み込み、さらにガスを排気す
ることによって超真空の場合と同様に酸化がみられず、
極めて有効であることがわかった。以上の工程により所
望の細線試料が得られる。
上述した方法により得られた種々の試料について、20
℃における比電気抵抗ρ、0〜50℃における電気抵抗の
平均温度係数TCR(=ΔR/R0/ΔT)および組織等につ
いて評価を行った。ここでΔR=R50−R0およびΔT=5
0である。
第6図および第7図は、ρとTCRのそれぞれ加熱温度
および加熱時間に対する変化を示す。第8図は、冷却速
度および加熱温度に対する加工性あるいは電気的特性の
評価を示す。第1図からわかるようにρは加熱時間が2
分の場合では1200℃以上また1時間の場合では300℃以
上でそれぞれ130μΩ・cm以上の高い値が得られるが、
比較合金A(点線)の場合は600℃で極大値128μΩ・cm
を示す。またTCRはいずれの加熱時間の場合においても
±50×10-6-1以下の低い値が得られ、特に800℃以上
においては極めて低いことがわかる。したがって300℃
以上の温度で加熱することによって、130μΩ・cm以上
のρと+50×10-6-1以下のTCRを得ることができる。
なお試料の熱処理条件に対応した特性は第1表の通り
である。
実施例2 合金番号No.9(組成Ni=75%,Cr=10%,Cu=10%,Al=
5%)の合金の製造 原料は実施例1と同じ純度のものを用た。試料の製造
方法は全重量10gを高純度アルミナ坩堝(SSA−H,T−
2)に入れ、酸化を防ぐために金属表面に高純度アルゴ
ンガスを吹きつけながらタンマン炉によって溶かし、よ
く撹拌して均質な溶融合金とした。つぎにこれを内径3.
6mmの石英管に吸い上げて、均質化処理のために試料の
直径より若干太い内径を有する一端封止の石英管に挿入
して1000℃温度で10分加熱後炉外に取り出して空冷す
る。つぎに種々の加工率になるように上記の熱処理を施
して線径0.5mmの細線を得る。最後にこの細線に300℃以
上1200℃以下の種々の温度で1分以上50時間以下の加熱
後、種々の冷却速度で冷却して試料を作製する。実験方
法は実施例1と同様であった。試料の熱処理条件とそれ
に対応した特性は第2表の通りである。
実施例3 合金番号No.92(組成Ni=63%,Cr=20%,Cu=10%,Al=
5%,Si=2%)の合金の製造 原料は実施例2と同じ純度のものを用いたが、シリコ
ンは純度99.99%以上であった。試料の製造法および実
験方法は実施例2と同様であった。試料の熱処理条件と
それに対応した特性は第3表の通りである。
なお本発明合金領域に属する代表的な合金と比較合金
A.B,CおよびDについて1000℃で1時間加熱後、300℃/h
rで炉冷した場合の特性値を示すと第4表および第5表
の通りである。
以上本発明は、第1図乃至第8図、実施例1乃至実施
例3、第4表および第5表からもわかるようにCr10〜26
%、Cu3.5〜15%およびAl2.5〜10%の合計25〜40%、Co
0.01〜20%、Mn0.01〜15%、W0.01〜5%、Ti0.01〜5
%およびSi0.01〜5%から選ばれた1種あるいは2種以
上の合計0.01〜20%および残部が実質的にNiからなる合
金である。
また本発明は、上記合金を適当な雰囲気遮断法または
雰囲気処理法にて300℃以上1200℃以下で1分以上50時
間以下加熱後、50〜300℃/hrの炉冷、好ましくは300〜2
000℃/hrの強制冷却を施し、さらに加工率20%以上90%
以下の冷間加工により所望の寸法に成形する製造法を提
供するものである。
さらにまた本発明は、上記製造法により得られた合金
を300℃以上1200℃以下で1分以上50時間以下加熱後、
炉冷するかあるいは空冷する熱処理を施すことによっ
て、比電気抵抗が130μΩ・cm以上および室温付近にお
ける電気抵抗の温度係数が+100×10-6-1乃至−100×
10-6-1、若しくは+50×10-6-1乃至−50×10-6-1
の優れた特長を有する。
つぎに本発明合金の組成、熱処理および加工率等の数
値を限定した理由について述べる。まず合金組成をCr10
〜24%、Cu3.5〜15%、Al2.5〜10およびCr,CuとAlの合
計25〜40%,Co0.01〜20%,Mn0.01〜15%,W0.01〜5%,T
i0.01〜5%およびSi0.01〜5%から選ばれた1種ある
いは2種以上の合計0.01〜20%および残部Niと限定した
理由は、第1図乃至第3図、各実施例および第4表から
明らかなように、それらの組成範囲からはずれると比電
気抵抗ρが130μΩ・cm以下になり、電気抵抗の温度係
数TCRが+100×10-6-1乃至−100×10-6-1の範囲か
らはずれ、加工性が悪化する他結晶粒が粗大成長するな
ど所期の要求条件を満足できないので、精密抵抗合金と
しては不適当となるからである。なお第6表および第7
表に組成と諸特性との関係を示す。
また本発明合金の製造法において、加熱温度を300℃
以上1200℃以下、加熱時間を1分以上50時間以下、冷却
速度を50〜300℃/hrの炉冷、若しくは300〜2000℃/hrの
強制冷却および加工率を20%以上90%以下と限定した理
由は、上記の各々の範囲からはずれると、第6図乃至第
8図および各実施例からも明らかなようにそれぞれ耐酸
化性、加工性や電気的特性の他にも製造コストに大きな
問題が生じるので、精密抵抗合金の製造法としては不適
当となるからである。
(発明の効果) 本発明によれば、Ni−10〜26%Cr−3.5〜15%Cu−2.5
〜10%Al−0.01〜20%Co−0.01〜15%Mn−0.01〜5%W
−0.01〜5%Ti−0.01〜5%Si合金は、比電気抵抗が13
0μΩ・cm以上で高く、しかも室温付近における電気抵
抗の温度係数が±50×10-6-1で極めて小さい特性を有
するので、本発明合金を使用したエレクトロニクス関連
の各デバイスは一層小型化が進み、しかも高安定、高性
能化に貢献することは明らかである。すなわち本発明合
金を使用することによって、厳しい温度環境下において
デバイスの温度ドリフトと発熱を極力抑制する効果があ
るだけでなく、大きな電圧変動に対しても素子の破壊を
防止する効果がある。
さらに本発明合金の製造法によれば、Co,Mn,W,Tiおよ
びSiの添加によって電気的特性が向上するだけでなく、
再結晶の粗大化を抑えさらに新規な熱処理法において悪
性化合物がほとんど生成されず、しかも酸化が内部に浸
透しないので、加工性が向上する効果もある。
本発明製造法は本発明合金だけでなく、Cr,CuやAl等
の高含有合金にも十分適用できるので、工業上利すると
ころか多大である。
【図面の簡単な説明】
第1図,第2図および第3図は、1000℃で1時間加熱後
300℃/hrで冷却したNi−0〜30%Cr−0〜20%Cu−0〜
10%Al合金のそれぞれCr量、Cu量およびAl量に対する20
℃における比電気抵抗ρと0〜50℃における電気抵抗の
平均温度係数TCRの変化を示す特性図、 第4図および第5図は、Ni−20%Cr−10%Cu−5%Al合
金にCo,Mn,W,TiあるいはSiを添加した場合のそれぞれCo
量あるいはMn量、およびW量、Ti量あるいはSi量に対す
るρおよびTCRの変化を示す特性図、 第6図は、1時間で加熱した比較合金Aおよび合金番号
14の本発明合金のρおよびTCRについて、2分、1時間
あるいは10時間で加熱した場合の加熱温度に対する変化
を示す特性図、 第7図は、合金番号14のρおよびTCRについて、600℃,8
00℃あるいは1000℃で加熱した場合の加熱時間に対する
変化を示す特性図、 および第8図は、合金番号14の加工性および特性と加熱
温度あるいは冷却速度との関係を示す特性図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比にて、クロム10〜26%、銅3.5〜15
    %およびアルミニウム2.5〜10%の合計25〜40%、コバ
    ルト0.01〜20%、マンガン0.01〜15%、タングステン0.
    01〜5%、チタン0.01〜5%およびシリコン0.01〜5%
    の内から選ばれた1種あるいは2種以上の合計0.01〜20
    %および残余ニッケルからなる合金を、溶解鋳造し、合
    金の断面積より若干大きい内面を有する耐熱性容器に挿
    入し、300℃以上1200℃以下で1分以上50時間以下加熱
    後、50〜300℃/hrの炉冷、又は300〜2000℃/hrの強制冷
    却を施し、素材と容器一体で加工率20%以上90%以下の
    冷間加工により所望の寸法に成形し、適当な寸法により
    該容器を取り除き、その後300℃以上1200℃以下の温度
    および1分以上50時間加熱し、炉冷するかあるいは空冷
    する熱処理を施すことによって得られた合金が、比電気
    抵抗が130μΩ・cm以上および室温付近における電気抵
    抗の温度係数が+100×10-6-1乃至−100×10-6-1
    しくは+50×10-6-1乃至−50×10-6-1を有ることを
    特徴とする精密抵抗合金。
  2. 【請求項2】重量比にて、クロム10〜26%、銅3.5〜15
    %およびアルミニウム2.5〜10%の合計25〜40%、コバ
    ルト0.01〜20%、マンガン0.01〜15%、タングステン0.
    01〜5%、チタン0.01〜5%およびシリコン0.01〜5%
    の内から選ばれた1種あるいは2種以上の合計0.01〜20
    %および残余ニッケルからなる合金を、溶解鋳造し、真
    空中、あるいは不活性ガス雰囲気中若しくはスポンジチ
    タン或いはニッケル板で成形品を包み込み300℃以上120
    0℃以下で1分以上50時間以下加熱後、50〜300℃/hrの
    炉冷、又は300〜2000℃/hrの強制冷却を行なった後、加
    工率20%以上90%以下の冷間加工を施し所望の寸法に成
    形し、さらにこの成形品を300℃以上1200℃以下の温度
    および1分以上50時間にて加熱し、炉冷するかあるいは
    空冷する熱処理を施すことによって、比電気抵抗が130
    μΩ・cm以上および室温付近における電気抵抗の温度係
    数が+100×10-6-1乃至−100×10-6-1若しくは+50
    ×10-6-1乃至−50×10-6-1を有する合金を得ること
    を特徴とする精密抵抗合金の製造方法。
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